特許第6755540号(P6755540)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6755540セル構造体及びその製造方法並びに燃料電池及び二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6755540
(24)【登録日】2020年8月28日
(45)【発行日】2020年9月16日
(54)【発明の名称】セル構造体及びその製造方法並びに燃料電池及び二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/1213 20160101AFI20200907BHJP
   H01M 8/124 20160101ALI20200907BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20200907BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20200907BHJP
【FI】
   H01M8/1213
   H01M8/124
   H01M10/04 Z
   !H01M8/12 101
   !H01M8/12 102Z
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-531848(P2019-531848)
(86)(22)【出願日】2018年12月18日
(86)【国際出願番号】JP2018046527
【審査請求日】2019年6月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】307015301
【氏名又は名称】武藤工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】きさらぎ国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】當間 隆司
(72)【発明者】
【氏名】中垣 隆雄
【審査官】 守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−277236(JP,A)
【文献】 特開平07−014585(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/092085(WO,A1)
【文献】 特開2007−273194(JP,A)
【文献】 特表2008−519404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/12
C25B 1/00
C25B 9/00
H01M 10/04
H01M 10/058
H01M 2/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン伝導性を有する電解質と、
前記電解質の両側に配置され電子伝導性を有する一対の電極と、
を有するセル構造体において、
前記電解質は、
前記一対の電極を分離する第1部材と、
前記第1部材の少なくとも一方の側に接合され、井桁構造層の少なくとも一部を構成すると共に、前記第1部材から順に第1の層及び第2の層を形成する複数の第2部材と
を備え、
前記第2部材は、前記第1の層において、第1方向に延び、前記第1方向と交差する第2方向に配列され、前記第2の層において、前記第1方向と交差する第3方向に延び、前記第3方向と交差する第4方向に配列され、
前記第1の層に属する前記第2部材と前記第2の層に属する第2部材とは、互いに接合されている
セル構造体。
【請求項2】
前記第1部材と前記第2部材とは、同一材料にて形成されている
請求項1記載のセル構造体。
【請求項3】
前記第1部材と前記第2部材とは、異なる材料にて形成されている
請求項1記載のセル構造体。
【請求項4】
前記第1部材は、ガスを遮断可能な緻密構造体からなり、前記第2部材は、ガス透過性を有するポーラス体からなる
請求項2又は3記載のセル構造体。
【請求項5】
前記一対の電極のうちの少なくとも一方の電極は、前記第2部材と共に前記井桁構造層を形成する複数の第3部材によって構成され、
前記第3部材は、前記第1の層において、前記第1方向に延び、前記第2方向に前記第2部材と隣接して配列され、前記第2の層において、前記第3方向に延び、前記第4方向に前記第2部材と隣接して配列され、
前記第1の層に属する前記第3部材と前記第2の層に属する前記第3部材とは、互いに接合されている
請求項1〜4のいずれか1項記載のセル構造体。
【請求項6】
前記第3部材は、ガス透過性を有するポーラス体からなる
請求項5記載のセル構造体。
【請求項7】
前記第1の層及び前記第2の層の各層において、前記第2部材と、その両側に配置された2つの前記第3部材のうちの一方とは密着し、他方との間には所定の間隔を有する
請求項5記載のセル構造体。
【請求項8】
前記第1の層及び前記第2の層の各層において、前記第2部材と前記第3部材とは、隙間無く配列されている
請求項6記載のセル構造体。
【請求項9】
イオン伝導性を有する電解質と、
前記電解質の両側に配置され電子伝導性を有する一対の電極と、
を有するセル構造体の製造方法において、
平板状に延びる第1部材を形成し、
前記第1部材の少なくとも一方の面上に第1の分解プロセスにより分解する複数の第1樹脂部材を、第1の層においては、第1方向に延び、前記第1方向と交差する第2方向に所定の間隔を空けて配列させ、第2の層においては、前記第1方向と交差する第3方向に延び、前記第3方向と交差する第4方向に所定の間隔を空けて配列させることにより、前記第1樹脂部材の井桁構造層を形成し、
前記第1樹脂部材の井桁構造層の隙間に第2部材のスラリーを充填し、
前記第1の分解プロセスにより前記第1樹脂部材を分解すると共に、前記第2部材を焼成する
ことにより前記第1部材及び第2部材で前記電解質を形成する
セル構造体の製造方法。
【請求項10】
イオン伝導性を有する電解質と、
前記電解質の両側に配置され電子伝導性を有する一対の電極と、
を有するセル構造体の製造方法において、
平板状に延びる第1部材を形成し、
前記第1部材の少なくとも一方の面上に第1の分解プロセスにより分解する複数の第1樹脂部材と第2の分解プロセスにより分解する複数の第2樹脂部材とを、第1の層においては、第1方向に延び、前記第1方向と交差する第2方向に所定の間隔を空けて配列させ、第2の層においては、前記第1方向と交差する第3方向に延び、前記第3方向と交差する第4方向に所定の間隔を空けて配列させることにより、前記第1樹脂部材及び第2樹脂部材の井桁構造層を形成し、
前記第1樹脂部材及び第2樹脂部材の井桁構造層の隙間に第2部材のスラリーを充填し、
前記第1の分解プロセスにより前記第1樹脂部材を分解し、
前記第1樹脂部材が分解してできた隙間に第3部材の粉体を充填し、
前記第2部材及び第3部材を焼成する
ことにより前記第1部材及び第2部材で前記電解質を形成し、前記第3部材で前記一対の電極のうちの少なくとも一方を形成する
セル構造体の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか1項記載のセル構造体を内部に有する燃料電池。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか1項記載のセル構造体を内部に有する二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セル構造体及びその製造方法並びに燃料電池及び二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガスや水素、又はその他の燃料の酸化によって電気を発生させるシステムとして、固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)が知られている(例えば、特許文献1参照)。この固体酸化物形燃料電池においては、電解質と接合する電極を、例えばエアロゾルデポジション法により塗布形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−195193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された従来の固体酸化物形燃料電池は、電極材料を電解質に塗布形成して製造されるため、使用する原材料のコスト比率が高いままであり、生産量が増えてもコストを低減させることが難しいという問題がある。また、現状の固体酸化物形燃料電池においては、反応場における燃料や酸素と接する電解質と電極の三相界面をより拡げることで、より出力密度が高くなるセル構造体の実現も望まれている。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、反応場の三相界面を拡げ得るセル構造体及びその製造方法並びに燃料電池及び二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るセル構造体は、イオン伝導性を有する電解質と、前記電解質の両側に配置され電子伝導性を有する一対の電極と、を有するセル構造体において、前記電解質が、前記一対の電極を分離する第1部材と、前記第1部材の少なくとも一方の側に接合され、井桁構造層の少なくとも一部を構成すると共に、前記第1部材から順に第1の層及び第2の層を形成する複数の第2部材とを備え、前記第2部材が、前記第1の層において、第1方向に延び、前記第1方向と交差する第2方向に配列され、前記第2の層において、前記第1方向と交差する第3方向に延び、前記第3方向と交差する第4方向に配列され、前記第1の層に属する前記第2部材と前記第2の層に属する第2部材とは、互いに接合されている。
【0007】
また、本発明に係るセル構造体の製造方法は、イオン伝導性を有する電解質と、前記電解質の両側に配置され電子伝導性を有する一対の電極と、を有するセル構造体の製造方法において、平板状に延びる第1部材を形成し、前記第1部材の少なくとも一方の面上に第1の分解プロセスにより分解する複数の第1樹脂部材を、第1の層においては、第1方向に延び、前記第1方向と交差する第2方向に所定の間隔を空けて配列させ、第2の層においては、前記第1方向と交差する第3方向に延び、前記第3方向と交差する第4方向に間隔をかけて配列させることにより、前記第1樹脂部材の井桁構造層を形成し、前記第1樹脂部材の井桁構造層の隙間に第2部材のスラリーを充填し、前記第1の分解プロセスにより前記第1樹脂部材を分解すると共に、前記第2部材を焼成することにより前記第1部材及び第2部材で前記電解質を形成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、固体酸化物形燃料電池等に適用可能なセル構造体によって、原材料の材料効率を改善させて反応場の三相界面を拡げ得る構造を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】固体酸化物形燃料電池(SOFC)の概略的な構成を示す図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る同セル構造体を概略的に示す斜視図である。
図3】同セル構造体の製造方法を示すフローチャートである。
図4】同セル構造体の変形例1を概略的に示す斜視図である。
図5】同セル構造体の変形例2を概略的に示す斜視図である。
図6】同セル構造体の変形例3を概略的に示す斜視図である。
図7】同セル構造体の変形例4を概略的に示す斜視図である。
図8】本発明の第2の実施形態に係るセル構造体を概略的に示す斜視図である。
図9】同セル構造体の製造方法を示すフローチャートである。
図10】同セル構造体の製造方法を説明する工程図である。
図11】同セル構造体の変形例1を概略的に示す斜視図である。
図12】同セル構造体の変形例2を概略的に示す斜視図である。
図13】同セル構造体の変形例3を概略的に示す斜視図である。
図14】同セル構造体の変形例4を概略的に示す斜視図である。
図15】本発明の第3の実施形態に係るセル構造体を概略的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施形態に係るセル構造体を詳細に説明する。ただし、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0011】
まず、本実施形態を説明する前に、一般的な燃料電池の構造について説明する。
図1は、固体酸化物形燃料電池(SOFC)の概略的な構成を示す図である。
図示のように、燃料電池10は、内部にセル構造体1を有する。セル構造体1は、イオン伝導性を有する電解質2と、この電解質2の両側に配置された電子伝導性を有する一対の電極3a,3bとを有する。電解質2はガスを遮断可能な遮断層を形成し、一方に酸素Oを含む空気、他方に燃料(例えば水素Hなど)が通る流路4a,4bを形成している。
【0012】
このように構成された燃料電池10では、流路4aに導入された空気中の酸素Oが、電解質2と電極3aとの三相界面で電極3aから電子を受け取ってイオン化される。酸素イオンは、電解質2を通り、電極3b側に移動する。一方、流路4bに導入された水素Hは、電解質2を介して伝送された酸化物イオンと反応して水(HO)や二酸化炭素(CO)を生成し、電極3bに電子を渡す。電極3aから電極3bへと流れる電子が、負荷に流れる電流を生成する。出力密度を高めるには、電解質2と電極3a,3bとガスとの三相界面を拡大することが有効である。
【0013】
[第1の実施形態]
次に、三相界面拡大を図った本実施形態に係るセル構造体11を、図2に基づいて説明する。なお、図2に示したものは、このセル構造体11のうちの電解質21の一方の側の構成のみである。電解質21の他方の側の構造及び電極3a又は3bの構造については任意である。
【0014】
セル構造体11を構成する電解質21は、ガスをシールドして遮断可能な平板状に形成された遮断層GBを形成する第1部材M1と、この第1部材M1の片面(図示の例では上面)側に接合された井桁構造層CSを形成する複数の第2部材M2とを備えて構成されている。なお、図2及びそれ以降の図面においては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や、一部の構成要素が省略されている場合がある。
【0015】
井桁構造層CSは、遮断層GB側から順に第1の層L1及び第2の層L2が繰り返される繰返し構造を有する。第2部材M2は、第1の層L1では、第1方向(例えば、図中X方向)を長手方向として連続的に延びると共に、第1方向と交差する第2方向(例えば、図中Y方向)に所定の隙間を空けて配列されている。
【0016】
一方、第2部材M2は、第2の層L2では、第1方向と交差する第3方向(例えば、図中Y方向)を長手方向として連続的に延びると共に、第3方向と交差する第4方向(例えば、図中X方向)に所定の隙間を空けて配列されている。より具体的には、第1の層L1及び第2の層L2における第2部材M2は、その交差部において直交するように、それぞれの層で平行に配置されている。なお、第1の層L1及び第2の層L2における第2部材M2は、その交差部において直交しないように配列するようにしても良い。
【0017】
これら第1の層L1の第2部材M2と第2の層L2の第2部材M2とは、第1方向、第2方向、第3方向及び第4方向と交差する第5方向(例えば、図中Z方向)で互いに接合されている。また、第1の層L1の第2部材M2は、第5方向で第1部材M1と接合されている。これにより、井桁構造層CSと遮断層GBとは、第5方向で接合され、固体電解質21は一体として構成される。
【0018】
本実施形態では、第1部材M1と第2部材M2とが同一の第1材料にて形成されている。第1材料としては、気密性を有する緻密構造を有し、イオン伝導性を有するものを用いることができる。例えば、第1材料として、無機物等の誘電体で、酸化アルミニウム、ジルコニア、炭化ケイ素、窒化ケイ素などのセラミックの粒子や、二酸化ケイ素、酸化ホウ素、五酸化二リン、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、酸化チタン等のガラスの原料となる物質を用いることができる。また、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)やセリア系酸化物やそれらの複合酸化物などの酸化物イオン導電性セラミックスも第1材料として用いることができる。
【0019】
なお、この電解質21に対向する電極3a又は3bの構造は、図示していないが、第2部材M2の隙間に挿入され、且つガスの流路となる隙間が確保される構造であれば、どのような構造でも良い。また、電極3a,3bがポーラス体であれば、電極3a,3b自体にガスの流路が形成されるので、電極3a,3bを全ての隙間に充填されるように形成することもできる。
【0020】
[セル構造体11の製造方法]
次に、上記のセル構造体11の製造方法について説明する。
電解質21を構成する第2部材M2として、所定方向に延びる糸状の部材を使用しているので、3Dプリンタを利用して製造することができる。3Dプリンタが第1材料を含むスラリーを取り扱うことができるものであれば、3Dプリンタで第1部材M1を形成したのちに、第2部材M2を井桁状に造形して、最後に焼成することにより、図2の電解質21を形成することができる。
【0021】
一方、3Dプリンタが第1材料のスラリーを取り扱うことができない場合には、例えばFDM(熱溶解積層方式)の3Dプリンタを利用して熱可塑性樹脂で井桁構造層を造形することにより、セル構造体11を製造することもできる。以下、この製造方法について説明する。
【0022】
図3は、この製造方法を示すフローチャートである。
まず、平板状に延びる第1部材M1による遮断層GBを形成する(S1)。第1部材M1は、第1材料とバインダからなるスラリーを図示しない塗布装置を使用して平面上に塗布したのち、乾燥させることにより、半硬化状態で形成することができる。
【0023】
次に、第1部材M1の一方の面上に、3Dプリンタによって、第1樹脂部材R1の井桁構造層を造形する(S2)。すなわち、第1樹脂部材R1を、第1の層L1においては、第1方向(X方向)に延び、第1方向と交差する第2方向(Y方向)に所定の間隔を空けて配列させ、第2の層L2においては、第1方向と交差する第3方向(Y方向)に延び、第3方向と交差する第4方向(X方向)に所定の間隔を空けて配列させる。この工程を所定回数繰り返すことにより、第1樹脂部材R1の井桁構造層を形成する。以下、この井桁構造層を第1井桁構造層A1(図示せず)と称する。
【0024】
第1樹脂部材R1としては、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリプロピレン樹脂、ナイロン樹脂、ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0025】
次に、第1井桁構造層A1の隙間に第1材料のスラリーを充填する(S3)。充填方法としては、種々考えられるが、例えば第1材料のスラリーを貯留したスラリー容器内に第1井桁構造層A1を浸漬させる方法によっても良い。
【0026】
次に、第1材料が充填された第1井桁構造層A1を乾燥させて第2部材M2を半硬化させる(S4)。これにより生成される第1樹脂部材R1と第1材料との複合体を、以下、第2井桁構造層A2(図示せず)と称する。
【0027】
最後に、第1部材M1と第2井桁構造層A2を焼成炉で焼成する(S5)。これにより、第1樹脂部材R1が分解消失して本実施形態の電解質21を得ることができる。
【0028】
なお、電解質2における遮断層GBの層厚や形状、或いは井桁構造層CSの積層数や第1部材M1及び第2部材M2の形状、大きさ等は例として図示したものであり、図示の構造に限定されるものではない。
【0029】
本実施形態に係るセル構造体11によれば、電解質21が井桁構造体を構成するので、電極3a又は3b及びガスとの三相界面を格段に向上させることができ、電池の出力密度が向上する。また、上記の電解質21は、3Dプリンタを用いて製造することが可能であるので、従来の塗布等と比較して、原材料の材料効率を改善させることが可能となる。
【0030】
[第1の実施形態の変形例1]
次に、第1の実施形態に係るセル構造体11の変形例1について説明する。
第1の実施形態のセル構造体11の電解質21では、遮断層GBの片面側に井桁構造層CSが接合されていたが、図4に示すように、変形例1のセル構造体11Aの電解質21Aは、遮断層GBの両面側にそれぞれ井桁構造層CSが接合されている点が、第1の実施形態とは相違している。
【0031】
この変形例1の電解質21Aは、第1部材M1の両側に3Dプリンタにより第1樹脂部材R1による第1井桁構造層A1を造形し、その後、第1井桁構造層A1の隙間に第1材料を充填することで形成することができる。
【0032】
このように、遮断層GBの両面側に井桁構造層CSが形成された変形例1のセル構造体1Aによれば、出力密度を更に向上させることが可能となる。
【0033】
[第1の実施形態の変形例2]
次に、第1の実施形態に係るセル構造体11の変形例2について説明する。
図5に示すように、変形例2のセル構造体11Bの電解質21Bは、井桁構造層CSを構成する第2部材M2が、遮断層GBに用いられた第1部材M1とは異なる材料である点が、第1の実施形態と相違している。変形例2では、第1部材M1が第1材料、第2部材M2が第2材料で形成されている。第1材料及び第2材料は、それぞれの特性や製造工程を考慮して、適切な材料を選択することができる。第1材料M1と第2材料M2とは、イオン伝導性を確保するために、互いに結合可能な材料であることが望ましい。
【0034】
なお、図示は省略するが、例えば遮断層GBの両面側に井桁構造層CSを形成しても良く、この場合は第1材料及び第2材料を適宜選択して遮断層GB及び両側の井桁構造層CSを形成することができる。また、遮断層GBを第2材料により形成し、井桁構造層CSを第1材料により形成することも可能であることは言うまでもない。このように構成すれば、上記の作用効果を奏することができると共に、電解質21Bである遮断層GB及び井桁構造層CSの材料選択の幅を広げることができる。
【0035】
[第1の実施形態の変形例3]
次に、第1の実施形態に係るセル構造体11の変形例3について説明する。
図6に示すように、変形例3のセル構造体11Cの電解質21Cは、遮断層GBを構成する第1部材M1がガス遮断性を有する緻密構造であるのに対し、井桁構造層CSを構成する第2部材M2がガス透過性を有するポーラス体により構成されている点が、第1の実施形態のセル構造体11とは相違している。また、この変形例3では、第1部材M1と第2部材M2とが、同一の第1材料にて形成されている。
【0036】
この変形例3によれば、第2部材M2がガス透過性を有しているので、電解質21C全体としてのガス透過性が良好である。このため、場合によっては、電解質21Cと電極3a又は3bとの間にガスの流路のための隙間を形成しなくても良く、その分空間効率が良好であり、且つ製造工程も容易になる。
【0037】
なお、図示は省略するが、例えば遮断層GBの両面側にポーラス体の第2部材M2を有する井桁構造層CSを形成しても良いことは言うまでもない。このように構成すれば、上記の作用効果を奏することができると共に、井桁構造層CSにおけるガス透過性を更に向上させることが可能となる。
【0038】
[第1の実施形態の変形例4]
次に、第1の実施形態に係るセル構造体1の変形例4について説明する。
図7に示すように、変形例4のセル構造体11Dの電解質21Dは、井桁構造層CSを構成する第2部材M2が、ガス透過性を有するポーラス体により構成されている点で、上記変形例3と同様であるが、第1部材M1と第2部材M2とが異なる材料にて形成されている点が上記変形例3と異なる。変形例4では、例えば第1部材M1が第1材料、第2部材M2が第2材料で形成されている。第1材料及び第2材料は、それぞれの特性や製造工程を考慮して、適切な材料を選択することができる。第1材料M1と第2材料M2とは、イオン伝導性を確保するために、互いに結合可能な材料であることが望ましい。
【0039】
なお、図示は省略するが、例えば遮断層GBの両面側にポーラス体の第2部材M2を有する井桁構造層CSを形成しても良く、この場合は第1材料及び第2材料を適宜選択して遮断層GB及び両側の井桁構造層CSを形成することができる。また、遮断層GBを第2材料により形成し、井桁構造層CSを第1材料により形成することも可能である。このように構成すれば、上記の作用効果を奏することができると共に、電解質21Dである遮断層GB及び井桁構造層CSの材料選択の幅を広げながら、井桁構造層CSにおけるガス透過性を更に向上させることができる。
【0040】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態に係るセル構造体12について説明する。なお、第2の実施形態以降の説明においては、第1の実施形態及びその変形例と同一の構成要素に関しては同一の符号を付しているので、以下では重複する説明は省略する。
【0041】
図8は、第2の実施形態に係るセル構造体12を示す斜視図である。図8に示すように、本実施形態に係るセル構造体12は、電解質22と電極31aとを有する。電解質22は、遮断層GBを構成する第1部材M1と、この遮断層GBの片面側に接合された井桁構造層CSの一部を構成する第2部材M2とを備えている。井桁構造層CSは、電解質22を構成する第2部材M2と、電極31aを構成する第3部材M3との複合体により構成されている。
【0042】
本実施形態においては、遮断層GBは、第1の実施形態と同様、板状に形成された第1部材M1により構成されているが、井桁構造層CSが、第1の実施形態における第2部材M2と、この第2部材M2に隣接して配置された、電極31aとなる電子輸送材料からなる第3部材M3とを備えている点で、第1の実施形態と相違している。
【0043】
具体的には、図8に示すように、井桁構造層CSは、第1の層L1及び第2の層L2の繰返し構造を有する。第1の層L1では、第2部材M2及び第3部材M3は、第1方向(X方向)を長手方向として連続的に延びると共に、第1方向と交差する第2方向(Y方向)において、一方の側では隣接し、他方の側では所定の隙間(例えば、第2部材M2又は第3部材M3の1本分の隙間)を空けて配列されている。
【0044】
一方、第2の層L2では、第2部材M2及び第3部材M3は、第1方向とは交差する第3方向(Y方向)を長手方向として連続的に延びると共に、第3方向と交差する第4方向(X方向)において、一方の側では隣接し、他方の側では所定の隙間を空けて配列されている。第1の層L1及び第2の層L2の隙間は、ガスの流路を形成する。
【0045】
これら第1の層L1の第2部材M2と第2の層L2の第2部材M2とは、第5方向(Z方向)で互いに接合されている。また、第1の層L1の第3部材M3と第2の層L2の第3部材M3も、第5方向(Z方向)で互いに接合されている。更に、遮断層GBに接する第2部材M2は、第5方向で遮断層GBと接合されている。
【0046】
なお、図8に示したものは、このセル構造体12のうちの電解質22の一方の側及び電極31aの構成のみである。電解質21の他方の側の構造及び電極31b(不図示)の構造については任意である。
【0047】
電極31a(空気極:カソード)は第3材料にて形成され、電極31b(燃料極:アノード)は第4材料にて形成される。第3材料としては、(La,Sr)MnO3, La,Sr(Co,Fe)O3, (La,Sr)NiO等の導電性セラミックスを用いることができる。第4材料としては、Ni-YSZサーメット等を用いることができる。
【0048】
[セル構造体12の製造方法]
次に、第2の実施形態に係るセル構造体12を製造する方法について説明する。
電解質22を構成する第2部材M2として、所定方向に延びる糸状の部材を使用しているので、3Dプリンタを利用して製造することができる。3Dプリンタが第1材料及び第3材料を含むスラリーを取り扱うことができるものであれば、3Dプリンタで第1部材M1を形成したのちに、第2部材M2及び第3部材M3を井桁状に造形して、最後に焼成することにより、図8の電解質22を形成することができる。
【0049】
一方、3Dプリンタが第1材料〜第3材料のスラリー又は粉体を取り扱うことができない場合には、第1の実施形態と同様に、例えばFDM(熱溶解積層方式)の3Dプリンタを利用して熱可塑性樹脂で井桁構造層を造形することにより、セル構造体12を製造することもできる。以下、この製造方法について説明する。
【0050】
図9は、この製造方法を示すフローチャートである。
まず、平板状に延びる第1部材M1による遮断層GBを形成する(S11)。第1部材M1は、第1材料とバインダからなるスラリーを図示しない塗布装置を使用して平面上に塗布したのち、乾燥させることにより、半硬化状態で形成することができる。
【0051】
次に、図10に示すように、第1部材M1の一方の面上に、3Dプリンタによって第1樹脂部材R1と第2樹脂部材R2の第3井桁構造層A3を造形する(S12)。すなわち、第1樹脂部材R1と第2樹脂部材R2とを、第1の層L1においては、第1方向(X方向)に延び、第1方向と交差する第2方向(Y方向)に一方の側面は密着させ、他方の側面は所定の間隔を空けて配列させ、第2の層L2においては、第1方向と交差する第3方向(Y方向)に延び、第3方向と交差する第4方向(X方向)に一方の側面は密着させ、他方の側面は間隔をかけて配列させる。この工程を所定回数繰り返すことにより、第1樹脂部材R1及び第2樹脂部材R2の第3井桁構造層A3を形成する。
【0052】
第1樹脂部材R1と第2樹脂部材R2とは、それぞれ異なる第1の分解プロセスと第2の分解プロセスにより分解するものである。具体的には、第1樹脂部材R1として、例えばポリエチレン樹脂(PE)、第2樹脂部材R2として例えば水溶性PVAを用いることができる。
【0053】
続いて、第3井桁構造層A3の隙間に第1材料を含むスラリーを充填する(S13)。充填方法としては、種々考えられるが、例えば第1材料のスラリーを貯留したスラリー容器内に第3井桁構造層A3を浸漬させる方法によっても良い。
【0054】
次に、第1材料が充填された第3井桁構造層A3を乾燥させて第2部材M2を反硬化させる(S14)。これにより、図10(b)に示すような第4井桁構造層A4が形成される。
【0055】
次に、第4井桁構造層A4を、所定の温度の湯に所定時間浸漬して第2樹脂材料R2を分解除去する(S15)。これにより、図10(c)に示すように、第4井桁構造層A4から第2樹脂材料R2が除去された第5井桁構造層A5を得る。
【0056】
続いて、第5井桁構造層A5の隙間に、第3材料の粉体又はスラリーを充填して、図10(d)に示すように、第5井桁構造層A5と第3材料との複合体である第6井桁構造層A6を得る(S16)。
【0057】
最後に、第1部材M1と第6井桁構造部A6を焼成炉で焼成する(S17)。これにより、図10(e)に示すように、第1樹脂材料R1が分解消失し、本実施形態のセル構造体12が得られる。
【0058】
なお、セル構造体12における遮断層GBの積層数、層厚や形状、或いは井桁構造層CSの積層数における第2部材及び第3部材の形状、大きさ、配列態様等は例として図示したものであるので、図示の構造に限定されるものではない。このような構造を有するセル構造体12は、例えば固体酸化物形燃料電池のセルとして利用することが可能である。
【0059】
すなわち、セル構造体12の井桁構造層CSは、例えばガスがX,Y,Zのいずれの方向にも通過可能であると共に、このガスと接する電解質22(第1部材M1及び第2部材M2)及び電子輸送材料である電極31a(第3部材M3)の三相界面を、単位体積当たり広くすることが可能となる。これにより、固体酸化物形燃料電池の電極として用いた場合、反応場の三相界面を拡げることが可能となる。また、3Dプリンタを用いて製造することができるので、塗布等の製造方法によるものと比較して、原材料の材料効率を改善させることができる。
【0060】
[第2の実施形態の変形例1]
次に、第2の実施形態に係るセル構造体12の変形例1について説明する。
第2の実施形態のセル構造体12では、電解質22を構成する遮断層GBを平板状の第1部材M1によって形成していたが、変形例1のセル構造体12Aでは、図11に示すように、電解質22Aを構成する遮断層GBが3Dプリンタ等で供給される糸状の第1部材M1を隙間無く配置することによって形成されている。
【0061】
より具体的には、遮断層GBは、糸状の第1材料部材M1を平行に整列させて密着配置すると共に、第1部材M1の長手方向を上下で90度回転させて上下に重ねて板状にしたものである。この遮断層GBは、第1材料を含んだスラリーを、例えば3Dプリンタ等によって、電解質収縮を防ぐように所定温度に加熱しながら1層目はX方向を長手方向として延ばしつつY方向に隙間なく配列し、2層目はY方向を長手方向として延ばしつつX方向に隙間なく配列することにより、ガスを遮断可能な気密性を有する緻密構造の筏形状に成形することにより造形される。
【0062】
この変形例1によれば、全ての工程を3Dプリンタで行えるので、より製造コストを抑えることができる。
【0063】
[第2の実施形態の変形例2]
次に、第2の実施形態に係るセル構造体12の変形例2について説明する。
図12(a)は、変形例2のセル構造体12Bを示す斜視図であり、同図(b)はそのうち電極31a,31bのみの斜視図であり、同図(c)は電解質22Bのみの斜視図である。
第2の実施形態の変形例1のセル構造体12Aでは、遮断層GBの片面側に井桁構造層CSが接合されていたが、図12(a)に示すように、変形例2のセル構造体12Bは、遮断層GBの両面側にそれぞれ井桁構造層CSが接合されている点が、第2の実施形態の変形例1と相違している。遮断層GBの一方の側(上部側)のガス流路には酸素(O)を含む空気が導入され、他方の側(下方側)のガス流路には、水素(H)を含む燃料ガスが導入される。反応後に生成される水(HO)は、下方側のガス流路から外部に排出される。
【0064】
このように、遮断層GBの両面側に井桁構造層CSが形成された変形例1のセル構造体12Bによれば、井桁構造層CSを構成する電極31a,31bを、固体酸化物形燃料電池の空気極及び燃料極として、それぞれ作用させることが可能となる。具体的には、図12(b)に示すように、井桁構造層CSの電極31a,31bを、電子輸送材料の観点から見た場合、電極31a,31bをそれぞれ構成する第3部材M3が全て繋がった構造となっているため、電極31a,31bに孤立点はなく、良好なインピーダンスで電子を輸送可能となっている。
【0065】
また、図12(c)に示すように、井桁構造層CSの電解質22Bを、イオン伝導体の観点から見た場合、電解質22Bを構成する第1部材M1及び第2部材M2は、全て繋がった構造となっているため、酸化物イオンを特段の抵抗なく輸送することが可能になっている。そして、このように構成されたセル構造体12Bを、固体酸化物形燃料電池として用いれば、原材料の材料効率を改善させるのみならず、反応場の三相界面を拡げることができるので、出力密度を向上させることが可能となる。
【0066】
[第2の実施形態の変形例3]
次に、第2の実施形態に係るセル構造体12の変形例3について説明する。
図13に示すように、変形例3のセル構造体12Cは、遮断層GBの片面側に井桁構造層CSが接合されている点では、第2の実施形態の変形例1に係るセル構造体12Aと同様である。しかし、変形例3のセル構造体12Cは、井桁構造部CSの電極32Caを構成する第3部材M3が、ガス透過性を有するポーラス体からなる電子輸送材料により構成されている点が、第2の実施形態の変形例1のセル構造体12Aとは相違している。
【0067】
なお、図示は省略するが、例えば遮断層GBの両面側に、図13と同様の井桁構造層CSを形成しても良いことは言うまでもない。また、井桁構造層CSを構成する第2部材M2をポーラス体により構成するようにすることもできる。このように構成すれば、上記の作用効果を奏することができると共に、井桁構造層CSにおけるガス透過性を更に向上させることが可能となる。
【0068】
[第2の実施形態の変形例4]
次に、第2の実施形態に係るセル構造体12の変形例4について説明する。
図14(a)に示すように、変形例4のセル構造体12Dは、遮断層GBの両面側にそれぞれ井桁構造層CSが接合されている点が、変形例2のセル構造体12Bと同様であるが、井桁構造層CSを構成する第2部材M2及び第3部材M3のレイアウトが変形例2のセル構造体12Bとは相違している。
【0069】
すなわち、変形例4のセル構造体12Dは、井桁構造層CSの第2部材M2と第3部材M3とを、第5方向(Z方向)にいわゆる縦積みのレイアウトで配置されている。この変形例4でも、図14(b)に示すように、電極32Da,32Dbを構成する第3部材M3は、それぞれ第5方向に全て繋がっているため、孤立点なく良好なインピーダンスで電子を輸送できる。また、図14(c)に示すように、電解質22Dを構成する第2部材M2は、第5方向に全て繋がっているため、酸化物イオンを特段の抵抗なく輸送することができる。このように、変形例4のレイアウト構造の井桁構造層CSを有するセル構造体12Dによっても、上記の作用効果を奏することができる。
【0070】
[第3の実施形態]
次に、第3の実施形態に係るセル構造体13について説明する。
図15に示すように、本実施形態に係るセル構造体13は、遮断層GB上の井桁構造層CSの第2部材M2と第3部材M3とが、各層において隙間なく隣接して配置されている点が、第2の実施形態のセル構造体12とは相違している。ここで、第3部材M3は、ポーラス体であり、内部にガス流路を形成することができる。
【0071】
なお、図示は省略するが、例えば第2部材M2をポーラスにする、又は第2部材M2と第3部材M3の両方をポーラスにし、遮断層GBの両面側に、第2部材M2及び第3部材M3を隙間なく隣接させて配置した井桁構造層CSを含むセル構造体を形成しても良い。このような構成によれば、ガスは第3部材M3又は第2部材M2を通過して反応場に到達することができるので、単位体積当たりの三相界面をより広げることが可能となる。また、このセル構造体13によっても、上記の作用効果を奏することができる。
【0072】
[その他の実施形態]
その他、図示は省略するが、上述したセル構造体11〜13を二次電池の電極構造として採用したり、上述したセル構造体12又は13を燃料電池の電極構造として採用することが可能である。このような電極構造を備えた二次電池では、蓄電効率が向上したり、コンパクト設計が可能になったりする。また、このような電極構造を備えた燃料電池では、単位体積当たりの三相界面を広げて出力密度を向上させ、原材料の材料効率を改善させることができる。
【0073】
また、前述したように、例えば樹脂材料を、井桁構造層CSを形成するためのネガ要素のフレーム構造として利用するようにすると、従来造形が困難であった電解質及び電極を井桁構造に造形することができ、これらの材料の井桁構造を有するセル構造体を、燃料電池や二次電池で使用することが可能となる。
【0074】
以上、本発明のいくつかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0075】
1,11〜13 セル構造体
2,21〜23 電解質
3a,3b,31〜33 電極
4a,4b 流路
A1〜A6 井桁構造層
GB 遮断層
CS 井桁構造層
M1 第1部材
M2 第2部材
M3 第3部材
R1 第1樹脂部材
R2 第2樹脂部材
【要約】
セル構造体は、イオン伝導性を有する電解質と、前記電解質の両側に配置され電子伝導性を有する一対の電極と、を有するセル構造体において、前記電解質が、前記一対の電極を分離する第1部材と、前記第1部材の少なくとも一方の側に接合され、井桁構造層の少なくとも一部を構成すると共に、前記第1部材から順に第1の層及び第2の層を形成する複数の第2部材とを備え、前記第2部材が、前記第1の層において、第1方向に延び、前記第1方向と交差する第2方向に配列され、前記第2の層において、前記第1方向と交差する第3方向に延び、前記第3方向と交差する第4方向に配列され、前記第1の層に属する前記第2部材と前記第2の層に属する第2部材とは、互いに接合されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15