(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、モータ・ジェネレータとエンジンとを組み合わせるパラレルハイブリッド動力伝達方式においては、特許文献1、2に開示されているように、エンジンのクランク軸、モータ・ジェネレータのロータ、被動機の入力軸の順に、機器を接続することにより動力を伝達している。これによって、(1)エンジンの動力はモータ・ジェネレータのロータを経由して被動機へ伝達され、(2)モータ・ジェネレータの動力はロータから直接的に被動機へ伝達されている。つまり、2系統の動力は、共にモータ・ジェネレータのロータを通して伝達されている。
【0003】
前記従来技術は、モータ・ジェネレータの動力と、エンジンのクランク軸の動力との両方が、モータ・ジェネレータのロータを通して被動機へ伝達される。そのため、ロータは2つの動力伝達を担うことになり、ロータに加わる負荷が大きくなる。
また、産業機械における被動機として油圧ポンプが多用されているが、この油圧ポンプは所要動力の変動に伴うトルク変動が大きい。前記従来技術では、クラッチ装置が接続状態のときに、このトルク変動に伴う動力伝達系のねじり振動がエンジンに伝わることがある。
【0004】
また、このようなねじり振動がロータに加わると、モータ・ジェネレータの駆動はベクトル制御を用いているため、ロータに設けられた回転検出器(レゾルバ)からの回転信号が振動することになる。そのため、モータ・インバータの制御が不安定になり、脱調や、動力制御が困難な状態になる可能性もある。
特許文献3には、ロータをモータハウジングに回転可能に支持し、フライホイールとロータとを筒状軸部を介してスプライン結合したジェネレータ/モータが開示されている。しかし、被動機(油圧ポンプ等)から伝播される変動トルクによるねじり振動等がスプライン結合を介してロータに伝わるという問題が生じる。つまり、特許文献3の開示技術では、被動機から伝播される変動トルクによるねじり振動等がロータに与える影響を回避することはできない。
【0005】
また、特許文献4に開示されたハイブリッドシステムは、エンジンの出力軸、フライホイール、モータ・ジェネレータのロータ及び油圧ポンプの回転軸が、直列的に連結されている。つまり、エンジンの動力を、フライホイールからロータに伝達する動力伝達系と、フライホイールから油圧ポンプに伝達する動力伝達系とが独立(分離)していない。そのため、油圧ポンプから伝播される変動トルクによるねじり振動等が、中空シャフトを介してロータに伝わるという問題が生じる。
【0006】
また、特許文献5に開示された動力伝達機構は、ロータと弾性継手とが一体的に回転体に接続されている。そのため、エンジンの動力を、フライホイールからロータに伝達する動力伝達系と、フライホイールから弾性継手を介して動力取出軸に伝達する動力伝達系とが、共に回転体を経由する。つまり、特許文献4の開示技術と同様に、2つの動力伝達系が独立(分離)していない。そのため、動力取出軸から伝播される変動トルクによるねじり振動等が、回転体を介してロータに伝わるという問題が生じる。
【0007】
また、特許文献6に開示された動力伝達機構は、被動機の入力軸が、ロータの内部(内周側)に配置されたダンパに対して、直接的に接続されている。そのため、入力軸をダンパに接続するためには、ロータの内部に深く差し入れる必要があり、入力軸を長く突出させなければならない。その結果、長く突出された入力軸を、弾性材等から形成されたダンパと直接的に接続する構造となり、芯ずれや回転時のぶれを抑制しつつ強固に接続することが難しい。そのため、エンジンから被動機への動力伝達を円滑に行うことができない虞がある。
【0008】
また、特許文献7に開示された動力伝達機構は、エンジンのクランク軸、フライホイー
ル、ダンパ装置、ロータ、アウトプットシャフトが、直列的に連結されている。つまり、特許文献4、5の開示技術と同様に、エンジンの動力を、フライホイールからロータに伝達する動力伝達系と、フライホイールからアウトプットシャフトに伝達する動力伝達系とが独立(分離)していない。そのため、アウトプットシャフトから伝播される変動トルクによるねじり振動等が、出力回転体を介してロータに伝わるという問題が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、モータ・ジェネレータのロータにかかる負荷を小さくし且つ被動機から変動トルクによるねじり振動等がエンジン及びロータに伝播されることを抑制できるようにしたパラレルハイブリッド動力伝達機構を提供することを目的とする。また、エンジンから被動機への動力伝達を円滑に行うことができるパラレルハイブリッド動力伝達機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明における課題解決のための具体的手段は、次の通りである。
第1に、パラレルハイブリッド動力伝達機構は、エンジンと、前記エンジンに設けられたクランク軸と、モータ・ジェネレータと、前記エンジン及び/又は前記モータ・ジェネレータの動力が伝達される被動機と、前記被動機に設けられた入力軸と、前記クランク軸に連結されて回転するフライホイールと、前記モータ・ジェネレータに設けられると共に、前記フライホイールの径外側に連結された第1連結部を有し、当該第1連結部を介して前記フライホイールと回転動力を授受するロータと、前記ロータと独立して配置されると共に、前記フライホイールの径内側に連結された第2連結部を有し、当該第2連結部を介して前記フライホイールの回転動力を受けるカップリングと、前記カップリングと前記入力軸とを連結し、前記カップリングが受けた回転動力を前記入力軸に伝達する中間軸と、を備え、前記フライホイールの回転動力を、前記第2連結部を介して前記カップリングに伝達し、前記カップリングから前記中間軸を介して前記入力軸に伝達する第1の動力伝達系と、前記フライホイールの回転動力を、前記第1連結部を介して前記ロータに伝達する第2の動力伝達系と、が独立して形成されて
おり、前記第2連結部は、連結具によって前記フライホイールに連結されている。
【0012】
第2に、前記カップリングは、前記中間軸に連結された可撓性材製のハブと、前記ハブから径外方向に突出し、且つ前記フライホイールに連結された前記第2連結部を含む剛性材製のディスクと、を有
している。
第3に、前記カップリングは、前記中間軸に連結された可撓性材製のハブと、前記ハブから径外方向に突出し、且つ前記フライホイールに連結された前記第2連結部を含む可撓性材製のディスクと、を有
している。
【0013】
第4に、前記ハブの内周面には、当該内周面に沿って前記中間軸の外周面に形成された外歯と噛み合わされる内歯が形成されており、前記内歯又は外歯は、歯幅方向に円弧状の膨らみを有するように湾曲された湾曲歯とされている。
第
5に、前記ロータは、ホロー形状のロータボスを有し、前記ロータボスは前記中間軸の径外側に配置されており、前記カップリングは、前記中間軸の径外側であって且つ前記ロータボスと前記フライホイールとの間に配置されている。
第
6に、前記フライホイールは、前記ロータボス側に第1凹部を有し、前記ロータボスは、前記フライホール側に第2凹部を有し、前記カップリングのハブは、前記第1凹部と前記第2凹部との間に配置されている。
【0014】
第
7に、前記ハブは、前記ロータボス側に向けて突出し且つ径内側に向かうにつれて突出量が大きくなる突出部を有し、前記突出部が、前記第2凹部内に配置されている。
第
8に、前記フライホイールを包囲するフライホイールハウジングと、前記モータ・ジェネレータを包囲し且つ前記フライホイールハウジングと内部空間を対向させて連結されたモータハウジングと、を備え、前記第1凹部は、前記カップリングの外周を取り付ける環状凹部を含み、前記ロータボスの端部には、径外方向に突出し且つ前記第1連結部を含むフランジ部が形成され、前記フランジ部は前記環状凹部に連結されている。
【0015】
第
9に、前記ロータボスを前記中間軸に回転可能に支持する中間軸受を備え、前記中間軸は、前記カップリングを介して前記フライホイールと連結されている。
第
10に、前記ロータの回転位相を検出する回転検出器を備えている。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る動力伝達機構は、モータ・ジェネレータに設けられると共に、フライホイールの径外側に連結された第1連結部を有し、当該第1連結部を介して前記フライホイールと回転動力を授受するロータと、ロータと独立して配置されると共に、フライホイールの径内側に連結された第2連結部を有し、当該第2連結部を介してフライホイールの回転動力を受けるカップリングと、カップリングと被動機の入力軸とを連結し、カップリングが受けた回転動力を入力軸に伝達する中間軸と、を備えている。これにより、フライホイールの回転動力を、第2連結部を介してカップリングに伝達し、カップリングから中間軸を経由して被動機に伝達する動力伝達系(第1の動力伝達系)と、第1連結部を介して直接的にロータに伝達する動力伝達系(第2の動力伝達系)とが、独立して形成される。そのため、エンジンの駆動に基づくフライホイールの回転動力を、第1の動力伝達系により、ロータを経由することなく被動機に直結的に且つ短距離で伝達することができる。また、フライホイールの回転動力を、第2の動力伝達系により、モータ・ジェネレータのロータに伝達できる。これにより、2つの動力伝達系の干渉がなくなり、ロータはモータ・ジェネレータの動力のみを伝達するため、ロータが担うべき負荷を減少することができる。また、被動機から伝播される変動トルクによるねじり振動等を、フライホイールの慣性力で縁切りすることができる。そのため、ねじり振動等がエンジンやモータ・ジェネレータに与える影響が減少し、騒音も減少する。さらに、モータ・ジェネレータの駆動に基づくロータの回転動力を、第2の動力伝達系によりフライホイールを介して被動機に伝達することができるため、第1の動力伝達系により被動機に伝達されるエンジン動力をアシストできる。また、第1の動力伝達系がフライホイールの径内側に形成され、第2の動力伝達系がフライホイールの径外側に形成される。そのため、第2の動力伝達系の内側に第1の動力伝達系が組み込まれた構造となり、2つの動力伝達系をもつ動力伝達機構をコンパクトに構成することが可能となる。更に、被動機の入力軸とカップリングとが中間軸を介して連結されているため、入力軸を短縮化することができる。これにより、エンジンから被動機への動力伝達を確実に且つ円滑に行うことが可能となる。また、入力軸とカップリングとの連結を容易に行うことが可能となる。
【0017】
また、前記カップリングは、中間軸に連結された可撓性材製のハブと、ハブから径外方向に突出し、且つフライホイールに連結された第2連結部を含む剛性材製のディスクと、を有している。そのため、被動機から伝播される変動トルクによるねじり振動等を、カップリングの可撓性材製のハブにより緩衝もしくは吸収することができる。また、剛性材性のディスクにより、フライホイールからカップリングを介した中間軸への動力伝達を確実に行うことができる。
【0018】
また、カップリングは、中間軸に連結された可撓性材製のハブと、ハブから径外方向に突出し、且つフライホイールに連結された第2連結部を含む可撓性材製のディスクと、を有している。そのため、被動機から伝播される変動トルクによるねじり振動等を、カップリングの可撓性材製のハブとディスクにより緩衝もしくは吸収することができる。
また、ロータはホロー形状のロータボスを有し、ロータボスは中間軸の径外側に配置されており、カップリングは、中間軸の径外側であって且つロータボスとフライホイールとの間に配置されている。そのため、中間軸がロータボスの内部に組み込まれ、2つの動力
伝達系(第1の動力伝達系及び第2の動力伝達系)が並列に配置された構造となり、動力伝達機構をコンパクトに構成することができる。また、エンジン、モータ・ジェネレータ及び被動機を近づけて配置することができ、フライホイールから被動機までの距離をより短くすることができる。これにより、動力伝達機構をコンパクトに構成することができ、被動機からエンジン及びモータ・ジェネレータに与えられるねじり振動等を低減することができる。
【0019】
また、フライホイールはロータボス側に第1凹部を有し、ロータボスはフライホール側に第2凹部を有し、カップリングのハブは第1凹部と第2凹部との間に配置されている。そのため、フライホイールとロータボスとカップリングとを近接して配置することができ、動力伝達機構をコンパクトに構成することが可能となる。
また、ハブは、ロータボス側に向けて突出し且つ径内側に向かうにつれて突出量が大きくなる突出部を有し、突出部が第2凹部内に配置されている。そのため、ロータボスとカップリングとを近接して且つ正確な位置関係で配置することができる。これにより、動力伝達機構をコンパクトに且つ精密に構成することが可能となる。
【0020】
また、フライホイールを包囲するフライホイールハウジングと、モータ・ジェネレータを包囲し且つフライホイールハウジングと内部空間を対向させて連結されたモータハウジングと、を備え、第1凹部はカップリングの外周を取り付ける環状凹部を含み、ロータボスの端部には径外方向に突出するフランジ部が形成され、フランジ部は環状凹部に連結されている。そのため、エンジンの動力とモータ・ジェネレータの動力を共に、フライホイール及びカップリングを介して被動機に伝達できる。また、被動機からのねじり振動等がエンジン及びモータ・ジェネレータへ伝達されるのを緩衝あるいは縁切りすることができる。
【0021】
また、ロータボスを中間軸に回転可能に支持する中間軸受を備え、中間軸はカップリングを介してフライホイールと連結されている。そのため、フライホイールの面のぶれや芯のぶれによるロータの回転精度の低下が生じにくく、ロータを高い回転精度で支持することができる。即ち、中間軸がカップリングを介してフライホイールと連結されることにより、中間軸の回転精度を高くすることができる。そして、回転精度が高い中間軸に対して、ロータが中間軸受を介して回転可能に支持されることにより、ロータの回転精度が高く維持される。これにより、モータ・ジェネレータのステータとロータとのエアギャップの変動を抑制することが可能となる。
【0022】
また、ロータの回転位相を検出する回転検出器を備えている。そのため、ロータがカップリングによって被動機からのねじり振動等が縁切りされていることと相まって、モータ・ジェネレータの動力制御を安定的に行える。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係るパラレルハイブリッド動力伝達機構1(以下、単に動力伝達機構1という)の一例を示す断面図である。動力伝達機構1は、農業機械、建設機械、ユーティリティビークル等の産業機器に適用される。
動力伝達機構1は、エンジン2、フライホイール3、モータ・ジェネレータ4、被動機
5、カップリング6を備えている。動力伝達機構1は、エンジン2の動力とモータ・ジェネレータ4の動力とを、択一的に又は組み合わせて被動機5に伝達する。
【0025】
尚、以下の説明において、エンジン2から被動機5に向かう方向(
図1の左方向)を一方と称し、被動機5からエンジン2に向かう方向(
図1の右方向)を他方と称する。
エンジン2は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジン等である。エンジン2には、クランク軸2aが設けられている。クランク軸2aは、被動機5側(一方側)に向けて突出している。クランク軸2aの先端(一方端)には、フライホイール3が連結されている。
【0026】
フライホイール3は、略円板状であって、質量が大きい材料(例えば鋳鉄等の金属)から形成されている。フライホイール3の中心には、エンジン2のクランク軸2aが連結されている。フライホイール3は、エンジン2と反対側(一方側)の面に、第1凹部3aを有している。第1凹部3aは、環状に凹んだ大径凹部3b(環状凹部)と、大径凹部3bよりも深く凹んだ小径凹部3cとを有している。大径凹部3bと小径凹部3cとは同心に形成されており、大径凹部3bは小径凹部3cの径外側に設けられている。
【0027】
フライホイール3は、フライホイールハウジング9によって包囲されている。フライホイールハウジング9は、外周部9aと側壁9bとを有している。外周部9aは、フライホイール3の径外側に設けられている。外周部9aのエンジン2側と反対側(一方側)の端部に、後述するモータハウジング10が固定されている。側壁9bは、外周部9aのエンジン2側の端部に設けられている。フライホイール3は、外周部9aと側壁9bとにより囲まれた内部空間に配置されている。側壁9bは、エンジン2に固定されている。
【0028】
モータ・ジェネレータ4は、フライホイール3の一方側に配置されている。モータ・ジェネレータ4は、ロータ7とステータ8とを有している。モータ・ジェネレータ4としては、永久磁石埋込式の三相交流同期モータが好適に使用されるが、他の種類の同期モータであってもよい。例えば、ロータ7にコイルを巻いた積層鋼板を嵌着した同期モータ等であってもよい。また、モータ・ジェネレータ4は、交流モータでも直流モータでもよい。
【0029】
モータ・ジェネレータ4に設けられたロータ7は、ロータボス71とロータ本体72とを有している。また、ロータ7は、フライホイール3の径外側に連結される第1連結部71cを有している。モータ・ジェネレータ4が発電機として機能する場合、ロータ7は、第1連結部71cを介してフライホイール3の回転動力を受ける。一方、モータ・ジェネレータ4が電動機として機能する場合、ロータ7は、第1連結部71cを介してフライホイール3に回転動力を与える。つまり、ロータ7は、第1連結部71cを介してフライホイール3と回転動力を授受する。
【0030】
第1連結部71cは、後述する第2連結部62Aより径外側において且つ第2連結部62Aと独立(分離)して設けられている。本実施形態では、後述する延出部71cが第1連結部71cである。
ロータボス71は、全体としてホロー形状(筒形状)であり、円筒部71aとフランジ部71bとを有している。円筒部71aの外周には、ロータ本体72が嵌着されている。フランジ部71bは、ロータボス71のフライホイール3側の端部に設けられており、径外方向に延びている。フランジ部71bは、延出部71cと第2凹部71dとを有している。第2凹部71dは、フランジ部71bのフライホール3側の端面に設けられており、フライホイール3と反対側に向けて環状に凹んでいる。第2凹部71dの形状は、第2凹部71dに対向するカップリング6の突出部61d(後述する)の形状に対応している。延出部71cは、第2凹部71dの径外側(カップリング6の径外側)に設けられており、フライホイール3と連結されている。具体的には、延出部71cは、フライホイール3の第1凹部3aの大径凹部(環状凹部)3bに嵌め込まれて、フライホイール3と連結されている。本実施形態では、延出部71cとフライホイール3とはボルト等の連結具18により連結されている。尚、連結具18は、
図1に示す断面からフライホイール3の周方向にずれた位置にあり、
図1には表れていない。そのため、便宜上、連結具18の径方向の位置を、
図1に一点鎖線で示している。
【0031】
上記構成により、ロータ7は、フライホイール3の径外側にある延出部71cにおいてフライホイール3と連結されている。つまり、本実施形態では、ロータボス71の延出部
71cは、ロータ7をフライホイール3の径外側に連結する第1連結部71cである。
但し、第1連結部71cの構成は、本実施形態の構成には限定されない。即ち、第1連結部71cは、ロータ7をフライホイール3の径外側に連結する部分であって、後述する第2連結部62Aより径外側において且つ第2連結部62Aと独立(分離)して設けられていればよい。
【0032】
ロータ本体72は、永久磁石を埋設した鉄心(積層鋼板等)を有している。ロータ本体72は、フランジ部71bの一方側に配置され、ステータ8と対向している。ロータ本体72は、ロータボス71の中心軸回りに且つロータボス71と一体的に回転する。
モータハウジング10は、モータ・ジェネレータ4の外周を包囲する筒状部10aと、モータ・ジェネレータ4の一方側に設けられたカバー10bとを有している。筒状部10aの他方側(
図1で右側)の端部には、フライホイールハウジング9の外周部9aの一方側(
図1で左側)の端部が固定されている。カバー10bには、被動機5のポンプハウジング(後述する)が接続されている。モータハウジング10の筒状部10aの内周面には、ステータ8が固定されている。
【0033】
ステータ8は、例えば積層鋼板製であってコイルが巻かれている。筒状部10aの内周面とステータ8との間には、ウォータジャケット11が介在している。ウォータジャケット11には、冷媒を通すための通路が設けられている。ステータ8の径内側には、ロータ7が配置されている。モータハウジング10の内部空間は、フライホイールハウジング9の内部空間と対向して連通している。
【0034】
被動機5は、エンジン2及び/又はモータ・ジェネレータ4からの動力を受けて駆動する。被動機5は、例えば油圧ポンプであり、具体的には静油圧式トランスミッションの油圧ポンプを例示することができる。被動機5は、ポンプハウジングを介してモータハウジング10のカバー10bと連結されている。被動機5に設けられた入力軸5aは、他方側(
図1で右側)に向けて延びている。入力軸5aは、中間軸12を介してカップリング6に連結されている。即ち、中間軸12は、被動機5の入力軸5aとカップリング6とを連結している。
【0035】
中間軸12は、ホロー形状のロータボス71内に同心状に配置されている。中間軸12は、金属等の剛性材から形成されている。中間軸12は、略円筒状であって、小径部12aと大径部12bとを有している。小径部12aは、中間軸12の一方側(被動機5側)に形成されており、大径部12bは中間軸12の他方側(エンジン2側)に形成されている。中間軸12の軸方向の長さは、ロータボス71の軸方向の長さと略等しい。中間軸12の一方端(
図1で左端)はロータボス71の一方端(
図1で左端)よりも僅かに他方側(
図1で右側)に位置し、中間軸12の他方端(
図1で右端)はロータボス71の他方端(
図1で右端)よりも僅かに他方側に位置している。中間軸12の他方端は、フライホイール3の第1凹部3aの小径凹部3c内に位置している。
【0036】
中間軸12の一方側(
図1で左側)の内部には、被動機5の入力軸5aが連結されている。本実施形態では、この中間軸12と入力軸5aとの連結は、スプライン結合により行われている。入力軸5aにおける中間軸12への連結長さLは、中間軸12の長さの1/3程度である。言い換えれば、軸方向において、入力軸5aの他方側の端部の位置は、ロータ本体72の一方端の位置と略一致している。
【0037】
中間軸12の小径部12aの外周面とロータボス71の内周面との間には、隙間が形成されている。大径部12bには、外周面に沿って多数の歯(以下、外歯という)が形成されている。この外歯は、カップリング6に形成された内歯(後述する)と噛み合わされている。これにより、中間軸12とカップリング6とが連結されている。
図2〜
図4に示すように、カップリング6は、ハブ61とディスク62とを有している。また、カップリング6は、フライホイール3の径内側に連結される第2連結部62Aを有している。カップリング6は、第2連結部62Aを介してフライホイール3の回転動力を受ける。第2連結部62Aは、第1連結部71cより径内側において且つ第1連結部71cと独立(分離)して設けられている。本実施形態では、後述する外側部62Aが第2連結部62Aである。
【0038】
ハブ61は中間軸12と接続され、ディスク62はフライホイール3と接続される。これにより、カップリング6は、中間軸12とフライホイール3とを連結する。
図1に示すように、ハブ61は、ロータボス71の第2凹部71dと、フライホイール3の第1凹部3aとの間に形成された空間内に配置されている。これにより、カップリング6がロータボス71及びフライホイール3と近接して配置されるため、動力伝達機構1をコンパクト化することが可能となる。
【0039】
ハブ61は、内径部61aと外径部61bとを有している。内径部61a及び外径部61bは、樹脂やゴム等の可撓性材から形成されている。樹脂としては、プラスチック(合成樹脂)が好適であり、特にカーボンファイバー強化ポリアミド等の繊維強化プラスチックが好適に使用される。また、ナイロン、ポリエステル、ポリウレタン等を使用することもできる。
【0040】
内径部61aは、円筒状であって、内周面に沿って多数の歯(以下、内歯という)が形成されている。この内歯は、中間軸12の大径部12bの外周面に形成された外歯と噛み合わされる。これにより、カップリング6が、中間軸12の先端(他方側の端部)に連結される。この連結は、内歯と外歯との噛み合いにより行われているため、カップリング6から中間軸12への動力伝達を確実に行うことができる。また、中間軸12の回転精度を高く維持することができる。
【0041】
ここで、内歯又は外歯は、湾曲歯(curved-tooth)とされている。具体的には、内歯又は外歯は、歯幅方向に円弧状の膨らみを有するように湾曲されている。これにより、入力軸5a及び中間軸12と、フライホイール3とのアキシャル、ラジアル及びアンギュラ方向のミスアライメント(芯ずれ等)を吸収することができる。
外径部61bは、環状に形成されており、内径部61aの径外側に設けられている。外径部61bは、径外側に延びる環状の外環部61cと、ロータボス71側に向けて突出する突出部61dを有している。突出部61dは、外径部61bの径内側に向かうにつれて突出量が大きくなるように、円錐台状に突出している。突出部61dは、ロータボス71の第2凹部71d内に配置されている。但し、突出部61dと第2凹部71dとは接続されておらず、カップリング6とロータ7(ロータボス71)とは連結されていない。つまり、カップリング6とロータ7とは独立している。言い換えれば、カップリング6とロータ7とは縁切りされている。そのため、カップリング6の回転動力は、ロータ7には伝達されない。また、ロータ7の回転動力は、直接的にはカップリング6に伝達されない。
【0042】
カップリング6とロータ7とは当接していてもよいし、僅かに離間していてもよい。カップリング6とロータ7とが当接している場合、カップリング6をロータ7に対して正確に且つ容易に位置決めすることが可能となる。また、樹脂等の可撓性材から形成された外径部61bは潤滑作用を発揮する。そのため、カップリング6とロータ7との当接部分の摩耗を抑制できると共に、当接部分に潤滑油の供給を必要としないため、メンテナンスの手間を省くことができる。
【0043】
ディスク62は、円環状の板から構成されており、本実施形態では、金属等の剛性材から形成されている。
図4に示すように、ディスク62は、当該ディスク62の径外側にある外側部62Aと、径内側にある内側部62Bとを有している。外側部62Aは、ハブ61の外径部61bの外環部61cから径外方向に突出している。外側部62Aは、後述するように、フライホイール3の大径凹部3bに連結される。内側部62Bは、ハブ61の外径部61bに埋め込まれている。
【0044】
図3に示すように、ディスク62の外側部62Aには、周方向に等間隔をあけて複数の貫通孔62aが形成されている。複数の貫通孔62aには、それぞれボルト13等の連結具が挿通される。連結具13は、前記連結具18よりもフライホイール3の径内側であって、且つ連結具18と周方向に異なる位置に配置されている。連結具13は、フライホイール3の大径凹部3bの径内側に形成されたねじ孔に螺合され、ディスク62とフライホイール3とを連結している。これにより、カップリング6のディスク62の外側部62Aは、フライホイール3の径内側において、フライホイール3と連結されている。つまり、本実施形態では、ディスク62の外側部62Aは、カップリング6をフライホイール3の
径内側に連結する第2連結部62Aである。
【0045】
但し、第2連結部62Aの構成は、本実施形態の構成には限定されない。即ち、第2連結部62Aは、カップリング6をフライホイール3の径内側に連結する部分であって、第1連結部71cより径内側において且つ第1連結部71cと独立(分離)して設けられていればよい。
カップリング6の他の実施形態として、ハブ61とディスク62を共に、樹脂やゴム等の可撓性材から形成してもよい。この場合、ハブ61とディスク62とを、同じ可撓性材により一体に形成することが好ましい。樹脂としては、プラスチック(合成樹脂)が好適であり、例えば、ナイロン、ポリエステル、ポリウレタン、カーボンファイバー強化ポリアミド等の繊維強化プラスチック等が好適に使用される。
【0046】
カップリング6は、フライホイール3に対して径方向に位置決めされている。言い換えると、カップリング6は、当該カップリング6の中心軸がフライホイール3の中心軸と同軸となるように位置決めされている。
カップリング6は、被動機5の入力軸5aとフライホイール3とを、中間軸12を介して連結している。これにより、カップリング6は、フライホイール3から中間軸12へと動力を伝達する機能を発揮する。また、カップリング6は、可撓性材から形成された部分(ハブ61、又はハブ61とディスク62)を有することで、中間軸12からフライホイール3側へ伝播されるトルク変動に起因する衝撃やねじり振動等を緩衝もしくは吸収することができる。また、内歯又は外歯が湾曲歯とされていることにより、入力軸5a及び中間軸12と、フライホイール3とのアキシャル、ラジアル及びアンギュラ方向のミスアライメント(芯ずれ等)を吸収することができる。
【0047】
また、フライホイール3は、カップリング6及び中間軸12を介して被動機5と連結されている。つまり、フライホイール3と被動機5との連結は、ロータ7を介した連結ではなく、ロータ7を介さない連結となっている。そのため、フライホイール3と被動機5とが直線的に連結され、フライホイール3と被動機5との距離を短縮することができる。これにより、動力伝達機構1をコンパクト化することが可能となる。
【0048】
また、ロータ7は、直接的には被動機5と連結されず、慣性力の大きいフライホイール3及び可撓性材を含むカップリング6を介して被動機5と連結されている。そのため、被動機5からの変動トルクによるねじり振動等が断ち切られ、当該ねじり振動等がエンジン2及びモータ・ジェネレータ4に及ぶことがない。
動力伝達機構1は、更に回転検出器14とコントローラ15とを備えている。回転検出器14は、ロータ7の回転位相を検出する。回転検出器14としては、レゾルバやエンコーダ等が使用される。産業機械(農業機械、建設機械等)用の動力伝達機構1においては、耐環境性に優れており且つ角度検出精度が良好なレゾルバが好適に使用される。回転検出器14は、モータハウジング10のカバー10bと、ロータ本体72との間に配置されており、ロータボス71の円筒部71aの外周面に近接している。回転検出器14はコントローラ15に接続されている。
【0049】
コントローラ15は、モータ・ジェネレータ4をベクトル制御するインバータを備えている。コントローラ15は、パワーケーブル接続部16等を介してモータ・ジェネレータ4に接続されている。また、コントローラ15は、エンジン2、被動機5等にも接続されている。コントローラ15は、エンジン2、モータ・ジェネレータ4及び被動機5等の駆動、停止及び回転数を制御する。
【0050】
動力伝達機構1は、フライホイール3の回転動力を伝達する2つの動力伝達系(動力伝達部)を備えている。一方の動力伝達系(第1の動力伝達系という)は、フライホイール3、第2連結部62A、カップリング6、中間軸12及び被動機5を含んでいる。
図5の矢印Aに示すように、第1の動力伝達系は、フライホイール3の回転動力を、第2連結部62Aを介してカップリング6に伝達し、カップリング6から中間軸12を経由して被動機5の入力軸5aに伝達する。他方の動力伝達系(第2の動力伝達系という)は、フライホイール3、第1連結部71c及びロータ7を含んでいる。
図5の矢印Bに示すように、第2の動力伝達系は、フライホイール3の回転動力を、第1連結部71cを介して直接的
にロータ7に伝達する。つまり、第1の動力伝達系と第2の動力伝達系とは、別々の経路を経由して動力を伝達する独立(分離)した動力伝達系である。
【0051】
次に、動力伝達機構1の動作を説明する。
動力伝達機構1では、エンジン2を駆動すると、エンジン2の回転動力がクランク軸2aを介してフライホイール3に伝達され、フライホイール3を回転させる。
図6の矢印Cに示すように、フライホイール3の回転動力は、カップリング6から中間軸12に伝達された後、中間軸12から被動機5の入力軸5aに伝達される。つまり、エンジン2の駆動により生じるフライホイール3の回転動力は、第1の動力伝達系を経由して被動機5に伝達される。
【0052】
また、被動機5の駆動と同時に、フライホイール3の回転動力は、ロータボス71を介してロータ7に伝達され、モータ・ジェネレータ4をジェネレータとして作動させる。つまり、フライホイール3の回転動力は、第2の動力伝達系を経由してロータ7に伝達される。
この第2の動力伝達系による動力伝達の際、エンジン2の回転動力はフライホイール3を介してロータ7に伝達されるが、ロータ7は被動機5の入力軸5aに連結されていない。そのため、被動機5はロータ7の回転の負荷にはならず、ロータ7は被動機5からの負荷変動の影響を受けることがない。
【0053】
一方、エンジン2の駆動に加えてモータ・ジェネレータ4を駆動すると、ロータ7が回転する。
図6の矢印Dに示すように、ロータ7の回転動力は、フライホイール3からカップリング6を介して中間軸12に伝達された後、中間軸12から被動機5の入力軸5aに伝達される。つまり、ロータ7の回転動力は、第2の動力伝達系を経由して被動機5に伝達される。このモータ・ジェネレータ4の駆動に伴って生じる回転動力により、第1の動力伝達系を経由してエンジン2から被動機5に伝達される動力がアシストされる。つまり、第1の動力伝達系からの動力と、第2の動力伝達系からの動力の合成動力で被動機5が駆動される。
【0054】
上述した通り、フライホイール3から被動機5へと動力を伝達する第1の動力伝達系と、フライホイール3からロータ7へと動力を伝達する第2の動力伝達系とは独立している。これにより、エンジン2の動力は、フライホイール3からロータ7を経由することなく被動機5へ伝達され、第1の動力伝達系と第2の動力伝達系とが干渉することはない。
被動機5が駆動中に所要動力の変動に伴うトルク変動があると、第1の動力伝達系に衝撃やねじり振動等が発生する。このねじり振動等は、被動機5の入力軸5aから中間軸12に伝播される。しかし、このねじり振動等はカップリング6によって緩衝・吸収され、また、フライホイール3の慣性力によって縁切りされる。そのため、衝撃、ねじり振動等の伝播は大幅に減少することになり、エンジン2及びロータ7は被動機5からの負荷変動の影響を受けることがない。
【0055】
被動機5からロータ7に伝播されるねじり振動等が緩衝・吸収、縁切りされることにより、ロータ7に設けられた回転検出器14は、振動のない回転信号を発生することができる。そのため、コントローラ15を介してモータ・ジェネレータ4を駆動するベクトル制御を安定的かつ精度良く行うことができ、脱調して動力制御が不能になることが防止できる。
【0056】
また、カップリング6が、樹脂等の可撓性材から形成されている部分(ハブ61、又はハブ61とディスク62)を有するため、上述したねじり振動を吸収することができる。
また、被動機5の入力軸5aに中間軸12が連結され、中間軸12がカップリング6を介してフライホイール3と連結されている。カップリング6のディスク62が剛性材から形成されている場合は、フライホイール2とカップリング6との連結を高精度で行うことが可能となり、中間軸12の回転精度を高くすることができる。
【0057】
図7は、動力伝達機構1の別の実施形態を示している。
図7に示すように、中間軸12の小径部12aの外周面とロータボス71の内周面との間の隙間に、中間軸受17を配置してもよい。中間軸受17としては、例えばニードルベアリング等が使用される。中間軸受17は、ロータ7を中間軸12に対して回転可能に支
持する。これにより、中間軸12とロータ7とは相互に支持されて共振を防止できる。そして、回転精度が高い中間軸12に対して、ロータ7が中間軸受17を介して回転可能に支持されることにより、ロータ7の回転精度が高く維持される。そのため、ロータ7の回転に伴って、ロータ7とステータ8とのエアギャップが変動することが抑制される。また、ロータ7と、レゾルバ等の回転検出器14のステータとのエアギャップの変動も抑制することができる。
【0058】
以上本発明について説明したが、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。例えば、フライホイール3の大径凹部(環状凹部)3bとロータボス71のフランジ部71bとを、弾性体又はカップリングを介在させて連結してもよい。