【実施例】
【0124】
(実施例1)
微小血管組織の調製および特徴付け
この研究では、微小血管組織を異なるプロセスによって調製し、次いで、アッセイする。簡単に述べると、少なくとも5〜10lbの皮下脂肪を臓器ドナーから得、以下の通り処理する:組織を細かく切る;それを酵素により解離させる;希釈し(クエンチなし)、回転させ、デカントし、次いで、細胞ペレットを洗浄する;凍結乾燥緩衝液中に再懸濁させる;そして、凍結乾燥する。処理に使用する基本条件は以下の通りである:脂肪組織を組織ドナーから外科的に回収する。はさみを用いて組織を細かく切り、0.2U/mlのCIzyme AS(Vitacyte、Indianapolis、IN)を伴うPBSに、37℃で60分穏やかに撹拌しながら懸濁させ、次いで、3回洗浄し、M3D中に1ml当たり細胞200万個で再懸濁させる。細胞懸濁液を凍結乾燥する直前まで室温で保持し、凍結乾燥する直前に、細胞をEZ−CPZ(商標)凍結保存培地(Incell
Corp.、San Antonio、TX)を用いて50:50に希釈し、バイアルに入れ、冷却するために凍結乾燥器トレーにローディングする。試料を、プロセスの間とプロセスの最後の両方でアッセイする。
【0125】
この研究では10種の処理方法を実施する。これらを表1において「A」〜「J」と称する。各処理方法を分析するために使用するアッセイ方法を表1に列挙し、1、2、3、4、5と称し、表2で詳述する。
【0126】
【表1】
【0127】
【表2】
【0128】
この研究のためにいくつかのタスクを実施する。これらをA〜Dと称し、さらなる詳細を以下に示し、
図1において概説する。タスクで使用する特定の実験室アッセイ方法(M)をM1、M2、M3、M4およびM5と称する(表2)。
【0129】
タスクA.計画および設定
材料を注文し、調整し、設定し、試験する。
【0130】
タスクB.供給源の材料および一般的な手順
脂肪組織を臓器ドナーから得る。皮下脂肪を腹部、大腿および臀部から取得する。5〜10ポンドの脂肪を収集し、ZTM(商標)transport medium(Incell Corp.、San Antonio、TX)に入れる。
【0131】
組織を収集し、最初に、死亡してから12時間以内に種々のステップおよび実験室的方法によって処理する(表1および2;
図1)。室温で12時間、24時間および48時間保管した後、基本条件を使用して10gの一定分量を処理する。組織を細かく切るための肉挽き器法を使用して>5+ポンドを処理し、10gの一定分量を、ZSolM(商標)中4×Blendzyme I(Vitacyte)酵素濃度を用いて、ならびに4×酵素濃度およびステップEのZSolM(商標)の消化体積の1/4を用いて消化する。試料の大部分を標準の酵素濃度および方法で消化する。
【0132】
消化後、試料をZSolF(商標)中ですすぎ、遠心分離し、デカントし、次いで、さらに2回ZSolF(商標)中で回転させて洗浄する。細胞を、凍結乾燥溶液バルク生成物としてEZ−CPZ(商標)中1:1細胞懸濁液に1ml当たり細胞10
6個で再懸濁し、1mLの一定体積として凍結乾燥する(ステップG)。凍結乾燥したバイアルをガンマ線照射およびEビーム照射に供する(ステップH、I、J)。最終生成物の全てを保管し、代表的な試料を試験し、選択したサブセットをその後の動物試験に使用する。
【0133】
タスクC.アッセイ
この研究において使用する様々な種類のアッセイ(M1〜M5)(表2)を以下に簡単に要約する。
【0134】
M1:脂肪組織を収集する前には行わなかった検査を含めた、感染症についてのドナーのスクリーニング。標準の評価に従ってドナーのスクリーニングおよび組織調達に関する同意を行って、いかなる感染症も最小限にするまたは排除する。実際の追加的な試験および付随するコストは個々の場合に応じて実施する。バイオバーデンアッセイを実施する。
【0135】
M2:細胞数および生存能力について、細胞計数を、血球計(光学顕微鏡)およびDAPI核(蛍光顕微鏡)染色が伴うトリパンブルーを使用して実施する。細胞数を2連の読み取りとして記録する。
【0136】
M3:選択されたバイオマーカー:CD33、CD34、CD44、CD45、およびIV型コラーゲンについての免疫表現型検査。懸濁細胞の即時イムノアッセイを実施する。細胞をLabTeksから生じさせ、次いで染色し、代表的な写真を撮る。
【0137】
M4:袋N=2中の受け取った組織の輸送溶液からの試料に対してバイオバーデンアッセイを行う(そして処理後{最後の}すすぎと比較する。EndoSafe PTS Assay(Charles River)を使用して内毒素試験を実施する。標準のUSP培養物微生物学的試験を実施する。場合により、ATP急速試験を実施する。
【0138】
M5:凍結乾燥後、および種々の処理および放射線照射プロトコール後の単離された細胞の試料に対して機能に関するバイオアッセイを行う。ADSC、内皮細胞、線維芽細胞について、トランスウェルを通過する細胞遊走アッセイを実施する。マトリゲルアッセイを実施して、種々の希釈度、処理および/または放射線照射の段階で、試料によって誘導される微小血管形成を評価する。
【0139】
タスクD.データ解析
観察に基づく読み取りおよびデータを解析のためにエクセルまたはプリズムに移行する。比較分析のために、各TPSおよび各細胞型についての試料反復の平均+SD値を表にし、かつ/またはプロットする。
【0140】
実施した予備実験から得られた結果により、処理条件A、BおよびDの間に差異はほとんど示されず、3.5kgの脂肪組織から凍結乾燥された生成物がバイアル当たり細胞10
6個でバイアル1560個生成された。
【0141】
(実施例2)
ラットにおけるアキレス腱傷害の処置
この研究により、本発明の微小血管組織調製物を使用して、アキレス腱傷害を修復することができることが実証される。
【0142】
雄のスプラーグドーリーラット(1日目に8週齢であり、1日目に約250gである)32匹をHarlanから購入し、少なくとも3日間、馴化させる。ラットを表3の研究デザインに要約されている通り処置する。
【0143】
【表3】
【0144】
研究はおよそ10日間の動物の生涯にわたって行う。動物は−3日目に到着し、−3日目から1日目まで馴化させ、1日目に外科手術に供し、7日目に終了する予定である。
【0145】
試験物:
コラーゲンでコーティングしたバイオ繊維足場
処理された微小血管組織調製物AおよびBを滅菌WFIで再構成し、足場に吸収させる。処理された微小血管組織の組成物Aは滅菌せず、処理された微小血管組織の組成物BはEビームで滅菌する。
【0146】
麻酔:1日目の外科手術の前に、動物を計量し、塩酸ケタミン100mg/mL(40〜90mg/kg)およびキシラジン100mg/mL(5〜10mg/kg)を筋肉内注射して麻酔する。
【0147】
外科用調製物:試験開始の1日前に各動物の右後肢を剃毛する。1日目に、ベタジンおよびアルコールスクラブを用いて皮膚を外科的に調製し、無菌的外科的技法を使用して滅菌した布で包む。
【0148】
外科手技:1日目に、植え込む直前に試験物を調製する。グラフトにウィッキング作用によって細胞をローディングする。固定のために2つの5−0ポリプロピレン縫合糸をグラフトに取り付ける。グラフトを使用するまで生理食塩水が入ったペトリ皿の中に取りのけて、蓋をしておく。
【0149】
右後肢の尾側の(遠位の)脛骨から中脛骨のレベルまで真っ直ぐな外側の皮膚切開を生じさせる。この方法を使用して、皮膚を切り、後ろに引いてアキレス腱を踵骨からその筋腱移行部まで外側に露出させる。さらに切ることを用いてアキレス腱を露出させ、単離する。露出したアキレス腱を、有鉤ピンセットを用いてわずかにすり減らした後、グラフト試験物を取り付ける。グラフトを固定するために、踵骨を通って外側から内側への方向に単一の0.5mmドリル穴を生じさせて縫合糸を継代させる。インプラント領域に生理食塩水を灌注していかなるデブリも除去し、ふき取り乾燥させた。
【0150】
グラフトを保持培地から取り出し、一端を踵骨に隣接させてアキレス腱の前側の表面に沿って挿入する。頭方グラフト固定用縫合糸を、改変Mason−Allen縫合パターンを使用して腓腹筋に筋腱移行部に対して頭方に取り付ける。次いで、尾側グラフト固定用縫合糸を踵骨のドリル穴に通し、足で中間位置に引っ張り、結ぶ。全ての固定用縫合糸について6つの縫合糸の結び目を結ぶ。適切な縫合材料を使用して切開を層状に閉じる。
【0151】
鎮痛:1日目に、麻酔から回復したら動物にブプレノルフィン(0.1〜0.5mg/kg)を皮下投与する。疼痛に対して必要に応じて自由裁量で追加的なブプレノルフィンを投与することができる。
【0152】
体重測定:動物を、ランダム化時、1日目の外科手術の前、および研究終了まで週に1回、終結前を含め、計量する(約9つの時点)。
【0153】
健康の観察:研究期間中、1日1回動物をモニターする。(約7つの時点)
【0154】
切開部位領域の観察:切開部位の観察を2日目から7日目まで毎日記録する。
【0155】
温度/湿度の記録:毎日の室温および湿度の測定値を記録する。
【0156】
終結および組織採取:7日目に、動物を安楽死させ、植え込んだ試験物部位または対照物部位および周囲の腱組織を切除することにより各動物から採取する。採取した試料は全て、足場の中間の線に沿って半分に分割して腱の半分が各半分に含まれるようにする。採取した組織の半分は、常套的な病理組織学的評価および免疫組織化学的評価のために10%中性緩衝ホルマリン中に保管する。残りの半分は、遺伝子発現解析のために、腱および過成長した軟部組織をメスの刃で取り除き、内部成長した組織を伴う足場を液体窒素中≦−70℃でスナップ凍結する。
【0157】
ランダムに選択した2匹の動物/群の腱の切片(反対側のアキレスから取得したもの)、皮膚(毛の少ない領域から取得したもの)および肝臓も染色対照として採取し、免疫組織化学的評価のために10%中性緩衝ホルマリン中に保管する。各対照組織の一部をPCR対照のために液体窒素中にスナップ凍結する。(3つの対照組織全てを一緒にホルマリン中に保管することができ、また凍結した部分も同様に一緒に保管することができる)。
【0158】
組織を組織学的分析(H&E、マッソントリクローム)、免疫組織化学的分析(SMAD8およびテネイシン)、ならびにPCR分析(SMAD8、テネイシン、テノモジュリン(tenomodulin)、およびスクレラキシス)に供す。
【0159】
(実施例3)
マウスにおける虚血の処置
この研究により、虚血肢のマウスモデルにおける本発明の処理された微小血管組織の組成物の効果が実証される。虚血肢のマウスモデルを以前に記載されている通り創出し(Jang Jら、Circulation 1999年;Huang Nら、JOVE 2009年)、それを使用して、後肢虚血の誘導後の血管新生の促進における細胞調製物の効果を評価する。
【0160】
14〜16週齢のSCIDマウスに後肢虚血を外科的に誘導する。外科手術の直後に、以下の表4において詳述されている通り、処理された微小血管組織の組成物またはビヒクル対照を当該動物に投与する。簡単に述べると、後肢虚血の誘導後0日目に、3つの試験細胞物(それぞれ細胞0.5×10
6個)またはビヒクル対照を腓腹筋に筋肉内注射する。3つの試験物は、処理された微小血管組織の組成物(試験細胞−I)、Eビームによって滅菌した処理された微小血管組織の組成物(試験細胞−II)、およびガンマ線によって滅菌した処理された微小血管組織の組成物(試験細胞−III)を含む。肢灌流の改善を3〜4日毎に合計14日間にわたって評価する。14日後に、動物を安楽死させる。虚血させた腓腹筋と反対側の腓腹筋の両方を外植し、組織学的分析に供す。
【0161】
【表4】
【0162】
エンドポイント試験
血流を0日目、3日目、7日目、11日目および14日目にLaser Doppler Imagingによって評価する。
【0163】
外植研究のために14日目に動物を屠殺し、後肢組織を収集し、処理し、保管する。
【0164】
(実施例4)
SCIDマウスにおける血管形成
これらの研究では、本発明の微小血管組織調製物のin vivoにおいて血管構造を形成する能力を実証するためにマトリゲルプラグアッセイを利用する。マトリゲルプラグアッセイは、in vivoにおける真の血管形成の決定的なアッセイである。このアッセイは、マトリゲルを用いて治療用細胞を腹部領域の皮下に植え込むことを伴う。2週間の過程中、マトリゲル中の細胞は新生血管を形成するのに好都合な環境にあり、そのいくつかが宿主血管と吻合し得る。
【0165】
このアッセイでは、0.5×10
6個の細胞を、200ng/mlの塩基性線維芽細胞増殖因子を補充したマトリゲル0.5mlに包埋し、次いで、SCIDマウスに皮下注射する。各動物に2つのプラグを植え込む。2週間後、血管形成に関する組織学的分析のためにプラグを外植する。ヒト血管をネイティブなマウス血管と区別するために、内皮細胞(例えば、CD31)を標的とするヒト特異的抗体を使用してヒト特異的血管を同定する。血液要素を用いて実施される管腔構造によって組織学的に実証された通り、ヒト特異的血管が存在することにより、内皮細胞が機能的であることが実証される。同様に、マウス特異的内皮細胞抗体を使用して、マウス特異的血管を同定することができる。傍分泌血管新生因子を分泌する治療用細胞の能力により、マウス血管形成の相対的な増強がもたらされる。
【0166】
以下の表5において詳述されている通り、14〜16週齢のSCIDマウスに、本発明の微小血管組織調製物またはビヒクル対照を含有するマトリゲルプラグを植え込む。
【0167】
【表5】
【0168】
3つの試験物は、処理された微小血管組織の組成物(試験細胞−I)、Eビームによって滅菌した処理された微小血管組織の組成物(試験細胞−II)、およびガンマ線によって滅菌した処理された微小血管組織の組成物(試験細胞−III)を含む。
【0169】
(実施例5)
ラットにおける関節リウマチの処置
この研究では、ラットにおける7日間で確立されたII型コラーゲン関節炎に付随する炎症、軟骨破壊および骨吸収の阻害における本発明の微小血管組織調製物の有効性が実証される。
【0170】
試験系
動物の数:44
種/系統または品種:Lewisラット
ベンダー:Charles River
到着時の年齢/体重:125〜150g
性別:雌
研究開始時の年齢範囲:最初の免疫時に少なくとも125グラム。
馴化:BBPに到着した後4〜8日間、馴化させる。
収容:ケージ当たり動物3〜5匹
【0171】
材料
試験物(処理された微小血管組織の組成物の調製物)および適切なビヒクル。トリアムシノロンおよび希釈用の滅菌生理食塩水(BBP)、ウシII型コラーゲン(Elastin Products)、フロイント不完全アジュバント(Difco)。
【0172】
一般的な研究デザイン
ラットをイソフルランで麻酔し、フロイント不完全アジュバント注射液ID/SC中ウシII型コラーゲン300μlを、背中の末端部に拡散させて、部位当たり100μlを0日目、および再度6日目に与える。
【0173】
両後足(膝の疾患は一般に重症度が足首と同様であるが、確実にカリパスで測定することが難しく、したがって、足首の測定値が、疾患の発症を決定するための膝の代理になる)における疾患が明白になる関節炎の1日目(研究10日目)に各群へのランダム化を行う。これが関節炎の1日目になる。関節炎を有する動物を、各群についておおよその平均足首カリパス測定値を有する処置群にランダム化する。
【0174】
関節炎の1日目のみに処置(IA、両膝に両側性)を行う。足首は注射するには小さすぎるので、膝を処置する。処置の全身性の効果を足首のカリパス測定値によってモニターし、処置の局部的な効果を膝の病理組織検査によって決定する。足首のカリパス測定値は0日目(ベースライン)から7日目まで毎日取得する。ベースラインの足首のカリパス測定値を0日目に片方の足首を使用してインチの1000分の1に丸めた値を用いて取得する。測定値を、様々な体重に基づくラットについての歴史的な値と比較することにより、臨床的に正常である(0.260〜0.264in)ことを確認する。次いで、ベースラインの測定値を両足首に適用し、これらの値は、足首が全ての足首骨の良好な定義を伴って臨床的に正常であり、かつ炎症の証拠がない限りは、当該動物に残る。
【0175】
【表6】
【0176】
3つの試験物は、処理された微小血管組織の組成物(TX−I)、Eビームによって滅菌した処理された微小血管組織の組成物(TX−II)、およびガンマ線によって滅菌した処理された微小血管組織の組成物(TX−III)を含む。
【0177】
疾患の誘導
馴化させた動物をイソフルランで麻酔し、コラーゲン注射する(D0)。6日目に、その動物を2回目のコラーゲン注射のために再度麻酔する。コラーゲンは、0.01Nの酢酸中4mg/ml溶液を用意することによって調製する。等体積のコラーゲンとフロイント不完全アジュバントを、手で混合することにより、この材料のビーズの形態が水に入れた際に保持されるまで乳化させる。各動物に対して毎回300μlの混合物を背中の3箇所の皮下部位にわたって拡散させる(部位当たり100μl)。
【0178】
材料
名称(ベンダー):II型コラーゲン(Elastin Products)
意味:ウシII型コラーゲン
特性:可溶性、新生仔ウシ関節由来
保管条件:2〜8℃
純度:>99.6%
名称(ベンダー):フロイント不完全アジュバント(Difco)
意味:不完全アジュバント
保管条件:2〜8℃
【0179】
試験物およびビヒクル
試験物ビヒクル:注射日に調製した幹細胞調製物、トリアムシノロン(Vetalog、Ft.Dodge)。
【0180】
試験物および製剤:生理学的ビヒクル中、膝関節当たり40μlを注射するために適した濃度の幹細胞調製物。トリアムシノロン2mg/mlを生理食塩水中に希釈する。
【0181】
【表7】
生存相の実行
関節炎の重症度による各群へのランダム化を関節炎1日目(研究10日目)に行う。ランダム化後に処置(両側性IA、40μl/関節)を開始する(1日目)。体重および足首のカリパス測定値/スコアを毎日取得する。
【0182】
人道的実施:20%超の体重減少(1週間以内に)を含め、Bolder BioPATH IACUC Program of Veterinary Careに従って病的状態の徴候を示す動物を研究から除き、CO
2吸入によって人間的に屠殺する。
【0183】
【表8】
【0184】
剖検
関節炎7日目に全採血によって動物を屠殺する。
【0185】
左右両後足の重量、ならびに肝臓、脾臓および胸腺の重量を含めた剖検データを収集する。
【0186】
採取する剖検試料は、一定分量の終末血清、および左右の後足および膝を含む。
【0187】
関節/病理組織学的スコア化の処理
固定液中に1〜2日、次いで脱灰器内に4〜5日置いた後、足首関節を縦方向に半分に切断し、膝を前頭面で半分に切断し、処理し、包埋し、切片作製し、トルイジンブルーで染色する。
【0188】
II型コラーゲン関節炎のラット関節に関する病理組織学的スコア化方法
コラーゲン関節炎の足首および膝に、以下の基準に従って炎症、パンヌス形成および骨吸収に関して0〜5のスコアをつける:
膝および/または足首の炎症
0=正常
0.5=最小の限局性炎症
1=滑膜/関節周囲の組織への炎症細胞の最小の浸潤
2=軽度の浸潤
3=中程度の浮腫が伴う中程度の浸潤
4=顕著な浮腫が伴う顕著な浸潤
5=重度の浮腫が伴う重度の浸潤
【0189】
II型コラーゲン関節炎のマウスおよびラットにおける炎症性浸潤は、好中球およびマクロファージからなり、病変が急性〜亜急性相にある場合にはリンパ球はより少数である。組織浮腫および関節腔内への好中球の滲出が急性〜亜急性相では一般的である。炎症が慢性に進行するにつれ、滑膜および関節周囲の組織において、単核炎症細胞(単球、リンパ球)が優勢になり、また、線維芽細胞の増殖が多くの場合には異染色性マトリックスの沈着と共に起こる。関節腔内への滲出はあまり一般的でない。注釈部分に示されていなければ、炎症は急性〜亜急性型である。
【0190】
足首パンヌス
0=正常
0.5=軟骨および軟骨下骨へのパンヌスの最小の浸潤、辺縁帯およびほんのわずかな関節のみが影響を受けている。
1=軟骨および軟骨下骨へのパンヌスの最小の浸潤、辺縁帯が主に影響を受けている。
2=軽度の浸潤(辺縁帯において脛骨または足根骨の<1/4)
3=中程度の浸潤(辺縁帯において脛骨の1/4〜1/3またはわずかな足根骨が影響を受けている)
4=顕著な浸潤(辺縁帯において脛骨または足根骨の1/2〜3/4が影響を受けている)
5=重度の浸潤(辺縁帯において脛骨または足根骨の>3/4が影響を受けている、構造全体の重度の歪み)
【0191】
膝パンヌス
0=正常
0.5=軟骨および軟骨下骨へのパンヌスの最小の浸潤、辺縁帯およびほんのわずかな関節のみが影響を受けている。
1=軟骨および軟骨下骨へのパンヌスの最小の浸潤、軟骨表面または軟骨下骨のおよそ1〜10%が影響を受けている。
2=軽度の浸潤(脛骨または大腿骨の表面または軟骨下領域の1/4に至るまでにわたって進展している)、軟骨表面または軟骨下骨のおよそ11〜25%が影響を受けている
3=中程度の浸潤(脛骨または大腿骨の表面または軟骨下領域の>1/4であるが<1/2にわたって進展している)、軟骨表面または軟骨下骨のおよそ26〜50%が影響を受けている
4=顕著な浸潤(脛骨または大腿の表面の1/2〜3/4にわたって進展している)、軟骨表面または軟骨下骨のおよそ51〜75%が影響を受けている
5=重度の浸潤、軟骨表面または軟骨下骨のおよそ76〜100%が影響を受けている
【0192】
足首軟骨損傷(わずかな足根骨を重視)
0=正常
0.5=T blue染色の最小の減少、辺縁帯のみが影響を受けており、ほんのわずかな関節が影響を受けている
1=トルイジンブルー染色の最小〜軽度の減少、明白な軟骨細胞の減少またはコラーゲンの破壊は伴わない
2=トルイジンブルー染色の軽度の減少、限局性の軽度(表在性)の軟骨細胞の減少および/またはコラーゲンの破壊が伴う
3=トルイジンブルー染色の中程度の減少、多巣性の中程度(中央の帯域までの深さ)の軟骨細胞の減少および/またはコラーゲンの破壊が伴う、よりわずかな足根骨が1/2〜3/4の深さに影響を受けており、極めて少ない領域の全層の減少が伴う
4=トルイジンブルー染色の顕著な減少、多巣性の顕著な(深部の帯域までの深さの)軟骨細胞の減少および/またはコラーゲンの破壊が伴う、1または2のわずかな足根骨表面が軟骨の全層の減少を有する
5=トルイジンブルー染色の重度の広範性の減少、多巣性の重度の(石灰化線までの深さの)軟骨細胞の減少および/またはコラーゲンの破壊、2を超える軟骨表面が影響を受けている
【0193】
膝軟骨損傷
0=正常
0.5=T blue染色の最小の減少、辺縁帯のみが影響を受けている
1=トルイジンブルー染色の最小〜軽度の減少、明白な軟骨細胞の減少またはコラーゲンの破壊は伴わない
2=トルイジンブルー染色の軽度の減少、限局性の軽度(表在性)の軟骨細胞の減少および/またはコラーゲンの破壊が伴う、軟骨の50%の深さが影響を受けているいくつかの小さな領域があり得る
3=トルイジンブルー染色の中程度の減少、多巣性〜広範性の中程度(中央の帯域までの深さ)の軟骨細胞の減少および/またはコラーゲンの破壊を伴う、1つの表面の全幅の1/4未満および全ての表面の全幅の25%以下が全層の減少の影響を受けている1〜2の小さな領域があり得る
4=トルイジンブルー染色の顕著な減少、多巣性〜広範性の顕著な(深部の帯域までの深さの)軟骨細胞の減少および/もしくはコラーゲンの破壊、または1つの表面がほぼ完全に減少しており、他の表面は部分的に減少しており、総合した全ての表面の幅の50%未満が完全に全体的に減少している
5=トルイジンブルー染色の重度の広範性の減少、大腿骨および/または脛骨の両方に多巣性の重度の(石灰化線までの深さの)軟骨細胞の減少および/またはコラーゲンの破壊、総合した全ての表面の幅の50%超が完全に全体的に減少している
【0194】
足首の骨吸収
0=正常
0.5=最小の吸収、辺縁帯のみが影響を受けており、ほんのわずかな関節が影響を受けている
1=小さな領域の吸収、低い拡大率では容易に明らかにならない、極めて少ない破骨細胞
2=軽度=より多くの領域の吸収、低い拡大率では容易に明らかにならない、より多くの破骨細胞、辺縁帯において脛骨または足根骨の<1/4が吸収されている
3=中程度=髄質骨梁骨および皮質骨の明白な吸収、皮質における全層欠損は伴わない、いくつかの髄質骨梁の減少、低い拡大率で明らかな病変、より多くの破骨細胞、辺縁帯において脛骨または足根骨の1/4〜1/3が影響を受けている
4=顕著=皮質骨における全層欠損、多くの場合、残りの皮質表面のプロファイルの歪みが伴う、髄骨の顕著な減少、多数の破骨細胞、辺縁帯において脛骨または足根骨の1/2〜3/4が影響を受けている
5=重度=皮質骨における全層欠損、多くの場合、残りの皮質表面のプロファイルの歪みが伴う、髄骨の顕著な減少、多数の破骨細胞、辺縁帯において脛骨または足根骨の>3/4が影響を受けている、構造全体の重度の歪み
【0195】
膝の骨吸収
0=正常
0.5=最小の吸収、辺縁帯のみが影響を受けている
1=最小=小さな領域の吸収、低い拡大率では容易に明らかにならない、軟骨下骨の全関節幅のおよそ1〜10%が影響を受けている
2=軽度=より多くの領域の吸収、軟骨下骨の明確な減少、軟骨下骨の全関節幅のおよそ11〜25%が影響を受けている
3=中程度=軟骨下骨の明白な吸収、軟骨下骨の全関節幅のおよそ26〜50%が影響を受けている
4=顕著=軟骨下骨の明白な吸収、軟骨下骨の全関節幅のおよそ51〜75%が影響を受けている
5=重度=破壊に起因する全関節の歪み、軟骨下骨の全関節幅のおよそ76〜100%が影響を受けている
【0196】
関節周囲のマトリックス沈着(任意の処置群において疾患対照と比較して増加が見られる場合にのみスコア化する)
0=正常
1=かすかな、多巣性の異染色性染色、関節周囲の組織の過剰な増大なし
2=濃い、広範性の異染色性染色、関節周囲の組織の過剰な増大なし
3=濃い、広範性の異染色性染色、関節周囲の組織の軽度の増大
4=濃い、広範性の異染色性染色、関節周囲の組織の中程度の増大
5=濃い、広範性の異染色性染色、関節周囲の組織の重度の増大
【0197】
統計解析
臨床データ
スチューデントのt検定またはマン・ホイットニーのU検定(ノンパラメトリック)を使用してデータを解析する。該当する場合には、一元配置分散分析(一元配置ANOVA)またはクラスカル・ワリス検定(ノンパラメトリック)を適切な多重比較事後検定と一緒に使用して、群全てにわたってデータをさらに解析する。示されていなければ、統計解析は未加工の(変換していない)データのみに対して実施する。統計的検定により、データの正常性および分散の均一性に関するある特定の仮定がなされ、検定によりこれらの仮定に侵害が生じた場合にはさらなる解析が必要になり得る。全ての検定についての有意性をp≦0.05に設定する。
【0198】
足の重量のパーセント阻害およびAUCを、次式を使用して算出する:
%阻害=A−B/A×100
A=疾患対照の平均−正常の平均
B=処置の平均−正常の平均
【0199】
(実施例6)
ヤギにおける骨の間隙、軟骨欠損および半月板病変の処置
この研究では、骨の間隙、軟骨欠損および半月板病変の処置における本発明の微小血管組織調製物の効果が実証される。この研究では、各動物について、右後膝関節を手術し、3つの異なる別々の外科的欠損を創出する。試験した各右大腿骨には、大腿骨外側上顆領域に直径8mm、深さ20mmまでの骨欠損を1つ生じさせ、滑車溝に4×7mmの長方形、深さ2mmまでの軟骨欠損を1つ創出し、内側半月の白色−白色域(white−white zone)に長さ7mm、幅1〜2mmまでの全層半月板欠損を1つ創出する。動物3匹の処置群の各欠損は微小血管組織調製物で処置し、一方、対照群の欠損には足場のみを充填する。8週間の時点でヤギを評価して、種々の欠損部位における修復された組織を評価し、特徴付ける。処置された欠損は全体の外観および組織学的外観が対照と比較して優れることが予想される。
【0200】
ヤギを選択したのは、相対的な後膝関節のサイズが大きく、取扱いが容易であり、他の軟骨、半月板および骨の修復の研究において使用されており、応答がヒトにおいて見られる応答と類似しているからである。種々の種のヤギが、それらの関節サイズが大きいこと、半月板修復生理機能が類似していること、膝関節(後膝関節)の軟骨の厚さが1.5〜2mmであり、ウマおよびヒトと類似していること、ならびにヒトと同様の海綿状骨および皮質骨を有する(二次骨単位)ことに起因して、軟骨研究のために使用されている。骨、軟骨および半月板修復プロセスは、in vitroの環境では模倣することができない非常に複雑なプロセスである。関節、特に傷害を受けた関節の生理機能は非常に複雑であり、実験室では再現することができないので、動物モデルが必要である。この研究において使用する動物は表9に要約されている。
【0201】
【表9】
【0202】
右大腿骨の外側上顆領域に単皮質上顆(unicortical epicondylar)の直径8mm、深さ20mmまでの欠損を1つ創出し、右大腿骨の外側滑車溝に4×7mm、深さおよそ2mmまでの長方形の欠損を1つ創出し、右内側半月に長さおよそ7mm、1〜2mmの幅の全層欠損を1つ創出する。各膝を、引き出し、可動域(角度計)、腫脹、温度、捻髪音、膝蓋骨トラッキング、および外反/内反について物理的に検査する。クロロヘキシジン、その後70%アルコール、その後のベタジンの塗布を伴う標準の外科手術前洗浄を実施する。外科的手法は、右大腿骨の末端3分の1から脛骨プラトーのレベルまで曲線状の内側皮膚切開を行うことからなる。
【0203】
内側側副靭帯を同定し、焼灼を用いて骨−靭帯接合フットプリントの概略を作成する。フットプリントの中央に、2.8mmのドリルビットおよびタップを使用して靭帯を再接合するためのねじ穴を創出する。振動鋸を使用して内側側副靭帯の接合フットプリントを切断し、それにより、それが脛骨に反映されることを可能にする。関節包を開き、膝を屈曲させ、外側に回転させて内側半月を露出させる。プラスチックの保護用つまみを内側半月の下に置き、特別に設計された卵形の穿孔器を使用して、半月板の白色−白色域に全層欠損を作出する。次いで、欠損を、足場または足場+化合物のいずれかを用いて処置する。膝を真っ直ぐにし、ねじおよび座金を用いて内側側副靭帯を再接合させる。
【0204】
次いで、膝を屈曲させ、外側滑車溝の中間点を同定する。軟骨欠損のために穴を開ける点は、外側滑車溝の近位縁から20mm遠位と定義される。直径6mmの穿孔器を用いて軟骨にしるしをつけ、専門の計器を使用して直径6mm、深さおよそ2mmまでの欠損を軟骨表面に作出する。次いで、この欠損を、足場または足場+化合物のいずれかを用いて処置する。
【0205】
膝をさらに屈曲させ、カラー付きの直径3mmのビットを使用して、外側大腿顆の上顆領域に20mmの深さまで予備的な穴を開ける。ドリルビットを関節の線に対して垂直かつ前側表面に対して並行になるように調整する。次いで、この予備的な穴を直径8mmまで広げる。骨欠損を洗い流し、次いで、足場または足場+化合物のいずれかを用いて処置する。
【0206】
深層および皮膚縫合用の1−0Vicrylを使用して外科的切開を3層に閉じた後、改変トーマス副子を脚に適用して体重負荷および動きを制限する。ガラス繊維製ギプスおよび副子は最低でも手術後14+2日間つけたままにする。この期間中、動物を小さなパドック内で維持する。
【0207】
【表10】
【0208】
手術後84+2日目に、ステージIII麻酔の下で塩化カリウムIVを用いて動物を安楽死させる。安楽死させた後、後膝関節を肉眼で評価し、滑液を色および粘性について肉眼で評価し、表12に記載の通り試料を採取する。関節を開き、撮影し、軟骨部位の表面を表13に示されている通りスコア化する。欠損部位の反対側の関節表面をあらゆる異常な関節表面について検査する。対照膝関節および手術した膝関節に対して肉眼での評価を実施する。膝窩リンパ節および滑膜をあらゆる炎症について検査する。
【0209】
【表11】
【0210】
反対側の膝をあらゆる異常な関節表面について検査する。右膝関節の肉眼での形態学的評価を行って、表3に列挙されている以前のスコア化基準に基づいて軟骨表面の修復を決定する。右大腿骨を切断して軟骨欠損を骨の間隙領域から分離し、10倍の体積の10パーセント中性緩衝ホルマリンを満たした適切に標識した容器に入れる。内側半月を肉眼で評価し、収集し、10倍の体積の10パーセント中性緩衝ホルマリンを満たした適切に標識した容器に入れる。
【0211】
【表12】
【0212】
滑液を採取し、体積、粘性(糸引き(string))、透明性および色について評価する。必要に応じて、表13に概説されている肉眼での滑液評価の半定量的スコア化を適用する。
【0213】
【表13】
【0214】
総滑液スコアは、色、透明性および糸引きスコアの合計である(0〜8点)。
【0215】
(実施例7)
処理されたラット微小血管組織を使用した細胞遊走アッセイ
処理された微小血管組織の組成物の細胞遊走に対する効果を実証するために、ヒト内皮細胞の遊走(処理された微小血管組織の組成物による化学誘引)および脂肪由来の間質血管画分(SVF)細胞による標識した処理された微小血管組織の組成物の微小胞(MV)取り込みのアッセイを展開し、組成物の生物活性の尺度として使用した。
【0216】
これらの研究の選択についての理論的根拠は以下の通りであった:(1)処理された微小血管組織の組成物により血管修復の増大が誘導され得、したがって、内皮細胞の遊走が有効な測定基準になること;および(2)MVの放出および取り込みは、組織修復モデルにおいて多数の細胞型で起こり得る重要な活性であり、したがって、血管修復のために重要な細胞型を有するSVF細胞集団を使用してMVの取り込みを試験した。
【0217】
一般的な研究デザイン
処理された微小血管組織の組成物の内皮細胞に対する化学誘引能力をアッセイするために、組成物の試料をトランスウェルプレートの下のチャンバーに入れ、オレンジ−赤色蛍光親油性色素(CM−DiI)で標識した内皮細胞の遊走を12〜48時間、経時的にモニターした。アッセイは、既知組成の凍結保存培地EZ−CPZ(商標)(Incell
Corp.、San Antonio、TX)を100%で、およびベースライン対照としてEZ−CPZ(商標)とM3D(商標)(Incell Corp.、San Antonio、TX)培地の50/50混合物も含んだ。
【0218】
第2の研究を実施して、凍結乾燥した処理された微小血管組織の組成物のSVF細胞による取り込みを評価した。組成物をCM−DiIと一緒にインキュベートして、色素を組成物試料のMVおよび細胞膜に組み入れさせた。標識した組成物試料をすすぎ、培地中に希釈し、次いで、SVF細胞の単層培養物に付着させた。24時間取り込みを行った後に、細胞をすすぎ、次いで、赤色蛍光色素の取り込みについて可視化した。
【0219】
材料および方法
M3D(商標)は、INCELLにより製造された既知組成培養培地である。いくつかのアッセイでは、M3D(商標)に抗生物質(1×PSF:Pen/Strep/Fungizone抗生物質/抗真菌薬;Invitrogen、Grand Island NY)を補充した。M3D:10培地(INCELL)は10%ウシ胎児血清(FBS)および1×PSFを補充したM3D(商標)であった。EZ−CPZ(商標)(Incell Corp.、San Antonio、TX)は、既知組成の細胞凍結保存培地である。EZ−CPZ(商標)およびEZ−CPZ(商標):M3D(商標)(1:1;v/v)を参照対照培地として使用した。
【0220】
培養培地用の水性製剤中のCM−DiIは「Cell Tracker(登録商標)」蛍光色素である(Invitrogen/Molecular Probes)。これは細胞膜およびMVなどの親油性材料と会合し、蛍光顕微鏡によって明るい赤色蛍光として可視化することができる。この研究のために、EVOS倒立顕微鏡を赤色フィルター:励起530nm、放出593nm)で使用した。
【0221】
継代1(p1)のヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)をINCELL Biorepositoryから取得した。MV取り込みアッセイ用のヒトSVF p1細胞をINCELL Biorepositoryから取得した。
【0222】
全ての細胞を、M3D:10(商標)(Incell、San Antonio、TX)中で成長させた。内皮細胞を、CM−DiIと一緒に37℃で30分インキュベートし、次いで、1×PSFを伴うM3D(商標)ですすいだ。細胞を計数し、処理された微小血管組織の組成物試験材料を予めローディングした3ミクロン孔径のPETトランスウェルチャンバー(Thermofisher;Waltham、MA)の上のチャンバーに3連のウェルでウェル当たり同数の細胞を適用した。
【0223】
吸着アッセイ用のSVF細胞を48ウェルプレート中で対数期成長まで成長させた。
【0224】
処理された微小血管組織の組成物
2つの処理された微小血管組織の組成物、すなわち、BMAおよびBMBを調製し、試験した。BMA試料はラットSVF細胞であり、BMBはラット骨髄単核細胞であり、それぞれ1ml当たり細胞10
6個で凍結乾燥したものであった。ラットSVF細胞は、はさみを用いて精巣上体の脂肪パッドを直径1mmよりも大きな小片がなくなるまで細かく切り、次いで洗浄し、PBS中1U/mlのCIzyme AS(Vitacyte、Indianapolis、IN)中、37℃で60分穏やかに撹拌しながらインキュベートすることによって調製した。細胞を2回洗浄し、凍結乾燥緩衝液中に1ml当たり10
6個で再懸濁した。ラット骨髄細胞は、大腿骨および脛骨にACDA/PBS溶液を流し、20gaの針を通して吸引および排出を繰り返すことによって解離させることによって得た。次いで、骨髄細胞をフィコール勾配で分離し、PBS+1%FBSで2回洗浄し、緩衝液に再懸濁した。表14に示されている通り、凍結乾燥した後、BMA試料では検出限界を下回る(10,000を下回る)細胞数が示されたが、BMB試料では60万〜100万の細胞数および10〜50%の生存能力(トリパンブルー)が示された。
【0225】
【表14】
【0226】
全ての試料を暗闇中で1年間冷凍保管し、試験試料を11kGyのEビーム照射で滅菌した。照射していない対照試料は滅菌しなかった。
【0227】
標識した内皮細胞のトランスウェル遊走
凍結乾燥した材料を1×PSFを伴うUFDI水1ml中に再構成した。この全試料のうち、300μlを3つのウェルのそれぞれの下部に入れ、200μlのM3Dを用いて最終的な体積を500μlにした。上部のチャンバーを試料ウェルにセットし、CM−DiIで標識したHUVEC p2細胞をそれぞれに同数入れた。プレートを37℃でインキュベートし、12時間、24時間および48時間の時点でウェルを画像化した。視野内の細胞を計数することによって画像を調査して結果を決定した。
【0228】
SVF細胞による標識した微小胞の取り込み
凍結乾燥した材料の残りの100μlをCM−DiIと一緒にインキュベートして、存在する細胞膜を標識した。材料を、M3D+1×PSFを用いて遠心分離によって3回洗浄した。吸収アッセイのために48ウェルプレートに播種したSVF細胞を50%集密まで成長させ、CM−DiIで標識した凍結乾燥した材料50μlを上に層状に重ねた。24時間の時点でウェルの半分をすすぎ、液体封入剤でコーティングし、乾燥させた;あとの半分は、すすぎ、固定し、3日後に封入した。画像を調査して結果を決定した。
【0229】
結果
標識した内皮細胞のトランスウェル遊走
ウェルの全てについて、12時間の時点で下のチャンバーには最小数の細胞が存在した。
図2および
図3〜7の最初の段を参照すると、時間が進行するにつれ、細胞が下のチャンバーに遊走し始めた。試料の一部ははるかに急速に下のチャンバーに引き寄せられた。
図2に見られる通り、BMA試料ではBMBよりも細胞が誘引される傾向があった。BMA緩衝液2試験群では、試験試料の中で24時間の時点では細胞数が最低であったが、48時間の時点では細胞数が最高であった。全体的に、BMA試料は緩衝液2を伴うBMB試料よりも良好な働きをし、緩衝液1よりも高い遊走速度を誘導する傾向が示された(しかし統計的には有意でない)。
【0230】
このアッセイの他の注目すべき効果は、24時間および48時間の時点でBMAでは約20%の遊走照射の減少が引き起こされる傾向があったが、BMBの効果はほとんどなく、基本的に同じレベルであった(差異は統計的には有意でなかった)ことである。
【0231】
EZ−CPZ(商標)培地対照ではいくらかの移動があったが、これは時間経過の後半のみであり、また程度がBMA試料およびBMB試料よりも劣った。これらの結果により、組成物により血管新生活性を誘導するためには細胞が生存可能であるまたは自己細胞である必要はないことが劇的に実証される。
【0232】
SVF細胞による標識した処理された微小血管組織の組成物の微小胞の取り込み
このアッセイを実施して、処理された微小血管組織の組成物のMVがSVF(間質血管画分)細胞内に輸送されるかどうかを決定した。各バイアル中の処理された微小血管組織の組成物材料の残りの100μlを、細胞自体が死んでいるとしても細胞膜に組み入れられるCM−DiIを用いて標識付けることによってアッセイを実施した。SVF細胞を、M3D:10培地を伴う48ウェルプレートにプレーティングし、接着させ、およそ50%集密になるまで成長させた。標識した材料50μlをウェルに加え、6時間インキュベートした。ウェルをM3D(商標)で3回すすぎ、湿性封入剤を用いて固定した。
図8および
図9に見られる通り、画像により、色素がSVF細胞に移行しているので、細胞のいくつかが実際に材料を取り込んだことが示された。
【0233】
考察
このアッセイにおいて、放射線照射を伴うまたは伴わないBMA凍結乾燥材料およびBMB凍結乾燥材料は内皮細胞に対する化学誘引物質として作用した。材料に放射線照射した場合には細胞移動の軽度の減少が認められた。緩衝液1と緩衝液2の間の差異は無視できるものであった。
【0234】
BMA材料およびBMB材料は、材料をすでに成長している培養物の上に置き、24時間インキュベートすると、生SVF細胞に取り込まれた。
【0235】
これらの実験で例示されるいくつかの重要な概念がある。SVF試料では凍結乾燥した後に莫大な細胞の損失が見られ、生存能力が全く見られなかったが、生物活性は、細胞の損失が見られず、生存能力が10〜50%であった骨髄試料よりも保持されていた(SVF細胞の損失は、消化ステップの間の過剰な酵素活性によって引き起こされた可能性がある)。どちらの細胞調製物も1年超にわたって安定であった。滅菌は内皮細胞を誘引するそれらの能力に実質的に影響を及ぼさなかった。
【0236】
【表15-1】
【表15-2】
【表15-3】
【表15-4】
【表15-5】
【表15-6】
【0237】
(実施例8)
微小血管組織のin vitroおよびin vivoにおける効果
上記の通り、種々の幹細胞調製物により、動物試験および臨床研究において種々の指標についての有益な効果が示された。多くの場合、投与された幹細胞の生存は比較的乏しい。したがって、本研究は、上記のいくつかの実施形態に関連して考察されている通り、幹細胞に付随する治療的利益のいくつか(または全て)を実現するために生存可能な幹細胞が必要かどうかに取り組むために設計した。本研究では、上に開示されている方法に従って処理された、幹細胞および前駆細胞の豊富な供給源である微小血管組織を使用した。
【0238】
簡単に述べると、微小血管組織をヒト死体脂肪組織から、組織を細かく切り、その後、細かく切った組織を酵素により消化することによって単離した。次いで、消化された組織を遠心分離して脂肪を除去し、微小血管組織をもたらした。微小血管組織を凍結保存緩衝液(M3:DCとEZ−CPZ培地の1:1混合物、INCELL Corporation、San Antonio、TX)に再懸濁させ、バイアルに分配し、凍結乾燥または凍結乾燥と放射線による滅菌の両方を行った。
【0239】
生じた処理された微小血管組織を、血管新生および整形外科モデルにおいて細胞数、生存能力、表現型、CFU−F、および生物活性についてアッセイした。
【0240】
結果
新鮮に単離し、凍結乾燥および凍結乾燥/滅菌した微小血管組織の細胞数および生存能力が表16に示されている。各調製物の表現型が表17に示されている。
【0241】
【表16】
【0242】
【表17】
【0243】
細胞数/細胞の生存能力のデータにより、微小血管組織の処理に基づいて細胞数に有意な変化はないことが明白に実証される(例えば、新鮮なものであろうと、乾燥したものであろうと、または乾燥および滅菌したものであろうと、細胞数はだいたい同じ、DAPI
DNA染色の核取り込みに基づく)。しかし、微小血管組織を凍結乾燥することにより、微小血管組織中の細胞のトリパンブルーを排除する能力が有意に低下する。凍結乾燥により、生存細胞の百分率のおよそ70%の低下が誘導される。放射線に曝露させることにより、生存能力がさらに低下し、したがって、微小血管組織中の細胞のおよそ2%のみが生存可能であった。さらに、機能的な間葉系幹細胞についてアッセイした場合(確立したコロニー形成単位−線維芽細胞(CFU−F)アッセイを使用する)、凍結乾燥または凍結乾燥/滅菌した調製物において機能的な間葉系幹細胞は検出されなかった。
【0244】
興味深いことに、細胞数が変化せず、生存能力が低下するにもかかわらず、種々の処理方法により、細胞の表現型が変更された。表17に示されているように、IV型コラーゲンが凍結乾燥/滅菌した微小血管組織において適度に増加した(新鮮な調製物に対して)。このデータにより、凍結乾燥/滅菌した微小血管組織は、コラーゲンの密度が増加していることに少なくとも一部起因して、軟部組織の修復に十分に適し得ることが示唆される。コラーゲンに基づく材料は組織の工学的操作におけるそれらの使用について試験されているが、本明細書に開示されている微小血管組織は、材料が入手しやすく、また、「幹細胞性」が増強している(以下に考察する)ので、特に有利である。確立された造血幹細胞マーカーであるCD31(造血幹細胞)、CD34(骨髄/造血幹細胞)、CD44(がん幹様細胞)およびCD45(造血幹細胞)のそれぞれは、凍結乾燥および滅菌に応答して基本的に上方制御された。したがって、凍結乾燥/滅菌した微小血管組織中の細胞の生存能力がほぼ完全に低下したにもかかわらず、残りのあらゆる細胞では幹細胞によって発現されることが公知のマーカーの発現が増強された。そのように、凍結乾燥/滅菌した微小血管組織は、この幹細胞性の増強(および幹細胞性の増加により、例えば、修復、微小血管組織からの増殖因子の放出を増強する他の内在性細胞の傍分泌動員などが誘導されるという間接的な効果)に起因して、組織再生により適し得る。
【0245】
種々の微小血管組織を、他の細胞型を動員するそれらの能力について評価した。細胞の動員により、損傷または疾患のある組織の種々の機構による修復または再生が増強され得る。例えば、内皮細胞の動員により、血管形成が増強され得、それにより、新しい組織形成を容易にする血液供給が改善される。内在性幹細胞の動員により、新しい組織の成長および/または現存する損傷を受けた組織の修復を促進する事象のカスケードが開始され得る。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)をDiIで標識し、下のウェルに種々の型の微小血管組織が入ったトランスウェルプレートの上に置いた。48時間後に微小血管組織の各型についてウェル内の膜を横切ったHUVECの数を計数し、培養培地単独または上皮増殖因子(EGF)を補充した培地を対照としてそれらと比較した。
図10に結果が示されている。培地単独に応答してHUVEC細胞のわずかな遊走が検出された。HUVEC遊走の誘導因子として確立されたEGFにより、培地単独よりも約10倍多い遊走がもたらされる。新鮮に単離された微小血管組織(
図10の「消化したもの」)により、EGFよりもわずかに少ない遊走が誘導され、凍結乾燥したものにより、さらに少ない遊走が誘導された(しかし、それでも培地単独を超えるものであった)。予想外に、凍結乾燥/滅菌した微小血管組織により、EGFと比較してほぼ2倍多い遊走、および培地単独よりもほぼ20倍多い遊走が誘導された。したがって、微小血管組織を乾燥および滅菌することにより、in vitroにおいて細胞を動員するその能力が有意に増強される。いくつかの実施形態では、その能力の増強により、少なくとも一部において、in vivoにおける組織修復および/または再生の増強がもたらされる。
【0246】
そのin vivoにおける修復の増強は、凍結乾燥/滅菌した微小血管組織により、虚血となった組織へのよりロバストかつ急速な血流の回復が誘導されることを実証することにより確証された。SCIDマウスを、虚血(重度の組織損傷に至る状態)を再現するために確立された方法に従って、大腿動脈の片側結紮および切断(transection)に供し
た。種々のやり方で処理した微小血管組織を虚血した肢に0日目、3日目、および7日目に導入し、0日目、7日目、および14日目にマウスをレーザードップラーによって画像化した。
図11に示されている通り、生理食塩水を注射した対照の動物では、7日後または14日後に血流の回復がほとんど示されない(虚血した肢は矢印で示されている)。対照的に、凍結乾燥した微小血管組織では、14日目までに少なくとも部分的な血流の回復がもたらされた。しかし、凍結乾燥/滅菌した微小血管組織では、7日目までに血流の有意な増加がもたらされ、14日目の血流は反対側の対照肢と大きく区別できなかった。これらのデータにより、in vitroにおける遊走データが確証され、いくつかの実施形態では、凍結乾燥/滅菌した微小血管組織により血流の回復を増強することができることが示される。
【0247】
いくつかの実施形態では、血流の回復は、少なくとも一部において、小さな血管(例えば、微小血管系)、中程度の血管、および直径が大きな血管(例えば、組織への血液の主要な供給器である血管)を含めた新しい血管の形成に起因する。マトリゲル(0.5mL)を生理食塩水または微小血管組織(ヒト)と混合して、微小血管組織インプラントを生成し、それをSCIDマウスに皮下注射した。14日後に、インプラントを取り出し、固定し、α−CD31蛍光抗体を用いて染色した。インプラントが浸潤した血管を顕微鏡でサイズ分類し、計数した。標準偏差は平均計数/視野の12〜30%であった。各処理ステップ後に2用量の組織を試験した。ヒトCD31
+細胞は見いだされなかった。
【0248】
図12には、細胞数が様々であり、異なる様式で処理された微小血管組織インプラントを植え込んだ後の種々の血管サイズの浸潤に関連するデータが要約されている。マトリゲルにより、視野当たり約35の血管がもたらされ、その大多数が小さな血管であった。細胞約50,000個を伴う凍結乾燥した微小血管組織を植え込むことにより、浸潤の増加がもたらされ、中程度のサイズの血管のよりロバストな生成が伴った。細胞約500,000個を伴う凍結乾燥した微小血管組織を植え込むことにより、さらに別の血管生成が生じ、直径がより大きな血管の数が相当に増加した。細胞約50,000個を伴う凍結乾燥/滅菌した微小血管組織を植え込むことにより、血管数が対照と比較して増加し、大きな血管がいくらか生成された。細胞約500,000個を伴う凍結乾燥/滅菌した微小血管組織を植え込むことにより、有意な血管生成は、対照の2倍を超えた。興味深いことに、細胞50,000個の用量と比較して、より大きな細胞数により、生存能力がゼロに近いにもかかわらず、いくつかの直径が大きな血管がもたらされた。したがって、凍結乾燥したものであるかまたは凍結乾燥/滅菌したものであるかにかかわらず、処理された微小血管組織の投与により、直径がより大きな血管の形成が後押しされると思われる。これらのデータにより、組織の修復の重要な態様である血管の遊走および/または形成を増強する微小血管組織の能力がさらに裏付けられる。さらに、いくつかの実施形態では、種々のサイズの血管の生成により、循環系の主要な枝から標的組織(大きな直径)に血液を運搬する適切な能力があることだけでなく、血液が、標的組織全体を通して、内部までにも(中程度の血管および小さな血管)有効に分布し得ることも確実になる。
【0249】
総合すると、これらのデータにより、微小血管組織がin vitroおよびin vivoのどちらにおいても血管新生を誘導する能力を有することが示される。そのように、微小血管組織は、血管新生を増強するその能力に基づいて、それにより組織の修復および/または再生が開始される高度に魅力的な機構であり、それにより、適切な血液供給および栄養分/酸素の流れが確実になることによって組織の修復および/または再生が容易になり、かつ/または維持される。
【0250】
さらに、微小血管組織を、骨および軟骨の修復を増強するその能力について評価した。骨に関して、成熟ヤギの遠位骨幹端に8mm×2cmの臨界サイズの欠損の穴を開けた。組織足場(BIOFIBER、Tornier)をしっかりと巻き、欠損に単独で、または微小血管組織(体積1ml、細胞約10
6個)を含めて挿入した。細胞を、単に水1mlをバイアルに加えることによってローディングし、簡単に旋回させ、次いで、内容物を足場上に滴下し、結合のために5分待った。12週間の時点で、欠損を圧縮試験し、組織学的検査のために脱灰した。
【0251】
図13A〜13Cには、骨欠損の修復に関連するデータが示されている。
図13Aには、修復された骨の反対側の対照と比較した強度、弾性率、および靱性が示されている。足場を単独で使用することにより、損傷を受けた骨の強度および弾性率が対照骨のおよそ20%になり、靱性が対照骨のおよそ50%になった。足場に凍結乾燥/滅菌した微小血管組織を補充した場合、強度、弾性率、および靱性のそれぞれが足場単独と比較して増加した。したがって、これらのデータにより、微小血管組織を使用することにより、骨の損傷の修復が促進されることが示される。
図13Bおよび
図13Cには、足場を単独で用いて処置した骨および微小血管組織を補充した足場を用いて処置した骨の代表的な組織学的検査について示されている。
図13B(足場単独)では、欠損内に位置する骨と線維足場の接合部においていくらかの最初の骨棘形成が示されている。これにより、
図13Aのデータによって証明される通り、線維足場によって少なくともいくらかの骨修復が開始されることが示唆される。
図13Cでは、組織学的検査により、凍結乾燥/滅菌した微小血管組織を加えることにより、足場の周縁部において真の骨形成がもたらされたことが示唆される。したがって、同じ期間内で、微小血管組織により、骨の脱灰前駆体ではなく骨の形成が促進された。これにより、微小血管組織を足場と併せて使用することにより、治癒プロセスが加速し得ることが示唆される。
【0252】
軟骨修復に関して、成熟ヤギの内側滑車溝上の軟骨に4mm×7mmの臨界サイズの欠損を穿孔した。欠損のおよその深さは軟骨よりもわずかに深い1mmであった。組織足場(BIOFIBER、Tornier)を単独で、または凍結乾燥/滅菌した微小血管組織(細胞約10
6個)を補充して、欠損に適合させ、角のそれぞれに7−0ナイロン縫合糸を用いて定位置に保持した。3カ月後、欠損を組織学的に検査した。このデータは
図14A〜
図14Hに示されている。
図14A〜
図14Dには、足場単独のデータが示されており、
図14E〜
図14Hには、微小血管組織を補充した足場のデータが示されている。
図14Aには、予め損傷させた軟骨の足場の肉眼で見た図が示されており、
図14Eには、微小血管組織を補充した足場についての同じ図が示されている。どちらの処置群でも修復の証拠が示された。
図14Bおよび
図14Fには、軟骨のヘマトキシリン・エオシン染色が示されている。微小血管組織を含む足場を使用することにより、足場を単独で使用することと比較して周縁部における充填の改善が示された。
図14Cおよび
図14Gには、サフラニンO染色が示されており、微小血管組織を用いて処置した欠損におけるより大きな程度のプロテオグリカンおよび保持が明らかにされている。
図14Dおよび
図14Hには、欠損のトルイジンブルー染色が示されており、微小血管組織を使用して欠損を処置した場合に、新しく生成した軟骨基質染色が成熟軟骨により似ていることが明らかにされている。これらのデータをまとめると、上記の骨の実験と同様に、微小血管組織により軟骨の修復が促進されることが確認された。
【0253】
微小血管組織の腱を修復する能力を評価するための実験も実施した。ラットアキレス腱を露出させ、有鉤ピンセットを用いてすり減らした。対照を同じ様式で手術した。ラットの1つの群を足場単独で処置し、別の群を、凍結乾燥/滅菌した微小血管組織を補充した足場で処置した。7日後に、qPCR、組織学的検査および免疫組織化学的検査のためにラットを屠殺した。足場群には、アキレスの前側表面に4mm×7mmのBIOFIBER−CM足場を与えた。微小血管組織および処置群では、足場に微小血管細胞10
6個をローディングした。対照データは
図15A(マッソントリクローム染色)および
図15B(テネイシンについての免疫組織化学的検査)に示されている。足場群についてのデータは
図15Cおよび
図15Dに示されている。マッソントリクローム染色(
図15C)により、足場の内部および周辺に最初の腱の修復を示す密集したコラーゲンの小さなポケットが明らかになった。同様に、テネイシンについての免疫組織化学的検査染色(
図15D)により、腱と植え込まれた足場の間の周縁部における発現の増加が明らかになり、これにより、最初の欠損の修復が再度示唆される。
【0254】
微小血管組織群についてのデータが
図15Eおよび
図15Fに示されている。マッソントリクローム染色(15E)により、足場の内部および周辺における密集したコラーゲンの実質的な形成が明らかになり、これにより、欠損のかなりの修復が示される。同様に、テネイシンについての免疫組織化学的検査染色により、腱と植え込まれた足場の間の広範囲にわたる発現が明らかになった。これらのデータによっても欠損の有意な修復が示される。
【0255】
総合すると、これらの実験において提示されたデータにより、微小血管組織により、血管新生(標的組織への血液供給の確立および維持において重要な役割を果たす)させることができるだけでなく、骨、軟骨、および腱の修復を増強することもできることが確立される。いくつかの実施形態では、血管新生の増強は、少なくとも一部において、新しい組織の生成および維持をもたらす微小血管組織の能力において役割を果たす。
【0256】
本明細書において参照されている米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願および非特許刊行物は全て、本説明と相反しない限りは、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0257】
上に開示されている実施形態の特定の特徴および態様の種々の組合せまたは副組合せを行うことができ、それでも本発明の1つまたは複数の範囲内に入ることが意図されている。さらに、ある実施形態と関連した任意の特定の特徴、態様、方法、性質、特性、品質、特質、要素などに関する本明細書における開示は、本明細書に記載の他の実施形態の全てにおいて使用することができる。したがって、開示されている実施形態の様々な特徴および態様を、開示されている発明の種々の様式を形成するために互いと組み合わせるまたは互いと置き換えることができることが理解されるべきである。したがって、本明細書において開示されている本発明の範囲は、上記の特定の開示されている実施形態に限定されるべきでないことが意図されている。さらに、本発明の種々の改変、および代替形態が可能であるが、その特定の例が図に示されており、本明細書において詳細に記載されている。しかし、本発明は開示されている特定の形態または方法に限定されず、それとは反対に、本発明は、記載されている種々の実施形態の主旨および範囲ならびに添付の特許請求の範囲内に入る全ての改変、等価物、および代替を包含することが理解されるべきである。本明細書に開示されている方法はいずれも、列挙されている順序で実施される必要はない。本明細書に開示されている方法は、実践者が行うある特定の行為を含むが、これは、明白にも暗示によってのいずれでもこれらの行為の任意の第三者による指示も含み得る。例えば、「微小血管組織を投与すること」などの行為は「微小血管組織の投与を指示すること」を含む。本明細書に開示されている範囲は、任意のかつ全ての重複、部分範囲、およびこれらの組合せも包含する。例えば、「最大」、「少なくとも」、「超える」、「未満」、「間」などの言葉は、列挙されている数字を含む。「約」または「およそ」などの用語が先行する数字は、列挙されている数字を含む。例えば、「約3mm」は「3mm」を含む。