特許第6755809号(P6755809)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6755809
(24)【登録日】2020年8月28日
(45)【発行日】2020年9月16日
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 13/317 20180101AFI20200907BHJP
   H04N 13/305 20180101ALI20200907BHJP
   H04N 13/31 20180101ALI20200907BHJP
   G02B 30/20 20200101ALI20200907BHJP
   G02B 30/27 20200101ALI20200907BHJP
   G02B 30/30 20200101ALI20200907BHJP
   G09G 5/36 20060101ALI20200907BHJP
   G09G 5/00 20060101ALI20200907BHJP
   H04N 13/346 20180101ALI20200907BHJP
   H04N 13/324 20180101ALI20200907BHJP
【FI】
   H04N13/317
   H04N13/305
   H04N13/31
   G02B30/20
   G02B30/27
   G02B30/30
   G09G5/36 510V
   G09G5/00 550R
   H04N13/346
   H04N13/324
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-9471(P2017-9471)
(22)【出願日】2017年1月23日
(65)【公開番号】特開2018-121114(P2018-121114A)
(43)【公開日】2018年8月2日
【審査請求日】2019年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨沢 一成
(72)【発明者】
【氏名】黒木 義彦
【審査官】 鈴木 隆夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−146046(JP,A)
【文献】 特開2003−215552(JP,A)
【文献】 特開2004−349736(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/120880(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 13/00−13/398
G02B 30/20
G02B 30/27
G02B 30/30
G09G 5/00
G09G 5/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
右眼用画像と左眼用画像を表示する表示部を具備し、
前記表示部の解像度は1インチ当たりP画素以上であり、
前記表示部で表示される前記右眼用画像と前記左眼用画像の画素ずれは、0.021×P画素以下であり、1画素以上であり、
前記表示部の解像度は300ppi以上である表示装置。
【請求項2】
前記画素ずれが0.021×P画素以下であり、1画素以上である前記右眼用画像と前記左眼用画像とを記憶するメモリと、
前記メモリから読み出した前記右眼用画像と前記左眼用画像を前記表示部で表示させる制御部とをさらに具備する請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記右眼用画像が観察者の右眼に入射し、前記左眼用画像が観察者の左眼に入射するように、前記表示部から発せられた光の伝播を制御する光学素子をさらに具備する請求項1又は請求項2記載の表示装置。
【請求項4】
前記光学素子は、レンチュキラーレンズまたはパララックスバリアまたはプリズムを具備する請求項3記載の表示装置。
【請求項5】
前記表示部の画素は、色の異なる複数のサブ画素を具備し、
前記複数のサブ画素の各々に設けられ、前記右眼用画像が観察者の右眼に入射し、前記左眼用画像が観察者の左眼に入射するように、前記複数のサブ画素の各々から発せられた光の向きを制御するプリズムをさらに具備し、
前記プリズムの形状は、前記複数のサブ画素毎に異なる請求項1又は請求項2記載の表示装置。
【請求項6】
前記プリズムは光の波長に応じて屈折率が異なる材料から形成され、
前記プリズムの形状は、前記複数のサブ画素から発せられた光に対する屈折率に応じている請求項5記載の表示装置。
【請求項7】
前記表示部の画素は、赤、緑、青の3サブ画素を具備し、
1水平ライン内の隣接する2画素は、赤、緑、青、青、緑、赤の順に配列される6サブ画素からなる請求項1乃至請求項6のいずれか一項記載の表示装置。
【請求項8】
第1水平ライン内の隣接する2画素は、赤、緑、青、青、緑、赤の順に配列される6サブ画素からなり、
前記第1水平ラインに隣接する第2水平ライン内の隣接する2画素は、赤、赤、緑、青、青、緑の順に配列される6サブ画素からなる請求項7記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は3次元画像を表示する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の3次元表示装置では、左眼用画像と右眼用画像が観察者の左右の眼に入射することにより、観察者に3次元画像を認識させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2014-515569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の3次元表示装置では、左眼用画像と右眼用画像が左右の眼にそれぞれ入射するためには、観察者が所定位置に居る必要がある。観察者が所定位置以外に居る場合、右眼用画像の少なくとも一部が左眼に、左眼用画像の少なくとも一部が右眼に入射するので、観察者からは観察する画質が低下することがある。
【0005】
本発明の目的は観察者が所定位置以外に居る場合においても高品位な画像を表示する表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、表示装置は、 右眼用画像と左眼用画像を表示する表示部を具備する。表示部の解像度は1インチ当たりP画素以上である。表示部で表示される右眼用画像と左眼用画像の画素ずれは0.021×P画素以下であり、1画素以上である。表示部の解像度は300ppi以上である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、パララックスバリア方式の3次元表示の一例を示す。
図2図2は、レンチキュラーレンズ方式の3次元表示の一例を示す。
図3図3は、画素密度と実物感の関係の一例を示すグラフである。
図4図4は、右眼用画像と左眼用画像の画素ずれを説明する。
図5図5は、実施形態の表示装置に使われるプリズム型フィルタの一例を示す。
図6図6は、図5のプリズム型フィルタを備える表示パネルの各ラインへ画像信号を供給する態様の例を説明する。
図7図7は、実施形態の表示装置に使われるプリズム型フィルタの他の例を示す。
図8図8は、図6のプリズム型フィルタの設計の一例を説明する。
図9図9は、図6のプリズム型フィルタの設計の一例を説明する。
図10図10は、実施形態の表示装置に使われるプリズム型フィルタのさらに他の例を示す。
図11図11は、実施形態の表示装置のサブ画素配列の一例とプリズム型フィルタの一例を示す。
図12図12は、実施形態の表示装置の基本的な構成を示すブロック図である。
図13図13は、実施形態の表示装置の具体的な構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。以下の説明では、表示装置の例として液晶表示装置を説明するが、実施形態は液晶表示装置に限定されるものではなく、有機EL表示装置、電界放出表示装置(FED)等、その他の表示装置であってもよい。また、実施形態に係る表示装置は、特定の製品の表示装置に限らず、種々の製品に応用することができる。応用例は無限にあるが、いくつかの応用例を説明する。
【0009】
応用例の一つは、自動車用の表示装置である。自動車は、運転席前方のダッシュボードに取り付けられたインストルメントパネルや、通常は運転席と助手席の中間の前方に設けられるカーナビゲーション用の表示パネルを含み、実施形態の表示装置はこれらのパネルに応用可能である。インストルメントパネルは、スピードメーター、タコメーター、ウォーニングランプ等のメーター類やアラーム(運転アシスト、自動運転の場合等)を表示する。さらに、インストルメントパネルは、画面の空いている部分を使って簡易的なカーナビゲーション画像(例えば、右折あるいは左折する曲がり角のみのナビゲーション等)を表示することもできる。さらに、カーナビゲーション用の表示パネルは、後方確認モニタとしても使用可能である。これらの表示部に3次元画像を表示すると、メーター類、アラームやナビゲーション画面の視認性が向上し、安全運転につながることが期待される。運転者のみならず、助手席の搭乗者も3次元画像を認識すると、運転者の見落とし等を補うことができる。なお、自動車に限らず、オートバイ、電車、飛行機、船舶等の移動体全般のインストルメントパネル等に応用可能である。
【0010】
他の応用例は、医療用の表示装置である。内視鏡診断や開腹手術の際、体内あるいは患部を撮影し、撮影画像を複数の医師が見ながら、診断、手術を行っている。このような画像が3次元画像であると、微細な患部の前後関係が明確になり、内視鏡の操作や手術の効率が向上することが期待される。
【0011】
さらなる応用例は、ゲーム機等のアミューズメント用の表示装置等がある。
【0012】
[3次元画像]
実施形態の表示装置の具体例を説明する前に、3次元画像について説明する。3次元画像の表示方式として、パララックスバリア方式やレンチキュラー方式がある。いずれの方式でも、右眼からの視野の画像、すなわち右眼用画像及び左眼からの視野の画像、すなわち左眼用画像が撮影され、それらを交互あるいは同時に表示することにより、右眼用画像及び左眼用画像が右眼及び左眼にそれぞれ入射し、観察者に3次元画像を認識させるものである。
【0013】
パララックスバリア方式では、図1に示すように、パララックスバリア14が表示パネル12と観察者16の間で表示パネル12と平行に配置される。パララックスバリア14には、複数の細かいスリットが表示画面の縦方向に沿って設けられる。スリットは視差方向と交差する方向、好ましくは垂直方向である。観察者16はパララックスバリア14のスリットを介して表示パネル12の表示画像を観察する。3次元画像を表示するための右眼用画像及び左眼用画像はそれぞれ縦(垂直方向)に分割され、縦長の短冊状の右眼用画像I、左眼用画像Iが生成される。表示パネル12では、短冊状の右眼用画像、左眼用画像が交互に並べられてなる1枚の画像が表示される。スリットの周期は、観察者16から見て短冊状の画像I、Iの周期と同じであり、スリットの開口幅は、観察者16から見て短冊状の右眼用画像I、左眼用画像Iの幅と同じに見えるように設定されている。パララックスバリア14と表示パネル12との距離、パララックスバリア14と観察者16との距離は、表示パネル12で表示される右眼用画像Iのみが観察者16の右眼に入射し、左眼用画像Iのみが観察者16の左眼に入射するように設計されている。このため、観察者16が表示パネル12の正面で、表示パネル12から所定距離だけ離れた所定位置に居る場合は、図1(a)に示すように、右眼用画像Iと左眼用画像Iのみが観察者16の右眼と左眼にそれぞれ入射し、観察者16は、右眼の網膜に写った右眼用画像Iと、左眼の網膜に写った左眼用画像Iの違いである両眼網膜像差(disparity)を脳内で処理することにより、奥行きを認識し、3次元画像を認識することができる。両眼網膜像差は両眼視差と呼ばれることもある。なお、両眼視差は、対象と眼球位置で決まり視線方向によらないパララックス(parallax)を指す場合もあるが、本明細書では、両眼網膜像差を両眼視差と称する。
【0014】
観察者16の位置が所定位置からずれた、例えば図1(b)に示すように、図1(a)の位置から表示パネル12に平行で横方向にシフトした場合、右眼用画像Iの一部と左眼用画像Iの一部が観察者16の右眼に入射し、右眼用画像Iの残りの一部と左眼用画像Iの残りの一部が観察者16の左眼に入射する。このため、観察者16は、ぼやけている、あるいはぶれている2次元画像を認識するが、3次元画像を認識することができない。このように、右眼用画像Iの少なくとも一部が左眼に入射する、又は左眼用画像Iの少なくとも一部が右眼に入射することをクロストークと呼ぶ。このクロストークの割合が大きい程、3次元表示の表示品質が低下する。言い換えると、所定位置に居る観察者は3次元画像を認識できるが、同じ画面を見ている助手席の搭乗者、他の医師等は3次元画像を認識できず、ぼやけている、あるいはぶれている2次元画像しか認識できない。
【0015】
さらに、観察者16の位置がずれ、クロストークが増加すると、例えば図1(c)に示すように、図1(a)の状態とは反対に、右眼用画像Iのみが観察者16の左眼に入射し、左眼用画像Iのみが観察者16の右眼に入射する。この場合は、視線の異なる画像を左右の眼で観察するので、3次元的に見えるが、2つの物体の前後関係が逆になり、いわゆる逆視となる。なお、観察者の位置ずれは、表示パネル12に平行なシフトに限らず、表示パネル12に交差する方向の移動や斜め方向の移動も含む。
【0016】
レンチキュラー方式では、図2に示すように、パララックスバリアの代わりに、レンチキュラーレンズとよばれる縦方向に延びる半円筒型のレンズ18を横に並べたものが表示パネル12の表面に設置される。1つのレンチキュラーレンズ18は1対の短冊状の右眼用画像I、左眼用画像Iを表示する垂直方向の画素列(カラム)に対応して設けられる。レンチキュラーレンズ18の焦点位置は表示パネル12の画像表示面である。レンチキュラーレンズ18の光出射方向は、表示パネル12で表示される右眼用画像Iのみが観察者16の右眼に入射し、左眼用画像Iのみが観察者16の左眼に入射するように設計される。このため、観察者16が表示パネル12の正面で、表示パネル12から所定距離だけ離れた所定位置に居る場合は、図2(a)に示すように、右眼用画像Iと左眼用画像Iのみが観察者16の右眼と左眼にそれぞれ入射し、観察者16は、視野が異なる右眼用画像Iと左眼用画像Iとに基づいて3次元画像を認識することができる。
【0017】
観察者16の位置が所定位置からずれた、例えば図2(b)に示すように、図2(a)の位置から表示パネル12に平行で横方向にシフトした場合、右眼用画像Iの一部と左眼用画像Iの一部が観察者16の右眼に入射し、右眼用画像Iの残りの一部と左眼用画像Iの残りの一部が観察者16の左眼に入射する。このため、観察者16は、ぼやけている、あるいはぶれている2次元画像を認識するが、3次元画像を認識することができない。
【0018】
さらに、観察者16の位置がずれ、クロストークが増加した場合、例えば図2(c)に示すように、図2(a)の状態とは反対に、右眼用画像Iのみが観察者16の左眼に入射し、左眼用画像Iのみが観察者16の右眼に入射し、逆視となる。なお、観察者の位置すれは、表示パネル12に平行なシフトに限らず、表示パネル12に交差する方向の移動や斜め方向の移動も含む。
【0019】
[絵画的手掛り]
人間が画像の奥行きを認識でき、3次元画像を認識できる要因は、両眼視差だけではない。一般には、(1)両眼視差、(2)運動視差(遠くのものはゆっくり動き、近くのものは早く動くことを利用する)、(3)絵画的手掛り(陰影、遠近法、大きさの比、実物感等)が総合的に作用して3次元画像として認識することが知られている。そのため、運動視差または絵画的手掛りがあれば、両眼視差が僅かであっても、3次元画像を認識可能である。本実施形態は、両眼視差が僅かな右眼用画像と左眼用画像及び絵画的手掛りを用いて3次元画像認識を可能とするものである。
【0020】
図1(b)や図2(b)に示すように、観察者16が所定位置からずれた場合、観察者は、3次元画像ではなく、2枚の右眼用画像と左眼用画像を認識する。右眼用画像と左眼用画像の両眼視差が僅かであれば、観察者は、図1(b)や図2(b)の場合に比べて、ぼやけが目立たない2次元画像を認識する。また、絵画的手掛りがあれば、図1(c)や図2(c)に示すように、観察者16の位置が大きくずれて、右眼用画像Iのみが観察者16の左眼に入射し、左眼用画像Iのみが観察者16の右眼に入射しても、観察者は、前後関係を逆に認識(逆視)することなく、ぼやけていない、あるいはぶれていない2次元画像を観察者が認識することができる。また逆視は、両眼視差が少ないほど起こりにくくなる。
【0021】
絵画的手掛りの例を説明する。ここでは、一例として、実物感を説明する。実物感とは、視覚の心理物理的な効果の1つであり、実物を見ているような感じの度合いである。実物感は映像パラメータの1つである空間解像度(あるいは画素密度)に関係することが知られている。空間解像度が高くなると、実物と映像が区別できなくなる。空間解像度は、水平方向の視野角1度当たりに見ることができる白黒2画素を一組とした組の数であり、cycles per degree:cpdで定義される。視力1.0の人が画素構造を検知できる画素密度の上限は30cpd(視野1度当たり60画素)である。図3に示すように、26cpd,30cpd,40cpd,50cpd,80cpd,155cpdの6種類の画素密度の映像とその被写体(実物)の対を多数の評価者に提示し、どちらが本物に近く見えるかを多数の評価者に評価してもらった実験結果(平均値)が知られている。図3はNHK技研 R&D No.137/2013.1の図2である。
【0022】
この結果から、いずれの物体でも、画素密度が30cpd以上になると実物感が向上し、画素密度が60cpd以上になると実物感は略飽和することが分かる。このため、立体値を可能とする絵画的手掛りに相当する実物感を得るためには、表示装置の画素密度は60cpd以上とする必要があることが分かる。
【0023】
画素密度は観察者の特性であるので、これを表示装置の特性である解像度(pixels per inch:ppi)に変換する。車載用、医療用等の表示装置を考えると、表示画面までの視距離は約60cmである。60cmの視距離で60cpd以上の画素密度を達成するための表示装置の解像度(ppi)の下限は以下により求められる。
【0024】
60cmの視距離で60cpdに必要な1画素の幅は、観察者16を中心とする半径60cmの円周上での距離であり、三角関数を用いて以下のように求められる。
【0025】
1画素の幅=[tan(1/60cpd) x 60cm/ 2 ]cm
画素幅の逆数から1cm当たりの画素数が求められる。
【0026】
1cm当たりの画素数=1/[tan(1/60cpd) x 60cm / 2]
1inchは2.54cmなので、1インチ当たりの画素数(ppi)は次のように求められる。
【0027】
1cm当たりの画素数=1/[tan(1/60cpd) x 60cm / 2]x2.54≒291.0
このため、実施形態では、60cmの視距離で60cpd以上の画素密度を達成するために、表示装置の解像度は300ppi以上とする。なお、実物感が得られる解像度は、視距離によって変化する。観察者と表示装置が近く、視距離が小さい場合、実物感を得るために必要な解像度は大きくなり、反対に、観察者と表示装置が遠く、視距離が大きい場合、実物感を得るために必要な解像度は小さくなる。解像度はカラー画像の場合、例えば、赤(R)、緑(G)、青(B)のサブ画素それぞれの解像度ではなく、複数のサブ画素を含む画素の解像度である。
【0028】
[両眼視差]
次に、絵画的手掛り(実物感)とともに3次元画像認識の要因となる両眼視差を図4を参照して説明する。観察者が、両眼で1つの物体Aを注視している場合、物体Aの像は両眼の網膜の中心で作成される。この時、物体Aより遠方の物体B(あるいは、図示していないが、より近接した物体)の像は両眼の網膜上で異なる位置に作成される。この網膜上の位置の差(画像の画素ずれとも称する)が両眼視差であり、奥行きの手がかりとなる。
【0029】
前述したように300ppi以上の解像度になると実物感が向上するため、3次元画像として視認できる要素としての絵画的手がかりが向上する。このため、両眼視差δをより小さくしても、3次元画像として視認できることが実験してわかった。具体的には、60cmの視距離で300ppiとした場合、両眼視差δは4.3arc min以下でも観察者は3次元画像を認識可能である。更に3arc min以下であれば、逆視の問題も起こらず3次元画像を認識することが可能である。60cmの視距離で解像度が300ppiで両眼視差δが4.3arc min以下の場合、クロストークが生じても画質の低下は認識されず、通常の2次元画像として認識される。さらに3arc min以下にすることにより逆視の発生を防止でき、逆視の位置から観察しても良好な2次元画像が認識される。このため、実施形態の表示装置を車載用に適用した場合、運転席からは3次元画像、助手席からはぼやけていない、あるいはぶれていない良好な2次元画像が認識される。なお、パララックスバリアあるいはレンチキュラーレンズの配置を変えるともに、右眼用画像と左眼用画像を変えることにより、上とは逆に助手席からは3次元画像、運転席からはぼやけていない、あるいはぶれていない良好な2次元画像が認識されるようにすることもできる、実施形態の表示装置を医療用に適用した場合は、メインの観察者からは3次元画像、その他の観察者からは良好な2次元画像を認識される。この場合、表示装置に対するメインの観察者の位置は表示装置の正面に限らず、側面にずれた所定の位置でもよい。実施形態は、3次元画像を認識する観察者の位置を自由に設定することができ、それ以外の位置に居る観察者はぼやけていない、あるいはぶれていない良好な2次元画像を認識することができる。
【0030】
δ=3arc minの場合、画面上の左眼用画像と右眼用画像のずれ幅dispは次のようになる。
【0031】
disp=E−tan[arctan(E/2D)−δ/2]x2D
=0.000874xD(m)
D=0.6mとすると、disp=0.000874x0.6(m)である。
【0032】
解像度が300ppiの表示装置の画面上で1画素の長さは2.54/300=0.08467(mm)である。従って、300ppiの解像度の表示装置を用いた場合、3次元画像を認識可能とするためには、画面上での画像の画素ずれは(disp/0.08467)x1000≒6.19(画素)であることが分かる。3次元画像を認識可能な画素ずれは、解像度に応じて変化し、解像度を高くすると、大きくなる。そのため、300ppiの解像度の表示装置を用いた場合、3次元画像を認識可能とする画面上での画像の画素ずれは、6.19画素である。また解像度が300ppi以上になると、3次元画像を認識可能とする画素ずれは解像度に比例して6.19画素以上になる。
【0033】
実施形態では、60cmの視距離で実物感が得られる解像度が300ppiの表示装置を用いて、表示画面上での画素ずれが6.19画素より大きい6.3画素(=0.021×300)の左眼用画像と右眼用画像を表示することにより、3次元画像を認識可能とする。実施形態は、適切な場所では、3次元画像として認識することができ、そうでない場所でも違和感のない2次元画像として認識することができるため、特にメガネを使用しない裸眼立体ディスプレイに有効である。実施形態によれば、表示部の解像度は1インチ当たりP画素以上であり、表示部で表示される右眼用画像と左眼用画像の画素ずれは、0.021×P画素以下である。一方、立体として認知できる下限は2arc secと言われている。このことから画素ずれの下限は0.00023xP画素となる。よって300ppiの場合の画素ずれの下限は、0.07以上(0.00023*300画素)と計算され、切り上げて1画素が下限となる。
【0034】
[プリズム型フィルタ]
上述の説明では、右眼用画像が右眼に、左眼用画像が左眼に入射するための光学素子としてレンチュキラーレンズ(図2)、パララックスバリア(図3)を用いたが、これらの光学素子の変形例を説明する。例えば、1画素を構成する複数の色成分のサブ画素、例えばR、G、Bのサブ画素毎にプリズムを配置したプリズム型フィルタを用いても、右眼用画像が右眼に、左眼用画像が左眼に入射することができる。
【0035】
図5(a)は、表示部の1水平ライン毎に光出射方向が異なるプリズム24a、24bを配置した例を示す。図5(a)は2水平ラインしか示さないが、これらの2ラインのプリズム24a、24bが繰り返し配置される。例えば、表示パネル22の奇数行のラインには、図5(b)に示すような光が右眼方向に出射するプリズム型フィルタ24aが取り付けられ、表示パネル22の偶数行のラインには図5(c)に示すような光が左眼方向に出射するプリズム型フィルタ24bが取り付けられる。プリズム型フィルタ24aの多数のプリズムからなり、多数のプリズムがR、G、Bの各サブ画素に対応して配置される。上述したパララックスバリア(のスリット)やレンチュキラーレンズは縦方向に配置されるので、右眼用画像及び左眼用画像はそれぞれ縦(垂直方向)に分割され、縦長の短冊状の右眼用画像I、左眼用画像Iが横(水平方向)に交互に並べられ1枚の画像が表示されるが、図5のようなプリズム24a、24bを用いる場合は、右眼用画像及び左眼用画像はそれぞれ横(水平方向)に分割され、横長の短冊状の右眼用画像、左眼用画像が縦(垂直方向)に交互に並べられ1枚の画像が表示される。
【0036】
例えば、1画面の水平ラインがnラインとすると、図6(a)に示すように、右眼用画像及び左眼用画像はそれぞれ横(水平方向)にn分割され、それぞれn本の水平な行の部分画像とされる。右眼用画像については奇数行の部分画像が表示パネル22の奇数ラインL1,L3,…で表示され、偶数行の部分画像は表示されない。左眼用画像については偶数行の部分画像が表示パネル22の偶数ラインL2,L4,…で表示され、奇数行の部分画像は表示されない。
【0037】
あるいは、図6(b)に示すように、右眼用画像及び左眼用画像はそれぞれ横(水平方向)に(n/2)分割され、それぞれ(n/2)本の水平な行の部分画像とされる。右眼用画像の第1行の部分画像が表示パネル22の第1番目の水平ラインL1で表示され、左眼用画像の第1行の部分画像が表示パネル22の第2番目の水平ラインL2で表示される。以下、同様に、右眼用画像の第2行の部分画像が表示パネル22の第3番目の水平ラインL3で表示され、左眼用画像の第2行の部分画像が表示パネル22の第4番目の水平ラインL4で表示される。
【0038】
これにより、表示パネル22で表示される右眼用画像、左眼用画像は、プリズム型フィルタ24a、24bにより光出射方向が制御されるので、右眼、左眼にそれぞれ入射し、観察者は3次元画像を認識可能である。
【0039】
プリズム型フィルタを用いる第2例を図7に示す。ここでは、水平1ライン毎ではなく、図7(a)に示すように、1垂直カラム毎に光出射方向が異なるように構成されたプリズム型フィルタ34が表示パネル32に取り付けられる。1垂直カラムは1画素に相当し、1画素は複数の色成分のサブ画素からなる。例えば、プリズム型フィルタ34は、奇数カラムでは右眼方向に光を出射し、偶数カラムでは左眼方向に光を出射するように構成される。図7(b)は表示パネル32の1水平ラインの断面図である。図5の場合と同様に表示パネル32では、1画素はR、G、Bの3サブ画素からなる。
【0040】
図5に示す例では、右眼用画像と左眼用画像を水平方向に分割し、水平な行の部分画像が生成され、表示行毎に右眼用部分画像と左眼用部分画像が選択的に表示されるが、図7に示す例では、右眼用画像と左眼用画像を垂直方向に分割し、垂直な列の部分画像が生成され、カラム毎に右眼用部分画像と左眼用部分画像が選択的に表示される。
【0041】
フィルタの材料である樹脂あるいはガラスの屈折率nは光の波長により異なるので、プリズムは1画素毎ではなく、図7(b)に示すように、3サブ画素毎に設け、プリズムの形状を屈折率に応じて変える。図7(a)では、便宜上、1画素(3サブ画素)に対応するプリズム型フィルタ34は同じ形状として図示したが、実際には、図7(b)に示すように、サブ画素毎にプリズム型フィルタ34の形状が異なる。もし、R、G、Bの3サブ画素のプリズムの形状が同一であると、R、G、Bの光の出射角度が異なり、観察者に入射する光を発する画素の位置がずれることになり、画質が劣化する。実施形態のように、屈折率に応じてサブ画素毎にプリズム型フィルタ34の形状を設計すれば、これを補償することができる。図5のプリズム型フィルタ24a、24bもサブ画素毎に形状を設計することができる。
【0042】
図8を参照して、図5図7のR、G、Bのサブ画素毎のプリズム型フィルタ24a、24b、34の屈折面角度(光を出射する屈折面と表示パネル32のなす角度)φ、φ、φの求め方を説明する。図8(a)は左眼方向に光を出射する偶数カラムのプリズム型フィルタを示し、図8(b)は右眼方向に光を出射する奇数カラムのプリズム型フィルタを示す。プリズム型フィルタ24a、24b、34は樹脂、例えばポリメタクリル酸メチル樹脂からなる。ポリメタクリル酸メチル樹脂のR、G、Bの光に対する屈折率をそれぞれn、n、nとすると、R、G、Bの光の光出射角度θは次のように表される。
【0043】
arcsin(nsin(φ))−φ=θ
屈折率nは光の波長毎の屈折率n、n、nからなり、n=1.4880、n=1.4913、n=1.4974である。屈折面角度φはφ、φ、φからなる。光出射角度θはθTL、θTR(それぞれ色毎に異なる)からなる。
【0044】
これにより、ポリメタクリル酸メチル樹脂の屈折率n、光出射角度θが決まると、R、G、Bのサブ画素毎のプリズムの屈折面角度φ、φ、φが求められる。これらの屈折面角度は、それぞれ波長λ=655nm、λ=590nm、λ=485nmの時のものである。
【0045】
図9は、55インチ(画面の水平寸法:1.218m)のディスプレイを60cmの視距離で観察する場合の光出射角度θを示す。ディスプレイに60cmまで近づくことができ、周りからは80°の角度まで見えることを想定すると、出射角度θの重心は、80°と−45.4°の平均である17.3°である。
【0046】
図5図7のプリズム型フィルタは3次元画像の認識に関しては同じ効果を奏するが、製造のし易さを比べると、垂直方向に形状が揃っている図7のプリズム型フィルタの方が金型の加工が多少容易であるので、製造コストが低い。
【0047】
波長毎の屈折率を考慮しないで、R、G、Bのサブ画素のプリズムの屈折面角度を同一とすると、R、G、Bの光の出射角度にずれが生じ、R、G、Bの色成分画像間で観察者の網膜に届く光を発する画素の位置がずれる。このずれ量をポリメタクリル酸メチル樹脂を使ったプリズムで試算すると、例えば、屈折面角度φ=15.7°の時、RとBの出射角度の差でおよそ0.159315°である。そのため、60cmの視距離で20インチのHDディスプレイ(画面の水平寸法:44.3cm)を観視した場合、表示画面上で7.2画素のずれとなり、画質が劣化する。プリズムに用いる樹脂を低波長分散(波長毎の屈折率の違いが少ない)の材料を選べば上記のずれを小さく、あるいは無くすこともできるが、こうした材料はコストが上がる。図8図9に示すように、R、G、Bのサブ画素毎に屈折面角度φを最適化し、R、G、Bの光の出射角度θTL、θTRを調整すると、低コストの樹脂を用いたプリズムであっても、R、G、Bの色成分画像間で観察者の網膜に届く光を発する画素の位置を同一にすることができる。
【0048】
[サブ画素配列]
上述したように、表示装置の1画素は、R、G、Bの3サブ画素からなり、通常は、R、G、Bの3サブ画素(あるいはカラーフィルタ)が周期的に配列される。R、G、Bに対応するプリズムの屈折面角度は異なり、Rに対応するプリズムの屈折面角度が最も大きく、Bに対応するプリズムの屈折面角度が最も小さい。そのため、R、G、Bのサブ画素がこの順番に周期的に配列されると、図10(a)に示すように、プリズムの屈折面角度はサブ画素毎に凹凸を繰り返す。このようにサブ画素毎に凹凸があるプリズム型フィルタは製造がやや困難である。
【0049】
サブ画素の配列を、R、G、B、B、G、R(2画素)を1周期とし、これを繰り返すと、製造が容易になる。
【0050】
例えば、図10(b)に示すように、サブ画素の配列を、R、G、B、B、G、Rを1周期とし、これを繰り返し、さらにR、G、Bの連続する3サブ画素及びB、G、Rの連続する3サブ画素において屈折面が連続するようにR、G、Bのサブ画素に対応するプリズムの厚さをそれぞれ所定量増加する。Bサブ画素に対応するプリズムを最も厚くし、Rサブ画素に対応するプリズムを最も薄くする。これにより、プリズム型フィルタ34Aの屈折面角度は1周期の前半のR、G、Bのサブ画素については略一定となり、1周期の後半のB、G、Rのサブ画素についても略一定となる。このため、プリズムの屈折面形状が6サブ画素(2画素)単位で変動し、凹凸の周期が長いので、図10(a)に比べて製造が容易である。図10(b)に示したプリズム型フィルタの斜視図は、図7(a)と同じである。
【0051】
図10(c)は、R、G、Bのサブ画素に対応するプリズムの厚さは図10(a)と同じであり、サブ画素の配列を、R、G、B、B、G、Rを1周期とし、これを繰り返したものである。これにより、プリズム型フィルタ34Bの屈折面形状が6サブ画素単位で変動するともに、各プリズムの厚さが略均一であるので、図10(a)に比べて製造が容易である。
【0052】
上述の説明は、表示パネル22、32の各水平ラインは画素毎にR、G、Bの3サブ画素からなり、サブ画素の配列はいくつかの変形例を含むが、全水平ラインは同じサブ画素配列であることを想定した。
【0053】
図11(a)は、表示パネル全体のサブ画素の配列例を示す。各水平ラインのサブ画素の配列は、図10(b)、(c)と同様に、R、G、B、B、G、Rの6サブ画素が1周期とされ、これが繰り返されている。例えば、第1ラインでは、隣接する2画素の中の左側の画素では、R、G、Bのサブ画素がこの順番に左から配列され、隣接する2画素の中の右側の画素では、B、G、Rのサブ画素が左からこの順番に配列される。隣接する第2ラインでは、サブ画素の配列が1サブ画素分シフトしている。すなわち、第1ラインのR、G、Bのサブ画素からなる1画素の下に位置する第2ラインの1画素はR、R、Gのサブ画素からなり、第1ラインのB、G、Rのサブ画素からなる1画素の下に位置する第2ラインの1画素はB、B、Gのサブ画素からなる。このため、同色のサブ画素は右上から右下の斜めに配列される。
【0054】
図11(b)は図11(a)の表示装置に使用されるプリズム型フィルタ34Cの一例を示す斜視図である。1水平ラインのプリズム型フィルタは図10(b)または図10(c)に示す構成であり、水平ライン毎に1サブ画素だけずれて取り付けられる。図11(b)は図10(b)に示す1水平ラインのプリズム型フィルタが使用される例であるが、図10(c)に示す1水平ラインのプリズム型フィルタが使用されてもよい。このように、サブ画素の配列をライン毎にシフトすると、縦の輪郭成分と出射光成分との干渉を避けることができ、画質が向上する。第1ラインに対する第2ラインのシフト方向は図11と逆の方向でも良く、シフト量は1サブ画素ではなく複数のサブ画素でも良い。
【0055】
なお、図5図7図10のサブ画素の配列、すなわちカラーフィルタの配列は、表示画面上での画素ずれが6.19画素である左眼用画像と右眼用画像を表示する解像度が300ppiの表示装置に限らず、画素ずれの大きい左眼用画像と右眼用画像に基づいて3次元表示する解像度の低い一般的な表示装置にも適用可能である。
【0056】
[回路構成]
図12は、3次元画像表示装置の基本的な構成を示すブロック図である。表示装置は、画像記憶部92と、制御部94と、裸眼立体ディスプレイ96とからなる。裸眼立体ディスプレイ96は、図5図7図10または図11に示すように左眼用画像を左眼に、右眼用画像を右眼に入射するような光学系を有しており、60cmの視距離で観察されることが想定され、300ppi以上の解像度を有する液晶ディスプレイあるいは有機ELディスプレイからなる。パソコンあるいはカメラからの右眼用画像と左眼用画像が表示装置に入力され、両画像は画像記憶部92に記憶される。画像記憶部92に記憶される右眼用画像と左眼用画像の例は、視差の少ない3次元カメラにより撮影された画像、あるいはパソコンのグラフィックスコントローラにより生成された3次元画像である。後者の例は、自動車のスピードメータ等の画像である。右眼用画像と左眼用画像の画素ずれは、表示部の解像度をPとすると、表示画面上で0.021×P画素である。制御部94は、図5図7図10または図11に示すように左眼用画像と右眼用画像が横(水平方向)に交互に並ぶように裸眼立体ディスプレイ96の各画素を駆動する。
【0057】
図13は、3次元画像表示装置の具体例のブロック図である。表示装置は、液晶表示パネル130と回路基板106とを備えている。液晶表示パネル130は、アレイ基板と対向基板間に挟持された液晶層(図示せず)と、マトリクス状に配置された複数の画素からなる表示部DYPと、バックライト光源(図示せず)を備えている。
【0058】
表示部DYPは、透明絶縁基板(図示せず)と、透明絶縁基板上において複数の表示画素のそれぞれに対応してマトリクス状に配置された画素電極と、画素電極PEが配列する行に沿って配置された複数の走査線GLと、画素電極PEが配列する列に沿って配置された複数の信号線SLと、走査線GLと信号線SLとが交差する位置近傍に配置された画素電極PEと、画素スイッチSWと、表示部DYPの周囲に配置された走査線駆動回路YDおよび信号線駆動回路XDと、を備えている。
【0059】
図示しないが、透明絶縁基板上には、図5図7図10または図11に示すようなR、G、Bの色成分からなるカラーフィルタが設けられる。カラーフィルタの各色成分はそれぞれ1つの画素電極PEに対応している。1つの画素電極PEがサブ画素に対応し、3つの画素電極PEが1つの画素に対応する。表示部DYPの画素解像度は300ppi以上である。
【0060】
図示しないが、カラーフィルタの上には、図2に示すようなレンチキュラーレンズ18あるいは図5図7図10または図11に示すようなプリズム型フィルタが設けられ、3次元画像を認識できるようになっている。あるいは、図1に示すように、表示装置と観察者の間にパララックスバリア14を設けて、3次元画像を認識できるようにしてもよい。
【0061】
画素スイッチSWは、ポリシリコン又はアモルファスシリコンの半導体層を有する薄膜トランジスタを含む。画素スイッチSWのゲート電極は対応する走査線GLと電気的に接続されている(あるいは一体に形成されている)。画素スイッチSWのソース電極は対応する信号線SLと電気的に接続されている(あるいは一体に形成されている)。画素スイッチSWのドレイン電極は対応する画素電極PEと電気的に接続されている(あるいは一体に形成されている)。
【0062】
走査線駆動回路YDは、走査線GLが延びた方向における表示部DYPの両側に配置され、複数の走査線GLと電気的に接続している。走査線駆動回路YDは、回路基板106から受信した垂直同期信号およびクロック信号に基づいて複数の走査線GLに順次駆動信号を出力する。
【0063】
信号線駆動回路XDは、信号線SLが延びた方向における表示部DYPの両側に配置され、複数の信号線SLと電気的に接続している。信号線駆動回路XDは、回路基板106から受信した映像信号を複数の信号線SLに並列に出力する。
【0064】
液晶表示パネル130の端部には、フレキシブル基板FCの一端が電気的に接続されて
いる。フレキシブル基板FCの他端には回路基板106が電気的に接続されている。回路基板106は、バッファメモリ108と、マルチプレクサ(MUX)120と、D/A変換部(DAC)114と、A/D変換部(ADC)112と、外部の左眼用画像・右眼用画像生成回路104との間で信号を送受信するインタフェース部(I/F)110と、制御部118とを備えている。
【0065】
右眼からの視野の右眼用画像及び左眼からの視野の左眼用画像がステレオカメラ102で撮影される。左眼用画像・右眼用画像生成回路104はステレオカメラ102から出力される左眼用画像信号と右眼用画像信号を入力し、左眼用画像と右眼用画像を水平方向または垂直方向に分割し、水平ラインまたは垂直カラムの左眼用部分画像と右眼用部分画像を生成し、左眼用部分画像と右眼用部分画像を交互に組み合わせた画像を出力する。左眼用画像信号と右眼用画像信号の画素ずれは、表示画面上で0.021xP画素である。ここで、Pは表示装置の解像度(1インチ当たりの画素数)を示す。右眼用画像及び左眼用画像はステレオカメラ102から左眼用画像・右眼用画像生成回路104に入力するに限らず、サーバ、ホストデバイス等から左眼用画像・右眼用画像生成回路104に供給してもよい。
【0066】
左眼用画像・右眼用画像生成回路104の出力画像信号はインタフェース部(I/F)110を介してバッファメモリ108に書込まれる。バッファメモリ108は例えば数フレームの画像信号を記憶可能な揮発性半導体メモリからなる。表示部DYPの表示周期に応じてバッファメモリ108から画像信号が1フレームずつ読み出され、画像信号は制御部118に供給される。
【0067】
制御部118は、画像信号から同期信号を生成し、垂直同期信号を走査線駆動回路YDへ出力するとともに、水平同期信号及び画像信号を信号線駆動回路XDへ出力する。走査線駆動回路YDと信号線駆動回路XDは、画像信号と同期信号に基づいて、各画素スイッチSWを駆動して、複数種類の電位線のうちの選択された1種の電位線の階調電位が各画素電極PEを介して対応する液晶層に対して供給されるように、表示駆動を行う。
【0068】
走査線駆動回路YDは水平ライン(行)方向に沿って延在する複数の走査線(ゲート線)GLを用いて、複数の画素を水平ラインごとに順次選択することにより、駆動対象の画素電極PEを線順次で選択する(線順次走査を行う)。
【0069】
信号線駆動回路XDは、垂直ライン(列)方向に沿って延在する複数の信号線(データ線)SLを用いて、駆動対象の画素電極PEに対して画像信号を供給する。信号線SLには、ここでは2値のデジタルデータからなる1ビットの映像信号が供給される。これにより、各画素電極PEに対応する液晶層が画像信号に応じて表示駆動される。
【0070】
上記した表示装置の具体的な回路構成はあくまでも一例であり、これに何ら限定されない。例えば、実施形態は、例えば静電容量によりユーザの操作動作を検出するセンサ電極を内蔵する、所謂タッチパネル式の表示装置にも適用可能である。
【0071】
実施形態によれば、以下の表示装置が提供される。
【0072】
(1) 表示装置は、右眼用画像と左眼用画像を表示する表示部を具備する。表示部の解像度は1インチ当たりP画素以上である。表示部で表示される右眼用画像と左眼用画像の画素ずれは、0.021×P画素以下であり、1画素以上である。
(2) (1)の表示装置は、画素ずれが0.021×P画素以下であり、1画素以上である右眼用画像と左眼用画像とを記憶するメモリと、メモリから読み出した右眼用画像と左眼用画像を表示部で表示させる駆動回路をさらに具備する。
(3) (1)または(2)の表示装置において、表示部の解像度は300ppi以上である。
(4) (1)、(2)または(3)の表示装置は、右眼用画像が観察者の右眼に入射し、左眼用画像が観察者の左眼に入射するように、表示部から発せられた光の伝播を制御する光学素子をさらに具備する。
(5) (4)の表示装置において、光学素子は、レンチュキラーレンズまたはパララックスバリアまたはプリズムを具備する。
(6) (1)、(2)または(3)の表示装置において、
表示部の画素は、色の異なる複数のサブ画素を具備し、
表示装置は、複数のサブ画素の各々に設けられ、右眼用画像が観察者の右眼に入射し、左眼用画像が観察者の左眼に入射するように、複数のサブ画素の各々から発せられた光の向きを制御するプリズムをさらに具備し、
プリズムの形状は、複数のサブ画素毎に異なる。
(7) (6)の表示装置において、
プリズムは光の波長に応じて屈折率が異なる材料から形成され、
プリズムの形状は、複数のサブ画素から発せられた光に対する屈折率に応じている。
(8) (1)〜(7)のいずれかの表示装置において、
表示部の画素は、赤、緑、青の3サブ画素を具備し、
1水平ライン内の隣接する2画素は、赤、緑、青、青、緑、赤の順に配列される6サブ画素からなる。
(9) (8)の表示装置において、
第1水平ライン内の隣接する2画素は、赤、緑、青、青、緑、赤の順に配列される6サブ画素からなり、
第1水平ラインに隣接する第2水平ライン内の隣接する2画素は、赤、赤、緑、青、青、緑の順に配列される6サブ画素からなる。
(10) 第1水平ラインと第2水平ラインとを含む表示装置であって、
第1水平ラインは右眼用画像を表示し、第2水平ラインは左眼用画像を表示する。
表示装置は、第1水平ラインで表示される画像は観察者の右眼へ入射し、第2水平ラインで表示される画像は観察者の左眼へ入射するように、表示部から発する光の向きを制御する光学素子を具備する。
(11) (10)の表示装置において、
光学素子は、水平ライン毎に光出射角度が異なるプリズムであり、
プリズムは1水平ラインの中のR、G、Bのサブ画素毎に設けられ、サブ画素毎に形状が異なる。
(12) 第1垂直カラムと第2垂直カラムとを含む表示装置であって、
第1垂直カラムは右眼用画像を表示し、第2垂直カラムは左眼用画像を表示する。
表示装置は、第1垂直カラムで表示される画像は観察者の右眼へ入射し、第2垂直カラムで表示される画像は観察者の左眼へ入射するように、表示部から発する光の向きを制御する光学素子を具備する。
(13) (12)の表示装置において、
光学素子は、垂直カラム毎に光出射角度が異なるプリズムであり、
プリズムは1水平ラインの中のR、G、Bのサブ画素毎に設けられ、サブ画素毎に形状が異なる。
(14) (11)または(13)の表示装置において、
プリズムは光の波長に応じて屈折率が異なる材料から形成され、
プリズムの形状は、複数のサブ画素から発せられた光に対する屈折率に応じている。
(15) (10)、(11)、(12)、(13)または(14)の表示装置において、
赤、緑、青の3サブ画素から1画素が構成され、
1水平ライン内の隣接する2画素は、赤、緑、青、青、緑、赤の順に配列される6サブ画素からなる。
(16) (15)の表示装置において、
第1水平ライン内の隣接する2画素は、赤、緑、青、青、緑、赤の順に配列される6サブ画素からなり、
第1水平ラインに隣接する第2水平ライン内の隣接する2画素は、赤、赤、緑、青、青、緑の順に配列される6サブ画素からなる。
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。例えば、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0073】
12…表示パネル、14…パララックスバリア、18…レンチキュラーレンズ、24a,24b,34…プリズム型フィルタ、102…カメラ、104…左眼用画像・右眼用画像生成回路、108…バッファメモリ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13