【実施例】
【0036】
次に、実施例及び比較例を説明する。
(実施例1)
表1に示すように、10%K値が14.23GPaであり、平均粒子径が7.01μmであり、CV値が1.58%であるポリオルガノシロキサン粒子(ポリメチルシロキサン粒子、宇部エクシモ株式会社製、商品名:ハイプレシカTS N5N)150gを、マッフル炉(光洋サーモシステム(株)製、KBF728N)を用いて、大気雰囲気下、350℃、1時間の条件で焼成することにより親水性粒子を得た。
【0037】
(実施例2,3)
表1に示すように、焼成時間を変更した以外は、実施例1と同様にして各例の親水性粒子を得た。
【0038】
(実施例4)
表1に示すように、10%K値が8.18GPaであり、平均粒子径が3.11μmであり、CV値が2.04%であるポリオルガノシロキサン粒子(ポリメチルシロキサン粒子、宇部エクシモ株式会社製、商品名:ハイプレシカTS N5aN)150gを、マッフル炉(光洋サーモシステム(株)製、KBF728N)を用いて、大気雰囲気下、350℃、48時間の条件で焼成することにより親水性粒子を得た。
【0039】
(実施例5)
表1に示すように、焼成時間を変更した以外は実施例4と同様にして親水性粒子を得た。
【0040】
(実施例6)
表1に示すように、10%K値が5.41GPaであり、平均粒子径が5.23μm、CV値が1.63%であるポリオルガノシロキサン粒子(ポリメチルシロキサン粒子、宇部エクシモ株式会社製、商品名:ハイプレシカTS N6N)150gを、マッフル炉(光洋サーモシステム(株)製、KBF728N)を用いて、大気雰囲気下、330℃、7時間の条件で焼成することにより、親水性粒子を得た。
【0041】
(実施例7,8)
表1に示すように、焼成温度及び焼成時間を変更した以外は、実施例1と同様にして親水性粒子を得た。
【0042】
(比較例1)
比較例1の粒子は、実施例1で用いたポリオルガノシロキサン粒子(ポリメチルシロキサン粒子、宇部エクシモ株式会社製、商品名:ハイプレシカTS N5N)である。
【0043】
(比較例2)
表1に示すように、10%K値が1.55GPaであり、平均粒子径が7.08μmであり、CV値が1.57%であるポリオルガノシロキサン粒子(ポリメチルシロキサン粒子、宇部エクシモ株式会社製、商品名:ハイプレシカTS N7N)150gを、マッフル炉(光洋サーモシステム(株)製、KBF728N)を用いて、大気雰囲気下、350℃、7時間の条件で焼成することにより親水性粒子を得た。
【0044】
(10%K値、平均粒子径及びCV値の測定方法)
粒子の試料の10%K値は、次のように測定することができる。まず、粒子10個の10%K値を測定し、それら10%K値の平均値を求めた。この測定には、微小圧縮試験機(MCTE−200、株式会社島津製作所製)を用いた。10%K値は下記式(1)によって求められる。
【0045】
10%K値[N/mm
2]=(3/2
1/2)×F×S
−3/2×R
−1/2…(1)
上記式(1)中のFは、粒子の10%圧縮変形における荷重[N]であり、Sは粒子の10%圧縮変形における変位[mm]であり、Rは粒子の半径[mm]である。
【0046】
粒子の試料の平均粒子径及びCV値は、コールターカウンター(マルチサイザーIVe、ベックマン・コールター(株)製)を用いて求めた。粒度分布の変動係数(CV値)は、下記式(2)により算出することができる。
【0047】
CV値(%)={粒子径の標準偏差[μm]/平均粒子径[μm]}×100…(2)
各例の上記物性の測定結果を表1及び表2に示す。
(水分散性の評価)
110mLスクリュー管瓶中にイオン交換水45g及び粒子の試料の乾燥粉体5gを入れ、超音波処理機を用いて、振とうしつつ、室温下、5分間の条件で超音波処理をした。
【0048】
超音波処理後のスクリュー管瓶の水面を観察し、全ての粒子が液に濡れて水中に分散しているものを良好(○)、水面上に浮遊する粒子が目視できる場合を不良(×)と判定した。その結果を表2に示す。
【0049】
(表面原子濃度比(OH/O比))
粒子表面に存在するOH基を、光電子X線スペクトル(ESCA)により測定した。粒子表面に存在するOH基の測定は、OH基1個に対して1原子の割合で修飾されるBr原子を定量する下記の分析方法を用いた。この分析方法により、シロキサン骨格を主体とするポリオルガノシロキサン粒子の表面(表層より数nm)における、Si原子に結合するO原子、OH基、C原子(有機基由来)を定量的に比較することができる。
【0050】
1.OH基の修飾処理
試料を修飾試薬(含臭素ケイ化合物)に浸漬し、室温で一晩放置した。次に、試料をアセトニトリルにて十分に洗浄、ろ過し、乾燥後、サンプリングすることで、粒子表面のOH基をBr基に置換した試料を得た。
【0051】
2.装置及び測定条件
粒子の試料について、表面の元素含有量を測定した。まず、粒子の試料の粉体を接着テープ(セロハンテープ)上に固定した後、試料台に固定し、X線光電子分光装置内にセットした。X線光電子分光装置により、粉体の表面原子濃度を測定し、粒子表面炭素量(質量%)を算出した。なお、表面原子濃度は、検出元素(C,O,Si,Br)のナロースペクトルにおけるピーク強度を基にして、アルバック・ファイ社提供の相対感度因子を用いて計算した。使用した装置名及び測定条件は以下のとおりである。
【0052】
装置名:PHI製1600S型X線光電子分光装置
測定条件:X線源 MgKα 100W、分析領域 0.8×2.0mm
(吸水率の測定)
まず、粒子の試料をガラス製シャーレに入れ、150℃のオーブンで1時間以上乾燥した後、デシケーターの中で室温まで放冷した。その後、電子天秤で15g程度の粒子の試料を秤量した。粒子の試料を秤量したシャーレを150℃で3時間乾燥し、直ちに五酸化リンの入ったデシケーター中で冷却した。室温まで冷却した後、粒子の試料の質量を測定した。このときの質量を吸水前の粒子の試料の質量とした。
【0053】
次に、粒子の試料を30℃、90%RHに設定した恒温恒湿チャンバーに放置し、吸水させた。24時間経過毎に試料の質量(吸水後の試料の質量)を測定し、下記式(3)により吸水率を算出した。24時間経過前後における吸水率の変化量が0.5%以下になったところで、飽和吸水状態に達したと判断し、測定を終了した。
【0054】
吸水率[%]=(K2−K1)/K1×100…(3)
但し、上記式(3)中のK1は、吸水前の粒子の試料の質量を示し、K2は、吸水後の粒子の試料の質量を示す。1つの粒子の試料について3回測定を行い、その平均値を吸水率とした。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
表1及び表2に示される実施例1〜8の親水性粒子は、10%K値が2GPa以上、20GPa以下の範囲内のポリオルガノシロキサン粒子を原料として用いて、酸素濃度が7体積%以上の雰囲気下で焼成する焼成工程により得られている。各実施例の親水性粒子の10%K値は、20.73GPa以下であり、吸水率は、2.23%以上であった。
【0057】
これに対して、比較例1の粒子については、焼成工程を行っていないため、各実施例の親水性粒子のような親水性は得られないことが分かる。また、比較例2では、10%K値が2GPa未満のポリオルガノシロキサン粒子を原料として用いている。この比較例2では、ポリオルガノシロキサン粒子を実施例2と同じ焼成条件で焼成した結果、10%K値は、37.60GPaとなった。この結果から、比較例2のポリオルガノシロキサン粒子を焼成した場合、粒子の硬質化が急激に進行するため、各実施例のように柔軟性を有する親水性粒子を容易に得られないことが分かる。
【0058】
(導電性粒子の作製)
1.金属核の形成工程
実施例1の親水性粒子の試料の表面に金属核を形成した。金属核の形成では、粒子の試料10gを、イソプロピルアルコールとメタノールとの混合溶媒68mLに浸漬し、塩化金酸(HAuCl
4・4H
2O)0.086gと3−アミノプロピルトリメトキシシラン1.14mlを加え、テトラヒドロホウ酸ナトリウム(NaBH
4)0.036gで還元した。これにより、表面に金属核が形成された粒子を得た。
【0059】
2.導電性被膜の形成工程
金属核を形成した粒子の試料10gを水523mLに分散させ、3−メルカプトトリエトキシシラン0.073mLを加え超音波を照射し、メタノール450mLと水150mLの混合溶媒に添加した。あらかじめ水60mLと混合しておいた硝酸銀6.043g、及び25質量%アンモニア水溶液121mLを加えた。さらに、37%ホルムアルデヒド液181mLを加えて液中の銀イオンを還元することにより、実施例1の親水性粒子の表面に導電性被膜としての銀被膜を有する導電性粒子を得た。
【0060】
以上の手順と同様にして、実施例2〜8、及び比較例2の親水性粒子についても、銀被膜を形成することで導電性粒子を作製した。このとき、金属核の形成工程及び導電性被膜の形成工程では、親水性粒子に略同じ厚さの導電性被膜が形成されるように、例えば、導電性被膜の原料となる硝酸銀等の配合量等を親水性粒子の平均粒子径に応じて適宜調整した。
【0061】
なお、比較例1の粒子については、金属核及び銀被膜を形成する反応が進んだ様子が観察されず、被膜を形成することができなかった。
(導電性粒子の作成結果)
実施例1〜8、及び比較例2の親水性粒子の試料の表面に金属核を形成した粒子は、いずれも赤色を呈していた。
【0062】
実施例1〜8、及び比較例2の親水性粒子から得られた導電性粒子について、親水性粒子の平均粒子径と導電性粒子の平均粒子径の差から銀被膜の厚さを算出した結果、いずれも0.05μm以上であった。
【0063】
導電性粒子の表面、すなわち親水性粒子(コア粒子)の表面に形成された被膜の外観について、走査型顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope、JEOL社製、JSM−6700F)を用いて、1画面にて20〜50個の親水性粒子が観察できる程度の倍率を目安に、1000倍〜10000倍の倍率で観察し、以下の基準で評価した。その評価結果を表3に示す。
【0064】
○:欠陥や不連続箇所を確認できないレベルにまで緻密に被膜形成されている。
△:被膜の一部に欠陥が見られる。
×:被膜が断続的に形成、又は被膜が形成されていない。
【0065】
(平均電気抵抗値)
導電性粒子の電気接続性について、電気抵抗値を測定することにより評価した。具体的には、微小圧縮試験機(株式会社島津製作所製)を用いて、20個の導電性粒子のそれぞれについて電気抵抗値を測定し、その測定値の平均値を平均電気抵抗値とした。その結果を表3に示す。
【0066】
(発現率)
発現率とは、電気抵抗値が計測可能な粒子個数の割合をいう。例えば、被膜の形成不良や剥離、密着不良等により、電気抵抗値が計測不可となった場合、O.R.(測定不可)となる。発現率は、微小圧縮試験機(株式会社島津製作所製)を用いて、20個の導電性粒子について電気抵抗値を測定し、下記式(4)により算出することができる。
【0067】
発現率(%)=電気抵抗値が計測できた粒子個数/計測した全個数×100…(4)
発現率を算出した結果を表3に示す。
【0068】
【表3】