特許第6755668号(P6755668)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6755668-磁石片吸着用粘着部材 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6755668
(24)【登録日】2020年8月28日
(45)【発行日】2020年9月16日
(54)【発明の名称】磁石片吸着用粘着部材
(51)【国際特許分類】
   G09F 15/00 20060101AFI20200907BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20200907BHJP
   G09F 7/04 20060101ALI20200907BHJP
【FI】
   G09F15/00 P
   B32B15/08 E
   G09F7/04 Z
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-25684(P2016-25684)
(22)【出願日】2016年2月15日
(65)【公開番号】特開2017-146339(P2017-146339A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2019年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】392004945
【氏名又は名称】株式会社ナム
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】田中 伸佳
【審査官】 金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】 実開平02−149981(JP,U)
【文献】 特開2008−001079(JP,A)
【文献】 特開2014−008774(JP,A)
【文献】 実開平06−030141(JP,U)
【文献】 特開2001−066998(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0211123(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 7/00 − 7/22
15/00 − 15/02
B32B 1/00 − 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄板片の表面側に、保護層を積層、一体化して設けるようにし、裏面側に、緩衝層、粘着剤層、剥離シートをこの順に積層、一体化して設けるようにした磁石片吸着用粘着部材であって、前記鉄板片の側方周囲に、該鉄板片と同じ厚みの第2緩衝層を設け、鉄板片及び第2緩衝層の表面を、鉄板片より大きな平面形状を有する保護層によって覆うようにしたことを特徴とする磁石片吸着用粘着部材。
【請求項2】
前記緩衝層が、柔軟性を有する発泡樹脂材料からなることを特徴とする請求項1に記載の磁石片吸着用粘着部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非磁性体製の壁面や物体の表面に、磁石片を使ってポスター等を貼ることができるようにした磁石片吸着用粘着部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリート、ガラス、壁紙、合成樹脂材料等からなる非磁性体製の壁面や物体の表面に、ポスター等を貼る場合、粘着テープを用いて貼り付けるようにするのが一般的であるが、ポスター等の貼り替えをするのに手数を要するだけでなく、粘着テープの跡形が残るという問題があった。
【0003】
この問題に対処するために、非磁性体製の壁面や物体の表面に、磁石片を使ってポスター等を貼ることができるようにした磁石片吸着用粘着部材が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−8774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に開示された磁石片吸着用粘着部材は、薄い鉄板の上面に接着剤を設け、その接着剤の面に化粧紙を貼り付け、そして鉄板の下の面に粘着剤を設けるようにしたものであるが、薄いテープ又はシート状の部材であるため、コンクリートや壁紙等の凹凸がある表面に適用した場合、剥がれやすく、大きな支持力を得られなかったり、ネオジウム磁石片のような強力な磁石片を用いた場合、積層構造が破壊されたりするという問題があり、このため、必然的に平面形状の大きな部材になり、目障りになるという問題があった。
さらに、上記特許文献1に開示された磁石片吸着用粘着部材には、以下の特有の問題点があった。
1.ハサミ等を用いてカットできる薄い鉄板を用いているため、磁力が得にくく、強力な磁石片を用いても、大きな支持力を得られない。
2.ハサミ等を用いてカットした場合、切断面が鋭くなり、使用時に手などを傷つけるおそれがある。
3.鉄板に防錆紙を貼り付けていても、ハサミ等を用いてカットすることにより、断面が露出し、そこから錆が発生する。
【0006】
本発明は、上記磁石片吸着用粘着部材の有する問題点に鑑み、コンクリートや壁紙等の凹凸がある表面に適用した場合でも、剥がれにくく、大きな支持力を得られるようにし、また、積層構造が破壊されにくく、これにより、平面形状の小さなものとすることができるようにした、磁石片と併用することによってポスター等を貼ることができるようにした磁石片吸着用粘着部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の磁石片吸着用粘着部材は、鉄板片の表面側に、保護層を積層、一体化して設けるようにし、裏面側に、緩衝層、粘着剤層、剥離シートをこの順に積層、一体化して設けるようにしたことを特徴とする。
【0008】
この場合において、前記緩衝層が、柔軟性を有する発泡樹脂材料からなるようにすることができる。
【0009】
また、前記鉄板片の表面を、該鉄板片より大きな平面形状を有する保護層によって覆うようにすることができる。
【0010】
また、前記鉄板片の側方周囲に、該鉄板片と同じ厚み第2緩衝層を設け、鉄板片及び第2緩衝層の表面を保護層によって覆うようにすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の磁石片吸着用粘着部材によれば、鉄板片の表面側に、保護層を積層、一体化して設けるようにし、裏面側に、緩衝層、粘着剤層、剥離シートをこの順に積層、一体化して設けるようにすることにより、鉄板片の裏面側に設けた緩衝層によって、コンクリートや壁紙等の凹凸がある表面に適用した場合でも、凹凸に馴染んで粘着剤層が接着し、剥がれにくく、大きな支持力を得られるようにすることができる。
また、ネオジウム磁石片のような強力な磁石片を用いた場合でも、鉄板片の裏面側に設けた緩衝層によって鉄板片が剥がれる力が分散され、積層構造が破壊されにくいものとすることができる。
また、これによって、平面形状の小さなものとすることが可能で、不使用にわざわざ剥がさなくても目障りになることがないため、恒久的に設置しておくことができる。
【0012】
また、前記緩衝層が、柔軟性を有する発泡樹脂材料からなるようにすることにより、緩衝性能に加え、防湿性に優れているため、鉄板片の防錆性能を向上することができる。
【0013】
また、前記鉄板片の表面を、該鉄板片より大きな平面形状を有する保護層によって覆うようにすることにより、保護層によって鉄板片が剥がれる力が分散され、積層構造が破壊されにくいものとすることができるとともに、鉄板片の全面が覆われるため、鉄板片の防錆性能を向上することができる。
【0014】
また、前記鉄板片の側方周囲に、該鉄板片と同じ厚みの第2緩衝層を設け、鉄板片及び第2緩衝層の表面を保護層によって覆うようにすることにより、厚みのある鉄板片を用いた場合でも、保護層の表面を平坦にして磁石片を吸着しやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の磁石片吸着用粘着部材の一実施例を示す説明図で、(a)は平断面図、(b)は縦断面図ある。
図2】本発明の磁石片吸着用粘着部材の変形実施例を示す説明図で、(a1)〜(a2)は平断面図、(b1)〜(b3)は縦断面図ある。
図3】本発明の磁石片吸着用粘着部材の変形実施例を示す縦断面図である。
図4】本発明の磁石片吸着用粘着部材の変形実施例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の磁石片吸着用粘着部材の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0017】
図1に、本発明の磁石片吸着用粘着部材の一実施例を、図2図4に、同変形実施例を示す。
この磁石片吸着用粘着部材1は、磁石片(図示省略)と併用することによってポスター等を貼ることができるようにするための磁石片吸着用粘着部材であって、鉄板片3の表面側に、保護層2を積層、一体化して設けるようにし、裏面側に、緩衝層4、粘着剤層5、剥離シート6をこの順に積層、一体化して設けるようにすることを基本とする。
【0018】
そして、本実施例の磁石片吸着用粘着部材1は、鉄板片3の側方周囲に、鉄板片3と同じ厚みの第2緩衝層7を設け、鉄板片3及び第2緩衝層7の表面を、鉄板片3より大きな平面形状を有する保護層2によって覆うようにしている。
なお、図4の本発明の磁石片吸着用粘着部材の変形実施例に示すように、保護層2、鉄板片3、緩衝層4、粘着剤層5及び剥離シート6の大きさを同じにする(この場合、第2緩衝層7は設けない。)こともできる。
【0019】
この場合において、各層を構成する部材には、以下の目的で、以下の材料を用いることができる。
保護層2:鉄板片3の表面を覆って、鉄板片3を保護(防錆を含む。)するためのもので、合成樹脂フィルムやシート、布等からなり、必要に応じて、印刷等を施すことによって、意匠性を持たせることができる。
鉄板片3:磁石片を吸着できるようにするためのもので、厚さ0.5〜2mm、好ましくは、0.8〜1.5mmで、平面形状が円形状(図1(a))、リング形状(図2(a1))、四角形状(図2(a2))等の任意の形状のものからなる。鉄板片3の表面は、メッキや塗装により防錆処理を施すようにする。
緩衝層4:緩衝機能を持たせるためのもので、柔軟性を有する、合成樹脂シート、不織布又は布(粘着剤層5を剥がした際ののり残しを少なくすることができる。)(図1(b))、ポリエステルフォーム、ポリエチレンフォーム、ブチルゴム発泡体等の発泡樹脂(「発泡ゴム」を含み、本明細書において、単に、「発泡樹脂」という。)シート(高い緩衝機能を持たせることができることに加え、防湿性に優れているため、鉄板片3の防錆性能を向上することができる。)(図2(b2))からなる。緩衝層4は、図2(b1)に示すように粘着剤層5を兼ねることができ、図2(b3)に示すように、2層以上を積層(例えば、ポリエステルフォーム、ポリエチレンフォーム、ブチルゴム発泡体等の発泡樹脂シート41と、合成樹脂シート、不織布又は布42を積層)したものを用いることができる。
粘着剤層5:磁石片吸着用粘着部材1を、コンクリート、ガラス、壁紙、合成樹脂材料等からなる非磁性体製の壁面や物体の表面に貼り付けるためのもので、アクリル系、シリコン系等の再剥離可能な粘着剤のほか、用途によっては、永久接着できる接着剤(例えば、緩衝層4が粘着剤層5を兼ねる場合には、ブチルゴム系接着剤。)を用いることもできる。
剥離シート6:粘着剤層5を保護するためのもので、剥離紙や剥離フィルムが用いられ 第2緩衝層7:鉄板片3を、鉄板片3より大きな平面形状を有する保護層2によって覆うようにしたときに、保護層2の表面に凹凸が生じないようにするためのもので、ポリエステルフォーム、ポリエチレンフォーム、ブチルゴム発泡体等の発泡樹脂シートからなる。なお、図3の本発明の磁石片吸着用粘着部材の変形実施例に示すように、第2緩衝層7を省略することもできる。
【0020】
これにより、鉄板片3の裏面側に設けた緩衝層4によって、コンクリートや壁紙等の凹凸がある表面に適用した場合でも、凹凸に馴染んで粘着剤層5が接着し、剥がれにくく、大きな支持力を得られるようにすることができる。
また、ネオジウム磁石片のような強力な磁石片を用いた場合でも、鉄板片3の裏面側に設けた緩衝層4によって鉄板片3が剥がれる力が分散され、積層構造が破壊されにくいものとすることができる。
また、これによって、磁石片吸着用粘着部材1を、平面形状の小さなものとすることが可能で、不使用にわざわざ剥がさなくても目障りになることがないため、恒久的に設置しておくことができる。
【0021】
さらに、鉄板片3の側方周囲に、鉄板片3と同じ厚みの第2緩衝層7を設け、鉄板片3及び第2緩衝層7の表面を、鉄板片3より大きな平面形状を有する保護層2によって覆うようにすることにより、保護層2によって鉄板片3が剥がれる力が分散され、積層構造が破壊されにくいものとすることができるとともに、鉄板片3の全面が覆われるため、鉄板片3の防錆性能を向上することができ、さらに、厚みのある鉄板片3を用いた場合でも、保護層2の表面を平坦にして、すなわち、凹凸が発生しないようにして、磁石片を吸着しやすくすることができる。
また、磁石片吸着用粘着部材1は、鉄板片3を設けた箇所以外の任意の位置で、ハサミ等を用いてカットできるため、ユーザーが任意の形状にして使用することができる(ハサミ等を用いてカットできる薄い鉄板を用いる特許文献1に開示された磁石片吸着用粘着部材が有する上記問題を解消することができる。)。
【0022】
以上、本発明の磁石片吸着用粘着部材について、複数の実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、各実施例に記載した構成を適宜組み合わせる等、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の磁石片吸着用粘着部材は、コンクリートや壁紙等の凹凸がある表面に適用した場合でも、剥がれにくく、大きな支持力を得られるようにし、また、積層構造が破壊されにくく、これにより、平面形状の小さなものとすることができるという特性を有していることから、磁石片と併用することによってポスター等を貼るための磁石片吸着用粘着部材の用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0024】
1 磁石片吸着用粘着部材
2 保護層
3 鉄板片
4 緩衝層
5 粘着剤層
6 剥離シート
7 第2緩衝層
図1
図2
図3
図4