特許第6755622号(P6755622)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジヤトコ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6755622-変速機ケースにおける開口の封止構造 図000002
  • 特許6755622-変速機ケースにおける開口の封止構造 図000003
  • 特許6755622-変速機ケースにおける開口の封止構造 図000004
  • 特許6755622-変速機ケースにおける開口の封止構造 図000005
  • 特許6755622-変速機ケースにおける開口の封止構造 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6755622
(24)【登録日】2020年8月28日
(45)【発行日】2020年9月16日
(54)【発明の名称】変速機ケースにおける開口の封止構造
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/029 20120101AFI20200907BHJP
   F16J 13/14 20060101ALI20200907BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20200907BHJP
【FI】
   F16H57/029
   F16J13/14
   F16J15/10 U
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-140947(P2016-140947)
(22)【出願日】2016年7月16日
(65)【公開番号】特開2018-9690(P2018-9690A)
(43)【公開日】2018年1月18日
【審査請求日】2019年6月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148301
【弁理士】
【氏名又は名称】竹原 尚彦
(74)【代理人】
【識別番号】100077779
【弁理士】
【氏名又は名称】牧 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100110157
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 基司
(72)【発明者】
【氏名】ハン ジンウク
(72)【発明者】
【氏名】イ テクジン
(72)【発明者】
【氏名】キム ジェフン
【審査官】 増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】 実開平1−132920(JP,U)
【文献】 特開2014−190500(JP,A)
【文献】 実開昭52−170159(JP,U)
【文献】 特開2010−25283(JP,A)
【文献】 実開昭59−39362(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/029
F16J 13/14
F16J 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速機ケースの内部と外部とを連通させると共に、変速機ケース内の油面よりも上側となる領域に設けられた開口と、
前記開口の内周で、前記開口の開口方向に所定間隔で複数設けられた溝と、
前記開口に内嵌して外周を前記溝に圧接させる筒状部を有すると共に、弾性部材で形成されたシール部材と、
前記筒状部を前記開口方向に貫通した貫通孔に挿入される軸部、および前記筒状部に前記開口方向から当接して前記貫通孔の内周と前記軸部の外周との隙間を封止する封止部を有すると共に、剛性材料で形成されたプラグと、を有し、
前記開口方向から見た前記軸部の外形を楕円形に形成すると共に、前記開口方向から見た前記貫通孔の形状を、前記軸部の外形と整合する楕円形に形成し、
前記貫通孔の開口幅が狭い領域の内周に、前記楕円形の長軸側の端部が係合する凹部を設けて、前記貫通孔に前記軸部を挿入した前記プラグが、回り止めされた状態で前記シール部材に保持されるようにしたことを特徴とする変速機ケースにおける開口の封止構造。
【請求項2】
前記シール部材の前記筒状部には、当該筒状部の外周から径方向外側に延出したフランジ部が、周方向の全周に亘って設けられており、
前記シール部材は、前記フランジ部を、前記変速機ケースの前記開口の周縁に、前記開口方向から当接させた状態で設けられていることを特徴とする請求項1に記載の変速機ケースにおける開口の封止構造。
【請求項3】
前記開口方向から見て前記楕円形を成す貫通孔の内周には、前記凹部が、前記貫通孔の開口を挟んで2つ設けられており、
これら2つの凹部は、前記回転軸方向から見て前記貫通孔の楕円の短軸と交差する位置に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の変速機ケースにおける開口の封止構造。
【請求項4】
前記シール部材の前記筒状部は、前記開口の内径よりも大きい外径であって、前記軸部の長軸側の前記端部が前記貫通孔の前記凹部に係合した状態で、前記開口の内周に圧接する径で形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の変速機ケースにおける開口の封止構造。
【請求項5】
前記開口方向から見て前記複数の溝は、前記開口を挟んだ一方側と他方側にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の変速機ケースにおける開口の封止構造。
【請求項6】
前記シール部材は、シリコン系の樹脂材料で形成されていることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか一項に記載の変速機ケースにおける開口の封止構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速機ケースにおける開口の封止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
引用文献1には、自動変速機の内部と外部とを連通するパイプの一端側の開口を、ブリーザ機能を兼ねたオイルレベルゲージで封止することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−205050号公報
【0004】
自動変速機の内部と外部とを連通するこの種のパイプとして、自動変速機へのオイルの注油に用いられるチャージングパイプがある。
このチャージングパイプは、長手方向の一端を、変速機ケース側に設けた接続孔に接続した金属製のパイプであり、他端側の開口から、オイルを注油するようになっている。
【0005】
ここで、変速機ケースの接続孔が、変速機ケース内のオイルの油面よりも下側で開口している場合には、変速機ケース内部の圧力が、チャージングパイプの内部に作用することがないので、チャージングパイプの開口を弾性体などで簡単に封止することが可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、変速機ケースの接続孔が、変速機ケース内のオイルの油面よりも上側で開口している場合には、変速機ケース内部の圧力がチャージングパイプの内部にも作用するので、開口を弾性体などで封止すると、弾性体が内圧の変化で外れてしまい、変速機ケース内部のオイルが漏出する可能性がある。
【0007】
そのため、この場合には、弾性体に代えて採用したプラグなどを、チャージングパイプの他端側に螺入して、他端側の開口を封止する必要があり、チャージングパイプの他端側の内周に、プラグを螺入するための溝を設けることが必要であった。
【0008】
ここで、チャージングパイプの他端側には、変速機ケース内にオイルを注油する際に金属製のノズルが抜き差しされるので、ノズルの抜き差しの際に、チャージングパイプの内周の溝にノズルが干渉することがある。
そして、溝の一部が、ノズルとの干渉により欠けて変速機ケース内に落下すると、オイルに含まれる夾雑物となってしまう。
【0009】
この夾雑物の発生の問題は、チャージングパイプを廃止して、変速機ケース内の油面よりも上側となる領域に、注油用の開口が設けられている場合も同様である。
そのため、夾雑物を生じさせることなく、注油用の開口を封止できるようにすることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
変速機ケースの内部と外部とを連通させると共に、変速機ケース内の油面よりも上側となる領域に設けられた開口と、
前記開口の内周で、前記開口の開口方向に所定間隔で複数設けられた溝と、
前記開口に内嵌して外周を前記溝に圧接させる筒状部を有すると共に、弾性部材で形成されたシール部材と、
前記筒状部を前記開口方向に貫通した貫通孔に挿入される軸部、および前記筒状部に前記開口方向から当接して前記貫通孔の内周と前記軸部の外周との隙間を封止する封止部を有すると共に、剛性材料で形成されたプラグと、を有し、
前記開口方向から見た前記軸部の外形を楕円形に形成すると共に、前記開口方向から見た前記貫通孔の形状を、前記軸部の外形と整合する楕円形に形成し、
前記貫通孔の開口幅が狭い領域の内周に、前記楕円形の長軸側の端部が係合する凹部を設けて、前記貫通孔に前記軸部を挿入した前記プラグが、回り止めされた状態で前記シール部材に保持されるようにした構成の変速機ケースにおける開口の封止構造とした。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、プラグをシール部材から取り外しても、開口の内周が、弾性材料で形成されたシール部材の筒状部で覆われているので、オイルの注入のために金属製のノズルが開口内に挿入されても、金属製のノズルと開口の内周とが干渉しない。よって、夾雑物の発生を防止できる。
また、プラグの楕円形の軸部の長軸の向きを、楕円形の貫通孔の長軸と一致させることで、貫通孔への軸部の抜き差しを簡単に行うことができ、プラグを軸部の長軸側の端部が貫通孔の凹部に係合する位置まで回転させると、プラグが回り止めされた状態で前記シール部材に保持されて、開口がプラグで封止された状態で保持されるので、プラグによる開口の封止を、簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態にかかる変速機ケースにおける開口の封止構造を説明する図である。
図2】実施の形態にかかる変速機ケースの開口を説明する図である。
図3】実施の形態にかかるシール部材を説明する図である。
図4】実施の形態にかかるプラグを説明する図である。
図5】実施の形態にかかる変速機ケースにおける開口の封止手順を説明する図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、実施の形態にかかる変速機ケース10における開口11の封止構造1を説明する図であり、(a)は、開口11の封止構造1の平面図であり、(b)は(a)におけるA−A断面を模式的に表した図である。
【0014】
実施の形態にかかる変速機ケース10では、オイルOLを注入するための開口11が、変速機ケース10内のオイルOLの油面よりも上側で開口しており、この開口11は、変速機ケース10内にオイルOLを注入する時以外は、常に封止されている。
【0015】
図1の(b)に示すように、変速機ケース10の開口11は、後記するシール部材2とプラグ3を用いて、変速機ケース10外側から封止されるようになっている。
【0016】
図2は、変速機ケース10の開口11を説明する図であり、(a)は、変速機ケース10の外側から見た開口11と開口11を囲む支持部12の平面図であり、(b)は、(a)におけるA−A断面を模式的に表した図であり、(c)は、変形例にかかる支持部12Aを説明する図である。
【0017】
図2の(a)に示すように、変速機ケース10では、開口11の周縁を全周に亘って囲む筒状の支持部12が設けられている。
この支持部12は、開口11の開口径D1よりも大きい外径D2で形成されており、支持部12は、開口11の中心を通ると共に開口11の開口方向に沿う軸線X方向に、所定の高さh1で形成されている。
【0018】
支持部12の先端側の端面12aは、軸線Xに直交する平坦面となっており、この端面12aの中央に開口11が位置している。
【0019】
支持部12では、開口11を囲む内周面に、内周面を切削して形成した凹溝121(ネジ溝)が設けられており、この凹溝121は、軸線X周りの周方向に全周に亘って設けられている。
【0020】
支持部12の内周では、複数の凹溝121が、軸線X方向の全長に亘って所定間隔で設けられており、支持部12における凹溝121が設けられた領域には、シール部材2の円筒状の嵌入部21が嵌入している(図1の(b)参照)。
【0021】
図3の(a)は、実施の形態にかかるシール部材2の平面図であり、(b)は(a)におけるA−A断面を模式的に表した図である。
【0022】
図3の(b)に示すようにシール部材2は、変速機ケース10の開口11に嵌入される所定長さh2の嵌入部21と、嵌入部21の外周から径方向外側に延びるフランジ部22とを有しており、シリコン系の樹脂材料(弾性材料)から一体に形成されている。
【0023】
フランジ部22は、筒状の嵌入部21の長手方向の一端から径方向外側に延出しており、軸線X方向から見てフランジ部22は、嵌入部21の外周を全周に亘って囲むリング状に形成されている。
【0024】
フランジ部22は、軸線X方向に所定の厚みW1で形成されており、軸線X方向におけるフランジ部22の一方の面22aと他方の面22bは、それぞれ軸線Xに直交する平坦面となっている。
軸線X方向から見たフランジ部22は、前記した開口11の開口径D1よりも大きく、かつ支持部12の外径D2よりも小さい外径D3で形成されている(D2>D3>D1)。
【0025】
フランジ部22を一端に有する嵌入部21は、長手方向の他端側が、変速機ケース10の開口11内に挿入されるようになっており、この嵌入部21の外径は、開口の開口径D1よりも僅かに大きい外径D4で形成されている(D4>D1)。
そのため、シール部材2の嵌入部21が、開口11内に嵌入されると、嵌入部21の外周が、開口11の内周に隙間なく圧接して、嵌入部21の外周と、開口11の内周との隙間が封止されるようになっている。
【0026】
ここで、シール部材2の嵌入部21を開口11に挿入する際には、シール部材2のフランジ部22が、開口11を囲む支持部12の端面12aに当接するまで、嵌入部21が開口11内に挿入される。
この状態においてシール部材2のフランジ部22は、前記した一方の面22aを、支持部12の端面12aに全面に亘って接触させており、支持部12の端面12aとの間に隙間無く接触している。
【0027】
軸線X方向から見て、嵌入部21には、当該嵌入部21を軸線X方向に貫通する貫通孔25が形成されている。
軸線X方向から見て貫通孔25は、長軸方向の開口幅L1が、短軸方向の開口幅L2よりも大きい略楕円形状を成している(L1>L2)。
ここで、貫通孔25の長軸方向は、当該貫通孔25の中心を通ると共に当該貫通孔25の最も開口幅が広くなる向きで貫通孔25を横切る仮想線Lmに沿う方向であり、貫通孔25の短軸方向は、当該貫通孔25の中心を通ると共に当該貫通孔25の最も開口幅が狭くなる向きで貫通孔を横切る仮想線Lnに沿う方向であり、これら仮想線Lm、Lnは互いに直交している。
【0028】
軸線X方向から見て、貫通孔25の内周250では、仮想線Lm(図3の(a)参照)を挟んで対称となる位置に凹部250a、250aが設けられており、これら凹部250a、250aは、仮想線Ln上で、貫通孔25を間に挟んで互いに対向している。
【0029】
実施の形態では、このシール部材2の貫通孔25に、剛性材料で形成されたプラグ3の軸部31が挿入されるようになっている。
【0030】
図4は、プラグ3を説明する図であり、(a)は、斜視図であり、(b)は、(a)における面Aでプラグ3を切断した断面図であり、(c)は、(b)におけるB−B断面図であり、(d)は(b)におけるC−C矢視図である。
【0031】
図4の(a)に示すようにプラグ3は、円板状の封止部32と、封止部32の一方の面32bから突出する把持部33と、他方の面32aから延びる軸部31と、から一体に形成されている。
【0032】
封止部32は、軸線X方向に所定の厚みW2で形成されており、軸線X方向における封止部32の一方の面32aと他方の面32bは、それぞれ軸線Xに直交する平坦面となっている。
軸線X方向から見て封止部32は、前記した変速機ケース10の開口11の開口径D1よりも大きく、かつシール部材2のフランジ部22の外径D3よりも小さい外径D5で形成されている(D3>D5>D1)。
【0033】
図4の(b)、(d)に示すように、軸線X方向から見て、封止部32の他方の面32bの中央には、平面視において長方形形状を成す把持部33が設けられている。
軸線X方向から見て把持部33は、封止部32の直径線Lxに沿って設けられており、直径線Lx方向の長さL3は、封止部32の直径(外径D5)よりも短い長さで形成されている。
【0034】
把持部33は、ユーザにより把持される部位であり、封止部32の他方の面32bから、軸線Xに沿って封止部32から離れる方向に延出している。
【0035】
図4の(c)に示すように、軸線X方向から見て、封止部32の一方の面32aの中央には、平面視において略楕円形状を成す軸部31が設けられている。
軸線X方向から見て軸部31は、封止部32の直径線Lxに沿って設けられており、この軸部31と、前記した把持部33は、共通の直径線Lxに沿って設けられている。
【0036】
軸部31は、所定長さL4の長軸と、所定長さL5の短軸を持つ楕円形状を成しており、長軸を直径線Lxに沿わせた向きで設けられている。
軸部31の直径線Lx方向の長さ(長軸方向の長さL4)は、封止部32の直径(外径D5)よりも短く、かつ前記したシール部材2の楕円形の貫通孔25の長軸方向の開口幅L1(図3の(a)参照)と略整合する長さを有している(D5>L4≧L1)。
また、軸部31の直径線Lxに直交する方向の長さ(短軸方向の長さL5)は、封止部32の直径(外径D5)よりも短く、かつ前記したシール部材2の楕円形の貫通孔25の短軸方向の開口幅L2(図3の(a)参照)と略整合する長さを有している(D5>L5≧L2)。
【0037】
軸部31と封止部32との境界部では、封止部32の一方の面32aに設けたリング状の凹溝に、軸線X方向から見てリング状を成すシールリングSが取り付けられており、このシールリングSは、プラグ3をシール部材2に組み付けた際に、シール部材2のフランジ部22に軸線X方向から圧接して、フランジ部22と封止部32との間の隙間を封止するために設けられている。
【0038】
以下、変速機ケース10の開口11を、シール部材2とプラグ3を用いて封止する手順を説明する。
図5は、変速機ケース10の開口11を、シール部材2とプラグ3を用いて封止する手順を説明する図であり、(a)は、開口11にシール部材2を取り付けた状態を示す図であり、(b)は、(a)におけるA−A断面図であり、(c)は、シール部材2の貫通孔25に、プラグ3の軸部31を挿入した状態を示す図であり、(d)は、(c)におけるB−B断面図であり、(e)は、プラグ3を(d)の位置から90度回転させて、開口11を封止する位置に配置した状態を示す図であり、(f)は、(e)におけるC−C断面図である。
【0039】
始めに、変速機ケース10の開口11を囲む円筒状の支持部12に、シール部材2の嵌入部21側を挿入して、シール部材2を支持部12に取り付ける(図5の(a)、(b)参照)。
この状態において、シール部材2の嵌入部21の外周は、軸線X周りの周方向の全周に亘って、支持部12の内周の凹溝121に圧接していると共に、シール部材2のフランジ部22は、支持部12の端面12aに全面に亘って当接している。
【0040】
そして、プラグ3の略楕円形の軸部31を、シール部材2の略楕円形状の貫通孔25の長軸方向(図中、仮想線Lm方向)に沿わせた向きに配置したのち、(図5の(a)、(b)参照)、封止部32(シールリングS)がシール部材2のフランジ部22に当接するまで、プラグ3の軸部31をシール部材2の貫通孔25に挿入する(図5の(c)、(d)参照)。
この状態では、プラグ3は、シール部材2に対して容易に着脱できる状態となっている。
【0041】
そして、プラグ3を軸線X周りに90度回転させて(図5の(c)、矢印参照)、プラグ3の軸部31の長軸側の端縁31a、31aを、貫通孔25の内周の凹部250a、250aに係合させる(図5の(e)、(f)参照)。
【0042】
この際に、プラグ3の軸部31の長軸側の端縁31a、31aが、シール部材2の嵌入部21を径方向外側に押し広げながら軸線X回りに回転するので、端縁31a、31aが、凹部250a、250aに係合した時点で、軸部31の端縁31a、31aの延長上(仮想線Ln上)に位置する嵌入部21は、支持部12の内周の凹溝121との間に圧縮される。
この状態において、軸部31の端縁31a、31a側は、少なくとも周方向の両側縁31b、31bが、貫通孔25の内周250に圧接しており、この両側縁31b、31bに圧縮された嵌入部21から作用する反力が最大となっている。
これにより、圧縮された嵌入部21から軸部31に作用する反力で、プラグ3は、軸線X周りの周方向の回転と、開口11から脱落する方向(軸線X)への移動が規制された状態で保持されることになる。
【0043】
この状態では、軸部31の短軸方向(仮想線Lm方向)の側縁と、貫通孔25の内周250との間に隙間S1が生じるものの、シール部材2のフランジ部22に、プラグ3の円板状の封止部32が軸線X方向から当接して、生じた隙間S1を封止しているので、この隙間S1からのオイルOLの漏出が阻止されるようになっている。
【0044】
また、シール部材2の嵌入部21の外周と、支持部12の内周との間にも隙間S2が生じるものの、プラグ3の封止部32と支持部12の端面12aとの間で、シール部材2のフランジ部22が挟み込まれた状態で保持されているので、この隙間S2からのオイルOLの漏出も阻止されるようになっている。
【0045】
以上のとおり、実施の形態では、
(1)変速機ケース10の内部と外部とを連通させると共に、変速機ケース10内の油面よりも上側となる領域に設けられた開口11を封止する変速機ケース10における開口11の封止構造1であって、
開口11の内周には、当該開口11の開口方向(軸線X方向)に所定間隔で複数の凹溝121(ネジ溝)が設けられており、
開口11に内嵌して外周を凹溝121に圧接させる嵌入部21(筒状部)を有すると共に、弾性部材で形成されたシール部材2と、
嵌入部21を開口方向に貫通した貫通孔25に挿入される軸部31、および嵌入部21に軸線X方向から当接して貫通孔25の内周250と軸部31の外周との隙間を封止する封止部32を有すると共に、剛性材料で形成されたプラグ3と、を有し、
軸線X方向から見た軸部31の外形を楕円形に形成すると共に、軸線X方向から見た貫通孔25の形状を、軸部31の外形と整合する楕円形に形成し、
貫通孔25の内周250の開口幅が狭い領域の互いに対向する領域に、楕円形の軸部31の長軸側の端縁31a、31aが係合する凹部250a、250aを設けて、貫通孔25に軸部31を挿入したプラグ3が、回り止めされた状態でシール部材2に保持されるように構成した。
【0046】
このように構成すると、注油のためにプラグ3をシール部材2から取り外しても、開口11の内周が、弾性材料で形成されたシール部材2の嵌入部21で覆われているので、オイルOLを注入するための金属製のノズルが開口11内に挿入された際に、金属製のノズルと開口11の内周とが直接干渉することを防止できる。
よって、金属製のノズルと開口11の内周との干渉に起因する夾雑物の発生を防止できる。
【0047】
また、プラグ3の楕円形の軸部31の長軸側の向きを、楕円形の貫通孔25の長軸側と一致させることで、貫通孔25への軸部31の抜き差しを簡単に行うことができ、軸部31の端縁31a、31aが貫通孔25の凹部250a、250aに係合する位置まで回転させると、プラグ3が回り止めされた状態でシール部材2に保持されて、開口11が封止された状態で保持されるので、プラグ3による開口11の封止を、簡単に行うことができる。
【0048】
(2)シール部材2の嵌入部21には、当該嵌入部21の外周から径方向外側に延出したフランジ部22が、周方向の全周に亘って設けられており、
シール部材2は、フランジ部22を、変速機ケース10の開口11の周縁を規定する支持部12の端面12aに、軸線X方向から当接させた状態で設けられている構成とした。
【0049】
このように構成すると、開口11の内周(支持部12の内周)とシール部材2の嵌入部21の外周との間からのオイルOL漏出を好適に防止できる。
【0050】
(3)軸線X方向から見て貫通孔25は、当該貫通孔25の長軸方向の開口幅L1が、短軸方向の開口幅L2よりも大きい略楕円形状を成しており、貫通孔25の内周250では、貫通孔25の長軸方向に沿う仮想線Lmを挟んで対称となる位置に、凹部250a、250aが、貫通孔25の開口を挟んで設けられており、
これら2つの凹部250a、250aは、軸線X方向から見て貫通孔25の短軸方向に沿う仮想線Lnと交差する位置に設けられている構成とした。
【0051】
このように構成すると、プラグ3とシール部材2との相対回転をより確実に規制できるので、開口11に嵌入部21を内嵌させたシール部材2からのプラグ3の脱落を確実に阻止できる。
【0052】
(4)シール部材2の嵌入部21は、開口11の開口径D1よりも大きい外径D4であって、端縁31a、31aが凹部250a、250aに係合した状態で、開口11の内周に圧接する径で形成されている構成とした。
【0053】
このように構成すると、シール部材2の嵌入部21の外周と、開口11の内周との間からのオイルOLの漏出を好適に防止できる。
【0054】
(5)軸線X方向から見て複数の凹溝121は、開口11を挟んだ一方側と他方側にそれぞれ設けられている構成とした。
【0055】
このように構成することによっても、開口11からのシール部材2(弾性部材)の脱落を阻止することができる。
【0056】
シール部材2は、シリコン系の樹脂材料で形成されている構成とした。
【0057】
このように構成すると、金属性のノズルがシール部材2と接触しても、当該シール部材2が接触時に発生する衝撃を吸収するので、夾雑物が発生することを防止している。
【0058】
なお、前記した実施の形態では、開口11を囲む支持部12の内周の全周に亘って凹溝121が設けられている場合を例示したが、例えば、図2の(c)に示すように、支持部12Aの内周において、開口11を挟んで対称となる領域に設けられた凹溝121aとしても良い。
このように構成することによっても、開口11からのプラグ3の脱落を阻止することができる。
【0059】
さらに、実施の形態では、変速機ケースに直接設けられた開口11の封止構造1を例示したが、本願発明の封止構造は、変速機ケースの接続孔に一端が接続されたチャージングパイプの他端側の開口(注油用の開口)にも適用可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 封止構造
2 シール部材
3 プラグ
10 変速機ケース
11 開口
12 支持部
12A 支持部
12a 端面
21 嵌入部
22 フランジ部
25 貫通孔
250 内周
250a 凹部
31 軸部
31a 端縁
32 封止部
33 把持部
121 凹溝
121a 凹溝
D1 開口径
D2 外径
D3 外径
D4 外径
D5 外径
D6 外径
L1 開口幅
L2 開口幅
Lm 仮想線
Ln 仮想線
Lx 直径線
OL オイル
S シールリング
S1 隙間
S2 隙間
X 軸線
図1
図2
図3
図4
図5