(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6755810
(24)【登録日】2020年8月28日
(45)【発行日】2020年9月16日
(54)【発明の名称】インストルメントパネルビーム、一組のブラケットおよびインストルメントパネルビーム接合体
(51)【国際特許分類】
B62D 25/08 20060101AFI20200907BHJP
B21C 37/16 20060101ALI20200907BHJP
B21C 1/22 20060101ALN20200907BHJP
B21J 5/06 20060101ALN20200907BHJP
【FI】
B62D25/08 J
B21C37/16
!B21C1/22 A
!B21J5/06 F
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-16128(P2017-16128)
(22)【出願日】2017年1月31日
(65)【公開番号】特開2018-122715(P2018-122715A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2019年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000107538
【氏名又は名称】株式会社UACJ
(73)【特許権者】
【識別番号】510132510
【氏名又は名称】株式会社UACJ押出加工
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】近野 佑太郎
(72)【発明者】
【氏名】西川 彰
(72)【発明者】
【氏名】田中 康之
(72)【発明者】
【氏名】土井 敏明
【審査官】
川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−253368(JP,A)
【文献】
特開2009−274654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00 − 25/08
B62D 25/14 − 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の幅方向に延びるインストルメントパネルビームであって、
中空の筒形状を有する大径中空管と、
前記大径中空管より小さい径の中空の筒形状を有する小径中空管と、を備え、
前記大径中空管と前記小径中空管とが、軸方向に結合され、
前記小径中空管は、長手方向に延在する少なくとも2つの平板部と周方向に湾曲した少なくとも2つの湾曲部とを有し、該平板部と該湾曲部が周方向に交互に配置され、
前記大径中空管は、長手方向に延在する少なくとも2つの平板部と周方向に湾曲した少なくとも2つの湾曲部とを有し、該平板部と該湾曲部が周方向に交互に配置され、
前記小径中空管の平板部の幅は、前記大径中空管の平板部の幅より大きい、
ことを特徴とするインストルメントパネルビーム。
【請求項2】
前記大径中空管の少なくとも2つの湾曲部は、径方向外側に凸の曲面形状を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のインストルメントパネルビーム。
【請求項3】
前記小径中空管の少なくとも2つの湾曲部は、径方向外側に凸の曲面形状を有する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のインストルメントパネルビーム。
【請求項4】
一端部から他端部にかけて縮径する縮径部を備え、
前記縮径部の一端部は、前記大径中空管の端部に固定され、他端部は前記小径中空管の端部に固定されている、
ことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載のインストルメントパネルビーム。
【請求項5】
前記大径中空管の湾曲部の曲率半径が、前記小径中空管の湾曲部の曲率半径より大きい、
ことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載のインストルメントパネルビーム。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1項に記載のインストルメントパネルビームに嵌合する一組のブラケットであって、
前記インストルメントパネルビームの前記大径中空管に嵌合する開口部を備える第1のブラケットと、
前記インストルメントパネルビームの前記小径中空管に嵌合する開口部を備える第2のブラケットと、を有する、
ことを特徴とする一組のブラケット。
【請求項7】
請求項1から5の何れか1項に記載のインストルメントパネルビームと、
前記インストルメントパネルビームの前記大径中空管に嵌合する開口部を備える第1のブラケットと、
前記インストルメントパネルビームの前記小径中空管に嵌合する開口部を備える第2のブラケットと、を備え、
前記インストルメントパネルビームに前記第1のブラケットおよび前記第2のブラケットが嵌合されている、
ことを特徴とするインストルメントパネルビーム接合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インストルメントパネルビーム、一組のブラケットおよびインストルメントパネルビーム接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のボデイに備えられるインストルメントパネルを補強する部材として、インストルメントパネルビームが用いられる。インストルメントパネルビームは、断面円形の中空材からなるとともに大径部と小径部とが軸方向に結合された形状を有し、自動車の幅方向にブラケットを介して配置される部材である。自動車の質量を低減するために、インストルメントパネルビームの質量を小さくすることも求められており、アルミニウムなどの金属で形成されている。
【0003】
引用文献1は、引抜き加工により大径部と小径部とが軸方向に結合された円筒状の中空材からなるインストルメントパネルビームを製造する製造方法を開示している。引抜き加工は、素材である中空材をダイスを通して引抜き、中空材にダイスの孔部と等しい断面形状を与える冷間加工である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−293535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インストルメントパネルビームには、自動車の走行時の居住安定性を向上させるために、高いねじり剛性および重力方向への高い曲げ剛性が求められている。また、衝突時に乗員を保護するために、車両前方から加わる力に対する高い曲げ剛性も求められている。引用文献1の製造方法で作成されたインストルメントパネルビームは、円筒状の形状を有しており、車両前方から加わる力に対する曲げ剛性やねじり剛性を大きくするためには、肉厚を大きくする必要がある。肉厚を大きくすると、インストルメントパネルビームの質量が大きくなるという問題がある。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、高いねじり剛性および高い曲げ剛性を有し、質量の小さいインストルメントパネルビーム、一組のブラケットおよびインストルメントパネルビーム接合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係るインストルメントパネルビームは、
自動車の幅方向に延びるインストルメントパネルビームであって、
中空の筒形状を有する大径中空管と、
前記大径中空管より小さい径の中空の筒形状を有する小径中空管と、を備え、
前記大径中空管と前記小径中空管とが、軸方向に結合され、
前記小径中空管は、長手方向に延在する少なくとも2つの平板部と周方向に湾曲した少なくとも2つの湾曲部とを有し、該平板部と該湾曲部が周方向に交互に配置され
、
前記大径中空管は、長手方向に延在する少なくとも2つの平板部と周方向に湾曲した少なくとも2つの湾曲部とを有し、該平板部と該湾曲部が周方向に交互に配置され、
前記小径中空管の平板部の幅は、前記大径中空管の平板部の幅より大きい、
ことを特徴とする。
【0009】
前記大径中空管の少なくとも2つの湾曲部は、径方向外側に凸の曲面形状を有するとよい。
【0010】
前記小径中空管の少なくとも2つの湾曲部は、径方向外側に凸の曲面形状を有するとよい。
【0011】
一端部から他端部にかけて縮径する縮径部を備え、
前記縮径部の一端部は、前記大径中空管の端部に固定され、他端部は前記小径中空管端部に固定されているとよい。
【0012】
前記大径中空管の湾曲部の曲率半径が、前記小径中空管の湾曲部の曲率半径より大きいとよい。
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の第2の観点に係る一組のブラケットは、
前記インストルメントパネルビームに嵌合する一組のブラケットであって、
前記インストルメントパネルビームの前記大径中空管に嵌合する開口部を備える第1のブラケットと、
前記インストルメントパネルビームの前記小径中空管に嵌合する開口部を備える第2のブラケットと、を有する、
ことを特徴とする。
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の第3の観点に係るインストルメントパネルビーム接合体は、
前記インストルメントパネルビームと、
前記インストルメントパネルビームの前記大径中空管に嵌合する開口部を備える第1のブラケットと、
前記インストルメントパネルビームの前記小径中空管に嵌合する開口部を備える第2のブラケットと、を備え、
前記インストルメントパネルビームに前記第1のブラケットおよび前記第2のブラケットが嵌合されている、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高いねじり剛性および高い曲げ剛性を有し、質量の小さいインストルメントパネルビーム、一組のブラケットおよびインストルメントパネルビーム接合体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施の形態に係るインストルメントパネルビーム接合体を示す図である。
【
図2】実施の形態に係るインストルメントパネルビームを示す図である。
【
図5】実施の形態に係るブラケットを示す図である。
【
図6】実施の形態に係るブラケットを示す図である。
【
図7】(a)〜(d)は、実施の形態に係るインストルメントパネルビームを成形する成形工程を示す図である。
【
図8】変形例に係るインストルメントパネルビームの断面図である。
【
図9】変形例に係るインストルメントパネルビームの断面図である。
【
図10】変形例に係るインストルメントパネルビームの断面図である。
【
図11】変形例に係るインストルメントパネルビームの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態のインストルメントパネルビーム接合体について説明する。
【0018】
本実施の形態のインストルメントパネルビーム接合体100は、インストルメントパネルを補強する部材として、自動車の幅方向に延伸して配置される部材である。インストルメントパネルビーム接合体100は、
図1に示すように、インストルメントパネルビーム110と、第1のブラケット120と、第2のブラケット130と、第3のブラケット140と、ステー150A、150Bを備える。
【0019】
インストルメントパネルビーム110は、アルミニウムまたはアルミニウム合金(以下、アルミニウム合金等と称する)から構成され、
図2に示すように、大径中空管200と、大径中空管200より小さい径を有する小径中空管300と、大径中空管200と小径中空管300とを接続する縮径部400と、を有する。大径中空管200と、縮径部400と、小径中空管300と、は、軸方向に結合され、一体成形されている。インストルメントパネルビーム110の全長L1は、取り付ける自動車の大きさにより決められ、例えば1400〜1700mmである。大径中空管200は、ステアリングコラムが取り付けられる部分であり、径を大きくすることでねじり剛性、曲げ剛性が確保される。小径中空管300は、助手席側に配置される部分であり、径を小さくすることで、助手席側のインストルメントパネル内の空間を大きく確保することができる。インストルメントパネル内の空間を大きく確保するために、ステアリングコラムが取り付けられる部分以外を小径中空管300とすることが好ましく、小径中空管300の長さL3は、例えば大径中空管200の長さL2の1.0〜2.5倍である。
【0020】
大径中空管200は、
図3に示すように、中空の筒形状を有し、長手方向に延在する平板部210a、210b、210c、210dと、周方向CDに湾曲した湾曲部220a、220b、220c、220dと、から構成される。大径中空管200は、特にねじり剛性が必要とされるため、円形に近い断面形状を有することが好ましく、平板部210a、210cの幅W1は、外径D1の3分の1以下が好ましい。平板部210a、210b、210c、210dと、湾曲部220a、220b、220c、220dとは、周方向CDに交互に配置されている。平板部210aは、向かい合う平板部210cと平行であり、平板部210dは、向かい合う平板部210bと平行である。大径中空管200が平板部210a、210b、210c、210dを有することで、重力によるY方向から加わる力に対する曲げ剛性、および車両前突時にX方向(車両前方)から加わる力に対する曲げ剛性を大きくすることができる。湾曲部220a、220b、220c、220dは、径方向RD外側に凸の曲面形状を有する。湾曲部220a、220b、220c、220dの外周部は、曲率半径R1を有する円柱面から構成される。大径中空管200のねじれ剛性、曲げ剛性を確保しつつ質量を小さくするために、大径中空管200の外径D1は、50〜100mmが好ましく、厚みt1は、1〜5mmが好ましい。
【0021】
小径中空管300は、
図4に示すように、中空の筒形状を有し、長手方向に延在する平板部310a、310b、310c、310dと、周方向CDに湾曲した湾曲部320a、320b、320c、320dと、から構成される。平板部310a、310b、310c、310dと、湾曲部320a、320b、320c、320dとは、周方向CDに交互に配置されている。平板部310aは、向かい合う平板部310cと平行であり、平板部310dは、向かい合う平板部310bと平行である。小径中空管300は、前突に対する曲げ剛性が必要とされるため、自動車に配置されたときに主面が水平に配置される平板部310a、310bの幅W2は、大径中空管200の平板部210a、210cの幅W1より大きいことが好ましい。平板部310a、310bの幅W2が大きいことで、前突時にX方向から加わる力に対する曲げ剛性を大きくすることができる。小径中空管300が平板部310a、310cを有することで、重力によるY方向から加わる力に対する曲げ剛性を大きくすることができる。湾曲部320a、320b、320c、320dは、径方向RD外側に凸の曲面形状を有する。湾曲部320a、320b、320c、320dの外周部は、曲率半径R2を有する円柱面から構成される。湾曲部320a、320b、320c、320dの曲率半径R2は、大径中空管200の平板部210a、210b、210c、210dの曲率半径R1より小さいことが好ましい。これにより、X方向から加わる力に対する曲げ剛性を大きくすることができる。小径中空管300のねじれ剛性、曲げ剛性を確保しつつ質量を小さくするために、小径中空管300の外径D2は、大径中空管200の外径D1の1/3〜2/3が好ましく、厚みt2は、1〜4mmが好ましい。また、厚みt2は、厚みt1より1〜2mm小さいことが好ましい。
【0022】
縮径部400は、大径中空管200の断面形状と同じ形状を有する一端部と、小径中空管300の断面形状と同じ形状を有する他端部と、を有し、一端部から他端部に縮径される筒形状に形成されている。縮径部400の一端部は、大径中空管200の一端部に固定されている。縮径部400の他端部は小径中空管300の一端部に固定されている。
【0023】
図1に戻って、第1のブラケット120は、大径中空管200の他端部に取り付けられている。第2のブラケット130は、小径中空管300の他端部に取り付けられ、第3のブラケット140は、小径中空管300の中心から一端部よりに取り付けられている。第1のブラケット120は、自動車の車体骨格の右に固定される部分であり、第2のブラケット130は、自動車の車体骨格の左に固定される部分である。なお、ここで用いる「右」、「左」という用語は、インストルメントパネルビーム接合体100を取り付けた自動車の進行方向に向かって「右」、「左」のことをいう。
【0024】
第1のブラケット120は、
図5に示すように、大径中空管200に嵌合する開口部121を備える。第2のブラケット130および第3のブラケット140は、同じ形状を有し、
図6に示すように、小径中空管300に嵌合する開口部131、141を備える。
【0025】
図1に戻って、ステー150A、150Bは、インストルメントパネルを支持する部材である。ステー150A、150Bの一端部は、小径中空管300に取り付けられ、他端部は、インストルメントパネルの所定位置に取り付けられている。
【0026】
次に、インストルメントパネルビーム接合体100を製造する方法について説明する。インストルメントパネルビーム接合体100を製造する方法は、インストルメントパネルビーム110を成形する成形工程と、第1〜第3のブラケット120〜140を取り付けるブラケット取付工程と、ステー150A、150Bを取り付けるステー取付工程と、を備える。
【0027】
まず、インストルメントパネルビーム110を引き抜き加工により成形する成形工程について
図7を参照しながら説明する。
【0028】
まず、
図7(a)に示すように、アルミニウム合金等から構成される中空材500を用意する。この中空材500は、
図3に示す大径中空管200と同じ断面形状を有している。中空材500の端部には押し潰し部20が形成されている。この押し潰し部20はあらかじめスウェージング加工により形成された部分で、引抜き加工の際に引抜き装置のチャック13で把持される部分である。
【0029】
つぎに、中空材500の断面に対して外形寸法が小さい孔部12を備えるダイス11を用意する。なお、孔部12はテーパ状の絞り部12a、ベアリング部12bおよび逃げ部12cから構成されている。ベアリング部12bの内周部は、
図4に示す小径中空管300の外周部に沿う形状を有する。これにより、小径中空管300の外周部を形成することができる。中空材500の押し潰し部20をダイス11の孔部12に挿通する。
【0030】
つぎに、
図7(b)に示すように、ダイス11の孔部12に挿通された中空材500の内部にプラグ14を挿入し、このプラグ14をダイス11内の中心軸線上に位置させる。このプラグ14の外周部は、
図4に示す小径中空管300の内周部に沿う形状を有する。これにより、小径中空管300の内周部を形成することができる。プラグ14は、図示しない駆動装置により駆動される支持棒15に支持されており、この支持棒15の動きとともに中空材500の内部に挿入および抜き出しされる。さらに、ダイス11の導出側に突出した中空材500の押し潰し部20を引抜き装置のチャック13で把持する。この引抜き装置としては従来から使用されているドローベンチなどが挙げられる。
【0031】
つぎに、引抜き装置を駆動してチャック13をA方向に移動する。チャック13が中空材500の押し潰し部20をA方向に引くと、中空材500はダイス11の孔部12のベアリング部12bとプラグ14との間の空隙を通って引き抜かれる。そして、中空材500はチャック13により連続してダイス11の孔部12を通して引抜き加工される。これによりダイス11の孔部12を通過した小径部分510の外周部は、ダイス11の孔部12の内周部と同じ形状および大きさに成形され、小径部分510の肉厚は、ダイス11の孔部12の内周部とプラグ14の外周部とにより規定される。
【0032】
つぎに、
図7(c)に示すように、中空材500がチャック13により所定の長さ間で引抜き加工された時点で、駆動装置が支持棒15を戻り方向Bに引き抜くと、中空材500の内部に挿入されているプラグ14が戻り方向Bに移動して中空材500から外部に抜き出される。
【0033】
つぎに、
図7(d)に示すように、チャック13を戻り方向Bに押し込むと、中空材500はチャック13に押されて戻り方向Bに向けて移動し、小径部分510がダイス11の孔部12を戻り方向Bに向けて移動する。中空材500が引抜き加工前の元の位置まで戻り移動した時に、チャック13が中空材500の押し潰し部20の把持を解除する。
【0034】
このようにして中空材500には、引き抜き加工前の断面に対して外径が小さい断面部を有する小径部分510が形成される。形成された中空材を所望の長さになるように両端を切断すると、大径中空管200と小径中空管300とを備えるインストルメントパネルビーム110が得られる。
【0035】
ブラケット取付工程では、第1〜第3のブラケット120〜140を取り付ける。第1のブラケット120は、大径中空管200に嵌合する開口部121を有する形状に成形され、大径中空管200の他端部に取り付けられる。第2のブラケット130および第3のブラケット140は、小径中空管300に嵌合する開口部131を有する形状に成形される。第2のブラケット130は、小径中空管300の他端部に取り付けられる。第3のブラケット140は、小径中空管300の所定位置(インストルメントパネルビーム110の中心位置)に取り付けられる。
【0036】
ステー取付工程では、第1および第2のステー150A、150Bを取り付ける。第1および第2のステー150A、150Bは、その一端が小径中空管300に取り付けられる。
【0037】
上述のように、インストルメントパネルビーム接合体100は、成形工程と、ブラケット取付工程と、ステー取付工程と、により製造される。
【0038】
本実施の形態に係るインストルメントパネルビーム接合体100によれば、大径中空管200および小径中空管300が、4つの平板部と4つの湾曲部とから構成されるため、任意の方向からの荷重に対する曲げ剛性およびねじり剛性を向上させることができる。ねじり剛性が特に必要とされる大径中空管200が、円形に近い断面形状を有し、前突に対する曲げ剛性が必要とされる小径中空管300において、自動車に配置されたときに主面が水平に配置される平板部310a、310bの幅Wが大きいことで、ねじり剛性および曲げ剛性を維持しつつ、大径中空管200の厚みt1、小径中空管300のt2を小さくすることができる。厚みt1、t2を小さくできるため、インストルメントパネルビーム接合体100の質量を小さくすることができる。
従って、インストルメントパネルビーム接合体100は、高いねじり剛性および高い曲げ剛性を有しつつ、質量を小さくできる。
【0039】
インストルメントパネルビーム110は、平板部を有し、第1〜3のブラケット120〜140は、インストルメントパネルビーム110の外周部に嵌合する開口部121〜141を備えるため、第1〜3のブラケット120〜140とインストルメントパネルビーム110との回転方向のずれを防ぎ、後工程の手間を低減することができる。インストルメントパネルビーム110が平板部分を有することで、取り付け部品となるステー150A、150Bの取り付けが容易になる。
【0040】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定され
るものではなく、種々の変形および応用が可能である。
【0041】
上述の実施の形態において、大径中空管200が、平板部210a、210b、210c、210dと、湾曲部220a、220b、220c、220dと、から構成される場合について説明したが、大径中空管200の形状は特に限定されず、中空の円筒形状であってもよい。大径中空管200を中空の円筒形状とすると、ねじれ剛性を大きくすることができる。大径中空管200は、少なくとも2つの平板部と少なくとも2つの湾曲部を有することが好ましい。大径中空管200は、例えば、
図8に示すように、2つの平板部210a、210bと、2つの湾曲部220a、220bと、から構成されてもよく、
図9に示すように、3つの平板部210a、210b、210cと、3つの湾曲部220a、220b、220cと、から構成されてもよく、5つ以上の平板部と5つ以上の湾曲部を有してもよい。
【0042】
上述の実施の形態において、小径中空管300が、4つの平板部310a、310b、310c、310dと、4つの湾曲部320a、320b、320c、320dと、から構成される場合について説明したが、小径中空管300は、少なくとも2つの平板部と少なくとも2つの湾曲部を有すればよい。小径中空管300は、
図10に示すように、2つの平板部310a、310bと、2つの湾曲部320a、320bと、から構成されてもよく、
図11に示すように、3つの平板部310a、310b、310cと、3つの湾曲部320a、320b、320cと、から構成されてもよく、5つ以上の平板部と5つ以上の湾曲部を有してもよい。
【0043】
上述の実施の形態において、インストルメントパネルビーム110を成形する成形工程で、ダイス11およびプラグ14を用いて引き抜き加工により成形する例について説明したが、インストルメントパネルビーム110を成形する成形工程において、プラグ14を用いずに、ダイス11の孔部12に挿通された中空材500を引き抜くことで成形してもよい。また、インストルメントパネルビーム110を成形する方法は、引き抜き加工によるものでなくてもよく、アルミニウム合金等の素材をインストルメントパネルビーム110の形状に成型できれば限定されない。
【0044】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0045】
100 インストルメントパネルビーム接合体
110 インストルメントパネルビーム
120 第1のブラケット
121 開口部
130 第2のブラケット
131 開口部
140 第3のブラケット
141 開口部
150A、150B ステー
200 大径中空管
210a〜210d 平板部
220a〜220d 湾曲部
300 小径中空管
310a〜310d 平板部
320a〜320d 湾曲部
400 縮径部
500 中空材
510 小径部分
11 ダイス
12 孔部
12a 絞り部
12b ベアリング部
12c 逃げ部
13 チャック
14 プラグ
15 支持棒
20 押し潰し部
R1、R2 曲率半径
D1、D2 外径
CD 周方向
RD 径方向
L1 全長
L2、L3 長さ
W1、W2 幅
t1、t2厚み