(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記書込みトランジスタと前記補償トランジスタとは、チャネル長、チャネル幅、及びゲート絶縁膜厚のそれぞれが、互いに等しい寸法で形成された金属酸化膜半導体電界効果トランジスタで構成されている、
請求項1に記載の表示装置。
前記書込みトランジスタと前記補償トランジスタとは、ゲート電極、ゲート絶縁膜、及びチャネル半導体層のそれぞれが、互いに同一の材料で形成された金属酸化膜半導体電界効果トランジスタで構成されている、
請求項1又は2に記載の表示装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本開示の基礎となった知見)
本開示の実施の形態に係る表示装置について詳細に説明する前に、本開示が想定する一般的な表示装置の構成、及び当該表示装置において生じ得る輝度むら(特には、クロストーク)について説明する。
【0013】
(一般的な表示装置の構成)
図1は、一般的な表示装置9の構成の一例を示す機能ブロック図である。
【0014】
表示装置9は、表示部2、制御回路3、走査線駆動回路4、信号線駆動回路5、及び電源回路6から構成される。
【0015】
表示部2は、複数の画素回路90をマトリクスに配置してなる。当該マトリクスの各行には同じ行に配置される複数の画素回路90に共通に接続される走査信号線が設けられ、当該マトリクスの各列には同じ列に配置される複数の画素回路90に共通に接続されるデータ信号線が設けられる。
【0016】
制御回路3は、表示装置9の動作を制御する回路であり、外部から映像信号を受信し、当該映像信号で表される画像が表示部2において表示されるように、走査線駆動回路4、信号線駆動回路5を制御する。
【0017】
走査線駆動回路4は、走査信号線を介して、画素回路90に対し、画素回路90の動作を制御するための制御信号を供給する。
【0018】
信号線駆動回路5は、データ信号線を介して、画素回路90に対し、発光輝度に対応するデータ信号を供給する。
【0019】
電源回路6は、表示装置9の動作用の電源を、表示装置9の各部に供給する。
【0020】
図2は、画素回路90の構成の一例を示す回路図である。
図2には、画素回路90の内部的な構成に加えて、画素回路90と走査線駆動回路4及び信号線駆動回路5との接続の一例を示している。
【0021】
表示部2の各行には、走査信号線として、信号線WS及び信号線AZが設けられており、表示部2の各列には、データ信号線として、信号線DATAが設けられている。ここで、信号線WS及び信号線AZが、それぞれ書込み制御線及び初期化制御線の一例であり、信号線DATAがデータ線の一例である。
【0022】
また、表示部2には、電源回路6から供給される電源電圧を伝達して、画素回路90に分配する電源線VCC及び電源線VCAT、及び電源回路6から供給される固定の初期化電圧を伝達して、画素回路90に分配する初期化電圧線VINIが設けられている。電源線VCC、VCAT、及び初期化電圧線VINIは、全ての画素回路90に共通に接続される。
【0023】
表示部2に配置されている各画素回路90は、画素回路90が配置されている行の信号線WS及び信号線AZで走査線駆動回路4に接続されると共に、画素回路90が配置されている行の信号線DATAで信号線駆動回路5に接続されている。
【0024】
信号線WS及び信号線AZは、走査線駆動回路4から画素回路90へ、画素回路90の動作を制御するための書込み信号及び初期化信号を伝達する。信号線DATAは、信号線駆動回路5から画素回路90へ、発光輝度に対応するデータ信号を伝達する。
【0025】
画素回路90は、データ信号に対応する輝度で有機EL素子を発光させる回路であり、駆動トランジスタTD、書込みトランジスタT1、初期化トランジスタT2、キャパシタCS、及び発光素子ELから構成される。発光素子ELは、有機EL素子で構成される。
【0026】
駆動トランジスタTDは、ドレイン電極dが電源線VCCに接続されている。
【0027】
キャパシタCSは、第1(紙面の上側)の電極が駆動トランジスタTDのゲート電極gに接続され、第2(紙面の下側)の電極が駆動トランジスタTDのソース電極sに接続されている。
【0028】
書込みトランジスタT1は、信号線WSで伝達される書込み信号に従い、駆動トランジスタTDのゲート電極gと、信号線DATAとの間の導通及び非導通を切り換える。
【0029】
初期化トランジスタT2は、信号線AZで伝達される初期化信号に従い、駆動トランジスタTDのソース電極sと、初期化電圧線VINIとの間の導通及び非導通を切り換える。
【0030】
発光素子ELは、第1(紙面の上側)の電極が駆動トランジスタTDのソース電極sに接続され、第2(紙面の下側)の電極が電源線VCATに接続され、駆動トランジスタTDの出力電流(ドレイン−ソース電流)によって駆動される。
【0031】
(一般的な表示装置の動作)
図3は、画素回路90を動作させるための制御信号、電源電圧、及びデータ信号の一例を示す波形図である。
図3において、縦軸は各信号のレベル、横軸は時間の経過を表す。また、以下では簡明のため、制御信号、データ電圧、及び電源電圧を、それらを伝達する信号線及び電源線と同一の符号で表記する。電圧Vg、Vsは、駆動トランジスタTDのゲート電極gの電圧およびソース電極sの電圧をそれぞれ表す。
【0032】
図3の例では、書込みトランジスタT1は、書込み信号WSがHighレベル及びLowレベルの期間にそれぞれ導通状態及び非導通状態になる。また、初期化トランジスタT2は、初期化信号AZがHighレベル及びLowレベルの期間にそれぞれ導通状態及び非導通状態になる。
【0033】
図3に示す制御信号及びデータ信号に従って行われる画素回路90の原理的な動作について説明する。
【0034】
初期化期間において、初期化動作が行われる。
【0035】
初期化信号AZがHighレベルに設定され、初期化電圧VINIが初期化トランジスタT2を介して、駆動トランジスタTDのソース電極sに印加される。これにより、駆動トランジスタTDのソース電圧Vsは、初期化電圧VINIに初期化される。
【0036】
初期化期間から、後述するVth検出期間、及び、テータ書込み及び移動度補正期間にかけて、電源電圧VCCを、電源電圧VCATに発光素子ELの発光開始電圧Vth(EL)を加えた電圧よりも低い電圧VL(<VCAT+Vth(EL))に維持してもよい。これにより、発光素子ELの発光を抑止し、発光素子ELの不要な発光による表示コントラストの低下、及び消費電力の増大を抑制することができる。
【0037】
次に、Vth検出期間において、Vth検出動作が行われる。
【0038】
図4は、Vth検出期間における画素回路90の動作を説明する回路図である。
【0039】
データ電圧DATAが基準電圧Vrefに設定されるとともに書込み信号WSがHighレベルに設定され、基準電圧Vrefが書込みトランジスタT1を介して、駆動トランジスタTDのゲート電極gに印加される。また、初期化信号AZがLowレベルに設定され、駆動トランジスタTDのソース電極sへの初期化電圧VINIの印加が停止する。
【0040】
基準電圧Vrefには、初期化電圧VINIに、表示部2の全ての画素回路90の駆動トランジスタTDにおける閾値電圧Vthの最大値を加えた電圧よりも高い電圧Vref(>VINI+Vth)を用いる。これにより、駆動トランジスタTDは導通状態となり、ドレイン−ソース電流Ithが流れる。
【0041】
ドレイン−ソース電流IthはキャパシタCSを充電し、キャパシタCSの第2の電極の電圧、すなわち駆動トランジスタTDのソース電圧Vsは、初期化電圧VINIから上昇する。そして、駆動トランジスタTDのソース電圧Vsが電圧Vref−Vthまで上昇すると、駆動トランジスタTDは非導通状態となってドレイン−ソース電流Ithは停止する。
【0042】
このようにして、駆動トランジスタTDのソース電圧Vsは、基準電圧Vrefから閾値電圧Vthを減じた電圧Vref−Vthに収束する。
【0043】
次に、データ書込み及び移動度補正期間において、データ書込み及び移動度補正動作が行われる。
【0044】
図5は、データ書込み及び移動度補正期間における画素回路90の動作を説明する回路図である。
【0045】
データ電圧DATAが画素回路90で発光させようとする輝度に対応する電圧Vdataに設定されるとともに書込み信号WSがHighレベルに設定され、電圧Vdataが駆動トランジスタTDのゲート電極gに印加される。
【0046】
このとき、駆動トランジスタTDのゲート−ソース電圧は、先行するVth補正期間において閾値電圧Vthに設定されているため、駆動トランジスタTDには、ドレイン−ソース電流Iμが直ちに流れ始める。電流IμによってキャパシタCSは充電され、駆動トランジスタTDのソース電圧Vsは、電圧Vdata−Vthへ向けて上昇を始める。
【0047】
データ書込み及び移動度補正期間において、駆動トランジスタTDのゲート電圧Vgは電圧Vdataに設定され、ソース電圧Vsは電流Iμに応じた電圧ΔV上昇する。これにより、駆動トランジスタTDのゲート−ソース電圧は、電圧Vdata+Vth−ΔVに設定される。
【0048】
電流Iμは、駆動トランジスタTDのパラメータβが大きいほど大きい。ここで、パラメータβは、β=μ×Cox×W/Lであり、μは移動度、Coxは単位面積あたりのゲート絶縁膜容量、Wはチャネル幅、Lはチャネル長である。書込みトランジスタT1の導通時間twを一定の長さに管理することで、駆動トランジスタTDのパラメータβは、一定の割合で電圧ΔVに反映される。
【0049】
その後、発光期間において、発光動作が行われる。
【0050】
電源電圧VCCは、駆動トランジスタTDを飽和領域で動作させるための電圧VHに設定される。飽和領域で動作する駆動トランジスタTDは、β(Vgs−Vth)
2で表されるドレイン−ソース電流Idsを流す定電流源として機能する。ここで、βは前述のパラメータ、Vgsはゲート−ソース電圧、Vthは閾値電圧、である。
【0051】
駆動トランジスタTDのゲート−ソース電圧Vgsは、先行するデータ書込み及び移動度補正期間において、電圧Vdata+Vth−ΔVに設定されている。そのため、発光期間において、駆動トランジスタTDは、β(Vdata−ΔV)
2で表されるドレイン−ソース電流Idsを発光素子ELに供給する。
【0052】
当該ドレイン−ソース電流Idsは、閾値電圧Vthへの依存性がなく、また、パラメータβが大きいほど(Vdata−ΔV)の項が小さくなるので、パラメータβへの依存性が小さい。
【0053】
発光素子ELは、当該ドレイン−ソース電流Idsによって駆動されることにより、閾値電圧Vthおよびパラメータβ(移動度μを含む)による誤差が補正された輝度で発光する。つまり、Vth補正と移動度補正とがなされ、電圧Vdataに正確に対応した輝度で発光する。
【0054】
表示装置9によれば、前述した動作に従って個々の画素回路90が正確な輝度で発光することにより、輝度むらが低減することが期待される。
【0055】
(一般的な表示装置における輝度むら)
しかしながら、画素回路90の構成及び動作によれば、実際的には、書込みトランジスタT1の寄生容量によって輝度むらが発生することがある。以下、当該輝度むらについて説明する。
【0056】
図6は、画素回路90の実際的な構成の一例を示す回路図である。
図6には、実際の書込みトランジスタT1が有する寄生容量CPを明示している。書込みトランジスタT1の寄生容量は、ゲート電極、ゲート絶縁膜、及びチャネル半導体層からなるMIS(Metal−Insulator−Semiconductor)構造において生じるMIS容量であり、電圧依存性を有している。
【0057】
図7は、MIS容量の電圧依存性の一例を示すグラフである。
図7に示されるように、MIS構造は、半導体層を基準にして金属層に正の電圧Vが印加されたとき、印加された電圧に依存したMIS容量Cを有する。MIS容量Cは、印加電圧Vが閾値電圧Voを上回ると、急速に増大する。
【0058】
図8は、輝度むら(特には、クロストーク)が生じ易い画像の一例を示す図である。当該画像を表示するとき、表示部2を構成する画素回路90のうち、第1行では全ての画素回路Aが第1輝度で発光し、第2行では多数の画素回路Bが前記第1輝度よりも低い第2輝度で発光するなかで少数の画素回路Cが前記第1輝度で発光する。以下では、簡明のため、前記第1輝度及び前記第2輝度を、それぞれ高輝度及び低輝度と表記する。
【0059】
図9は、
図8に示される画像を表示する際のデータ書込み及び移動度補正期間において、高輝度で発光する画素回路A、C、及び低輝度で発光する画素回路Bのそれぞれの動作に関わる制御信号及びデータ信号の一例を示す波形図である。
【0060】
図9において、書込み信号WSの振幅は一定であり、データ電圧DATAは画素回路での輝度に応じて、画素回路A、Cで高く、画素回路Bで低い。書込みトランジスタT1の寄生容量の変動を理解するため、データ電圧DATAに電圧Voを加えた電圧DATA+Voを示している。
図7の説明から、書込みトランジスタT1は、WS>DATA+Voなる期間(網掛けで示す)において、他の期間と比べて大きな寄生容量を持つ。
【0061】
そのため、データ電圧DATAが低い画素回路Bにおいて書込みトランジスタT1が大きな寄生容量を持つ期間t2は、データ電圧DATAが高い画素回路A、Cにおいて書込みトランジスタT1が大きな寄生容量を持つ期間t1より長い(t2>t1)。つまり、データ書込み及び移動度補正期間の全体では、書込みトランジスタT1は、画素回路A、Cに比べて、画素回路Bでより大きな寄生容量を持つ。
【0062】
図1に示されるように、行ごとに所定数の画素回路90が当該行の信号線WSに接続され、信号線WSで伝達される書込み信号WSで制御される。そのため、走査線駆動回路4から見た信号線WSの容量は、画素回路90あたりの容量に1行に配置された画素回路90の個数を乗じた容量になり、信号線WSの容量には非常に大きな変動が生じ得る。
【0063】
具体的に、信号線WSの容量は、信号線WSに接続された画素回路90での平均的な発光輝度が最大の場合と最小の場合とで(例えば、全ての画素回路が最大輝度で発光する場合と最小輝度で発光する場合とで)最も大きく変動する。そのため、信号線WSに接続された画素回路90での平均的な発光輝度に応じて、書込み信号WSの波形には大きな差異が生じる。
【0064】
図10は、書込み信号WSの実波形の一例を模式的に示す波形図である。画素回路90での平均的な発光輝度が最大の第1行では、書込み信号WSの波形鈍りは最小となるのに対し、画素回路90での平均的な発光輝度が小さい第2行では、書込み信号WSの波形鈍りは大きい。
【0065】
波形鈍りは、具体的に、波形の立上り時間及び立下り時間によって定量化されてもよい。立上り時間は、信号が立上りを開始してから振幅の90%に達する時間(一例として、
図10のr1、r2)で表され、立下り時間は、信号が立下りを開始してから振幅の10%に達する時間(一例として、
図10のf1、f2)で表されてもよい。
【0066】
立上り時間は、大きいほど波形の鈍りが大きいことを表す指標であり、
図10の例ではr2>r1である。また、立下り時間は、大きいほど波形の鈍りが大きいことを表す指標であり、
図10の例ではf2>f1である。
【0067】
第1行の画素回路Aと第2行の画素回路Cとは、何れも発光輝度は同じ第1輝度(高輝度)であるが、画素回路Aは波形鈍りが小さい書込み信号WSで制御され、画素回路Cは波形鈍りが大きい書込み信号WSで制御される。その結果、画素回路Aと画素回路Cとで、データ書込み及び移動度補正期間における書込みトランジスタT1の導通時間twに差異が生じ、移動度μ(より広義には、パラメータβ)に関する補正量に差異が生じる。
【0068】
そのため、当該補正量の平均輝度依存のばらつきを縮小する対策がなれれば、第1行と第2行とで、画素回路A、Cが実際に発光する輝度に差異が生じる。具体的には、例えば第1行と第2行との間に輝度差による境界線21が視認されるといった画質の劣化が生じ得る。このような輝度の精度劣化が、他の画素回路の輝度の影響を受けて生じる輝度むら、すなわち、クロストークである。
【0069】
背景技術の項で引用した特許文献1は、前述のように、このようなクロストークを低減する技術を開示しているが、書込みトランジスタT1とは導電型が異なるクロストークキャンセルスイッチを用いるため、製造プロセスが複雑になる懸念がある。そこで、本願発明者は鋭意検討の結果、以下で開示される表示装置の構成に到達した。
【0070】
(開示される表示装置の態様)
本開示の1つの態様に係る表示装置は、複数の画素回路を配置してなる表示部を有する表示装置であって、前記複数の画素回路の各々は、駆動トランジスタと、前記駆動トランジスタのゲート電極とソース電極とに接続された容量素子と、前記駆動トランジスタによって駆動される発光素子と、ゲート電極が書込み信号を伝達する書込み制御線に接続され、ドレイン電極及びソース電極の一方が輝度に対応したデータ電圧を伝達するデータ線に接続され、ドレイン電極及びソース電極の他方が前記駆動トランジスタのゲート電極に接続された書込みトランジスタと、ゲート電極が前記データ線に接続され、ドレイン電極及びソース電極の両方又は何れか一方が前記書込み制御線に接続された、前記書込みトランジスタと同じ導電型の補償トランジスタと、を備える。
【0071】
この構成によれば、前記書込み制御線と前記データ線との間の容量の電圧依存性が減少するので、前記データ線が伝達するデータ電圧の違いによって生じる前記書込み制御線と前記データ線との間の容量の差異が小さくなる。これにより、前記画素回路での発光輝度が高いときと低いときとで前記書込み信号の波形の差異が縮小するので、前記書込みトランジスタが導通状態になるオン期間の輝度に依存したばらつきが小さくなる。当該オン期間において移動度補正を行うことで、移動度補正量の輝度依存のばらつきが縮小され、移動度補正量の不同によって生じる表示装置の輝度むらが低減する。
【0072】
また、前記書込みトランジスタと前記補償トランジスタとに同じ導電型のトランジスタを用いている。これにより、特段の製造プロセスを追加することなく、前記書込みトランジスタの製造プロセスで前記補償トランジスタを作製できるので、製造プロセスが複雑になる懸念が少ない。
【0073】
また、前記書込みトランジスタと前記補償トランジスタとは、チャネル長、チャネル幅、及びゲート絶縁膜厚のそれぞれが、互いに等しい寸法で形成された金属酸化膜半導体電界効果トランジスタで構成されてもよい。
【0074】
この構成によれば、前記書込みトランジスタと前記補償トランジスタとの寸法の一致により、両者の寄生容量のゲート−ソース電圧に対する特性を一致させ、前記書込み制御線と前記データ線との間に存する容量の輝度依存性を正確に打ち消すことができる。
【0075】
また、前記書込みトランジスタと前記補償トランジスタとは、ゲート電極、ゲート絶縁膜、及びチャネル半導体層のそれぞれが、互いに同一の材料で形成された金属酸化膜半導体電界効果トランジスタで構成されてもよい。
【0076】
この構成によれば、前記書込みトランジスタと前記補償トランジスタとの材料の一致により、両者の寄生容量のゲート−ソース電圧に対する特性を一致させ、前記書込み制御線と前記データ線との間に存する容量の輝度依存性を正確に打ち消すことができる。
【0077】
また、前記書込みトランジスタの寄生容量のゲート−ソース電圧に対する特性と、前記補償トランジスタの寄生容量のゲート−ソース電圧に対する特性とは、互いに等しくてもよい。
【0078】
この構成によれば、前記書込み制御線と前記データ線との間の容量の電圧依存性を打ち消す最善の効果が得られる。
【0079】
以下、本開示の一態様に係る表示装置について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0080】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0081】
(実施の形態)
実施の形態に係る表示装置は、
図1に示される一般的な表示装置9と比べて、大まかな構成では同一であり、個々の画素回路90を、書込みトランジスタの寄生容量の電圧依存性を打ち消すための補償トランジスタを備えた画素回路10に置き換えて構成される。以下では、表示装置9と同等の事項については適宜説明を省略し、実施の形態に係る画素回路10の特徴的な事項を主として説明する。
【0082】
図11は、実施の形態に係る画素回路10の構成の一例を示す回路図である。画素回路10は、
図2の画素回路90に、信号線DATAと信号線WSとの間に、書込みトランジスタT1の寄生容量とは電圧依存性を打ち消すための補償トランジスタT3を追加して構成される。これにより、画素回路10の信号線WSと信号線DATAとの間の容量は、書込みトランジスタT1の寄生容量と補償トランジスタT3の寄生容量との並列容量で構成される。
【0083】
書込みトランジスタT1と補償トランジスタT3とは、同じ導電型の金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET:Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)で構成されてもよい。
【0084】
その場合、書込みトランジスタT1は、ゲート電極が信号線WSに接続され、ドレイン電極及びソース電極の一方が信号線DATAに接続され、ドレイン電極及びソース電極の他方が駆動トランジスタTDのゲート電極に接続された第1のMOSFETである。補償トランジスタT3は、ゲート電極が信号線DATAに接続され、ドレイン電極及びソース電極が信号線DATAに接続された第2のMOSFETである。なお、補償トランジスタT3は、電圧依存容量素子として用いられるため、ドレイン電極及びソース電極の両方又は一方が信号線DATAに接続されていればよい。
【0085】
図12は、
図8に示される画像を表示する際のデータ書込み及び移動度補正期間において、画素回路A、C、及び画素回路Bのそれぞれに供給される制御信号及びデータ信号の一例を示す波形図であり、
図9と同様の表記法で表されている。
【0086】
図12では、
図9に示されている波形に加えて、補償トランジスタT3の寄生容量の変動を理解するため、データ電圧DATAから電圧Voを減じた電圧DATA−Voを示している。
図7の説明から、書込みトランジスタT1は、WS>DATA+Voなる期間(濃い網掛けで示す)において、他の期間と比べて大きな寄生容量を持ち、補償トランジスタT3は、WS<DATA−Voなる期間(薄い網掛けで示す)において、他の期間と比べて大きな寄生容量を持つ。
【0087】
前述のとおり、データ電圧DATAが低い画素回路Bにおいて書込みトランジスタT1が大きな寄生容量を持つ期間t2は、データ電圧DATAが高い画素回路A、Cにおいて書込みトランジスタT1が大きな寄生容量を持つ期間t1より長い(t2>t1)。
【0088】
これに対し、データ電圧DATAが低い画素回路Bにおいて補償トランジスタT3が大きな寄生容量を持つ期間t4は、データ電圧DATAが高い画素回路A、Cにおいて補償トランジスタT3が大きな寄生容量を持つ期間t3より短い(t4<t3)。
【0089】
このように、書込みトランジスタT1が大きな寄生容量を持つ期間と補償トランジスタT3が大きな寄生容量を持つ期間とは、データ書込み及び移動度補正期間のなかで相補的である。そのため、両者を合わせた期間、つまり、信号線WSと信号線DATAとの間の容量が大きくなる期間の輝度依存のばらつきは縮小する。従って、画素回路10によれば、データ書込み及び移動度補正期間の全体での信号線WSと信号線DATAとの間の容量の、輝度依存のばらつきを小さくすることができる。
【0090】
信号線WSと信号線DATAとの間の容量の輝度依存のばらつきが、画素回路10ごとに縮小されることで、信号線WSの容量の輝度依存のばらつきは、効果的に縮小される。そのため、画素回路10を用いた表示装置(以下、表示装置1と表記する)では、信号線WSに接続された画素回路10での平均的な発光輝度が異なっても、書込み信号WSの波形には大きな差異は生じない。
【0091】
図13は、書込み信号WSの波形の一例を模式的に示す波形図である。画素回路10での平均的な発光輝度が大きい第1行及び画素回路10での平均的な発光輝度が小さい第2行の何れにおいても、書込み信号WSには同程度の波形鈍りが生じている。
【0092】
図13の例では、第1行での立ち上がり時間r3と第2行での立ち上がり時間r4とは略等しく(r4≒r3)、第1行での立下り時間f3と第2行での立下り時間f4とは略等しい(f4≒f3)。
【0093】
なお、ここで言う略等しいとは、表示装置の輝度むらに対する要求レベルに応じて適宜定められる誤差の範囲での一致を意味する。例えば、平均値の±10%の範囲に含まれる2つの時間を略等しいと定義してもよい。
【0094】
輝度むらの好ましい低減効果を得るために、信号線WSで伝達される書込み信号WSの立上り時間は、信号線WSに接続された画素回路10での平均的な発光輝度が最大のときと最小のときとで略等しくてもよい。さらに、信号線WSで伝達される書込み信号WSの立下り時間は、信号線WSに接続された画素回路10での平均的な発光輝度が最大のときと最小のときとで略等しくてもよい。
【0095】
この条件を満たすことで、信号線WSの容量が最も大きく変動し得る場合において、書込み信号WSの波形鈍りが略等しくなるので、移動度補正量の平均輝度依存のばらつきは最も効果的に縮小される。
【0096】
前述の条件は、画素回路10ごとに、書込みトランジスタT1の寄生容量の電圧依存性を正確に打ち消すことによって実現される。そのために、画素回路10ごとに、補償トランジスタT3と書込みトランジスタT1とを同一の形状で設けてもよい。
【0097】
図14は、画素回路10の要部のレイアウトパターンの一例を示す平面図である。なお、
図14に示されている大きなコンタクトLCは発光素子ELの接続に用いられるが、
図14では、発光素子EL及び電源線VCATは省略されている。
【0098】
図14に示されるように、補償トランジスタT3のチャネル領域及び書込みトランジスタT1のチャネル領域(それぞれ太枠で示す)は、互いに等しい長さ及び幅で設けられていてもよい。また、補償トランジスタT3のゲート絶縁膜と書込みトランジスタT1のゲート絶縁膜とは、互いに等しい厚さで設けられていてもよい(図示せず)。
【0099】
つまり、書込みトランジスタT1と補償トランジスタT3とは、チャネル長、チャネル幅、及びゲート絶縁膜厚のそれぞれが、互いに等しい寸法で形成されていてもよい。なお、ここで言う寸法とは、設計上の寸法を意味し、作製された画素回路10上で対応する部分の実際の寸法は、例えば数パーセントの誤差を含んでもよい。
【0100】
これにより、書込みトランジスタT1と補償トランジスタT3との寸法の一致により、両者の寄生容量のゲート−ソース電圧に対する特性を一致させ、信号線WSと信号線DATAとの間に存する容量の輝度依存性を正確に打ち消すことができる。
【0101】
また、書込みトランジスタT1及び補償トランジスタT3におけるゲート電極、ゲート絶縁膜、及びチャネル半導体層のそれぞれを、互いに同一の材料で形成してもよい。
【0102】
これにより、書込みトランジスタT1と補償トランジスタT3との材料の一致により、両者の寄生容量のゲート−ソース電圧に対する特性を一致させ、信号線WSと信号線DATAとの間に存する容量の輝度依存性を正確に打ち消すことができる。さらには、特段の材料や製造プロセスを追加することなく、書込みトランジスタT1の製造プロセスを利用して、補償トランジスタT3を作製できるので、画素回路10の設計工程及び製造工程を複雑にする懸念が少なくなる。
【0103】
このように、同じ寸法や同じ材料により、寄生容量のゲート−ソース電圧に対する特性を、書込みトランジスタT1と補償トランジスタT3とで一致させることで、信号線WSと信号線DATAとの間の容量の電圧依存性を打ち消す最善の効果が得られる。
【0104】
以上説明したように、画素回路10を用いた表示装置1では、画素回路10ごとに書込みトランジスタT1の寄生容量の輝度依存性(データ電圧依存性)が打ち消される。これにより、移動度補正量の輝度依存のばらつきが縮小され、移動度補正量の不同によって生じる輝度むらを低減した表示装置1が得られる。
【0105】
表示装置1は、例えば、テレビジョン受像機に内蔵されてもよい。
【0106】
図15は、表示装置1を内蔵する薄型フラットTV100の一例を示す外観図である。表示装置1が内蔵されることにより、映像信号で表される画像を、輝度むらなく高精度に表示可能な薄型フラットTV100が実現される。
【0107】
以上、本開示のいくつかの態様に係る表示装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、この実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、各々の実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態が、本開示の範囲内に含まれてもよい。