(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ビードコアと、前記ビードコアのタイヤ径方向外側に延出するビードフィラーと、前記ビードコアから他方のビードコアに延び、前記ビードコアの周りで折り返されたカーカスプライと、を備えたタイヤであって、
前記折り返されたカーカスプライの折り返し端を覆うゴムシートと、
前記ビードフィラーと前記ゴムシートとの間に設けられた電子部品と、を備え、
前記ビードフィラーは円環状に形成され、
前記ゴムシートは、長尺のシートの一端側と他端側がジョイントされることにより円環状に形成されており、
前記電子部品は、前記ゴムシートの前記一端側に近接した位置において、前記ビードフィラーと前記ゴムシートとの間に配置されている、タイヤ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係るタイヤ1のタイヤ幅方向の半断面を示す図である。タイヤの基本的な構造は、タイヤ幅方向の断面において左右対称となっているため、ここでは、右半分の断面図を示す。図中、符号S1は、タイヤ赤道面である。タイヤ赤道面S1は、タイヤ回転軸に直交する面で、かつタイヤ幅方向中心に位置する面である。
ここで、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸に平行な方向であり、
図1の断面図における紙面左右方向である。
図1においては、タイヤ幅方向Xとして図示されている。
そして、タイヤ幅方向内側とは、タイヤ赤道面S1に近づく方向であり、
図1においては、紙面左側である。タイヤ幅方向外側とは、タイヤ赤道面S1から離れる方向であり、
図1においては、紙面右側である。
また、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸に垂直な方向であり、
図1における紙面上下方向である。
図1においては、タイヤ径方向Yとして図示されている。
そして、タイヤ径方向外側とは、タイヤ回転軸から離れる方向であり、
図1においては、紙面上側である。タイヤ径方向内側とは、タイヤ回転軸に近づく方向であり、
図1においては、紙面下側である。
図2についても同様である。
【0014】
タイヤ1は、例えばトラック、バス用のタイヤであり、タイヤ幅方向両側に設けられた一対のビード11と、路面との接地面を形成するトレッド12と、一対のビード11とトレッド12との間を延びる一対のサイドウォール13とを備える。
【0015】
ビード11は、ゴムが被覆された金属製のビードワイヤを複数回巻いて形成した環状のビードコア21と、ビードコア21のタイヤ径方向外側に延出している、先細り形状のビードフィラー22とを備える。ビードフィラー22は、ビードコア21の外周を覆う第1ビードフィラー221と、第1ビードフィラー221のタイヤ径方向外側に配置されている第2ビードフィラー222とにより構成されている。第2ビードフィラー222は、後述するインナーライナー29、サイドウォールゴム30よりも高いモジュラスのゴムにより構成されている。そして、第1ビードフィラー221は、第2ビードフィラー222よりもさらに高いモジュラスのゴムにより構成されている。なお、第1ビードフィラー221は、少なくともその一部がビードコア21のタイヤ径方向外側に配置されていれば、ビードコア21の外周を覆っていない態様であってもよい。また、ビードフィラー22は、一つの種類のゴムから形成されていてもよい。すなわち、第1ビードフィラー221と第2ビードフィラー222とに分かれていなくてもよい。
ビードコア21は、空気が充填されたタイヤを、図示しないホイールのリムに固定する役目を果たす部材である。ビードフィラー22は、ビード周辺部の剛性を高め、高い操縦性および安定性を確保するために設けられている部材である。
【0016】
タイヤ1の内部には、タイヤの骨格となるプライを構成するカーカスプライ23が埋設されている。カーカスプライ23は、一方のビードコアから他方のビードコアに延びている。すなわち、一対のビードコア21間を、一対のサイドウォール13およびトレッド12を通過する態様で、タイヤ1内に埋設されている。
図1に示されるように、カーカスプライ23は、一方のビードコアから他方のビードコアに延び、トレッド12とビード11との間を延在するプライ本体24と、ビードコア21の周りで折り返されているプライ折り返し部25とを備える。ここで、プライ折り返し部25の折り返し端25Aは、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aよりもタイヤ径方向内側に位置している。
カーカスプライ23は、タイヤ幅方向に延びる複数のプライコードにより構成されている。また、複数のプライコードは、タイヤ周方向に並んで配列されている。
このプライコードは、金属製のスチールコード、あるいはポリエステルやポリアミド等の絶縁性の有機繊維コード等により構成されており、ゴムにより被覆されている。
【0017】
トレッド12において、カーカスプライ23のタイヤ径方向外側には、複数層のスチールベルト26が設けられている。スチールベルト26は、ゴムで被覆された複数のスチールコードにより構成されている。スチールベルト26を設けることにより、タイヤの剛性が確保され、トレッド12と路面の接地状態が良くなる。本実施形態においては、4層のスチールベルト26が設けられているが、積層されるスチールベルト26の枚数はこれに限らない。
【0018】
スチールベルト26のタイヤ径方向外側には、トレッドゴム28が設けられている。トレッドゴム28の外表面には、図示しないトレッドパターンが設けられており、この外表面が、路面と接触する接地面となる。
【0019】
トレッド12のタイヤ幅方向外側付近において、カーカスプライ23と、スチールベルト26およびトレッドゴム28との間の領域には、ショルダーパッド38が設けられている。このショルダーパッド38は、サイドウォール13のタイヤ径方向外側領域まで延出しており、その一部は、後述のサイドウォールゴム30との間で界面を形成している。すなわち、サイドウォール13のタイヤ径方向外側領域において、サイドウォールゴム30のタイヤ幅方向内側に、ショルダーパッド38の一部が存在している。
ショルダーパッド38はクッション性を有するゴム部材からなり、カーカスプライ23とスチールベルト26との間において、クッション機能を発揮する。また、ショルダーパッド38は低発熱性の特性を有するゴムからなるため、サイドウォール13まで延出させることにより、効果的に発熱を抑制することができる。
【0020】
ビード11、サイドウォール13、トレッド12において、カーカスプライ23のタイヤ内腔側には、タイヤ1の内壁面を構成するゴム層としてのインナーライナー29が設けられている。インナーライナー29は、耐空気透過性ゴムにより構成されており、タイヤ内腔内の空気が外部に漏れるのを防ぐ。
【0021】
サイドウォール13において、カーカスプライ23のタイヤ幅方向外側には、タイヤ1の外壁面を構成するサイドウォールゴム30が設けられている。このサイドウォールゴム30は、タイヤがクッション作用をする際に最もたわむ部分であり、通常、耐疲労性を有する柔軟なゴムが採用される。
【0022】
ビード11のビードコア21周りに設けられたカーカスプライ23のタイヤ径方向内側には、カーカスプライ23の少なくとも一部を覆うように補強プライとしてのスチールチェーハー31が設けられている。スチールチェーハー31は、カーカスプライ23のプライ折り返し部25のタイヤ幅方向外側にも延在しており、そのスチールチェーハー31の端部31Aは、カーカスプライ23の折り返し端25Aよりもタイヤ径方向内側に位置している。
このスチールチェーハー31は、金属製のスチールコードにより構成された金属補強層であり、ゴムにより被覆されている。
【0023】
スチールチェーハー31のタイヤ径方向内側には、リムストリップゴム32が設けられている。このリムストリップゴム32は、タイヤの外表面に沿って配置されており、サイドウォールゴム30と連接している。このリムストリップゴム32とサイドウォールゴム30は、タイヤの外表面を構成しているゴム部材である。
【0024】
そして、スチールチェーハー31の端部31Aのタイヤ径方向外側であって、カーカスプライ23の折り返し部25およびビードフィラー22のタイヤ幅方向外側には、第1のパッド35が設けられている。この第1のパッド35は、少なくともカーカスプライ23の折り返し端25Aのタイヤ幅方向外側に設けられている。第1のパッド35のタイヤ径方向外側は、タイヤ径方向外側に向かうほど、先細りとなるように形成されている。
【0025】
さらに、第1のパッド35のタイヤ幅方向外側を覆うように、第2のパッド36が設けられている。より詳細には、スチールチェーハー31の一部、第1のパッド35、第2ビードフィラー222の一部、カーカスプライ23のプライ本体24の一部のタイヤ幅方向外側を覆うように、第2のパッド36が設けられている。
そして、第2のパッド36のタイヤ径方向外側領域におけるタイヤ幅方向外側には、サイドウォールゴム30が配置されており、第2のパッド36のタイヤ径方向内側領域におけるタイヤ幅方向外側には、リムストリップゴム32が配置されている。
換言すると、第2のパッド36は、第1のパッド35等と、タイヤの外表面を構成する部材であるリムストリップゴム32およびサイドウォールゴム30との間に設けられている。
【0026】
第1のパッド35および第2のパッド36は、パッド部材34を構成し、このパッド部材34は、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側部分(第2ビードフィラー222)のモジュラスよりも高いモジュラスのゴムにより構成されている。
より詳細には、第2のパッド36は、第2ビードフィラー222よりも高いモジュラスのゴムにより構成されており、第1のパッド35は、第2のパッド36よりもさらに高いモジュラスのゴムにより構成されている。第1のパッド35、第2のパッド36は、カーカスプライ23の折り返し端25Aおよびスチールチェーハー31の端部31Aにおける局所的な剛性の変化点に起因する急激な歪みを緩和する機能を有する。
【0027】
ビードフィラー22とパッド部材34との間には、カーカスプライ23の折り返し端25A付近において、補強ゴムシートとしてのゴムシート37が配置されている。ゴムシート37は、カーカスプライ23の折り返し端25Aをタイヤ幅方向内側から覆うように配置されている。
ゴムシート37は、第2ビードフィラー222よりも高いモジュラスのゴムにより構成されている。より好ましくは、第1のパッド35と略等しいモジュラスのゴムにより構成されている。
【0028】
一般に、カーカスプライ23の折り返し端25Aは、応力が集中しやすい。しかしながら、上述の補強ゴムシートとしてのゴムシート37を設けることにより、応力の集中を効果的に抑えることが可能となる。
なお、本実施形態においては、パッド部材34が、第1のパッド35と第2のパッド36とにより構成されているが、パッド部材34は、一つの部材により構成されていてもよい。但し、上述のように、パッド部材34を、第1のパッド35と第2のパッド36とにより構成し、さらにゴムシート37を配置する構成を採用することにより、より効果的に応力の集中を抑えることができる。
【0029】
なお、本実施形態においては、ゴムシート37のタイヤ径方向外側端37Aの位置は、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aよりもタイヤ径方向内側に位置している。但し、ゴムシート37のタイヤ径方向外側端37Aの位置を、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aの位置と略一致させてもよい。
なお、ゴムシート37は、
図1に示されるように、カーカスプライ23の折り返し端25Aを、タイヤ幅方向内側から覆うように配置する態様を採用することが好ましいが、カーカスプライ23の折り返し端25Aを、タイヤ幅方向外側から覆う構成を採用してもよい。この場合であっても、応力の集中を緩和することができる。
【0030】
本実施形態のタイヤ1には、電子部品としての、RFIDタグ40が埋設されている。
RFIDタグ40は、RFIDチップと、外部機器と通信を行うためのアンテナとを備えた、パッシブ型のトランスポンダであり、外部機器としての図示しないリーダとの間で無線通信を行う。アンテナとしては、コイル状のスプリングアンテナ、板状のアンテナ、棒状の各種のアンテナが用いられる。例えば、フレキシブル基板に対して所定のパターンをプリントすることによって形成したアンテナであってもよい。アンテナは、使用する周波数帯域等に応じて、最適化されたアンテナ長さに設定されている。RFIDチップ内の記憶部には、製造番号、部品番号等の識別情報が格納されている。
【0031】
図2は、
図1のタイヤ1における、RFIDタグ40の埋設部周辺を示す拡大断面図である。
図1、2に示されるように、ゴムシート37およびRFIDタグ40は、ビードフィラー22とパッド部材34との間に配置されている。そして、RFIDタグ40は、ビードフィラー22とゴムシート37との間に配置されている。
【0032】
なお、第2のパッド36のモジュラスを基準とすると、サイドウォールゴム30は、第2のパッド36の0.4〜0.6倍のモジュラスとすることが好ましい。また、第1のパッド35は、第2のパッド36の1.1倍〜1.2倍のモジュラスとすることが好ましい。また、第2ビードフィラー222は、第2のパッドの0.7〜0.8倍のモジュラスとすることが好ましい。このようなモジュラスとすることで、タイヤとしての柔軟性とビード11付近の剛性のバランスを保つことができる。
【0033】
そして、ゴムシート37は、第2のパッド36の1.1倍〜1.2倍のモジュラスとすることが好ましい。すなわち、ゴムシート37のモジュラスは、パッド部材34のうち、少なくともカーカスプライ23の折り返し端25Aを覆う部分(第1のパッド35)のモジュラスと略等しいモジュラスとすることが好ましい。
【0034】
このように、パッド部材34のうち、少なくともカーカスプライ23の折り返し端25Aを覆う部分(第1のパッド35)のモジュラスと、ゴムシート37のモジュラスは共に、周囲のゴム部材のモジュラスよりも高い。
このように、モジュラスの高いゴム部材同士でカーカスプライ23の折り返し端25Aを挟み込む構成を採用することにより、この部分における応力の集中を効果的に抑えることが可能となる。
そして、RFIDタグ40は、モジュラスが高いゴム部材であるゴムシート37に配置されているため、タイヤ1がたわんだ場合においても、RFIDタグ40の変形量が小さくなる。よって、RFIDタグ40を適切に保護することができる。
なお、パッド部材34を一つの部材により構成した場合は、パッド部材34のモジュラスは、少なくともサイドウォールゴム30のモジュラスよりも高く設定されることが好ましい。より好ましくは、パッド部材34のモジュラスを、サイドウォールゴム30および第2ビードフィラー222のモジュラスよりも高く設定する。なお、パッド部材34のモジュラスを、ゴムシート37のモジュラスとは同等、もしくはそれよりも低く設定してもよい。
なお、モジュラスは、JIS K6251:2010の「3.7 所定伸び引張り応力(stress at a given elongation),S」に準拠して測定された、23℃の雰囲気下における100%伸長モジュラス(M100)を指す。
【0035】
通常、2つ物体の境界面が、カーカスプライ23の折り返し端25Aから延長する面である場合、その面は歪が生じやすい。しかしながら、本実施形態においては、ゴムシート37が、カーカスプライ23の折り返し端25Aを覆うように配置されているため、カーカスプライ23の折り返し端25Aよりもタイヤ径方向外側は、歪の影響を受けにくい部分となっている。
【0036】
図3は、タイヤをリムに組み付け、100%荷重負荷を与えた場合の、歪エネルギーの面内分布シミュレーションの結果を示す図である。
図3に示される拡大断面図においては、歪エネルギーの大きさに応じて、領域を5つに分けて表示している。ここで、歪エネルギーが最も高い領域はレベル5、歪エネルギーが高い領域はレベル4、歪エネルギーがやや下がる領域はレベル3、歪エネルギーがさらに下がる領域はレベル2、歪エネルギーが最も下がる領域はレベル1としている。
図3においては、太い点線を境界に、領域を分けて表示している。
【0037】
ビードフィラー22とパッド部材34との境界面およびその付近における、カーカスプライ23の折り返し端25Aよりもタイヤ径方向外側の領域は、概ねレベル2〜3の領域となっており、歪エネルギーが少ない。よって、この領域は、RFIDタグ40を配置する上で、好ましい領域となっている。
なお、本実施形態においては(
図2参照)、このシミュレーションモデルよりもゴムシート37がタイヤ径方向外側に延出しているが、ゴムシート37を配置して補強するという基本的な構成は同じであるため、ゴムシート37の周辺の歪エネルギーは、
図3と同等となるか、あるいは小さくなる。
【0038】
なお、
図1〜
図3に示されるタイヤ幅方向断面視において、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aから、カーカスプライ23の折り返し端25Aまでの距離を基準距離Rとしたとき、RFIDタグ40は、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aの位置から、カーカスプライ23の折り返し端25Aに向かって基準距離の60%となる位置P(
図3参照)までの範囲Qの領域内(領域Q)に配置されることが好ましい。
この範囲Qの領域内における、ビードフィラー22とパッド部材34との境界面およびその付近の歪エネルギーは、概ねレベル2となっており、RFIDタグ40を配置する上で、非常に好ましい領域となっている。よって、ゴムシート37をこの領域まで伸ばし、この領域にRFIDタグ40を配置することが好ましい。
【0039】
なお、この範囲Qの領域内であれば、通信に対して悪影響をおよぼす可能性のある、金属製のビードコア21からある程度離れた位置となる。ここで、ビードコア21は、金属製のビードワイヤを積層巻回して環状に形成されていることから、通信に対して悪影響をおよぼす可能性が特に高い金属部材である。
また、ゴムシート37付近は、タイヤ1の外表面からある程度離れた位置であるため、外傷に対する影響も受けにくい。さらに、タイヤ幅方向外側が、モジュラスの高いパッド部材34に保護されるため、この点からも、外傷に対する影響を受けにくい。
【0040】
ここで、RFIDタグ40は、保護部材43を構成する被覆ゴムシート431、432によって被覆されている。すなわち、本実施形態においては、保護部材43は、2枚の被覆ゴムシート431、432によって構成されている。
この点について、
図4A〜4Cを参照しながら説明する。
図4Aは、保護部材43を構成する被覆ゴムシートによって被覆された、RFIDタグ40を示す図である。
図4Aでは、RFIDタグ40は後述する被覆ゴムシート431に覆われて隠れている。
図4Bは
図4Aのb−b断面図、
図4Cは
図4Aのc−c断面図である。
【0041】
RFIDタグ40は、RFIDチップ41と、外部機器と通信を行うためのアンテナ42とを備えている。アンテナ42としては、コイル状のスプリングアンテナ、板状のアンテナ、棒状の各種のアンテナが用いられる。通信性をおよび柔軟性を考慮すると、コイル状のスプリングアンテナが最も好ましい。
【0042】
保護部材43に採用するゴムとしては、少なくともゴムシート37よりもモジュラスが低いゴムを用いる。例えば、保護部材43を構成する被覆ゴムシート431、432は、ゴムシート37の0.5〜0.8倍のモジュラスとすることが好ましい。但し、ある程度の強度を持たせるため、サイドウォールゴム30よりはモジュラスの高いゴムを用いることが好ましい。より好ましくは、第2ビードフィラー222と略同等のモジュラスとすることが好ましい。あるいは、変形量を効果的に吸収することを考慮して、第2ビードフィラー222よりもモジュラスの低いゴムを用いてもよい。
【0043】
前述のとおり、モジュラスの高いゴムシート37の近くにRFIDタグ40を配置することにより、タイヤ1がたわんだ場合においても、RFIDタグ40の周辺部の変形量を抑えることが可能となる。さらに、モジュラスの低い保護部材43を用いてRFIDタグ40を被覆することにより、ゴムシート37の変形を、RFIDタグ40に直接的に伝えないよう、保護部材43の中で吸収することが可能となる。
【0044】
なお、保護部材43を、短繊維フィラー混合ゴムにより構成してもよい。短繊維フィラーとしては、例えば、アラミド短繊維やセルロース短繊維といった有機短繊維、アルミナ短繊維等のセラミックス短繊維やガラス短繊維といった無機短繊維のような、絶縁性の短繊維を用いることができる。ゴムにこのような短繊維フィラーを混合することにより、ゴムの強度を高めることができる。
また、保護部材43として、加硫後の状態の被覆ゴムシートを用いてもよい。加硫後の状態の被覆ゴムシートは、生ゴムのように塑性変形しないため、RFIDタグ40を適切に保護することができる。
【0045】
また、保護部材43として、ポリエステル繊維やポリアミド繊維等による有機繊維層を設けてもよい。2枚の被覆ゴムシート431、432に、有機繊維層を埋設することも可能である。
【0046】
次に、タイヤ1の製造工程について説明する。
図5は、製造工程中のビードフィラー22を、タイヤ幅方向外側から見たときの図であり、保護部材43に被覆されたRFIDタグ40とゴムシート37をビードフィラー22に貼り付けた状態を示す図である。ここで、保護部材43に被覆されたRFIDタグ40はゴムシート37に覆われているため、点線で示されている。
図6は、
図5のd-d断面である。
【0047】
図5に示されるように、ビード11を構成するビードフィラー22、ゴムシート37はそれぞれ円環状に形成されている。そして、ゴムシート37は、ジョイント部37Cを有している。
本実施形態においては、
図5に示されるように、ゴムシート37の外周37A(
図2のタイヤ幅方向断面視における、タイヤ径方向外側端37A)の外径は、ビードフィラー22の外周22A(
図2のタイヤ幅方向断面視における、タイヤ径方向外側端22A)の外径よりもやや小さい。但し、両者の外径は略一致していてもよい。
【0048】
被覆ゴムシートとしての保護部材43により被覆されたRFIDタグ40は、タイヤ1の製造工程において、加硫工程の前に取り付けられている。本実施形態においては、加硫される前のビードフィラー22に保護部材43に被覆されたRFIDタグ40が貼り付けられ、その後、保護部材43に被覆されたRFIDタグ40を覆うように、ゴムシート37が貼り付けられる。すなわち、ビードフィラー22とゴムシート37との間に保護部材43に被覆されたRFIDタグ40を挟み込むように、ビードフィラー22にゴムシート37が貼り付けられる。
このとき、ビードフィラー22、ゴムシート37は、加硫前の生ゴムの状態であるため、その粘着性を利用して貼り付けることができる。あるいは、粘着性が低い場合などにおいては、接着剤等を用いて貼り付けてもよい。
【0049】
ここで、ゴムシート37は、長尺のシートの一端側37Eと他端側37Gがジョイント部37Cにおいてジョイントされることにより円環状に形成されている。そして、RFIDタグ40は、ジョイント部37Cにおいて、ビードフィラー22とゴムシート37との間に配置されている。
より詳細には、ゴムシート37を形成する長尺のシートは、
図5、6に示されるように、その一端側37Eの端面37Fが、RFIDタグ40を被覆している保護部材43の一端側の端面43Fと当接または近接するように配置されている。そして、ゴムシート37を形成する長尺のシートは、
図5に示されるように、ビードフィラー22のタイヤ幅方向外側表面上を周回するように配置されて、円環状に形成されている。ゴムシート37を形成する長尺シートの他端側37Gは、
図5、6に示されるように、保護部材43に被覆されたRFIDタグ40を覆い、さらに長尺のシートの一端側37Eと重なるように配置されている。このような構成により、長尺シートの一端側37Eと他端側37Gは、円環状のゴムシート37のジョイント部37Cを形成している。
なお、ゴムシート37を形成する長尺のシートは、押し出し成形によって形成された直線状のシートであってもよい。この場合、ビードフィラー22に貼り付ける際に、直線状のシートが円環状となるように曲げながら貼り付けていく。
【0050】
このように、本実施形態においては、ビードフィラー22に、RFIDタグ40を貼り付ける工程と、RFIDタグ40の貼り付け位置とゴムシート37の一端側37Eが近接するように、ゴムシート37の一端側37Eをビードフィラー22に貼り付ける工程と、ゴムシート37の他端側37Gのジョイント部37C近傍とビードフィラー22の間にRFIDタグ40を挟み込むように、ゴムシート37の他端側37Gをビードフィラー22およびゴムシート37の一端側37Eに貼り付ける工程と、を含んでいる。
このような工程を採用すれば、タイヤのユニフォミティの悪化を防ぐことができる。さらに、RFIDタグ40の貼り付け位置が、ビードフィラー22にゴムシート37の一端側37Eを貼り付けるときの目印となるため、作業性が良くなる。
【0051】
以上のように、RFIDタグ40をゴムシート37のジョイント部37Cに配置することにより、タイヤのゴム構造体中に、RFIDタグ40や、ゴムシート37のジョイント部37Cといった、ゴム構造体の厚みの変動要因となる部分が、不規則に複数箇所で生じてしまう状況を防ぐことができる。よって、ユニフォミティの悪化を防ぐことができる。
【0052】
ここで、被覆ゴムシートとしての保護部材43の厚みは、ゴムシート37の厚み以下であることが好ましい。少なくともゴムシート37の一端側37Eの端面37Fに近接する側に位置する保護部材43の厚みは、ゴムシート37の厚み以下であることが好ましい。
図6に示されるように、被覆ゴムシートとしての保護部材43の厚みをゴムシート37の厚みと同等とするか、それよりも薄くすることにより、ゴムシート37のジョイント部37Cの厚みを薄くすることができる。また、段差の発生も最小化することができる。
【0053】
このようにしてタイヤを構成する各ゴム部材等が組み付けられ、生タイヤが形成される。
その後、RFIDタグ40を含む各構成部材が組み付けられた生タイヤを、加硫工程において加硫し、タイヤを製造する。
【0054】
なお、ゴムシート37は、生タイヤ組み付け後の状態において、カーカスプライ23の折り返し端25Aを全周に亘って覆う態様となるように円環状に形成されている。よって、全周に亘って応力の集中を抑えることが可能となる。その結果、RFIDタグ40が受ける応力も小さくなる。
【0055】
なお、タイヤ1の製造工程の変形例として、以下のような製造工程を採用してもよい。
すなわち、ゴムシート37側に、保護部材43に被覆されたRFIDタグ40を貼り付け、その後、ビードフィラー22とゴムシート37との間に保護部材43に被覆されたRFIDタグ40が挟まれるように、ビードフィラー22とゴムシート37とを組み付ける。このような工程を採用した場合であっても、ビードフィラー22とゴムシート37との間にRFIDタグ40が配置される。
【0056】
このように、本実施形態においては、タイヤ製造時において、生ゴム状態のゴムを用いて、保護部材43に被覆されたRFIDタグ40を貼り付けることができるため、タイヤの製造工程におけるRFIDタグ40の組み付け作業が容易である。特に、ビードフィラー22は、生ゴム状態であってもある程度の剛性を有しているため、RFIDタグ40の取り付け作業が容易である。
【0057】
また、保護部材43を、2枚の被覆ゴムシート431、432によって構成すれば、保護部材43を含むRFIDタグ40を薄く形成できるので、タイヤ1に埋設する上で好適である。また、加硫前のタイヤ1の構成部材にRFIDタグ40を組み付けるときにおいて、被覆ゴムシートによって被覆されたRFIDタグ40は、非常に簡便に装着することができる。
例えば、加硫前のビードフィラー22といった部材の所望の位置に、被覆ゴムシート431、432によって被覆されたRFIDタグ40を、生ゴムの粘着性を利用して適切に貼り付けることができる。また、被覆ゴムシート431、432も加硫前の生ゴムとすることにより、被覆ゴムシート自身の粘着性も用いて、より簡便に貼り付けることができる。
【0058】
ただし、保護部材43は、2枚の被覆ゴムシートによって構成される態様に限らず、種々の態様を採用することができる。例えば、保護部材を構成する被覆ゴムシートは、RFIDタグ40の少なくとも一部を覆っていれば、製造工程における作業性の向上や応力緩和などの効果が得られる。
また、例えば、RFIDタグ40の全周に亘って1枚のゴムシートを巻き付ける構成や、RFIDタグ40の全周に亘って、粘度の高いポッティング剤の態様の保護部材を付着させた構成であってもよい。このような構成であっても、RFIDタグ40を適切に保護することができる。
【0059】
なお、保護部材43に被覆されたRFIDタグ40は、アンテナが伸びる方向、すなわち長手方向が、例えばタイヤ1の周方向に対して接線の方向、すなわち
図1〜2の断面図において紙面に直交する方向となるように、タイヤ1に埋設されている。また、被覆ゴムシート431、432は、タイヤ幅方向に並ぶような態様で、タイヤ1に埋設される。すなわち、製造工程において、被覆ゴムシート431、432のいずれか一方の一面が、加硫前のタイヤ1の構成部材、例えばビードフィラー22に貼り付けられる。そして、保護部材43に覆われているRFIDタグ40は、ビードフィラー22とゴムシート37との間に配置される。
このような態様とすることで、タイヤ1が変形したときにおいても、RFIDタグ40に応力がかかりにくい。また、製造工程において、保護部材43に被覆されたRFIDタグ40を取り付ける作業が簡便となる。
【0060】
ここで、RFIDタグ40の取り付け工程においては、円環状のビードフィラー22の外周22Aの形状を基準とすることにより、保護部材43に被覆されたRFIDタグ40を上述の方向に簡単に配置することができる。すなわち、
図5に示されるように、円環状のビードフィラー22の外周22Aの周方向に沿うように、RFIDタグ40を被覆した被覆ゴムシート431、432を貼り付ける。このとき、
図5に示されるように、生ゴムによって形成された被覆ゴムシート431、432を、ビードフィラー22の外周22Aの周方向に沿うように変形させながら貼り付けることも可能である。RFIDタグ40のアンテナとして、柔軟なコイル状のスプリングアンテナなどを用いて、被覆ゴムシート431、432の変形に追従して、アンテナも変形するような態様としてもよい。
あるいは、円環状のビードフィラー22の外周22Aを基準として、RFIDタグ40を被覆した被覆ゴムシート431、432の長手方向を、円環状のビードフィラー22の外周22Aの接線方向と略一致するように貼り付けてもよい。
この方法により、特別な目印を付与することもなく、保護部材43に被覆されたRFIDタグ40を上述の方向に簡単かつ正確に配置することができる。また、タイヤ出来上がり時のビードの厚みも安定し、製造上のバラツキも低減する。
【0061】
なお、RFIDタグ40は、上述のような保護部材43により被覆された状態で、ビードフィラー22とゴムシート37との間に挟み込むことが好ましいが、保護部材43により被覆することなく、直接ビードフィラー22とゴムシート37との間に挟み込んでもよい。
無被覆のRFIDタグ40を直接ビードフィラー22とゴムシート37の間に挟み込めば、RFIDタグ40が挟み込まれる部分のゴム部材の厚みの変動が低減し、タイヤのユニフォミティが向上する。また、ビードフィラー22とゴムシート37との間にRFIDタグ40を挟み込む作業において、挟み込む物体の体積が小さい分、空気の除去も容易となる。また、RFIDタグ40を保護部材で覆う工程が無くなることにより、作業時間が短縮する。
【0062】
なお、本実施形態においては、電子部品として、RFIDタグ40がタイヤに埋設されているが、タイヤに埋設される電子部品は、RFIDタグに限らない。例えば、無線通信を行うセンサ等の各種の電子部品であってもよい。また、電子部品は、電気信号の送受信等、電気的な情報を扱うことから、近傍に金属部品が存在することにより性能が低下する可能性がある。また、電子部品は、過度な応力がかかることにより、破損する可能性がある。よって、種々の電子部品をタイヤに埋設する場合においても、本発明の効果を得ることができる。例えば電子部品は、圧電素子や、歪センサであってもよい。
【0063】
本実施形態のタイヤ1によれば、以下の効果を奏する。
【0064】
(1)本実施形態に係るタイヤ1は、ビードコア21と、ビードコア21のタイヤ径方向外側に延出するビードフィラー22と、ビードコア21から他方のビードコア21に延び、ビードコア21の周りで折り返されたカーカスプライ23と、を備えたタイヤ1であって、折り返されたカーカスプライ23の折り返し端25Aを覆うゴムシート37と、ビードフィラー22とゴムシート37との間に設けられた電子部品としてのRFIDタグ40、を備え、ビードフィラー22は円環状に形成され、ゴムシート37は、長尺のシートの一端側と他端側がジョイントされることにより円環状に形成されており、RFIDタグ40は、ゴムシート37のジョイントされている部分であるジョイント部37Cにおいて、ビードフィラー22とゴムシート37との間に配置されている。
このように、RFIDタグ40をゴムシート37のジョイント部37Cに配置することにより、タイヤのゴム構造体中に、RFIDタグ40や、ゴムシート37のジョイント部37Cといった、ゴム構造体の厚みの変動要因となる部分が、不規則に複数箇所で生じてしまう状況を防ぐことができる。よって、ユニフォミティの悪化を防ぐことができる。
【0065】
(2)本実施形態に係るRFIDタグ40は、被覆ゴムシート431、432に覆われており、被覆ゴムシート431、432に覆われているRFIDタグ40が、ビードフィラー22とゴムシート37との間に配置されている。
よって、RFIDタグ40を適切に保護することができる。
【0066】
(3)本実施形態に係る被覆ゴムシート431、431としての保護部材43の厚みはゴムシート37の厚み以下である。
これにより、ゴムシート37のジョイント部37Cの厚みを薄くすることができる。また、段差の発生も最小化することができる。
【0067】
(4)本実施形態に係る被覆ゴムシート431、432のモジュラスは、ゴムシート37のモジュラスよりも低い。
これにより、ゴムシート37の変形を、RFIDタグ40に直接的に伝えないよう、保護部材43の中で吸収することが可能となる。
【0068】
(5)本実施形態に係るタイヤ1の製造方法は、ビードフィラー22にRFIDタグ40を貼り付ける工程と、RFIDタグ40の貼り付け位置とゴムシート37の一端側37Eが近接するように、ゴムシート37の一端側37Eをビードフィラー22に貼り付ける工程と、ゴムシート37の他端側37Gとビードフィラー22との間にRFIDタグ40を挟み込まれるように、ゴムシート37の他端側37Gをビードフィラー22およびゴムシート37の一端側37Eに貼り付ける工程と、を含む。
このような製造方法を採用すれば、タイヤのユニフォミティの悪化を防ぐことができる。さらに、保護部材43に被覆されたRFIDタグ40の貼り付け位置が、ビードフィラー22にゴムシート37の一端側37Eを貼り付けるときの目印となるため、作業性が良くなる。
【0069】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係るタイヤについて、
図7〜13を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態と同じ構成については、同じ符号を付し、また詳細な説明を省略する。
本実施形態は、RFIDタグ40のアンテナが、コイル状のスプリングアンテナである場合に特に好適な実施形態である。
【0070】
本実施形態のRFIDタグ40は、アンテナとして、通信性および柔軟性の高いコイル状のスプリングアンテナ421が用いられている。スプリングアンテナ421は、使用する周波数帯域等に応じて、最適化されたアンテナ長さに設定されている。
【0071】
本実施形態においては、保護部材43を構成する2枚の被覆ゴムシート431、432でRFIDタグ40を挟み込む前に、スプリングアンテナ421内にゴムを配置する。より好ましくは、空気がなるべく残らないように、スプリングアンテナ内にゴムを充填する。
図7〜13を用いて、その工程およびその工程を採用する理由を説明する。
【0072】
まず、
図7〜
図9を用いて、参考例として、スプリングアンテナ421内にゴムを充填しない場合における、RFIDタグ40周辺の状態について説明する。
図7は、RFIDタグ40を被覆ゴムシート431、432で挟み込む前の、スプリングアンテナ421、被覆ゴムシート431、432の断面を示す図である。
図8は、RFIDタグ40を被覆ゴムシート431、432で挟み込んだ後の、スプリングアンテナ421、被覆ゴムシート431、432の断面を示す図である。
【0073】
図8に示されるように、この参考例においては、スプリングアンテナ421内に予めゴムが充填されていないため、被覆ゴムシート431、432で挟み込んだ後において、スプリングアンテナ421内に空気45がある程度残ってしまう場合がある。このように空気が残ってしまうと、被覆ゴムシート431、432とスプリングアンテナ421との一体性が不十分となり、タイヤが変形したときに、ゴムの動きにスプリングアンテナ421が追従せず、スプリングアンテナ421を有するRFIDタグ40が破損するおそれがある。
【0074】
なお、ここでは被覆ゴムシート431、432として、加硫前の生ゴムを使用している。よって、被覆ゴムシート431、432を両側から押しつけることにより、
図8に示されるように、スプリングアンテナ内に被覆ゴムシート431、432がある程度はめり込んでいる。しかしながら、スプリングアンテナ内が完全に埋まるまで被覆ゴムシート431、432をめり込ませるためには、非常に多くの時間と手間がかかる。
【0075】
そして、仮に時間をかけてスプリングアンテナ内が埋まるまでゴムシートをめり込ませた場合であっても、
図9に示されるように、スプリングアンテナ421の外周部と、被覆ゴムシート431、432の外表面との距離Lが非常に短くなる。また、その距離Lを安定させることは困難であり、局所的に薄い部分が発生し得る。よって、被覆ゴムシート431、432によるRFIDタグ40の保護が不十分となり、加硫時において、被覆ゴムシート431、432が破損する可能性がある。
【0076】
そこで、本実施形態においては、
図10〜13に示されるように、被覆ゴムシート431、432でRFIDタグ40を挟み込む前に、スプリングアンテナ421内にゴムを配置する。より好ましくは、空気がなるべく残らないように、スプリングアンテナ内にゴムを充填する。なお、
図10〜13の右側に示す図は、スプリングアンテナ421およびその周囲の横断面を示す図である。
【0077】
図10は、スプリングアンテナ421内にゴム46を充填する前の状態を示す図、
図11は、スプリングアンテナ421内にゴム46を充填した後の状態を示す図である。
ゴム46は、スプリングアンテナ421の外周面と略同じ外径となるように埋め込まれる。そして、スプリングアンテナ421の外周面からゴム46がはみ出ている場合には、その部分を拭き取って除去することが好ましい。すなわち、ゴム46の外周面は、スプリングアンテナ421の外周面と略同一面となるように成形されることが好ましい。
なお、スプリングアンテナ421内にゴム46を充填すると共に、スプリングアンテナ421の外周をゴム46で薄く包み込んでもよい。一方、スプリングアンテナ421をゴム46によって厚く包み込んでしまうと、スプリングアンテナ421の柔軟性が損なわれる上に、RFIDタグ40を挟み込んだ後の被覆ゴムシート431、432により形成される幅方向の寸法が大きくなってしまうため、好ましくない。
なお、スプリングアンテナ421の内周面と略同じ外径となるように、ゴム46を埋め込んでもよい。ゴム46の外周部は、スプリングアンテナ421の内周面〜外周面の範囲内に位置していることが望ましい。
【0078】
ここで、スプリングアンテナ421の柔軟性を確保するために、ゴム46としては、柔軟性を有するゴムを用いる。但し、作業性等を考慮して、ゴム46として、被覆ゴムシート431、432よりも高いモジュラスのゴムを用いることが好ましい。
なお、スプリングアンテナ421内に配置するゴム46としては、好ましくは未加硫のゴムを用いる。ゴム46、被覆ゴムシート431、432を未加硫のゴムとし、同時に加硫することにより、ゴム46、被覆ゴムシート431、432、スプリングアンテナ421の一体性が高まる。また、ゴム46、被覆ゴムシート431、432は、同種のゴムとすることがより好ましい。
なお、スプリングアンテナ421の柔軟性を重視して、ゴム46として、被覆ゴムシート431、432よりも低いモジュラスのゴムを用いてもよい。また、略同一のモジュラスのゴム、同じ材質のゴムを用いてもよい。
なお、スプリングアンテナ421内に配置するゴム46として、加硫後のゴムを用いてもよい。また、ゴム系接着剤、ゴム系充填剤などを用いることも可能である。柔軟性を確保しつつ、スプリングアンテナ421内に空気をなるべく残らないようにすることを考慮して、各種のゴム系材料を採用することができる。
ゴム46の配置作業としては、各種の方法が採用可能であるが、例えば、注射器を用いてスプリングアンテナ421内にゴムを注入することも可能である。この場合、注射器を用いて、設定された適切な量のゴム46を充填してもよい。また、ゴム46を多めに充填後、スプリングアンテナ421の外周からはみ出た部分を拭き取ってもよい。
【0079】
図12は、スプリングアンテナ421にゴム46が充填されたRFIDタグ40を、被覆ゴムシート431、432で挟み込む前の状態を示す図、
図13は、被覆ゴムシート431、432で挟み込んだ後の状態を示す図である。
【0080】
図13に示されるように、本実施形態によれば、スプリングアンテナ421内に予めゴム46が充填されていたため、被覆ゴムシート431、432の間に空気溜まりが存在していない。よって、空気溜まりを気にしなくてもよいため、被覆ゴムシート431、432でRFIDタグ40を挟み込む工程も簡便となる。
また、スプリングアンテナ421内にゴム46が配置されていることにより、スプリングアンテナ421、ゴム46、被覆ゴムシート431、432の一体性が高まり、タイヤが変形したときに、ゴムの動きにスプリングアンテナ421が追従する。よって、スプリングアンテナ421を有するRFIDタグ40の耐久性も向上する。
【0081】
また、本実施形態によれば、スプリングアンテナ421の外周部と、被覆ゴムシート431、432の外表面との距離Lが安定する。すなわち、この距離Lとして、被覆ゴムシート431、432の肉厚に近い距離が概ね確保される。よって、RFIDタグ40は、被覆ゴムシート431、432によって十分保護される。
本実施形態において被覆ゴムシート431、432で挟み込まれたRFIDタグ40は、ビードフィラー22等に配設され、その後生タイヤは加硫される。
【0082】
なお、本実施形態においては、スプリングアンテナ421内に予めゴム46が充填されたRFIDタグ40が、被覆ゴムシート431、432に被覆された上で、ビードフィラー22とゴムシート37との間に挟まれるように配置されている。
しかしながら、スプリングアンテナ421内に予めゴム46が充填されたRFIDタグ40を、被覆ゴムシート431、432で被覆することなく、直接ビードフィラー22とゴムシート37の間に挟み込んでもよい。
このように、無被覆のRFIDタグ40を直接ビードフィラー22とゴムシート37の間に挟み込むことにより、RFIDタグ40を挟み込まれる部分のゴム部材の厚みの変動が低減し、タイヤ1のユニフォミティが向上する。また、スプリングアンテナ421内に予めゴム46が充填されているため、ゴムシート37がスプリングアンテナ内に過度にめり込むようなこともない。
【0083】
本実施形態に係るタイヤによれば、上記(1)〜(5)に加えて以下の効果を奏する。
【0084】
(6)本実施形態においては、通信機能を有する電子部品としてのRFIDタグ40がスプリングアンテナ421を有し、ビードフィラー22またはゴムシート37にRFIDタグ40を貼り付ける工程の前に、スプリングアンテナ421内にゴム46を配置する工程を備える。
これにより、RFIDタグ40のスプリングアンテナ421をゴム部材間に挟み込む工程の際に、空気溜まりを気にしなくてもよくなるため、組み立て性が良好となる。
(7)本実施形態においては、通信機能を有する電子部品としてのRFIDタグ40のスプリングアンテナ421内にゴム46を配置する工程と、ゴム46が配置されたスプリングアンテナ421を有するRFIDタグ40を、被覆ゴムシート431、432で挟み込む工程と、被覆ゴムシート431、432で挟み込まれたRFIDタグ40を、ビードフィラー22とゴムシート37の間に配設する配設工程と、を備える。
これにより、スプリングアンテナ421内に空気45が残ってしまうことがない。また、空気溜まりを気にしなくてもよいため、被覆ゴムシート431、432でRFIDタグ40を挟み込む作業も簡便となる。
また、スプリングアンテナ421の外周部と、被覆ゴムシート431、432の外表面との距離Lが安定するため、RFIDタグ40は、被覆ゴムシート431、432によって十分保護される。
【0085】
(8)本実施形態においては、通信機能を有する電子部品としてのRFIDタグ40のスプリングアンテナ421内にゴム46を配置する工程と、ビードフィラー22とゴムシート37の間に無被覆のRFIDタグ40を挟み込むように、ビードフィラー22にゴムシート37を貼り付ける工程と、を含む。
このように、無被覆の電子部品を直接ビードフィラー22とゴムシート37の間に挟み込むことにより、RFIDタグ40を挟み込まれる部分のゴム部材の厚みの変動が低減し、タイヤ1のユニフォミティが向上する。また、スプリングアンテナ421内に予めゴム46が充填されているため、ゴムシート37がスプリングアンテナ内に過度にめり込むようなこともない。
【0086】
なお、本発明のタイヤは、乗用車、ライトトラック、トラック、バス等の各種タイヤとして採用することができるが、特にトラック、バス等のタイヤとして好適である。
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲で変形、改良などを行っても、本発明の範囲に含まれる。
【解決手段】タイヤ1であって、折り返されたカーカスプライ23の折り返し端25Aを覆うゴムシート37と、ビードフィラー22とゴムシート37との間に設けられた電子部品としてのRFIDタグ40、を備え、ビードフィラー22は円環状に形成され、ゴムシート37は、長尺のシートの一端側と他端側がジョイントされることにより円環状に形成されており、電子部品としてのRFIDタグ40は、ゴムシート37のジョイントされている部分であるジョイント部37Cにおいて、ビードフィラー22とゴムシートとの間に配置されている。