特許第6755514号(P6755514)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6755514
(24)【登録日】2020年8月28日
(45)【発行日】2020年9月16日
(54)【発明の名称】保持具
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20200907BHJP
【FI】
   G01N33/543 521
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-20858(P2016-20858)
(22)【出願日】2016年2月5日
(65)【公開番号】特開2017-138264(P2017-138264A)
(43)【公開日】2017年8月10日
【審査請求日】2019年1月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】500254354
【氏名又は名称】公益財団法人科学技術交流財団
(73)【特許権者】
【識別番号】304027349
【氏名又は名称】国立大学法人豊橋技術科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】岩佐 香代
(72)【発明者】
【氏名】岩佐 精二
【審査官】 高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−520991(JP,A)
【文献】 特開2002−202310(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0152206(US,A1)
【文献】 特開2011−191317(JP,A)
【文献】 米国特許第05429804(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イムノクロマトグラフィー法によってサンプル溶液を分析する際に使用される試験片を保持可能に構成された保持具であって、
前記試験片を載置可能な載置部が上側に設けられた第1部材と、
前記載置部の上に載置された前記試験片の上に配置可能で、前記試験片の上に配置された際に下面が前記試験片の一端に設けられたサンプルパッドに接触し、上面に前記サンプル溶液が滴下された際に、前記サンプル溶液を下面側へと浸透させて、更に前記下面から前記サンプルパッドへと浸透させる浸透シートと、
前記第1部材及び前記浸透シートの上側に取り付け可能で、上下方向に貫通する孔を有し、前記孔の内側に前記サンプル溶液を滴下することにより、前記サンプル溶液を前記浸透シートの上面へ滴下可能な構造とされた第2部材と、
前記第1部材の上に配置可能で、前記第1部材の上に配置された際に、下面が前記第1部材に接触し、上面が前記試験片の前記サンプルパッド及び浸透シートに接触するインサートシートと、
を備え、
前記第1部材には、前記第2部材の外周を囲む位置において前記第2部材の周縁に着脱可能に引っ掛かることにより、前記第2部材を前記第1部材に対して固定可能な複数の固定部が設けられ、
前記第2部材は、複数の前記固定部に囲まれる位置に配置され、前記固定部が前記第2部材の周縁に引っ掛かって、前記第2部材が前記第1部材に固定され、その際、前記第2部材は、前記孔の周縁にある箇所が前記浸透シートに接触して前記浸透シートを押圧可能に構成され、
前記浸透シートは、前記載置部の上に載置された前記試験片の上に配置された際に、前記載置部に載置された複数の前記試験片それぞれの前記サンプルパッドと接触するように構成されており、
前記インサートシートの外径は前記浸透シートの外径よりも大きく、前記孔の内側に前記サンプル溶液が滴下された際に、前記浸透シート及び前記試験片に浸透した前記サンプル溶液を前記インサートシートの下面側へ浸透させないように構成されている
保持具。
【請求項2】
請求項1に記載の保持具であって、
前記試験片は、前記サンプル溶液が前記試験片の前記一端から他端へ毛細管現象によって前記サンプル溶液が移動する際に、前記サンプル溶液とともに移動する反応対象物質と抗原抗体反応を起こす物質が固定された検出領域を有する部分であって、前記抗原抗体反応が起きた場合には前記検出領域の色が変化する分析膜を備え、
前記試験片が前記載置部の上に載置され、前記第2部材が前記第1部材に固定された際に、前記分析膜が前記第2部材に覆われない位置に配置されるように構成されている保持具。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の保持具であって、
前記第2部材は弾性変形可能に構成されている保持具。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の保持具であって、
前記第1部材は、ゴム弾性を有する弾性材料によって構成されている保持具。
【請求項5】
請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の保持具であって、
前記第1部材は、円形の上面を有する形状とされ、
前記載置部は、前記円形の上面の中心から放射状に延びる複数の溝によって構成され、
前記複数の溝それぞれが延びる方向と前記試験片の長手方向が一致する向きにして、前記試験片を前記溝の内側に載置可能に構成され、
前記円形の上面の外径は、複数の前記試験片が前記載置部に載置された際に、複数の前記試験片それぞれの一部が前記円形の上面から外周側へはみ出すような寸法にされている保持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
サンプル溶液中に含まれる複数の分析対象を同時に分析するため、複数の試験片を容器に収納した構造とされたイムノクロマトグラフィー用のストリップディスクが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のストリップディスクは、基部及び蓋部を有する容器を備え、基部と蓋部との間に形成される中空部に複数の試験片(ストリップ)が収納されている。蓋部に設けられた開口部に滴下されたサンプル溶液は、各試験片に対応する液体案内路を通り、それぞれの試験片に至る。これにより、複数の試験片を用いて、サンプル溶液中に含まれる複数種類の分析対象を同時に分析することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4851597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般に、イムノクロマトグラフィー用の試験片は、工場での製造時にケースに組み込まれて出荷される。この点は、特許文献1に記載のストリップディスクも例外ではなく、工場での製造時に複数の試験片が容器に組み込まれて出荷される。
【0006】
しかし、工場での製造時に複数の試験片が容器に組み込まれている製品の場合、あらかじめ想定されている複数の分析対象を同時に分析することはできるものの、ユーザが自由に分析対象を選択するようなことはできない、という問題がある。
【0007】
ここで、ユーザが自由に分析対象を選択するには、分析対象に対応した試験片を組み合わせて使用する必要がある。しかし、上述の通り、特許文献1に記載のストリップディスクでは、ユーザが任意に選択した試験片を容器にセットすることは想定されていない。そのため、特許文献1に記載のストリップディスクの場合、基部から蓋部を取り外す作業を行うこと自体が容易ではない。したがって、容器から試験片を取り外したり、別の試験片を容器にセットしたりすることは困難であり、ユーザが任意に選択した試験片を容器にセットすることが困難である。
【0008】
また、特許文献1に記載のストリップディスクの場合、上述の通り、容器から試験片を取り外すことを想定していない。そのため、使用後のストリップディスクについては、丸ごと廃棄するしかなく、廃棄物削減の観点からも問題がある。
【0009】
本開示の一側面は、こうした問題にかんがみてなされたものであり、ユーザが複数の試験片を自由に選択してセットすることができる保持具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一側面は、イムノクロマトグラフィー法によってサンプル溶液を分析する際に使用される試験片を保持可能に構成された保持具であって、第1部材と、浸透シートと、第2部材と、を備える。第1部材は、試験片を載置可能な載置部が上側に設けられている。浸透シートは、載置部の上に載置された試験片の上に配置可能で、試験片の上に配置された際に下面が試験片の一端に設けられたサンプルパッドに接触し、上面にサンプル溶液が滴下された際に、サンプル溶液を下面側へと浸透させて、更に下面からサンプルパッドへと浸透させる。サンプルパッドは、試験片の一部であり、試験片の一端側に設けられていて、サンプル溶液を受け取って、その受け取ったサンプル溶液を試験片の他端側へと供給する役割を果たす部分である。本開示の保持具の場合、サンプルパッドは、浸透シート側からサンプル溶液を受け取る。第2部材は、第1部材及び浸透シートの上側に取り付け可能で、上下方向に貫通する孔を有し、孔の内側にサンプル溶液を滴下することにより、サンプル溶液を浸透シートの上面へ滴下可能な構造とされている。第1部材には、第2部材の外周を囲む位置において第2部材の周縁に引っ掛かることにより、第2部材を第1部材に対して固定可能な複数の固定部が設けられている。第2部材は、複数の固定部に囲まれる位置に配置され、固定部が第2部材の周縁に引っ掛かって、第2部材が第1部材に固定され、その際、第2部材は、孔の周縁にある箇所が浸透シートに接触して浸透シートを押圧可能に構成されている。ただし、固定部及び第2部材の引っ掛かりを解除し、第2部材を上方へ変位させれば、第2部材を第1部材から取り外すことができる。浸透シートは、載置部の上に載置された試験片の上に配置された際に、載置部に載置された複数の試験片それぞれのサンプルパッドと接触するように構成されている。
【0011】
このような構成によれば、保持具は、第2部材を第1部材に固定すると、載置部に載置された試験片を保持することができる。その際、第2部材を複数の固定部に囲まれる位置に配置し、固定部が第2部材の周縁に引っ掛かけるだけで、第2部材が第1部材に固定される。そのため、本開示の保持具を用いれば、例えば基部と蓋部との結合に手間がかかるような容器とは異なり、簡単に第2部材を第1部材に取り付けることができる。よって、本開示の保持具を用いれば、ユーザが簡単に試験片を取り付けることができる。
【0012】
また、固定部及び第2部材の引っ掛かりを解除し、第2部材を上方へ変位させれば、第2部材を第1部材から取り外すことができる。そのため、本開示の保持具を用いれば、例えば容器を破壊しないと試験片を取り出すことができないような容器とは異なり、ユーザが簡単に試験片を取り出すことができる。したがって、本開示の保持具を用いればユーザが自由に複数の試験片を選択してセットすることができる。また、サンプル溶液の分析を行った後、試験片を保持具から取り出して新たな試験片を保持具に取り付けることも容易なので、保持具を再利用してサンプル溶液の分析を行うことができる。
【0013】
また、このような保持具であれば、孔の内側にサンプル溶液を滴下すると、サンプル溶液が浸透シートの上面へ滴下され、下面側へと浸透し、更に下面から複数の試験片のサンプルパッドそれぞれへと浸透することができる。そのため、本開示の保持具を用いれば、サンプル溶液を滴下すると、サンプル溶液が複数の試験片のサンプルパッドにほぼ同時に浸透することにより、1つのサンプル溶液中に含まれる複数種類の分析対象を同時に分析することができる。
【0014】
また、このような保持具において、第2部材が第1部材に固定されると、第2部材が浸透シートを押圧する。そのため、浸透シートが押圧されると、試験片のサンプルパッドも同時に押圧される。よって、浸透シートが押圧されない場合に比べて、試験片におけるサンプル溶液の浸透速度が低下する。したがって、サンプル溶液中の抗原と標識抗体との反応時間が長くなるため、より感度が高い検出ができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は第1実施形態の保持具を示す斜視図である。
図2図2は競合イムノクロマトグラフィー用の試験片の構造を示す図である。
図3図3は第1実施形態の第1部材を示す斜視図である。
図4図4は第2部材を示す斜視図である。
図5図5はインサートシートを示す斜視図である。
図6図6Aは第1実施形態の第1部材を示す斜視図である。図6B図6Aの状態にインサートシートを配置した斜視図である。図6C図6Bの状態に試験片を配置した斜視図である。図6D図6Cの状態にろ紙を配置した斜視図である。図6E図6Dの状態に第2部材を配置した斜視図である。
図7】第2実施形態の第1部材を示す斜視図である。
図8図8Aは第2実施形態の第1部材を示す斜視図である。図8B図8Aの状態にインサートシートを配置した斜視図である。図8C図8Bの状態に試験片を配置した斜視図である。図8D図8Cの状態にろ紙を配置した斜視図である。図8E図8Dの状態に第2部材を配置した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本開示を実施するための形態を説明する。
[1.第1実施形態]
[1−1.構成]
図1に示す保持具1は、競合イムノクロマトグラフィー法によって分析対象を分析可能な試験片2とともに使用されるケースである。保持具1は、第1部材3と、第2部材4と、浸透シート5と、インサートシート6と、を備える。ただし、浸透シート5及びインサートシート6は図1に示していない。図1は、試験片2が収容されている状態の保持具1を示している。
【0017】
まず、図2に示す試験片2について説明する。試験片2は、サンプル溶液に浸漬されるサンプルパッド10と、サンプル溶液中の抗原を認識するための標識抗体が存在するコンジュゲートパッド11と、検出結果を表すラインが形成される部分である分析膜12と、分析膜12からサンプル溶液を吸い上げる吸収パッド13と、を備える。
【0018】
試験片2は細長い形状に構成され、サンプルパッド10、コンジュゲートパッド11、分析膜12、及び吸収パッド13が、この順序で試験片2の長手方向の一端から他端に至る範囲に配置されている。サンプルパッド10とコンジュゲートパッド11は、それぞれの端部にある一部分が積層され、その積層部分では、コンジュゲートパッド11の上面がサンプルパッド10の下面と接触している。コンジュゲートパッド11と分析膜12は、それぞれの端部にある一部分が積層され、その積層部分では、コンジュゲートパッド11の下面が分析膜12の上面と接触している。また、分析膜12と吸収パッド13は、それぞれの端部にある一部分が積層され、その積層部分では、分析膜12の上面と吸収パッド13の下面とが接触している。このような構成の試験片2のサンプルパッド10をサンプル溶液に浸漬すると、毛細管現象により、サンプル溶液がコンジュゲートパッド11、分析膜12、吸収パッド13の順に浸透していく。
【0019】
分析膜12は、抗原決定基を備えた物質が固定化された領域と、当該領域よりもサンプル溶液が移動する方向に捕捉抗体が固定化された領域と、を有する。前記物質とサンプル溶液中の抗原との標識抗体に対する競合反応により、物質と結合した標識抗体は第1のライン15を形成する。次に、第1のライン15を通過したサンプル溶液中に、抗原と標識抗体とが結合した抗原―標識抗体の複合体は、捕捉抗体に捕捉されて第2のライン16を形成する。形成された第1のライン15及び第2のライン16の濃さによって、サンプル溶液中の分析対象(抗原)の濃度を判定することができる。
【0020】
次に、図3に示す第1部材3について説明する。図3に示す第1部材3は、アクリル樹脂によって構成されている。第1部材3は、略円柱状に構成されている。第1部材3の円形の上面には、シート配置部20と、載置部21と、8つのねじ22と、を備える。
【0021】
シート配置部20は、第1部材3の上面の中心に設けられた水平な断面形状が円形になる凹部で構成されている。シート配置部20に、インサートシート6全体、8本の試験片2それぞれの一部、及び浸透シート5全体がこの順番に重ねられる。 載置部21は、シート配置部20の外周から第1部材3の上面の外周に設けられた直方体状の8つの溝である。載置部21は、第1部材3の上面の略中央にある点を対称中心として8つの溝が回転対称(8回対称)な位置に設けられている。載置部21は、複数の溝それぞれが延びる方向と試験片2の長手方向が一致する向きにして、試験片2を溝の内側に載置可能に構成されている。
【0022】
ねじ22は、隣接する載置部21の2つの溝の間に1つずつ設けられている。各ねじ22はねじ22の軸の一部が第1部材3にねじ込まれ、ねじ22の軸の残りの一部は外に露出している。ねじ22は、第2部材4の外周を囲む位置において第2部材4の周縁32に引っ掛かることにより、第2部材4を第1部材3に対して固定可能に構成されている。
【0023】
第1部材3の上面の外径は、複数の試験片2が載置部21に載置された際に、複数の試験片2それぞれの一部が円形の上面から外周側へはみ出すような寸法にされている。
次に、図4に示す第2部材4について説明する。第2部材4は、透明なポリエチレンテレフタラート(PET)樹脂によって構成され、弾性変形させることができる程度の厚さに構成されている。第2部材4には凹部30が設けられ、凹部30の底には孔30Aが設けられている。
【0024】
第2部材4は、第1部材3及び浸透シート5の上側に着脱可能に構成されている。具体的には、第2部材4を撓ませつつ8つのねじ22に囲まれる位置へ押し込み、その状態で第2部材4の撓みを緩めることにより、第2部材4の周縁32を外周方向へと変位させ、ねじ22が第2部材4の周縁32に引っ掛かる。これにより、ねじ22の頭がストッパーとなることで、第2部材4を第1部材3に固定することができる。また、第2部材4が第1部材3に固定された状態において、第2部材4を撓ませつつ第2部材4を上方へと変位させれば、第2部材4を第1部材3から取り外すことができる。
【0025】
第2部材4が第1部材3に固定された際、第2部材4は、孔30Aの周縁にある箇所31が浸透シート5に接触して浸透シート5を押圧する。第2部材4が第1部材3に固定された状態において、孔30Aの内側にサンプル溶液を滴下すると、サンプル溶液は浸透シート5の上面へ滴下される。
【0026】
浸透シート5は、円形のろ紙によって構成されている。浸透シート5は、シート配置部20内で、載置部21の上に載置された試験片2の上に配置される。浸透シート5が載置部21の上に載置された試験片2の上に配置された際、浸透シート5の下面は載置部21に載置された複数の試験片2それぞれのサンプルパッド10と接触する。浸透シート5がサンプルパッド10と接触する状態で、第2部材4が第1部材3に固定され、浸透シート5の上面にサンプル溶液が滴下された際に、浸透シート5は、サンプル溶液を浸透シート5の下面側へと浸透させて、更に下面からサンプルパッド10へと浸透させる。
【0027】
次に、図5に示すインサートシート6について説明する。図5に示すインサートシート6は、透明なポリエチレンテレフタラート(PET)樹脂によって構成されている。インサートシート6は、円形のシートであり、シート配置部20内に配置される。インサートシート6がシート配置部20内に配置された際に、下面がシート配置部20に接触し、上面が試験片2のサンプルパッド10及び浸透シート5に接触する。インサートシート6の外径は前記浸透シート5の外径よりも大きい。インサートシート6は、孔30Aの内側にサンプル溶液が滴下された際に、浸透シート5及び試験片2に浸透したサンプル溶液をインサートシート6の下面側へ浸透させないように構成されている。
【0028】
また、インサートシート6は、規制部40を備える。規制部40は、インサートシート6の表面の中央に位置し、円板状に構成されている。規制部40は、各試験片2のサンプルパッド10側のすべての端が規制部40に接触する接触面41を有する。そのため、シート配置部20の上に配置された試験片2は、規制部40に接触することによって試験片2の長手方向への移動が規制される。したがって、複数の試験片2をシート配置部20の上に配置する際には、各試験片2の端を規制部40に接触させることにより、複数の試験片2を簡単に整列させることができる。
【0029】
次に、試験片2を保持具1にセットする手順について図6A図6Eに基づいて説明する。図6Aに示すように、第1部材3のシート配置部20が上に向けられる。その状態で、シート配置部20には、図6Bに示すように、インサートシート6が配置される。このとき、インサートシート6は、規制部40が上になるように配置される。次に図6Cに示すように、インサートシート6及び載置部21の上に、8本の試験片2が配置される。このとき、各試験片2のサンプルパッド10側の端は、接触面41に接触する。次に、図6Dに示すように、浸透シート5が配置される。浸透シート5は、シート配置部20の内側において、複数の試験片2のそれぞれのサンプルパッド10と重なるように配置される。次に、図6Eに示すように、それぞれの分析膜12が見えるように、第2部材4が取り付けられる。第2部材4は、上述したようにねじ22によって第1部材3に固定される。
【0030】
[1−2.効果]
以上詳述した第1実施形態によれば、以下の効果が得られる。
第2部材4を第1部材3に固定する際、ねじ22が第2部材4の周縁32に引っ掛かるだけで、第2部材4が第1部材3に固定される。このような構成によれば、例えば基部と蓋部との結合に手間がかかるような容器とは異なり、簡単に第2部材4を第1部材3に取り付けることができる。よって、保持具1を用いれば、ユーザが簡単に試験片2を取り付けることができる。一方、第2部材4を弾性変形させつつ上側へ引っ張れば、第2部材4を第1部材3から簡単に取り外すことができる。そのため、例えば容器を破壊しないと試験片を取り出すことができない容器とは異なり、ユーザが複数の試験片2の取り付けと取り外しを簡単に行うことができる。したがって、保持具1を用いればユーザが自由に複数の試験片2を選択してセットすることができる。また、サンプル溶液の分析を行った後、試験片2を保持具1から取り外して新たな試験片2を保持具1に取り付けることも容易なので、保持具1を再利用してサンプル溶液の分析を行うことができる。
【0031】
ところで、イムノクロマトグラフィー法による反応の後には、第1のライン15及び第2のライン16の色の濃さを色見本と比較して判定したり、リーダーで定量したりする作業を実施する。その際、反応時間がある一定時間を経過すると第1のライン15及び第2のライン16の色が濃くなってしまうことがあり、その場合、濃度判定を正確に行うことができなくなるおそれがある。しかし、保持具1を用いれば、試験片2の取り出しが容易なことから、リーダーに試験片2を速やかにセットすることができるため、濃度判定を正確に行うことができる。また、容器に収容されていない試験片(ストリップ)やハーフストリップを用いた場合、反応時間が来たら第1のライン15の浸透方向上流側をハサミで切り落とす作業を行って、色の変化を防ぐことがある。容器からの取り出しが困難な試験片の場合、上述のような切り落とし作業は実施できない。しかし、上述の保持具1を用いれば、試験片2の取り出しが容易なことから、容器に収容されていない試験片の場合と同様に、試験片の一部をハサミで切り落とす作業が速やかに行うことができる。なお、ハーフストリップとは、コンジュゲートパッドの代わりにウェル中でサンプル溶液中の抗原と標識抗体とを反応させるタイプの試験片である。
【0032】
また、保持具1において、孔30Aの内側にサンプル溶液を滴下すると、サンプル溶液が複数の試験片2のサンプルパッド10にほぼ同時に浸透するので、1つのサンプル溶液中に含まれる複数種類の分析対象を同時に分析することができる。
【0033】
また、第2部材4が第1部材3に固定されると、第2部材4は浸透シート5を押圧する。このとき、試験片2のサンプルパッド10も同時に押圧される。そのため、浸透シート5が押圧されない場合に比べて、試験片2におけるサンプル溶液の浸透速度が低下する。したがって、サンプル溶液中の抗原と標識抗体との反応時間が長くなるため、より感度が高い検出ができる。
【0034】
また、第2部材4が第1部材3に取り付けられる際、それぞれの分析膜12が見えるように、第2部材4が取り付けられる。そのため、わざわざ試験片2を保持具1から取り外さなくても、保持具1に試験片2が保持されたままの状態で試験片2の第1のライン15及び第2のライン16を観察することができる。
【0035】
また、インサートシート6は、浸透シート5及び試験片2に浸透したサンプル溶液をインサートシート6の下面側へ浸透させないように構成されている。そのため、孔30Aの内側にサンプル溶液が滴下された際に、サンプル溶液によって第1部材3が汚染されるのを抑制することができる。したがって、サンプル溶液を孔30Aに滴下して分析が終了した後、別の分析のために保持具1をセットする際に、第1部材3を洗浄することなく、繰り返し使用することができる。
【0036】
また、第1部材3の上面の外径は、複数の試験片2が載置部21に載置された際に、複数の試験片2それぞれの一部が円形の上面から外周側へはみ出すような寸法にされている。このような構成によれば、第2部材4を第1部材3から取り外す作業を行うことなく、はみ出した試験片2の一部を外周側へ引くことにより、試験片2を保持具1から取り外すことができる。また、このような構成によれば、第1部材3がコンパクトになり、持ち運びに便利である。
【0037】
なお、第1実施形態で例示したねじ22が本開示でいう固定部の一例に相当する。また、第1実施形態で例示した標識抗体及び抗原―標識抗体の複合体が本開示でいう反応対象物質の一例に相当する。また、第1実施形態で例示した抗原決定基を備えた物質及び捕捉抗体が本開示でいう反応対象物質と抗原抗体反応を起こす物質の一例に相当する。また、第1実施形態で例示した第1のライン15及び第2のライン16が本開示でいう検出領域の一例に相当する。
【0038】
[2.第2実施形態]
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、共通する構成については説明を省略し、相違点を中心に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0039】
[2−1.構成]
前述した第1実施形態では、第1部材3は、アクリル樹脂によって構成されている。これに対し、第2実施形態では、第1部材50(図7)は、シリコーンゴムによって構成されている点で、第1実施形態と相違する。
【0040】
また、前述した第1実施形態では、第1部材3は、ねじ22によって、第2部材4を固定している。これに対し、第2実施形態では、第1部材50は、第1部材50に設けられている8つの差込部53に第2部材4の周縁32が差し込まれることにより、第2部材4が第1部材50に固定される点で、第1実施形態と相違する。
【0041】
差込部53はシート配置部51の外周に沿って設けられている。各差込部53は、隣接する載置部52の2つの溝の間の領域に位置し、第1部材50の上面の略中央にある点に向かって開口している。差込部53は、第2部材4の外周を囲む位置において第2部材4の周縁32に引っ掛かることにより、第2部材4を第1部材50に対して固定可能に構成されている。
【0042】
次に、試験片2を保持具1にセットする手順について図8A図8Eに基づいて説明する。図8Aに示すように、第1部材50のシート配置部51が上に向けられる。その状態で、シート配置部51には、図8Bに示すように、インサートシート6が配置される。このとき、インサートシート6は、規制部40が上になるように配置される。次に図8Cに示すように、インサートシート6及び載置部52の上に、8本の試験片2が配置される。このとき、各試験片2のサンプルパッド10側の端は、接触面41に接触する。次に、図8Dに示すように、浸透シート5が配置される。浸透シート5は、シート配置部51の内側において、複数の試験片2のそれぞれのサンプルパッド10と重なるように配置される。次に、図8Eに示すように、それぞれの分析膜12が見えるように、第2部材4が取り付けられる。具体的には、第2部材4を8つの差込部53に囲まれる位置へ押し込む。このとき、第2部材4を撓ませつつ第2部材4の周縁32を差込部53へと導入することができ、その際、差込部53が第2部材4からの力を受ければ、差込部53も弾性変形して第2部材4の周縁32を受け入れる。その結果、差込部53が第2部材4の周縁32に引っ掛かり、第2部材4を第1部材50に固定することができる。また、第2部材4が第1部材50に固定された状態において、第2部材4を撓ませつつ第2部材4を上方へと変位させれば、第2部材4を第1部材50から取り外すことができる。
【0043】
[2−2.効果]
以上詳述した第2実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果に加え、以下の効果が得られる。
【0044】
上記第1部材50はシリコーンゴムによって構成されている。このような構成によれば、第2部材4を第1部材50に取り付ける際、ゴム弾性を利用して、第2部材4を簡単に取り付けることができる。
【0045】
なお、第2実施形態で例示した差込部53が本開示でいう固定部の一例に相当する。
[3.他の実施形態]
以上、本開示を実施するための形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0046】
上記実施形態では、競合イムノクロマトグラフィー法によって分析対象を分析可能な試験片2を例示したが、試験片はこれに限定されるものではない。例えば、試験片としては、非競合イムノクロマトグラフィー法によって分析対象を分析可能な試験片、ハーフストリップ等を挙げることができる。
【0047】
上記実施形態では、保持具1が試験片2を8本収容する構成を例示した。しかし、保持具が収容可能な試験片の本数は8本に限定されない。例えば、保持具が、2本以上7本以下の試験片及び9本以上の試験片を収容可能な構成でもよい。
【0048】
上記実施形態では、浸透シート5がろ紙である例示をしたが、浸透シートはこれに限定されるものではない。浸透シートが、浸透シートを介してサンプル溶液を試験片に浸透させることができるものでもよい。例えば、浸透シートとしては不織布等を挙げることができる。
【0049】
上記実施形態では、固定部がねじ22及び差込部53である例示をしたが、固定部はこれに限定されるものではない。例えば、固定部がL字状の形状をした爪によって構成され、その爪が第2部材の周縁に引っ掛かることにより、第2部材を第1部材に対して固定可能な構造であってもよい。
【0050】
上記実施形態では、第2部材4が第1部材3,50に取り付けられる際、それぞれの分析膜12が見えるように、第2部材4が取り付けられる構成を例示した。しかし、第2部材の構成はこれに限定されるものではない。例えば、第2部材が分析膜を覆っていたとしても、その状態で第1のライン及び第2のラインが見えるように構成されていれば(例えば、第2部材が透明な材料で構成されていれば、あるいは、第2部材に分析膜を見るための窓が設けられていれば)、第2部材は分析膜を覆うような位置に配置されていてもよい。
【0051】
上記実施形態では、第2部材4が弾性変形する構成を例示したが、第2部材が弾性変形しにくい構造になっていてもよい。この様な場合でも、固定部が変位可能な構造になっていれば、固定部を変位させることにより、第2部材の着脱を行うことができる。具体的な例を挙げれば、例えば、固定部がL字状の形状をした爪によって構成されている場合、当該爪にヒンジが設けられていれば、爪を自由に起こしたり倒したりすることができる。このような場合、第2部材を変形させなくても、爪を起こすことによって爪を第2部材の周縁に引っ掛かければ、第2部材を第1部材に対して固定することができる。また、爪を倒すことによって爪を第2部材の周縁に引っ掛からない位置へと変位させれば、第2部材を第1部材から取り外すことができる。
【0052】
上記実施形態では、保持具1はインサートシート6を備える構造を例示したが、インサートシート6を備えるか否かは任意である。
上記実施形態では、第1部材3,50の上面の外径は、複数の試験片2が載置部21,52に載置された際に、複数の試験片2それぞれの一部が円形の上面から外周側へはみ出すような寸法にされている構造を例示した。しかし、第1部材の上面の外径の寸法はこれに限定されるものではない。例えば、第1部材の上面の外径は、複数の試験片が載置部に載置された際に、複数の試験片それぞれの一部が円形の上面から外周側へはみ出さないような寸法にされている構造であってもよい。
【0053】
上記各実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素に分担させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に発揮させたりしてもよい。また、上記各実施形態の構成の一部を、課題を解決できる限りにおいて省略してもよい。また、上記各実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0054】
1…保持具、2…試験片、3,50…第1部材、4…第2部材、5…浸透シート、6…インサートシート、10…サンプルパッド、11…コンジュゲートパッド、12…分析膜、13…吸収パッド、15…第1のライン、16…第2のライン、20,51…シート配置部、21,52…載置部、22…ねじ、30…凹部、30A…孔、31…孔の周縁にある箇所、32…周縁、40…規制部、41…接触面、53…差込部。
図1
図2
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図8