特許第6755688号(P6755688)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6755688
(24)【登録日】2020年8月28日
(45)【発行日】2020年9月16日
(54)【発明の名称】温泉スケール付着抑制方法および装置
(51)【国際特許分類】
   B08B 9/055 20060101AFI20200907BHJP
【FI】
   B08B9/055
【請求項の数】23
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2016-66238(P2016-66238)
(22)【出願日】2016年3月29日
(65)【公開番号】特開2017-176972(P2017-176972A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2018年11月5日
(31)【優先権主張番号】特願2016-61497(P2016-61497)
(32)【優先日】2016年3月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591054244
【氏名又は名称】富士化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】特許業務法人 インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】高野 茂
(72)【発明者】
【氏名】大内 教親
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 亨
(72)【発明者】
【氏名】風間 辰平
(72)【発明者】
【氏名】横瀬 諭
【審査官】 渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−124598(JP,A)
【文献】 特公昭58−006902(JP,B1)
【文献】 特開2005−087822(JP,A)
【文献】 特開平08−020015(JP,A)
【文献】 特開2005−221190(JP,A)
【文献】 特開平05−245458(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 9/00− 9/46
F16L 55/00− 55/48
F16L101:00−101:70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温泉水を移送する温泉水配管内でピグを往復移動させることにより、前記温泉水配管の内壁へのスケールの付着を抑制するスケール付着抑制方法であって、
前記スケールは、温泉水に溶けていた成分が析出してできるスケールであり、前記温泉水配管の離隔した二箇所のそれぞれに曲管部を備える分岐部を取り付け、前記分岐部を介してピグ往復移動経路を前記温泉水配管に接続し、ピグを前記ピグ往復移動経路に沿って往復移動させるとともに、前記温泉水配管内を毎秒0.1〜0.3mで移動させることを特徴とする温泉スケール付着抑制方法。
【請求項2】
温泉水を移送する温泉水配管内でピグを往復移動させることにより、前記温泉水配管の内壁へのスケールの付着を抑制するスケール付着抑制装置であって、
前記スケールは、温泉水に溶けていた成分が析出してできるスケールであり、前記温泉水配管の離隔した二箇所の間を往復移動するピグと、一組の分岐部であって、各分岐部の一端が前記温泉水配管の離隔した二箇所のそれぞれに接続しているものと、一組のピグ投入・回収用配管であって、各ピグ投入・回収用配管の一端が前記一組の分岐部の各分岐部の他端に接続しているものとを備えており、前記一組の分岐部のそれぞれは、前記温泉水配管の離隔した二箇所との接続位置またはそれに近接する位置において曲管部を備えており、前記ピグの前記温泉水配管内の移動速度が毎秒0.1〜0.3mであることを特徴とする温泉スケール付着抑制装置。
【請求項3】
前記曲管部の管軸は、前記分岐部と前記温泉水配管との接続位置の近傍において、前記温泉水配管の管軸を接線とする円弧を構成していることを特徴とする、請求項2に記載の温泉スケール付着抑制装置。
【請求項4】
前記一組の分岐部のそれぞれは、一端が前記温泉水配管に接続し、他端が前記曲管部と接続する直管部を備えていることを特徴とする、請求項2に記載の温泉スケール付着抑制装置。
【請求項5】
前記温泉水配管は、前記温泉水を移送する配管経路と接続しており、その接続位置は、前記温泉水配管と前記分岐部との接続位置よりも前記温泉水配管側に配置していることを特徴とする、請求項2から請求項4までの何れか一つに記載の温泉スケール付着抑制装置。
【請求項6】
前記直管部は、前記温泉水配管との接続位置よりも前記直管部側で前記直管部側に接続し、前記温泉水を移送する配管経路を備えていることを特徴とする、請求項4に記載の温泉スケール付着抑制装置。
【請求項7】
前記ピグの両端部は、円錐状、コーン状、円錐台状その他先端に向かって縮径する形状を有していることを特徴とする、請求項2から請求項6までの何れか一つに記載の温泉スケール付着抑制装置。
【請求項8】
前記円弧の半径Rは、前記ピグの外径をd、前記温泉水配管の内径をDとするとき、Rは1.5D以上、かつ1.1≦d/D≦1.4であることを特徴とする、請求項3または請求項7に記載の温泉スケール付着抑制装置。
【請求項9】
前記曲管部の管軸の曲率半径R*は、前記ピグの外径をd、前記温泉水配管の内径をDとするとき、R*は1.5D以上、かつ1.1≦d/D≦1.4であることを特徴とする、請求項4または請求項7に記載の温泉スケール付着抑制装置。
【請求項10】
前記分岐部はFRP製であることを特徴とする、請求項2から請求項9までの何れか一つに記載の温泉スケール付着抑制装置。
【請求項11】
前記曲管部及び前記直管部はFRP製であり、ユニット化されていることを特徴とする、請求項4に記載の温泉スケール付着抑制装置。
【請求項12】
前記配管経路の少なくとも一部及び前記直管部はFRP製であり、ユニット化されていることを特徴とする、請求項6に記載の温泉スケール付着抑制装置。
【請求項13】
前記配管経路の少なくとも一部、前記曲管部及び前記直管部はFRP製であり、ユニット化されていることを特徴とする、請求項6に記載の温泉スケール付着抑制装置。
【請求項14】
前記温泉水配管は、金属に比べて強度が劣る素材で作製されている又はそのような強度的に劣る素材で作製されている部品や部材を備えているものであり、前記ピグの表面は、弾性を有する発泡樹脂製であり、金属製の突起がなく、前記温泉水配管の内壁面に弾性的に接触するように構成してあることを特徴とする、請求項2から請求項13までの何れか一つに記載の温泉スケール付着抑制装置。
【請求項15】
前記ピグのピグ往復移動経路は、前記温泉水配管外に、前記ピグを前記ピグ往復移動経路に投入する投入部と、前記ピグを前記ピグ往復移動経路から回収する回収部とを備えていることを特徴とする、請求項2から請求項14の何れか一つに記載の温泉スケール付着抑制装置。
【請求項16】
前記投入部は、前記回収部を兼ね、前記回収部は、前記投入部を兼ねるように構成してあることを特徴とする、請求項15に記載の温泉スケール付着抑制装置。
【請求項17】
前記ピグのピグ往復移動経路に沿った前記ピグの自動往復移動を駆動し制御する駆動制御部を備えることを特徴とする、請求項2から請求項16の何れか一つに記載の温泉スケール付着抑制装置。
【請求項18】
前記駆動制御部は、前記二箇所の間の前記温泉水配管内で移動する前記ピグの速度を制御するように構成してあることを特徴とする、請求項17に記載の温泉スケール付着抑制装置。
【請求項19】
温泉水を移送する温泉水配管の離隔した二箇所の間でピグを移動させることにより、前記温泉水配管の内壁へのスケールの付着を予防する温泉スケール付着抑制装置であって、
前記スケールは、温泉水に溶けていた成分が析出してできるスケールであり、
前記ピグは、その少なくとも表面が、弾性を有する発泡樹脂製であり、前記温泉水配管の内壁面に弾性的に接触するように構成してあり、その外径が、常温大気開放時において前記温泉水配管の内径よりも大きく、前記温泉水配管内の移動速度が毎秒0.1〜0.3mであることを特徴とする、温泉スケール付着抑制装置。
【請求項20】
前記温泉水配管は、金属に比べて強度が劣る素材で作製されている又はそのような強度的に劣る素材で作製されている部品や部材を備えているものであり、
前記温泉水配管の内壁面に弾性的に接触する前記ピグの表面は、金属製の突起を有していないことを特徴とする、請求項19に記載の温泉スケール付着抑制装置。
【請求項21】
一組の分岐部であって、各分岐部の一端が前記温泉水配管の離隔した二箇所のそれぞれに接続しているものを更に備えており、前記一組の分岐部の各分岐部は、前記温泉水配管の離隔した二箇所との接続位置またはそれに近接する位置において前記温泉水配管の管軸を接線として湾曲する曲管部を備えており、
前記曲管部の管軸の曲率半径R*は、常温大気開放時における前記ピグの外径をd、前記温泉水配管の内径をDとするとき、R*は1.5D以上、かつ1.1≦d/D≦1.4であり、
前記ピグは、前記一組の分岐部を通過しながら前記温泉水配管の離隔した二箇所の間を往復移動するように構成してあることを特徴とする、請求項19または請求項20に記載の温泉スケール付着抑制装置。
【請求項22】
d/Dは、1.1以上、1.4以下であることを特徴とする、請求項21に記載の温泉スケール付着抑制装置。
【請求項23】
常温大気開放時における前記ピグの全長は、100mm以上、280mm以下であることを特徴とする請求項19から請求項22までの何れか一つに記載の温泉スケール付着抑制装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、温泉水を移送するための配管(温泉水配管)の内壁面へのスケールの付着を抑制する技術に関し、より詳しくは、温泉水配管の二箇所に分岐部を取り付け、その分岐部を介してピグ往復移動経路を温泉水配管に接続し、ピグ往復移動経路に沿って、ピグを往復移動させることにより、前記二箇所間にある温泉水配管の内壁面へのスケールの付着およびその進行を予防する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
温泉地、温泉浴場、地熱発電設備などでは、温泉水に溶けていた成分が析出してできるスケール(以下「温泉スケール」という場合がある。)が温泉水配管内に付着、堆積または固化すると、流路閉塞や付属機器の故障の原因になり、設備管理の妨げになることが知られており、そのためスケール対策が必要とされている。
【0003】
スケール対策は、抑制対策と除去対策の二つに分類でき、当該二つのうち一方または両方を使用して行なわれる。前者の抑制対策の代表例は、スケール抑制剤を配管内に注入する方法(薬注法)である。後者の除去対策の代表例は、温泉水配管の内壁面に付着し、堆積または固化しているスケールを機械的に除去する方法(浚渫法)であり、その一例として、配管内に投入したピグに圧力を加えて移動させ、その移動するピグにより配管内壁面からスケールを削り落とす方法が知られている(特許文献1から3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−349986号公報
【特許文献2】特開昭63−158181号公報
【特許文献3】特開2013−163163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ピグを使用する浚渫法は、スケールが既に付着し、またはスケールが成長しているまたは堆積もしくは固化している温泉水配管を対象としており、薬注法と異なり、スケールの付着やその進行を予防または抑制するスケール対策技術ではない。
【0006】
また、温泉水配管内での付着が進み、堆積または固化しているスケールをピグにより機械的に除去するためには、その温泉水配管内にまず小径のピグを通し、徐々に大きな径のピグを通して行くという手間のかかる作業が必要になり、その作業は必ずしも容易ではなく、場合によっては、ピグが温泉水配管の途中で停止する、温泉水配管の内壁面や付属機器に損傷を与えるなどのおそれもある。
【0007】
さらに、ピグの種類には、ピグの表面に金属製の突起を備えたものがあり固化したスケールを効率的に除去する方法として使用されているが、当該温泉水配管が金属に比べて強度が劣る素材(たとえば熱硬化性樹脂に代表される合成樹脂)で作製されているまたはそのような部品や部材を備えている温泉水配管であると、金属製の突起による損傷のおそれはより大きくなる。
【0008】
また、温泉地、温泉浴場、地熱発電設備などが交通の便が悪い場所(たとえば山間部)にある場合には、スケール対策に必要な作業者の手配が難しくなり、人件費を含む作業コストもかさむため、スケール対策の省人化または自動化が求められている。
【0009】
この発明は、上記に鑑みてなされたものであり、温泉水配管内でピグを移動させることにより温泉スケールの付着やその進行を予防し、これにより温泉スケールの付着を抑制する方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、下記を特徴とするものである。
【0011】
この発明の第1の形態に係る温泉スケール付着抑制方法は、温泉水を移送する温泉水配管内でピグを往復移動させることにより、前記温泉水配管の内壁へのスケールの付着を抑制するスケール付着抑制方法であって、前記スケールは、温泉水に溶けていた成分が析出してできるスケールであり、前記温泉水配管の離隔した二箇所のそれぞれに曲管部を備える分岐部を取り付け、前記分岐部を介してピグ往復移動経路を前記温泉水配管に接続し、ピグを前記ピグ往復移動経路に沿って往復移動させるとともに、前記温泉水配管内を毎秒0.1〜0.3mで移動させるに特徴を有するものである。
【0012】
この発明の第2の形態に係る温泉スケール付着抑制装置は、温泉水を移送する温泉水配管内でピグを往復移動させることにより、前記温泉水配管の内壁へのスケールの付着を抑制するスケール付着抑制装置であって、前記スケールは、温泉水に溶けていた成分が析出してできるスケールであり、前記温泉水配管の離隔した二箇所の間を往復移動するピグと、一組の分岐部であって、各分岐部の一端が前記温泉水配管の離隔した二箇所のそれぞれに接続しているものと、一組のピグ投入・回収用配管であって、各ピグ投入・回収用配管の一端が前記一組の分岐部の各分岐部の他端に接続しているものとを備えており、前記一組の分岐部のそれぞれは、前記温泉水配管の離隔した二箇所との接続位置またはそれに近接する位置において曲管部を備えており、前記ピグの前記温泉水配管内の移動速度が毎秒0.1〜0.3mであることに特徴を有するものである。
【0013】
この発明の第3の形態に係る温泉スケール付着抑制装置は、第2の形態に係る温泉スケール付着抑制装置であって、前記曲管部の管軸は、前記分岐部と前記分岐部の前記温泉水配管との接続位置の近傍において、前記温泉水配管の管軸を接線とする円弧を構成していることに特徴を有するものである。
【0014】
この発明の第4の形態に係る温泉スケール付着抑制装置は、第2の形態に係る温泉スケール付着抑制装置であって、前記一組の分岐部のそれぞれは、一端が前記温泉水配管に接続し、他端が前記曲管部と接続する直管部を備えていることを特徴とするものである。
【0015】
この発明の第5の形態に係る温泉スケール付着抑制装置は、第2の形態から第4の形態までの何れか一つに係る温泉スケール付着抑制装置であって、前記温泉水配管は、前記温泉水を移送する配管経路と接続しており、その接続位置は、前記温泉水配管と前記分岐部との接続位置よりも前記温泉水配管側に配置していることを特徴とするものである。
【0016】
この発明の第6の形態に係る温泉スケール付着抑制装置は、第4の形態に係る温泉スケール付着抑制装置であって、前記直管部は、前記温泉水配管との接続位置よりも前記直管部側で前記直管部側に接続し、前記温泉水を移送する配管経路を備えていることを特徴とするものである。
【0017】
この発明の第7の形態に係る温泉スケール付着抑制装置は、第2の形態から第6の形態までの何れか一つに係る温泉スケール付着抑制装置であって、前記ピグの両端部は、円錐状、コーン状、円錐台状その他先端に向かって縮径する形状を有していることに特徴を有するものである。
【0018】
この発明の第8の形態に係る温泉スケール付着抑制装置は、第3の形態または第7の形態に係る温泉スケール付着抑制装置であって、前記円弧の半径Rは、前記ピグの外径をd、前記温泉水配管の内径をDとするとき、Rは1.5D以上、かつ1.1≦d/D≦1.4であることに特徴を有するものである。
【0019】
この発明の第9の形態に係る温泉スケール付着抑制装置は、第4の形態または第7の形態に係る温泉スケール付着抑制装置であって、前記曲管部の管軸の曲率半径R*は、前記ピグの外径をd、前記温泉水配管の内径をDとするとき、R*は1.5D以上、かつ1.1≦d/D≦1.4であることを特徴とするものである。
【0020】
この発明の第10の形態に係る温泉スケール付着抑制装置は、第2の形態から第9の形態までの何れか一つの形態に係る温泉スケール付着抑制装置であって、前記分岐部はFRP製であることを特徴とするものである。
【0021】
この発明の第11の形態に係る温泉スケール付着抑制装置は、第4の形態に係る温泉スケール付着抑制装置であって、前記曲管部及び前記直管部はFRP製であり、ユニット化されていることを特徴とするものである。
【0022】
この発明の第12の形態に係る温泉スケール付着抑制装置は、第6の形態に係る温泉スケール付着抑制装置であって、前記配管経路の少なくとも一部及び前記直管部はFRP製であり、ユニット化されていることを特徴とするものである。
【0023】
この発明の第13の形態に係る温泉スケール付着抑制装置は、第6の形態に係る温泉スケール付着抑制装置であって、前記配管経路の少なくとも一部、前記曲管部及び前記直管部はFRP製であり、ユニット化されていることを特徴とするものである。
【0024】
この発明の第14の形態に係る温泉スケール付着抑制装置は、第2の形態から第13の形態までの何れか一つの形態に係る温泉スケール付着抑制装置であって、前記温泉水配管は、金属に比べて強度が劣る素材で作製されている又はそのような強度的に劣る素材で作製されている部品や部材を備えているものであり、前記ピグの表面は、弾性を有する発泡樹脂製であり、金属製の突起がなく、前記温泉水配管の内壁面に弾性的に接触するように構成してあることに特徴を有するものである。
【0025】
この発明の第15の形態に係る温泉スケール付着抑制装置は、第2の形態から第14の形態までの何れか一つの形態に係る温泉スケール付着抑制装置であって、前記ピグのピグ往復移動経路は、前記温泉水配管外に、前記ピグを前記ピグ往復移動経路に投入する投入部と、前記ピグを前記ピグ往復移動経路から回収する回収部とを備えていることに特徴を有するものである。
【0026】
この発明の第16の形態に係る温泉スケール付着抑制装置は、第15の形態に係る温泉スケール付着抑制装置であって、前記投入部は、前記回収部を兼ね、前記回収部は、前記投入部を兼ねるように構成してあることに特徴を有するものである。
【0027】
この発明の第17の形態に係る温泉スケール付着抑制装置は、第2の形態から第16の形態までの何れか一つの形態に係る温泉スケール付着抑制装置であって、前記ピグのピグ往復移動経路に沿った前記ピグの自動往復移動を駆動し制御する駆動制御部を備えることに特徴を有するものである。
【0028】
この発明の第18の形態に係る温泉スケール付着抑制装は、第17の形態に係る温泉スケール付着抑制装置であって、前記駆動制御部は、前記二箇所の間の前記温泉水配管移動する前記ピグの速度を制御するように構成してあることに特徴を有するものである。
【0029】
この発明の第19の形態に係る温泉スケール付着抑制装置は、温泉水を移送する温泉水配管の離隔した二箇所の間でピグを移動させることにより、前記温泉水配管の内壁へのスケールの付着を予防するスケール付着抑制装置であって、前記スケールは、温泉水に溶けていた成分が析出してできるスケールであり、前記ピグは、その少なくとも表面が、弾性を有する発泡樹脂製であり、前記温泉水配管の内壁面に弾性的に接触するように構成してあり、その外径が、常温大気開放時において前記温泉水配管の内径よりも大きく、前記温泉水配管内の移動速度が毎秒0.1〜0.3mであることを特徴とするものである。
【0030】
この発明の第20の形態に係る温泉スケール付着抑制装置は、第19の形態に係る温泉スケール付着抑制装置であって、前記温泉水配管は、金属に比べて強度が劣る素材で作製されている又はそのような強度的に劣る素材で作製されている部品や部材を備えているものであり、前記温泉水配管の内壁面に弾性的に接触する前記ピグの表面は、金属製の突起を有していないことを特徴とするものである。
【0031】
この発明の第21の形態に係る温泉スケール付着抑制装置は、第19または第20の形態に係る温泉スケール付着抑制装置であって、一組の分岐部であって、各分岐部の一端が前記温泉水配管の離隔した二箇所のそれぞれに接続しているものを更に備えており、前記一組の分岐部の各分岐部は、前記温泉水配管の離隔した二箇所との接続位置またはそれに近接する位置において前記温泉水配管の管軸を接線として曲管部を備えており、前記曲管部の管軸の曲率半径R*は、常温大気開放時における前記ピグの外径をd、前記温泉水配管の内径をDとするとき、R*は1.5D以上、かつ1.1≦d/D≦1.4であり、前記ピグは、前記一組の分岐部を通過しながら前記温泉水配管の離隔した二箇所の間を往復移動するように構成してあることに特徴を有するものである。
【0032】
この発明の第22の形態に係る温泉スケール付着抑制装置は、第21の形態に係る温泉スケール付着抑制装置であって、d/Dは、1.1以上、1.4以下であることに特徴を有するものである。
【0034】
この発明の第23の形態に係る温泉スケール付着抑制装置は、第19から第22の何れか一つの形態に係る温泉スケール付着抑制装置であって、常温大気開放時における前記ピグの全長は、100mm以上、280mm以下であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0035】
この発明(特に第1の形態および第2の形態)においては、分岐部は、温泉水配管との接続位置またはそれに近接する位置において曲管部を備えているので、分岐部内のピグ移動経路は、温泉水配管内のピグ移動経路と滑らかに接続し、そのためピグは、温泉水配管の内部を移動する場合であれ、温泉水配管の外部と内部との間(より具体的には温泉水配管とピグ投入・回収用配管との間)を移動する場合であれ、分岐部を通じて、ピグの移動経路を滑らかに、途中で滞ることなく移動する。このことは、温泉水配管の離隔した二箇所の間でピグを高頻度で往復移動させることができること、それにより温泉水配管の内壁面とピグ外表面との接触頻度を高めることができること、つまり温泉水配管の内壁面をピグが効果的または効率的に温泉水配管内のクリーニング(以下、ピグによる「管内クリーニング」という場合がある。)を行うことができることを意味している。
【0036】
それ故、この発明によれば、次に掲げる(a)から(f)までの六つの効果のうち少なくとも一つを奏する。この発明による経済的効果は、一組の分岐部を取り付ける温泉水配管の離隔した二箇所の間の管路がより長いほど顕著になる。
(a)ピグにより、温泉水配管の内壁面への温泉スケールの付着や、当該内壁面に付着し
た温泉スケールが成長して堆積または固化した状態にまで進行する事態を予防することができ、温泉スケールの付着を抑制することができる。
(b)ピグをその移動経路に沿って滑らかに、途中で滞ることなく移動することができる
ので、温泉スケール対策における省人化や自動化が行いやすくなる。
(c)温泉水配管の内壁面への温泉スケールの付着や当該内壁面での温泉スケールの成長
を予防できるので、作業者による温泉水配管の点検・保守の頻度を減らすことができる。(d)温泉スケールの付着を予防するので、配管内壁に堆積または固化した温泉スケール
の除去が必要になる機会が減り、温泉水配管が金属に比べて強度が劣る素材(たとえば熱硬化性樹脂に代表される合成樹脂)で作製されている場合に起こり易いピグにより当該温
泉水配管の損傷のおそれを低減することができ、総じて温泉水配管の保守コストを減らすことができる。
(e)温泉スケールの付着を予防するので、温泉水配管が金属に比べて強度が劣る素材で
作製されている場合であっても、この発明を適用することができる。
(f)ピグを使用する温泉水配管のスケール対策は、その対策の対象である温泉水配管へ
のピグの往復移動経路の接続が容易なものほど好ましく、その対策を講じるための工事は、より短期間で行うことができ、低コストであるものほど好ましいところ、この発明によれば、温泉水配管の離隔した二箇所のそれぞれに取り付けた曲管部を備える分岐部を介在させるだけで温泉水配管とピグの往復移動経路とを接続することができ、対策工事の短期化や低コスト化の要請に応えることができる。
また、この発明においては、ピグの温泉水配管内の移動速度が毎秒0.1〜0.3mであるので、温泉水配管内におけるピグの突発的な移動や停止が起こり難くなり、スケール除去力が不安定にならない。
【0037】
この発明の第3の形態によれば、分岐部の温泉水配管との接続位置の近傍は、温泉水配管の管軸を接線とする円弧を構成しているので、温泉水配管外(より具体的にはピグ投入用配管内)から温泉水配管内へ、また温泉水配管内から温泉水配管外(より具体的にはピグ回収用配管内)へと分岐部を介してピグを滑らかに移動させることができる。
【0038】
この発明の第4の形態によれば、曲管部を備える分岐部の一例である、曲管部と直管部を備える分岐部を用いてスケール付着抑制装置を構成することができる。分岐部が直管部を備えているので、直管部を温泉水配管に直列または同軸に接続しさえすれば曲管部と温泉水配管とが接続されるので、直管部がなく曲管部を直接温泉水配管に接続する場合に比べて、接続作業が容易になる。また、分岐部を温泉水配管に接続するための構造(たとえばフランジ継手)は直管部の端部に設けることになるので、直管部がなく、故に曲管部の端部に当該構造を設ける場合に比べて、当該構造付きの分岐部の製作が容易になる。
【0039】
この発明の第5の形態においては、温泉水を移送する配管経路(温泉水配管から移動してくる温泉水を移送する配管経路及び移送する温泉水を温泉水配管へと移動させる配管経路のいずれか一方または両方)が、分岐部との接続位置よりも温泉水配管側でその温泉水配管に接続しており、従って、温泉水配管における配管経路の開口部は、ピグが温泉水配管の管軸に沿って直進する領域に配置し、曲管部には配置しないので、ピグが当該開口部に引っ掛かったり、没入したりすることがない。それ故、第5の形態によれば、温泉水配管外から温泉水配管内へ、また温泉水配管内から温泉水配管外へと分岐部を介してピグを滑らかに移動させる場合であっても、温泉水配管及び配管経路に沿った温泉水の移送に支障を与えることがない。
【0040】
この発明の第6の形態によれば、温泉水配管における配管経路の開口部は、ピグが温泉水配管の管軸に沿って直進する領域である直管部に配置し、曲管部には配置しないので、ピグが当該開口部に引っ掛かったり、没入したりすることがなく、従って温泉水配管外から温泉水配管内へ、また温泉水配管内から温泉水配管外へと分岐部を介してピグを滑らかに移動させる場合であっても、温泉水配管及び配管経路に沿った温泉水の移送に支障を与えることがない。
【0041】
この発明の第7の形態によれば、ピグの両端部が円錐状、コーン状、円錐台状その他先端に向かって縮径する形状を有しているので、分岐部と温泉水配管との間をピグが往復移動する際、ピグの両端部が分岐部や温泉水配管の各内壁面に接触しにくくなるので、温泉水配管内と温泉水配管外(たとえば、後述のピグ投入・回収用配管)との間で分岐部を通じてより円滑に、ひいてはより高頻度でピグを往復移動させることができるようになる。
【0042】
この発明の第8の形態によれば、分岐部と温泉水配管との接続位置の近傍において分岐部が構成する、温泉水配管の管軸を接線とする円弧の半径をR、温泉水配管の内径をD、前記ピグの外径をdとするとき、Rは1.5D以上、かつ1.1≦d/D≦1.4とするので、温泉水配管の内壁面にピグの外表面を確実に接触させることができ、且つ、ピグの移動の妨げとならない適度の大きさの摩擦力が両面間に作用させることができるので、ピグを円滑に移動させながら、そのピグにより、温泉スケールを除去するための力(以下「スケール除去力」という場合がある)であって、管内クリーニングに適切または必要なものを生み出すことができる。
【0043】
この発明の第9の形態によれば、前記曲管部の曲率半径をR*とするとき、R*は1.5D以上、かつ1.1≦d/D≦1.4とするので、第8の形態の場合と同様に、ピグを円滑に移動させながら、そのピグにより、管内クリーニングに適切または必要なスケール除去力を生み出すことができる。なお、曲管部の曲率半径R*は、分岐部が直管部を備えていない場合には、温泉水配管との接続位置の近傍において曲管部が構成する、温泉水配管の管軸を接線とする円弧の曲率半径(つまりR)を意味する。分岐部が直管部を備えている場合には、曲管部の曲率半径R*は、曲管部と直管部との境界位置の近傍において曲管部が構成する、直管部の管軸を接線とする円弧の曲率半径を意味し、それ故、直管部が温泉水配管と同軸であるときは、R*=Rであると考えてよい。
【0044】
なお、第8及び第9の形態におけるピグの外径dとは、常温大気開放時におけるピグの外径であり、測定の仕方次第でピグの外径が複数定まる場合には、測定された外径のうち最大のものを意味する。
【0045】
この発明の第10の形態によれば、分岐部はFRP製であるので、温泉水による腐食の影響を受けにくく、分岐部内面を平滑に保つことができ、ピグを滑らかに移動させることができる。また、FRP製の分岐部(これを温泉水配管に取り付けるために必要な接続構造を含む)の設計や製作に格段の困難性はないので、ピグによる管内クリーニングの対象である温泉水配管が既設であるか新設であるかに拘らず、対策工事の短期化や低コスト化の要請に応えることができる。
【0046】
この発明の第11の形態、第12の形態及び第13の形態によれば、分岐部の一部または全部がFEP製であるので、第10の形態と同様の効果を奏する。加えて、ユニット化されているので、分岐部の強度を高めることができ、対策工事の際の取り扱いが容易になる。また、ユニット化はプレファブに好適であるので、分岐部のプレファブを行うことにより対策工事をより短期化することができる。
【0047】
この発明の第14の形態によれば、ピグの表面は、弾性を有する発泡樹脂製であり、温泉水配管の内壁面に弾性的に接触するように構成してあるので、ピグによる管内クリーニングに適切または必要なスケール除去力を確保でき、それでいて温泉水配管の途中でピグが停止するおそれを小さくすることができる。また、この第14の形態によれば、ピグには金属製の突起がないので、温泉水配管が、金属に比べて強度が劣る素材(たとえば熱硬化性樹脂に代表される合成樹脂)で作製されている場合や、そのような強度的に劣る素材で作製されている部品や部材を使用している場合であっても、ピグがそれらに損傷を与えることはない。
【0048】
この発明の第15の形態によれば、温泉水配管外において、ピグをピグ往復移動経路に投入することができ、ピグ往復移動経路から回収することができるので、たとえば、従来のピグ挿入作業のように温泉水配管の一部を開放し、そこからピグを温泉水配管内に導入する作業は不要になり、総じて、ピグによる管内クリーニングの作業を効率化することができる。
【0049】
この発明の第16の形態によれば、投入部は回収部を兼ね、回収部は投入部を兼ねるので、スケール付着抑制のために必要なピグの投入と回収の作業を同じ場所で行うことができ、また少人数で行うことができ、便利であり、総じて、ピグによる管内クリーニングの作業を効率化することができる。
【0050】
この発明の第17の形態によれば、ピグ往復移動経路に沿ったピグの自動往復移動を駆動し制御する駆動制御部を備えているので、ピグによる管内クリーニング作業の省力化を図ることができる。なお、駆動制御部は、ピグ往復移動経路に設置されているバルブ、ポンプ等の駆動、ピグのピグ往復移動経路への投入、ピグ往復移動経路における移動およびピグ往復移動経路にからの回収の検知、検知結果に基づくバルブ、ポンプ等の駆動の制御、異常動作時の警告等の機能を有している。駆動制御部は、更に、温泉水配管の所有者、管理者、管理実施者等との間の通信機能や温泉水配管の所有者、管理者、管理実施者等からの命令信号に基づきピグの自動往復移動を制御する機能を有していてもよい。
【0051】
この発明の第18の形態によれば、駆動制御部は、ピグを、毎秒0.1〜0.3mでピグ往復移動経路を自動で往復移動するように駆動し、制御するので、現実の温泉水配管を対象とする温泉スケールの付着抑制により適した条件の下で管内クリーニングを行うことができる。なお、この移動速度範囲であれば、ピグの表面が弾性を有する発泡樹脂製であっても、温泉水配管の内壁面へのスケールの付着及び当該内壁面でのスケールの成長を予防するために必要なスケール除去力を生み出すことができる。
【0052】
この発明の第19の形態によれば、温泉水配管の内壁面にピグの外表面を確実に接触させることができ、且つ、ピグの移動の妨げとならない適度の大きさの摩擦力が両面間に作用させることができるので、ピグを円滑に移動させながら、管内クリーニングに適切または必要なスケール除去力を生み出すことができる。それ故、第19の形態によれば、温泉水配管の内壁面への温泉スケールの付着や当該内壁面での温泉スケールの成長を予防できるので、温泉スケールの付着を抑制できることは言うまでなく、配管内壁に堆積または固化した温泉スケールの除去が必要になる機会を減らすことができ、作業者による温泉水配管の点検・保守の頻度を減らすことができる。
また、この第19の形態においては、ピグの温泉水配管内の移動速度が毎秒0.1〜0.3mであるので、温泉水配管内におけるピグの突発的な移動や停止が起こり難くなり、スケール除去力が不安定にならない。
【0053】
この発明の第20の形態によれば、ピグには金属製の突起がないので、温泉水配管が、金属に比べて強度が劣る素材(たとえば熱硬化性樹脂に代表される合成樹脂)で作製されている場合や、そのような強度的に劣る素材で作製されている部品や部材を使用している場合であっても、ピグがそれらに損傷を与えることはない。それ故、温泉水配管が金属に比べて強度が劣る素材で作製されている場合であっても、この発明を適用することができる。
【0054】
この発明の第21の形態によれば、湾曲する曲管部が温泉水配管に接続するので、ピグを分岐部を通過させながら、分岐部が接続してある温泉水配管の離隔した二箇所の間を円滑に往復移動させることができ、温泉水配管の内壁面への温泉スケールの付着や当該内壁面での温泉スケールの成長を効率的に予防することができる。また、湾曲する曲管部を備える分岐部を介在させるだけで温泉水配管とピグの往復移動経路とを接続することができ、スケール対策工事の短期化や低コスト化を実現することができる。
【0055】
この発明の第22の形態によれば、常温大気開放時におけるピグの外径dを、温泉水配管の内径Dとの関係で定まる一定の範囲に設定する(dは、1.1D以上、1.4D以下にする)ので、ピグを円滑に移動させながら、そのピグにより、管内クリーニングに適切または必要なスケール除去力を生み出すことができる。
【0057】
この発明の第23の形態によれば、軟質の素材により構成したピグであっても、管内で不自然な変形や挙動をすることなく、管軸に沿って移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】この発明で使用する配管路の側面図である。
図2】制御盤の信号によりピグがランチャーから発射された時の配管の側面図である。
図3】ピグがキャッチャーに到着した時の配管の側面図である。
図4】制御盤の信号によりピグがキャッチャーから発射された時の配管の側面図である。
図5】ピグがランチャーに到着した時の配管の側面図である。
図6】この発明で使用する分岐部の側面図である。
図7】この発明で使用する別の分岐部の側面図である。
図8】この発明で使用する別の分岐部の説明図である。
図9】この発明で使用する分岐部の接続状態の側面図である。
図10】この発明で使用する別の分岐部の接続状態の側面図である。
図11】この発明で使用するピグの正面図及び側面図である。
図12】この発明の実施例を示す簡略側面図である。
図13】ピグの移動速度とピグの外表面と管内壁面との間に作用する摩擦力との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下、この発明の実施形態または実施例を示し、この発明を詳細に説明する。その際、必要に応じて図表を参照しつつ説明するが、各図表において同じ部分または相当する若しくは共通する部分にはこれと同じ符号を付し、一部の説明を省略する。一つ符号を全ての図表に付している場合もあれば、一部の図表のみに付して残りの図表には付していない場合もある。いうまでもなく、この発明は、図面に記載された実施の形態や実施例に限定されるものではない。
【0060】
<温泉スケール付着抑制装置>
この発明の一実施形態である温泉スケール付着抑制装置について、図1から図5を参照しながら説明する。これらの図1から図5中の分岐部28、29は、説明を簡明にするため、図6(a)に示すような管軸が円弧の曲管部のみからなる配管継手とするが、後述のとおり、このような配管継手に限定されるものではない。
【0061】
1)基本構成
1.1) 温泉水移送経路
後述の電動弁14、24が開状態で、電動弁15、25が閉状態である場合、温泉水は、図1において矢印で示すように、紙面左側から、配管経路1内、配管経路の一部1内の順に移動し、配管経路の一部1と温泉水配管1との接続位置(または温泉水配管1に接続する配管経路の一部1の開口部)C0を経由して温泉水配管1内に移動し、温泉水配管1内を直進し、配管経路の一部1と温泉水配管1との接続位置(または温泉水配管1に接続する配管経路の一部1の開口部)C0を経由して、配管経路の一部1内、配管経路1内の順に移動して、紙面右側に移動する。
【0062】
なお、上記のような温泉水の移動経路(以下「温泉水移送経路」という場合がある)に沿った温泉水の流れを遮断するには、電動弁14、24のうち少なくとも一方(より確実には両方)を閉状態にすればよい。
【0063】
1.2) 装置構成
温泉スケール付着抑制装置は、図1に示すように、温泉水配管1の離隔した二箇所の一方に接続される分岐部28と、分岐部28に一端が接続されるピグ投入・回収用配管2と、ピグ投入・回収用配管2の途中に設置される電動弁15と、ピグ投入・回収用配管2の他端が接続されるランチャー11と、ランチャー11または電動弁15とランチャー11との間に設置されるセンサー32と、ランチャー11に注入するための水を貯蔵する貯蔵タンク18と、ランチャー11と貯蔵タンク18との間に設置され、貯蔵タンク18が貯蔵する水をランチャー11内に付勢して注入するためのポンプ12と、ランチャー11とポンプ12との間に設置される電動弁16と、ランチャー11内に残留する水を排出するための電動弁17とを備えるとともに、温泉水配管1の離隔した二箇所の他方に接続される分岐部29と、分岐部29に一端が接続されるピグ投入・回収用配管3と、ピグ投入・回収用配管3の途中に設置される電動弁25と、ピグ投入・回収用配管3の他端が接続されるキャッチャー21と、キャッチャー21または電動弁25とキャッチャー21との間に設置されるセンサー33と、キャッチャー21に注入するための水を貯蔵する貯蔵タンク34と、キャッチャー21と貯蔵タンク34との間に設置され、貯蔵タンク34が貯蔵する水をキャッチャー21内に付勢して注入するためのポンプ22と、キャッチャー21とポンプ22との間に設置される電動弁26と、キャッチャー21内に残留する水を排出するための電動弁27とを備えている。
【0064】
温泉水配管1は、直管である必要はなく、一本の配管である必要もなく、複数個の配管が継手介して接続されて構成されているものであってよい。温泉水配管1の離隔した二箇所により画される温泉水配管1の範囲は、温泉スケールの付着を予防することで、その付着や成長を防止する必要がある範囲を広めに包含する範囲にしてある。より具体的には、配管経路の一部1aと温泉水配管1との接続位置C0と、温泉水配管1と分岐部29との接続位置C[1-29]との間の距離はゼロではなく、配管経路の一部1bと温泉水配管1との接続位置C0と、温泉水配管1と分岐部28との接続位置C[1-28]との間の距離もゼロではない。温泉水配管1は、接続位置C[1-28]よりも温泉水配管1側または接続位置C[1-29]がある側で配管経路1Aの一部1aと接続しており、それ故、その接続位置C0は、温泉水配管1の管軸に沿ってピグ41が直進する領域に配置している。また、温泉水配管1は、接続位置C[1-29]よりも温泉水配管1側または接続位置C[1-28]がある側で配管経路1Bの一部1bと接続しており、それ故、その接続位置C0は、温泉水配管1の管軸に沿ってピグ41が直進する領域に配置している。
【0065】
ピグ投入・回収用配管2、3は、直管である必要はなく、一本の配管である必要もなく、複数個の配管が継手介して接続されて構成されているものであってよい。ピグ投入・回収用配管2は、接続位置C[2-28]において分岐部28と接続し、ピグ投入・回収用配管3は、接続位置C[3-29]において分岐部29と接続する。
【0066】
センサー32、33は、ランチャー11、キャッチャー21に装着され、ランチャー11、キャッチャー21内のピグの存在を感知し、制御装置31に電気信号を発するものである。
【0067】
センサー32、33、電動弁14、15、16、17、24、25、26、27、ポンプ12、22は、制御装置31に電気的に接続され、制御装置31は、センサー32、33の信号により電動弁14、15、16、17、24、25、26、27、ポンプ12、22の動作を制御することができる。
【0068】
貯蔵タンク18、34に貯蔵されている水は、原則として、水道水に代表される温泉スケールを生じさせない水である。しかし、グ41による管内クリーニングを行うために必要な水は、ピグ41に水圧を与えられる水であれば足りる。その意味においては、貯蔵タンク18、34に貯蔵されている水は、温泉水であってもよい。
【0069】
1.3) 分岐部28、29
(1)図6に示す分岐部
分岐部28、29は、ピグ投入・回収用配管2、3と温泉水配管1とを接続する配管継手であって、管軸nの一部または全部が円弧である曲管部を備えるものである。分岐部28、29は、温泉水配管1と配管経路1A、1Bとを接続する継手部分を備えていてもよい。
【0070】
最も構造が簡素な分岐部28、29は、図6(a)に示す側面図のとおり、管軸nの全部が円弧である曲管部のみからなるものである。
【0071】
分岐部28、29は、図6(b)に示す側面図のとおり、互いに別部材同士である曲管部28a、29aと直管部28b、29bとを接続位置Cabにおいて接続して構成されているものであってもよく、図6(c)に示す側面図のとおり、曲管部28a、29aと直管部28b、29bとが接続位置Cab*において連続し、一体として構成されているものであってもよい。
【0072】
図6(a)(b)(c)に示す分岐28、29を使用して温泉スケール付着抑制装置を構成するときは、別途、温泉水配管1と配管経路1A、1Bとを、分岐部28、29とは別の継手を用いてまたは配管同士を接続するその他の公知の手段により、接続する必要がある(図1から図5図8(a)、図9図12参照)。
【0073】
(2)図7に示す分岐部
配管経路1A、1Bを温泉水配管1ではなく、分岐部28、29に接続しても、温泉スケール付着抑制装置を構成することができる。図7は、その場合の分岐部28、29の側面図である。つまり、分岐部28、29は、別途用意した継手を用いてまたは配管同士を接続するその他の公知の手段により、図6(b)に示す直管部28b、29bに、当該直管部28b、29bとは別の部材として配管経路の一部1a、1bが接続位置C0において接続しているもの(図7(a)参照)や、図6(c)に示す直管部28b、29bに、当該直管部28b、29bとは別の部材として配管経路1A、1Bが接続位置C0において接続しているもの(図7(b)参照)であってよく、図6(b)に示す直管部28b、29bに、配管経路の一部1a、1bが接続位置C0において連続し、一体として構成されているもの(図7(c)参照)や、図6(c)に示す直管部28b、29bに、配管経路の一部1a、1bが接続位置C0*において連続し、一体として構成されているもの(図7(d)参照)であってもよい。
【0074】
(3)管内径
ピグ41の円滑な往復移動を実現するためには、次に掲げる(ア)から(エ)までの少なくとも一つ、望ましくは全部に該当することが好ましい。
【0075】
(ア)接続位置Cab及び接続位置Cab*においても、曲管部28a、29aと直管部28b、29bとが同じ内径になっている
(イ)接続位置C[1-28]、C[1-29]において、温泉水配管1と分岐部28、29とが同じ内径になっている
(ウ)接続位置Cab、Cab*において、温泉水配管1と直管部28b、29bとが同じ内径になっている
(エ)接続位置C[2-28]、C[3-29]において、ピグ投入・回収用配管2、3と分岐部28、29とが同じ内径になっている、
なお、上記(ア)から(エ)のいずれの場合も、互いに異なる内径が滑らかに漸近して当該接続位置において同じ内径になっている場合を含む。
【0076】
(3)曲管部の湾曲
図6(a)に示す分岐部28、29の場合、曲管部の管軸nが描く円弧の半径Rは、後述のとおり、Rは1.5D以上、かつ1.1≦d/D≦1.4に設定することが望ましい。当該円弧の半径Rは、図9に示すように、分岐部28、29と温泉水配管1との接続位置C[1-28]、C[1-29]の近傍における半径とする。ただし、測定の仕方次第で当該円弧の半径Rが複数定義できてしまう場合や、接続位置C[1-28]、C[1-29]の近傍以外の位置における当該円弧の半径の方がより小さくなる場合には、円弧の半径として最小になるものを、当該円弧の半径Rとする。当該曲管部の管軸nの曲率半径Rは、後述のとおり、Rは1.5D以上、かつ1.1≦d/D≦1.4に設定することが望ましい。
【0077】
図6(b)や図7(a)(c)に示す分岐部28、29の場合、曲管部の管軸nの曲率半径Rは、後述のとおり、Rは1.5D以上、かつ1.1≦d/D≦1.4に設定することが望ましい。当該曲管部の管軸nの曲率半径Rは、接続位置Cabの近傍における曲率半径とする。ただし、測定の仕方次第で管軸nの曲率半径Rが複数定義できてしまう場合や、接続位置Cabの近傍における管軸nの曲率半径よりも、その他の位置における管軸nの曲率半径の方が小さくなる場合には、管軸nの曲率半径としてより小さくまたは最も小さくなるものを、当該曲管部の管軸nの曲率半径Rとする。
【0078】
図6(c)や図7(b)(d)に示す分岐部28、29の場合、当該曲管部の管軸nの曲率半径R*は、後述のとおり、R*は1.5D以上、かつ1.1≦d/D≦1.4に設定することが望ましい。当該曲管部の管軸nの曲率半径R*は、接続位置Cab*の近傍における半径とする(図10参照)。ただし、測定の仕方次第で管軸nの曲率半径R*が複数定義できてしまう場合や、接続位置Cab*の近傍における管軸nの曲率半径よりも、その他の位置における管軸nの曲率半径の方が小さくなる場合には、管軸nの曲率半径としてより小さくまたは最も小さくなるものを、当該曲管部の管軸nの曲率半径R*とする。
【0079】
(4)接続状態
図9は、図6(a)に示す分岐部28、29の接続状態の側面図である。この図9では、温泉水配管1の管軸m、分岐部28、29の管軸n及び配管経路の一部1a、1bの管軸kが同一平面上に配置するように描写されている。しかし、分岐部28、29は、それら三つの管軸が同一平面上に配置する構成のものに限定されない。
【0080】
図10は、図7(d)に示す分岐部28、29の接続状態の側面図である。この図10では、温泉水配管1の管軸m、分岐部28、29の曲管部28a、29aの管軸n、直管部28b、29bの管軸m28*、m29*及び配管経路の一部1a、1bの管軸k*が同一平面上に配置するように描写されている。しかし、分岐部28、29は、それら四つの管軸が同一平面上に配置する構成のものに限定されない。
【0081】
図6(b)(c)ならびに図7(a)(b)(c)のいずれの分岐部28、29においても、温泉水配管1の管軸m、分岐部28、29の管軸n及び配管経路の一部1a、1bの管軸のそれぞれの方向が特定の方向にある構成のものに限定されない。たとえば、図7に示す分岐部28、29は、曲管部28a、29aの管軸が紙面右側から左側にかけて紙面上方に向かって上昇し、配管経路の一部1a、1bの管軸も紙面上方に向かって上昇している。しかし、分岐部28、29は、両管軸が同一方向に配向しているものに限定されない。
【0082】
また、分岐部28、29は、その曲管部の管軸が同一平面上にあるものに限られない。
【0083】
図8(a)は、図6(a)に示す分岐部28、29の一端を接続位置C[1-28]、C[1-29]において温泉水配管1に接続し、他端を接続位置C[2-28]、C[3-29]においてピグ投入・回収用配管2、3に接続し、配管経路1A、1Bをそれぞれの接続位置C1において温泉水配管1に接続した状態を示している。接続位置C1は、接続位置C[1-28]、C[1-29]近くの温泉水配管1側において、配管経路の一部1a、1bの一端を温泉水配管1に接続したときの、当該配管経路の一部1a、1bの他端に相当する位置である。
【0084】
また、図8(a)は、図7(d)に示す分岐部28、29の一端を接続位置C[1-28]*、C[1-29]*において温泉水配管1に接続し、他端を接続位置C[2-28]、C[3-29]においてピグ投入・回収用配管2、3に接続し、配管経路1A、1Bをそれぞれの接続位置C1*において温泉水配管1に接続した状態を示している。接続位置C1*は、接続位置C[1-28]*、C[1-29]*近くの分岐部28、29側において、配管経路の一部1a、1bの一端を直管部2、3に接続したときの、当該配管経路の一部1a、1bの他端に相当する位置である。
【0085】
図8に示すように、分岐部28、29またはその曲管部の管軸は、三次元的に湾曲していてもよい。また、図8に示すように、配管経路1A、1Bの管軸も、図8に示すように、三次元的に湾曲していてもよい。
【0086】
図9は、図6(a)に示す分岐部28、29の一端を接続位置C[1-28]、C[1-29]において温泉水配管1に接続し、他端を接続位置C[2-28]、C[3-29]においてピグ投入・回収用配管2、3に接続し、配管経路1a、1bをそれぞれの接続位置C0において温泉水配管1に接続した状態を示している。温泉水配管1と配管経路1aとの接続位置C0と接続位置C[1-28]との距離Laならびに温泉水配管1と配管経路1bとの接続位置C0と接続位置C[1-29]との距離Lbは、いずれもより小さい方が、ピグによる管内クリーニングの範囲が広がるので好ましい。一方、配管経路1a、1bの温泉水配管1内への開口部を曲管部に配置すると、ピグが当該開口部に引っ掛かる、没入するなどの移動障害が起こる危険が高くなる。開口部が直管部に配置する場合であっても、接続位置C[1-28]、C[1-29]に近すぎると移動障害の発生の危険は残る。それ故、距離La、Lbは、ある程度の大きさに止めるのが好ましい。
【0087】
図10は、図7(d)に示す分岐部28、29の一端を接続位置C[1-28]*、C[1-29]*において温泉水配管1に接続し、他端を接続位置C[2-28]、C[3-29]においてピグ投入・回収用配管2、3に接続し、配管経路1a、1bをそれぞれの接続位置C0*において温泉水配管1に接続した状態を示している。分岐部28側における接続位置C[1-28]*と接続位置C0*との距離La*及び接続位置C[1-28]*と接続位置Cab*との距離La#ならびに分岐部29側における接続位置C[1-29]*と接続位置C0*との距離Lb*及び接続位置C[1-29]*と接続位置Cab*との距離Lb#については、距離La#、Lb#は、いずれもより小さい方が、その分距離La*、Lb*は大きい方が、ピグによる管内クリーニングの範囲が広がるので好ましい。尤も、直管部28b、29bも、温泉水配管1の延伸部であると捉えるときは、距離La#、Lb#は大きく、その分距離La*、Lb*は小さい方が、ピグによる管内クリーニングの範囲が広がるので好ましい。一方、配管経路1a、1bの温泉水配管1内への開口部を曲管部に配置すると、ピグの移動障害が起こる危険が高くなり、開口部が直管部に配置する場合であっても、接続位置Cab*、Cab*に近すぎると移動障害の発生の危険は残る。それ故、距離La*、Lb*、La#、Lb#は、ある程度の大きさに止めるのが好ましい。
【0088】
1.4) ピグ
ピグ41は、発泡樹脂製の弾性体から成る材料からなり、温泉水配管1の内面に弾性的に接触する形状で、表面に金属製の突起が無い形状のものである。ピグ41の形状の代表例は、図11に示すような正面視または断面視したとき円形であり、かつ、平面視したとき、図11(a)に示すような俵形、図11(b)に示すような角丸の扁平八角形、または図11(c)に示すようなオーバルまたは角丸長方形であるものである。ピグ41の長手方向の両端部は、接続位置C[1-28]、C[1-29]の通過前後において当該両端部を分岐部28、29や温泉水配管1の各内壁面に接触しにくくさせるため、つまり円滑な往復移動を実現するため、円錐状、コーン状、円錐台状、半球状、その他先端に向かって縮径する形状にするのが好ましい。
【0089】
1.5) ピグ往復移動経路
後述のピグ往路とピグ復路により構成される、ランチャー11とキャッチャー21との間をピグ41が往復する経路(以下「ピグ往復移動経路」という場合がある)は、温泉水移送経路と一部範囲が重複しており、より詳しくは、電動弁14、15、24、25の開閉状態の選択により、温泉水配管1と配管経路の一部1aとの接続位置C0と温泉水配管1と配管経路の一部1bとの接続位置C0との間の範囲にある温泉水配管1に接続可能である。
【0090】
1.6) ランチャー11及びキャッチャー21
ランチャー11は、作業者が、そこにピグ41を入れて、ピグ投入・回収用配管2、ひいては分岐部28に投入することができ、分岐部28からピグ投入・回収用配管2を通じてそこに到達したピグ41を取り出して回収できるように構成されている。キャッチャー21は、作業者が、そこにピグ41を入れて、ピグ投入・回収用配管3、ひいては分岐部29に投入することができ、分岐部29からピグ投入・回収用配管3を通じてそこに到達したピグ41を取り出して回収できるように構成されている。ランチャー11及びキャッチャー21は、いずれも、ピグ41をピグ往復移動経路に投入する投入部と、ピグ往復移動経路から回収する回収部の両方を兼ねている。
【0091】
2)温泉スケール付着抑制装置の動作
上記のように構成された温泉スケール付着抑制装置の動作について具体的に説明する。
【0092】
2.1) 温泉水移送状態
制御装置31からの電気信号により電動弁14、24を開、電動弁15、16、17、25、26、27を閉の状態にすると、温泉水が、図1の紙面左側から配管経路1A内を流れ、配管経路の一部1aを通じて温泉水配管1内に流れ込み、配管水配管1内を流れ、配管経路の一部1bを通じて配管経路1B内を流れ、紙面右側へ流れ出て行く経路(以下「温泉水移送経路」という場合がある)が構成される。
【0093】
なお、温泉水移送経路が構成されている状態(以下「温泉水移送状態」という場合がある)は、多くの場合、温泉水が、その使用目的のために、その使用場所に移送されている状態であり、長期にわたる温泉水の移送により、温泉水移送経路を構成する配管の内壁面への温泉スケールの付着や、当該内壁面における温泉スケールの堆積や固化が問題になってくる状態である。
【0094】
2.2) ピグ往路
制御装置31からの電気信号により電動弁14、24を閉、電動弁15、16、25、27を開にし、ポンプ12を作動させる。すると、温泉水移送経路は遮断され、温泉水は温泉水移送経路を流れなくなる一方で、ピグ往復移動経路が構成される。そして、ランチャー11内に貯蔵タンク18内の水が流れ込む。
【0095】
ランチャー11内のピグ41は、流れ込んできた水の圧力を受けて、ピグ投入・回収用配管2内から分岐部28内へ移動し、温泉水配管1と分岐部28との接続位置C[1-28]を通過して温泉水配管1内に移動し、温泉水配管1の管軸に沿って直進し、温泉水配管1の配管経路の一部1aとの接続位置C0、次いで配管経路の一部1bとの接続位置C0を通過し、さらに温泉水配管1と分岐部29との接続位置C[1-29]を通過して、温泉水配管1内から分岐部29内に、分岐部29内からピグ投入・回収用配管3内に移動し、最終的にキャッチャー21内に到達し移動を停止する。
【0096】
貯蔵タンク18からキャッチャー21内に到達した水は、電動弁27を通過してキャッチャー21外に排出される(図2参照)。
【0097】
上記のピグ41の移動の間、ピグ41は、その外表面を、温泉水配管1の内壁面と弾性的に接触させながら移動するので、接続位置C[1-28]と接続位置C[1-29]との間の温泉水配管1の内壁面を、拭き取って行く。その結果、温泉水配管1と配管経路の一部1aと接続位置C0と温泉水配管1と配管経路の一部1bとの接続位置C0との間の温泉水配管1の内壁面への温泉スケールの付着や、当該内壁面での温泉スケールの成長は予防され、温泉スケールの付着は抑制される。
【0098】
なお、ピグ41がキャッチャー21内に到達すると、センサー33はこれを感知し、電気信号を制御装置31へ送り、その電気信号を受けた制御装置31は、電気信号をポンプ12及び電動弁16へ送り、ポンプ12を停止させ、電動弁16を閉にする(図3参照)。
【0099】
2.3) ピグ復路
制御装置31からの電気信号により、電動弁14、16、24を閉にしたままで、電動弁17、26を開、電動弁27を閉にし、ポンプ22を作動させる。すると、キャッチャー21内に貯槽タンク34内の水が流れ込む。キャッチャー21内のピグ41は、流れ込んできた水の圧力を受けて、ピグ投入・回収用配管3内から分岐部29内へ移動し、温泉水配管1と分岐部29との接続位置C[1-29]を通過して温泉水配管1内に移動し、温泉水配管1の管軸に沿って直進し、温泉水配管1の配管経路の一部1bとの接続位置C0、次いで温泉水配管1と配管経路の一部1aとの接続位置C0通過し、さらに温泉水配管1と分岐部28との接続位置C[1-28]を通過して、温泉水配管1内から分岐部28内に、分岐部28内からピグ投入・回収用配管2内に移動し、最終的にランチャー11内に到達し移動を停止する。
【0100】
貯蔵タンク34からランチャー11内に到達した水は、電動弁17を通過してランチャー11外に排出される(図4参照)。
【0101】
上記のピグ41の移動の間、ピグ41は、その外表面を、温泉水配管1の内壁面と弾性的に接触させながら移動するので、接続位置C[1-29]と接続位置C[1-28]との間の温泉水配管1の内壁面を、拭き取って行く。その結果、温泉水配管1と配管経路の一部1bと接続位置C0と温泉水配管1と配管経路の一部1aとの接続位置C0との間の温泉水配管1の内壁面への温泉スケールの付着や、当該内壁面での温泉スケールの成長は予防され、温泉スケールの付着は抑制される。
【0102】
なお、ピグ41がランチャー11内に到達することで、センサー32がこれを感知し、電気信号を制御装置31に送り、その電気信号を受けた制御装置31は、電気信号をポンプ22及び電動弁26へ送り、ポンプ22を停止させ、電動弁26を閉にする(図5参照)。
【0103】
2.4) 温泉水移送状態への復帰
制御装置31からの電気信号により電動弁14、24を開、電動弁15、17、25を閉にする。これにより、ピグ往復移動経路は遮断され、温泉水移送経路が構成され、当初の温泉水移送状態に戻す。
【0104】
<温泉スケール付着抑制方法>
1) 温泉スケール付着抑制方法の一例は、次の工程を有する。
[工程1] 温泉水移動経路及び温泉スケール付着抑制装置を用意する(図1参照)。
[工程2] 温泉水移送経路を一旦遮断し、温泉水が温泉水移送経路を流れない状態にするとともに、ピグ往復移動経路を構成する(図2参照)。
[工程3] ランチャー11内(またはキャッチャー21内)にピグ41を配置し、そのピグ41をランチャー11内(またはキャッチャー21内)からピグ往復移動経路へ投入し、ピグ往復移動経路に沿って移動させ、キャッチャー21内(またはランチャー11内)まで到達させる(図2参照)。その移動の間、ピグ41の外表面により、接続位置C[1-28]と接続位置C[1-29]との間の温泉水配管1の内壁面を拭き取る。その拭き取りにより、温泉水配管1と配管経路の一部1aと接続位置C0と温泉水配管1と配管経路の一部1bとの接続位置C0との間の温泉水配管1の内壁面への温泉スケールの付着や、当該内壁面での温泉スケールの成長を予防する。
なお、ピグ41がキャッチャー21内に到達したら、ポンプ12を停止させ、電動弁16を閉にする(図3参照)。
[工程4] 必要があれば、工程3に引き続き、工程4を行う。つまり、キャッチャー21内(またはランチャー11内)のピグ41を、キャッチャー21内(またはランチャー11内)からピグ往復移動経路へ投入し、ピグ往復移動経路に沿って移動させ、ランチャー11内(またはキャッチャー21内)まで到達させる(図4参照)。その移動の間、ピグ41の外表面により、接続位置C[1-29]と接続位置C[1-28]との間の温泉水配管1の内壁面を拭き取る。その拭き取りにより、温泉水配管1と配管経路の一部1bと接続位置C0と温泉水配管1と配管経路の一部1aとの接続位置C0との間の温泉水配管1の内壁面への温泉スケールの付着や、当該内壁面での温泉スケールの成長を予防する。
なお、ピグ41がランチャー11内に到達したら、ポンプ22を停止させ、電動弁26を閉にする(図5参照)。
[工程5] 必要があれば、工程4に引き続き、工程3を再度行い、更に必要があれば、当該工程3に引き続き、工程4を再度行い、以降も同様とする。
[工程6] 工程3ならびに、必要があれば、工程4または工程5を実行し、管内クリーニングが終了したときは、温泉水移送経路を復活させる。その際、ピグ往復移動経路を遮断し、ピグ往復移動経路に温泉水が流れ込まないようにする。また、必要に応じて、キャッチャー21またはランチャー11から、ピグ41を回収する。
【0105】
2) ピグ41の発射
ピグ41を水圧により、ランチャー11内から発射するためにはポンプ12を駆動させる必要があり、キャッチャー21内から発射するためにはポンプ22を駆動させる必要がある。ポンプ12、22の電源をオンにする操作手法としては、作業者による手動操作、タイマーを設定したうえでの自動操作、作業者による遠隔操作などを採用することができる。
【0106】
3) 管内クリーニングの実行頻度
管内クリーニングは、温泉水配管1の内壁面に温泉スケールが付着する前に行うことが、付着した温泉スケールの成長の芽を摘むという意味においても理想的であるので、事情が許す限り、より高頻度で実行することが望ましい。しかし、コスト低減要請やその他の諸般の事情により、それほど頻繁に実行できないときは、当該内壁面に付着した温泉スケールの成長が一定の許容水準を超える前にその成長を予防するに足る頻度で実行する。
【0107】
温泉スケールの付着や付着したスケールの成長は、温泉水の種類、性質等に依存する挙動なので、管内クリーニングの実行頻度は、当該挙動を実測したうえで個別に決定することが望ましく、その一例は、1ヶ月から3ヶ月に一度(一往復)である。
【実施例】
【0108】
<実施例1>
以下、この発明の一実施例を、図12に基づいて説明する。
【0109】
1)装置の基本構成
図12は、工場敷地内に設置した、温泉スケール付着抑制装置の実験設備の簡略側面図である。この実験設備は、電動弁14、24が開状態で、電動弁15、25が閉状態である場合、貯蔵タンク18に貯蔵されている水が、ポンプ40により付勢されて、配管経路1A、1Bに相当する温泉水循環配管4を循環する温泉水移送経路を備えている。この温泉水移送経路では、水が、紙面左側から、温泉水循環配管4内、配管経路の一部1内の順に移動し、配管経路の一部1と温泉水配管1との接続位置C0を経由して温泉水配管1内に移動し、温泉水配管1内を直進し、配管経路の一部1と温泉水配管1との接続位置C0を経由して、配管経路の一部1内、温泉水循環配管4内の順に移動して、紙面右側に移動する。
【0110】
また、この実験設備は、管内クリーニングの対象である温泉水配管1と、温泉水配管1の離隔した二箇所のうち一方に接続される分岐部28と、分岐部28に一端が接続されるピグ投入・回収用配管2と、ピグ投入・回収用配管2の途中に設置される電動弁15と、ピグ投入・回収用配管2の他端が接続されるランチャー11と、ランチャー11または電動弁15とランチャー11との間に設置されるセンサー32と、ランチャー11に注入するための水を貯蔵する貯蔵タンク18と、ランチャー11と貯蔵タンク18との間に設置され、貯蔵タンク18が貯蔵する水をランチャー11内に付勢して注入するためのポンプ12と、ランチャー11とポンプ12との間に設置される電動弁16と、ランチャー11内に残留する水を貯蔵タンク18へ排出するための電動弁17とを備えるとともに、温泉水配管1の離隔した二箇所の他方に接続される分岐部29と、分岐部29に一端が接続されるピグ投入・回収用配管3と、ピグ投入・回収用配管3の途中に設置される電動弁25と、ピグ投入・回収用配管3の他端が接続されるキャッチャー21と、キャッチャー21または電動弁25とキャッチャー21との間に設置されるセンサー33と、キャッチャー21に注入するための水を貯蔵する前出の貯蔵タンク18と、キャッチャー21と貯蔵タンク18との間に設置され、貯蔵タンク18が貯蔵する水をキャッチャー21内に付勢して注入するためのポンプ22と、キャッチャー21とポンプ22との間に設置される電動弁26と、キャッチャー21内に残留する水を貯蔵タンク18へ排出するための電動弁27とを備えている。
【0111】
この実験設備は、図1に示す温泉スケール付着抑制装置における貯蔵タンク34を、貯蔵タンク18で兼用し、貯蔵タンク18から排出した水を貯蔵タンク18に戻す構成になっている。この点を除き、図1に示す温泉スケール付着抑制装置の基本構成と同じであり、故にピグ往復移動経路も、図1に示す温泉スケール付着抑制装置の基本構成におけるそれと同じである。
【0112】
電動弁14、15、16、17、24、25,26、27、ポンプ12、22は、制御装置31の電気信号により作動する。
【0113】
制御装置31は、ピグ41を、ランチャー11から発射させ、キャッチャー21に移動させ、キャッチャー21に到達後、再びランチャー11から発射させ、ランチャー11に戻すという往復移動及びその繰り返しを制御し、可能にしている。
【0114】
ピグ投入・回収用配管2には流量計5及び圧力計6が、ピグ投入・回収用配管3には圧力計7が取り付けてある。必要があれば、その他の計測機器をピグ投入・回収用配管2、3やその他の場所に取り付けてもよい。
【0115】
2)装置の詳細
2.1) ピグ41は、弾性を有する発泡樹脂でできている。より具体的には、ピグ本体は、軟質の発泡ウレタン樹脂製であり、その内部に存在する気泡は、主に、連続気泡であって、独立気泡ではない。ピグ外表面は、発泡ウレタン樹脂で被覆されている。ピグ41には、形状復元性が必要であり、ある程度液体透過性があることが望ましいからである。
【0116】
ピグ41の表面は、上記の弾性を有する発泡樹脂でできてはいるものの、金属製の突起は備えていない。ピグ41の表面に金属製の突起があると、温泉水配管の内壁面に付着して固化または堆積した温泉スケールの除去には役立つが、温泉水配管やそれが備える部品や部材が相対的に軟質な材質(たとえば、熱硬化性樹脂に代表される合成樹脂)で作製されているときには、温泉水配管の内壁面との接触により、当該内壁面や当該部品や部材を損傷するおそれがあるからである。ただし、そのようなおそれがない場合には、ピグ41の表面は、金属製の突起やその他の硬質部分を備えていてもよい。
【0117】
2.2) 温泉水配管1は、富士化工(株)製フジパイプ7000シリーズのガラス繊維強化プラスチック製FRP管とガラス繊維強化プラスチック製FRP継手とを接続して構成されている。
【0118】
2.3) 分岐部28、29は、ガラス繊維強化プラスチック製FRP管であり、富士化工(株)製である。分岐部28、29は、図6(a)に示すように、曲管部のみで構成され、温泉水配管1と同径であり、図9に示す接続状態で温泉水配管1に接続されている。
【0119】
2.4) ポンプは、すべて(株)荏原製作所製、電動弁は、すべて(株)キッツ製とした。
【0120】
3)実験の条件・方法
3.1) ピグ41の外径及び全長は、それらと他のパラメータとの関係を調べる場合を除き、それぞれ、φ90mm及び140mmとした。
【0121】
3.2) 温泉水配管1は、その内径Dがφ50mm(d/D=1.8)、φ65mm(d/D=1.4)、φ75mm(d/D=1.2)、φ79mm(d/D=1.1)の四種類とした。
【0122】
温泉水配管1には、固化前の温泉スケールを予め付着させておいた。より具体的には、温泉水配管1として、熱海温泉で3ヶ月にわたり温泉水の移送のために使用された配管を使用した。その配管の内壁面全体には、厚さ0.1〜0.5mm、平均で厚さ0.3mmの、Si系またはCa系の茶色の温泉スケールが付着していた。また、当該温泉スケールは、固化前であり、指で擦ることで除去できる程度であった。
【0123】
3.3) 温泉水配管1内でピグ41を移動させたときの、ピグ41による管内クリーニングの効果や温泉水配管1、分岐部28、29などの配管の損傷の有無は、目視により確認した。
【0124】
3.4) 分岐部28、29の円弧の半径Rについては、温泉水配管1の種類(内径D)ごとに、予め目星を付けておいた1.5Dの前後でこれを変動させて、ピグ41の停止、停滞等の不安定な挙動の有無を調べた。
【0125】
3.5) ピグ41を、平均厚さ0.3mmの温泉スケールが内壁面に付着している温泉水配管1内で移動させることにより、ピグの移動速度Vを流量計5の出力に基づき計測し、ピグ41と温泉水配管1の内壁面との間に生じる摩擦力Fを、流量計5と圧力計6、7の出力に基づき計測した。そして、ピグの移動速度Vを変化させて、また、d/Dも変化させて、摩擦力Fとの関係を調べた。
【0126】
摩擦力Fは、ピグ41によるスケール除去力に対応し、小さ過ぎると温泉水配管1の内壁面に温泉スケールが残留するので、大きいほど望ましいが、過大であったり、管内分布が不均一であると、ピグ41の挙動が不安定になる。
【0127】
3.6) 運転例
この実験施設の運転は、制御装置31により自動制御され、次のように行われた。
【0128】
まず、電動弁14、24を開き、電動弁15、16、17、25、26、27を閉じ、ポンプ40を作動させ、温泉水循環配管4を通じて貯槽タンク18内の水道水を循環させることで、温泉水配管1に水道水を所定の流速で所定時間(たとえば0.4m/秒の流速で3分間)流した。
【0129】
次に、電動弁14、24を閉じ、電動弁15、16、25、27を開け、ポンプ12を作動させ、貯蔵タンク18に貯蔵されている水道水をランチャー11に供給した。これにより、ランチャー11に装填されているピグ41に水圧を与え、ピグ41を、ピグ投入・回収用配管2内から、分岐部28を通じて、温泉水配管1内に移動させ、温泉水配管1内を所定の速度(たとえば0.1m/秒)で通過させ、温泉水配管1内から、分岐部29を通じて、ピグ投入・回収用配管3内に移動させ、最終的にキャッチャー21に収容させた。
【0130】
センサー33がピグ41のキャッチャー21への到着を検知したら、ポンプ12を停止させ、電動弁16、27を閉じ、電動弁14、24を閉じたままで、電動弁15、17、25、26を開き、ポンプ22を作動させ、貯蔵タンク18に貯蔵されている水道水をキャッチャー21に供給する。これにより、キャッチャー21に装填されているピグ41に水圧を与え、ピグ41を、ピグ投入・回収用配管3内から、分岐部29を通じて、温泉水配管1内に移動させ、温泉水配管1内を所定の速度(たとえば0.1m/秒)で通過させ、温泉水配管1内から、分岐部28を通じて、ピグ投入・回収用配管2内に移動させ、最終的にランチャー11に収容させた。
【0131】
センサー32がピグ41のランチャー11への到着を検知したら、電動弁16、27を閉じたままで、電動弁17、26を閉じ、ポンプ22を停止させ、電動弁15、25を閉じ、電動弁14、24を開き、ポンプ40を作動させ、温泉水循環配管4を通じて貯槽タンク18内の水道水を循環させることで、温泉水配管1に水道水を所定の流速で所定時間(たとえば0.4m/秒の流速で1分間)流した。
【0132】
その後、ポンプ40を停止し、電動弁14、24を閉じ、温泉水配管1を取り外し、温泉水配管1の内壁面における温泉スケールの状態、内壁面の損傷の有無を目視で確認した。また、上記のピグ41の移動の間は、ピグ41の不規則な停止、突発的な前進等の不安定な挙動の有無を観察した。
【0133】
4)実験結果
4.1) ピグの全長
ピグ41の全長wが100mm未満であると、ピグが分岐部28、29と温泉水配管部1との接続位置C[1-28]、C[1-29]や、温泉水配管部1と配管経路の一部1a、1bとの接続位置C0において、移動中のピグ41が回転する現象が確認された。管内クリーニングの効果の低下の原因となる。ピグ41に形状復元性を求めているため、軟質の素材を採用せざるを得ない。このことが、当該現象の原因であると推測される。
【0134】
また、ピグ41の全長wが280mmより大きいと、ピグ41が温泉水配管部管内で捩れて姿勢を崩す現象が確認された。この現象も、管内クリーニングの効果の低減の原因となる。ピグ41が軟質の素材でできていたこと、温泉水配管部1の内壁面との間で生じる摩擦力が大きくなり過ぎたこと、その摩擦力の大きさの分布が均一でないことなどが当該現象の原因であると推測される。
【0135】
それ故、管内クリーニングの効果を得るために好適なピグの全長は、100mm以上、280mm以下とした。
【0136】
なお、ピグ41の全長wは、原則として、常温大気開放時におけるピグ41の全長ではある。ただし、ピグ41が、図11に示すように胴体部と両端部とを区別できるものである場合には、ピグ41の全長wは、前記温泉水配管の内壁面と接触するピグ41の表面の範囲における、前記温泉水配管の管軸に沿った長さ(ピグ41の胴長w*)を意味するものとする。
【0137】
4.2) ピグの移動速度
ピグの移動速度Vが0.1m/秒より小さい場合には、ピグ41は管内で不規則な停止、突発的な前進等の不安定な動きが確認された。また、0.3m/秒より大きい場合には、ピグ41が通過した後の温泉水配管1の内壁面に温泉スケールの残存が確認された。これは、ピグの移動速度Vが0.3m/秒より大きくなると、安定したスケール除去力が得られないことを意味している。
【0138】
それ故、管内クリーニングの効果を得るために好適なピグの移動速度Vは、0.1m/秒以上、0.3m/秒以下とした。
【0139】
4.3) 温泉水配管の内径と分岐部の曲率半径との関係
温泉水配管1の内径Dがいずれの場合であっても、分岐部の曲率半径Rが1.5Dより小さくなると、ピグ41が、その移動の際不規則な停止、突発的な前進等の不安定な動きをすることが確認された。それ故、Rは1.5D以上とした。
【0140】
4.4) d/D
d/Dが1.1より小さいと、温泉水配管1の内壁面に温泉スケールの残存が確認され、管内クリーニングの効果が不十分であった。d/Dが1.1より小さい、つまりピグ41の外径と温泉水配管1の内径との間に大差がないと、ピグ41の外表面と温泉水配管1の内壁面との間に大きな摩擦力が作用しないことが原因であると推察される。d/Dが1.4より大きいと、温泉水配管1内でピグ41が移動する速度が低下するまたは円滑に移動できない現象が確認された。d/Dが1.4より大きい、つまりピグ41の外径が温泉水配管1の内径に比べて大きいと、ピグ41の外表面と温泉水配管1の内壁面との間に作用する摩擦力が過大になることが原因であると推察される。それ故、管内クリーニングの効果を得るために好適なd/Dは、1.1以上、1.4以下とした。
【0141】
4.5) 温泉水配管の内径とピグの外径との関係
図13は、ピグの移動速度V(m/秒)と、ピグ41の外表面と温泉水配管1の内壁面との間に作用する摩擦力F(N)との関係を、異なるd/Dについて整理したものである。この図から、摩擦力Fは、ピグの移動速度Vの増加に伴い低下し、d/Dの減少とともに低下することが分かる。また、0.1m/秒以上、0.3m/秒以下のピグの移動速度Vの範囲と、1.1以上、1.4以下のd/Dの範囲とにより画される領域(図13中の斜線が施されている領域)が、管内クリーニングの効果を得るために好適である範囲である。
【0142】
<実施例2>
以下、この発明に係る温泉スケール付着抑制装置の既設温泉水配管への設置工事方法の例について説明する。
【0143】
1.1) 当該設置工事方法の第1例は、図6(a)に示す分岐部28、29を使用する場合であり、次の工程を有する。
[工程1] 既設の温泉水配管における温泉水の流通を停止させ、引き続く設置工事に備える。
[工程2] 既設の温泉水配管の離隔した二箇所において、当該温泉水配管からある程度の長さを切除する。
[工程3] 前記二箇所の間の温泉水配管1の両端またはその近くの接続位置C0において継手を取り付けるなどして、配管経路1A、1Bの一端を接続可能な構造に加工する。
[工程4] 前記二箇所の間の温泉水配管1の両端に相当する接続位置C[1-28]、C[1-29]において、分岐部28、29の一端を温泉水配管1に取り付ける。
[工程5] 順序は問わないが、次の接続を行う。
(a)接続位置C0において配管経路1A、1Bの一端を温泉水配管1に取り付ける。
(b)接続位置C[2-28]、C[3-29]においてピグ投入・回収用配管2、3を分岐部28、29の他端に取り付ける。
(c)工程2と同時にまたは工程2の前もしくは後に、工程1における切除により作り出された、温泉水配管1の両端と対面する残りの温泉水配管の端部に、配管経路1A、1Bの他端を接続する。
【0144】
1.2) 当該設置方法の第2例は、図7(c)に示す分岐部28、29を使用する場合であり、次の工程を有する。
[工程1]既設の温泉水配管における温泉水の流通を停止させ、引き続く設置工事に備える。
[工程2]既設の温泉水配管の離隔した二箇所において、当該温泉水配管からある程度の長さを切除する。
[工程3]前記二箇所の間の温泉水配管1の両端に相当する接続位置C[1-28]*、C[1-29]*において、直管部28b、29bの一端を取り付ける。
[工程4]直管部28b、29bの他端に、曲管部28a、29aの一端を取り付ける。
[工程5]順序は問わないが、次の接続を行う。
(a)接続位置C0*において配管経路1A、1Bの一端を温泉水配管1に取り付ける。
(b)接続位置C[2-28]*、C[3-29]*においてピグ投入・回収用配管2、3を分岐部28、29の他端に取り付ける。
(c)工程2と同時にまたは工程2の前もしくは後に、工程1における切除により作り出された、温泉水配管1の両端と対面する残りの温泉水配管の端部に、配管経路1A、1Bの他端を接続する。
【0145】
1.3) 当該設置方法の第2例は、図7(d)に示す分岐部28、29を使用する場合であり、次の工程を有する。
[工程1]既設の温泉水配管における温泉水の流通を停止させ、引き続く設置工事に備える。
[工程2]既設の温泉水配管の離隔した二箇所において、当該温泉水配管からある程度の長さを切除する。
[工程3]前記二箇所の間の温泉水配管1の両端に相当する接続位置C[1-28]*、C[1-29]*において、分岐部28、29の一端を温泉水配管1に取り付ける。
[工程4]順序は問わないが、次の接続を行う。
(a)接続位置C0*において配管経路1A、1Bの一端を温泉水配管1に取り付ける。
(b)接続位置C[2-28]*、C[3-29]*においてピグ投入・回収用配管2、3を分岐部28、29の他端に取り付ける。
(c)工程2と同時にまたは工程2の前もしくは後に、工程1における切除により作り出された、温泉水配管1の両端と対面する残りの温泉水配管の端部に、配管経路1A、1Bの他端を接続する。
【0146】
なお、分岐28、29と温泉水配管1との接続、分岐28、29とピグ投入・回収用配管との接続、温泉水配管1と配管経路1A、1Bとの接続などは、フランジ継手、管継手などの公知の接続手段を使用して行なえば足りる。
【符号の説明】
【0147】
1:温泉水配管
1A、1B:配管経路
1a、1b:配管経路の一部
2、3:ピグ投入・回収用配管
4:温泉水循環配管
5:流量計
6、7:圧力計
11:ランチャー
12、22、40:ポンプ
14、15、16、17、24、25、26、27:電動弁
18、34:貯蔵タンク
21:キャッチャー
28、29:分岐部
31:制御装置
32,33:センサー
41:ピグ
図1
図2
図3
図4
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図13