特許第6755905号(P6755905)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ミネベア株式会社の特許一覧

特許6755905樹脂潤滑用グリース組成物および樹脂摺動部材
<>
  • 特許6755905-樹脂潤滑用グリース組成物および樹脂摺動部材 図000004
  • 特許6755905-樹脂潤滑用グリース組成物および樹脂摺動部材 図000005
  • 特許6755905-樹脂潤滑用グリース組成物および樹脂摺動部材 図000006
  • 特許6755905-樹脂潤滑用グリース組成物および樹脂摺動部材 図000007
  • 特許6755905-樹脂潤滑用グリース組成物および樹脂摺動部材 図000008
  • 特許6755905-樹脂潤滑用グリース組成物および樹脂摺動部材 図000009
  • 特許6755905-樹脂潤滑用グリース組成物および樹脂摺動部材 図000010
  • 特許6755905-樹脂潤滑用グリース組成物および樹脂摺動部材 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6755905
(24)【登録日】2020年8月28日
(45)【発行日】2020年9月16日
(54)【発明の名称】樹脂潤滑用グリース組成物および樹脂摺動部材
(51)【国際特許分類】
   C10M 169/00 20060101AFI20200907BHJP
   C10M 107/38 20060101ALN20200907BHJP
   C10M 115/06 20060101ALN20200907BHJP
   C10M 117/00 20060101ALN20200907BHJP
   C10M 137/04 20060101ALN20200907BHJP
   C10M 137/10 20060101ALN20200907BHJP
   C10M 145/22 20060101ALN20200907BHJP
   F16H 57/04 20100101ALN20200907BHJP
   H01H 15/16 20060101ALN20200907BHJP
   C10M 107/02 20060101ALN20200907BHJP
   C10N 20/02 20060101ALN20200907BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20200907BHJP
   C10N 40/02 20060101ALN20200907BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20200907BHJP
   C10N 40/06 20060101ALN20200907BHJP
   C10N 50/10 20060101ALN20200907BHJP
【FI】
   C10M169/00
   !C10M107/38
   !C10M115/06
   !C10M117/00
   !C10M137/04
   !C10M137/10 Z
   !C10M145/22
   !F16H57/04 Z
   !H01H15/16 Z
   !C10M107/02
   C10N20:02
   C10N30:06
   C10N40:02
   C10N40:04
   C10N40:06
   C10N50:10
【請求項の数】5
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-141700(P2018-141700)
(22)【出願日】2018年7月27日
(65)【公開番号】特開2020-15876(P2020-15876A)
(43)【公開日】2020年1月30日
【審査請求日】2020年3月9日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅井 佑介
(72)【発明者】
【氏名】山本 大貴
(72)【発明者】
【氏名】北島 啄也
(72)【発明者】
【氏名】綱 基次郎
【審査官】 松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−182923(JP,A)
【文献】 特開2008−101122(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/158070(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00−177/00
C10N 10/00− 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の摺動面に適用される樹脂潤滑用グリース組成物であって、
フッ素系基油及び合成炭化水素油と、
フッ素系増ちょう剤と、リチウム石鹸増ちょう剤又はリチウム複合石鹸増ちょう剤と、
極圧添加剤とを含有し、
前記合成炭化水素油は、40℃における動粘度が30〜220mm/sであり、
前記極圧添加剤は、リン酸トリエステル、チオリン酸トリエステル及び高分子エステル系添加剤からなる群から選択される少なくとも一種である、
樹脂潤滑用グリース組成物。
【請求項2】
前記樹脂潤滑用グリース組成物は、その混和ちょう度が265〜340である、請求項に記載の樹脂潤滑用グリース組成物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の樹脂潤滑用グリース組成物が適用された樹脂製の摺動面を有する、樹脂摺動部材。
【請求項4】
前記樹脂摺動部材が、スライドスイッチであることを特徴とする、請求項に記載の樹脂摺動部材。
【請求項5】
前記樹脂摺動部材が、歯車装置であることを特徴とする、請求項に記載の樹脂摺動部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂潤滑用グリース組成物及び樹脂摺動部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、防水性の向上を図ったスライドスイッチ(樹脂摺動部材)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−139589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水と接触しやすい環境下において、樹脂製の摺動面(以下、樹脂摺動面という)を有する摺動部材を使用すると、該摺動面に塗布されたグリース組成物が摺動面から取り除かれやすいという傾向がある。
樹脂摺動面からグリース組成物が取り除かれた場合、摺動面における摩擦力の急激な上昇や摩耗量の増加を引き起こし得、ひいては該樹脂摺動面を備える製品の寿命が短くなるといった悪影響をもたらす虞がある。
このため、水との接触が起りやすい環境において、例えば水中環境下において樹脂摺動部材を使用した場合においても、摺動面から取り除かれることなく、摩擦・摩耗の抑制を実現できるグリースへの要望がある。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みなされたものであって、特に水との接触しやすい環境下にあっても、樹脂摺動面に対する付着性に優れ、またグリース自体の潤滑性に優れるグリース組成物を提供すること、並びに該グリース組成物の適用により、摩擦・摩耗を抑制し、製品の長寿命化を実現できる樹脂摺動部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、基油としてフッ素系基油及び合成炭化水素油、増ちょう剤としてフッ素系増ちょう剤及びリチウム石鹸増ちょう剤又はリチウム複合石鹸増ちょう剤、そして極圧添加剤を配合することにより、付着性に優れかつ潤滑特性に優れるグリース組成物となることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち本発明の一態様は、基油として、フッ素系基油及び合成炭化水素油と、増ちょう剤として、フッ素系増ちょうと、リチウム石鹸増ちょう剤又はリチウム複合石鹸増ちょう剤と、添加剤として、極圧添加剤とを含有し、前記合成炭化水素油は、その40℃における動粘度が30〜220mm/sである、樹脂潤滑用グリース組成物に関する。
【0008】
中でも本発明の好ましい態様として、前記極圧添加剤は、リン系添加剤及び高分子エステル系添加剤からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0009】
さらに、前記樹脂潤滑用グリース組成物は、その混和ちょう度が265〜340であることが好ましい。
【0010】
本発明はまた、前記樹脂潤滑用グリース組成物が適用された樹脂製の摺動面を有する樹脂摺動部材にも関する。
【0011】
中でも本発明の好ましい態様として、前記樹脂摺動部材がスライドスイッチであるか、或いは、歯車装置であるものを挙げることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、上述の構成を有する樹脂潤滑用グリース組成物は、その適用箇所(摺動面)に対する付着性が向上し、また優れた潤滑特性を付与することができる。したがって、本発明の樹脂潤滑用グリース組成物を樹脂摺動部材に適用することにより、樹脂摺動部材の摺動面からのグリースの除去が抑制され、グリース自体が有する優れた潤滑特性を保持することができ、摺動面における摩擦・摩耗を抑制し、樹脂摺動部材の長寿命化の実現につながる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の摺動部材の一態様(スライドスイッチ)の構造を説明する模式図であり、図1(a)はスライドスイッチを正面からみた断面図(スイッチオフ)及び図1(b)はスライドスイッチを正面からみた断面図(スイッチオン)を示す。
図2図2は、本発明の摺動部材の一態様(多段歯車装置)の構造を説明する模式図であり、図2(a)は多段歯車装置の正面図、図2(b)多段歯車装置の側面図(一部断面を含む)を示す。
図3図3は、実施例で実施した摩擦摩耗試験に用いた装置の概念図である。
図4図4は、実施例で実施した粘度測定試験に用いたレオメータ装置の概念図である。
図5図5は、摩擦摩耗試験において観察された、実施例2及び比較例3のグリース組成物における摩擦係数の変位の挙動を示す(実施例2:図5(a)、比較例3:図5(b))。
図6図6は、実施例1乃至4並びに比較例8及び9のグリース組成物において、使用した合成炭化水素油(ポリアルファオレフィン)の40℃における動粘度の値に対する、測定されたグリース組成物の粘度の値(Pa・s)を示す。
図7図7は、実施例1乃至4並びに比較例8及び9のグリース組成物において、使用した合成炭化水素油(ポリアルファオレフィン)の40℃における動粘度の値に対する、測定されたグリース組成物の摩擦係数の値を示す。
図8図8は、実施例1乃至8及び比較例1乃至11のグリース組成物において、測定された粘度の値(Pa・s)に対する摩擦係数の値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
前述したように、水と接触する環境下、また例えば水中環境下や結露が生じやすい環境下(以下、まとめて水接触環境とも称する)にあっては、塗布面からのグリース剥がれが生じやすいという問題がある。例えば、特許文献1に開示されたスライドスイッチは水接触環境下で使用される可能性を踏まえ、防水性を高めるべく樹脂製の防水シートが設けられてなり、後述するように、該スライドスイッチはこの防水シートを介してスイッチのオンオフを実行する。このとき防水シートとスライダとの潤滑性や、スライダと他の接触面との潤滑性を向上させるべくグリースが使用される。しかし、グリースが付着性に欠けるものであると、スイッチの使用(オンオフの実行)の間にもグリースが除去され得、それによりスライダと防水シート等との摩擦力が上昇し、防水シート等の摩耗・破損が生じ得、結果的にスライドスイッチの短寿命化につながる虞がある。
また上記のスライドスイッチ以外の摺動部材にあっても、水接触環境下での使用において、摺動面からのグリースの剥がれが生じると、同様に摺動面の摩擦力が上昇し、摩耗量の増加や摺動部材の破損が生じる虞がある。
こうした問題を解決するべく、本発明者らは、樹脂製の摺動面に対する付着性に優れるグリース組成物を検討したところ、基油としてフッ素系基油及び合成炭化水素油、増ちょ
う剤としてフッ素系増ちょう剤及びリチウム石鹸増ちょう剤又はリチウム複合石鹸増ちょう剤、そして極圧添加剤を含有するグリースの配合が、特に水接触環境下におけるグリースの付着性を高め、かつ潤滑特性にも優れることを見出した。
【0015】
本発明に係る樹脂潤滑用グリース組成物は、下記に説明するように特定の基油と特定の増ちょう剤と極圧添加剤とを組み合わせて配合してなることを特徴とする。以下具体的に説明する。
【0016】
[樹脂摺動部材]
本発明に係る樹脂潤滑用グリース組成物が適用される樹脂摺動部材としては特に限定されず、例えばスライドスイッチ、歯車装置、軸受等を挙げることができる。
本発明が対象とする樹脂摺動部材は、少なくともその一部に樹脂製の摺動面を有する摺動部材であれば特に限定されない。したがって、上述の通りスライドスイッチ、歯車装置、軸受のみならず、種々の摺動部材が包含され、これらの摺動部材もまた本発明の対象である。
そして本発明の樹脂摺動部材は、後述する樹脂潤滑用グリース組成物が適用された樹脂製の摺動面(該グリース組成物が塗布されたり、封入されたりして接触することにより、少なくとも一部が該樹脂潤滑用グリース組成物で覆われている樹脂摺動面)を有するものである。
以下に添付図面を参照して、樹脂摺動部材の好ましい実施形態のそれぞれについて詳細に説明するが、以下の実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0017】
[スライドスイッチ]
図1に、本発明の好ましい実施形態のスライドスイッチ101を正面から見た断面を示す。
図1に示す一例において、スライドスイッチ101は、ハウジング102、カバー103、第一防水フィルム104、第二防止フィルム105、第一固定接点106、第二固定接点107、第三固定接点108、可動接点109、スライダ110、接点操作部113、クリックばね114が設けられてなる。
【0018】
図1に示すように、ハウジング102とカバー103は、これらが結合されることによりケースを構成する。ハウジング102は絶縁性の材料により、カバー103はステンレス鋼などの金属により形成される。なお、カバー103は絶縁性の材料により形成されてもよい。
【0019】
第一防水フィルム104及び第二防水フィルム105は、後述するようにスライドスイッチ101の防水性を高めるべく設けられてなり、図1に示すように、第一防水フィルム104はハウジング102の外面に、第二防水フィルム205はハウジング102の内部に、それぞれ装着されている。
【0020】
また第一固定接点106、第二固定接点107、および第三固定接点108は、第一防水フィルム104と第二防水フィルム105の間において、ハウジング102に固定されている。第一固定接点106、第二固定接点107、および第三固定接点108は、ハウジング102により相互に離間され、電気的に絶縁されており、これらは導電性の材料により形成されている。なお図示していないが、第一固定接点106の端部、第二固定接点107の端部、および第三固定接点108の端部は、それぞれハウジング102の底部において露出しており、外部回路との接続端子として使用される。
【0021】
可動接点109は導電性の材料により形成される。図1に示すように、可動接点109は、第一固定接点106および第二固定接点107から離間している離間位置(オン位置
図1(a))と、第一固定接点106および第二固定接点107と接触している接触位置(オフ位置、図1(b))との間で変位可能とされている。可動接点109は、無負荷状態(図1(a))で離間位置をとるように構成された弾性部材により形成されている。
【0022】
スライダ110は、絶縁性の樹脂材料により形成されている。図1(a)に示すように、スライダ110は、ハウジング102の内部で支持されている。スライダ110は、オフ位置とオン位置の間で、ハウジング102の長手方向へ移動可能(図1(a)中、両矢印で示された範囲がスライダ110の移動可能範囲である)とされている。
なおカバー103は、ハウジング102の長手方向に延びるように、スライド溝103aを備えており、スライド溝103aは、スライダ110がオフ位置とオン位置の間の移動を案内するように構成されている。
またスライダ110には、接点操作部113が設けられている。接点操作部113は、スライダ110がオフ位置からオン位置へ移動されることにより、第二防水フィルム105を介して可動接点109を、離間位置から接触位置へ変位させるように構成されている。
【0023】
図1(b)は、図1(a)に示した状態から、スライダ110をスライド溝103aに沿ってオン位置へ移動させた状態を示している。スライダ110の移動に伴い、スライダ110に設けられた接点操作部113が、第二防水フィルム105を介して可動接点109を変位させる。可動接点109が第一固定接点106および第二固定接点107に接触すると、第一固定接点106と第二固定接点107が、可動接点109を介して電気的に接続されることとなる。
第一固定接点106と第二固定接点107の導通状態を解除する場合は、上記の操作を逆に行なえばよい。すなわち、スライダ110をスライド溝103aに沿ってオフ位置に向かって移動させ、接点操作部113による可動接点109の押圧を解除する。可動接点109は、自身の弾性復帰力により、離間位置に復帰する。すなわち、可動接点109と第一固定接点106および第二固定接点107の接触状態が解除される。
【0024】
上記のような構成によれば、第一固定接点106、第二固定接点107、および可動接点109が第一防水フィルム104と第二防水フィルム105の間に配置されており、両者の離接は、スライダ110に設けられた接点操作部113により、第二防水フィルム105を介して行なわれる。外部からスライド溝103aの開口を通ってハウジング102内に水分が侵入しうる。
【0025】
またスライドスイッチ101は、一対のクリックばね114(弾性部材)を備えている。各クリックばね114は、凸部114aを備えている。他方、スライダ110は、一対の凸部110aを備えている。
上記のようにスライダ110がオフ位置とオン位置の間で移動するとき、スライダ110の各凸部110aは、対向するクリックばね114を弾性変形させつつ、当該クリックばね114の凸部114aをハウジング102の短手方向(図1の紙面垂直方向)に変位させる。スライダ110の各凸部110aが対向するクリックばね114の凸部114aを通過すると、当該クリックばね114の弾性復帰力により、スライダ110のオン位置またはオフ位置への移動が支援され、またスイッチのクリック感が与えられる。
【0026】
スライドスイッチ101において、第二防水フィルムは例えばナイロン等のポリアミド樹脂やポリフタルアミド(PPA)樹脂材料により形成される。またスライダ110は、例えば、ポリアミド(PA)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリフタルアミド(PPA)などの絶縁性の樹脂材料から形成され得る。
本態様のスライドスイッチ101において、本発明に係る樹脂潤滑用グリース組成物Gは、スライダ110における接点操作部113の第二防水フィルム105との接触箇所(
スライダ110の下部が樹脂摺動面である)、並びに、スライダ110の各凸部110a(樹脂摺動面である)に、それぞれ塗布される。すなわち、スライドスイッチ101の樹脂摺動面に、樹脂潤滑用グリース組成物Gが塗布される。スライドスイッチ101では、スライド溝103aからハウジング102内に水が浸入した環境下にあっても、後述する樹脂摺動面に対する付着性に優れ、またグリース自体の潤滑性に優れるグリース組成物Gを用いている。したがって、スライドスイッチ101では、摩擦・摩耗が抑制され、長寿命化が実現される。
【0027】
[歯車装置]
本発明の好ましい実施形態の歯車装置の一例として、アクチュエータに備えられた多段歯車装置について説明する。
なお、本発明に係る樹脂潤滑用グリース組成物が適用される「多段歯車装置」は、少なくともいずれかの歯車が樹脂製である歯車を備えた多段の歯車装置を指し、該多段歯車装置において、樹脂製歯車と例えば金属製歯車等の樹脂以外の材料からなる歯車とが混在していてもよく、また樹脂製歯車のみで構成されていてもよい。
そして、後述する樹脂潤滑用グリース組成物が、前記樹脂製の歯車の軸受部に、そして樹脂製の歯車と樹脂製又は樹脂以外の材料からなる歯車との噛み合せ部に、それぞれ塗り備えられる。
【0028】
図2はアクチュエータに備えられた多段歯車装置201の模式図であり、図2(a)は多段歯車装置201の正面図、図2(b)は多段歯車装置201の側面図(一部断面を含む)である。なお図2(b)には、多段歯車装置201に加えて、モータ211及びその出力軸211a並びにアクチュエータ出力軸212についても図示してなる。
図2に示す多段歯車装置201は、モータ211の出力軸211aに一体回転可能に取り付けられた第一段歯車202と、第一段歯車202に噛合されてなる第二段歯車203、第二段歯車203に噛合されてなる第三段歯車205を備える。また図2には、第二段歯車203の軸204、第三段歯車205の軸206がそれぞれ図示され、そして前述したアクチュエータの出力軸212についても図示される。
本実施形態では、図2における第一段歯車202と第二段歯車203との噛み合せ部X、第二段歯車203と第三段歯車205との噛み合せ部Y、第二段歯車203の軸受部204a、および第三段歯車205の軸受部206aに、後述する樹脂潤滑用グリース組成物が塗布される。
【0029】
上記多段歯車装置201において、該装置を構成する軸、すなわち、多段歯車装置の各軸(204、206)、並びにモータの出力軸202a及びアクチュエータの出力軸212は、金属製又は樹脂製のいずれであってもよいが、例えば以下の構成とすることができる。
例えば、モータ211の出力軸211aは金属製の回転する軸である。出力軸211aと第一段歯車202は固定されており、第一段歯車202は出力軸211aとともに回転するため、第一段歯車202と出力軸211aの間には相対的に回転する軸受部は存在しない。
一方、第二段歯車203の軸204と第三段歯車205の軸206は、いずれも樹脂製であって固定軸である。そして第二段歯車203と第三段歯車205は、それぞれの固定軸に対して摺動しながら回転する。そのため、第二段歯車203と第二段歯車の軸204(固定軸)との間の軸受部204a、並びに第三段歯車205と第三段歯車の軸206(固定軸)との間の軸受部206aには、それぞれ後述する樹脂潤滑用グリース組成物が、歯車同士の噛み合せ部X、Yに加えて、塗布される。
【0030】
なお、これら歯車装置(歯車、歯車の軸)、並びに該歯車装置を備えてなるアクチュエータ(モータの出力軸、ベース部材、外装部材(ケース)、アクチュエータの出力軸等)
を構成する樹脂部材として使用可能な樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ABS樹脂(ABS)、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、フェノール樹脂(PF)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等が挙げられる。
【0031】
本実施形態の歯車装置は、車載用の空調処理システムなどに使用されるアクチュエータに好適に使用される。車載用の空調処理システムでは、使用が−40℃〜100℃と幅広く、これらの温度サイクルで使用されると、アクチュエータ内部が結露し、歯面およびグリースに水滴が付着する場合がある。
また、本実施形態の歯車装置は、例えば、便座や便蓋の自動開閉装置など使用されるアクチュエータにも好適に使用される。便座等自動開閉装置では、洗浄時などにアクチュエータに水がかかる場合がある。
このように水と接触しやすい環境下で使用される歯車装置であっても、本発明の樹脂潤滑用グリース組成物の適用により、摩擦・摩耗が抑制され、製品の長寿命化が実現される。
【0032】
[樹脂潤滑用グリース組成物]
本発明の樹脂潤滑用グリース組成物について説明する。
【0033】
<基油>
本実施形態に係る樹脂潤滑用グリース組成物において、基油としてフッ素系基油及び合成炭化水素油を使用する。
【0034】
フッ素系基油としては、例えばパーフルオロポリエーテル(PFPE)を主成分とするものが挙げられる。なおPFPEは、一般式:RfO(CFO)(CO)(CO)Rf(Rf:パーフルオロ低級アルキル基、p、q、r:整数)で表される化合物である。
なおパーフルオロポリエーテルは直鎖型と側鎖型に大別され、直鎖型は側鎖型に比べて動粘度の温度依存性が小さい。これは、直鎖型は、低温環境下において側鎖型より粘度が低く、高温環境下では側鎖型より粘度が大きくなることを意味する。例えば高温環境下で使用を想定した場合には、適用箇所からのグリースの流出やそれに伴う枯渇を抑制する観点から、高温環境下における粘度は高いことが望ましく、すなわち、直鎖型のパーフルオロポリエーテルの使用が好適となる。
【0035】
上記合成炭化水素油としては、例えばノルマルパラフィン、イソパラフィン、ポリブテン、ポリイソブチレン、1−デセンオリゴマー、1−デセンとエチレンのコオリゴマーなどのポリアルファオレフィン(PAO)が好適である。
【0036】
さて本発明者らは、付着性の指標となるグリース組成物の最適な粘度と、潤滑特性の指標となる最適な摩擦係数値を満足するための構成を検討した結果、グリース組成物の組成に加えて、合成炭化水素油の動粘度の値も一つの要因となることを見出した。
一例として、特定の基油及び増ちょう剤、並びに極圧添加剤を含有するグリース組成物において、合成炭化水素油(ポリアルファオレフィン)の40℃における動粘度の値を種々変化させた場合(18〜300mm/s)の、グリース組成物の粘度測定試験の結果を図6に、摩擦摩耗試験の結果を図7に、それぞれ示す。
図6に示すように、グリース組成物における合成炭化水素油の40℃における動粘度が50mm/sより低くなるとグリース組成物自体の粘度が急激に低下しはじめ、30mm/sを下回ると粘度が4Pa・sを下回る挙動を示すことが確認された。また図7
示すように、合成炭化水素油の40℃における動粘度が100mm/sを超えるとグリース組成物の摩擦係数は急激な上昇をはじめ、220mm/sを超えると摩擦係数が0.1を超える挙動を示すことが確認された。
これら図6及び図7の結果に示すように、フッ素系基油及び合成炭化水素油と、フッ素系増ちょう剤及びリチウム石鹸増ちょう剤と、極圧添加剤とを含有してなる樹脂潤滑用グリース組成物において、合成炭化水素油の40℃における動粘度を30〜220mm/sとしたとき、粘度測定試験(付着性)及び摩擦摩耗試験(潤滑特性)の双方が好適となることが確認できた。図6及び図7において、横軸(動粘度)に対して平行に付された矢印で示す範囲は、粘度測定試験及び摩擦摩耗試験の何れにおいても良好な特性が得られる合成炭化水素油の40℃における動粘度の範囲を示したものである。
また図8は、後述する実施例及び比較例で調製した各種グリース組成物において測定された粘度の値(Pa・s)に対する摩擦係数の値を示し、図8中、最適領域内(粘度4.0Pa・s以上、摩擦係数0.1以下)にあるものが、粘度測定試験及び摩擦摩耗試験の何れにおいても良好な特性が得られたグリース組成物である。
【0037】
以上の結果より示されるように、本発明の樹脂潤滑用グリース組成物において、上記合成炭化水素油は、40℃における動粘度が30〜220mm/sの範囲にあることが好ましい。中でも40℃における動粘度が50〜200mm/sの範囲にあることが好ましく、50〜100mm/sの範囲にある合成炭化水素油が最も好ましい。
【0038】
上記フッ素系基油と合成炭化水素油の配合割合は特に限定されないが、例えば基油の合計量100質量%に対して、フッ素系基油:合成炭化水素油=95〜5質量%:5〜95質量%、例えば同=90〜10質量%:10〜90質量%、好ましくは同=80〜20質量%:20〜80質量%、特に同=75〜22質量%:78〜25質量%などとすることができる。
また本発明のグリース組成物の全量に対するフッ素系基油及び合成炭化水素油を合計した基油全体の割合は70〜90質量%、例えば75〜95質量%、80〜85質量%とすることができる。
【0039】
<増ちょう剤>
本発明のグリース組成物においては、増ちょう剤としてフッ素系増ちょう剤と、リチウム石鹸増ちょう剤又はリチウム複合石鹸増ちょう剤を添加する。
中でも、グリース組成物の全量に対して、フッ素系増ちょう剤を1〜20質量%、例えば5〜15質量%にて、リチウム石鹸増ちょう剤又はリチウム複合石鹸増ちょう剤を1〜15質量%、例えば3〜9質量%にて、含有することが好ましい。
なおフッ素系増ちょう剤とリチウム石鹸増ちょう剤又はリチウム複合石鹸増ちょう剤の合計量(増ちょう剤合計量)は、樹脂潤滑用グリース組成物の全量に対して、2〜35質量%、例えば5〜30質量%、好ましくは10〜30質量%、特に10〜20質量%となるように配合することが好ましい。
【0040】
<フッ素系増ちょう剤>
フッ素系増ちょう剤としては、フッ素樹脂粒子が好ましく、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の粒子を用いることが好ましい。PTFEは、テトラフルオロエチレンの重合体であり、一般式:[C(n:重合度)で表される。
その他、採用し得るフッ素系増ちょう剤として、例えばパーフルオロエチレンプロピレンコポリマー(FEP)、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)が挙げられる。
上記PTFE粒子の大きさは特に限定されないが、例えば平均粒径で0.1μm〜100μmのポリテトラフルオロエチレンを使用することができる。またPTFE粒子はその
形状について特に限定されず、球状、多面形状、針状などであってもよい。
【0041】
上記フッ素系増ちょう剤は、グリース組成物の全量に対して1〜20質量%、好ましくは5〜15質量%にて使用する。
【0042】
<リチウム石鹸増ちょう剤・リチウム複合石鹸増ちょう剤>
本発明では、上記のフッ素系増ちょう剤に加えて、リチウム石鹸増ちょう剤を使用する。
上記リチウム石鹸増ちょう剤として、脂肪族モノカルボン酸のリチウム塩を用いることができる。
上記脂肪族カルボン酸は、直鎖、分岐鎖、飽和、不飽和のいずれでもよく、一般に炭素原子数2乃至30程度、例えば炭素原子数12乃至24の脂肪酸を用いることができる。具体的には、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベへニン酸等の飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸、リシレン酸、リシノール酸(リシノレイン酸)等の不飽和脂肪酸が挙げられる。
中でも、上記リチウム石鹸増ちょう剤としては、ステアリン酸、ラウリン酸、リシノール酸のリチウム塩や、前記酸がヒドロキシ基置換された化合物のリチウム塩を、代表例として挙げることができる。
【0043】
なお本発明では、リチウム石鹸増ちょう剤に替えて、リチウム複合石鹸増ちょう剤を用いてもよい。
リチウム複合石鹸増ちょう剤は、高級脂肪酸と二塩基酸あるいは無機酸(ホウ酸など)等を組み合わせることで、リチウム石鹸増ちょう剤よりも耐熱性を向上させたものである。
リチウム複合石鹸増ちょう剤は、例えば水酸化リチウムに、少なくとも1個のヒドロキシ基を含む炭素原子数12乃至24程度の脂肪族モノカルボン酸と、炭素原子数2乃至12程度の脂肪族ジカルボン酸を反応させることにより得ることができる。
上記の少なくとも1個のヒドロキシ基を含む炭素原子数12乃至24の脂肪族モノカルボン酸としては、例えばヒドロキシラウリン酸、ヒドロキシパルミチン酸、ヒドロキシステアリン酸、ヒドロキシオレイン酸、ヒドロキシアラキジン酸、ヒドロキシベヘン酸、ヒドロキシリグノセリン酸等が挙げられる。
また炭素原子数2乃至12の脂肪族ジカルボン酸としては、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナメチレンジカルボン酸、デカメチレンジカルボン酸等が挙げられる。
これらのモノカルボン酸及びジカルボン酸は、単独であるいは2種以上混合して用いてもよい。
中でも、上記リチウム複合石鹸増ちょう剤としては、水酸化リチウムに、ヒドロキシステアリン酸とアゼライン酸を組合せて反応させたものを代表例として挙げることができる。
【0044】
上記リチウム石鹸増ちょう剤又はリチウム複合石鹸増ちょう剤は、グリース組成物の全量に対して、1〜15質量%、好ましくは3〜9質量%の量にて使用する。
【0045】
<極圧添加剤>
本発明の樹脂潤滑用グリースは、極圧添加剤(極圧剤)を含有する。
極圧添加剤は、金属表面と反応して潤滑膜を形成することで、金属表面の摩擦、摩耗の減少や、焼付きを防止するといった機能を有することが知られている。このため、樹脂摺動面に対して極圧添加剤が配合された樹脂潤滑用グリースを使用したとしても、樹脂摺動
面には何ら作用しないとも考えられる。しかしながら、本発明にあっては、樹脂摺動面に対して使用するグリース組成物に極圧添加剤を配合した場合においても、これを樹脂摺動面に塗布した場合に摩擦係数が低下することを見出し、配合してなるものである。
【0046】
上記極圧添加剤としては、例えばリン系化合物、硫黄系化合物、塩素系化合物、硫黄系化合物の金属塩、高分子エステル等が挙げられる。
中でも本発明では、極圧添加剤として、リン系化合物(リン系添加剤)及び高分子エステル(高分子エステル系添加剤)のうちの少なくとも一種を使用することが好適であり、これらは種々併用してもよい。
【0047】
上記リン系添加剤としては、リン酸エステル、亜リン酸エステル、リン酸エステルアミン塩、チオリン酸エステルなどが挙げられる。
好適なリン系添加剤としては、例えばトリクレジルホスフェート(TCP)、トリフェニルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリオレイルホスフェートなどのリン酸トリエステルや、トリフェノキシホスフィンスルフィド(TPPS)などのチオリン酸トリエステルが挙げられ、これらは市販品としても入手可能である。
【0048】
また上記高分子エステルとしては、例えば脂肪族1価カルボン酸及び2価カルボン酸と、多価アルコールとのエステルが挙げられる。上記高分子エステルの具体例としては、例えばクローダジャパン社製のPERFAD(登録商標)シリーズ、PRIOLUBE(登録商標)シリーズなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
上記極圧添加剤は、グリース組成物の全量に対して、0.1〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%、例えば0.5〜3質量%の量にて使用することが好ましい。
【0050】
<その他添加剤>
また、樹脂潤滑用グリース組成物には、上記必須成分に加えて、必要に応じてグリース組成物に通常使用される添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲において含むことができる。
このような添加剤の例としては、酸化防止剤、金属不活性剤、錆止め剤、油性向上剤、粘度指数向上剤、増粘剤などが挙げられる。
これらその他の添加剤を含む場合、その添加量(合計量)は、通常、グリース組成物の全量に対して0.1〜10質量%である。
【0051】
例えば上記酸化防止剤としては、例えばオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)等のヒンダードフェノール系酸化防止剤、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、および4,4−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)等のフェノール系酸化防止剤、トリフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキル化フェニル−α−ナフチルアミン、フェノチアジン、アルキル化フェノチアジン等のアミン系酸化防止剤等が挙げられる。
【0052】
金属不活性剤としては、ベンゾトリアゾール、亜硝酸ソーダ等が挙げられる。
【0053】
本発明の樹脂潤滑用グリース組成物は、上記各種基油と、各種増ちょう剤、及び極圧添加剤を所定の割合となるように混合し、所望によりその他添加剤を配合して得ることができる。
また、フッ素系基油とフッ素系増ちょう剤からなるフッ素系グリースと、合成炭化水素油とリチウム石鹸増ちょう剤(又はリチウム複合石鹸増ちょう剤)からなるリチウム石鹸グリース(又はリチウム複合石鹸グリース)の2種のベースグリースと、極圧添加剤と、所望によりその他添加剤とを配合し、樹脂潤滑用グリース組成物を得ることもできる。或いは、前記ベースグリースの1種と、残りの基油、増ちょう剤及び極圧添加剤、そして所望によりその他添加剤とを配合し、樹脂潤滑用グリース組成物を製造してもよい。
通常、ベースグリースに対する増ちょう剤の含有量は10〜30質量%程度であり、例えば上記2種のベースグリースにおいて、各ベースグリースに対する各増ちょう剤の含有量は、それぞれ、フッ素系増ちょう剤:15〜30質量%、リチウム石鹸又はリチウム複合石鹸系の増ちょう剤:10〜20質量%とすることができる。
【0054】
本発明の樹脂潤滑用グリース組成物は、樹脂製の摺動面に適用されるため比較的柔らかいグリースであり、好ましくはその混和ちょう度が265〜340の範囲にあるものである。
【0055】
本発明は、本明細書に記載された実施形態や具体的な実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内で種々の変更、変形が可能である。
【実施例】
【0056】
以下、本発明を実施例により、さらに詳しく説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0057】
〔樹脂潤滑用グリース組成物の評価〕
下記各表に示す配合量にて実施例1乃至実施例8並びに比較例1乃至比較例11に使用するグリース組成物を調製した。
【0058】
なおグリースの調製に用いた各成分の詳細及びその略称は以下のとおりである。
(a)基油
(a1)フッ素系基油:直鎖パーフルオロポリエーテル(PFPE)油(40℃における動粘度:85mm/s)
(a2)合成炭化水素油:ポリアルファオレフィン(PAO)
(a2−1)PAO1(40℃における動粘度:200mm/s)
(a2−2)PAO2(40℃における動粘度:100mm/s)
(a2−3)PAO3(40℃における動粘度:48mm/s)
(a2−4)PAO4(40℃における動粘度:30mm/s)
(a2−5)PAO5(40℃における動粘度:300mm/s)
(a2−6)PAO6(40℃における動粘度:38mm/s)
(b)増ちょう剤
(b1)フッ素系増ちょう剤:PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)樹脂、粒径0.3μm〜25μm
なお、PTFE樹脂の平均粒子径は、JIS Z 8825による<粒子径解析−レーザー回折・散乱法>に従い、レーザー回折散乱式粒度分布測定機((株)堀場製作所製、型番:LA−920)を用い、PTFE樹脂を分散させるためのフッ素系の界面活性剤を溶媒として用いて測定した。
(b2)Li石鹸増ちょう剤:12OHLi石鹸(12−ヒドロキシステアリン酸リチウム)
(b3)Ba複合石鹸増ちょう剤:セバシン酸とモノステアリルアミドとのバリウム複合石鹸
(b4)ウレア系増ちょう剤:脂肪族ウレアを含むウレア化合物
(c)添加剤
(c1)極圧添加剤
(c1−1)リン系極圧添加剤1:トリクレジルホスフェート(TCP)、製品名「リン酸トリトリル」、富士フイルム和光純薬(株)製
(c1−2)リン系極圧添加剤2:トリフェノキシホスフィンスルフィド(TPPS)、製品名「IRGALUBE TPPT」、BASFジャパン(株)
(c1−3)高分子エステル系極圧添加剤、製品名「Perfad 8400」、クローダジャパン(株)製
(c2)酸化防止剤:ジアリールアミン系酸化防止剤、製品名「IRGANOX L57」、BASFジャパン(株)
【0059】
得られたグリース組成物の特性について、以下の手順にて潤滑特性(摩擦摩耗試験)及び付着性(粘度測定試験)を評価した。
なお、上記実施例及び比較例のグリース組成物の混和ちょう度はいずれも280であった。(JIS K 2220 7に従う測定による)。
【0060】
<試験方法>
1.潤滑特性評価:摩擦摩耗試験
図3に示す摩擦摩耗試験の概念図に示すように、平板上にナイロンシートを設け、この上に各グリース組成物を塗布して積層試料とし、該積層試料を水に浸水させた。浸水させた状態にて、この積層試料のナイロンシートの表面で、所定の荷重にてプローブ(樹脂ピン)を摺動させ、その際の摩擦係数を測定した。1000ストロークの摺動サイクルの間、測定を実施し、得られた値の最大値を各測定における摩擦係数とした。
各実施例および比較例のグリース組成物につき、それぞれ3回ずつ試験を行い、3回の平均値を各グリース組成物の摩擦係数とし、下記に示す評価基準に照らし合わせ、潤滑特性を評価した。
また図5には、実施例2及び比較例3のグリース組成物において、プローブの摺動時に観測された摩擦係数の変位の挙動を示す(実施例2:図5(a)、比較例3:図5(b))。
<試験条件>
・測定装置:新東科学(株)製 荷重変動型摩擦摩耗試験システム HHS2000
・測定条件:水中試験
・プローブ:樹脂ピン(ピン直径:2.5mm、ピン種類:PPA樹脂)
・フィードスケール:1mm
・荷重:1000g
・摺動速度:1.0mm/秒
・摺動サイクル:1000ストローク
<評価基準>
本実施例の試験条件において、摩擦係数が低いほど潤滑特性が優れていることを示す。
なお摩擦係数値が0.1を超えると、後述するスイッチ実機試験において防水フィルムに破れが発生することを確認しており、0.1以下を好適とする。
A(好適):摩擦係数が0.1以下
N(不適):摩擦係数が0.1超
【0061】
2.付着性評価:粘度測定試験
図4に示すレオメータ回転粘度計を用い、DIN51810を参照して、以下の手順及び試験条件にて粘度測定を行った。
<試験手順>
下部プレート上に各グリース組成物を塗布した後、プレート全体を浸水させた。コーンプレートの先端と下部プレートが所定のギャップとなるように、上部からコーンプレートを下降させ、余剰のグリースを除去した。300s−1にてコーンプレートを回転させ、1分間粘度測定を実施し、1分後の測定値を各測定における粘度の値とした。
各実施例および比較例のグリース組成物につき、それぞれ3回ずつ試験を行い、3回の平均値を各グリース組成物の粘度の値とし、下記に示す評価基準に照らし合わせ、付着性を評価した。
<試験条件>
・測定装置:レオメータ回転粘度計(Anton Paar社製 MCR302)
・測定条件:水中試験
・測定温度:25℃
・測定治具:直径25mmのコーンプレート(品番:CP25−1/TG)
・下部プレートとコーンプレート(先端)とのギャップ:0.108mm
・せん断速度:300[1/s]
・測定時間:1分間
<評価基準>
本実施例の試験条件において、粘度が高いほど付着性に優れることを示す。
なお粘度測定値が4Pa・s未満であると付着性が悪化し、経時的にグリースが除去され、摩耗が促進し、スイッチのフィーリング(クリック感)が低下する傾向がみられるグリースとなる虞があるため、4.0Pa・s以上を好適とする。
A(好適):粘度が4.0Pa・s以上
N(不適):粘度が4.0Pa・s未満
【0062】
結果を表1及び表2に示す。なお、表中の配合量:質量%は組成物の全質量に対する値である。
また図6及び図7には、実施例1乃至4並びに比較例8及び9のグリース組成物において、使用した合成炭化水素油(ポリアルファオレフィン)の40℃における動粘度の値に対する、測定されたグリース組成物の粘度の値(Pa・s)(図6)、又は、摩擦係数の値(図7)をそれぞれ示す。
さらに図8に、実施例1乃至8及び比較例1乃至11のグリース組成物において、測定された粘度の値(Pa・s)に対する摩擦係数の値を示す。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
前述したように図5は、実施例2及び比較例3のグリース組成物において、プローブの摺動時に観測された摩擦係数の変位の挙動を示した図である(実施例2:図5(a)、比較例3:図5(b))。
図5に示すように、最も高い摩擦係数の値はプローブが動き出す瞬間または静止する瞬間の静止摩擦係数に対応し、実施例2(図5(a))は比較例3(図5(b))に比べて摩擦係数が低く抑えられていることがこの図からも明確に確認できる。
【0066】
また前述したように、図6は、合成炭化水素油(ポリアルファオレフィン)の40℃における動粘度の値を18〜300mm/sに変化させたグリース組成物(実施例1〜4、比較例8及び9)における、グリース組成物の粘度測定試験の結果である。
図6に示すグラフの横軸は合成炭化水素油(ポリアルファオレフィン)の40℃におけ
る動粘度の値(mm/s)であり、縦軸は測定された粘度の値(Pa・s)である。
なお、図6中、横軸に対して平行に付された矢印は、粘度測定試験と後述する摩擦摩耗試験の何れにおいても良好な特性が得られた合成炭化水素油の40℃における動粘度の範囲を示す。
図6に示すように、合成炭化水素油の40℃における動粘度が50mm/sより低くなるとグリース組成物自体の粘度が急激に低下しはじめ、30mm/sを下回ると粘度が4Pa・sを下回る挙動を示すことが確認できた。すなわち、グリース組成物の付着性は、合成炭化水素油の40℃における動粘度が30mm/s以上であるとき、良好な特性(粘度:4Pa・s以上)が得られる。
【0067】
図7は、合成炭化水素油(ポリアルファオレフィン)の40℃における動粘度の値を18〜300mm/sに変化させたグリース組成物(実施例1〜4、比較例8及び9)における、グリース組成物の摩擦摩耗試験の結果である。
図7に示すグラフの横軸は合成炭化水素油(ポリアルファオレフィン)の40℃における動粘度の値(mm/s)であり、縦軸は測定された摩擦係数の値である。
なお、図7中、横軸に対して平行に付された矢印は、摩擦摩耗試験と前述の粘度測定試験の何れにおいても良好な特性が得られた合成炭化水素油の40℃における動粘度の範囲を示す。
図7に示すように、合成炭化水素油の40℃における動粘度が100mm/sを超えるとグリース組成物の摩擦係数は急激な上昇をはじめ、220mm/sを超えると摩擦係数が0.1を超える挙動を示すことが確認できた。すなわち、グリース組成物の潤滑特性は、合成炭化水素油の40℃における動粘度が220mm/s以下であるとき、良好な特性(摩擦係数:0.1以下)が得られる。
【0068】
図8は、実施例1乃至8及び比較例1乃至11で調製した各種グリース組成物において測定された粘度の値(Pa・s)に対する摩擦係数の値を示したものである。図8中、最適領域内にあるグリース組成物が粘度測定試験及び摩擦摩耗試験の何れにおいても良好な特性が得られたものである。
【0069】
表1に示すように、実施例1乃至8のグリース組成物は、何れも、粘度が4Pa・s以上、摩擦係数が0.1以下となり、付着性に優れ、かつ、潤滑特性にも優れることが確認された。
また実施例3、実施例5及び実施例6に示すように、極圧添加剤はリン系添加剤及び高分子エステル系添加剤のいずれも好適であるとする結果が得られた。
さらに、実施例3、実施例7、実施例8に示すように、フッ素系基油/フッ素系増ちょう剤と、合成炭化水素油/リチウム石鹸増ちょう剤を、幅広い割合で変化させた場合においても、付着性及び潤滑特性に優れる結果が得られた。
【0070】
一方、表2に示すように、フッ素系基油とフッ素系増ちょう剤からなる比較例1のグリース組成物は、摩擦係数が0.1以下となり、潤滑特性には優れるものの、粘度が4Pa・sを大きく下回り(1.2Pa・s)、付着性に大きく劣る結果となった。
また、合成炭化水素油とリチウム石鹸増ちょう剤及び極圧添加剤を含有するものの、フッ素系基油及び増ちょう剤を含有しない比較例2乃至4のグリース組成物にあっては、粘度は4Pa・s以上(4.8〜5.1Pa・s)であり、付着性には優れるものの、摩擦係数が0.1を超え(0.1382〜0.1694)、潤滑特性に欠ける結果となった。また、合成炭化水素油の40℃における動粘度が比較的低い比較例5(30mm/s)にあっては、潤滑特性(摩擦係数:0.112)だけでなく、付着性(粘度:3.8Pa・s)も悪くなり、いずれの特性も満足しない結果となった。
【0071】
さらに、実施例3のグリース組成物において、リチウム石鹸増ちょう剤に替えて、バリ
ウム複合石鹸増ちょう剤(比較例6)又はウレア系増ちょう剤(比較例7)を用いたグリース組成物は、粘度は4Pa・s以上(4.6〜4.9Pa・s)となり、付着性は満足したものの、摩擦係数が0.1を超え(0.1181〜0.1292)、実施例3と比較して潤滑特性に劣る結果が得られた。すなわち本発明の目的において、特に潤滑特性を満足するためにはリチウム石鹸増ちょう剤の選択が好適であることが確認された。
【0072】
また、合成炭化水素油の40℃における動粘度が30〜200mm/sの範囲内にあるグリース組成物(実施例1乃至4)に対して、上記範囲を上回る動粘度の値を有する合成炭化水素油を用いた比較例8(300mm/s)にあっては摩擦係数が高く(0.1103)、一方、上記範囲を下回る動粘度の値を有する合成炭化水素油を用いた比較例9(18mm/s)は粘度が低い(3.4Pa・s)結果となり、好適な合成炭化水素油の動粘度の範囲があることが確認された。
【0073】
そして、リン系添加剤または高分子エステル系の極圧添加剤を配合したグリース組成物(実施例2、3、5及び6)に対して、これら極圧添加剤を配合しない比較例10及び11のグリース組成物は、摩擦係数が0.1を超え(0.1218〜0.1323)、潤滑特性に欠ける結果となった。実施例2、3、5及び6のグリース組成物は、摩擦係数が0.1以下(0.0864〜0.0948)であり、極圧添加剤が配合されることで、3割程度摩擦係数を低減することができる。
前述したように極圧添加剤は、一般に金属の二面の間の摩擦、摩耗の減少や、焼付き防止を目的として配合される添加剤であるものの、本発明にあっては、樹脂摺動面に適用する場合においても、摩擦係数が低下することが見出された。
【0074】
〔実機を用いた性能評価〕
実施例及び比較例のグリース組成物を用いて、スライドスイッチ実機及び歯車装置実機を用いた試験を実施した。なお、以降の説明において、グリース組成物の例番号を、自機の評価の例番号としても扱うものとする。
【0075】
<スライドスイッチ>
実施例3、比較例1及び比較例6のグリース組成物を用いて、スライドスイッチ実機を用いた試験を実施した。
図1に示すスライドスイッチ101を用い、所定箇所:スライダ110における接点操作部113の第二防水フィルム105との接触箇所(スライダ110の下部:樹脂摺動面)と、スライダ110の各凸部110a(樹脂摺動面)に、上記の各グリース組成物を塗布し、水中にて2万サイクルのスイッチ動作を実施した。なお、スライダ110はPPA樹脂にて、第二防水フィルム105はPPA樹脂にて構成した。試験後の第二防水フィルム105の状態を観察するとともに、2万サイクル後のスイッチング時のトルクフィーリング(操作感)を確認した。
【0076】
実施例3は、水中にてスライドスイッチを2万サイクル動作させた後も、防水フィルムの破れが発生せず、また、2万サイクル後のスイッチング時のトルクフィーリングも、その減少の程度が20%と低く抑えられた。
一方比較例1は、上記試験後において防水フィルムの破れは発生しなかったものの、スライダ樹脂の摩耗に伴うとみられるスイッチング時のトルクフィーリングの減少が大きく、減少率は50%程度に及んだ。
また比較例6は、スイッチング時のトルクフィーリングの減少は30%程度に抑えられたものの、防水フィルムのスライダとの接触部、特に起動/停止部(図1(b)において、接点操作部113が第二防水フィルム105を介して可動接点109を変位させる際の、可動接点109が第二防水フィルム105に接触した部分)において、スイッチング動作により生じる摩耗により破れが発生した。
以上の結果より、実施例3のグリース組成物が樹脂摺動面に適用されたスライドスイッチは、水接触環境下にあっても樹脂摺動面からのグリースの除去が抑制され、優れた潤滑特性を保持することができることが確認された。
【0077】
<歯車装置>
実施例3、比較例1及び比較例7のグリース組成物を用いて、歯車装置実機を用いた試験を実施した。
図2に示す多段歯車装置201を用い、第一段歯車220と第二段歯車203との噛み合せ部X、第二段歯車203と第三段歯車205との噛み合せ部Y、第二段歯車203の軸受部204a、および第三段歯車205の軸受部206aに、上記の各グリース組成物を塗布し、以下に示す耐久性試験を実施した。なお第一段歯車220、第二段歯車203、第二段歯車203の軸受部204a、第三段歯車205、第三段歯車205の軸受部206aはPPA樹脂で構成した。
・負荷荷重:35Ncm
・環境温度:−30℃〜85℃ (温度変化による結露により水が接触した環境下)
・試験手順:アクチュエータ出力軸212にアームと錘(負荷荷重)を設置し、上記温度条件で、アクチュエータ出力軸212に取り付けたアームと錘の往復運動(出力先の1/2回転:CW、CCW1回の往復運動)を45,000回(1回約15秒)連続動作させた。
試験開始前後の歯車装置の出力トルクを測定し、変化率を求めた。
【0078】
実施例3は、試験開始初期と試験後のトルク変化率が小さく、潤滑特性の耐久性に優れるという良好な結果が得られた。
一方、比較例1は、試験後の出力トルクが開始前と比べておよそ60%も低減した。試験終了後、歯車装置を分解したところ、グリース組成物が塗布されているはずの歯車の噛み合せ部(歯面)にグリース組成物が付着しておらず、潤滑不良を起こし、摩擦力の上昇、さらには出力トルクの低減につながったものと考えられる。
また比較例7は、表2に示すようにグリース組成物自体の摩擦係数が高く、試験開始前において既に初期トルクが低いものとなり、潤滑性特性に劣ることが確認された。
【0079】
以上の通り、フッ素系基油及び合成炭化水素油と、フッ素系増ちょう剤及びリチウム石鹸増ちょう剤と、極圧添加剤とを含有してなる本発明の樹脂潤滑用グリース組成物は、樹脂摺動面に対する付着性並びに潤滑特性に優れることが確認され、該グリース組成物の適用により、摩擦・摩耗を抑制し長寿命化を実現できる樹脂摺動部材の提供を実現できることが見出された。
【0080】
以上、最良の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれものである。
【符号の説明】
【0081】
101…スライドスイッチ、 102…ハウジング、 103…カバー、 104…第一防水フィルム、 105…第二防水フィルム、 106…第一固定接点、 107…第二固定接点、 108…第三固定接点、 109…可動接点、 110…スライダ、 110a…凸部、 113…接点操作部、 114…クリックばね、 114a…凸部
201…多段樹脂歯車装置、 202…第一段歯車、 203…第二段歯車、 204…第二段歯車の軸、 204a…軸受部(グリース塗布部)、 205…第三段歯車、 206…第三段歯車の軸、 206a…軸受部(グリース塗布部)、 X…第一段歯車と第二段歯車との噛み合せ部、 Y… 第二段歯車と第三段歯車との噛み合せ部、 211…モータ、 211a…モータ出力軸、 212…アクチュエータ出力軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8