【実施例1】
【0015】
本発明に関わる光学式内面測定装置の実施形態について説明する。
図1〜
図9は本発明に係る光学式内面測定装置の実施形態を示している。
【0016】
図1は本発明の実施の形態に係る光学式内面測定装置の構成図である。測定機ベース80にスタンド81が固定され、スライダ用モータ83によりスライダ82が光プローブ20と共に上下に移動する。被検査物100はワーク角度調整機15とワークXYスライダ16により取付位置と角度が調整され、測定機ベース80上にセットされており、光プローブ20は被検査物100の深穴100aに出入りするよう構成されている。回転側光ファイバー2は振れ検出センサ14a、14bにより回転中の振れ量が検出され、またリニヤスケール22はスライダ82または光プローブ20の上下方向(Z軸方向)の位置を検出している。測定機本体85で発光した近赤外光またはレーザ光等の光線は、光路変換4から放出され被測定物内面100aで反射し、この反射光は回転側光ファイバー2に導かれモータケース9内とチューブ5bの中を通過し、さらに測定機本体85の接続部84を通過して、光干渉解析部88に入り、コンピュータ89で解析してモニタ90に画像もしくは測定数値を表示する。
【0017】
図2は本発明の実施形態に係る光学式内面測定装置の光プローブ20の先端部断面図である。光プローブ20の後端側から先端側に光線を導く固定側光ファイバー1は十分に長いチューブ5bの内部に挿通され、光ファイバー固定具17により固定されている。回転側光ファイバー2は直接又は間接的に接合された光ファイバー2a、2b、2cによって構成されている。固定側光ファイバー1の先端側には、回転側光ファイバー2(2a、2b、2c)が回転自在に配置され、回転側光ファイバー2のさらに先端側には略半球状や略円筒状のプリズム等からなる光路変換手段4aが一体的に取り受けられ、モータ12により回転する事で光線を360度の全周方向に放射するよう構成されている。
【0018】
回転側光ファイバー2と固定側光ファイバー1のそれぞれの平滑な端面は5ミクロン程度の微小距離を隔てて対向し、回転遮光板18、光ファイバー固定具17を含めて回転光ジョイント19を構成し、回転側光ファイバー2と固定側光ファイバー1の間は高い透過率が維持でき、ほとんど損失なく光学的に接続されている。
【0019】
モータ12は、モータケース9にモータコイル8、軸受10a、10bが固定され、モータ磁石7が取り付けられた中空回転軸6が軸受10a、10bに回転自在に支持されている。モータコイル8には電線11から電圧が印加され、回転する中空回転軸6の穴には回転側光ファイバー2aが挿通固定され回転可能にし、回転側光ファイバー2aと光路変換手段4aの間には、光ファイバーとは屈折率が異なりかつ透光性のある石英等の材質で形成された透光性平板3が固定され、必要に応じて回転側ファイバー2b、2cを接合して光路を形成している。回転側光ファイバー2または、光路変換手段4aの回転振れは振れ検出センサ14a、14bにより検出され、その信号はコンピュータ89に送られている。
【0020】
図2のモータ12には
図1に示す回転モータドライバ回路86から電力が供給されて回転駆動され、スライダ用モータ83はスライドモータドライバ回路87から電圧が印加されて回転駆動される。
【0021】
次に上述した
図2の光プローブ12を用いた
図1の光学式内面測定装置について、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
【0022】
図1および
図2において測定機本体85内から発光された光線はチューブ5bに内蔵された固定側光ファイバー1の中を通過して進む。電線11から電力が供給され、モータ12が回転すると、導かれた光線は回転光ジョイント19と回転側光ファイバー2、透光性平板3を通過し,光路変換手段4aから略直角方向に放出される。光線は被検査物内周面100aの表面で反射し、この反射光は上記と同じ光路を逆方向に、光路変換手段4a⇒回転側光ファイバー2⇒回転光ジョイント19⇒固定側光ファイバー1を通過して光干渉解析部88に導かれる。
【0023】
図3は測定機本体85の光測定解析部88の信号をコンピュータ89が解析した結果の一例であり、距離と信号出力(光量)関係を示している。図中L1は固定側ファイバー1から見て透光性平板3までの距離、図中L2は透光性平板3の先端側面までの距離、L3は被測定内面100aまでの距離を示す取得波形である。
【0024】
本発明の光学式内面測定装置において、被測定内面100aの内径測定を行う手順は次のとおりである。
【0025】
まず、測定を行う前の準備として校正(キャリブレーション)を行う。
図4はこの光学式内面測定装置を使う前の準備として、測定値の校正に用いるボアゲージ21を示している。ボアゲージ21の内径に光プローブ20の先端の光路変換手段4aを侵入させ、光線を回転放射し、内面100aまでの距離(図中R0deg、R180deg)を計測し、ボアゲージ21の内径寸法Dtによってその光プローブ20の校正値を求める。校正値は具体的には
図8に示すようなディジタルデータである。このような校正は1ケ月に1回程度定期的に行うものであり、その数値の計算方法は、次のとおりである。
<記号の説明>
・ボアゲージ21内径 Dt [mm]
・XY振れセンサ14検出量 Δrx、Δry [mm]
・光プローブ回転角 θ [mm]
・リニヤスケール20 Z方向位置 Z [mm]
・装置85検出距離 R=(L3−L2)[mm]
・光プローブ20検出距離 L1, L2, L3 [mm]
<校正(キャリブレーション)方法(計算式)>
・校正値 : Lc [mm]
・θ=0degにおいて R0deg = (L3−L2)−Lc
・θ=180degにおいてR180deg=(L3’−L2’)−Lc
・Dt=R0deg−R180deg
・Dt=(L3
-0deg−L2
-180deg)−(L3
-180deg−L2
-0deg)−2×Lc
・Lc=Dt−((L3
-0deg−L2
-180deg)+(L3
-180deg−L2
-0deg))
・ベクトル振れ量 e=√(ex^
2+ey^
2)
Z=0〜Z[mm]の間で校正値(Lc)の数値を校正データとしてコンピュータに記憶させる。
【0026】
校正が終わると次に測定を開始する。
図5は本光学式内面測定装置において、光プローブ20に内蔵されたモータ12の軸振れにより生じる回転側光ファイバー2の振れ量と、被測定物内面100aの位置関係を示している。被測定物内面100aに光プローブ20の光路変換手段4a挿入し、モータ12を回転させ光線を回転放射し反射光を検出する。光路変換手段4aおよび回転側光ファイバー1は回転しつつ図中、記号Δrに示すように振れながら回転するため、この回転振れを振れ検出センサ14a、14bが検出している。
【0027】
図6は光プローブ20の先端部(回転側光ファイバー2又は光路変換手段4a)の回転振れ量(e)と求める半径距離(R)の補正計算方法を図示している。図中exとeyは振れ検出センサ14a、14bの出力、eはその振れのベクトル値を計算し表示している。図中Sは光学内面測定機が求めた内面100aまでの距離、図中Rはこの測定距離Sに、振れ検出センサ14a、14bのデータを用いて補正した後の正しい寸法値である。このように求めた内面100aの形状と内接円Dinと外接円Doutの直径は
図7に示す。
【0028】
ここで、実測値(R)の算出方法は次の式のとおりである。
<実測方法>
・実測値は R=(L3−L2)−e−Lc [mm]
この半径距離R[mm]のデータを360度全周取得することで
図7に示す内接円(Din)と外接円(Dout)の値を求め、モニタ90に表示される。
【0029】
この構成により、光プローブ20aの先端が0.1ミリメートルオーダの細径に構成することが可能であり細径ノズル内周面の測定が可能になる。また、透光性平板3を基準に被測定物内周面100aまでの距離を求めることで、光学系の温度等による変動または光学系のゆらぎ変動が測定値から排除でき、また、振れ検出センサの出力を用いて光路変換手段4aの回転振れ(実際には回転側光ファイバー2の振れ量を検出して光路変換手段4aの回転振れを類推している。)を除外することができるため、
図9の測定値ばらつきデータに示すように、ばらつきが少ない高精度な内周面の測定が可能になる。このようにばらつきが少ないシャープな測定分布が得られるのは、先に説明した光学系ゆらぎの影響と回転側光ファイバー2の振れを排除しているからである。
【実施例2】
【0030】
図10は本実施例の光学式面測定装置の光プローブ20bを示している。
図10においては、モータ12により回転する回転側光ファイバー2a、2cの先端に、回転側光ファイバー2とは屈折率が異なりかつ透光性の例えば石英等で加工したプリズム等からなるが光路変換手段4bが接合されている。従って回転側光ファイバー2a、2cを進行してきた光線の一部は光路変換手段4bと回転側光ファイバー2cとの接合面から反射して測定機本体85側に戻され、残りの大半の光線は被測定内面100aに略直角方向に照射され、その反射光が同様に測定機本体85側に戻される。
【0031】
図10において、その他の構成と機能、および動作は
図2の光プローブと同じである。尚、
図1、
図2、
図10において、スライダ用モータ83によりスライダ82および回転側光ファイバー2cと共に光路変換手段4a、4bが図中矢印Z方向に上下し、被測定物内面100aにおいて複数の箇所の内周面を計測する事で、直径、真円度、円筒度、被測定物内面100aに対するスライダ82の傾斜角度を算出し、モニタ90に表示することができる。
【0032】
図2と
図10において先端部の回転側光ファイバー1の直径は約80マイクロメートル、モータ12の中空回転軸6の中に挿通される部分の回転側光ファイバー2aの直径は約125マイクロメートルである。
【0033】
図2および
図10に示される中空回転軸6は、金属またはセラミックス材料からなり、溶融金属のダイによる引き抜き加工か、または焼成前のセラミックスのダイによる押し出し加工で中空に成形され、硬化処理後に研磨加工法等により仕上げ加工される。
【0034】
本発明によれば、被測定物の観察および測定を行う光学式内面測定装置において、従来、測定できなかった直径0.1ミリメートルオーダの細穴内面の測定が、光学系のゆらぎの影響とモータ軸振れの影響を排除して、正しく精密に行うことが可能である。