(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記駆動制御部は、前記高周波信号から前記高周波駆動信号の周波数を含む所定の周波数帯の振幅を取得し、前記取得した振幅に基づいて前記検出コイルと前記駆動コイルとの距離に相当する距離相当値を算出し、前記算出した距離相当値に基づいて前記駆動コイルへ付与する駆動信号を補正する請求項1に記載の駆動装置。
駆動コイルと前記駆動コイルに対向して配置される磁石とのうちの一方が配置された固定部と、前記駆動コイルと前記磁石とのうちの他方が配置されていて、前記固定部に対して移動する可動部と、前記固定部と前記可動部とのうちの前記駆動コイルが配置されているほうに配置されていて、前記磁石の磁束に応じた検出信号を出力する検出部と、前記固定部と前記可動部とのうちの前記磁石が配置されているほうに配置されていて、前記磁石を挟んで前記駆動コイルと対向する位置に配置された検出コイルとを有する駆動装置の制御方法であって、
前記可動部を駆動する電流に高周波駆動信号を重畳させた駆動信号を前記駆動コイルに付与することと、
前記検出コイルに発生する前記高周波駆動信号の周波数を含む所定の周波数帯の高周波信号から前記高周波駆動信号の周波数を含む所定の周波数帯の振幅を取得することと、
前記取得した振幅に基づいて前記検出コイルと前記駆動コイルとの距離に相当する距離相当値を算出することと、
前記算出した距離相当値に基づいて前記駆動コイルへ付与する駆動信号を補正することと、
前記補正された駆動信号を前記駆動コイルに付与して前記可動部を所定位置に駆動することと、
を具備する制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る撮像装置の概略の構成を示す図である。
図1に示す撮像装置1は、交換レンズ10と、本体20とを有している。交換レンズ10は、本体20に設けられたマウント21を介して本体20に装着される。交換レンズ10が本体20に装着されることによって、交換レンズ10と本体20とは通信自在に接続される。これにより、交換レンズ10と本体20とは協働して動作する。なお、撮像装置1は、必ずしもレンズ交換式の撮像装置でなくてよい。例えば、撮像装置1は、レンズ一体型の撮像装置であってもよい。また、
図1に示す撮像装置は、デジタルカメラ等の、手ぶれ補正ユニット23を備えた各種の撮像装置でよい。
【0013】
交換レンズ10は、光学系11を有している。光学系11は、例えば複数のレンズ及び絞りを含み、図示しない被写体からの光束を本体20の手ぶれ補正ユニット23に入射させる。
図1の光学系11は、複数のレンズによって構成されているが、光学系11は、1枚のレンズで構成されていてもよい。また、光学系11は、フォーカスレンズの他、ズームレンズを有して構成されていてもよい。これらの場合、光学系11の少なくとも一部のレンズは、光軸Oに沿った方向であるZ方向に沿って移動自在に構成されている。
【0014】
本体20は、シャッタ22と、手ぶれ補正ユニット23と、モニタ24と、操作部25と、制御回路26とを有している。
【0015】
シャッタ22は、例えば手ぶれ補正ユニット23の前側(Z方向の正の側とする)に配置されるフォーカルプレーンシャッタである。このシャッタ22は、開かれることにより、手ぶれ補正ユニット23を露出状態にする。また、シャッタ22は、閉じられることにより、手ぶれ補正ユニット23を遮光状態にする。
【0016】
駆動装置の一例としての手ぶれ補正ユニット23は、撮像素子を有し、図示しない被写体を撮像することによって被写体に係る映像信号を生成する。また、手ぶれ補正ユニット23は、可動部をコイルと磁石とを用いたVCM(ボイスコイルモータ)によって固定部に対して移動させることにより、撮像素子に入射する被写体光を補正して手ぶれ等によって映像信号に生じる像ぶれを補正する。手ぶれ補正ユニット23の構成については後で詳しく説明する。
【0017】
モニタ24は、例えば液晶ディスプレイであり、手ぶれ補正ユニット23で生成された映像信号に基づく画像を表示する。また、モニタ24は、ユーザが撮像装置1の各種の設定を行うためのメニュー画面を表示する。なお、モニタ24は、タッチパネルを有していてもよい。
【0018】
操作部25は、例えばレリーズボタンである。レリーズボタンは、ユーザが撮像装置1による撮影開始を指示するためのボタンである。なお、操作部25は、レリーズボタン以外の各種の操作部も含む。
【0019】
制御回路26は、例えばCPUやメモリを含み、撮像装置1における撮影動作等の撮像装置1の全体の動作を制御する。
【0020】
次に、手ぶれ補正ユニット23についてさらに説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る駆動装置の一例としての手ぶれ補正ユニット23の構成を示す図である。
図2の左側は手ぶれ補正ユニット23の正面図を示しており、右側は手ぶれ補正ユニット23の側面図を示している。また、
図2に示す手ぶれ補正ユニット23は、撮像素子に入射する被写体光を補正するための装置で、像ぶれによって映像信号にノイズが生じることを抑制するように当該撮像素子をその像面と平行な方向(
図1のXY方向)に駆動するぶれ補正駆動を行う駆動装置である。このような構成において、手ぶれ補正ユニット23の正面は、
図1のZ方向の正側を向く面のことであるとする。また、
図2のようにして手ぶれ補正ユニット23が配置されたときに左右方向となる方向が
図1のX方向であり、上下方向となる方向が
図1のY方向である。
【0021】
図2に示す手ぶれ補正ユニット23は、概略的には、固定部102と、可動部104と、ヨーク106とを有している。固定部102は、撮像装置1の本体20に固定されている。そして、側面図に示すように、ヨーク106は、固定部102との間に所定の間隙を有するように固定部102に固定される。そして、可動部104は、固定部102とヨーク106との間に配置され、付勢ばね108によって固定部102の方向に付勢された状態で固定部102に取り付けられている。また、可動部104の裏面には、3個のボール122が配置されている。この3個のボール122によって可動部104は、固定部102の表面上を滑らかに移動できるように構成されている。
【0022】
図3は、固定部102の構成を示す図である。
図3の左側は固定部102の正面図を示しており、右側は固定部102の側面図を示している。
図3に示すように、固定部102には、3つの駆動用の磁石110a、110b、110cと、3つの位置検出用の磁石112と、3つの検出コイル114a、114b、114cとが配置されている。
また、
図2の中央部に点線で示したコイルに対応する位置には、3つの位置検出用の磁石112(112a、112b、112c)が配置されている。
【0023】
駆動用の磁石110aは、固定部102の正面の左上隅に配置されている。この駆動用の磁石110aは、第1の磁石と第2の磁石とを有する。第1の磁石は、Y方向が長手方向となるように、かつ、可動部104の側にN極が向くように配置された磁石である。第2の磁石は、Y方向が長手方向となるように、かつ、可動部104の側にS極が向くように配置された磁石である。
【0024】
駆動用の磁石110bは、固定部102の正面の左下隅に配置されている。この駆動用の磁石110bは、第1の磁石と第2の磁石とを有する。第1の磁石は、Y方向が長手方向となるように、かつ、可動部104の側にN極が向くように配置された磁石である。第2の磁石は、Y方向が長手方向となるように、かつ、可動部104の側にS極が向くように配置された磁石である。
【0025】
駆動用の磁石110cは、固定部102の正面の中央下隅に配置されている。この駆動用の磁石110cは、第1の磁石と第2の磁石とを有する。第1の磁石は、X方向が長手方向となるように、かつ、可動部104の側にN極が向くように配置された磁石である。第2の磁石は、X方向が長手方向となるように、かつ、可動部104の側にS極が向くように配置された磁石である。
【0026】
ここで、駆動用の磁石110aと駆動用の磁石110bは、
図3で示す「X方向」に駆動するための磁石であり、駆動用の磁石110cは
図3で示す「Y方向」に駆動するための磁石である。
【0027】
上述した3つの位置検出用の磁石112(112a、112b、112c)は、
図3に示したように固定部102の正面中央部に配置されている。これらの3つの位置検出用の磁石112は、可動部104に配置される駆動コイルからの磁束の影響を受けない程度に駆動コイルから離れて固定部102に配置されることが望ましい。また、位置検出用の磁石112aは駆動用の磁石110aと磁極の向きが対応し、位置検出用の磁石112bは駆動用の磁石110bと磁極の向きが対応し、位置検出用の磁石112cは駆動用の磁石110cと磁極の向きが対応している。
【0028】
検出コイル114aは、
図3で示す固定部102の裏面に設けられた穴102aに配置されていて、駆動用の磁石110aを挟んで後述する駆動コイルと対向する位置に配置されている。そして、検出コイル114aの重心と駆動用の磁石110aの重心と一致する位置に配置されている。同様に、検出コイル114bは、その重心が駆動用の磁石110bの重心と一致する固定部102の裏面位置に配置されている。また、検出コイル114cも同様に、その重心が駆動用の磁石110cの重心と一致する固定部102の裏面位置に配置されている。
なお、重心が一致することが望ましいが必ずしも一致する必要はない。誤差の範囲内でずれていても構わない。
【0029】
図4は、可動部104の構成を示す図である。
図4の左側は可動部104の正面図を示しており、右側は可動部104の側面図を示している。
図4に示すように、可動部104には、撮像素子116と、3つの駆動コイル118a、118b、118cと、3つの検出部であるホール素子120とが配置されている。
【0030】
撮像素子116は、可動部104の中央部に設けられた開口に搭載されている。撮像素子116は、被写体を撮像して被写体に係る画像信号を生成する。また、撮像素子116は、画像信号をデジタル信号に変換して出力する。
【0031】
駆動コイル118aは、固定部102に配置された駆動用の磁石110aと対応するように、可動部104の正面の左上隅に配置されている。ここで、可動部104が固定部102に対して相対移動してないときには、駆動用の磁石110aは駆動コイル118aと検出コイル114aとの間に位置する。また、可動部104が固定部102に対して相対移動してないときには、駆動コイル118aと検出コイル114aとの互いの重心は一致している。すなわち、初期状態では、駆動用の磁石110aは、駆動コイル118aと検出コイル114aとの間に挟まれた状態になる。
【0032】
駆動コイル118bは、固定部102に配置された駆動用の磁石110bと対応するように、可動部104の正面の左下隅に配置されている。ここで、可動部104が固定部102に対して相対移動してないときには、駆動用の磁石110bは駆動コイル118bと検出コイル114bとの間に位置する。また、可動部104が固定部102に対して相対移動してないときには、駆動コイル118bと検出コイル114bとの互いの重心は一致している。すなわち、初期状態では、駆動用の磁石110bは、駆動コイル118bと検出コイル114bとの間に挟まれた状態になる。
【0033】
駆動コイル118cは、固定部102に配置された駆動用の磁石110cと対応するように、可動部104の正面の中央下隅に配置されている。ここで、可動部104が固定部102に対して相対移動してないときには、駆動用の磁石110cは駆動コイル118cと検出コイル114cとの間に位置する。また、可動部104が固定部102に対して相対移動してないときには、駆動コイル118cと検出コイル114cとの互いの重心は一致している。すなわち、初期状態では、駆動用の磁石110cは、駆動コイル118cと検出コイル114cとの間に挟まれた状態になる。
【0034】
3つのホール素子120は、それぞれ、位置検出用の磁石112と対応する位置に配置されている。ホール素子は、対応する位置検出用の磁石112からの磁束に応じた検出信号を固定部102に対する可動部104の位置を示す信号として出力する。
【0035】
図5は、ヨーク106の構成を示す図である。
図5の左側はヨーク106の正面図を示しており、右側はヨーク106の側面図を示している。
図5に示すように、ヨーク106は、
図3に記載された固定部102の駆動用の磁石110a、磁石110b、磁石110cと対向するような略L字状をしている。ヨーク106は、鉄等の強磁性材料によって構成されており、磁石110a、磁石110b、磁石110cとの間で磁気回路を形成することによって、駆動コイル118a、駆動コイル118b、駆動コイル118cの受ける磁束を増加させる機能を有する。
【0036】
図6は、ボイスコイルモータ(VCM)の原理的な構成を示す図である。
図6は、駆動用の磁石110a及び駆動コイル118aで構成されるVCMを示している。ここで、駆動用の磁石110b及び駆動コイル118bで構成されるVCM並びに駆動用の磁石110c及び駆動コイル118cで構成されるVCMも磁石の磁極の配置の仕方が異なるだけで基本的な構成は駆動用の磁石110a及び駆動コイル118aで構成されるVCMと同一である。このため、
図6では、駆動用の磁石110a、110b、110cを総称して駆動用の磁石110と、駆動コイル118a、118b、118cを駆動コイル118として示している。また、
図6は、電源投入直後等の、駆動が開始されていない初期状態であるVCMにおける駆動用の磁石110、駆動コイル118の配置を示している。
【0037】
初期状態では、
図6に示すように、駆動コイル118を構成する巻き線の中心部が、駆動用の磁石110の第1の磁石1101と第2の磁石1102の境界線上であって当該境界線を二等分する中心位置に配置される。
【0038】
図6の構成において、駆動用の磁石110からの磁束を受けている駆動コイル118が通電されると、駆動コイル118に流れる電流の量と向きに応じた磁束と駆動力が発生する。この駆動コイル118に発生した駆動力に基づいて駆動コイル118は移動する。
【0039】
図6では示していないが、駆動コイル118が移動すると、位置検出用の磁石112とホール素子120の位置関係が変化する。したがって、ホール素子120が受ける磁束の量も変化し、ホール素子120が出力する検出信号の量も変化する。ホール素子120が出力する検出信号により、位置検出用の磁石112とホール素子120の相対位置を検出することができる。
【0040】
以上の動作が、駆動用の磁石110a及び駆動コイル118aで構成されるVCM、駆動用の磁石110b及び駆動コイル118bで構成されるVCM並びに駆動用の磁石110c及び駆動コイル118cで構成されるVCMについても同様にして行われる。このとき、駆動コイル118a、118b、118cに付与する駆動電流の量を適切に設定することにより、可動部104は、固定部102に対して相対移動又は回転する。また、ホール素子120が出力する検出信号から、固定部102に対する可動部104の相対位置が検出される。
【0041】
図23は、従来の撮像装置1における手ぶれ補正ユニット23の位置制御系の構成を示すブロック図である。
図23に示すように、撮像装置1は、コントローラ202と、モータドライバ204と、モータ(VCM)206と、位置検出用の磁石208と、ホール素子212と、アナログ増幅アンプ214と、ローパスフィルタ(LPF)216と、ADコンバータ218と、位置補正ブロック222と、減算部224とを有している。これらのうちの一部はソフトウェアで構成されていてもよい。また、
図23の構成はVCMの数だけ設けられているものであるが、
図23では1つのVCMに対応する構成のみ示している。また、
図23おいては、手ぶれ補正ユニット23に設けられているVCM(駆動コイルと駆動用の磁石とによって構成されている)のうちの1つがモータ206として、位置検出用の磁石112の1つが磁石208として、また、ホール素子120の1つがホール素子212として示されている。
【0042】
コントローラ202は、例えばPID制御によって可動部104の位置のフィードバック制御を行う駆動制御部である。具体的には、コントローラ202は、IIRフィルタを含み、減算部224から入力された偏差信号に対してフィルタ処理を施してモータ206を駆動するための駆動電流の値を示す信号を生成し、生成した駆動電流の値をモータドライバ204に出力する。
【0043】
モータドライバ204は、コントローラ202から入力された駆動電流の値に応じた駆動信号をモータ206(実際には駆動コイル118)に付与することによって可動部104を変位させる。
【0044】
アナログ増幅アンプ214は、ホール素子212からの検出信号を取り込み、取り込んだ検出信号をADコンバータ218におけるAD変換レンジに収めるようにアナログ増幅する。
【0045】
LPF216は、アナログ増幅アンプ214から出力される検出信号をAD変換する際の折り返し歪みを抑制するために検出信号の高周波成分を除去するためのLPF処理を行う。
【0046】
ADコンバータ218は、LPF216から出力される検出信号をデジタル信号に変換する。
【0047】
位置補正ブロック222は、ADコンバータ218から入力されたAD値に基づいて、可動部104を正しい位置に制御することができるようにデジタル的に補正を行うための現在位置信号を生成する。そして、位置補正ブロック222は、生成した現在位置信号を減算部224に出力する。また、ホール素子212等は温度特性を持っており、同じ可動部104の位置に対して異なる検出信号を出力し得る。位置補正ブロック222は、図示しない温度センサを用いてこのような温度特性等に起因する誤差の補正も行ってもよい。
なお、本実施形態では、位置補正ブロック222はソフトウェア処理をおこなっているが、一部又は全てをアナログ的な回路で構成しても良い。
【0048】
減算部224は、例えば制御回路26から入力された可動部104の駆動目標位置を示す駆動目標位置信号と位置補正ブロック222で生成された現在位置信号との偏差信号をコントローラ202に出力する。この偏差信号に基づいてコントローラ202による駆動電流の算出が行われる。これにより、可動部104の位置は駆動目標位置に近づいていく。
【0049】
ここで、固定部102と可動部104との光軸方向の距離であるギャップは種々の要因でずれ得る。例えば
図7に示すように、固定部102と可動部104とのギャップにずれが生じると、駆動コイル118が駆動用の磁石110から受ける磁束の量が変化する。例えば、駆動コイル118と駆動用の磁石110との距離が長くなると、駆動コイル118が駆動用の磁石110から受ける磁束の量が減少する。この磁束の減少により、VCMとしての駆動力は低下する。
【0050】
ここで、ギャップの考え方について説明する。
図8Aは、ギャップについて示した図である。固定部102と可動部104とは一定のギャップを有するようにボール122を介して配置され、固定部102に取り付けられた付勢ばね108によって可動部104を固定部102の方向に付勢されている。即ち、ギャップは、基本的には付勢ばね108の付勢力によってボール122が常に固定部102と可動部104に接触するように構成される。しかしながら、厳密に固定部102に対して可動部104を平行に取り付けることは困難であり、例えば固定部102と可動部104との製造時において、
図8Bに示す可動部104とボール122が接触する面と固定部102とボール122が接触する面との間に傾きが生じてしまうことが多い。この傾きにより、固定部102と可動部104との位置により、ギャップの量が異なることになる。固定部102と可動部104とのギャップの量の異なりにより、駆動コイル118が駆動用の磁石110から受ける磁束の量が変化する。この磁束の変化は、駆動力の低下として現れることになる。
【0051】
図9は、単位電流当たりの駆動性能(可動部104の変位)のギャップ依存性を示す図である。ここで、
図9の横軸は、駆動用の磁石110と駆動コイル118とのギャップの量を示している。
図9の縦軸は、単位電流当たりの駆動性能を示している。
図9に示すように、駆動用の磁石110と駆動コイル118とのギャップの量が大きくなるほどに、駆動性能は低下する。
【0052】
図10は、モータ(VCM)206の駆動特性(伝達特性)を示す図である。ここで、
図10において、横軸は駆動コイル118に流す電流の周波数であり、縦軸は単位電流当たりの可動部104の変位である。
図10に示す特性は、式(1)で示す伝達関数で示される特性である。ここで、式(1)のX(s)/I(s)は単位電流当たりの変位(1次元)を示し、sはラプラス変換子を示し、ζは減衰係数を示し、ω
nは周波数を示している。なお、実際の可動部104の変位は、駆動電流の振幅にも依存する。すなわち、実際の可動部104の変位は、単位電流当たりの変位と駆動電流の振幅の積になる。
【数1】
【0053】
ここで、VCMにおける周波数帯と駆動特性との関係を説明する。
一般的に、VCMは、(1)低周波数帯、(2)中周波数帯、(3)高周波数帯のそれぞれで異なる駆動特性を有する。低周波数帯は単位電流当たりの可動部104の変位が大きい周波数帯であり、中周波数帯は単位電流当たりの可動部104の変位が中程度の周波数帯であり、低周波数帯は単位電流当たりの可動部104の変位が小さい周波数帯である。何れの場合であっても、ギャップの量が大きいほうが単位電流当たりの可動部104の変位は小さくなる。
【0054】
前述したように駆動性能の低下は、駆動用の磁石110と駆動コイル118とのギャップの量(距離)に応じて変化する。駆動用の磁石110と駆動コイル118とのギャップの量(距離)を検出するために、本実施形態では、
図11に示すように、初期状態では、駆動コイル118の重心と一致する位置に検出コイル114が配置される。検出コイル114は、駆動コイル118への駆動電流の付与によって駆動コイル118に発生した磁束に応じた信号を発生する。
【0055】
図12は、本実施形態における撮像装置1における手ぶれ補正ユニット23の位置制御系の構成を示すブロック図である。ここで、
図23と同様の構成については
図23と同様の参照符号を付すことで適宜に説明を省略する。また、
図12においては、3つの検出コイル114のうちの1つを検出コイル226として示している。
【0056】
本実施形態におけるモータドライバ204は、高周波重畳部204aを有している。高周波重畳部204aは、例えば高周波発振器を含み、コントローラ202からの駆動信号に応じた駆動電流に対して高周波駆動電流(高周波駆動信号)を重畳した駆動信号をモータ206に付与する。高周波駆動電流は、検出コイル226による駆動用の磁石110と駆動コイル118とのギャップ測定のための電流である。
【0057】
図13は、可動部104における、周波数の大きさと単位電流当たりの変位を示したグラフである。
図13に示すように、VCMは、(1)低周波数帯、(2)中周波数帯、(3)高周波数帯のそれぞれで異なる駆動特性を有する。低周波数帯は単位電流当たりの可動部104の変位が大きい周波数帯であり、中周波数帯は単位電流当たりの可動部104の変位が中程度の周波数帯であり、低周波数帯は単位電流当たりの可動部104の変位が小さい周波数帯である。モータ206はモータドライバ204からの駆動信号に基づいて駆動される。したがって、コントローラ202から指示された駆動電流値に応じた駆動信号にさらに別の駆動信号が重畳されていると、この別の駆動信号も可動部104の変位に影響を与え得る。ここで、
図13に示すように、(3)の高周波帯の周波数の信号をモータ206に付与しても可動部104は殆ど変位しない。すなわち、コントローラ202から指示された駆動電流値に応じた駆動信号にさらに別の駆動信号として重畳するのは、(3)の高周波帯の周波数とするのが望ましいことがわかる。
【0058】
図14Aは、(1)低周波数帯の駆動電流、(2)中周波数帯の駆動電流、(3)高周波数帯の駆動電流の時間経過との関係をそれぞれ示した図である。ここで、本実施形態では、(1)低周波数帯の駆動電流とは数十Hzまでを想定し、2)中周波数帯の駆動電流とは1kHzまでを想定し、3)高周波数帯の駆動電流とは1kHzより大きい値でかつ可動部104の変位が画素ピッチ未満となる場合、すなわち、可動部104の変位が殆どない場合を想定している。勿論、低、中、高周波数帯とは相対的な値であるので、上記の数値に限定されるものではない。なお、
図14Aでは、それぞれの駆動電流の振幅は揃えられている。
また、
図14Bは、
図14Aで示した上記低、中、高周波数帯の各周波数帯での駆動電流をモータ206(駆動コイル118)に付与したときの可動部104の変位を示した図である。
【0059】
図13で示したように上記低周波数帯では単位電流当たりの変位が大きいので、
図14Aで示す低周波数帯の駆動電流がモータ206に付与されたときに
図14Bに示すように大きな変位が生じる。同様に、
図13で示したように上記中周波数帯では単位電流当たりの変位が中程度であるので、
図14Aで示す中周波数帯の駆動電流がモータ206に付与されたときに
図14Bに示すような中程度の変位が生じる。一方、
図13で示した上記高周波数帯の駆動電流に対しては、モータ206は追従できなくなる。このため、高周波数帯については駆動電流の振幅を大きくしたとしても、
図14Bに示すように殆ど変位は生じない。このため、高周波数帯の周波数を有する駆動電流は本来の駆動電流に重畳されたとしても可動部104の変位には殆ど影響しない。
以上、説明したように、本実施形態における「高周波」は、可動部104の変位が撮像素子116を介して生成される画像に影響を与えない程度の変位となる周波数であることが望ましい。具体的には、本実施形態における「高周波」は、可動部104の変位が撮像素子116の1画素以内の変位となる周波数であることが望ましい。
【0060】
ここで、
図12の説明に戻る。本実施形態においては、モータドライバ204は、高周波駆動電流が重畳された駆動電流をモータ206に付与する。駆動コイル118からの磁束を受けることにより、検出コイル226は、駆動コイル118からの磁束に応じた信号を出力する。
【0061】
検出コイル226から出力された信号は、高周波検知部228に入力される。
図15は、高周波検知部228の一例の構成を示している。
図15に示すように、高周波検知部228は、バンドパスフィルタ(BPF)228aと、ADコンバータ228bとを有している。BPF228aは、
図16に示すような高周波駆動電流の周波数の信号を通過させるように周波数特性が設定されたフィルタである。すなわち、BPF228aは、検出コイル226の出力から、低周波又は低周波と中周波とのミックス波に、重畳した高周波駆動電流の周波数に対応した所定の高周波信号を取得する。ADコンバータ228bは、BPF228aから出力される高周波信号をデジタル信号に変換する。そして、ADコンバータ228bは、高周波信号のAD値をコントローラ202に戻す。
【0062】
図17は、BPF228aの出力を示す図である。BPF228aを通過する高周波信号は、可動部104の変位に伴う磁束変化には依存せず、可動部104の変位が画素ピッチ未満となる高周波駆動電流を重畳して駆動コイル118に通電し、その際に駆動コイル118において発生した磁束に依存する。ここで、前述したように、駆動コイル118が駆動用の磁石110から受ける磁束は、駆動コイル118と駆動用の磁石110とのギャップが大きくなるほど減少する。駆動コイル118からの磁束が減少することにより、検出コイル226の出力する信号の振幅は減少する。したがって、BPF228aの出力する高周波信号の振幅は、
図17に示すように、駆動コイル118と駆動用の磁石110とのギャップが大きいときには小さくなり、駆動コイル118と駆動用の磁石110とのギャップが小さいときには大きくなる。
【0063】
図18は、検出コイル226の出力の高周波信号成分(BPF228aの出力)の駆動コイル118と駆動用の磁石110とのギャップ依存性を示す図である。
図17でも説明したように、検出コイル226の出力の高周波信号成分(BPF228aの出力)の振幅は、ギャップが大きくなるほどに小さくなる。すなわち、検出コイル226の出力を、検出コイル226と駆動コイル118との距離相当値と考えることができる。また、検出コイル226と駆動用の磁石110とはともに固定部102に配置されていてその相対位置は変化しない。したがって、検出コイル226の出力は、駆動用の磁石110と駆動コイル118との距離相当値とも考えることができる。したがって、検出コイル226の出力から駆動用の磁石110と駆動コイル118とのギャップを推定し、推定したギャップに応じてコントローラ202において駆動力の補正を行うことにより、仮に駆動コイル118が駆動用の磁石110とのギャップのずれが生じたとしてもモータ206の駆動性能が低下しないように駆動信号を補正することができる。
【0064】
以上説明した以外の
図12の構成は、
図23と同様である。したがって、説明を省略する。
【0065】
以下、本実施形態における駆動コイルと駆動用の磁石との距離の算出手法について説明する。
図19は、駆動コイルと駆動用の磁石との算出処理を示すフローチャートである。ここで、
図19の処理は、高周波駆動電流の周波数の2倍以上の周波数で行われる。これは、検出信号の高周波成分をADコンバータ228bにおいて正しくAD変換するためには、ADコンバータ228bのサンプリング周波数を高周波駆動電流の周波数の2倍以上にする必要があるためである。
【0066】
ステップS1において、高周波検知部228は、検出コイル226から出力された信号の高周波成分を検知する。すなわち、高周波検知部228は、BPF228aにより入力された信号における高周波駆動電流の周波数に対応した高周波成分を取得し、取得した高周波成分をADコンバータ228bにおいてデジタル信号に変換してコントローラ202に出力する。
【0067】
ステップS2において、コントローラ202は、1周期分の高周波成分の取得が完了したか否かを判定する。ステップS2において、1周期分の高周波成分の取得が完了していないと判定されたときには、処理は終了する。ステップS2において、1周期分の高周波成分の取得が完了したと判定されたときには、処理はステップS3に移行する。
【0068】
ステップS3において、コントローラ202は、駆動コイル118と駆動用の磁石110の距離を算出する。その後、処理は終了する。前述したように高周波検知部228から出力される高周波信号の振幅は、駆動コイル118と検出コイル226の距離、すなわち検出コイル226と駆動用の磁石110とは固定部102に配置されているので、相対的に、駆動コイル118と駆動用の磁石110との距離に応じて変動する。したがって、
図18で示した駆動コイル118と駆動用の磁石110とのギャップと高周波信号の振幅との関係をシミュレーション等で求め、この関係をコントローラ202に記憶させておくことにより、高周波検知部228から出力される高周波信号の振幅から駆動コイル118と駆動用の磁石110との距離が算出される。
【0069】
以下、
図12で示した位置制御系の動作を説明する。
図20は、
図12で示した位置制御系におけるフィードバック制御について示したフローチャートである。
図20の処理中に
図19で示した距離の算出処理が行われる。ただし、
図20の処理は、
図19の処理のように高速で行われる必要はない。
図19の処理は、例えばモータ206の駆動に用いられる周波数で行われてよい。
【0070】
ステップS11において、減算部224は、目標位置信号を取得する。目標位置信号は、例えば制御回路26から減算部224に対して入力されるものである。例えば、目標位置信号は、手振れ量に応じて設定される。
【0071】
ステップS12において、減算部224は、現在位置信号を取得する。このために、現在位置算出処理が行われる。現在位置算出処理では、ホール素子212から出力された検出信号は、アナログ増幅アンプ214で増幅され、LPF216に入力される。LPF216におけるLPF処理の後、検出信号はADコンバータ218においてデジタル信号に変換される。このLPF処理後のAD値が位置補正ブロック222に入力される。位置補正ブロック222においては、補正AD値に対する温度特性等に起因する誤差が補正されて現在位置が生成される。位置補正ブロック222において生成された現在位置信号は減算部224において取得される。ここで、検出信号は、高周波駆動信号の影響を受けている。この検出信号における高周波駆動信号の成分は、LPF216を通過するときに除去される。
【0072】
ステップS13において、減算部224は、目標位置と現在位置との偏差を算出する。減算部224で算出される偏差信号は、コントローラ202に入力される。
【0073】
ステップS14において、コントローラ202は、偏差信号と高周波検知部228から出力されるBPF処理がされた後の高周波信号の振幅のAD値とから、モータ206を駆動するためにモータドライバ204に入力する駆動電流の値を示す駆動信号を生成する。ステップS14の処理については後で説明する。
【0074】
ステップS15において、コントローラ202は、モータドライバ204に対して駆動信号を入力する。これにより、モータドライバ204の駆動電流量が設定され、この駆動電流量に従ってモータ206(実際には駆動コイル118)は駆動される。
図20で示したフィードバック制御が繰り返し行われることにより、可動部104の位置は目標位置に到達する。
【0075】
次に、ステップS14のモータドライバ204の駆動電流の値の算出処理を説明する。了する。
図21は、モータドライバ204の駆動電流の値の算出処理について示すフローチャートである。
【0076】
ステップS21において、コントローラ202は、偏差信号に対してフィルタ処理を施すことによって駆動電流の値を示す駆動信号を生成する。
【0077】
ステップS22において、コントローラ202は、駆動信号を補正する。その後、処理は終了する。
【0078】
次に、
図22のフローチャートを用いて、ステップS22の駆動信号の補正処理について詳細に説明する。
【0079】
ステップS31において、コントローラ202は、駆動コイル118と駆動用の磁石との距離の値を取得する。ステップS31においては、
図19の処理の結果として逐次に算出される距離の値のうちで最新のものが取得される。
【0080】
ステップS32において、コントローラ202は、駆動コイル118と駆動用の磁石との距離の値が所定範囲内か否かを判定される。ステップS32において、距離の値が所定範囲内でないと判定されたときには、処理はステップS33に移行する。ステップS32において、距離の値が所定範囲内であると判定されたときには、処理はステップS34に移行する。
【0081】
固定部102と可動部104とのギャップのずれはある程度の範囲内で生じると考えられる。したがって、取得された距離の値が大きすぎるとき又は小さすぎるときには、例えばモータ206自体の故障等が生じていると考えられる。このような場合には、処理はステップS33に移行し、コントローラ202は、例えばモニタ24を用いてエラー通知を行う。エラー通知の後、処理はステップS34に移行する。ここで、エラー通知は、例えば手振れ補正を行うことができない旨又は駆動電流の補正を行うことができない旨を通知するメッセージを含む。また、ステップS33において、フィードバック制御自体を停止させるようにしてもよい。この場合もエラー通知は行われることが望ましい。
【0082】
ステップS34において、コントローラ202は、駆動信号を補正するための補正ゲインを算出する。補正ゲインは、例えば
図9で示した駆動コイル118と駆動用の磁石110とのギャップと単位電流当たりの駆動性能との関係から算出される。例えば、
図9の関係を示す関数の逆関数が補正ゲインであると考えることができる。
【0083】
ステップS35において、コントローラ202は、フィルタ処理によって算出した駆動信号に補正ゲインを乗じることによって駆動信号を補正する。その後、処理は終了する。
【0084】
以上説明したように本実施形態によれば、検出コイル226によって駆動コイル118と駆動用の磁石110との距離を測定することにより、駆動コイル118と駆動用の磁石110との間に生じたギャップのずれによる、モータ206の駆動性能の劣化を補正することができる。
【0085】
ここで、高周波駆動電流の周波数は、可動部104の移動量が撮像素子116の1画素以内となる周波数であるとしている。これにより、駆動電流に高周波駆動電流を重畳することによる画質への影響を無くすことができる。
【0086】
以上実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能なことは勿論である。例えば、前述した手ぶれ補正ユニット23の構成は一例であって適宜変更され得る。例えば、VCMの構成が異なっていてもよい。例えば、前述の例では、固定部に駆動用の磁石が設けられ、可動部に駆動コイルが設けられている。これに対して、可動部に駆動用の磁石が設けられ、固定部に駆動コイルが設けられてもよい。この場合、検出コイルは可動部に設けられる。また、手ぶれ補正ユニット23は、撮像素子116ではなく、光学系11を移動させるように構成されていてもよい。さらに、手ぶれ補正ユニット23は、手ぶれ補正処理以外に用いられてもよい。例えば、手ぶれ補正ユニット23は、超解像処理に用いられてもよい。
【0087】
さらに、前述の各動作フローチャートの説明において、便宜上「まず」、「次に」等を用いて動作を説明しているが、この順で動作を実施することが必須であることを意味するものではない。
【0088】
また、前述した実施形態による各処理は、コンピュータとしてのCPU等に実行させることができるプログラムとして記憶させておくこともできる。この他、メモリカード、磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等の外部記憶装置の記憶媒体に格納して配布することができる。そして、CPU等は、この外部記憶装置の記憶媒体に記憶されたプログラムを読み込み、この読み込んだプログラムによって動作が制御されることにより、上述した処理を実行することができる。
【0089】
さらに、前記した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件の適当な組合せにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、上述したような課題を解決でき、上述したような効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成も発明として抽出され得る。