(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6755754
(24)【登録日】2020年8月28日
(45)【発行日】2020年9月16日
(54)【発明の名称】光モジュール及び光伝送装置
(51)【国際特許分類】
G02B 6/42 20060101AFI20200907BHJP
H05K 9/00 20060101ALI20200907BHJP
【FI】
G02B6/42
H05K9/00 A
H05K9/00 M
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-166718(P2016-166718)
(22)【出願日】2016年8月29日
(65)【公開番号】特開2017-111421(P2017-111421A)
(43)【公開日】2017年6月22日
【審査請求日】2019年4月3日
(31)【優先権主張番号】特願2015-243205(P2015-243205)
(32)【優先日】2015年12月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】301005371
【氏名又は名称】日本ルメンタム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 文秀
(72)【発明者】
【氏名】大森 幸一
(72)【発明者】
【氏名】内田 佳邦
(72)【発明者】
【氏名】関野 裕司
(72)【発明者】
【氏名】武口 浩二
(72)【発明者】
【氏名】名古屋 和孝
(72)【発明者】
【氏名】石井 宏佳
【審査官】
野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2003/0171033(US,A1)
【文献】
特表2009−543296(JP,A)
【文献】
特表2014−529164(JP,A)
【文献】
特開2003−124011(JP,A)
【文献】
特開2008−310066(JP,A)
【文献】
特開2009−258463(JP,A)
【文献】
特開2013−051133(JP,A)
【文献】
米国特許第06524134(US,B2)
【文献】
特開2008−102543(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0162709(US,A1)
【文献】
特開2014−092604(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0104808(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0315528(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/26−6/27
6/30−6/34
6/42−6/43
H01R 13/56−13/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケージへの脱着が可能な光モジュールであって、
モジュールケースと、
前記モジュールケースの外側に取り付けられて前記ケージからの抜け止めを解除するためのスライダと、
前記モジュールケースと前記スライダの間に介在して電磁波の漏洩を低減させる漏洩低減層と、
を有し、
前記漏洩低減層は、板状であり、前記モジュールケースに対して移動しないように貼り付けられ、
前記スライダは、前記漏洩低減層に対して移動可能であることを特徴とする光モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載された光モジュールであって、
前記漏洩低減層は、前記電磁波のエネルギーを熱エネルギーに変換する電磁波吸収体、又は、前記モジュールケースの表面よりも高い弾力性を有するように構成されて前記電磁波をシールドする導電体から構成されることを特徴とする光モジュール。
【請求項3】
請求項2に記載された光モジュールであって、
前記電磁波吸収体は、前記電磁波によって発生する電流を抵抗によって吸収する抵抗体と、分子の分極反応に起因する誘電損失によって前記電磁波を吸収する誘電体と、磁性材料の磁気損失によって前記電磁波を吸収する磁性体と、からなる群より選ばれた一つの物質であることを特徴とする光モジュール。
【請求項4】
請求項2に記載された光モジュールであって、
前記導電体は、金属布であることを特徴とする光モジュール。
【請求項5】
請求項3に記載された光モジュールであって、
前記抵抗体は、1S/m以上1000S/m以下の導電率を有することを特徴とする光モジュール。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載された光モジュールであって、
前記ケージは、前記光モジュールに接触して電磁的にシールドするように設けられたシールドフィンガを有し、
前記漏洩低減層は、前記光モジュールが前記ケージに装着されたときに、少なくとも一部が前記シールドフィンガと前記光モジュールとの接触部に対向する位置に設けられることを特徴とする光モジュール。
【請求項7】
請求項6に記載された光モジュールであって、
前記ケージは、前記光モジュールを挿入するための挿入口を有し、
前記シールドフィンガは、前記挿入口に隣接して前記ケージの内部に設けられることを特徴とする光モジュール。
【請求項8】
請求項7に記載された光モジュールであって、
前記漏洩低減層は、前記接触部に対向する前記位置から、前記挿入口に向かう方向に延びる部分を有するように設けられることを特徴とする光モジュール。
【請求項9】
請求項7又は8に記載された光モジュールであって、
前記漏洩低減層は、前記接触部に対向する前記位置から、前記挿入口から離れる方向に延びる部分を有するように設けられることを特徴とする光モジュール。
【請求項10】
光モジュールと、
前記光モジュールに接触して電磁的にシールドするように設けられた第1シールドフィンガを有して前記光モジュールが脱着されるように構成されたケージと、
を有し、
前記光モジュールは、
モジュールケースと、
前記モジュールケースの外側に取り付けられて前記ケージからの抜け止めを解除するためのスライダと、
前記ケージに前記光モジュールが装着されたときに、前記第1シールドフィンガと対向する位置で前記モジュールケースと前記スライダの間に介在して、電磁波の漏洩を低減させる漏洩低減層と、
を有し、
前記漏洩低減層は、板状であり、前記モジュールケースに対して移動しないように貼り付けられ、
前記スライダは、前記漏洩低減層に対して移動可能であることを特徴とする光伝送装置。
【請求項11】
請求項10に記載された光伝送装置であって、
前記ケージを搭載する回路基板と、
前記ケージの端部が挿入される穴を有する正面板と、
をさらに有し、
前記ケージは、前記正面板の前記穴の縁に接触して電磁的にシールドするように設けられた第2シールドフィンガを有することを特徴とする光伝送装置。
【請求項12】
請求項11に記載された光伝送装置であって、
前記第1シールドフィンガと前記第2シールドフィンガは、重なる位置にあることを特徴とする光伝送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光モジュール及び光伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ通信に用いられる光モジュールとして、破損や性能劣化などに伴う交換を容易にするため、脱着可能なプラガブル構造を有するものが知られている(特許文献1及び2参照)。このような光モジュールは、電子回路を有する回路基板に搭載されたケージに脱着できるようになっており、ケージに形成されたツメに引っ掛かる係合部で、ケージからの抜け止めを図るようになっている。抜け止めの解除は、光モジュールのスライダによって行うようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−257235号公報
【特許文献2】特開2008−233645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、信号の伝送量の増大に加えて伝送速度が高速化していて、電気信号の動作周波数は高くなっている。動作周波数が低い場合は、光モジュールとケージとの隙間が多少大きくても電磁障害(Electromagnetic Interference)を抑制することが可能であった。しかし、動作周波数が高くなると、光モジュールとケージとの隙間が小さくても電磁波がこの隙間を通ってホスト装置の外部へ放出される。
【0005】
本発明は、電磁障害に対するシールド機能を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る光モジュールは、ケージへの脱着が可能な光モジュールであって、モジュールケースと、前記モジュールケースの外側に取り付けられて前記ケージからの抜け止めを解除するためのスライダと、前記モジュールケースと前記スライダの間に介在して電磁波の漏洩を低減させる漏洩低減層と、を有することを特徴とする。本発明によれば、モジュールケースとスライダの間で漏洩する電磁波を漏洩低減層によって低減させることができるので、電磁障害に対するシールド機能を高めることができる。
【0007】
(2)(1)に記載された光モジュールであって、前記漏洩低減層は、前記電磁波のエネルギーを熱エネルギーに変換する電磁波吸収体、及び、前記モジュールケースの表面よりも高い弾力性を有するように構成されて前記電磁波をシールドする導電体の一方から構成されることを特徴としてもよい。
【0008】
(3)(2)に記載された光モジュールであって、前記電磁波吸収体は、前記電磁波によって発生する電流を抵抗によって吸収する抵抗体と、分子の分極反応に起因する誘電損失によって前記電磁波を吸収する誘電体と、磁性材料の磁気損失によって前記電磁波を吸収する磁性体と、からなる群より選ばれた一つの物質であることを特徴としてもよい。
【0009】
(4)(2)に記載された光モジュールであって、前記導電体は、金属布であることを特徴としてもよい。
【0010】
(5)(3)に記載された光モジュールであって、前記抵抗体は、1S/m以上1000S/m以下の導電率を有することを特徴としてもよい。
【0011】
(6)(1)から(5)のいずれか1項に記載された光モジュールであって、前記ケージは、前記光モジュールに接触して電磁的にシールドするように設けられたシールドフィンガを有し、前記漏洩低減層は、前記光モジュールが前記ケージに装着されたときに、少なくとも一部が前記シールドフィンガと前記光モジュールとの接触部に対向する位置に設けられることを特徴としてもよい。
【0012】
(7)(6)に記載された光モジュールであって、前記ケージは、前記光モジュールを挿入するための挿入口を有し、前記シールドフィンガは、前記挿入口に隣接して前記ケージの内部に設けられることを特徴としてもよい。
【0013】
(8)(7)に記載された光モジュールであって、前記漏洩低減層は、前記接触部に対向する前記位置から、前記挿入口に向かう方向に延びる部分を有するように設けられることを特徴としてもよい。
【0014】
(9)(7)又は(8)に記載された光モジュールであって、前記漏洩低減層は、前記接触部に対向する前記位置から、前記挿入口から離れる方向に延びる部分を有するように設けられることを特徴としてもよい。
【0015】
(10)本発明に係る光伝送装置は、光モジュールと、前記光モジュールに接触して電磁的にシールドするように設けられた第1シールドフィンガを有して前記光モジュールが脱着されるように構成されたケージと、を有し、前記光モジュールは、モジュールケースと、前記モジュールケースの外側に取り付けられて前記ケージからの抜け止めを解除するためのスライダと、前記ケージに前記光モジュールが装着されたときに、前記第1シールドフィンガと対向する位置で前記モジュールケースと前記スライダの間に介在して、電磁波の漏洩を低減させる漏洩低減層と、を有することを特徴とする。本発明によれば、モジュールケースとスライダの間で漏洩する電磁波を漏洩低減層によって低減させることができるので、電磁障害に対するシールド機能を高めることができる。
【0016】
(11)(10)に記載された光伝送装置であって、前記ケージを搭載する回路基板と、前記ケージの端部が挿入される穴を有する正面板と、をさらに有し、前記ケージは、前記正面板の前記穴の縁に接触して電磁的にシールドするように設けられた第2シールドフィンガを有することを特徴としてもよい。
【0017】
(12)(11)に記載された光伝送装置であって、前記第1シールドフィンガと前記第2シールドフィンガは、重なる位置にあることを特徴としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る光伝送装置の一部を示す斜視図である。
【
図3】
図2に示す光伝送装置のIII−III線断面図である。
【
図4】
図3に示す光伝送装置の一部を拡大した概略図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る光モジュールを示す斜視図である。
【
図6】
図5に示す光モジュールの分解斜視図である。
【
図7】
図5に示す光モジュールのVII−VII線断面の概略図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る光伝送装置及び光モジュールの変形例1を示す図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る光伝送装置及び光モジュールの変形例2を示す図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る光伝送装置及び光モジュールの変形例3を示す図である。
【
図11】本発明の実施形態に係る光伝送装置及び光モジュールの変形例4を示す図である。
【
図12】本発明の実施形態に係る光伝送装置及び光モジュールの変形例5を示す図である。
【
図13】本発明の実施形態に係る光伝送装置及び光モジュールの変形例6を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る光伝送装置の一部を示す斜視図である。
図2は、
図1に示す光伝送装置の側面図である。
図3は、
図2に示す光伝送装置のIII−III線断面図である。
【0020】
光伝送装置は、回路基板10を有する。回路基板10には多数のケージ12が搭載されているが、
図1にはその1つが示されている。ケージ12の端部が、正面板14の穴16に挿入されている。正面板14は、ケージ12の枠になっているのでベゼルともいう。ケージ12は、光モジュール18を挿入するための挿入口20(
図4参照)を有して中空で、光モジュール18を脱着できるようになっている。ケージ12は、金属などの導電体からなり、回路基板10でグランド電位に接続されている。特に限定されないが、ここでは1つのケージ12は、1つの光モジュール18を収納するようになっている。光モジュール18の挿し込み方向において、ケージ12の奥には、回路基板10に固定されるとともに電気的に接続される電気コネクタ(図示せず)が配置されており、光モジュール18のガイドとなる。ケージ12は、放熱効果を高めるためにヒートスプレッダ22が取り付けられて、光モジュール18の熱を発散するようになっている。
【0021】
図4は、
図3に示す光伝送装置の一部を拡大した概略図である。ケージ12は、第1シールドフィンガ24を有する。第1シールドフィンガ24は、光モジュール18に接触して電磁的にシールドするように設けられる。第1シールドフィンガ24は、ケージ12の挿入口20に隣接してケージ12の内部に設けられる。
図4には、光モジュール18を横方向に挟む一対の第1シールドフィンガ24が示されており、さらに、上下方向に挟む一対の第1シールドフィンガ(図示せず)を設けてもよい。第1シールドフィンガ24は、例えば金属片などで形成される。
【0022】
ケージ12は、第2シールドフィンガ26を有する。第2シールドフィンガ26は、正面板14の穴16の縁(内面)に接触して電磁的にシールドするように設けられる。
図4には、横方向に相互に反対に突出する一対の第2シールドフィンガ26が示されており、さらに、上下方向に相互に反対に突出する一対の第2シールドフィンガ26(
図1参照)を設けてもよい。第2シールドフィンガ26は、例えば金属片などで形成される。
【0023】
第1シールドフィンガ24と第2シールドフィンガ26は、
図4に示すように重なる位置にある。したがって、ケージ12の内側及び外側で電磁波をシールドする位置が重なるのでその効果が高い。第1シールドフィンガ24及び第2シールドフィンガ26は、それぞれ、ケージ12の内面及び外面から相互に反対方向に突出するように屈曲している。
図4に示す例では、第1シールドフィンガ24及び第2シールドフィンガ26が一体化してクリップを構成しており、ケージ12の端部を挟んで固定されている。
【0024】
図5は、本発明の実施形態に係る光モジュール18を示す斜視図である。
図6は、
図5に示す光モジュール18の分解斜視図である。光モジュール18は、光信号及び電気信号を少なくとも一方から他方に変換するための光サブアセンブリ(図示せず)を内部に有する。光サブアセンブリとして、半導体レーザなどの発光素子を内部に有して電気信号を光信号に変換して送信する光送信モジュール(TOSA; Transmitter Optical Subassembly)や、内部にフォトダイオードに代表される受光素子を有して受信した光信号を電気信号に変換する光受信モジュール(ROSA; Receiver Optical Subassembly)や、これらの両方の機能を内包したBOSA(Bidirectional Optical Subassembly)などがある。光モジュール18には、QSFP(Quad Small Form-Factor Pluggable)タイプや、CFP(C Form-Factor Pluggable)タイプがある。光モジュール18は、光伝送装置のケージ12に挿し込んでプラグ接続可能(プラガブル)になっている。
【0025】
光モジュール18は、光ポート28を備えるモジュールケース30を有する。光ポート28は、図示しない光ファイバを挿入するようになっている。光モジュール18は、ケージ12に装着すると抜け止めが図られるようになっている。詳しくは、ケージ12は、光モジュール18が配置される側(ケージ12の内側)に突出するロックタブ32(
図2参照)を有している。一方、光モジュール18は、ロックタブ32とのロック部34を有する(
図5及び
図6)。
【0026】
モジュールケース30の側面には溝36が形成されている。溝36は、光モジュール18の挿入方向に延びており、挿入されたときの奥側の端面がロック部34である。ロック部34は、光モジュール18がケージ12に装着されたときに、ロックタブ32(
図2)よりもケージ12の奥に配置される。これにより、ロックタブ32とロック部34とが勘合し、光モジュール18の抜け止めを図ることができる。
【0027】
光モジュール18は、ケージ12からの抜け止めを解除するためのスライダ38を有する。一対のスライダ38が、モジュールケース30の両側に取り付けられている。スライダ38は、光モジュール18のケージ12への装着方向に沿ってモジュールケース30とケージ12の間で移動できるようになっている。一対のスライダ38のそれぞれは、モジュールケース30の溝36にガイドされて長さ方向にスライドできるように配置されている。スライダ38は、溝36によって移動方向が規制される。スライダ38は、外側に突出する凸部40を有する。
【0028】
光モジュール18を取り外すときには、スライダ38をスライドさせる。スライダ38には、ゴムなどからなる取っ手42が固定されており、取っ手42を引っ張ることでスライダ38をスライドさせることができる。引っ張る方向は、光モジュール18を引き抜く方向である。そして、スライダ38の凸部40で、ロックタブ32(
図2)を内側から外方向に押し拡げて、ロックタブ32とロック部34のロックを解除する。こうして、光モジュール18をケージ12から取り外すことができる。
【0029】
モジュールケース30は、金属などの導電体からなり、その内側に収納される部品から発生する電磁波の多くを遮蔽する。しかし、図示しない電気コネクタに接続するための開口などから電磁波はモジュールケース30の外部に放射される。この電磁波の一部は、モジュールケース30とケージ12の隙間を伝わり、モジュールケース30とスライダ38との間にも電磁波が伝わる。この電磁波はモジュールケース30とスライダ38との間を通り、正面板14の外側へ放出され、光伝送装置全体としての電磁波放出量の増大を引き起こす。
【0030】
図7は、
図5に示す光モジュール18のVII−VII線断面の概略図である。光モジュール18は、漏洩低減層44を有する。漏洩低減層44は、モジュールケース30とスライダ38の間に介在して電磁波の漏洩を低減させる。例えば、電磁波の遮断や吸収が可能になる。漏洩低減層44は、図示しない粘着剤(例えば両面テープ)でモジュールケース30に貼りつけてもよい。
図7の例では、モジュールケース30の側面に溝36があり、溝36の底面とスライダ38の間に漏洩低減層44がある。変形例として、溝36の底面から立ち上がる内側面37と、スライダ38の端面との間の細い領域にも漏洩低減層を設けることができれば、さらに、電磁波の漏洩を低減させることができる。
【0031】
漏洩低減層44は、電磁波のエネルギーを熱エネルギーに変換する電磁波吸収体であってもよい。あるいは、電磁波吸収体は、電磁波によって発生する電流を抵抗によって吸収する抵抗体であってもよい。例えば、1S/m以上であって1000S/m以下の導電率を有する抵抗体を使用することができる。あるいは、漏洩低減層44は、分子の分極反応に起因する誘電損失によって電磁波を吸収する誘電体であってもよいし、磁性材料の磁気損失によって電磁波を吸収する磁性体であってもよい。漏洩低減層44は、電磁波をシールドする導電体であってもよい。導電体は、モジュールケース30の表面よりも高い弾力性を有するように構成されていると、スライドとの接触面積が大きくなるので、電磁波をシールドする効果が高まる。導電体からなる漏洩低減層44の一例として金属布(金属糸を編んだものや金属からなる不織布)が挙げられる。他の例として、絶縁体の繊維に金属メッキや金属蒸着をしたものもある。これらの例に限らず、導電性を有する布であれば、本願発明の効果を得ることができる。
【0032】
さらに導電体からなる漏洩低減層44は、金属粉やカーボン粉などの導電性のフィラーを内部に含有した、導電性の樹脂や導電性のペーストであっても構わない。
【0033】
図4に示すように、漏洩低減層44は、ケージ12に光モジュール18が装着されたときに、少なくとも一部が第1シールドフィンガ24と光モジュール18との接触部に対向する位置に設けられる。漏洩低減層44は、正面板14の穴16の内面と対向する部分を有する。また、漏洩低減層44は、第1シールドフィンガ24と光モジュール18との接触部に対向する位置から、挿入口20から離れる方向に延びる部分を有する。反対の方向(挿入口20に向かう方向)にも、漏洩低減層44はわずかに延びているが、この部分はなくてもよい。すなわち、漏洩低減層44は、第1シールドフィンガ24と光モジュール18との接触部に対向する位置よりも、挿入口20の方向に延びる部分を有しないように形成してもよい。
【0034】
本実施形態によれば、モジュールケース30とスライダ38の間で漏洩する電磁波を漏洩低減層44によって低減させることができるので、電磁障害に対するシールド機能を高めることができる。
【0035】
図8は、本発明の実施形態に係る光伝送装置及び光モジュールの変形例1を示す図である。この例では、漏洩低減層144は、挿入口120とは反対方向に延びる部分が、
図4の例よりも短い。例えば、漏洩低減層144は、第1シールドフィンガ124と光モジュール118との接触部に対向する位置にのみ設けてもよい。その場合、漏洩低減層144は、第1シールドフィンガ124と光モジュール118との接触部に対向する位置から、挿入口120から離れる方向に延びる部分を有しない。その他の内容は、上記実施形態で説明した通りであり、変形例1に係る光伝送装置は、変形例1の光モジュール118を含む。
【0036】
図9は、本発明の実施形態に係る光伝送装置及び光モジュールの変形例2を示す図である。この例では、漏洩低減層244は、挿入口220に近づく方向に延びる部分が、
図4又は
図8の例よりも長い。漏洩低減層244は、第1シールドフィンガ224と光モジュール218との接触部に対向する位置から、挿入口220に向かう方向に延びる部分を有する。また、漏洩低減層244は、正面板214の穴216に対向する部分を有し、正面板214の外側に至るように延びている。その他の内容は、上記実施形態で説明した通りであり、変形例2に係る光伝送装置は、変形例2の光モジュール218を含む。
【0037】
図10は、本発明の実施形態に係る光伝送装置及び光モジュールの変形例3を示す図である。この例では、第1シールドフィンガ324と第2シールドフィンガ326は、重ならない位置にある。詳しくは、光モジュール318に接する第1シールドフィンガ324は、第2シールドフィンガ326よりも、ケージ312の挿入口320から離れている。あるいは、正面板314の穴316の縁に接触する第2シールドフィンガ326は、第1シールドフィンガ324よりも、ケージ312の挿入口320に近い。漏洩低減層344は、第2シールドフィンガ326に対向せずに、第1シールドフィンガ324と光モジュール318との接触部に対向する位置にある。その他の内容は、上記実施形態で説明した通りであり、変形例3に係る光伝送装置は、変形例3の光モジュール318を含む。
【0038】
図11は、本発明の実施形態に係る光伝送装置及び光モジュールの変形例4を示す図である。この例は、ケージ412が第2シールドフィンガを有しない点で、
図4に示す構造と異なる。詳しくは、ケージ412は、正面板414の穴416に挿入されずにその裏面に隣接し、その挿入口420と正面板414の穴416が連通するように配置されている。ケージ412と正面板414との間にはガスケット446が介在している。ガスケット446と正面板414との間に、図示しない導電性スポンジなどを配置してもよい。ガスケット446は、ケージ412の端部に固定されている。その他の内容は、上記実施形態で説明した通りである。
【0039】
図12は、本発明の実施形態に係る光伝送装置及び光モジュールの変形例5を示す図である。この例では、漏洩低減層544は、
図11に示す変形例4よりも、第1シールドフィンガ524と光モジュール518との接触部に対向する位置から、挿入口520の方向及び挿入口520から離れる方向に延びる長さそれぞれが短い。
【0040】
図13は、本発明の実施形態に係る光伝送装置及び光モジュールの変形例6を示す図である。この例では、漏洩低減層644は、
図12に示す変形例5よりも、第1シールドフィンガ624と光モジュール618との接触部に対向する位置から、挿入口620の方向及び挿入口620から離れる方向に延びる長さがさらに短い。漏洩低減層644は、第1シールドフィンガ624と光モジュール618との接触部に対向する位置のみに設けてもよい。
【0041】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、実施形態で説明した構成は、実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。
【符号の説明】
【0042】
10 回路基板、12 ケージ、14 正面板、16 穴、18 光モジュール、20 挿入口、22 ヒートスプレッダ、24 第1シールドフィンガ、26 第2シールドフィンガ、28 光ポート、30 モジュールケース、32 ロックタブ、34 ロック部、36 溝、38 スライダ、40 凸部、42 取っ手、44 漏洩低減層、118 光モジュール、120 挿入口、124 第1シールドフィンガ、144 漏洩低減層、218 光モジュール、220 挿入口、224 第1シールドフィンガ、244 漏洩低減層、312 ケージ、314 正面板、316 穴、318 光モジュール、320 挿入口、324 第1シールドフィンガ、326 第2シールドフィンガ、344 漏洩低減層、412 ケージ、414 正面板、416 穴、420 挿入口、446 ガスケット、518 光モジュール、520 挿入口、524 第1シールドフィンガ、544 漏洩低減層、618 光モジュール、620 挿入口、624 第1シールドフィンガ、644 漏洩低減層。