(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記直流電源盤は、密閉構造に構成されると共に、非常時に運転する負荷に対して必要な容量を確保可能な台数よりも一台多い台数が並列に接続されて構成されたことを特徴とする請求項1に記載の直流電源設備の消火システム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を、図面に基づき説明する。
[A]第1実施形態(
図1〜
図3)
図1は、第1実施形態に係る直流電源設備の消火システムにおける一例を示す正面断面図である。また、
図2は、第1実施形態に係る直流電源設備の消火システムの他の例を示す正面断面図である。これらの
図1の直流電源設備A1、
図2の直流電源設備A2は、必要な電源容量確保のために、例えばリチウムイオン蓄電池を内蔵した直流電源盤10が複数台(本第1実施形態では2台)並列に接続されて構成され、更に、後述の消火システム35、36を有する。
【0012】
直流電源盤10は、充電器11及び二次電池(即ちリチウムイオン蓄電池、具体的には、後述の電池モジュール27内に収容される図示しない電池セル)を盤筐体13に内蔵し、充電器11にて直流電力に変換される交流電力が停電などにより入力されなくなったとき、リチウムイオン蓄電池から図示しない負荷へ直流電力を継続して供給するものである。この直流電源盤10は、盤筐体13の上部に設けられて充電器11を備える電力変換部14と、盤筐体13の下部に設けられてリチウムイオン蓄電池を備える蓄電池部15と、を有して構成される。
【0013】
一般に、直流電源盤の電池はリチウムイオン二次電池(リチウムイオン蓄電池)、ニッケル水素二次電池、ニッケルカドミウム二次電池、鉛蓄電池などの二次電池で構成される。それぞれの電池の電解液について、リチウムイオン二次電池は有機溶剤、ニッケル水素二次電池、ニッケルカドミウム二次電池はアルカリ系水溶液、鉛蓄電池は酸性水溶液(一般的には硫酸)で構成される。電池外装が破れた状態でガス消火装置が稼働すると電解液が当該の直流電源盤以外の箇所に飛散するが、その場合、酸性もしくはアルカリ性水溶液が飛散すると、電子機器や金属部の腐食など当該直流電源盤以外の箇所(例えば電子回路や火災検知器など)に故障を生じさせる可能性がある。そのため、ガス消火装置を適用するにはリチウムイオン二次電池(リチウムイオン蓄電池)が好適である。
【0014】
電力変換部14では、交流入力部16に交流遮断器17及び変圧器18を経て充電器11が接続され、この充電器11に、第1ダイオード21、第2ダイオード22及び直流遮断器20を経て直流出力部23が接続される。変圧器18は、交流入力部16にて入力された交流電源19からの一次交流電力の電圧を変圧して二次交流電力とする。充電器11は、変圧器18からの二次交流電力を直流電力に変換し、第1ダイオード21、第2ダイオード22及び直流遮断器20を経て直流出力部23に出力する。この直流出力部23から直流電力が、外部の負荷へ供給される。
【0015】
交流遮断器17と直流遮断器20と後述のヒューズ24は、盤筐体13内で短絡または地絡などの電気故障が発生した場合に、少なくとも一つが開放されることで、故障電流(短絡電流、地絡電流)が流れ続けることを阻止して、盤筐体13内での火災の発生を防止する機能を果たす。また、第1ダイオード21及び第2ダイオード22のうちの特に第1ダイオード21は、蓄電池部15におけるリチウムイオン蓄電池からの直流電力(直流電流)が充電器11へ逆流することを阻止するものである。
【0016】
盤筐体13における蓄電池部15に対応する領域には、鉛直方向に所定の間隔を隔てて棚板25が複数段(本実施形態では6段)設けられ、最上段を除く各棚板25と盤筐体13の底部に電池ユニット26が1つずつ設置される。この電池ユニット26は、複数個(例えば5個)の電池モジュール27が図示しないケーブルを用いて直列に接続して構成される。各電池モジュール27のケース内には、複数個(例えば24個)のリチウムイオン蓄電池(電池セル)が多直多並列に組み合わされて収容されている。また、各棚板25に設置されたそれぞれの電池ユニット26は、この電池ユニット26の出力部に設けられた断路器29を介して母線30に接続されることで、互いに並列に接続される。
【0017】
母線30は、電池モジュール27を接続するケーブルの一部やその他のケーブルと共に、盤筐体13内における例えば左側方に鉛直方向に設けられた通路部31内に設置される。この母線30に断路器29を介して、各電池ユニット26が互いに並列に接続される。電池モジュール27内のリチウムイオン蓄電池に蓄えられた直流電力は、母線30及びヒューズ24を介して、電力変換部14の充電器11の出力部に接続され、更に、第2ダイオード22及び直流遮断器20を経て直流出力部23へ供給される。上記通路部31は、各棚板25の端面と盤筐体13の側壁面とに区画されて形成され、または各棚板25に同軸上に開口された穴が連続することで形成される。
【0018】
直流電源盤10の電力変換部14には電源盤制御部32が設置される。この電源盤制御部32は、本電源盤制御部32が設置された直流電源盤10における電池セル(リチウムイオン蓄電池)の電圧、その電圧のばらつき及び電流、並びに電池セルを複数個多直多並列に接続してケース内に収容した電池モジュール27の電流、電圧及び温度などのパラメータがそれぞれのセンサで検出されたときの検出値を取り込むことで、電池セル及び電池モジュール27の上記パラメータを監視する。
【0019】
更に、電源盤制御部32は、
図3に示すように、本電源盤制御部32が設置された直流電源盤10に電気故障が発生して上記パラメータの少なく一つが規定値に至ったときに、当該直流電源盤10の交流遮断器17及び直流遮断器20を遮断(トリップ)させて、火災を含む電気故障の拡大を防止すると共に、電気故障が発生した直流電源盤10を電源系統から切り離す。
【0020】
ところで、直流電源設備A1の消火システム35及び直流電源設備A2の消火システム36は、例えば短絡や地絡などの電気故障によって、複数の電池モジュール27を接続するケーブル、または電池モジュール27のケースがそれぞれ燃焼して火災(盤内火災)が発生した際に、この盤内火災を迅速に検知して消火するものである。
【0021】
図1に示す直流電源設備A1の消火システム35は、光電式の煙検知器40及び検知制御装置44を備えた検知手段と、消火ノズル41、貯蔵源としての消火ガスタンク42、及び噴射弁43を備えた消火手段と、を有して構成される。このうち、煙検知器40を除く検知手段である検知制御装置44と、消火ノズル41を除く消火手段である消火ガスタンク42及び噴射弁43は、直流電源設備A1を構成する直流電源盤10の数(2台)よりも少なく(各1個)設置されている。
【0022】
また、
図2に示す直流電源設備A2の消火システム36は、吸引式の煙検知器45及び検知制御装置49を備えた検知手段と、消火ノズル41、消火ガスタンク42及び噴射弁43を備えた消火手段と、を有して構成される。このうちの吸引式の煙検知器45は、煙検知器本体45A及び煙吸引口45Bを備える。また、煙吸引口45Bを除く検知手段である煙検知器本体45A及び検知制御装置49と、消火ノズル41を除く消火手段である消火ガスタンク42及び噴射弁43は、直流電源設備A2を構成する直流電源盤10の数(2台)よりも少なく(各1個)設置されている。
【0023】
図1に示す煙検知器40は、煙を検知することで盤筐体13内の火災(盤内火災)の発生を検出するものである。この盤筐体13内の火災を検知する火災検知器としては、煙検知器40のほかに、温度検知器や画像検知器がある。直流電源盤10に内蔵されるリチウムイオン蓄電池は、鉛蓄電池やニッケル水素二次電池、ニッケルカドミウム二次電池に比べて一般に内部抵抗が低い。このため、リチウムイオン蓄電池は、外部短絡などの電気故障時に鉛蓄電池やニッケル水素二次電池、ニッケルカドミウム二次電池に比べて、より大電流がより長い時間流れ、電気故障時に、電池モジュール27を接続するケーブルに大電流が流れて、このケーブルの被覆材が燃焼し煙が発生する場合が多い。そこで、火災検知器としては、煙を検知する煙検知器40が好ましい。
【0024】
図1に示す煙検知器40は、光の反射率により煙の存在を検知する光電式の煙検知器であるが、
図2に示すように、煙検知器本体45A及び煙吸引口45Bを備える吸引式の煙検知器45であってもよい。煙検知器本体45Aは、複数台(例えば2台)の直流電源盤10の盤筐体13の外部に1個設置される。また、煙吸引口45Bは、直流電源盤10のそれぞれの盤筐体13の天井部13Pにおける通路部31の直上またはその直上近傍に設置される。この煙検知器45は、盤筐体13内の煙を含む空気を強制的に吸引することで、盤筐体13内で発生した火災(盤内火災)による煙を短時間に効率的に検知する。
【0025】
吸引式の煙検知器45の煙検知器本体45Aからは母管46が延び、この母管46から、先端に煙吸引口45Bが設けられた吸引配管47が分岐する。吸引配管47の管長と吸引配管47の母管46に対する分岐間隔と煙吸引口45Bの口径とが調整されることで、煙検知器45は、2台の直流電源盤10のそれぞれの盤筐体13から、この盤状態13内の空気及び煙を均等に吸引することが可能になる。これにより、煙検知器本体45Aを直流電源盤10毎に設置する必要がなくなる。
【0026】
一方、
図1に示す光電式の煙検知器40は、吸引式の煙検知器45よりも小型で且つ廉価であり、複数台(例えば2台)の直流電源盤10のそれぞれの盤筐体13内に、例えば2個ずつ設置される。つまり、煙検知器40は、盤筐体13の天井部13Pにおける通路部31の直上またはその直上近傍と、最上段の棚板25もしくは最上段よりも一段下の棚板25における通路部31内またはその通路部31近傍にそれぞれ設置される。
【0027】
光電式の煙検知器40、吸引式の煙検知器45の煙吸引口45Bが、通路部31の直上またはその直上近傍、通路部31内またはその通路部31近傍に設置されることで、煙検知器40、45は、特に母線30に沿って上昇する煙を好適に検知することが可能になる。また、煙検知器40が最上段の棚板25もしくは最上段よりも一段下の棚板25に設置されることで、複数の電池モジュール27を接続するケーブルの火災、または電池モジュール27内のリチウムイオン蓄電池の火災によりそれぞれ発生した煙を短時間に検知することが可能になる。
【0028】
図1及び
図2に示す消火ノズル41は、消火ガス配管48及び1個の噴射弁43を介して、消火媒体としての消火ガスを貯蔵する1基の消火ガスタンク42に接続される。この消火ノズル41は、複数台(例えば2台)の直流電源盤10のそれぞれの盤筐体13内に、例えば2個ずつ設置される。つまり、消火ノズル41は、各直流電源盤10の盤筐体13の天井部13Pにおける通路部31の直上またはその直上近傍と、最上段の棚板25もしくは最上段よりも一段下の棚板25における通路部31内またはその通路部31近傍にそれぞれ設置される。そして、この消火ノズル41は、噴射弁43の開弁時に消火ガスタンク42内の消火ガスを、複数台(例えば2台)の各直流電源盤10の盤筐体13内に同時に噴射して、盤筐体13内で発生した火災を消火する。
【0029】
消火ノズル41が通路部31の直上またはその直上近傍、通路部31内またはその通路部31近傍に設置されることで、この消火ノズル41から噴射された消火ガスは、特に母線30に沿って下方へ流れて盤筐体13内に迅速に行き渡る。また、消火ノズル41が最上段の棚板25もしくは最上段よりも一段下の棚板25に設置されることで、複数の電池モジュール27を接続するケーブルの火災、または電池モジュール27内のリチウムイオン蓄電池(電池セル)の火災に対して、消火ガスを迅速に導くことが可能になる。
【0030】
ここで、1基の消火ガスタンク42に貯蔵される消火ガス量は、予め測定された直流電源盤10の1台当たりに必要な消火ガス最少量に、直流電源設備A2を構成する直流電源盤10の台数を乗じた値に設定される。これにより、消火ガスタンク42及び噴射弁43を直流電源盤10毎に設置する必要がなくなる。また、消火ガスタンク42から延びる消火ガス配管48は、噴射弁43を経た後に分岐されて各直流電源盤10内の消火ノズル41に至る。そして、この消火ガス配管48には、それぞれの消火ノズル41近傍にオリフィス39が配設されている。このオリフィス39は、消火ガスタンク42から各直流電源盤10の消火ノズル41に流れる消火ガスの流量が均一になるように設定されたものである。
【0031】
図1に示す検知手段としての1台の検知制御装置44は、複数台の各直流電源盤10の少なくとも一方の煙検知器40からの火災検知信号を、煙検知器40のID番号と共に受信すると、この火災検知信号に基づいて、1個の噴射弁43を開動作させる指令信号(開信号)をこの噴射弁43に出力する。すると、複数台(例えば2台)の全ての直流電源盤10内の消火ノズル41から消火ガスが同時に噴射されて、直流電源盤10の火災(盤内火災)が消火される。
【0032】
検知制御装置44は、火災検知信号を出力した煙検知器40のID番号を認識することで、火災が発生した直流電源盤10を特定することが可能になる。但し、この検知制御装置44は、複数台(例えば2台)のいずれか1つの直流電源盤10の煙検知器40から火災検知信号を受信した場合にも、1個の噴射弁43に開信号を出力して、複数台(例えば2台)の全ての直流電源盤10内に消火ガスを噴射させる。
【0033】
図2に示す検知手段としての1台の検知制御装置49は、複数台(例えば2台)の直流電源盤10内の煙を含む空気を煙吸引口45Bが吸引することで煙検知器本体45Aから火災検知信号を受信すると、この火災検知信号に基づいて1個の噴射弁43に開信号を出力する。すると、複数台(例えば2台)の全ての直流電源盤10内の消火ノズル41から消火ガスが同時に噴射されて、直流電源盤10内の火災(盤内火災)が消火される。
【0034】
以上のように構成されたことから、本第1実施形態によれば、次の効果(1)を奏する。
(1)
図1に示す直流電源設備A1の消火システム35では、煙検知器40を除く検知手段である検知制御装置44と、消火ノズル41を除く消火手段である消火ガスタンク42及び噴射弁43とが、直流電源盤10の数(例えば2台)よりも少なく(各1個ずつ)設置されている。また、
図2に示す直流電源設備A2の消火システム36では、煙吸引口45Bを除く検知手段である煙検知器本体45A及び検知制御装置49と、消火ノズル41を除く消火手段である消火ガスタンク42及び噴射弁43とが、直流電源盤10の数(例えば2台)よりも少なく(各1個ずつ)設置されている。これらの結果、直流電源盤10が複数台(例えば2台)並列接続されてなる直流電源設備A1、A2であっても、その消火システム35、36の設置スペースを縮小させることができる。
【0035】
[B]第2実施形態(
図4及び
図5)
図4は、第2実施形態に係る直流電源設備の消火システムを示す正面断面図である。この第2実施形態において第1実施形態と同様な部分については、第1実施形態と同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0036】
本第2実施形態の直流電源設備Bが第1実施形態と異なる点は、直流電源設備Bを構成する直流電源盤10が、非常時に運転する負荷に対して必要な電源容量を確保可能な台数よりも1台多い台数が並列接続されて構成された点である。また、直流電源設備Bの消火システム50が第1実施形態と異なる点は、各直流電源盤10の電源盤制御部51が第1実施形態の電源盤制御部32の機能のほかに、光電式の煙検知器40からの火災検知信号を入力する検知制御装置44からの信号(後述の火災検知器信号52)により、または電池モジュール27の温度異常を判定したこと(後述の電池モジュール温度異常判定53)により、当該直流電源盤10で火災(盤内火災)が発生したと判断して、当該直流電源盤10を電源系統から切り離すよう構成された点である。
【0037】
つまり、直流電源設備Bは、非常時に運転する負荷に対して必要な電源容量を確保可能な直流電源盤10の台数をNとすると、(N+1)台の直流電源盤10が並列接続されて構成される。例えば、1台の直流電源盤10が200Ahの電源容量であり、非常時に運転する負荷に対して必要な電源容量が2000Ahであるとすると、直流電源設備Bは、(10+1)台の直流電源盤10が並列接続されて構成される。更に、各直流電源盤10は、盤内火災が隣接する直流電源盤10に影響しないように、それぞれ密閉構造に構成されている。
【0038】
また、
図5に示すように、直流電源設備Bの消火システム50を構成する各直流電源盤10の電源盤制御部51は、直流電源設備A1及びA2の電源盤制御部32(
図3)と同様に、電源盤制御部51が設置された直流電源盤10における電池セルの電圧、その電圧のばらつき及び電流、並びに電池モジュール27の電流、電圧及び温度等のパラメータを監視すると共に、上記パラメータの少なくとも1つが規定値に至ったときに、当該直流電源盤10に電池故障が発生したと判断して、当該直流電源盤10を電源系統から切り離す。
【0039】
更に、各直流電源盤10の電源盤制御部51は、光電式の煙検知器40からの火災検知信号を受信することで検知制御装置44が火災検知器信号(火災検知信号を送信した煙検知器40のID番号を含む)52を出力したとき、火災を検知した煙検知器40が存在する直流電源盤10の電源盤制御部51であれば、この直流電源盤10の交流遮断器17及び直流遮断器20を遮断して、当該直流電源盤10を電源系統から切り離す。
【0040】
また、各直流電源盤10の電源盤制御部51は、電池モジュール27の温度異常を判定(電池モジュール温度異常判定53)したときに、自身(電源盤制御部51)が存在する直流電源盤10の交流遮断器17及び直流遮断器20を遮断して当該直流電源盤10を電源系統から切り離す。上記電池モジュール温度異常判定53は、盤内火災が小火災の場合には、
図5(A)に示すように、電池モジュール27が通常の運転状態では想定できない温度に上昇し、且つ急激な温度上昇率が検出されたときになされ、盤内火災が大火災の場合には、
図5(B)に示すように、電池モジュール27が通常の運転状態では想定できない更に高い温度に上昇し、または非常に急激な温度上昇率が検出されたときになされる。
【0041】
従って、この直流電源設備Bの消火システム50では、光電式の煙検知器40が直流電源盤10の火災(盤内火災)を検出したとき、この煙検知器40から火災検知信号を受信した検知制御装置44は、噴射弁43に開信号を出力して、全ての直流電源盤10の消火ノズル41から消火ガスを噴射させて盤内火災を消火する。このとき、全ての直流電源盤10の電源盤制御部51に検知制御装置44から、火災を検知した煙検知器40のID番号を含む火災検知器信号52が入力される。また、火災が発生した直流電源盤10では、その直流電源盤10の電源盤制御部51が電池モジュール温度異常判定53を出力する。これらのことから、盤内火災の発生によりこの火災を検知した煙検知器40が存在する直流電源盤10の電源盤制御部51は、当該直流電源盤10の交流遮断器17及び直流遮断器20を遮断して、当該直流電源盤10を電源系統から切り離す。
以上のように構成されたことから、本第2実施形態によれば、第1実施形態の効果(1)と同様な効果を奏するほか、次の効果(2)及び(3)を奏する。
【0042】
(2)盤内火災が発生し検知されたときには、この盤内火災が発生した直流電源盤10の電源盤制御部51は、当該直流電源盤10の交流遮断器17及び直流遮断器20を遮断して、当該直流電源盤10を電源系統から切り離す。このため、直流電源設備Bにおける直流電源盤10の全体が電源系統から切り離されて、直流電源設備Bから非常時に運転する負荷に直流電力を供給できなくなる事態を未然に防止できる。
【0043】
(3)直流電源設備Bを構成する直流電源盤10は、非常時に運転する負荷に対して必要な電源容量を確保可能な台数よりも1台多い台数が並列接続されている。従って、直流電源設備Bを構成する直流電源盤10の1台が盤内火災の発生により電源系統から切り離された場合でも、直流電源設備Bは必要な電源容量を確保でき、非常時に運転が必要な負荷に必要な時間直流電力を供給することができる。
【0044】
[C]第3実施形態(
図6)
図6は、第3実施形態に係る直流電源設備の消火システムを、プラントの中央制御室と共に示す説明図である。この第3実施形態において第1実施形態と同様な部分については、第1実施形態と同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0045】
本第3実施形態の直流電源設備Cの消火システム60が第1実施形態と異なる点は、複数台が並列接続された直流電源盤10を有するプラントの運転の監視及び操作を行なう中央位置制御室61で、直流電源盤10を監視する直流電源監視盤62が、火災(盤内火災)が発生した直流電源盤10を特定して表示し、火災(盤内火災)の消火が完了したことを判断して表示し、火災(盤内火災)の発生により電源系統から切り離された直流電源盤10における電池セルの予測寿命や充電率などを表示するよう構成された点である。
【0046】
まず、並列接続された複数台の直流電源盤10の電源盤制御部64は、それぞれの直流電源盤10における電池セル及び電池モジュール27のパラメータ(即ち、電池セルの電圧、その電圧のばらつき及び電流、並びに電池モジュール27の電流、電圧及び温度など)を監視している。また、複数台の直流電源盤10の電源盤制御部64では、光電式の煙検知器40からの火災検知信号を受信した検知制御装置44から、火災検知器信号(火災検知信号を送信した煙検知器40のID番号を含む)を入力している。
【0047】
中央制御室61の防災盤63には検知制御装置44から上記火災検知器信号が入力され、この防災盤63は、火災が発生したエリアを表示している。これに対し、中央制御室61の直流電源監視盤62は、各直流電源盤10内の電池セル及び電池モジュール27の上記パラメータに関する情報を各直流電源盤10の電源盤制御部64から入力して電池モジュール27の温度異常を判定することで、または検知制御装置44からの火災検知器信号に関する情報を各直流電源盤10の電源盤制御部64から入力することで、盤内火災が発生した直流電源盤10を特定して表示する。
【0048】
また、直流電源監視盤62は、各直流電源盤10の電源盤制御部64から入力した電池セル及び電池モジュール27の上記パラメータに基づいて、盤内火災の消火が完了したことを判断して表示する。例えば、盤内火災発生時の電池モジュール27の温度と消火ガス噴射時の電池モジュール27の温度、または直流電源監視盤62による盤内火災確認時の電池モジュール27の温度と消火ガス噴射後の電池モジュール27の温度等を確認することで、直流電源監視盤62は盤内火災が消火したことを判断し、その旨を表示する。
【0049】
また、並列接続された複数台の直流電源盤10の電源盤制御部64は、火災検知器信号または電池モジュール27の温度異常判定に基づいて、自身(電源盤制御部64)が存在する直流電源盤10において火災が発生していると判断したときに、当該直流電源盤10の交流遮断器17及び直流遮断器20を遮断して、当該直流電源盤10を電源系統から切り離す。ここで、並列接続された複数台の直流電源盤10は、非常時に運転する負荷に対して必要な電源容量を確保可能な台数よりも1台多い台数である。従って、盤内火災を発生した直流電源盤10が電源系統から切り離された場合でも、非常時に運転する負荷に対して必要な電源容量は確保される。
【0050】
盤内火災が発生して電源系統から切り離された直流電源盤10の電源盤制御部64は、盤内火災の消火完了の前または後に、当該直流電源盤10の電池セルの予測寿命及び充電率を算出する。中央制御室61の直流電源監視盤62は、切り離された直流電源盤10の盤内火災の消火完了の判断後に、この切り離された直流電源盤10の電源盤制御部64から電池セルの予測寿命、充電率、電池セルの電圧のばらつき、及び電池モジュール27の温度などのパラメータを入力して、それらの値を表示する。この表示を中央制御室61内の運転員が監視することで、運転員は、切り離された直流電源盤10を電源系統に接続して直流電力の供給が可能であるか否か、つまり、切り離された直流電源盤10の電源系統への再接続の適否を判断することが可能になる。
【0051】
以上のように構成されたことから、本第3実施形態においても、第1及び第2実施形態の効果(1)〜(3)と同様な効果を奏するほか、次の効果(4)を奏する。
【0052】
(4)中央制御室61の直流電源監視盤62には、盤内火災が発生した直流電源盤10が特定して表示され、また、盤内火災の消火完了が表示され、更に、切り離された直流電源盤10の電池セルの予測寿命及び充電率等が表示される。このため、直流電源盤10の盤内火災の発生、消火の完了、及び火災した直流電源盤10の電源系統への再接続の適否を、中央制御室61内の運転員が火災現場に赴いて確認することなく即座に判断できる。
【0053】
[D]第4実施形態(
図7、
図8)
図7は、第4実施形態に係る直流電源設備の消火システムの一例を示す正面断面図である。また、
図8は、第4実施形態に係る直流電源設備の消火システムの他の例を示す正面断面図である。この第4実施形態において第1実施形態と同様な部分については、第1実施形態と同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0054】
本第4実施形態における直流電源設備D1の消火システム71(
図7)及び直流電源設備D2の消火システム72(
図8)が第1実施形態と異なる点は、検知手段(光電式の煙感知器40及び検知制御装置44、吸引式の煙検知器45及び検知制御装置49)と、消火手段(消火ノズル41、消火ガスタンク42及び噴射弁43)との少なくも一方が複数設けられ、このうちの複数の検知手段が、同一または異なった種類の検知手段である点である。
【0055】
火災(盤内火災)を検知し消火する消火システムの機能が一つ故障した場合には、盤内火災を検知できなくなるか消火できなくなる。器具は故障または経年劣化で機能しなくなるが、特に、可動部を有する器具や電子部品を有する器具は、タンク等の静的機器によりも故障確率が高い。消火システムにおいて該当する機器は、煙検知器40、煙検知器45の煙検知器本体45A、検知制御装置44、49及び噴射弁43である。
【0056】
図7に示す直流電源設備D1の消火システム71は、光電式の煙検知器40及び検知制御装置44が経年劣化等で故障した場合にも、異なった種類である吸引式の煙検知器45(煙検知器本体45A、煙吸引口45B)及び検知制御装置49を用いることで、盤内火災を検知可能とするものである。つまり、光電式の煙検知器40からの火災検知信号を受信した検知制御装置44は、OR回路73を経て噴射弁43に開信号を出力する。ところが、この煙検知器40または検知制御装置44が故障した場合に、吸引式の煙検知器45からの火災検知信号を受信した検知制御装置49が、OR回路73を経て噴射弁43に開信号を出力することで、盤内火災を消火する。
【0057】
また、
図8に示す直流電源設備D2の消火システム72は、噴射弁43のいずれかが故障した場合にも、例えば光電式の煙検知器40及び検知制御装置44により盤内火災を検知し、検知制御装置44から2個の噴射弁43に開信号を出力する。これにより、噴射弁43の一方が故障した場合でも、故障していない他方の噴射弁43が開動作することで盤内火災を消火する。尚、消火システム71と72を組み合わせ、消火システム71に消火ガスタンク42及び噴射弁43を1個ずつ追加してバックアップ機能を強化してもよい。
以上のように構成されたことから、本第4実施形態においても、第1実施形態の効果(1)と同様な効果を奏するほか、次の効果(5)を奏する。
【0058】
(5)直流電源設備D1の消火システム71では、光電式の煙検知器40及び検知制御装置44と吸引式の煙検知器45(煙検知器本体45A、煙吸引口45B)及び検知制御装置49とを共に備える。また、直流電源設備D2の消火システム72では、消火ガスタンク42を2基以上備えると共に、各消火ガスタンク42に噴射弁43が1個ずつ設けられている。一方の器具(煙検知器40、検知制御装置44、煙検知器45、検知制御装置49、噴射弁43)の故障時に他方の器具(煙検知器40、検知制御装置44、煙検知器45、検知制御装置49、噴射弁43)がバックアップすることで、盤内火災を確実に検知し消火することができる。
【0059】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができ、また、それらの置き換えや変更は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【解決手段】二次電池を内蔵した直流電源盤10が複数台、例えば2台並列接続されて構成された直流電源設備A1の消火システム35であって、直流電源盤内で発生した盤内火災を検知する煙検知器40を備えた検知手段と、検知手段の検知制御装置44からの指令により噴射弁43が開動作することで、消火ガスタンク42に貯蔵された消火ガスを盤内火災の発生箇所に、消火ノズル41を経て供給して盤内火災を消火する消火手段と、を有し、煙検知器40を除く検知手段である検知制御装置44と、消火ノズル41を除く消火手段である消火ガスタンク42及び噴射弁43とが、直流電源盤10の数よりも少なく設けられたものである。