(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
金属箔層と、該金属箔層の一方の面における少なくとも中央部に積層された絶縁層と、前記金属箔層の一方の面又は一方の面側における周縁部に対応する領域に設けられた熱融着性樹脂層と、を含み、
前記熱融着性樹脂層は、平面視枠形状に形成されていることを特徴とする蓄電デバイス用外装材。
金属箔層と、該金属箔層の一方の面の周縁部に積層された熱融着性樹脂層と、前記金属箔層の前記一方の面における前記熱融着性樹脂層で取り囲まれた領域に積層された絶縁層と、を含み、
前記熱融着性樹脂層は、平面視枠形状に形成されていることを特徴とする蓄電デバイス用外装材。
前記絶縁層は、酸変性ポリオレフィンと多官能イソシアネートとを含む樹脂、熱硬化性樹脂および光硬化性樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂の硬化物で形成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
前記耐酸性層が、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂およびポリオレフィン樹脂からなる群より選ばれる1種または2種以上の樹脂で構成されている請求項8に記載の蓄電デバイス用外装材。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記モバイル電気機器等は、近年、更なる薄型化、軽量化が進められており、ここに搭載される蓄電デバイスとしても薄型化、軽量化を図ることが求められており、これを受けて、蓄電デバイス用の外装材の薄膜化、軽量化を図るべく開発が進められている。そして、現在では、アルミニウム箔としてはピンホールが発生している可能性がないとされる厚さ以上のものを使用して外装材が構成されている。厚さが薄くなるとアルミニウム箔にピンホールが発生している可能性があり、厚さを薄くすればする程、ピンホールの数が増えることが知られている。ピンホールが存在する場合には、アルミニウム箔は、バリア層としての機能を果たすことができないものとなり、従って外部からの水分の侵入を防止できないし、電解液の拡散、漏洩も防止できないという問題が発生する。従って、アルミニウム箔をこれ以上薄膜化することはできない。
【0006】
また、内側層としての熱可塑性樹脂層(熱融着性樹脂層)についても、現状のレベルよりも薄膜化すると、十分なヒートシール強度を確保することが困難となる。
【0007】
従って、上記従来の構成を基本構成としたものでは、これ以上の薄型化、軽量化を図ることは困難であった。
【0008】
更に、上記従来の構成では、ドライラミネート後の接着剤の養生(硬化)に約1週間程度を要するものとなっており、生産時間の短縮化を図ることが求められていた。
【0009】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、薄肉化、軽量化を図ることができると共に、生産時間を短縮することのできる蓄電デバイス用外装材及び蓄電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0011】
[1]金属箔層と、該金属箔層の一方の面における少なくとも中央部に積層された絶縁層と、前記金属箔層の一方の面又は一方の面側における周縁部に対応する領域に設けられた熱融着性樹脂層と、を含むことを特徴とする蓄電デバイス用外装材。
【0012】
[2]金属箔層と、該金属箔層の一方の面の全面に積層された絶縁層と、前記絶縁層の周縁部に積層された熱融着性樹脂層と、を含むことを特徴とする蓄電デバイス用外装材。
【0013】
[3]金属箔層と、該金属箔層の一方の面の周縁部に積層された熱融着性樹脂層と、前記金属箔層の前記一方の面における前記熱融着性樹脂層で取り囲まれた領域に積層された絶縁層と、を含むことを特徴とする蓄電デバイス用外装材。
【0014】
[4]前記絶縁層は、酸変性ポリオレフィンと多官能イソシアネートとを含む樹脂、熱硬化性樹脂および光硬化性樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂の硬化物で形成されている前項1〜3のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
【0015】
[5]前記絶縁層は、150℃において流動性を有しない層である前項1〜4のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
【0016】
[6]前記熱融着性樹脂層は、平面視において枠形状に形成された熱融着性樹脂フィルムで構成されている前項1〜5のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
【0017】
[7]前記熱融着性樹脂層は、熱融着性樹脂の塗布コート層で構成されている前項1〜5のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
【0018】
[8]前記金属箔層の他方の面に耐酸性層が積層されている前項1〜7のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
【0019】
[9]前記耐酸性層が、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂およびポリオレフィン樹脂からなる群より選ばれる1種または2種以上の樹脂で構成されている前項8に記載の蓄電デバイス用外装材。
【0020】
[10]前記耐酸性層の外側の表面の動摩擦係数が0.5以下である前項8または9に記載の蓄電デバイス用外装材。
【0021】
[11]前記絶縁層における前記金属箔層とは反対側の表面の動摩擦係数が0.5以下である前項1〜10のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
【0022】
[12]蓄電デバイス本体部と、
前項1〜11のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材からなる第1外装材と、
金属箔層と、該金属箔層の一方の面に積層された絶縁層と、を含む第2外装材と、を備え、
前記第1外装材は、前記蓄電デバイス本体部を収容し得る収容ケースと、該収容ケースの上面開放口の周縁から略水平方向の外方に向けて延ばされた封止用周縁部とを有する立体形状に成形され、
前記第1外装材の収容ケース内に前記蓄電デバイス本体部が収容され、該蓄電デバイス本体部の上に前記第2外装材がその絶縁層側を内方にして配置され、該第2外装材の絶縁層の周縁部と、前記第1外装材の封止用周縁部の熱融着性樹脂層とが接合されて封止されていることを特徴とする蓄電デバイス。
【0023】
[13]蓄電デバイス本体部と、
前項1〜11のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材からなる第1外装材と、
金属箔層と、該金属箔層の一方の面に積層された絶縁層と、を含む第2外装材と、を備え、
前記第2外装材は、前記蓄電デバイス本体部を収容し得る収容ケースと、該収容ケースの上面開放口の周縁から略水平方向の外方に向けて延ばされた封止用周縁部とを有する立体形状に成形され、
前記第2外装材の収容ケース内に前記蓄電デバイス本体部が収容され、該蓄電デバイス本体部の上に前記第1外装材がその絶縁層側を内方にして配置され、該第1外装材の周縁部の熱融着性樹脂層と、前記第2外装材の封止用周縁部の絶縁層とが接合されて封止されていることを特徴とする蓄電デバイス。
【0024】
[14]蓄電デバイス本体部と、
前項1〜11のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材からなる第1外装材と、
金属箔層と、該金属箔層の一方の面に積層された絶縁層と、を含む第2外装材と、を備え、
前記第1外装材および第2外装材は、前記蓄電デバイス本体部を収容し得る収容ケースと、該収容ケースの上面開放口の周縁から略水平方向の外方に向けて延ばされた封止用周縁部とを有する立体形状に成形され、
前記第1外装材と前記第2外装材が互いの絶縁層同士が向き合うように配置され、前記第1外装材の収容ケースおよび前記第2外装材の収容ケースで形成される収容空間内に前記蓄電デバイス本体部が収容され、前記第1外装材の封止用周縁部の熱融着性樹脂層と、前記第2外装材の封止用周縁部の絶縁層とが接合されて封止されていることを特徴とする蓄電デバイス。
【発明の効果】
【0025】
[1]の発明では、金属箔層の一方の面における少なくとも中央部に絶縁層が積層されているので、絶縁性を向上させることができる。そして、熱融着性樹脂層が、金属箔層の一方の面の全面に形成されているのではなく、外装材の周縁部領域に形成された構成であると共に、熱融着性樹脂層(ヒートシール層)よりも薄膜化しても絶縁性を確保可能な絶縁層を設けた構成であるので、外装材の薄肉化、軽量化を図ることができる。更に、周縁部に熱融着性樹脂層が積層されていて、熱融着性樹脂層の積層のために、養生時間を必要とする接着剤を設ける必要がないから、生産時間を短縮することができる。なお、外装材の周縁部に接着剤を介して熱融着性樹脂層が設けられていてもよく、この場合、接着剤は周縁部に設けるだけでよいから、接着剤層を設ける領域(面積)が従来よりも少なくて済み、これにより接着剤の養生(硬化)時間が短縮され、生産時間を短縮することができる。
【0026】
[2]の発明では、金属箔層の一方の面の全面に絶縁層が積層された構成であるので、絶縁性を十分に向上させることができる。そして、熱融着性樹脂層が、金属箔層の一方の面の全面に形成されているのではなく、外装材の周縁部領域に形成された構成であると共に、熱融着性樹脂層(ヒートシール層)よりも薄膜化しても絶縁性を確保可能な絶縁層を設けた構成であるので、外装材の薄肉化、軽量化を図ることができる。更に、絶縁層の周縁部に熱融着性樹脂層が積層されていて、絶縁層と熱融着性樹脂層の間に、養生時間を必要とする接着剤を設ける必要がないから、生産時間を短縮することができる。なお、絶縁層の周縁部と熱融着性樹脂層の間に接着剤を設けてもよく、この場合、接着剤は周縁部に設けるだけでよいから、接着剤層を設ける領域(面積)が従来よりも少なくて済み、これにより接着剤の養生(硬化)時間が短縮され、生産時間を短縮することができる。
【0027】
[3]の発明では、金属箔層の一方の面における熱融着性樹脂層で取り囲まれた領域に絶縁層が積層された構成であるので、絶縁性を十分に向上させることができる。そして、熱融着性樹脂層が、金属箔層の一方の面の全面に形成されているのではなく、外装材の周縁部領域に形成された構成であると共に、熱融着性樹脂層(ヒートシール層)よりも薄膜化しても絶縁性を確保可能な絶縁層を前記取り囲み領域に設けた構成であるので、外装材の薄肉化、軽量化を図ることができる。更に、金属箔層の周縁部に熱融着性樹脂層が積層されていて、金属箔層と熱融着性樹脂層の間に、養生時間を必要とする接着剤を設ける必要がないから、生産時間を短縮することができる。なお、金属箔層の周縁部と熱融着性樹脂層の間に接着剤を設けてもよく、この場合、接着剤は周縁部に設けるだけでよいから、接着剤層を設ける領域(面積)が従来よりも少なくて済み、これにより接着剤の養生(硬化)時間が短縮され、生産時間を短縮することができる。
【0028】
[4]の発明では、絶縁層は、特定の樹脂の硬化物で形成されており、樹脂の塗布、硬化により形成される層であるから、十分な薄膜化を図ることができる。更に、絶縁層は、樹脂の硬化物であるから、外装材のヒートシールの際の絶縁層の減肉(厚さの減少)を防止することができる。
【0029】
[5]の発明では、絶縁層は、150℃において流動性を示さないから、ヒートシールを行う際に絶縁層が溶融することがなく、従って十分な絶縁性を確保できる。
【0030】
[6]の発明では、枠形状に形成された熱融着性樹脂フィルムが用いられているから、生産性を向上させることができる。
【0031】
[7]の発明では、熱融着性樹脂層は、熱融着性樹脂の塗布コート層で構成されているから、熱融着性樹脂層をより薄く形成することができて、外装材の薄肉化、軽量化を十分に図ることができる。
【0032】
[8]の発明では、金属箔層の他方の面に耐酸性層が積層されているから、酸や酸性物質に対する耐性を向上させることができる。
【0033】
[9]の発明では、耐酸性層が、上記特定の樹脂で構成されているから、酸や酸性物質に対する耐性をさらに向上させることができる。
【0034】
[10]の発明では、耐酸性層の外側の表面の動摩擦係数が0.5以下であるから、蓄電デバイスを製造する際に機械等との接触による傷が付き難くなると共に、深絞り成形性や張り出し成形性が向上するという効果が得られる。
【0035】
[11]の発明では、絶縁層における金属箔層とは反対側の表面の動摩擦係数が0.5以下であるから、蓄電デバイスを製造する際に機械等との接触による傷が付き難くなると共に、深絞り成形性や張り出し成形性が更に向上するという効果が得られる。
【0036】
[12][13]及び[14]の発明では、薄肉化、軽量化がなされると共に生産時間の短縮された外装材で蓄電デバイス本体部を外装した構成であるので、薄型化されて軽量であると共に生産性の向上した蓄電デバイスが提供される。このような蓄電デバイスの薄型化により、蓄電デバイスのエネルギー密度を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明に係る蓄電デバイス用外装材1は、金属箔層4と、該金属箔層4の一方の面における少なくとも中央部に積層された絶縁層7と、前記金属箔層4の一方の面又は一方の面側における周縁部に対応する領域に設けられた熱融着性樹脂層3と、を含む。前記絶縁層7は、例えば、金属箔層4の一方の面の全面に積層されていてもよいし、金属箔層4の一方の面における中央部(周縁部を除く領域)に積層された構成等であってもよい。
【0039】
本発明において、前記金属箔層4の他方の面に耐酸性層2が積層されているのが好ましい。この耐酸性層2が積層されていることで、蓄電デバイス用外装材として酸や酸性物質に対する耐性を向上させることができる。
【0040】
本発明に係る蓄電デバイス用外装材1の一実施形態を
図1に示す。この蓄電デバイス用外装材1は、金属箔層4と、該金属箔層4の一方の面(上面)の全面に積層された絶縁層7と、前記絶縁層7の周縁部に形成された熱融着性樹脂層3と、を含む。前記熱融着性樹脂層3は、平面視枠形状であり、該熱融着性樹脂層3は、前記絶縁層7の周縁部に、熱融着により積層一体化されている(
図1参照)。
【0041】
なお、
図2に示すように、前記熱融着性樹脂層3は、前記絶縁層7の周縁部に、該周縁部に塗布して乾燥することにより形成された第2接着剤層6を介して積層一体化されていてもよい。
【0042】
しかして、本実施形態では、前記蓄電デバイス用外装材1は、蓄電デバイス本体部31を収容し得る、上面が開放された略直方体形状の収容ケース21と、該収容ケース21の上面開放口の周縁から略水平方向の外方に向けて延ばされた封止用周縁部22とを有する立体形状に成形されている(
図1参照)。立体形状に成形するための成形方法としては、例えば、深絞り成形、張り出し成形等が挙げられる。前記封止用周縁部22の上面(開放口側の面)に前記熱融着性樹脂層3が露出している。前記収容ケース21の内面側に前記絶縁層7が配置されている。前記収容ケース21の内部空間(収容凹部)23は、蓄電デバイス本体部31を略適合状態に収容し得る大きさ、形状に形成されている。
【0043】
本発明に係る蓄電デバイス用外装材1の他の実施形態を
図3に示す。この蓄電デバイス用外装材1は、金属箔層4と、該金属箔層4の一方の面(下面)の全面に積層された絶縁層7と、前記絶縁層7の周縁部に形成された熱融着性樹脂層3と、前記金属箔層4の他方の面(上面)に積層された耐酸性層2と、を含む。前記熱融着性樹脂層3は、平面視枠形状であり、該熱融着性樹脂層3は、前記絶縁層7の周縁部に、熱融着により積層一体化されている(
図3参照)。また、前記耐酸性層2は、前記金属箔層4の他方の面(上面)に塗布して乾燥することにより形成された第1接着剤層(図示しない)を介して積層一体化されている。この
図3に示す蓄電デバイス用外装材1は、成形に供されることなく平面状で使用される。
【0044】
なお、
図4に示すように、前記熱融着性樹脂層3は、前記絶縁層7の周縁部に、該周縁部に塗布して乾燥することにより形成された第2接着剤層6を介して積層一体化されていてもよい。
【0045】
本発明に係る蓄電デバイス用外装材1のさらに他の実施形態を
図5に示す。この蓄電デバイス用外装材1は、金属箔層4と、該金属箔層4の一方の面(下面)の周縁部に形成された熱融着性樹脂層3と、前記金属箔層4の前記一方の面(下面)における前記熱融着性樹脂層4で取り囲まれた領域に積層された絶縁層7と、を含む。前記熱融着性樹脂層3は、平面視枠形状であり、該熱融着性樹脂層3は、前記金属箔層4の周縁部に、熱融着により積層一体化されている(
図5参照)。
【0046】
なお、前記熱融着性樹脂層3は、前記金属箔層4の周縁部に、該周縁部に塗布して乾燥することにより形成された第2接着剤層を介して積層一体化されていてもよい。
【0047】
上記
図1、3、5に示す蓄電デバイス用外装材1では、外装材の周縁部に熱融着性樹脂層が積層されていて、熱融着性樹脂層の積層のために、養生時間を必要とする接着剤を設ける必要がないし、熱融着性樹脂層3を周縁部に熱シールするだけで済むから、生産時間を短縮することができる。なお、
図2、4に示す蓄電デバイス用外装材1においても、熱融着性樹脂層3が、金属箔層の一方の面の全面に形成されているのではなく、外装材の周縁部領域に形成された構成であるので、接着剤層6を周縁部に形成するだけで良くて、接着剤層6を設ける領域(面積)が少なくて済み、これにより接着剤の養生(硬化)時間が短縮され、生産時間を短縮することができる。また、金属箔層4の一方の面の全面に絶縁層7が積層された構成(
図1〜4参照)又は金属箔層4の一方の面における熱融着性樹脂層3で取り囲まれた領域に絶縁層7が積層された構成(
図5参照)であるから、外装材1の絶縁性を向上させることができる。そして、熱融着性樹脂層3が、外装材1の周縁部領域に形成されていると共に、熱融着性樹脂層(ヒートシール層)3よりも薄膜化しても絶縁性を確保可能な絶縁層7を設けた構成であるので、外装材1の薄肉化、軽量化を図ることができる。
【0048】
本発明の蓄電デバイス用外装材1は、該外装材を成形(深絞り成形、張り出し成形等)することにより、例えば、
図1、2に示すように、収容ケース21と、該収容ケース21の上面開放口の周縁から略水平方向の外方に向けて延ばされた封止用周縁部(フランジ部)22とを有する立体形状に成形して外装材として使用することもできるし、或いは
図3〜5に示すように、該外装材を成形に供することなくそのまま平面状で使用することもできる。
【0049】
本発明の外装材1を用いて構成された蓄電デバイス30の一実施形態を
図6に示す。この蓄電デバイス30は、リチウムイオン2次電池である。
【0050】
前記蓄電デバイス30は、蓄電デバイス本体部31と、前述した
図1の蓄電デバイス用外装材1からなる第1外装材10と、金属箔層14の一方の面に絶縁層17が積層されてなる第2外装材12と、を備えている。前記第2外装材12は、成形に供されることなくそのまま平面状で使用される。前記第1外装材10は、前述したとおり、収容ケース21と、該収容ケース21の上面開放口の周縁から略水平方向の外方に向けて延ばされた封止用周縁部22とを有する立体形状に成形されており、この第1外装材10の収容ケース21内に前記蓄電デバイス本体部31が収容され、該蓄電デバイス本体部31の上に前記第2外装材12がその絶縁層17側を内方にして配置され、該第2外装材12の絶縁層17の周縁部と、前記第1外装材10の封止用周縁部22の熱融着性樹脂層3とがヒートシール接合によって封止されて、前記蓄電デバイス30が構成されている(
図6参照)。
【0051】
次に、本発明の外装材1を用いて構成された蓄電デバイス30の他の実施形態を
図7に示す。この蓄電デバイス30は、リチウムイオン2次電池である。
【0052】
前記蓄電デバイス30は、蓄電デバイス本体部31と、前述した
図3の蓄電デバイス用外装材1からなる第1外装材10と、金属箔層14の一方の面に絶縁層17が積層されると共に前記金属箔層14の他方の面に耐酸性層18が積層されてなる第2外装材12と、を備えている。前記耐酸性層18は、前記金属箔層14の他方の面(下面)に塗布して乾燥することにより形成された第1接着剤層(図示しない)を介して積層一体化されている。前記第1外装材10は、成形に供されることなくそのまま平面状で使用される。前記第2外装材12は、
図7に示すように、前記蓄電デバイス本体部31を収容し得る収容ケース21と、該収容ケース21の上面開放口の周縁から略水平方向の外方に向けて延ばされた封止用周縁部22とを有する立体形状に成形されており、この第2外装材12の収容ケース21内に前記蓄電デバイス本体部31が収容され、該蓄電デバイス本体部31の上に前記平面状の第1外装材10がその絶縁層7側を内方にして配置され、該第1外装材10の周縁部の熱融着性樹脂層3と、前記第2外装材12の封止用周縁部22の(上面の)絶縁層17とがヒートシール接合により封止されて、前記蓄電デバイス30が構成されている(
図7参照)。
【0053】
前記蓄電デバイス本体部31は、図示しないが、例えば、正極集電体、正極活物質、セパレーター、電解液、負極活物質、負極集電体等を備えている。
【0054】
なお、
図6の蓄電デバイス30では、第1外装材10は、収容ケース21を備えた立体形状に成形されているのに対し、第2外装材12は平面状で使用された構成を採用していたが、例えば、
図6の蓄電デバイスにおいて、第2外装材12として、平面状のものに代えて、
図7で使用した第2外装材(収容ケース21を備えた立体形状に成形されたもの)12を使用した構成(前記[12]の発明)を採用してもよい。この場合には、第1外装材10の収容ケース21および第2外装材12の収容ケース21(
図7参照)で形成される収容空間内に前記蓄電デバイス本体部31が収容される。
【0055】
本発明において、前記金属箔層4、14は、外装材1に酸素や水分の侵入を阻止するガスバリア性を付与する役割を担うものである。前記金属箔層4、14としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム箔、銅箔、ステンレス(SUS)箔等が挙げられ、アルミニウム箔、ステンレス(SUS)箔が一般的に用いられる。アルミニウム箔の材質としては、JIS H4160 A8079H−O、A8021H−Oが好ましい。前記金属箔層4、14の厚さは、20μm〜100μmであるのが好ましい。20μm以上であることで金属箔を製造する際の圧延時のピンホール発生を防止できると共に、100μm以下であることで軽量性を確保できるし、張り出し成形、絞り成形等の成形を行う場合には成形時の応力を小さくできて成形性を向上させることができる。
【0056】
前記金属箔層4、14は、少なくとも内側の面(絶縁層7、17側の面)に、化成処理が施されているのが好ましい。このような化成処理が施されていることによって内容物(電池の電解液等)による金属箔表面の腐食を十分に防止できる。例えば次のような処理をすることによって金属箔に化成処理を施す。即ち、例えば、脱脂処理を行った金属箔の表面に、
1)リン酸と、
クロム酸と、
フッ化物の金属塩及びフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
2)リン酸と、
アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂及びフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、
クロム酸及びクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
3)リン酸と、
アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂及びフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、
クロム酸及びクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、
フッ化物の金属塩及びフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
上記1)〜3)のうちのいずれかの水溶液を塗工した後、乾燥することにより、化成処理を施す。
【0057】
前記化成皮膜は、クロム付着量(片面当たり)として0.1mg/m
2〜50mg/m
2が好ましく、特に2mg/m
2〜20mg/m
2が好ましい。
【0058】
前記熱融着性樹脂層(内側層)3は、リチウムイオン二次電池等で用いられる腐食性の強い電解液などに対しても優れた耐薬品性を具備させると共に、外装材にヒートシール性を付与する役割を担うものである。
【0059】
前記熱融着性樹脂層3を構成する樹脂としては、特に限定されるものではないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン系共重合体、これらの酸変性物およびアイオノマーからなる群より選ばれた少なくとも1種の熱融着性樹脂を用いるのが好ましい。
【0060】
前記熱融着性樹脂層は、熱融着性樹脂フィルムで構成されていてもよいし、熱融着性樹脂の塗布コート層で構成されていてもよい。前者の場合には、例えば、平面視において枠形状に形成された熱融着性樹脂フィルムを用いてもよいし、複数のリボン状(短冊状)の熱融着性樹脂フィルムを用いてもよい。後者の場合には、熱融着性樹脂および溶媒(当該熱融着性樹脂を溶解できるもの)を含む塗布液を塗布した後、乾燥させることによって塗布コート層を形成できる。前記溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、水(エマルジョン)、およびこれらの混合溶媒等が挙げられる。
【0061】
前記熱融着性樹脂層3の厚さは、熱融着性樹脂フィルムで構成される場合には厚さ10μm〜80μmに設定されるのが好ましく、熱融着性樹脂の塗布コート層で構成される場合には厚さ1μm〜10μmの薄膜に設定することが可能となる。なお、前記熱融着性樹脂層3は、単層であってもよいし、複層であってもよい。
【0062】
前記絶縁層7、17は、樹脂(樹脂組成物を含む)の硬化物で形成されているのが好ましい。前記硬化物は、樹脂の塗布、硬化により形成される層であるから、十分な薄膜化を図ることができる。前記絶縁層7、17の厚さは、0.5μm〜10μmに設定されるのが好ましい。樹脂の塗布、硬化により形成することにより、このような薄い厚さに設定することが可能となる。中でも、前記絶縁層7、17の厚さは、1μm〜5μmに設定されるのがより好ましい。
【0063】
更に、前記絶縁層7、17が、樹脂の硬化物である場合には、外装材1のヒートシールの際の絶縁層7、17の減肉(厚さの減少)を防止できる。
【0064】
前記絶縁層7、17は、酸変性ポリオレフィンと多官能イソシアネートとを含む樹脂、熱硬化性樹脂および光硬化性樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂の硬化物で形成されているのが特に好ましい。
【0065】
前記酸変性ポリオレフィンとしては、特に限定されるものではないが、例えば、マレイン酸変性ポリプロピレン、マレイン酸変性ポリエチレン、エチレン−無水マレイン酸−(メタ)アクリレート共重合体、アイオノマー等が挙げられる。前記多官能イソシアネートとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、これら多官能イソシアネートのいずれかと、トリメチロールプロパン等の多官能アルコールとのアダクト体、イソシアヌレート変性体等が挙げられる。これらの多官能イソシアネートは、1種または2種以上を混合して用いることもできる。
【0066】
前記熱硬化性樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、エポキシメラミン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等が挙げられる。前記熱硬化性樹脂には、第三級アミン化合物等の硬化促進剤を添加することができる。
【0067】
前記光硬化性樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、ウレタン変性アクリレート、エポキシ変性アクリレート、アクリル樹脂アクリレート等が挙げられる。これらの樹脂に、重合性モノマーとして、アクリレートモノマー等を加え、更に、光重合開始剤として、ベンゾフェノン系、アセトフェノン系、チオキサントン系等の光重合開始剤を添加する。硬化は、前記光硬化性樹脂組成物を塗布、乾燥した後に、メタルハライドランプ等UVランプを使用して、積算光量150mW/m
2以上の照射エネルギーを照射して行う。なお、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂を用いた場合には、前記絶縁層7の形成時間を短縮化することができる。
【0068】
前記絶縁層7、17は、150℃において流動性を示さないものであるのが好ましい。この場合には、外装材のヒートシールを行う際に絶縁層7が溶融することがなく、従って十分な絶縁性を確保できる。
【0069】
前記絶縁層7、17の融点は、140℃以下であるのが好ましく、この場合には、金属箔層4や熱融着性樹脂層3との接着性が良好となる利点がある。中でも、前記絶縁層7、17の融点は、120℃以下であるのがより好ましく、100℃以下であるのが特に好ましい。
【0070】
前記絶縁層7、17は、ゲル分率(架橋度)が50%以上である硬化樹脂層であるのが好ましい。この場合には、十分な絶縁性を確保することができる。中でも、前記ゲル分率(架橋度)は80%以上であるのがより好ましい。前記ゲル分率(架橋度)は、JIS K6796−1988に準拠して測定して得られる架橋度(%)である。なお、抽出溶媒としてキシレンを用いて測定されるゲル分率(架橋度)である。
【0071】
前記絶縁層7、17における前記金属箔層4とは反対側の表面の動摩擦係数は0.5以下であるのが好ましく、中でも0.3以下であるのが特に好ましい。前記動摩擦係数は、JIS K7125−1999に準拠して当該外装材の同一面(絶縁層の表面)同士の動摩擦係数を測定した値(動摩擦係数)である。
【0072】
なお、前記絶縁層7、17は、樹脂の塗布、硬化により形成されるのが好ましいが、特にこれに限定されるものではなく、例えば樹脂フィルムが用いられてもよい。
【0073】
前記耐酸性層(外側層)2、18を構成する材料としては、外装材をヒートシールする際のヒートシール温度で溶融しない材料(耐熱性樹脂等)を用いる。前記耐熱性樹脂としては、熱融着性樹脂層3を構成する熱融着性樹脂の融点より10℃以上高い融点を有する耐熱性樹脂を用いるのが好ましく、熱融着性樹脂の融点より20℃以上高い融点を有する耐熱性樹脂を用いるのが特に好ましい。
【0074】
前記耐酸性層(外側層)2、18としては、特に限定されるものではないが、例えば、ナイロンフィルム等のポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム等が挙げられ、これらの延伸フィルムが好ましく用いられる。中でも、前記耐酸性層2、18としては、
・二軸延伸ナイロンフィルム等の二軸延伸ポリアミドフィルム
・二軸延伸ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム等の二軸延伸ポリエステルフィルム
・二軸延伸ポリオレフィンフィルム
のいずれかを用いるのがより好ましい。
【0075】
中でも、前記耐酸性層2、18は、二軸延伸PETフィルム/二軸延伸ナイロンフィルムからなる複層フィルム、二軸延伸ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルムおよび二軸延伸ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムからなる群より選ばれるフィルム層で形成されるのが特に好ましい。
【0076】
前記耐酸性層2、18の厚さは、2μm〜50μmであるのが好ましい。上記好適下限値以上に設定することで外装材として十分な強度を確保できると共に、上記好適上限値以下に設定することで軽量性を維持できるし、張り出し成形、絞り成形等の成形を行う場合には成形時の応力を小さくできて成形性を向上させることができる。
【0077】
前記耐酸性層2、18の外側の表面(金属箔層4とは反対側の表面)の動摩擦係数は0.5以下であるのが好ましく、中でも0.3以下であるのが特に好ましい。前記動摩擦係数は、JIS K7125−1999に準拠して当該外装材の同一面(耐酸性層の外側の表面)同士の動摩擦係数を測定した値(動摩擦係数)である。
【0078】
なお、前記耐酸性層2、18は、前記金属箔層4、14の他方の面に第1接着剤層(図示しない)を介して積層されるのが好ましい。
【0079】
前記第1接着剤層(図示しない)としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリウレタン接着剤層、ポリエステルポリウレタン接着剤層、ポリエーテルポリウレタン接着剤層等が挙げられる。前記第1接着剤層の厚さは、1μm〜5μmに設定されるのが好ましい。中でも、外装材の薄膜化、軽量化の観点から、前記第1接着剤層の厚さは、1μm〜3μmに設定されるのが特に好ましい。
【0080】
前記第2接着剤層6を用いる構成を採用する場合には、前記第2接着剤層6としては、特に限定されるものではないが、例えば、上記第1接着剤層として例示したものも使用できるが、電解液による膨潤の少ないポリオレフィン系接着剤を使用するのが好ましい。前記第2接着剤層6の厚さは、1μm〜5μmに設定されるのが好ましい。中でも、外装材の薄膜化、軽量化の観点から、前記第2接着剤層6の厚さは、1μm〜3μmに設定されるのが特に好ましい。
【0081】
なお、上記実施形態では、蓄電デバイス用外装材1は、予め熱融着性樹脂層3が周縁部に積層された構成であったが、熱融着性樹脂層を積層一体化しておくのではなく、別体として、平面視枠形状の熱融着性樹脂フィルム3を準備しておき、蓄電デバイス本体部を収容して蓄電デバイスを作成する際に、金属箔層の一方の面に絶縁層が積層されてなる第1外装材と、金属箔層の一方の面に絶縁層が積層されてなる第2外装材と、前記平面視枠形状の熱融着性樹脂フィルム3と、蓄電デバイス本体部31を用意し、互いの絶縁層同士が内側になるように第1外装材と第2外装材の間に前記枠形状の熱融着性樹脂フィルム3を挟み込むと共に、前記一対の外装材の間に形成される収容空間に前記蓄電デバイス本体部31を収容せしめ、熱融着性樹脂フィルム3が存在する周縁部をヒートシールすることにより封止を行って蓄電デバイス30を得てもよい。この場合にも例えば
図6、7に示す構造の蓄電デバイス30を得ることができる。
【0082】
また、上記実施形態の蓄電デバイスでは、一対の外装材のうち、一方の外装材として本発明の蓄電デバイス用外装材1(第1外装材10)を用い、他方の外装材として熱融着性樹脂層3を設けていない第2外装材(金属箔層の一方の面に絶縁層が積層されてなるもの)を用いていたが、一対の外装材の両方に本発明の蓄電デバイス用外装材1(第1外装材10)を用いるようにしてもよい。即ち、一方の蓄電デバイス用外装材1の熱融着性樹脂層3と、もう一方の蓄電デバイス用外装材1の熱融着性樹脂層3とが重ね合わされてヒートシールにより互いに融着接合して封止を行って蓄電デバイス30を得てもよい。この場合にも例えば
図6、7に示す構造の蓄電デバイス30を得ることができる。
【実施例】
【0083】
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0084】
<実施例1>
厚さ30μmのアルミニウム箔の両面に、ポリアクリル酸、リン酸、クロムとフッ素の化合物を含む化成処理液を塗布し、150℃で乾燥を行って、クロム付着量が3mg/m
2となるようにした。
【0085】
前記化成処理済みアルミニウム箔(金属箔層)の一方の面に、ポリエステル−ウレタン系接着剤を塗布した。しかる後、このポリエステル−ウレタン系接着剤塗布面に厚さ6μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(耐酸性層)を貼り合わせた。
【0086】
次に、前記アルミニウム箔の他方の面の全面に、マレイン酸変性ポリプロピレン(融点90℃、無水マレイン酸含有率0.3質量%)100質量部、トリレンジイソシアネート1質量部、シリカ(アンチブロッキング剤)0.1質量部、エルカ酸アミド(滑剤)0.2質量部を含有してなる樹脂組成物を塗布した後、80℃で1日間加熱硬化させることによって厚さ3μmの絶縁層を形成せしめた。
【0087】
次に、前記絶縁層の表面の中央部をマスキング(マスキングテープを貼付)した状態で、マレイン酸変性ポリプロピレン15質量部、トルエン(溶媒)75質量部の組成からなる塗布液を塗布し乾燥させることによって、前記絶縁層の周縁部に厚さ5μmのマレイン酸変性ポリプロピレン塗布コート層を形成し、マスキングを除去することによって、
図3に示す蓄電デバイス用外装材を得た。
【0088】
<実施例2>
厚さ25μmのアルミニウム箔の両面に、ポリアクリル酸、リン酸、クロムとフッ素の化合物を含む化成処理液を塗布し、150℃で乾燥を行って、クロム付着量が3mg/m
2となるようにした。
【0089】
前記化成処理済みアルミニウム箔(金属箔層)の一方の面に、ポリエステル−ウレタン系接着剤を塗布した。しかる後、このポリエステル−ウレタン系接着剤塗布面に厚さ2μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(耐酸性層)を貼り合わせた。
【0090】
次に、前記アルミニウム箔の他方の面の全面に、マレイン酸変性ポリプロピレン(融点90℃、無水マレイン酸含有率0.3質量%)100質量部、トリレンジイソシアネート1質量部、シリカ(アンチブロッキング剤)0.1質量部、エルカ酸アミド(滑剤)0.2質量部を含有してなる樹脂組成物を塗布した後、80℃で1日間加熱硬化させることによって厚さ3μmの絶縁層を形成せしめた。
【0091】
次に、前記絶縁層の表面の周縁部に、厚さ15μm、幅5mmの枠形状のポリプロピレンフィルム層を重ね合わせて、180℃、0.1MPaでヒートシールすることによって、
図3に示す蓄電デバイス用外装材を得た。
【0092】
<実施例3>
厚さ6μmの二軸延伸PETフィルムに代えて、厚さ6μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム/厚さ20μmの二軸延伸ポリアミドフィルムの積層フィルムを用いる(ポリアミドフィルムを内側(アルミ箔側)に配置する)と共に、マレイン酸変性ポリプロピレン含有塗布液に代えて、エポキシメラミン樹脂20質量部、シリカ(アンチブロッキング剤)0.3質量部、ポリエチレンワックス(滑剤)0.2質量部、トルエン(溶媒)64質量部、MEK(溶媒)16質量部の組成からなる塗布液を塗布した後200℃で1分間加熱することによって熱硬化を行って、厚さ3μmのエポキシメラミン樹脂の熱硬化層を形成した以外は、実施例1と同様にして、
図3に示す蓄電デバイス用外装材を得た。
【0093】
<実施例4>
アルミニウム箔の厚さを40μmに設定し、厚さ6μmの二軸延伸PETフィルム/厚さ20μmの二軸延伸ポリアミドフィルムの積層フィルムに代えて、厚さ12μmの二軸延伸PETフィルム/厚さ25μmの二軸延伸ポリアミドフィルムの積層フィルムを用いた(ポリアミドフィルムを内側(アルミ箔側)に配置した)以外は、実施例3と同様にして、
図3に示す蓄電デバイス用外装材を得た。
【0094】
<実施例5>
二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの厚さを10μmに設定した以外は、実施例2と同様にして、
図3に示す蓄電デバイス用外装材を得た。
【0095】
<実施例6>
二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの厚さを9μmに設定し、絶縁層の厚さを5μmに設定した以外は、実施例2と同様にして、
図3に示す蓄電デバイス用外装材を得た。
【0096】
<実施例7>
アルミニウム箔の厚さを20μmに設定し、厚さ6μmの二軸延伸PETフィルム層(単層)に代えて、厚さ6μmの二軸延伸PETフィルム/厚さ12μmの二軸延伸ポリアミドフィルムの積層フィルム層を用いた(ポリアミドフィルムを内側(アルミ箔側)に配置した)以外は、実施例1と同様にして、
図3に示す蓄電デバイス用外装材を得た。
【0097】
<実施例8>
アルミニウム箔の厚さを20μmに設定し、厚さ6μmの二軸延伸PETフィルム層(単層)に代えて、厚さ2μmの二軸延伸PETフィルム/厚さ12μmの二軸延伸ポリアミドフィルムの積層フィルム層を用いた(ポリアミドフィルムを内側(アルミ箔側)に配置した)以外は、実施例1と同様にして、
図3に示す蓄電デバイス用外装材を得た。
【0098】
<実施例9>
厚さ25μmのステンレス箔の両面に、ポリアクリル酸、リン酸、クロムとフッ素の化合物を含む化成処理液を塗布し、150℃で乾燥を行って、クロム付着量が3mg/m
2となるようにした。
【0099】
前記化成処理済みステンレス箔(金属箔層)の一方の面に、ポリエステル−ウレタン系接着剤を塗布した。しかる後、このポリエステル−ウレタン系接着剤塗布面に厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(耐酸性層)を貼り合わせた。
【0100】
次に、前記ステンレス箔の他方の面の全面に、エポキシメラミン樹脂20質量部、シリカ(アンチブロッキング剤)0.3質量部、ポリエチレンワックス(滑剤)0.2質量部、トルエン(溶媒)64質量部、MEK(溶媒)16質量部の組成からなる塗布液を塗布した後200℃で1分間加熱することによって熱硬化を行って、厚さ5μmのエポキシメラミン樹脂の熱硬化層からなる絶縁層を形成した。
【0101】
次に、前記絶縁層の表面の周縁部に、厚さ15μm、幅5mmの枠形状のポリプロピレンフィルム層を重ね合わせて、180℃、0.1MPaでヒートシールすることによって、
図3に示す蓄電デバイス用外装材を得た。
【0102】
<実施例10>
厚さ25μmのステンレス箔に代えて、厚さ25μmのアルミニウム箔を用い、厚さ12μmの二軸延伸PETフィルムに代えて、厚さ12μmの二軸延伸ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルムを使用し、絶縁層の厚さを3μmに設定し、厚さ15μm、幅5mmの枠形状のポリプロピレンフィルム層に代えて、厚さ15μm、幅5mmの枠形状のマレイン酸変性ポリプロピレンフィルム層を用いた以外は、実施例9と同様にして、
図3に示す蓄電デバイス用外装材を得た。
【0103】
<実施例11>
厚さ9μmの二軸延伸PETフィルム層(単層)に代えて、厚さ12μmの二軸延伸ポリアミドフィルム層(単層)を用い、厚さ15μm、幅5mmの枠形状のポリプロピレンフィルム層に代えて、厚さ15μm、幅5mmの枠形状のマレイン酸変性ポリプロピレンフィルム層を用いた以外は、実施例6と同様にして、
図3に示す蓄電デバイス用外装材を得た。
【0104】
<実施例12>
厚さ40μmのアルミニウム箔の両面に、ポリアクリル酸、リン酸、クロムとフッ素の化合物を含む化成処理液を塗布し、150℃で乾燥を行って、クロム付着量が3mg/m
2となるようにした。
【0105】
次に、前記アルミニウム箔の片面の全面に、アクリル酸メチル樹脂アクリレート(2重結合当量:500、Mw:78000)30質量部、フェノキシアクリレート1質量部、ベンゾフェノン0.1質量部、シリカ(アンチブロッキング剤)0.3質量部、エルカ酸アミド(滑剤)0.2質量部、トルエン(溶媒)78質量部を含有してなる樹脂組成物を塗布した後、該樹脂組成物に紫外線を照射することによって光硬化(硬化条件:積算光量500mJ/cm
2、ピーク照度500mW/cm
2、メタルハライドランプ120W/cm、1灯、光硬化ラインのコンベア速度10m/分)させて、厚さ5μmの光硬化樹脂層からなる絶縁層を形成せしめた。
【0106】
次に、前記絶縁層の表面の中央部をマスキング(マスキングテープを貼付)した状態でマレイン酸変性ポリプロピレン15質量部、トルエン(溶媒)52.5質量部、MEK(溶媒)22.5質量部の組成からなる塗布液を塗布し、乾燥させることによって、前記絶縁層の周縁部に、厚さ5μmのマレイン酸変性ポリプロピレン塗布コート層を形成し、マスキングを除去することによって、
図3に示す蓄電デバイス用外装材を得た。
【0107】
<実施例13>
厚さ40μmのアルミニウム箔の両面に、ポリアクリル酸、リン酸、クロムとフッ素の化合物を含む化成処理液を塗布し、150℃で乾燥を行って、クロム付着量が3mg/m
2となるようにした。
【0108】
次に、前記アルミニウム箔の片面の全面に、マレイン酸変性ポリプロピレン(融点90℃、無水マレイン酸含有率0.3質量%)100質量部、トリレンジイソシアネート1質量部、シリカ(アンチブロッキング剤)0.1質量部、エルカ酸アミド(滑剤)0.2質量部を含有してなる樹脂組成物を塗布した後、80℃で1日間加熱硬化させることによって厚さ5μmの絶縁層を形成せしめた。
【0109】
しかる後、前記絶縁層の表面の周縁部に、厚さ15μm、幅5mmの枠形状のポリプロピレンフィルム層を重ね合わせて、180℃、0.1MPaでヒートシールすることによって、
図3に示す蓄電デバイス用外装材を得た。
【0110】
<実施例14>
二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの厚さを12μmに設定し、厚さ15μm、幅5mmの枠形状のポリプロピレンフィルム層に代えて、厚さ10μm、幅5mmの枠形状のマレイン酸変性ポリプロピレンフィルム層を用いた以外は、実施例2と同様にして、
図2に示す蓄電デバイス用外装材を得た。
【0111】
<比較例1>
絶縁層の表面の「全面」にポリエステルウレタン系接着剤を塗布することによって、ポリエステルウレタン系接着剤層を形成し、さらに該接着剤層の表面の「全面」に、厚さ15μmのポリプロピレンフィルム層を積層し、その後3日間の養生を行った以外は、実施例2と同様にして、蓄電デバイス用外装材を得た。
【0112】
【表1】
【0113】
なお、表1中の下記略語は、それぞれ以下の用語を意味するものである。
【0114】
「PET」:ポリエチレンテレフタレート
「PP」:ポリプロピレン
「酸変性PP」:マレイン酸変性ポリプロピレン
「TDI」:トリレンジイソシアネート
「SUS」:ステンレス
【0115】
【表2】
【0116】
なお、表2中に記載の動摩擦係数は、JIS K7125−1999に準拠して測定して求めた動摩擦係数であり、耐酸性層の外側の表面の動摩擦係数は、当該外装材の同一面(耐酸性層の外側の表面)同士の動摩擦係数を測定した値(動摩擦係数)であり、絶縁層の外側の表面の動摩擦係数は、当該外装材の同一面(絶縁層の外側の表面)同士の動摩擦係数を測定した値(動摩擦係数)である。
【0117】
上記のようにして得られた各蓄電デバイス用外装材について下記評価法に基づいて評価を行った。
【0118】
<成形性評価法>
外装材を110×180mmのブランク形状にして、成形深さフリーのストレート金型にて深絞り1段成形を行い、各成形深さ(9mm、8mm、7mm、6mm、5mm、4mm、3mm、2mm)毎に成形性を評価し、割れが全く発生しない良好な成形を行うことができる最大成形深さ(mm)を調べた。判定は、最大成形深さが4mm以上であるものを「○」とし、最大成形深さが1mm以上4mm未満であるものを「△」とし、最大成形深さが1mm未満であるものを「×」とした。この結果を表2に示した。なお、使用した金型のポンチ形状は、長辺60mm、短辺45mm、コーナーR:1〜2mm、ポンチ肩R:1〜2mm、ダイス肩R:0.5mmである。
【0119】
<剥離の有無の評価>
外装材を110mm×180mmのブランク形状にして、成形深さ5mmのストレート金型にて深絞り1段成形を行い、成形品を得た。得られた成形品(成形高さ5mm加工品)を乾燥機内で80℃で3時間放置した後、成形品にデラミネーション(剥離)を生じていないか目視観察を行った。剥離を生じていないものを「○」、剥離を生じていたものを「×」とした。この結果を表1に示した。
【0120】
表1から明らかなように、本発明の実施例1〜14の外装材は、熱融着性樹脂層を全面にではなく周縁部に設けていると共に絶縁層の薄膜化が十分に可能であるので、外装材としての薄肉化、軽量化を図ることができるし、接着剤の養生期間を設けることなく(養生期間0日)生産しても剥離を生じないし、深絞り成形等の成形を行っても成形性は良好であるから、生産時間を短縮できて生産性を向上できる。
【0121】
これに対し、従来のように接着剤を全面に塗布してPPフィルムを全面に積層した比較例1の構成では、接着剤の養生期間を(通常の1週間ではなく)3日に短縮すると、養生不充分となって外装材に剥離を生じてしまう(表1参照)。