(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
天井に形成される開口に取り付けられる方形状の外枠と、上記外枠内に開閉可能に設けられる方形状の内枠と、上記外枠に対して上記内枠を開閉する開閉機構と、を具備する天井点検口であって、
上記開閉機構は、上記内枠を構成する内枠部材の対向する両内枠部材の長手方向に沿って該内枠部材の垂直壁に設けられる一対のスライド溝内を長手方向に転動可能な2個のローラと、これらローラを一端側に並列して枢着し、他端側に、上記外枠の対向する両内側面に設けられた回動軸受け部に着脱及び回動可能に係合する回動軸を突設するスライドバーと、を具備する、
ことを特徴とする天井点検口。
【背景技術】
【0002】
従来、天井に形成された開口に取り付けられる方形状の外枠と、該外枠内に開閉可能に設けられる方形状の内枠とを目地状に形成した、いわゆる目地タイプの天井点検口が存在する。この目地タイプの天井点検口は、点検口の存在をあまり主張しない製品として市場に受け入られている。
【0003】
従来のこの種の目地タイプの天井点検口として、方形状の外枠の1辺内側面に設けられる軸受け部材にコ字形連結部を有する連結金具の一方を回転自在に差し込み連結し、連結金具の他方を内枠の対向する外側面に設けられる軸受け金具差し込み連結する構造の開閉機構を備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかし、特許文献1に記載の天井点検口においては、連結金具の外枠の連結部を回転中心として内枠と外枠の干渉を避けて開閉可能とするため、内枠と外枠の目地間をやや広く取らざるを得ず、目地部の隙間を十分に狭くするには限度がある。
【0005】
一方、開閉機構にスライドアームを有する天井点検口が知られている(例えば、特許文献2参照)。
特許文献2に記載の天井点検口は、内枠を構成する対向側板の長さ方向一端から突出する方向にスライド自在な板状のアームの先端に設けた軸体を外枠の対向側板の長さ方向に形成した案内溝に移動自在に係合させて外枠に支持する構造である。
【0006】
特許文献2に記載の開閉機構によれば、内枠を開放する際、軸体を中心として回動すると共に、アームが内枠の長さ方向にスライドするため、内枠と外枠の干渉を避けて開閉することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に記載の技術においては、板状のアームが内枠の外面に装着したガイド部材内でスライドするもので、ガイド部材は断面略ハット状の部材であるため、摩擦抵抗によってスライドがスムーズでない虞がある。アームのスライドをスムーズにするために、アームをガイド部材に遊びをもたせると、内枠を閉じた状態で内枠が垂れ下がる懸念がある。
【0009】
また、内枠を取り外す必要上、軸体を案内溝に着脱及び移動自在に係合させる場合、開放時に軸体が案内溝から抜け易い虞もある。
【0010】
また、特許文献2に記載の天井点検口は目地タイプではなく、閉じた状態では、外枠の下端外周に設けられた鍔部に、内枠の下端に設けられた外側鍔部が重なるタイプであり、外枠と内枠との隙間に関しては言及されていない。
【0011】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、内枠と外枠の干渉を回避して目地部の隙間を狭くでき、内枠の開閉をスムーズに行えるようにし、かつ、内枠の垂れ下がりを防止できるようにした天井点検口を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、この発明は、天井に形成される開口に取り付けられる方形状の外枠と、上記外枠内に開閉可能に設けられる方形状の内枠と、上記外枠に対して上記内枠を開閉する開閉機構と、を具備する天井点検口であって、上記開閉機構は、上記内枠を構成する内枠部材の対向する両内枠部材の長手方向に沿って該内枠部材の垂直壁に設けられる一対のスライド溝内を長手方向に転動可能な2個のローラと、これらローラを一端側に並列して枢着し、他端側に、上記外枠の対向する両内側面に設けられた回動軸受け部に着脱及び回動可能に係合する回動軸を突設するスライドバーと、を具備する、ことを特徴とする(請求項1)。
【0013】
このように構成することにより、内枠の開放時に、内枠は回動軸を中心として回動すると同時に、2個のローラがスライド溝内を転動してスライドバーが内枠の長手方向端部に突出することで、内枠は外枠に干渉せずに開放される。また、内枠を閉じた状態においては、スライドバーは内枠のスライド溝側に収納され、スライドバーの一端側の2個のローラと他端側の回動軸とによって内枠は外枠内に収納される。
【0014】
この発明において、上記2個のローラのうちの端部側の一方のローラは、上記スライド溝の長手方向に沿う中心線よりも下方に位置し、他方のローラは、上記中心線よりも上方に位置しているのが好ましい(請求項2)。
【0015】
このように構成することにより、内枠を閉じた状態において、内枠及び内枠に取り付けられる天井仕上げ材等の自重が加わった場合、端部側の一方のローラはスライド溝の下面に当接し、内側に位置する他方のローラはスライド溝の上面に当接するので、内枠及び内枠に取り付けられる天井仕上げ材等の自重によって内枠が外枠から垂れ下がるのを確実に防止することができる。
【0016】
また、この発明において、上記内枠部材は、上記スライド溝より内方側に位置する挿入溝内に挿入されるアングル状のコーナー部材によって連結され、上記コーナー部材に設けられる第1のストッパ片が上記他方のローラに当接可能に形成され、上記挿入溝に設けられる第2のストッパ片が上記一方のローラに当接可能に形成されているのが好ましい(請求項3)。この場合、上記スライドバーの他端部に、上記第1のストッパ片と干渉しない延在部が設けられているのが好ましい(請求項4)。
【0017】
このように構成することにより、内枠にローラが転動可能なスライド溝と、該スライド溝の内側に位置する挿入溝との2条の溝が形成されるので、スライド溝内を転動するローラが内枠の垂直壁に取り付けられる部材、例えば天井仕上げ材を取り付ける押え部材の固定部材との干渉を防止することができる。また、内枠の開放時にスライドバーが内枠の長手方向端部から突出したとき、コーナー部材に切り起こされた第1のストッパ片に内側の他方のローラが当接することで、スライドバーの突出量の位置規制と内枠から抜け出るのを防止することができる。更に、内枠を閉じた状態において、挿入溝に切り起こされる第2のストッパ片に端部側の一方のローラが当接することで、スライドバーが必要以上に内枠の内方側に移動するのを防止することができる。
【0018】
この場合、上記スライドバーの他端部に、内枠を閉じた状態において、上記第1のストッパ片よりも長く、第1のストッパ片と常に重なるように形成されることにより、上記第1のストッパ片と干渉しない延在部を設けることで、内枠の開放始動時にスライドバーが第1のストッパ片に干渉することなく移動することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の天井点検口において、上記回動軸受け部は、上記回動軸より大径の着脱孔部と、該着脱孔部と連通する、上記回動軸がスライド及び回動可能な枢支孔部とからなる、ことを特徴とする。
【0020】
このように構成することにより、内枠を取り付ける場合は、回動軸を着脱孔部内に挿入して、回動軸を枢支孔部に移動し、また、内枠を取り外す場合は、上記と逆の操作によって回動軸を着脱孔部から取り外すことができる。また、内枠を開放する際、内枠が外枠に対して90度以上回動して天井部に衝突する衝撃を、回動軸が枢支孔部において着脱孔部側に移動することで緩衝することができる。
【0021】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の天井点検口において、上記回動軸受け部は、上記回動軸より大径の着脱孔部と、該着脱孔部と連通する、上記回動軸がスライド及び回動可能な先端が上記着脱孔部側に向かう略コ字状の枢支孔部とからなる、ことを特徴とする。
【0022】
このように構成することにより、内枠を取り付ける場合は、回動軸を着脱孔部内に挿入して、回動軸を枢支孔部に移動し、また、内枠を取り外す場合は、上記と逆の操作によって回動軸を着脱孔部から取り外すことができる。また、内枠を開放する際、内枠が外枠に対して90度以上回動して天井部に衝突する衝撃を、回動軸が枢支孔部において着脱孔部側に移動することで緩衝することができる。また、枢支孔部が着脱孔部側に向かう略コ字状に形成されることで、内枠の開放時に回動軸が不用意に抜け出るのを確実に防止することができる。
【0023】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載の天井点検口において、 上記内枠が上記外枠内に収納された状態で、上記内枠をロックするロック機構を更に具備し、上記ロック機構は、上記内枠部材の上部垂直壁に沿ってスライド可能な第1の垂直片と、上記内枠部材と上記外枠の垂直壁との隙間においてスライド可能な第2の垂直片と、上記隙間より下方に突出する上記第2の垂直片の下端に設けられる摘み部と、上記第1の垂直片の外側に突出する係止突部とが一体に形成された合成樹脂製の係止部材と、上記外枠の垂直壁の内側に突設される、上記係止突部が係脱可能な係止受け部と、からなり、上記内枠部材の下端に上記外枠の内側面に近接する肉厚部が設けられ、該肉厚部に上記係止部材の第2の垂直片がスライド可能な切欠部が設けられている、ことを特徴とする。
【0024】
このように構成することにより、ロック機構を構成する係止部材を、内枠部材の下端の肉厚部に設けられた切欠部内でスライドさせて、係止部材に突設された係止突部を外枠に設けられた係止受け部に係脱可能にすることができる。したがって、内枠と外枠の隙間を広げることなくロック機構の係止部材を取り付けることができる。
【0025】
請求項8に記載の発明は、請求項1ないし7のいずれかに記載の天井点検口において、上記外枠を構成する外枠部材は、天井板を支持する外向き鍔部を有する断面略クランク状に形成され、上記内枠部材は、天井仕上げ材を取り付ける収納部を有する断面略クランク状に形成され、上記外枠部材は、上記外向き鍔部の上面に上記天井板と密接する第1のパッキンが貼着されると共に、クランク部の内面に上記内枠部材のクランク部の外面に密接する第2のパッキンが貼着され、上記内枠部材のクランク部の内面に上記天井仕上げ材に密接する第3のパッキンが貼着されている、ことを特徴とする。
【0026】
このように構成することにより、内枠と外枠との間の気密性が図れると共に、外枠と天井板間、及び内枠と天井仕上げ材間の気密性の維持が図れる。
【発明の効果】
【0027】
この発明によれば、上記のように構成されているので、以下のような優れた効果が得られる。
【0028】
(1)請求項1に記載の発明によれば、内枠の開閉時に、内枠は回動軸を中心として回動すると同時に、2個のローラがスライド溝内を転動してスライドバーが内枠の長手方向端部に出没することで、内枠と外枠の干渉を回避して目地部の隙間を狭くでき、内枠の開閉をスムーズに行うことができる。また、内枠を閉じた状態においては、スライドバーは内枠のスライド溝側に収納され、スライドバーの一端側の2個のローラと他端側の回動軸とによって内枠は外枠内に収納されるので、内枠の垂れ下がりを防止できる。
【0029】
(2)請求項2に記載の発明によれば、上記(1)に加えて、更に内枠及び内枠に取り付けられる天井仕上げ材等の自重によって内枠が外枠から垂れ下がるのを確実に防止することができる。
【0030】
(3)請求項3に記載の発明によれば、上記(1),(2)に加えて、更にスライドバーの突出量の位置規制と内枠から抜け出るのを防止することができると共に、スライドバーが必要以上に内枠の内方側に移動するのを防止することができる。この場合、スライドバーの他端部に、第1のストッパ片と干渉しない延在部が設けることで、内枠の開放始動時にスライドバーが第1のストッパ片に干渉することなく移動することができ、内枠の開放をスムーズにすることができる(請求項4)。
【0031】
(4)請求項5,6に記載の発明によれば、上記(1)〜(3)に加えて、更に内枠の着脱を容易にすることができると共に、内枠が天井部に衝突する衝撃を緩衝することができる。また、枢支孔部が着脱孔部側に向かう略コ字状に形成されることで、内枠の開放時に回動軸が不用意に抜け出るのを確実に防止することができる(請求項6)。
【0032】
(5)請求項7に記載の発明によれば、上記(1)〜(4)に加えて、更に内枠と外枠の隙間を狭く維持した状態で、ロック機構を設けることができる。
【0033】
(6)請求項8に記載の発明によれば、上記(1)〜(5)に加えて、更に内枠と外枠との間の気密性が図れると共に、外枠と天井板間、及び内枠と天井仕上げ材間の気密性の維持が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】この発明に係る天井点検口の閉じた状態を示す要部断面図である。
【
図2】この発明に係る天井点検口の開放途中の状態を示す要部断面図である。
【
図3】この発明に係る天井点検口の開放状態を示す要部断面図である。
【
図4】この発明に係る天井点検口の開放の最大限の状態を示す要部断面図である。
【
図5】この発明における外枠と内枠の開閉機構を示す斜視図である。
【
図6】この発明に係る天井点検口の閉じた状態の外枠と内枠及び開閉機構を示す横断面図である。
【
図7】この発明における外枠と天井板、外枠と内枠及び内枠と天井仕上げ材の気密構造を示す断面図である。
【
図8】この発明におけるローラ、スライドバー及び回動軸を示す斜視図である。
【
図8A】この発明におけるローラ、スライドバー及び回動軸を示す正面図(a)、平面図(b)、(a)のI−I線に沿う拡大断面図(c)及び(a)のII−II線に沿う拡大断面図(d)である。
【
図9】上記ローラ、スライドバー及び回動軸を内枠に取り付ける手順を示す側面図である。
【
図10】上記ローラ、スライドバー及び回動軸を内枠に取り付ける前の状態を示す斜視図(a)及び取付後の状態を示す斜視図(b)である。
【
図11】この発明の第1実施形態における回動軸受け部と回動軸の関係を示す側面図である。
【
図12】この発明の第2実施形態における回動軸受け部と回動軸の関係を示す側面図である。
【
図13】この発明におけるロック機構を示す断面図である。
【
図14】上記ロック機構を構成する係止部材の取付状態を示す斜視図である。
【
図15】この発明における係止受け部材の正面図(a)及び側面図(b)である。
【
図16】上記係止受け部材を外枠に取り付ける手順を示す断面図である。
【
図17】この発明における内枠に天井仕上げ材と天井下地材を取り付ける状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に、この発明に係る天井点検口の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
上記天井点検口1は、
図1ないし
図7に示すように、天井2に形成された方形状の開口2a内に取り付けられる方形状の外枠10と、外枠10内に開閉可能に設けられ、積層された天井下地材4と天井仕上げ材3の外周に取り付けられる方形状の内枠20と、外枠10に対して内枠20を開閉する開閉機構30と、内枠20が外枠10内に収納された状態で、内枠20をロックするロック機構50と、を具備している。
【0036】
外枠10は、4本のアルミニウム製形材にて形成される外枠部材11をアングル状のコーナー部材17によって連結されて方形状に形成されている。外枠10を構成する外枠部材11は、天井板5を支持する外向き鍔部12を有する断面略クランク状に形成されている。
【0037】
この場合、外枠部材11は、下端に外向き鍔部12を有する下部垂直壁13と、下部垂直壁13の上端から内方側に屈曲する水平壁14と、水平壁14の先端から直交状に起立する上部垂直壁15とからなる断面略クランク状に形成されている。また、上部垂直壁15と、上部垂直壁15の上端から外側に向かって横L字状に突出する突出部16a及び水平壁14の上面に起立する起立部16bとで狭隘開口状の挿入溝16が形成されており、この挿入溝16内にコーナー部材17が挿入されている。
【0038】
一方、内枠20は、4本のアルミニウム製形材にて形成される内枠部材21をアングル状のコーナー部材29によって連結されて方形状に形成されている。内枠20を構成する内枠部材21は、天井仕上げ材3を取り付ける収納部を有する断面略クランク状に形成されている。
【0039】
この場合、内枠部材21は、下端に外向きの肉厚部22を有する下部垂直壁23と、下部垂直壁23の上端から内方側に屈曲する水平壁24と、水平壁24の先端から直交状に起立する上部垂直壁25とからなる断面略クランク状に形成されている。なお、下部垂直壁23と水平壁24とで天井仕上げ材3の収納部が形成されている。また、上部垂直壁25の上端から外側に向かって屈曲する上部水平片26の先端側に垂下する2条の凸条27a,27bと、水平壁24における凸条27a,27bと対向する位置に起立する2条の凸条27c,27dとで内枠部材21の長手方向に沿うスライド溝27が形成されており、上部垂直壁25と凸条27b,27dとで挿入溝28が形成されている。したがって、内枠部材21には外側に位置するスライド溝27と内側に位置する挿入溝28の2つの溝部が設けられている。外側のスライド溝27には、後述する開閉機構30を構成する2個のローラ31A,31Bが転動可能に挿入されている。また、内側の挿入溝28内には上記アングル状のコーナー部材29が挿入されている。
【0040】
この場合、コーナー部材29の一方の片29aにはコ字状の切欠き(図示せず)が設けられ、このコ字状溝を介して片29aに対して直交状に第1のストッパ片35aが曲げ起こされて設けられている(
図6,
図10参照)。
【0041】
また、内枠20の上部垂直壁25におけるスライド溝27の位置には、コ字状の切欠き25aが設けられ、このコ字状の切欠き25aを介して上部垂直壁25に対して直交状に第2のストッパ片35bが曲げ起こされて設けられている(
図9,
図10参照)。
【0042】
上記のように形成される外枠10と内枠20において、内枠20を閉じた状態では、外枠10の下部垂直壁13の内側面と内枠20の下部垂直壁23の肉厚部22の外面との隙間Sが0.5mmに形成されている(
図7参照)。また、
図7に示すように、外枠10の外向き鍔部12の上面に天井板5と密接する第1のパッキン61が貼着されると共に、外枠部材11のクランク部10aの内面に内枠部材21のクランク部20aの外面に密接する第2のパッキン62が貼着されている。また、内枠部材21のクランク部20aの内面に天井仕上げ材3に密接する第3のパッキン63が貼着されている。
【0043】
次に、開閉機構30について説明する。開閉機構30は、対向する両内枠部材21の上部垂直壁25に設けられる一対のスライド溝27内を長手方向に転動可能な2個のローラ31A,31Bと、これらローラ31A,31Bを一端側に並列して枢着し、他端側に、外枠10の対向する両内側面、すなわち外枠部材11の上部垂直壁15に設けられた回動軸受け部40に着脱及び回動可能に係合する回動軸32を突設するスライドバー33と、を具備している。
【0044】
この場合、
図8Aに示すように、2個のローラ31A,31Bのうちの端部側の一方のローラ31Aは、スライド溝27の長手方向に沿う中心線Cよりも下方に位置し、他方のローラ31Bは、中心線Cよりも上方に位置している。
【0045】
ローラ31A,31Bは、例えばポリアセタール樹脂(POM)等の合成樹脂製部材、あるいはスチール製部材等にて形成されており、直径がスライド溝27の高さより若干小さい寸法に形成され、スライド溝27内にルーズに挿入されている。また、ローラ31A,31Bは、ローラ31Aを代表して説明すると、
図8A(c)に示すように、一側面の中心部に隆起部31aを有し、他側面の中心部に凹部31bを有する断面形状に形成されており、隆起部31aがスライドバー33との間に僅かな隙間をおいて段付きの枢支ピン34をスライドバー33に設けられた貫通孔33aを貫通した状態で、かしめ加工することで、枢支ピン34に回転自在に枢着されている。この場合、凹部31b内に枢支ピン34の大径頭部34aが位置して外部に突出しないようになっている。
【0046】
また、回動軸32は、
図8Aに示すように、大径部32aと小径部32bを有すると共に、大径部32aの端部に鍔部32cを有する段付き軸にて形成されている。このように形成される回動軸32は、スライドバー33の他端側に設けられた円形隆起状の取付部33bに設けられた貫通孔33c内に小径部32bが貫挿された状態で、取付部33bの裏面側凹部33d内に突出する小径部32bを、かしめ加工することで、取り付けられている。この場合、裏面側凹部33d内にかしめ部が位置して外部に突出しないようになっている。
【0047】
一方、スライドバー33は、スチール製の板部材にて形成されており、長手方向の両端が円弧状に形成され、回動軸32を取り付ける円形隆起状の取付部33bと、取付部33bとローラ31Bの取付部との間に扁平楕円形状の補強用の絞り部33eとがプレス加工によって形成されている。スライドバー33の他端部に、内枠20を閉じた状態において、第1のストッパ片35aよりも長く、第1のストッパ片35aと常に重なるように形成されることにより、内枠20のコーナー部材29に設けられた第1のストッパ片35aと干渉しない延在部33fが設けられている。なお、スライドバー33の幅方向の一方の辺には位置決め用の切欠き33gが設けられており、この切欠き33gによってスライドバー33を内枠20に取り付ける際に天地逆にならないようになっている。
【0048】
上記のように構成されるローラ31A,31Bを有するスライドバー33を内枠20に取り付けるには、
図9に示す手順によって行う。まず、内枠20を構成する内枠部材21の長手方向の一方、すなわち第1のストッパ片35aを有しないコーナー部材29側からスライド溝27内にスライドバー33に枢着されたローラ31A,31Bを挿入し(
図9(a)参照)、ローラ31Aを上部垂直壁25に設けられたコ字状の切欠き25aより他方側に移動する(
図9(b)参照)。この状態で、切欠き25aを介して第2のストッパ片35bを曲げ起こし(
図9(c)参照)、その後、スライドバー33を戻してローラ31Aを第2のストッパ片35bに当接させてスライドバー33をスライド溝27側に収納する(
図9(d)参照)。
【0049】
上記回動軸受け部40は、外枠10の1辺の対向する両外枠部材11に設けられており、
図11に示すように、回動軸32より大径の着脱孔部41と、該着脱孔部41に連通する、回動軸32の大径部32aがスライド及び回動可能な先端が着脱孔部41側に向かう略コ字状の枢支孔部42とで形成されている。
【0050】
この場合、枢支孔部42は、外枠部材11の長手方向の一端側に設けられた着脱孔部41の一端側に連通する上部水平部42aと、上部水平部42aの先端に連通する垂直部42bと、垂直部42bの下端から着脱孔部41側に向かって連通する下部水平部42cとからなる略コ字状に形成されている。
【0051】
なお、垂直部42bの中間部の対向する側面には、内方に向かって突出する一対の円弧状凸部42dが設けられると共に、円弧状凸部42dに弾性変形をもたせるべく円弧状凸部42dの背部側近傍位置に円弧状のスリット42eが設けられている。この両円弧状凸部42d間の距離は回動軸32の大径部32aの直径より若干狭く形成されており、内枠20を外枠10内に取り付ける場合に、着脱孔部41に挿入された回動軸32が上部水平部42aから垂直部42bに移動された際に回動軸32の大径部32aが両円弧状凸部42dを外側に変位させて通過した後、元の状態に戻るようになっている。
【0052】
上記のように形成される回動軸受け部40において、内枠20が閉じた状態では、回動軸32は枢支孔部42の垂直部42bと下部水平部42cの交差部に位置している。内枠20を開放すると、その反動によって回動軸32は移動するが、上方への移動は両円弧状凸部42dによって規制されるので、下部水平部42c内を移動する。したがって、垂直部42bと下部水平部42cの交差部に位置する回動軸32は上方への移動が規制され、不用意に抜け出る心配はない。
【0053】
また、内枠20を開放する際に、内枠20が外枠10に対して90度以上回動して天井部に衝突する衝撃を、回動軸32が枢支孔部42の下部水平部42c内の着脱孔部側に移動することで緩衝することができる。
【0054】
次に、外枠10内に収納された状態の内枠20をロックするロック機構50について説明する。
ロック機構50は、内枠部材21の上部垂直壁25に設けられた挿入溝28に挿入されて上部垂直壁25に沿ってスライド可能な第1の垂直片51と、内枠部材21の下部垂直壁23と外枠部材11の下部垂直壁13との隙間Sにおいてスライド可能な第2の垂直片52と、隙間Sより下方に突出する第2の垂直片52の下端に設けられる板状の摘み部53と、第1の垂直片51の外側に突出する係止突部54とが一体に形成された例えばポリアセタール樹脂等の合成樹脂製の係止部材55と、外枠部材11の上部垂直壁15の内側に突設される、係止突部54が係脱可能な係止受け部57とで構成されている。この場合、第2の垂直片52は、内枠部材21の下部垂直壁23の下端部に設けられた外枠10の内側面に近接する肉厚部22に設けられた切欠部22a内から外部に突出することなくスライド可能に配設されている。
【0055】
なお、係止部材55の第1の垂直片51の下端と第2の垂直片52の上端は、スライド溝27を構成する凸条27c,27dを跨ぐ屈曲状の連結片56によって連結されている。また、第1の垂直片51の両側には翼片51aが延在されている。この翼片51aは、係止部材55が切欠部22a内を移動する際に、内枠部材21の上部垂直壁25に設けられた球面状突起25cを乗り越えるように形成されており、翼片51aが球面状突起25cを乗り越えることで、操作者にロック位置とアンロック位置の確認が行えるようになっている。
【0056】
上記のように形成される合成樹脂製の係止部材55は、加工上肉厚が1mmより薄くできないが、内枠部材21の下端部の肉厚部22に設けられた切欠部22aの深さを1mm以上にすることで、内枠20と外枠10の隙間Sを0.5mmに維持することができる。
【0057】
なお、係止受け部57は、係止部材55と同様に、例えばポリアセタール樹脂等の合成樹脂製部材にて形成されている。係止受け部57は、
図14及び
図16に示すように、上端に係止受け面57aを有する側面視が略逆直角三角形状の基部57bと、基部57bの垂直片側の一端から起立する係止起立片57cと、基部57bの幅方向の中央部の垂直面側の外方に突出する略「つ」状の弾性変形可能な係止爪部57dと、基部57bの幅方向両端に突設される一対の係止翼片57eと、が一体に形成されている。
【0058】
上記のように形成される係止受け部57を外枠10に取り付けるには、
図16(a)〜(c)に示す手順によって行う。まず、外枠部材11の上部垂直壁15に設けられた矩形状の係止孔15a内に係止起立片57cを挿入し、係止起立片57cが上部垂直壁15の外側面に当接するように回動して係止爪部57dを係止孔15aに挿入して、係止爪部57dを係止孔15aの下縁部に係止させる。このようにして、係止受け部57は、係止起立片57cが上部垂直壁15の係止孔15aの上縁側の外側面に当接し、係止翼片57eが係止孔15aの下縁側の内面側に当接した状態で外枠10に取り付けられる。
【0059】
内枠20に取り付けられる天井仕上げ材3は、内枠20の4辺の内枠部材21に取り付けられる固定部材70によって固定されている。
【0060】
固定部材70は、
図17に示すように、内枠部材21の上部垂直壁25に固定ねじ80によって固定される垂直片71と、天井仕上げ材3の上面に当接する水平片72とからなるアングル状に形成されており、垂直片71の上部両側には、外方に開口するスリット73によって切起し可能な一対の天井仕上げ材3の押さえ片74が設けられている。
【0061】
なお、垂直片71の一対の押さえ片74の間の中央には、固定ねじ80が螺合するねじ孔75が設けられ、水平片72の両端側には貫通孔76が設けられている。また、固定部材70を内枠部材21に固定する固定ねじ80の頭部80aは、上部垂直壁25の外側に設けられた挿入溝28内に位置している。したがって、内枠20の開閉の際に、ローラ31A,31Bが固定ねじ80の頭部80aに干渉する虞はない。
【0062】
上記のように形成される固定部材70を用いて、内枠20に天井仕上げ材3と天井下地材4が取り付けられる。この場合、天井仕上げ材3は内枠20の収納部に挿入されて固定部材70の水平片72に当接された状態で固定される。天井仕上げ材3を固定した後、天井仕上げ材3の上面に天井下地材4を載置した状態で、押さえ片74を切り起こして天井下地材4の上面を押し付ける(
図18(b)参照)。なお、内枠部材21の上部垂直壁25には、鉛直方向に延びる長孔25bが設けられており、天井下地材4の厚さに応じて、固定ねじ80が貫挿する長孔25b内に移動調節可能になっている。
【0063】
なお、上記実施形態では、回動軸受け部40が、回動軸32より大径の着脱孔部41と、該着脱孔部41に連通する、回動軸32の大径部32aがスライド及び回動可能な先端が着脱孔部41側に向かう略コ字状の枢支孔部42とで形成される場合について説明したが、回動軸受け部を別の形状にしてもよい。
【0064】
例えば、
図12に示すように、外枠部材11の上部垂直壁15に係止爪47によって固着される回動軸受け部材43によって回動軸受け部40Bを構成してもよい。この場合、回動軸受け部材43は、水平下部44の一端に起立する垂直段部45と、水平下部44の他端と垂直段部45の上端とを結ぶ傾斜部46とを有する略三角形状の合成樹脂部材にて形成されており、傾斜部46の下端側に開口する略L字状の枢支孔部42Bが設けられている。枢支孔部42Bは、回動軸32の直径より若干広い開口42hを有する垂直孔部42iと、垂直孔部42iの下端に連通する水平孔部42jとからなり、垂直孔部42iは回動軸32の外径よりやや幅狭に形成されて、回動軸32が垂直孔部42iを乗り越えて係合可能に形成されている。
【0065】
なお、上記のように形成される回動軸受け部40Bを設ける場合には、上記回動軸32に代えて、鍔部32cのない回動軸32Bを用いる。回動軸32Bを用いた内枠20を外枠10内に取り付ける場合は、回動軸32Bを回動軸受け部40Bの開口42hから垂直孔部42iを介して水平孔部42jに挿入して、内枠20を取り付ける。また、内枠20を取り外す場合は、上記と逆の動作を行って外枠10から内枠20を取り外す。
【0066】
上記実施形態の天井点検口によれば、内枠20の開閉時に、内枠20は回動軸32を中心として回動すると同時に、2個のローラ31A,31Bがスライド溝27内を転動してスライドバー33が内枠20の長手方向端部に出没することで、内枠20と外枠10の干渉を回避して目地部の隙間Sを狭くでき、内枠20の開閉をスムーズに行うことができる。また、内枠20を閉じた状態においては、スライドバー33は内枠20のスライド溝27側に収納され、スライドバー33の一端側の2個のローラ31A,31Bと他端側の回動軸32とによって内枠20は外枠10内に収納されるので、内枠20及び内枠20に取り付けられる天井仕上げ材3、天井下地材4の自重によって内枠20が外枠10から垂れ下がるのを確実に防止することができる。
【0067】
また、ロック機構50を構成する係止部材55を、内枠部材21の下端の肉厚部22に設けられた切欠部22a内でスライドさせて、係止部材55に突設された係止突部54を外枠10に設けられた係止受け部57に係脱可能にすることができるので、内枠20と外枠10の隙間Sを広げることなくロック機構50の係止部材55を取り付けることができる。
【0068】
また、外枠部材11は、外向き鍔部12の上面に天井板5と密接する第1のパッキン61が貼着されると共に、クランク部10aの内面に内枠部材21のクランク部20aの外面に密接する第2のパッキン62が貼着され、更に内枠部材21のクランク部20aの内面に天井仕上げ材3に密接する第3のパッキン63が貼着されているので、内枠20と外枠10との間の気密性が図れると共に、外枠10と天井板5間、及び内枠20と天井仕上げ材3間の気密性の維持が図れる。