特許第6755874号(P6755874)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6755874
(24)【登録日】2020年8月28日
(45)【発行日】2020年9月16日
(54)【発明の名称】ロボットシステム及びその運転方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/00 20060101AFI20200907BHJP
【FI】
   B25J13/00 Z
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-536195(P2017-536195)
(86)(22)【出願日】2016年7月15日
(86)【国際出願番号】JP2016003356
(87)【国際公開番号】WO2017033391
(87)【国際公開日】20170302
【審査請求日】2019年6月12日
(31)【優先権主張番号】特願2015-165479(P2015-165479)
(32)【優先日】2015年8月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野口 健治
(72)【発明者】
【氏名】掃部 雅幸
(72)【発明者】
【氏名】田中 繁次
【審査官】 武市 匡紘
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−273868(JP,A)
【文献】 特開2001−1283(JP,A)
【文献】 特開2001−88071(JP,A)
【文献】 特開2011−194497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00−21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作者からの操作指示を受け付ける操作器と、
複数の関節を有するスレーブアームと、
前記スレーブアームの動作を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記スレーブアームの自動運転中に、前記操作器から前記スレーブアームの動作を修正する動作指令値が入力されても、前記スレーブアームが予め設定された所定の第1閾値以上の速度で動作している場合には、前記スレーブアームの動作の修正を抑制するように構成されている、ロボットシステム。
【請求項2】
出力装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記スレーブアームの自動運転中に、前記スレーブアームが前記第1閾値以上の速度で動作している場合に、前記操作器から前記スレーブアームの動作を修正する動作指令値が入力されると、前記出力装置に前記スレーブアームの動作の修正が抑制されることを示す修正抑制情報を出力させるように構成されている、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記スレーブアームの自動運転中に、前記操作器から前記スレーブアームの動作を修正する動作指令値が入力され、前記スレーブアームが前記第1閾値以上の速度で動作している場合には、前記スレーブアームの動作速度を前記第1閾値未満になるように前記スレーブアームを制御するように構成されている、請求項1又は2に記載のロボットシステム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記スレーブアームの自動運転中に、前記操作器から前記スレーブアームの動作を修正する動作指令値が入力されたときに、前記スレーブアームが前記第1閾値未満の速度で動作している場合には、前記スレーブアームの動作の修正を許可するように構成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【請求項5】
操作者からの操作指示を受け付ける操作器と、複数の関節を有するスレーブアームと、を備える、ロボットシステムの運転方法であって、
前記スレーブアームが自動運転しているときに、操前記作器が前記スレーブアームの動作を修正する動作指令値を出力する(A)と、
前記スレーブアームが予め設定された所定の第1閾値以上の速度で動作している場合には、前記スレーブアームの動作の修正が抑制される(B)と、を備える、ロボットシステムの運転方法。
【請求項6】
前記ロボットシステムは、出力装置をさらに備え、
前記出力装置が前記スレーブアームの動作の修正が抑制されることを示す修正抑制情報を出力する(C)をさらに備える、請求項5に記載のロボットシステムの運転方法。
【請求項7】
前記スレーブアームが前記第1閾値以上の速度で動作している場合には、前記スレーブアームが動作速度を前記第1閾値未満になるようにする(D)をさらに備える、請求項5又は6に記載のロボットシステムの運転方法。
【請求項8】
前記スレーブアームが前記第1閾値未満の速度で動作している場合には、前記スレーブアームの動作の修正が許可される(E)をさらに備える、請求項5〜7のいずれか1項に記載のロボットシステムの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットシステム及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、製造現場では、溶接、塗装、部品の組付け、シール剤の塗布等の繰り返し作業が、産業用ロボットにより、自動で行われている。ロボットに作業を行わせるためには、作業に必要な情報をロボットに指示し、記憶させる教示が必要になる。
【0003】
ロボットの教示方式として、ティーチングペンダントを用いた遠隔操縦による教示が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、ダイレクト教示により、ロボットアームに作業の軌道を記憶させる教示作業が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−83713号公報
【特許文献2】特開2013−71231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、種々の理由からロボットに教示した動作を部分的に変更する必要が生じる場合がある。例えば、教示作業を終えた後に、当初作成した教示情報では作業の一部において不具合があることが発見された場合である。
【0006】
このような場合には、改めて教示作業を行うことにより、ロボットの自動運転に使用される教示情報を変更することになるが、自動運転中のロボットの動作速度が速い場合に、ロボットの動作を修正しようとすると、急激にロボットの動作が修正されて、思わぬ方向にロボットが動作するおそれがあった。
【0007】
そこで、本発明は、ロボットを自動運転中に、その動作を修正するときに、急激にロボットの動作が修正されて、思わぬ方向にロボットが動作することを抑制できる、ロボットシステム及びロボットシステムの運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記従来の課題を解決するために、本発明に係るロボットシステムは、操作者からの操作指示を受け付ける操作器と、複数の関節を有するスレーブアームと、前記スレーブアームの動作を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記スレーブアームの自動運転中に、前記操作器から前記スレーブアームの動作を修正する動作指令値が入力されても、前記スレーブアームが予め設定された所定の第1閾値以上の速度で動作している場合には、前記スレーブアームの動作の修正を抑制するように構成されている。
【0009】
これにより、ロボット(スレーブアーム)を自動運転中に、その動作を修正するときに、急激にロボットの動作が修正されて、思わぬ方向にロボットが動作することを抑制できる。
【0010】
また、本発明に係るロボットシステムの運転方法は、操作者からの操作指示を受け付ける操作器と、複数の関節を有するスレーブアームと、を備える、ロボットシステムの運転方法であって、前記スレーブアームが自動運転しているときに、操前記作器が前記スレーブアームの動作を修正する動作指令値を出力する(A)と、前記スレーブアームが予め設定された所定の第1閾値以上の速度で動作している場合には、前記スレーブアームの動作の修正が抑制される(B)と、を備える。
【0011】
これにより、ロボットを自動運転中に、その動作を修正するときに、急激にロボットの動作が修正されて、思わぬ方向にロボットが動作することを抑制できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のロボットシステム及びその運転方法によれば、ロボットを自動運転中に、その動作を修正するときに、急激にロボットの動作が修正されて、思わぬ方向にロボットが動作することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本実施の形態1に係るロボットシステムの概略構成を示すブロック図である。
図2図2は、本実施の形態1に係るロボットシステムの概略構成を示す模式図である。
図3図3は、図1及び図2に示すスレーブアームの概略構成を示す模式図である。
図4図4は、本実施の形態1に係るロボットシステムの動作の一例を示すフローチャートである。
図5図5は、図1に示す修正自動運転手段の制御系の一例を示すブロック図である。
図6図6は、本実施の形態2に係るロボットシステムの動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、全ての図面において、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、全ての図面において、本発明を説明するための構成要素を抜粋して図示しており、その他の構成要素については図示を省略している場合がある。さらに、本発明は以下の実施の形態に限定されない。
【0015】
(実施の形態1)
本実施の形態1に係るロボットシステムは、操作者からの操作指示を受け付ける操作器と、複数の関節を有するスレーブアームと、スレーブアームの動作を制御する制御装置と、を備え、制御装置は、スレーブアームの自動運転中に、操作器からスレーブアームの動作を修正する動作指令値が入力されても、スレーブアームが予め設定された所定の第1閾値以上の速度で動作している場合には、スレーブアームの動作の修正を抑制するように構成されている。
【0016】
また、本実施の形態1に係るロボットシステムでは、出力装置をさらに備え、制御装置は、スレーブアームの自動運転中に、スレーブアームが第1閾値以上の速度で動作している場合に、操作器からスレーブアームの動作を修正する動作指令値が入力されると、出力装置にスレーブアームの動作の修正が抑制されることを示す修正抑制情報を出力させるように構成されていてもよい。
【0017】
以下、本実施の形態1に係るロボットシステムの一例について、図1図5を参照しながら説明する。
【0018】
[ロボットシステムの構成]
図1は、本実施の形態1に係るロボットシステムの概略構成を示すブロック図である。図2は、本実施の形態1に係るロボットシステムの概略構成を示す模式図である。
【0019】
図1及び図2に示すように、本実施の形態1に係るロボットシステム100は、スレーブアーム1、操作器2、出力装置3、制御装置4、及び記憶装置5を備えていて、制御装置4は、スレーブアーム1の自動運転中に、操作器2からスレーブアーム1の動作を修正する動作指令値が入力されても、スレーブアーム1が予め設定された所定の第1閾値以上の速度で動作している場合には、スレーブアーム1の動作の修正を抑制するように構成されている。
【0020】
ここで、本明細書においては、スレーブアーム1が、予め設定されたタスクプログラムに従って動作する制御モードを「自動運転モード」と称する。自動運転モードでは、従来のティーチングプレイバックロボットと同様に、操作者による操作器2の操作なしに、スレーブアーム1が所定の作業を自動的に行う。
【0021】
また、本明細書では、スレーブアーム1が、操作器2が受け付けた操作者の操作に基づいて動作する制御モードを「手動運転モード」と称する。なお、手動運転モードでは、操作器2から受け付けた操作指示に完全に従うように、スレーブアーム1を動作させてもよく、操作器2から受け付けた操作指示に対して、予め設定されているプログラムにより補正(例えば、手ブレ補正)をしながら、スレーブアーム1を動作させてもよい。
【0022】
さらに、本明細書では、予め設定されたタスクプログラムに従って動作しているスレーブアーム1を操作器2が受け付けた操作者の操作によって修正する制御モードを「修正自動運転モード」と称する。
【0023】
以下、本実施の形態1に係るロボットシステム100を構成する各機器について、詳細に説明する。
【0024】
スレーブアーム1は、作業空間内に設置され、複数の工程からなる一連の作業を行うロボットである。なお、複数の工程からなる一連の作業としては、製品に対する部品の組付、塗装等の作業が例示できる。
【0025】
本実施の形態1に係るスレーブアーム1は、ライン生産方式又はセル生産方式で、電気・電子部品等を組み立てて製品を生産する生産工場で利用され、この生産工場に設けられた作業台に沿って配置され、作業台上のワークに対して、移送、パーツの組み付け又は配置換え、姿勢変換等の作業のうち少なくとも1つを行うことができる多関節ロボットである。但し、スレーブアーム1の実施態様は上記に限定されず、水平多関節型・垂直多関節型を問わず多関節ロボットに広く適用することができる。
【0026】
ここで、図3を参照しながら、スレーブアーム1の具体的な構成について説明する。
【0027】
図3は、図1及び図2に示すスレーブアームの概略構成を示す模式図である。
【0028】
図3に示すように、スレーブアーム1は、複数のリンク(ここでは、第1リンク11a〜第6リンク11f)の連接体と、複数の関節(ここでは、第1関節JT1〜第6関節JT6)と、これらを支持する基台15と、を有する多関節ロボットアームである。
【0029】
第1関節JT1では、基台15と、第1リンク11aの基端部とが、鉛直方向に延びる軸回りに回転可能に連結されている。第2関節JT2では、第1リンク11aの先端部と、第2リンク11bの基端部とが、水平方向に延びる軸回りに回転可能に連結されている。第3関節JT3では、第2リンク11bの先端部と、第3リンク11cの基端部とが、水平方向に延びる軸回りに回転可能に連結されている。
【0030】
また、第4関節JT4では、第3リンク11cの先端部と、第4リンク11dの基端部とが、第4リンク11dの長手方向に延びる軸回りに回転可能に連結されている。第5関節JT5では、第4リンク11dの先端部と、第5リンク11eの基端部とが、第4リンク11dの長手方向と直交する軸回りに回転可能に連結されている。第6関節JT6では、第5リンク11eの先端部と第6リンク11fの基端部とが、捻れ回転可能に連結されている。
【0031】
そして、第6リンク11fの先端部には、メカニカルインターフェースが設けられている。このメカニカルインターフェースには、作業内容に対応したエンドエフェクタ12が着脱可能に装着される。
【0032】
また、第1関節JT1〜第6関節JT6には、それぞれ、各関節が連結する2つの部材を相対的に回転させるアクチュエータの一例としての駆動モータM1〜M6が設けられている。駆動モータM1〜M6は、例えば、制御装置4によってサーボ制御されるサーボモータであってもよい。また、第1関節JT1〜第6関節JT6には、それぞれ、駆動モータM1〜M6の回転位置を検出する回転センサE1〜E6(図5参照)と、駆動モータM1〜M6の回転を制御する電流を検出する電流センサC1〜C6(図5参照)と、が設けられている。回転センサE1〜E6は、例えば、エンコーダであってもよい。なお、上記の駆動モータM1〜M6、回転センサE1〜E6、及び電流センサC1〜C6の記載では、各関節JT1〜JT6に対応してアルファベットに添え字の1〜6が付されている。以下では、関節JT1〜JT6のうち任意の関節を示す場合には添え字を省いて「関節JT」と称し、駆動モータM、回転センサE、及び電流センサCについても同様とする。
【0033】
操作器2は、操作者からの操作指示を受け付ける装置である。また、操作器2は、スレーブアーム1を手動運転モード又は修正自動運転モードで動作させるときに、操作者の操作により、スレーブアーム1の位置情報、姿勢情報、移動方向、又は移動速度等の動作指令値を制御装置4に出力する。操作器2としては、例えば、マスターアーム、ジョイスティック、又はタブレット等を用いることができる。なお、操作器2には、作業の開始指示、手動運転による作業の完了通知等を入力する入力部、第2係数B(図5参照)を調整する調整器(図示せず)等が、別途、設けられていてもよい。調整器としては、例えば、ボリュームつまみ等が挙げられる。
【0034】
出力装置3は、例えば、モニタ等の表示装置、スピーカ等が挙げられる。例えば、出力装置3が表示装置で構成されている場合、制御装置4から送信された情報を文字、絵、画像、動画等の映像として、外部に表示(出力)する。また、出力装置3がスピーカで構成されている場合、制御装置4から送信された情報を音声情報として出力する。なお、出力装置3は、操作器2がタブレットで構成されている場合には、当該タブレットであってもよい。
【0035】
記憶装置5は、読み書き可能な記録媒体であり、タスクプログラム51とロボットシステム100の動作シーケンス情報52が記憶されている。なお、本実施の形態1に係るロボットシステム100では、記憶装置5は、制御装置4と別体に設けられているが、制御装置4と一体として設けられていてもよい。
【0036】
タスクプログラム51は、例えば、操作者がティーチングペンダント等を用いて、ティーチングすることにより作成され、スレーブアーム1の識別情報とタスクとに対応付けられて、記憶装置5に格納されている。なお、タスクプログラム51は、作業ごとの動作フローとして作成されてもよい。
【0037】
動作シーケンス情報52とは、作業空間内でスレーブアーム1によって実施される一連の作業工程を規定した動作シーケンスに関する情報である。動作シーケンス情報52では、作業工程の動作順と、スレーブアーム1の制御モードと、が対応付けられている。また、動作シーケンス情報52では、各作業工程に対し、スレーブアーム1にその作業を自動的に実行させるためのタスクプログラムが対応付けられている。なお、動作シーケンス情報52は、各作業工程に対し、スレーブアーム1にその作業を自動的に実行させるためのプログラムを含んでいてもよい。
【0038】
制御装置4は、スレーブアーム1の動作を制御するものであり、機能ブロックとして、受信部40、動作制御部41、修正自動運転手段42、及び出力制御部43を備えている。制御装置4は、例えば、マイクロコントローラ、MPU、PLC(Programmable Logic Controller)、論理回路等からなる演算部(図示せず)と、ROM又はRAM等からなるメモリ部(図示せず)と、により構成することができる。また、制御装置4が備える各機能ブロックは、制御装置4の演算部が、メモリ部又は記憶装置5に格納されているプログラムを読み出し実行することにより実現できる。
【0039】
なお、制御装置4は、単独の制御装置で構成される形態だけでなく、複数の制御装置が協働して、スレーブアーム1(ロボットシステム100)の制御を実行する制御装置群で構成される形態であっても構わない。
【0040】
受信部40は、制御装置4の外部から送信された入力信号を受信し、例えば、スレーブアーム1等に制御装置4から出力信号を送信するものである。受信部40によって受信する入力信号としては、例えば、操作器2から送信された信号、操作器2以外の図示されない操作指示部から送信された信号、又は後述するスレーブアーム1の回転センサEから送信されたスレーブアーム1の位置信号(位置情報)等が挙げられる。
【0041】
動作制御部41は、受信部40が入力信号として操作器2から操作指示を受け付けた場合、この操作指示をトリガとして一連の作業においてスレーブアーム1が実施する工程の運転モードを判定する。動作制御部41は、次にスレーブアーム1が実施する工程の運転モードの判定を記憶装置5に記憶された動作シーケンス情報52を参照して行うことができる。動作制御部41は、運転モードを判定すると、判定された運転モードでスレーブアーム1を動作させるように制御する。
【0042】
例えば、動作制御部41は、スレーブアーム1を自動運転モードで動作させると判定した場合には、タスクプログラム51により規定される動作、又は動作シーケンス情報52を読み出し、動作シーケンス情報52に含まれるプログラムにより規定された動作を実施するようにスレーブアーム1を制御する。
【0043】
また、動作制御部41は、スレーブアーム1を手動運転モードで動作させると判定した場合には、操作器2から受信部40が受信した操作指示に基づいて動作するようにスレーブアーム1を制御する。
【0044】
さらに、動作制御部41は、スレーブアーム1を修正自動運転モードで動作させると判定した場合には、タスクプログラム51により規定される動作を実施、又は動作シーケンス情報52を読み出し、動作シーケンス情報52に含まれるプログラムにより規定された動作を実施し、スレーブアーム1を自動運転モードにより動作中に、操作器2から入力信号として修正指示信号を受信部40が受信すると、スレーブアーム1の自動運転による動作を操作器2からの修正指示信号に従った動作に修正する。
【0045】
そして、動作制御部41は、操作器2から修正指示信号の出力が停止され、受信部40が当該修正指示信号の受信を停止した場合、又は、操作器2からスレーブアーム1の自動運転の再開を指示する信号を受信部40が受信した場合には、スレーブアーム1の自動運転を再開する。
【0046】
修正自動運転手段42は、スレーブアーム1の自動運転中に受信部40が修正指示信号(動作指令値;修正指令値)を受信した場合、スレーブアーム1の動作の修正を動作制御部41に指示する。なお、具体的なスレーブアーム1の動作の修正方法については、後述する。
【0047】
出力制御部43は、出力装置3を制御し、操作者等に通知する情報を映像情報、画像情報、又は音声情報等として出力する。具体的には、例えば、出力制御部43は、動作制御部41から出力されたスレーブアーム1の動作の修正が抑制されることを示す修正抑制情報を出力するように出力装置3を制御する。
【0048】
[ロボットシステムの動作及び作用効果]
次に、本実施の形態1に係るロボットシステム100の動作及び作用効果について、図1図5を参照しながら説明する。なお、操作者が操作器2を操作して、スレーブアーム1を動作させて、一連の作業を行う動作については、公知のロボットシステムと同様に実行されるため、その詳細な説明は省略する。また、以下の動作は、制御装置4の演算部が、制御装置4のメモリ部又は記憶装置5に格納されているプログラムを読み出すことにより実行される。
【0049】
図4は、本実施の形態1に係るロボットシステムの動作の一例を示すフローチャートである。
【0050】
図4に示すように、制御装置4の動作制御部41は、スレーブアーム1を自動運転モードで動作させているとき(ステップS101)に、操作器2から修正指示信号が受信部40に入力されたか否かを判定する(ステップS102)。
【0051】
制御装置4の動作制御部41は、操作器2から修正指示信号が受信部40に入力されていないと判定した場合(ステップS102でNo)には、本プログラムを終了する。なお、制御装置4は、本プログラムを終了した場合には、例えば、50msec後に再び、本プログラムを実行する。一方、制御装置4の動作制御部41は、操作器2から修正指示信号が受信部40に入力されていると判定した場合(ステップS102でYes)には、ステップS103に示す処理を実行する。
【0052】
ステップS103において、制御装置4の動作制御部41は、スレーブアーム1の動作速度が、予め設定されている第1閾値未満であるか否かを判定する。ここで、第1閾値は、予め実験等により設定されていて、スレーブアーム1を自動運転モードで動作中に操作器2により、スレーブアーム1の動作を修正すると、急激にスレーブアーム1の動作が修正されて、思わぬ方向にスレーブアーム1が動作するおそれがある速度である。
【0053】
第1閾値としては、例えば、スレーブアーム1の各関節における最高速度(°/秒)の25〜35%であってもよく、スレーブアーム1がワークを移動させるときにおけるスレーブアーム1の移動速度(エンドエフェクタ12又はワークの移動速度)の最高速度(mm/秒)の25〜35%であってもよい。また、スレーブアーム1がワークを直線上又は曲線上に移動させる場合、第1閾値としては、例えば、スレーブアーム1の移動速度(エンドエフェクタ12又はワークの移動速度)が、250〜350mm/秒であってもよい。
【0054】
制御装置4の動作制御部41は、スレーブアーム1の動作速度が、第1閾値以上である場合(ステップS103でNo;例えば、スレーブアーム1のエンドエフェクタ12が、図2に示す高速移動区間に位置する場合)には、出力制御部43を介して、出力装置3に修正抑制情報を出力させ(ステップS104)、自動運転モードを続行する(ステップS101)。なお、修正抑制情報の出力は、例えば、「スレーブアーム1の動作速度が大きすぎて、修正できません」等の文字情報をモニタ等に出力(表示)させてもよく、また当該文字情報を音声情報として、スピーカ等から出力させてもよい。
【0055】
一方、制御装置4の動作制御部41は、スレーブアーム1の動作速度が、第1閾値未満である場合(ステップS103でYes)には、ステップS102において、操作器2から入力された修正指示信号を基に、スレーブアーム1の動作修正を実行して(ステップS105)、本プログラムを終了する。
【0056】
次に、スレーブアーム1の動作修正を実行するとき(図4に示すステップS105)の信号の流れについて、図5を参照しながら説明する。
【0057】
図5は、図1に示す修正自動運転手段の制御系の一例を示すブロック図である。
【0058】
図5に示すように、修正自動運転手段42は、加算器42a、減算器42b,42e,42g、位置制御器42c、微分器42d、速度制御器42fを備えていて、タスクプログラム51から取得した自動動作情報に基づく指令値(動作指令値ΔP1)及び操作器2から入力された操作情報に基づく指令値(修正指令値ΔP2)により、スレーブアーム1の駆動モータMの回転位置を制御する。なお、動作指令値ΔP1及び修正指令値ΔP2は、ここでは、位置情報(位置座標情報)とする。
【0059】
加算器42aは、動作指令値ΔP1に、修正指令値ΔP2を加算することによって、修正された位置指令値を生成する。このとき、加算器42aは、下記式(1)に従って、位置指令値を生成する。
【0060】
ΔP0 = A×ΔP1 + B×ΔP2・・・式(1)
ここで、第1係数Aと第2係数Bは変数であり、一方の係数が増加すると、他方の係数が減少する関係にある。より詳細には、第1係数Aと第2係数Bは、第1係数Aと第2係数Bを積算した値が予め設定されている第1所定値となる係数であってもよく、第1係数Aと第2係数Bを和算した値が予め設定されている第2所定値となる係数であってもよい。なお、第1所定値、又は第2所定値は、1であってもよく、10であってもよく、100であってもよい。
【0061】
減算器42bは、修正された位置指令値から、回転センサEで検出された位置現在値を減算して、角度偏差を生成する。減算器42bは、生成した角度偏差を位置制御器42cに出力する。
【0062】
位置制御器42cは、予め定められた伝達関数、又は比例係数に基づいた演算処理により、減算器42bから入力された角度偏差から速度指令値を生成する。位置制御器42cは、生成した速度指令値を減算器42eに出力する。
【0063】
微分器42dは、回転センサEで検出された位置現在値情報を微分して、駆動モータMの回転角度の単位時間あたりの変化量、すなわち速度現在値を生成する。微分器42dは、生成した速度現在値を減算器42eに出力する。
【0064】
減算器42eは、位置制御器42cから入力された速度指令値から、微分器42dから入力された速度現在値を減算して、速度偏差を生成する。減算器42eは、生成した速度偏差を速度制御器42fに出力する。
【0065】
速度制御器42fは、予め定められた伝達関数、又は比例係数に基づいた演算処理により、減算器42eから入力された速度偏差からトルク指令値(電流指令値)を生成する。速度制御器42fは、生成したトルク指令値を減算器42gに出力する。
【0066】
減算器42gは、速度制御器42fから入力されたトルク指令値から、電流センサCで検出された電流現在値を減算して、電流偏差を生成する。減算器42gは、生成した電流偏差を駆動モータMに出力し、駆動モータMを駆動する。
【0067】
なお、第2係数Bは、上述したように、操作器2に設けられた調整器を操縦者が手動で調整することで、修正自動運転手段42に入力されてもよい。また、調整器として、例えば、作業対象物(ワークの取り付け対象の構造体など)から大きく離れたところでは、第2係数Bは0で、作業対象物に近づくにつれ、第2係数Bを徐々に大きくなるようにするプログラムが、予め記憶装置5に記憶されていてもよい。
【0068】
また、第2係数Bは、調整器から修正自動運転手段42にその値が入力されてから、所定時間かけて入力された値になる変数であってもよく、操作器2から修正自動運転手段42に修正指令値ΔP2が入力されてから、所定時間かけて予め設定された値になる変数であってもよい。所定時間としては、スレーブアーム1の急激な動作の修正を抑制する観点から、例えば、0.5秒以上であってもよく、1秒以上であってもよい。また、所定時間は、スレーブアーム1の修正動作が反映されていることを操作者が認知する観点から、2秒以内であってもよく、3秒以内であってもよく、5秒以内であってもよい。
【0069】
具体的には、例えば、第2係数Bは、調整器から修正自動運転手段42にその値が入力されてから、又は操作器2から修正自動運転手段42に修正指令値ΔP2が入力されてから経過した時間と、単位時間当たりの変化量ΔBと、の関係が、一次関数となる変数であってもよい。また、第2係数Bは、経過した時間と、単位時間当たりの変化量ΔBと、の関係が、二次関数、又は三次関数等の高次関数となる変数であってもよく、対数関数となる変数であってもよい。さらに、第2係数Bは、経過した時間と、単位時間当たりの変化量ΔBと、の関係が、階段状に増加する変数であってもよい。
【0070】
これにより、操作器2から修正自動運転手段42に修正指令値ΔP2が入力されたときに、急激にスレーブアーム1の動作が修正されて、思わぬ方向にスレーブアーム1が動作されることを抑制することができる。
【0071】
このようにして、修正自動運転手段42は、各関節に配置されている駆動モータMを作動させるための電流値(電流偏差)を算出して、当該電流値を動作制御部41がスレーブアーム1に出力する。
【0072】
これにより、スレーブアーム1では、第1関節JT1〜第6関節JT6の角度が目標の角度となるように、各関節に配置されている駆動モータMが回転する。このとき、各関節に配置されている回転センサEが、各関節の角度を検出して、検出した角度を動作制御部41にフィードバックする。そして、動作制御部41は、回転センサEから入力された各関節の角度から、スレーブアーム1の位置座標を算出する。
【0073】
なお、本実施の形態1においては、操作器2から修正自動運転手段42に修正指令値ΔP2として、位置座標情報が入力される形態を採用したがこれに限定されない。例えば、修正指令値ΔP2を速度指令値とする形態を採用してもよく、トルク指令値とする形態を採用してもよい。
【0074】
修正指令値ΔP2が速度指令値である場合には、減算器42eに、修正指令値ΔP2としての速度指令値に第2係数Bを積算した値(手動速度指令値)が入力される。また、減算器42eには、位置制御器42cが自動運転におけるロボットの動作指令(ΔP1;位置指令値)及び位置現在値に基づいて生成した速度指令値に第1係数Aを積算した値(補正速度指令値)が入力される。さらに、減算器42eには、微分器42dから、当該微分器42dが生成した速度現在値が入力される。
【0075】
そして、減算器42eでは、入力された手動速度指令値に補正速度指令値を加算し、かつ、速度現在値を減算した値から速度偏差を生成する。なお、減算器42eが速度偏差を生成した後の動作は、上記と同様に実行される。
【0076】
同様に、修正指令値ΔP2がトルク指令値である場合には、減算器42gに、修正指令値ΔP2としてのトルク指令値に第2係数Bを積算した値(手動トルク指令値)が入力される。また、減算器42gには、自動運転におけるロボットの動作指令(ΔP1;位置指令値)から、位置制御器42c及び減算器42eを介して、速度制御器42fに入力された速度偏差から、当該速度制御器42fが生成したトルク指令値に第1係数Aを積算した値(補正トルク指令値)が入力される。さらに、減算器42gには、電流センサCで検出された電流現在値が入力される。
【0077】
そして、減算器42gでは、入力された手動トルク指令値に補正トルク指令値を加算し、かつ、電流現在値を減算して、電流偏差を生成する。減算器42gは、生成した電流偏差を駆動モータMに送り、駆動モータMを駆動する。
【0078】
このように構成された、本実施の形態1に係るロボットシステム100では、制御装置4が、スレーブアーム1の自動運転中に、操作器2からスレーブアーム1の動作を修正する動作指令値が入力されても、スレーブアーム1が第1閾値以上の速度で動作している場合には、スレーブアーム1の動作の修正を抑制するように構成されている。
【0079】
これにより、スレーブアーム1の動作を修正することにより、急激にスレーブアーム1の動作が修正されて、思わぬ方向にスレーブアーム1が動作することを抑制することができる。
【0080】
また、本実施の形態1に係るロボットシステム100では、制御装置4が、スレーブアーム1の自動運転中に、スレーブアーム1が第1閾値以上の速度で動作している場合に、操作器2からスレーブアーム1の動作を修正する動作指令値が入力されると、出力装置3に修正抑制情報を出力させるように構成されている。
【0081】
これにより、操作者は、操作器2を操作したにもかかわらず、スレーブアーム1の動作が修正されない理由を理解することができる。
【0082】
(実施の形態2)
本実施の形態2に係るロボットシステムは、実施の形態1に係るロボットシステムにおいて、制御装置が、スレーブアームの自動運転中に、操作器からスレーブアームの動作を修正する動作指令値が入力され、スレーブアームが第1閾値以上の速度で動作している場合には、スレーブアームの動作速度を第1閾値未満になるようにスレーブアームを制御するように構成されている。
【0083】
また、本実施の形態2に係るロボットシステムでは、制御装置が、スレーブアームの自動運転中に、操作器からスレーブアームの動作を修正する動作指令値が入力されたときに、スレーブアームが第1閾値未満の速度で動作している場合には、スレーブアームの動作の修正を許可するように構成されていてもよい。
【0084】
以下、本実施の形態2に係るロボットシステムの一例について、図6を参照しながら説明する。なお、本実施の形態2に係るロボットシステムは、実施の形態1に係るロボットシステムと同様の構成であるため、その構成の詳細な説明は省略する。
【0085】
[ロボットシステムの動作及び作用効果]
図6は、本実施の形態2に係るロボットシステムの動作の一例を示すフローチャートである。
【0086】
図6に示すように、本実施の形態2に係るロボットシステム100の動作は、実施の形態1に係るロボットシステム100の動作と基本的な動作は同じであるが、ステップS104に代えて、ステップS104Aが実行される点が異なる。
【0087】
具体的には、制御装置4の動作制御部41は、スレーブアーム1の動作速度が、第1閾値以上である場合(ステップS103でNo)には、動作速度が第1閾値未満になるように、スレーブアーム1を制御する(ステップS104A)。
【0088】
そして、制御装置4の動作制御部41は、スレーブアーム1の動作速度が第1閾値未満になると、操作器2から入力された修正指示信号を基に、スレーブアーム1の動作修正を実行して(ステップS105)、本プログラムを終了する。
【0089】
なお、制御装置4の動作制御部41が、スレーブアーム1の動作速度を第1閾値未満になるように、スレーブアーム1を制御しているときに、制御装置4は、出力装置3に「スレーブアーム1の動作速度を低減中等」の文字情報を出力させてもよい。
【0090】
このように構成された、本実施の形態2に係るロボットシステム100であっても、実施の形態1に係るロボットシステム100と同様の作用効果を奏する。
【0091】
また、本実施の形態2に係るロボットシステム100では、制御装置4が、スレーブアーム1の自動運転中に、操作器2からスレーブアーム1の動作を修正する動作指令値が入力され、スレーブアーム1が第1閾値以上の速度で動作している場合には、スレーブアーム1の動作速度を第1閾値未満になるようにスレーブアーム1を制御する。そして、スレーブアーム1の動作速度が、第1閾値未満になると、制御装置4は、スレーブアーム1の動作の修正を許可する。
【0092】
これにより、操作者は、スレーブアーム1が第1閾値以上で動作している場合であっても、制御装置4が、スレーブアーム1の動作速度を第1閾値未満にすることで、スレーブアーム1の動作を修正することができる。
【0093】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良又は他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明のロボットシステム及びその運転方法は、ロボットを自動運転中に、その動作を修正するときに、急激にロボットの動作が修正されて、思わぬ方向にロボットが動作することを抑制できるため、産業ロボットの分野において有用である。
【符号の説明】
【0095】
1 スレーブアーム
2 操作器
3 出力装置
4 制御装置
5 記憶装置
11a 第1リンク
11b 第2リンク
11c 第3リンク
11d 第4リンク
11e 第5リンク
11f 第6リンク
12 エンドエフェクタ
15 基台
40 受信部
41 動作制御部
42 修正自動運転手段
42a 加算器
42b 減算器
42c 位置制御器
42d 微分器
42e 減算器
42f 制御器
42g 減算器
43 出力制御部
51 タスクプログラム
52 動作シーケンス情報
100 ロボットシステム
図1
図2
図3
図4
図5
図6