特許第6756002号(P6756002)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6756002
(24)【登録日】2020年8月28日
(45)【発行日】2020年9月16日
(54)【発明の名称】アシストスーツ
(51)【国際特許分類】
   B25J 11/00 20060101AFI20200907BHJP
【FI】
   B25J11/00 Z
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-87530(P2019-87530)
(22)【出願日】2019年5月7日
(62)【分割の表示】特願2015-5123(P2015-5123)の分割
【原出願日】2015年1月14日
(65)【公開番号】特開2019-135080(P2019-135080A)
(43)【公開日】2019年8月15日
【審査請求日】2019年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】林 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】坂野 倫祥
(72)【発明者】
【氏名】西田 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】林 正彦
【審査官】 石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−052192(JP,A)
【文献】 特開2006−043872(JP,A)
【文献】 特表2013−531593(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00−21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者が背負う位置に配置される本体部と、
前記本体部から前記作業者の側方を通って大腿部まで延出し、当該延出した位置から前記大腿部の前側部に当接可能に設けられる脚作用部と、
前記作業者の指示に応じて前記脚作用部が前記前側部に作用する荷重を調節する脚部用モータと、
前記作業者の胴体と前記大腿部とのなす角の角度を検出する検出部と、
前記本体部に設けられ、検出された前記角度に基づいて前記脚部用モータの出力トルクを制御するモータ制御部と
前記本体部から前記作業者の頭部を超え、前記作業者の前方の位置まで延出するアーム部と、
前記アーム部の先端部からワイヤで吊り下げられ、前記作業者が手で荷物を保持する際に前記荷物を支持する荷物作用部と、
前記本体部に設けられ、前記作業者の指示に応じて前記ワイヤを巻き上げる巻上用モータと、を備え、
前記作業者の指示に応じて前記巻上用モータが駆動すると同時に、前記脚部用モータが駆動するアシストスーツ。
【請求項2】
前記脚作用部は、前記作業者が曲げた状態の膝部を延ばす際に前記前側部を押圧する請求項1に記載のアシストスーツ。
【請求項3】
前記モータ制御部は、前記検出部により検出された前記角度が大きくなるにつれて、前記脚作用部が前記前側部を押圧する押圧力を低減する請求項2に記載のアシストスーツ。
【請求項4】
前記モータ制御部は、前記作業者が手にする荷物の重量に拘らず、前記角度に基づく前記出力トルクを維持する請求項1から3のいずれか一項に記載のアシストスーツ。
【請求項5】
前記モータ制御部は、前記脚部用モータの出力トルクが予め設定された許容トルクから逸脱した場合に、前記脚部用モータを停止する請求項1から4のいずれか一項に記載のアシストスーツ。
【請求項6】
前記検出部は、前記本体部に対して前記脚作用部が回転する回転軸に設けられたポテンショメータである請求項1から5のいずれか一項に記載のアシストスーツ。
【請求項7】
前記巻上用モータによる前記ワイヤの巻き上げ量を検出する巻き上げ量検出部と、
前記巻き上げ量検出部により検出された前記巻き上げ量に基づいて前記巻上用モータの巻き上げ速度を制御する巻上用モータ制御部と、を備え、
前記巻上用モータ制御部は、前記荷物作用部に支持されている前記荷物の重量に拘らず、前記巻き上げ速度を維持する請求項1から6のいずれか一項に記載のアシストスーツ。
【請求項8】
前記巻上用モータ制御部は、前記巻き上げ量検出部により検出された前記巻き上げ量に基づいて前記荷物作用部が前記作業者の顔の前を通過すると判断したときは、前記巻き上げ速度を前記荷物作用部が前記顔に到達するまでの前記巻き上げ速度よりも低減する請求項に記載のアシストスーツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者の作業(動作)を補助するアシストスーツに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば工場や作業場で荷物を移動したり、介護現場において介護対象者の介護を行ったりする際に、これらの作業を行う人(以下「作業者」とする)の筋肉や骨格に対する負担が問題となっていた。そこで、作業者の負担を軽減すべく、動力によって作業者の動作を補助する技術が検討されてきた(例えば特許文献1及び2)。
【0003】
特許文献1に記載の携帯型吊り上げシステムは、荷吊り上げ機構からワイヤで吊り下げられたエンド・エフェクタと、当該エンド・エフェクタに荷物が固定された時にワイヤを巻き上げるモータとを備えて構成される。また、人の下肢に装着可能な脚サポートとして、大腿リンクとすねリンクとを備えて構成される。
【0004】
特許文献2に記載のパワーアシストロボット装置は、荷物を吊り上げるリフタ装置を有して構成され、このリフタ装置が荷物を吊り上げる際には、空気圧を動力源とする空気圧人工ゴム筋肉が用いられる。また、左右の股関節及び膝関節の動きを補助するために空気圧シリンダが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2013−531593号公報
【特許文献2】特開2013−52192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術は、股関節や膝の関節を伸ばしたり曲げたりする際の関節の動きをアシストすることまで想定されていない。このため、曲げていた膝を伸ばす際に作業者の動作を補助することができない。また、特許文献2に記載の技術は、股関節や膝の関節を伸ばしたり曲げたりする際に、これらの関節の動きをアシストするが、アシスト力を状況に応じて調節することまで想定されていない。このため、アシスト力が作業者の動きと対応していない場合には作業者が違和感を持つ可能性がある。
【0007】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、作業者の動きに合わせて作業者の立ち上がり動作を補助することが可能なアシストスーツを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係るアシストスーツの特徴構成は、作業者が背負う位置に配置される本体部と、前記本体部から前記作業者の側方を通って大腿部まで延出し、当該延出した位置から前記大腿部の前側部に当接可能に設けられる脚作用部と、前記作業者の指示に応じて前記脚作用部が前記前側部に作用する荷重を調節する脚部用モータと、前記作業者の胴体と前記大腿部とのなす角の角度を検出する検出部と、前記本体部に設けられ、検出された前記角度に基づいて前記脚部用モータの出力トルクを制御するモータ制御部と、前記本体部から前記作業者の頭部を超え、前記作業者の前方の位置まで延出するアーム部と、前記アーム部の先端部からワイヤで吊り下げられ、前記作業者が手で荷物を保持する際に前記荷物を支持する荷物作用部と、前記本体部に設けられ、前記作業者の指示に応じて前記ワイヤを巻き上げる巻上用モータと、を備え、前記作業者の指示に応じて前記巻上用モータが駆動すると同時に、前記脚部用モータが駆動する点にある。
【0009】
このような特徴構成とすれば、作業者の胴体と大腿部とのなす角の角度に基づいて膝部の前側部を押圧する荷重を変更することができるので、作業者に違和感を与えずに作業者の膝部の前側部を押圧することが可能となる。したがって、作業者の動きに合わせて作業者の立ち上がり動作を補助することが可能となる。
また、このような構成とすれば、アシストスーツを用いて荷物を持ち上げ易くすることが可能となる。
【0010】
また、前記脚作用部は、前記作業者が曲げた状態の膝部を延ばす際に前記前側部を押圧すると好適である。
また、前記モータ制御部は、前記検出部により検出された前記角度が大きくなるにつれて、前記脚作用部が前記前側部を押圧する押圧力を低減すると好適である。
【0011】
このような構成とすれば、作業者が荷物を持ち上げる際に、大腿部の前側部を押圧して、曲げた膝部を伸ばし易くすることができる。したがって、作業者の膝部に対する負担を軽減することが可能となる。
【0012】
また、前記モータ制御部は、前記作業者が手にする荷物の重量に拘らず、前記角度に基づく前記出力トルクを維持すると好適である。
【0013】
このような構成とすれば、荷物の重量に拘らず作業者の膝部の前側部を押圧することができるので、作業者に違和感を持たさなくすることができる。また、荷物の重量に拘らず、効率良く作業を行うことが可能となる。
【0014】
また、前記モータ制御部は、前記脚部用モータの出力トルクが予め設定された許容トルクから逸脱した場合に、前記脚部用モータを停止すると好適である。
【0015】
このような構成とすれば、作業者の膝部の前側部を押圧している時に、例えば何らかの異物がアシストスーツの可動部に噛み込まれたり、巻き込まれたりする等して脚部用モータの出力トルクが急上昇した場合は、脚部用モータを停止することができる。したがって、その状態で異物を取り除いたり、脚部用モータを逆回転させて異物を取り除いたりすることが可能となる。
【0016】
また、前記検出部は、前記本体部に対して前記脚作用部が回転する回転軸に設けられたポテンショメータで構成することが可能である。
【0017】
このような構成とすれば、簡素な構成で作業者の膝部の曲げ状態を正確に検出することができる。このようなポテンショメータの検出結果に基づき脚部用モータの出力トルクを制御することで、作業者に違和感を持たせることなく、作業者の動きに合わせて膝部の前側部を押圧することが可能となる。
【0018】
また、前記巻上用モータによる前記ワイヤの巻き上げ量を検出する巻き上げ量検出部と、前記巻き上げ量検出部により検出された前記巻き上げ量に基づいて前記巻上用モータの巻き上げ速度を制御する巻上用モータ制御部と、を備え、前記巻上用モータ制御部は、前記荷物作用部に支持されている前記荷物の重量に拘らず、前記巻き上げ速度を維持すると好適である。
また、前記巻上用モータ制御部は、前記巻き上げ量検出部により検出された前記巻き上げ量に基づいて前記荷物作用部が前記作業者の顔の前を通過すると判断したときは、前記巻き上げ速度を前記荷物作用部が前記顔に到達するまでの前記巻き上げ速度よりも低減すると好適である。
【0019】
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】作業者が装着した状態でのアシストスーツの側面図である。
図2】作業者が装着した状態でのアシストスーツの背面図である。
図3】アシストスーツを利用した荷物の持ち上げについて示す図である。
図4】アシストスーツを利用した荷物の持ち上げについて示す図である。
図5】胴体と大腿部とのなす角の角度と脚作用部の押圧力との関係を示す図である。
図6】荷物の位置と巻き上げ速度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係るアシストスーツは、作業者による荷物の積み上げ作業や積み下ろし作業の補助を行う機能を備えて構成される。以下、本実施形態のアシストスーツ1について説明する。
【0022】
図1には、作業者100に装着された本実施形態のアシストスーツ1の側面図が示される。図2には、作業者100に装着された本実施形態のアシストスーツ1の背面図が示される。図1に及び図2に示されるように、アシストスーツ1は、本体部10、アーム部11、荷物作用部12、巻上用モータ13、巻き上げ量検出部14、回転数検出部15、巻上用モータ制御部16、脚作用部17、脚部用モータ18、検出部20、脚用モータ制御部21を備えて構成される。特に、巻き上げ量検出部14、回転数検出部15、巻上用モータ制御部16、検出部20、脚用モータ制御部21は、アシストスーツ1の駆動制御に係る種々の処理を行うために、CPUを中核部材としてハードウェア又はソフトウェア或いはその両方で構築されている。
【0023】
本体部10は、作業者100が背負う位置に配置される。本体部10には腰ベルト2と肩ベルト3とが付設される。本実施形態では、アシストスーツ1は腰ベルト2により作業者100の腰に固定され、補助的に肩ベルト3で作業者100が背負う形態で装着される。
【0024】
アーム部11は、本体部10から作業者100の頭部を超え、作業者100の前方の位置まで延出して設けられる。アーム部11は本体部10を挟むように2本の中空パイプを用いて構成される。本体部10から延出し、作業者100の頭部近傍に達した位置で、頭部との接触を防止するように2本のアーム部11の間隔を徐々に広くしながら、作業者100の頭部よりも前側に向って延出される。
【0025】
荷物作用部12は、アーム部11の先端部11Aからワイヤ31で吊り下げられ、作業者100が手で荷物を保持する際に当該荷物を支持する。アーム部11の先端部11Aにはプーリ32が設けられる。ワイヤ31は、アーム部11の径方向内側の中空部分を通され、本体部10に内蔵されるウインチ41から延ばされる。このため、ワイヤ31はプーリ32を介して下方に向って引き出され、ワイヤ31の先端側に荷物作用部12が設けられる。荷物作用部12は2本のアーム部11の夫々から吊り下げられるので、一対で構成される。荷物作用部12は作業者100が積み上げ作業や積み下ろし作業を行う荷物の持ち手部分に引っ掛けて支持できるように構成されている。
【0026】
巻上用モータ13は、本体部10に設けられ、作業者100の指示に応じてワイヤ31を巻き上げる。巻上用モータ13は本体部10に内蔵されている。作業者100の指示は、荷物作用部12に設けられたボタン33の押下により行われる。例えば、作業者100が右手で持つ荷物作用部12に設けられたボタン33を押下することで巻上用モータ13がワイヤ31を巻き上げ、左手で持つ荷物作用部12に設けられたボタン33を押下することで巻上用モータ13がワイヤ31を繰り出すように構成することが可能である。もちろん、右手で持つ荷物作用部12に設けられたボタン33を押下することで巻上用モータ13がワイヤ31を繰り出し、左手で持つ荷物作用部12に設けられたボタン33を押下することで巻上用モータ13がワイヤ31を巻き上げるように構成することも可能である。巻上用モータ13は、本体部10に設けられるバッテリ40から出力される電力を動力源として駆動される。
【0027】
巻き上げ量検出部14は、巻上用モータ13によるワイヤ31の巻き上げ量を検出する。ワイヤ31の巻き上げ量とは、巻上用モータ13によりワイヤ31を巻き上げた長さ及び繰り出した長さである。上述したようにワイヤ31に先端側には荷物作用部12が設けられているので、この巻き上げ量により荷物作用部12の移動距離を検出することができる。
【0028】
本実施形態では、本体部10に巻上用モータ13の回転数を検出する回転数検出部15が設けられ、巻き上げ量検出部14は回転数検出部15により検出された巻上用モータ13の回転数に基づいてワイヤ31の巻き上げ量を検出している。このため、例えば回転数検出部15は、公知のホール素子等を用いて構成すると好適である。
【0029】
巻上用モータ制御部16は、本体部10に設けられ、巻き上げ量に基づいて巻上用モータ13の巻き上げ速度を制御する。巻上用モータ制御部16は、上述したバッテリ40から出力される電力を巻上用モータ13に供給する。この際、巻き上げ量検出部14により検出されたワイヤ31の巻き上げ量に応じて巻上用モータ13に供給する電力を調整し、巻上用モータ13の回転数を制御する。巻上用モータ制御部16による巻上用モータ13の回転数の制御については後述する。
【0030】
脚作用部17は、本体部10から作業者100の側方を通って大腿部まで延出し、当該延出した位置から大腿部の前側部に当接可能に設けられる。「本体部10から作業者100の側方を通る」とは、右脚用の脚作用部17は、本体部10から右の大腿部の右側を通り、左脚用の脚作用部17は、本体部10から左の大腿部の左側を通ることを意味する。
左右の脚作用部17は大腿部まで延出され、その位置から大腿部の前側部における膝部よりやや上の位置に当接可能に屈曲して設けられる。なお、特に脚作用部17が当接する位置は、大腿部を上下方向に見て中央部よりも下側の位置であれば良い。
【0031】
脚部用モータ18は、作業者100の指示に応じて脚作用部17が大腿部の前側部に作用する荷重を調節する。本実施形態では、脚部用モータ18は腰ベルト2に左右の脚作用部17の夫々を駆動可能に2つ設けられる。作業者100の指示は、上述した巻上用モータ13と同様に、荷物作用部12に設けられたボタン33の押下により行われる。例えば、作業者100が右手で持つ荷物作用部12に設けられたボタン33を押下することで、脚作用部17が大腿部の前側部を押圧するように脚部用モータ18を駆動すると良い。もちろん、左手で持つ荷物作用部12に設けられたボタン33を押下することで脚部用モータ18を駆動するように構成することも可能である。脚部用モータ18も、本体部10に設けられるバッテリ40から出力される電力を動力源として駆動される。なお、左右の脚作用部17は、夫々、独立して駆動可能に構成することも可能である。
【0032】
脚作用部17は、作業者100が曲げた状態の膝部を延ばす際に前側部を押圧するように使われる。これにより、作業者100がしゃがんだ状態から立ち上がり易くなる。
【0033】
検出部20は、作業者100の胴体と大腿部とのなす角の角度を検出する。作業者100がしゃがむ際には、作業者100の大腿部の前側部が脚作用部17を押し、脚作用部17は本体部10に対して所定の回転軸を中心として回動する。そこで、検出部20として、本体部10に対して脚作用部17が回転する回転軸にポテンショメータを設けておくと良い。これにより、ポテンショメータが回転軸の回転角を検出することができ、この検出結果に基づき作業者100の胴体と大腿部とのなす角の角度を適切に検出することが可能となる。検出部20の検出結果は後述する脚用モータ制御部21に伝達される。
【0034】
本発明のモータ制御部に相当する脚用モータ制御部21は、本体部10に設けられ、検出された角度に基づいて脚部用モータ18の出力トルクを制御する。脚用モータ制御部21は、上述したバッテリ40から出力される電力を脚部用モータ18に供給する。この際、検出部20により検出された作業者100の胴体と大腿部とのなす角の角度に応じて脚部用モータ18に供給する電力を調整し、脚部用モータ18の回転数を制御する。脚用モータ制御部21による脚部用モータ18の回転数の制御については後述する。
【0035】
次に、アシストスーツ1の動作について図3及び図4を用いて説明する。まず、作業者100の足元に配置されている荷物を持ち上げるにあたり、図3の#101に示されるように、作業者100が荷物作用部12に設けられたボタン33を押下して荷物作用部12が荷物の持ち手部分に引っ掛かる程度までワイヤ31を繰り出し、荷物作用部12を荷物の持ち手部分に引っ掛ける。
【0036】
図3の#102に示されるように、作業者100は背筋を伸ばす。この状態で作業者100は荷物作用部12に設けられたボタン33を押下し、脚部用モータ18が駆動される。これにより、作業者100は脚作用部17で大腿部が押下され、アシストスーツ1が作業者100の膝を伸ばす動作をアシストすることが可能となる。この時、脚用モータ制御部21は、膝を折り曲げて体が低い位置にある場合には図5に示されるように押圧力が強くなるように制御し、膝が伸びて胴体と膝との間のなす角の角度が大きくなるにつれて押圧力を低減するように制御すると良い。図3の#103に示されるように、作業者100の膝が伸びると、作業者100は荷物作用部12に設けられたボタン33の押下を中止し、脚部用モータ18の駆動を停止させる。なお、図3では、脚作用部17による膝部の前側部を押圧する押圧力の大小を、矢印の長さで示している。つまり、図3の#103よりも図3の#102の方が矢印の長さが長いので、押圧力は図3の#103よりも図3の#102の方が大きいことを示している。
【0037】
次に、作業者100は、この状態で荷物作用部12に設けられたボタン33を押下して巻上用モータ13を駆動し、図4の#104に示されるようにワイヤ31を巻き上げる。
この場合、巻上用モータ制御部16は、図6に示されるようにワイヤ31の巻き上げ開始時は徐々に巻き上げ速度を速めつつ予め設定された巻き上げ速度に達するように制御すると良い。また、この時、巻き上げ量が巻き上げ量検出部14により検出される。巻き上げ量検出部14の検出結果に基づき、巻上用モータ制御部16は、荷物作用部12が作業者100の顔の前を通過する時は、図4の#105に示されるように巻き上げ速度を荷物作用部12が顔に到達するまでの巻き上げ速度よりも低減すると良い。なお、図4では、巻き上げ速度の大小を、矢印の長さで示している。つまり、図4の#104よりも図4の#105の方が矢印の長さが短いので、巻き上げ速度は図4の#104よりも図4の#105の方が遅いことを示している。
【0038】
更に、巻上用モータ13がワイヤ31を巻き上げ、図4の#106に示されるように、荷物作用部12とアーム部11の先端部11Aとの距離が予め設定された距離以下になると、巻上用モータ制御部16は、作業者100が荷物作用部12に設けられたボタン33を押下しているか否かに拘らず、巻上用モータ13を停止させる。この時、巻上用モータ制御部16は、図6に示されるようにワイヤ31の巻き上げ停止時は予め設定された巻き上げ速度から徐々に減じながら停止させる。これにより、荷物の重量に応じて作業者100に作用する反動を低減することができ、作業者100の身体的負担を軽減することが可能となる。また、この時、巻き上げ量検出部14は、ワイヤ31の巻き上げ量の検出値をキャリブレーションすると好適である。これにより、巻き上げ量検出部14が、ワイヤ31の巻き上げ量を継続して精度良く検出することが可能となる。
【0039】
また、この場合、巻上用モータ制御部16は、荷物の重量に拘らず、巻上用モータ13の巻き上げ速度を、巻き上げ量検出部14により検出された巻き上げ量に基づく巻き上げ速度に維持し、脚用モータ制御部21は、荷物の重量に拘らず、脚部用モータ18の出力トルクを、検出部20により検出された作業者100の胴体と大腿部とのなす角の角度に基づく出力トルクに維持すると好適である。これにより、荷物の重量が種々に亘る場合であっても、作業効率が悪化することなく作業者100が作業を行うことが可能となる。
【0040】
また、巻上用モータ制御部16は、巻き上げ速度が予め設定された許容速度から逸脱し、且つ、巻上用モータ13の出力トルクが予め設定された許容トルクから逸脱した場合に、巻上用モータ13を停止すると良い。これにより、ワイヤ31の巻き上げ時に、巻き上げ速度が急低下すると同時に巻上用モータ13の出力トルクが急上昇した場合は、アシストスーツ1の可動部に何らかの異物が噛み込まれたり、巻き込まれたりする等したと判断し、巻上用モータ13を停止することができる。したがって、その状態で異物を取り除いたり、巻上用モータ13を逆回転させて異物を取り除いたりすることが可能となる。
【0041】
また、脚用モータ制御部21は、脚部用モータ18の出力トルクが予め設定された許容トルクから逸脱した場合に、脚部用モータ18を停止すると良い。これにより、作業者100の膝部の前側部を押圧している時に、脚部用モータ18の出力トルクが急上昇した場合は、アシストスーツ1の可動部に何らかの異物が噛み込まれたり、巻き込まれたりする等したと判断し、脚部用モータ18を停止することができる。したがって、その状態で異物を取り除いたり、脚部用モータ18を逆回転させて異物を取り除いたりすることが可能となる。
【0042】
〔その他の実施形態〕
上記実施形態では、脚作用部17は、作業者100が曲げた状態の膝部を延ばす際に大腿部の前側部を押圧するとして説明したが、作業者100が伸ばした状態の膝部を曲げる際に大腿部の前側部を押圧するよう構成することも可能である。これにより、作業者100が荷物を持っている場合でも、ゆっくりとしゃがむことができるので、作業者100の体に対する負担を軽減することが可能となる。
【0043】
上記実施形態では、脚用モータ制御部21は、作業者100が手にする荷物の重量に拘らず、作業者100の胴体と大腿部とのなす角の角度に基づく出力トルクを維持するとして説明したが、脚用モータ制御部21は作業者100が手にする荷物の重量に応じて脚部用モータ18の出力トルクを変更するよう構成することも可能である。
【0044】
上記実施形態では、脚用モータ制御部21は、脚部用モータ18の出力トルクが予め設定された許容トルクから逸脱した場合に、脚部用モータ18を停止すると良いとして説明したが、脚部用モータ18の出力トルクが予め設定された許容トルクから逸脱した場合でも、脚用モータ制御部21は脚部用モータ18を停止しないように構成することも可能である。
【0045】
上記実施形態では、検出部20としてポテンショメータを用いると良いとして説明したが、これは単なる一例であり、他の機能部を用いて作業者100の胴体と大腿部とのなす角の角度を検出することも当然に可能である。
【0046】
上記実施形態では、アシストスーツ1がアーム部11、荷物作用部12、巻上用モータ13、巻き上げ量検出部14、及び巻上用モータ制御部16を備えているとして説明したが、これらの機能部を備えずにアシストスーツ1を構成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、作業者の作業(動作)を補助するアシストスーツに利用することが可能である。
【符号の説明】
【0048】
1:アシストスーツ
10:本体部
11:アーム部
11A:先端部
12:荷物作用部
13:巻上用モータ
17:脚作用部
18:脚部用モータ
20:検出部
21:脚用モータ制御部(モータ制御部)
31:ワイヤ
100:作業者
図1
図2
図3
図4
図5
図6