(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
既設管が、例えば下水道等の生活基盤に密着した設備であると、地震動によっても管渠断面が確保され、更生管の内面に損傷がなく、設計流量を流下させられる状態で維持されることが望まれる。また、大地震によって既設管の管渠断面が変形したとしても、少なくともその内側の更生管には破断や亀裂等を生じないようにして土砂等の浸入を防ぎ、復旧までの間、下水を流下させられる状態であることが望まれる。
【0008】
既設管は、地震動によって、管体同士の接合部に水平方向の抜出しや屈曲等の変位を生じる可能性がある。一方、更生管にあっては、その外側の既設管の影響を受けて、引張力や圧縮力等の外力が作用する可能性がある。
【0009】
例えば、
図9に示すように、地震動によって、既設管95の接合部98に水平方向(矢印方向)の引張力が作用した場合、接合部98に水平方向変位(抜出し変形)が発生し、接合部98近傍の裏込め材97に亀裂が生じる。裏込め材97に生じた亀裂は内側の更生管96に達し、水平方向の引張力が更生管96にも作用する。耐震指針によれば、この引張力が作用する範囲は、螺旋状に巻回された帯状部材90の10周分の巻回し範囲に拡散すると想定されている。これに基づいて、帯状部材90は、想定される変位量を許容し、更生管96の機能を確保しうるように設計されていた。
【0010】
しかしながら、地震動によって生じる水平方向の抜出しや屈曲等の影響は、その内側の裏込め材や帯状部材に対して局所的に集中することも考えられた。更生管は、既設管との間に裏込め材が介在するので、必ずしも既設管と同じ挙動をするとは限らず、既設管の管体1本ごとの地震時の挙動を把握することは不可能とされた。また、将来想定されるような大地震を考慮に含めれば、帯状部材における変位量が上述の許容範囲を超える可能性も否定できなかった。
【0011】
本発明は、上記のような問題点にかんがみてなされたものであり、その目的とするところは、更生管路における耐震性をより一層高め、地震動によって発生する既設管等の流体の流路の抜出しや屈曲などの変位を、その内側の更生管路に対して局所的に作用させず、分散させられるようにして、地震後にも更生管路の機能維持を可能にする更生管路構造およびライニング用帯状部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の目的を達成するための本発明の解決手段は、流路の内壁が帯状部材でライニングされ、前記内壁と前記帯状部材との間に裏込め材が設けられている更生管路構造を前提とする。かかる更生管路構造として、前記帯状部材は、前記流路の内壁側に突出するリブと、凸条状の伸張部と、前記伸張部を跨ぎ前記伸張部および前記リブよりも内壁側に突出したスペーサ部材とを備えており、前記流路の内壁と前記スペーサ部材との間隔は、前記流路の内壁と前記リブとの間隔よりも小さい構成とされている。
【0013】
この特定事項により、前記流路の内壁と帯状部材との間では、スペーサ部材が内壁側に突出した状態で配設され、裏込め材の厚みを減少させて設けられる。ライニングされた更生管路に地震動等によってひび割れが生じる場合、当該スペーサ部材の近傍においてひび割れが誘発され、スペーサ部材のない箇所に比べてひび割れを発生させやすくすることができる。これにより、更生管路と流路との間で、かかるひび割れを予め設定した部位に分散させることが可能となる。また、帯状部材は、伸張部とスペーサ部材とを備えているので、生じたひび割れを許容するように変形することが可能であり、大きな破損が発生する可能性を低減させることができる。
【0014】
また、前記更生管路構造に用いられるライニング用帯状部材も本発明の技術的思想の範疇である。すなわち、流路の内面に設けられるライニング用帯状部材を前提としており、このライニング用帯状部材として、凸条状の伸張部が設けられた帯状の本体と、前記伸張部を跨ぎ前記伸張部より突出するスペーサ部材とを備えた構成としている。
【0015】
この特定事項により、当該ライニング用帯状部材により前記流路がライニングされたとき、前記流路の内壁と前記スペーサ部材との間隔を狭めることができ、前記流路の内壁と帯状部材との間でスペーサ部材を内壁側に突出させた状態で配設することが可能とされる。これにより、流路と更生管路との間に設けられる裏込め材の厚みを制御することができる。
【0016】
前記ライニング用帯状部材の具体的な構成として次のものが挙げられる。すなわち、前記スペーサ部材は、前記伸張部を挟むとともに、該伸張部を収縮させた状態で取り付けられた構成であることが好ましい。
【0017】
これにより、前記伸張部は通常状態では収縮した状態に保持され、ライニング用帯状部材により前記流路がライニングされたとき、前記伸張部による溝がライニング後の流路内面に現れにくいものとなり、流体の流通性を良好に確保することが可能となる。また、収縮した状態の前記伸張部が外力の作用で伸張するのに対応して前記スペーサ部材も変形しうる。したがって、前記伸張部は、外力が作用したときには、その収縮が解除されるとともに伸張変形することが可能となる。
【0018】
また、前記ライニング用帯状部材において、前記帯状部材に、幅方向の両側縁部に接合部を備えさせ、前記伸張部を、幅方向一方の接合部に隣接して設けた構成とすることが好ましい。
【0019】
これにより、前記ライニング用帯状部材を用いて流路をライニングするとき、負荷がかかりやすい接合部を変形させずに、これに隣接する伸張部を変形させることが可能となる。そのため、接合部が確実に接合されて、より一層、更生管路の信頼性を高めることが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、ライニング用帯状部材として、伸張部と該伸張部を跨ぐスペーサ部材を備えた構成としている。このライニング用帯状部材を用いた更生管路構造では、更生対象の流路の内壁と前記スペーサ部材との間隔が、狭められて設けられる。これによって、裏込め材に生じるひび割れを制御し、地震動によって発生する流路の変位を、その内側の更生管路に対して局所的に作用させず分散させることが可能となって、更生管路の耐震性を高めるとともに地震後の更生管路の機能維持が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態に係る更生管路構造およびライニング用帯状部材について、図面を参照しつつ説明する。
【0023】
(ライニング用帯状部材)
図1は、実施形態に係るライニング用帯状部材1を示す断面図である。ライニング用帯状部材(以下「帯状部材」という。)1は、例えば埋設管内に施工する更生管を形成するためのものであり、螺旋状に巻き回されて側縁部が接合されることによって管状体となされる。
【0024】
図1に示すように、帯状部材1は、合成樹脂系材料からなる本体部(本体)2と、金属製板状材からなるスペーサ部材3とを備えている。本体部2は、長尺帯板状の平板部21と、平板部21の幅方向の側縁部に一体形成された接合部23とを備えている。なお、
図1に示すように、帯状部材1を用いて形成される管状体において、管状体の内側に向けられる側を帯状部材1の表側とし、管状体の外側に向けられ既設管の内壁に面する側を帯状部材1の裏側として以下説明する。
【0025】
本体部2は、帯状部材1の裏側に相当する、平板部21の一側面に、複数条のリブ22を備えている。リブ22は、平板部21の長手方向に沿って延びるよう連続的に立設され、断面略T字形または略L字形に形成されている。
【0026】
本体部2には、平板部21に連続して伸張部24が設けられている。
図2に示すように、伸張部24は、平板部21に一体に形成されるとともに、平板部21に対して幅方向に連続させて形成されている。この伸張部24は、本体部2の裏側に突出する、襞状に曲がった凸条からなる。凸条は、平板部21の長手方向に沿って延びている。
【0027】
伸張部24は、具体的には、断面形状が逆U字状に近似される2条の畝状部241を有している。すなわち、伸張部24は、2つの山と、それらの間の1つの谷とを備える形状に形成されている。これにより、伸張部24の断面形状が略M字形となっている。
【0028】
また、伸張部24は、平板部21よりも薄肉状であり、もともとは幅方向に伸張変形および収縮変形しうるように形成されている。すなわち、伸張部24の凸条である2条の畝状部241は、本体部2の表側から見ると2条の溝となっている。
図2に示すように、伸張部24のこれらの溝は幅方向にそれぞれ拡張されて伸張部24が伸張し、
図3に示すように、溝が閉じられて伸張部24が収縮するように形成されている。
【0029】
本体部2における伸張部24の裏側方向への突出量は、特に限定されない。図示するように、伸張部24は、リブ22よりも突出するように設けられても、リブ22と同等の突出量で設けられてもよい。リブ22よりも突出させることで、伸張部24の最大伸張量が増大される。畝状部241の数も特に限定されず、伸張量に応じて適宜設定すればよい。
【0030】
帯状部材1において、接合部23は多様な形態とされることが可能である。例示する形態では、接合部23は、一方の側縁部に第1掛結部231を備え、他方の側縁部に第2掛結部232を備えている。
【0031】
第1掛結部231は、帯状部材1における表側に開口する2条の溝部を有する。これに対応して、第2掛結部232は、帯状部材1における裏側に開口する2条の溝部を有し、第1掛結部231に嵌め込み可能とされている。この場合、第1掛結部231および第2掛結部232の溝部内には、それぞれ鉤型の断面形状の突条が、帯状部材1の厚み方向に2段に連なって設けられている。伸張部24は、第1掛結部231に隣接して設けられてなる。
【0032】
本体部2は、これらの平板部21、リブ22、接合部23、および伸張部24を備えて一体成形されている。例えば、本体部2は、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂を単独または適宜混合したものを材料として、押出成形などの加工手段によって形成されている。平板部21は、必要に応じて、その表面や内部がガラス繊維等で補強されてもよい。
【0033】
図1に示すように、本体部2の伸張部24の裏面側には、スペーサ部材3が装着されている。スペーサ部材3は、例えば圧延鋼材などの高い剛性を有し、本体部2に比べて弾性変形域が小さく、塑性変形域が大きい金属製板状材からなる。スペーサ部材3は、伸張部24の裏側を跨ぐように屈曲した形状を有している。
【0034】
例示の形態では、スペーサ部材3は、金属製板状材が折曲されて幅方向の略中央部が盛り上げられ、本体部2の裏側に突出する凸部31を備えている。凸部31は、表側方向に開放された溝状に形成されている。また、凸部31は、裏側方向に、伸張部24よりも突出するとともに、複数のリブ22よりも突出する形状とされている。スペーサ部材3は帯状部材1の中で最も背高であり、裏側方向に最も突出している。この場合、凸部31は、帯状部材1の裏側から表側方向に窄まった略溝型に形成されている。
【0035】
スペーサ部材3は、凸部31の両側に連続させて、押圧部32が備えられている。押圧部32は、伸張部24の外側面に密着する部分であり、凸部31の両側縁から延設されている。2つの押圧部32は、伸張部24を差し挟んで対向する位置関係にあり、押圧部32同士の離間距離は凸部31の溝幅よりも狭く形成されている。
【0036】
また、スペーサ部材3には、押圧部32に連続させて、凹部33が備えられている。凹部33は、凸部31の幅方向の両側に設けられ、帯状部材1の裏側方向に開放され、表側から裏側に次第に拡がった略溝型に形成されている。一方の凹部33の端縁は、第1掛結部231の外側に係止し、他方の凹部33の端縁は、リブ22の端部に係止される。これらの凹部33は、本体部2の平板部21の裏側面に沿って配設される。
【0037】
スペーサ部材3は、長尺部材である必要はなく、本体部2に対して短尺で形成されて、本体部2の長手方向に間隔をおいて複数箇所に配設されている。例えば、帯状部材1における本体部2の幅が6〜10cmである場合に、スペーサ部材3は幅が3〜6cm、長さが10〜20cmの大きさにて形成される。
【0038】
帯状部材1にスペーサ部材3が備えられることで、帯状部材1の断面形状が
図1に示されるように保持されることが好ましい。そのため、帯状部材1の断面形状が保持される形態であれば、本体部2の長手方向に複数のスペーサ部材3が連続して配設されても、あるいは長尺のスペーサ部材3が配設されても、どのようにスペーサ部材3が設けられてもよい。また、帯状部材1の本体部2と等しい長さのスペーサ部材3が設けられてもよい。
【0039】
これらの各部を備えたスペーサ部材3は、合成樹脂系材料からなる本体部2に比べて弾性変形域が小さく、塑性変形域が大きい。そのため、本体部2とスペーサ部材3とに同程度の変形量(ひずみ)を与えた場合、本体部2では弾性変形をさせ、スペーサ部材3では塑性変形をさせることが可能となる。また、スペーサ部材3は、凸部31、押圧部32、および凹部33を備えた構造であることにより、外力の作用で幅方向に変形し得る。
【0040】
帯状部材1の製造過程で、
図2に示すように、帯状部材1の本体部2は、伸張部24の溝が開いた状態で成形される。本体部2の裏側には、複数のローラ体やガイド部材が配置されて、伸張部24の2条の畝状部241がともに外方から幅方向に押圧される。これにより、
図3に示すように、畝状部241は押し潰されて、畝状部241の溝がほぼ閉じられた状態となる。スペーサ部材3は、このように伸張部24を収縮させた状態で、本体部2に対して裏側から装着される。
【0041】
図1に示すように、スペーサ部材3の押圧部32は、伸張部24の外側面に密着しており、伸張部24を挟み込むものとなる。帯状部材1は、本体部2の伸張部24が収縮した(溝が閉じられた)状態に保持されて形成される。伸張部24の両側に延びる平板部21は、伸張部24が収縮することで近接した状態となる。
【0042】
図2に示すように、帯状部材1の本体部2は、伸張部24が開いた状態となるように押し出し成形される。帯状部材1の製造過程で、本体部2の裏側に複数のローラ体やガイド部材を配置し、伸張部24の凸条である2条の畝状部241をともに外方から幅方向に押圧する。これにより、
図3に示すように、畝状部241は押し潰されて、畝状部241の溝がほぼ閉じられた状態となる。このように伸張部24を収縮させて閉じた状態のまま、本体部2に対して裏側からスペーサ部材3を装着する。装着後も、畝状部241の溝、さらにはこの溝の開口縁が平板部21の延長部分によってほぼ閉じられた状態となる。
【0043】
なお、帯状部材1の本体部2にスペーサ部材3を装着する手法は、上述の製造過程によらずともよい。
【0044】
図1に示すように、スペーサ部材3の押圧部32は伸張部24の外側面に密着し、伸張部24を挟み込む。帯状部材1において、伸張部24を、あらかじめ収縮した(溝が閉じられた)状態に保持した後、スペーサ部材3を嵌め込むようにしても、また、伸張部24の裏側にスペーサ部材3を配置した後、両者を嵌め合わせることによって伸張部24の溝を閉じるようにしてもよい。あるいは、スペーサ部材3の開口幅を拡げた状態で成形し、伸張部24に跨ぐように配置した後、スペーサ部材3の押圧部32を外方から押圧し、伸張部24の溝を閉じてもよい。伸張部24の両側に延びる平板部21は、伸張部24が収縮することで互いに近接し、閉じた状態となる。
【0045】
このように、帯状部材1は、必要箇所で伸張しうる伸張部24とスペーサ部材3とを備えたものとすることができる。帯状部材1を用いて形成される更生管路は、その内面に、伸張部24による溝状の窪みがあまり現れることがなく、その多くは確実に閉じられた状態で保持されるので、流下性能を良好に確保することができる。また、スペーサ部材3は、外力によって塑性変形することが可能であるので、変形させるために加熱等の作業を必要とせず、施工作業性を高めることができる。
【0046】
なお、伸張部24は、例示した形状に限定されず、断面略U字形、略V字形など、多様な形状の襞状に曲げられて本体部2の裏側に突出した構成であればどのような形状であってもよい。また、伸張部24は、第2掛結部232に隣接して設けられてもよい。
【0047】
図1に示す形態では、スペーサ部材3の凹部33の端縁部が、本体部2の接合部23またはリブ22に係止されることによって、スペーサ部材3が本体部2に対して固定されている。本発明において、スペーサ部材3を本体部2に対して固定する方法は、これに限定されるものではなく、例えば、スペーサ部材3の凹部33や押圧部32を本体部2に接着固定するものであってもよい。
【0048】
(管路更生方法)
前述の帯状部材1を用いた管路更生方法について、
図8を参照しつつ説明する。
【0049】
帯状部材1は、螺旋状に巻回されて、第1掛結部231と第2掛結部232とが接合されることにより管状体をなし、所望の管径の更生管10となされる。帯状部材1を製管するには、製管機が用いられる。製管機には、多様な構造のものを使用することができ、詳細な説明を省略する。
【0050】
流路の一つである既設管6の更生に際して、帯状部材1は、ドラム71に巻き取られて施工現場に搬送される。施工現場では、所定スパンごとに設けられたマンホール61、62を利用し、帯状部材1等を既設管6内に導入し、更生管10を形成していく。
【0051】
図8に示すように、発進側マンホール61の地上には、帯状部材1を巻き重ねた回転台付きのドラム71を設置する。到達側マンホール62の地上には、発電機72を設置する。既設管6内には、製管機73および油圧ユニット74を搬入する。
【0052】
帯状部材1を、既設管6内を進行する製管機73へと順に送り込み、製管機73において螺旋状に巻回しつつ接合する。螺旋状に巻回されることで隣接した帯状部材1は、側縁部の第1掛結部231と第2掛結部232とが段階的に嵌め合わされることで接合される。これにより、帯状部材1は管状となされ、既設管6内に残置されていく。また、第1掛結部231と第2掛結部232とを段階的に嵌め合わせることで、更生管10の管径を既設管6の内径に対応するよう調整しながら、所望の更生管10を形成することができる。
【0053】
製管終了後、更生管10と既設管6との間隙に、硬化性モルタル等の裏込め材4を注入し、硬化させることで、既設管6の更生が完了する。
【0054】
既設管6の直線部では帯状部材1が均等間隔で巻回され、本体部2の伸張部24はスペーサ部材3に保持されて収縮状態となっている(
図1参照)。したがって、既設管6に配置される更生管10の内面はほぼ平滑となり、良好な通水を実現することが可能とされる。
【0055】
既設管6に管路の曲がり部があるとき、帯状部材1は、曲がり部の外側よりも内側で密に配置される。このような場合に、曲がり部の内側では、帯状部材1の伸張部24がスペーサ部材3に保持された状態で維持される。一方、曲がり部の外側では、伸張部24が伸張して、本体部2の幅を拡張させて配置される。これにより、既設管6の曲がり形状に対応した更生管10が形成される。
【0056】
帯状部材1におけるこのような変形は、例えば、本体部2に対して幅方向の引張力を加えることで実現される。あるいは、スペーサ部材3に対して、2つの凹部33を幅方向に引き離すような力を加えて変形させてもよい。このとき、与えられた変形量が予め定められた規定量以内であると、伸張部24の変形は弾性変形となる。伸張部24にはスペーサ部材3が装着されているので、規定量を超えた変形とはなり難く、隣接して配置された帯状部材1の伸張部24に分散して変形が生じることとなる。
【0057】
したがって、伸張部24において弾性変形域を超えた変形を生じる可能性が極めて低くなり、白化等の性質の低下を生じる可能性も低減する。一方、スペーサ部材3に生じる変形は、塑性変形によるものとなる。そのため、伸張部24において生じた変形は、変形を生じさせた力を除いた後もスペーサ部材3によって維持される。
【0058】
(更生管路構造)
前述した帯状部材1による更生管10は、既設管6に一体化されて既設管6の内壁を被覆するライニング材となる。
図5は、既設管6の管軸方向に沿った部分断面図であり、実施の形態に係る更生管路構造を示している。
【0059】
更生管10と既設管6の内壁との間には、裏込め材4が充填され一体に硬化されている。更生管10を構成する帯状部材1は、伸張部24が収縮した状態でスペーサ部材3が装着され、畝状部241は押し潰されて、畝状部241の溝がほぼ閉じられた状態となっている。これにより、既設管6と一体化された更生管10の内面は、ほぼ平滑となっている。
【0060】
既設管6と帯状部材1との間の裏込め材4は、帯状部材1の裏側に隙間なく充填されている。この形態にかかる更生管路構造においては、
図9に示した従来の更生管路構造とは異なり、更生管10の裏側にひび割れ誘発部5が設けられている。
【0061】
更生管10をなす帯状部材1において、スペーサ部材3は、リブ22よりも裏側(既設管6側)に突出して設けられている。すなわち、スペーサ部材3は、凸部31が、既設管6の内壁に対向する配置形態で、既設管6の内壁に近接して設けられている。裏込め材4は、スペーサ部材3の凸部31と、既設管6の内壁との間に、リブ22と既設管6の内壁との間よりも薄い厚みで充填されることとなる。
【0062】
このように、スペーサ部材3によって、更生管10における裏込め材4の被り厚を減少させ、裏込め材4が少ない被り厚で充填されて硬化した箇所が、ひび割れ誘発部5となされている。ひび割れ誘発部5は、更生管10の裏側において、管軸方向には均等に分散して配設され、周方向には螺旋状に連続して設けられている。
【0063】
かかる更生管路構造では、地震動によって既設管6に水平方向の抜出しや屈曲等の変位が生じるとき、
図6に示すように、既設管6の内側ではひび割れ誘発部5においてひび割れ(クラック、亀裂)を発生させることが可能となる。ひび割れ誘発部5は、裏込め材4の被りが少ないことから、引張力または圧縮力に対して、他の箇所よりもひび割れを生じやすい構造となっている。
【0064】
ひび割れ誘発部5にひび割れが発生すると、その作用を受けて、スペーサ部材3と伸張部24とがともに伸張する。帯状部材1の接合部23では、伸張等の変形が抑えられ、更生管10の水密性が保たれる。
【0065】
その結果、地震動による既設管6の変形を、裏込め材4および更生管10に対して局所的に作用させず、ひび割れ誘発部5において分散して受け止め、更生管10を既設管6の変形に追従させることが可能となる。
【0066】
さらに大きい地震動に対しては、
図7に示すように、スペーサ部材3および伸張部24がさらに伸張することで許容される。これにより、更生管10が破損するまでには到らず、局所的な変形や破壊を防ぐことができる。万一、終局的に既設管6に大きな破損を生じた場合でも、更生管10に破断や亀裂等が生じる可能性を大幅に低減することができ、土砂等の浸入を抑えることができる。その結果、地震後にも、更生管10内に通水等が可能な状態を確保することができる。
【0067】
以上のように本発明に係る更生管路構造によれば、地震動等によるひび割れを、予め設定した部位に生じさせることができ、更生管10に局所的な破損が発生する可能性を低減することができ、所定の強度を備えた耐震性の高い更生管路を形成することが可能となる。
【0068】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲での種々の変更が可能であり、伸張部24およびスペーサ部材3の形状等、多様な形態により実施することができる。
【0069】
帯状部材1を用いて形成されるライニング用の管状体には、前述のとおり螺旋管だけに限定されるものではなく、ライニング対象の流路の内面に沿って多数本の帯状部材1を管軸方向に配設し、相互に接合して内面をライニングしたものであってもよい。帯状部材1の長手方向と交差する方向に延びるよう、スペーサ部材3と伸張部24とが設けられればよい。また、流路は管体であるほか、コンクリートや地中をくりぬいた水路等の暗渠又は上面開放された溝及び開渠などであってもよい。流路内の流体は、水であるに限らず、液体、気体、又はこれらと固体との混合物など、どのような流体であってもよい。