(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
部材の一端側と他端側がジョイントされることにより形成されるジョイント部を有する複数の円環状のタイヤ構成部材と、電子部品と、を備え、前記ジョイント部を有する複数の円環状のタイヤ構成部材は、タイヤ内腔面を覆うインナーライナーと、前記インナーライナーとは異なる少なくとも2つ以上のタイヤ構成部材を含む、タイヤの製造方法において、
前記電子部品を、前記インナーライナーのジョイント部の位置を基準として所定の範囲内に位置するように配置する工程を有し、
前記所定の範囲は、タイヤの回転軸を回転基準とした場合における前記インナーライナーのジョイント部の回転位置を0°としたとき、−60°以上+60°以下の範囲である、タイヤの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係るタイヤ1のタイヤ幅方向の半断面を示す図である。タイヤの基本的な構造は、タイヤ幅方向の断面において左右対称となっているため、ここでは、右半分の断面図を示す。図中、符号S1は、タイヤ赤道面である。タイヤ赤道面S1は、タイヤ回転軸に直交する面で、かつタイヤ幅方向中心に位置する面である。
ここで、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸に平行な方向であり、
図1の断面図における紙面左右方向である。
図1においては、タイヤ幅方向Xとして図示されている。
そして、タイヤ幅方向内側とは、タイヤ赤道面S1に近づく方向であり、
図1においては、紙面左側である。タイヤ幅方向外側とは、タイヤ赤道面S1から離れる方向であり、
図1においては、紙面右側である。
また、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸に垂直な方向であり、
図1における紙面上下方向である。
図1においては、タイヤ径方向Yとして図示されている。
そして、タイヤ径方向外側とは、タイヤ回転軸から離れる方向であり、
図1においては、紙面上側である。タイヤ径方向内側とは、タイヤ回転軸に近づく方向であり、
図1においては、紙面下側である。
図2、13、16、18についても同様である。
【0022】
タイヤ1は、例えばトラック、バス用のタイヤであり、タイヤ幅方向両側に設けられた一対のビード11と、路面との接地面を形成するトレッド12と、一対のビード11とトレッド12との間を延びる一対のサイドウォール13とを備える。
【0023】
ビード11は、ゴムが被覆された金属製のビードワイヤを複数回巻いて形成した環状のビードコア21と、ビードコア21のタイヤ径方向外側に延出している、先細り形状のビードフィラー22とを備える。ビードフィラー22は、ビードコア21の外周を覆う第1ビードフィラー221と、第1ビードフィラー221のタイヤ径方向外側に配置されている第2ビードフィラー222とにより構成されている。第2ビードフィラー222は、後述するインナーライナー29、サイドウォールゴム30よりも高いモジュラスのゴムにより構成されている。そして、第1ビードフィラー221は、第2ビードフィラー222よりもさらに高いモジュラスのゴムにより構成されている。なお、第1ビードフィラー221は、少なくともその一部がビードコア21のタイヤ径方向外側に配置されていれば、ビードコア21の外周を覆っていない態様であってもよい。また、ビードフィラー22は、一つの種類のゴムから形成されていてもよい。すなわち、第1ビードフィラー221と第2ビードフィラー222とに分かれていなくてもよい。
ビードコア21は、空気が充填されたタイヤを、図示しないホイールのリムに固定する役目を果たす部材である。ビードフィラー22は、ビード周辺部の剛性を高め、高い操縦性および安定性を確保するために設けられている部材である。
【0024】
タイヤ1の内部には、タイヤの骨格となるプライを構成するカーカスプライ23が埋設されている。カーカスプライ23は、一方のビードコアから他方のビードコアに延びている。すなわち、一対のビードコア21間を、一対のサイドウォール13およびトレッド12を通過する態様で、タイヤ1内に埋設されている。
図1に示されるように、カーカスプライ23は、一方のビードコアから他方のビードコアに延び、トレッド12とビード11との間を延在するプライ本体24と、ビードコア21の周りで折り返されているプライ折り返し部25とを備える。ここで、プライ折り返し部25の折り返し端25Aは、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aよりもタイヤ径方向内側に位置している。
カーカスプライ23は、タイヤ幅方向に延びる複数のプライコードにより構成されている。また、複数のプライコードは、タイヤ周方向に並んで配列されている。
このプライコードは、金属製のスチールコード、あるいはポリエステルやポリアミド等の絶縁性の有機繊維コード等により構成されており、ゴムにより被覆されている。
【0025】
トレッド12において、カーカスプライ23のタイヤ径方向外側には、複数層のスチールベルト26が設けられている。スチールベルト26は、ゴムで被覆された複数のスチールコードにより構成されている。スチールベルト26を設けることにより、タイヤの剛性が確保され、トレッド12と路面の接地状態が良くなる。本実施形態においては、4層のスチールベルト26が設けられているが、積層されるスチールベルト26の枚数はこれに限らない。
【0026】
スチールベルト26のタイヤ径方向外側には、トレッドゴム28が設けられている。トレッドゴム28の外表面には、図示しないトレッドパターンが設けられており、この外表面が、路面と接触する接地面となる。
【0027】
トレッド12のタイヤ幅方向外側付近において、カーカスプライ23と、スチールベルト26およびトレッドゴム28との間の領域には、ショルダーパッド38が設けられている。このショルダーパッド38は、サイドウォール13のタイヤ径方向外側領域まで延出しており、その一部は、後述のサイドウォールゴム30との間で界面を形成している。すなわち、サイドウォール13のタイヤ径方向外側領域において、サイドウォールゴム30のタイヤ幅方向内側に、ショルダーパッド38の一部が存在している。
ショルダーパッド38はクッション性を有するゴム部材からなり、カーカスプライ23とスチールベルト26との間において、クッション機能を発揮する。また、ショルダーパッド38は低発熱性の特性を有するゴムからなるため、サイドウォール13まで延出させることにより、効果的に発熱を抑制することができる。
【0028】
ビード11、サイドウォール13、トレッド12において、カーカスプライ23のタイヤ内腔側には、タイヤ1の内壁面を構成するゴム層としてのインナーライナー29が設けられている。インナーライナー29は、耐空気透過性ゴムにより構成されており、タイヤ内腔内の空気が外部に漏れるのを防ぐ。
【0029】
サイドウォール13において、カーカスプライ23のタイヤ幅方向外側には、タイヤ1の外壁面を構成するサイドウォールゴム30が設けられている。このサイドウォールゴム30は、タイヤがクッション作用をする際に最もたわむ部分であり、通常、耐疲労性を有する柔軟なゴムが採用される。
【0030】
ビード11のビードコア21周りに設けられたカーカスプライ23のタイヤ径方向内側には、カーカスプライ23の少なくとも一部を覆うように補強プライとしてのスチールチェーハー31が設けられている。スチールチェーハー31は、カーカスプライ23のプライ折り返し部25のタイヤ幅方向外側にも延在しており、そのスチールチェーハー31の端部31Aは、カーカスプライ23の折り返し端25Aよりもタイヤ径方向内側に位置している。
このスチールチェーハー31は、金属製のスチールコードにより構成された金属補強層であり、ゴムにより被覆されている。
【0031】
スチールチェーハー31のタイヤ径方向内側には、リムストリップゴム32が設けられている。このリムストリップゴム32は、タイヤの外表面に沿って配置されており、サイドウォールゴム30と連接している。このリムストリップゴム32とサイドウォールゴム30は、タイヤの外表面を構成しているゴム部材である。
【0032】
そして、スチールチェーハー31の端部31Aのタイヤ径方向外側であって、カーカスプライ23の折り返し部25およびビードフィラー22のタイヤ幅方向外側には、第1のパッド35が設けられている。この第1のパッド35は、少なくともカーカスプライ23の折り返し端25Aのタイヤ幅方向外側に設けられている。第1のパッド35のタイヤ径方向外側は、タイヤ径方向外側に向かうほど、先細りとなるように形成されている。
【0033】
さらに、第1のパッド35のタイヤ幅方向外側を覆うように、第2のパッド36が設けられている。より詳細には、スチールチェーハー31の一部、第1のパッド35、第2ビードフィラー222の一部、カーカスプライ23のプライ本体24の一部のタイヤ幅方向外側を覆うように、第2のパッド36が設けられている。
そして、第2のパッド36のタイヤ径方向外側領域におけるタイヤ幅方向外側には、サイドウォールゴム30が配置されており、第2のパッド36のタイヤ径方向内側領域におけるタイヤ幅方向外側には、リムストリップゴム32が配置されている。
換言すると、第2のパッド36は、第1のパッド35等と、タイヤの外表面を構成する部材(タイヤ幅方向外側表面構成ゴム部材)であるリムストリップゴム32およびサイドウォールゴム30との間に設けられている。すなわち、第2のパッド36は、タイヤ幅方向外側表面構成ゴム部材であるリムストリップゴム32およびサイドウォールゴム30のタイヤ内腔側に設けられている。
なお、第2のパッド36のタイヤ径方向外側端36Aは、好ましくは
図1に示すように、サイドウォール13においてタイヤ最大幅となる部分よりもタイヤ径方向内側に配置されている。そして、この第2のパッド36のタイヤ径方向外側端36Aは、タイヤ径方向外側に向かうほど、先細りとなるように形成されている。
【0034】
第1のパッド35および第2のパッド36は、パッド部材34を構成し、このパッド部材34は、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側部分(第2ビードフィラー222)のモジュラスよりも高いモジュラスのゴムにより構成されている。
より詳細には、第2のパッド36は、第2ビードフィラー222よりも高いモジュラスのゴムにより構成されており、第1のパッド35は、第2のパッド36よりもさらに高いモジュラスのゴムにより構成されている。第1のパッド35、第2のパッド36は、カーカスプライ23の折り返し端25Aおよびスチールチェーハー31の端部31Aにおける局所的な剛性の変化点に起因する急激な歪みを緩和する機能を有する。
【0035】
ビードフィラー22とパッド部材34との間には、カーカスプライ23の折り返し端25A付近において、補強ゴムシートとしてのゴムシート37が配置されている。ゴムシート37は、カーカスプライ23の折り返し端25Aをタイヤ幅方向内側から覆うように配置されている。
ゴムシート37は、第2ビードフィラー222よりも高いモジュラスのゴムにより構成されている。より好ましくは、第1のパッド35と略等しいモジュラスのゴムにより構成されている。
【0036】
一般に、カーカスプライ23の折り返し端25Aは、応力が集中しやすい。しかしながら、上述の補強ゴムシートとしてのゴムシート37を設けることにより、応力の集中を効果的に抑えることが可能となる。
なお、本実施形態においては、パッド部材34が、第1のパッド35と第2のパッド36とにより構成されているが、パッド部材34は、一つの部材により構成されていてもよい。但し、上述のように、パッド部材34を、第1のパッド35と第2のパッド36とにより構成し、さらにゴムシート37を配置する構成を採用することにより、より効果的に応力の集中を抑えることができる。
【0037】
なお、本実施形態においては、ゴムシート37のタイヤ径方向外側端37Aの位置は、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aよりもタイヤ径方向内側に位置している。但し、ゴムシート37のタイヤ径方向外側端37Aの位置を、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aの位置と略一致させてもよい。
なお、ゴムシート37は、
図1に示されるように、カーカスプライ23の折り返し端25Aを、タイヤ幅方向内側から覆うように配置する態様を採用することが好ましいが、カーカスプライ23の折り返し端25Aを、タイヤ幅方向外側から覆う構成を採用してもよい。この場合であっても、応力の集中を緩和することができる。
なお、ゴムシート37を配置する工程の作業性や、ビード11周辺の厚みに対する影響を抑えることを考慮して、ゴムシート37として、
図1、2に示すような、略一定の厚みのゴムシート37を用い、このようなゴムシート37により、カーカスプライ23の折り返し端25Aを、タイヤ幅方向内側またはタイヤ幅方向外側のいずれか一方から覆う態様とすることがより好ましい。
【0038】
本実施形態のタイヤ1には、電子部品としての、RFIDタグ40が埋設されている。
RFIDタグ40は、RFIDチップと、外部機器と通信を行うためのアンテナとを備えた、パッシブ型のトランスポンダであり、外部機器としての図示しないリーダとの間で無線通信を行う。アンテナとしては、コイル状のスプリングアンテナ、板状のアンテナ、棒状の各種のアンテナが用いられる。例えば、フレキシブル基板に対して所定のパターンをプリントすることによって形成したアンテナであってもよい。アンテナは、使用する周波数帯域等に応じて、最適化されたアンテナ長さに設定されている。RFIDチップ内の記憶部には、製造番号、部品番号等の識別情報が格納されている。
【0039】
図2は、
図1のタイヤ1における、RFIDタグ40の埋設部周辺を示す拡大断面図である。
図1、2に示されるように、ゴムシート37およびRFIDタグ40は、ビードフィラー22とパッド部材34との間に配置されている。そして、RFIDタグ40は、ビードフィラー22とゴムシート37との間に配置されている。
【0040】
なお、第2のパッド36のモジュラスを基準とすると、サイドウォールゴム30は、第2のパッド36の0.4〜0.6倍のモジュラスとすることが好ましい。また、第1のパッド35は、第2のパッド36の1.1倍〜1.2倍のモジュラスとすることが好ましい。また、第2ビードフィラー222は、第2のパッドの0.7〜0.8倍のモジュラスとすることが好ましい。このようなモジュラスとすることで、タイヤとしての柔軟性とビード11付近の剛性のバランスを保つことができる。
【0041】
そして、ゴムシート37は、第2のパッド36の1.1倍〜1.2倍のモジュラスとすることが好ましい。すなわち、ゴムシート37のモジュラスは、パッド部材34のうち、少なくともカーカスプライ23の折り返し端25Aを覆う部分(第1のパッド35)のモジュラスと略等しいモジュラスとすることが好ましい。
【0042】
このように、パッド部材34のうち、少なくともカーカスプライ23の折り返し端25Aを覆う部分(第1のパッド35)のモジュラスと、ゴムシート37のモジュラスは共に、周囲のゴム部材のモジュラスよりも高い。
このように、モジュラスの高いゴム部材同士でカーカスプライ23の折り返し端25Aを挟み込む構成を採用することにより、この部分における応力の集中を効果的に抑えることが可能となる。
そして、RFIDタグ40は、モジュラスが高いゴム部材であるゴムシート37に配置されているため、タイヤ1がたわんだ場合においても、RFIDタグ40の変形量が小さくなる。よって、RFIDタグ40を適切に保護することができる。
なお、パッド部材34を一つの部材により構成した場合は、パッド部材34のモジュラスは、少なくともサイドウォールゴム30のモジュラスよりも高く設定されることが好ましい。より好ましくは、パッド部材34のモジュラスを、サイドウォールゴム30および第2ビードフィラー222のモジュラスよりも高く設定する。なお、パッド部材34のモジュラスを、ゴムシート37のモジュラスとは同等、もしくはそれよりも低く設定してもよい。
なお、モジュラスは、JIS K6251:2010の「3.7 所定伸び引張り応力(stress at a given elongation),S」に準拠して測定された、23℃の雰囲気下における100%伸長モジュラス(M100)を指す。
【0043】
通常、2つ物体の境界面が、カーカスプライ23の折り返し端25Aから延長する面である場合、その面は歪が生じやすい。しかしながら、本実施形態においては、ゴムシート37が、カーカスプライ23の折り返し端25Aを覆うように配置されているため、カーカスプライ23の折り返し端25Aよりもタイヤ径方向外側は、歪の影響を受けにくい部分となっている。
【0044】
図3は、タイヤをリムに組み付け、100%荷重負荷を与えた場合の、歪エネルギーの面内分布シミュレーションの結果を示す図である。
図3に示される拡大断面図においては、歪エネルギーの大きさに応じて、領域を5つに分けて表示している。ここで、歪エネルギーが最も高い領域はレベル5、歪エネルギーが高い領域はレベル4、歪エネルギーがやや下がる領域はレベル3、歪エネルギーがさらに下がる領域はレベル2、歪エネルギーが最も下がる領域はレベル1としている。
図3においては、太い点線を境界に、領域を分けて表示している。
【0045】
ビードフィラー22とパッド部材34との境界面およびその付近における、カーカスプライ23の折り返し端25Aよりもタイヤ径方向外側の領域は、概ねレベル2〜3の領域となっており、歪エネルギーが少ない。よって、この領域は、RFIDタグ40を配置する上で、好ましい領域となっている。
なお、本実施形態においては(
図2参照)、このシミュレーションモデルよりもゴムシート37がタイヤ径方向外側に延出しているが、ゴムシート37を配置して補強するという基本的な構成は同じであるため、ゴムシート37の周辺の歪エネルギーは、
図3と同等となるか、あるいは小さくなる。
【0046】
なお、
図1〜
図3に示されるタイヤ幅方向断面視において、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aから、カーカスプライ23の折り返し端25Aまでの距離を基準距離Rとしたとき、RFIDタグ40は、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aの位置から、カーカスプライ23の折り返し端25Aに向かって基準距離の60%となる位置P(
図3参照)までの範囲Qの領域内(領域Q)に配置されることが好ましい。
この範囲Qの領域内における、ビードフィラー22とパッド部材34との境界面およびその付近の歪エネルギーは、概ねレベル2となっており、RFIDタグ40を配置する上で、非常に好ましい領域となっている。よって、ゴムシート37をこの領域まで伸ばし、この領域にRFIDタグ40を配置することが好ましい。
【0047】
なお、この範囲Qの領域内であれば、通信に対して悪影響をおよぼす可能性のある、金属製のビードコア21からある程度離れた位置となる。ここで、ビードコア21は、金属製のビードワイヤを積層巻回して環状に形成されていることから、通信に対して悪影響をおよぼす可能性が特に高い金属部材である。
また、ゴムシート37付近は、タイヤ1の外表面からある程度離れた位置であるため、外傷に対する影響も受けにくい。さらに、タイヤ幅方向外側が、モジュラスの高いパッド部材34に保護されるため、この点からも、外傷に対する影響を受けにくい。
【0048】
ここで、RFIDタグ40は、保護部材43を構成する被覆ゴムシート431、432によって被覆されている。すなわち、本実施形態においては、保護部材43は、2枚の被覆ゴムシート431、432によって構成されている。
この点について、
図4A〜4Cを参照しながら説明する。
図4Aは、保護部材43を構成する被覆ゴムシートによって被覆された、RFIDタグ40を示す図である。
図4Aでは、RFIDタグ40は後述する被覆ゴムシート431に覆われて隠れている。
図4Bは
図4Aのb−b断面図、
図4Cは
図4Aのc−c断面図である。
【0049】
RFIDタグ40は、RFIDチップ41と、外部機器と通信を行うためのアンテナ42とを備えている。アンテナ42としては、コイル状のスプリングアンテナ、板状のアンテナ、棒状の各種のアンテナが用いられる。通信性をおよび柔軟性を考慮すると、コイル状のスプリングアンテナが最も好ましい。
【0050】
保護部材43に採用するゴムとしては、少なくともゴムシート37よりもモジュラスが低いゴムを用いる。例えば、保護部材43を構成する被覆ゴムシート431、432は、ゴムシート37の0.5〜0.8倍のモジュラスとすることが好ましい。但し、ある程度の強度を持たせるため、サイドウォールゴム30よりはモジュラスの高いゴムを用いることが好ましい。より好ましくは、第2ビードフィラー222と略同等のモジュラスとすることが好ましい。あるいは、変形量を効果的に吸収することを考慮して、第2ビードフィラー222よりもモジュラスの低いゴムを用いてもよい。
【0051】
前述のとおり、モジュラスの高いゴムシート37の近くにRFIDタグ40を配置することにより、タイヤ1がたわんだ場合においても、RFIDタグ40の周辺部の変形量を抑えることが可能となる。さらに、モジュラスの低い保護部材43を用いてRFIDタグ40を被覆することにより、ゴムシート37の変形を、RFIDタグ40に直接的に伝えないよう、保護部材43の中で吸収することが可能となる。
【0052】
なお、保護部材43を、短繊維フィラー混合ゴムにより構成してもよい。短繊維フィラーとしては、例えば、アラミド短繊維やセルロース短繊維といった有機短繊維、アルミナ短繊維等のセラミックス短繊維やガラス短繊維といった無機短繊維のような、絶縁性の短繊維を用いることができる。ゴムにこのような短繊維フィラーを混合することにより、ゴムの強度を高めることができる。
また、保護部材43として、加硫後の状態の被覆ゴムシートを用いてもよい。加硫後の状態の被覆ゴムシートは、生ゴムのように塑性変形しないため、RFIDタグ40を適切に保護することができる。但し、製造工程時における貼り付け作業性や、加硫時における他のゴム部材との一体化によるゴム構造体の安定化を考慮すれば、保護部材43として、加硫前の状態のゴムシートを用いることがより好ましい。
【0053】
また、保護部材43として、ポリエステル繊維やポリアミド繊維等による有機繊維層を設けてもよい。2枚の被覆ゴムシート431、432に、有機繊維層を埋設することも可能である。
【0054】
次に、
図5〜
図7を用いて、本実施形態のタイヤ1の製造工程について説明する。
図5は、製造工程中のビードフィラー22を、タイヤ幅方向外側から見たときの図であり、保護部材43に被覆されたRFIDタグ40とゴムシート37を、ビードフィラー22に貼り付けた状態を示す図である。ここで、保護部材43に被覆されたRFIDタグ40はゴムシート37に覆われているため、点線で示されている。
【0055】
タイヤ1は、部材の一端側と他端側がジョイントされることにより形成されるジョイント部を有する複数の円環状のタイヤ構成部材を備える。本実施形態においては、少なくとも第2ビードフィラー222およびゴムシート37が、このようなジョイント部を有する円環状のタイヤ構成部材に含まれる。また、インナーライナー29(
図5においては、ジョイント部の位置のみを図示)も、このようなジョイント部を有する円環状のタイヤ構成部材に含まれる。
【0056】
ビードフィラー22を構成する第2ビードフィラー222は、例えば押出成形により、まずは
図6Aに示されるように直線状の長尺のゴム部材として成型される。
そして、
図6Bに示されるように、まだ直線状のゴム部材である第2ビードフィラー222に、RFIDタグ40を被覆している保護部材43が貼り付けられる。このとき、保護部材43が加硫前の生ゴムであれば、その粘着性を利用して保護部材43を第2ビードフィラー222に貼り付けることができる。あるいは、粘着性が低い場合などにおいては、接着剤等を用いて保護部材43を第2ビードフィラー222に貼り付けてもよい。
【0057】
第2ビードフィラー222を構成する直線状の長尺のゴム部材は、その後巻回されて、
図6Cに示されるように円環状に形成される。より詳細には、第2ビードフィラー222は、長尺のゴム部材の一端側222E1と他端側222E2がジョイント部222Cにおいてジョイントされることにより円環状に形成される。
【0058】
図7Aは、第2ビードフィラー222のジョイント部222Cの断面を示す図であり、
図5のd−d断面を示す図である。
第2ビードフィラー222を構成する長尺のゴム部材の一端側222E1の端面と他端側222E2の端面は、互いに対応する形状の斜面が形成されている。そして、第2ビードフィラー222のジョイント部222Cは、この一端側222E1の斜面と、他端側222E2の斜面を突き合わせて接合した、斜面突き合わせジョイント部J1により構成されている。
【0059】
このような斜面突き合わせジョイント部J1により、長尺のゴム部材の一端側222E1と他端側222E2がジョイントされることにより、第2ビードフィラー222は円環状に形成される。
なお、第2ビードフィラー222は、
図6Cに示すように、既に円環状に形成されている第1ビードフィラー221の外周を周回させることにより、円環状に形成してもよい。また、第1ビードフィラー221と第2ビードフィラー222が一体的に形成されている場合は、一体的に形成している第1ビードフィラー221と第2ビードフィラー222からなるビードフィラー22を、ジョイント部222Cと同様の構造のジョイント部により接続して、円環状に形成してもよい。
【0060】
第2ビードフィラー222が円環状に形成された後、
図5に示すように第2ビードフィラー222のタイヤ幅方向外側表面には、ゴムシート37が貼り付けられる。ゴムシート37は、保護部材43に被覆されたRFIDタグ40を覆うように、第2ビードフィラー222の表面に貼り付けられる。これにより、第2ビードフィラー222とゴムシート37との間に保護部材43に被覆されたRFIDタグ40が挟み込まれる。すなわち、第2ビードフィラー222とゴムシート37の界面に、RFIDタグ40(保護部材43に一体的に被覆されている状態を含む)が挟み込まれた状態で配置される。
このとき、第2ビードフィラー222と、ゴムシート37は、加硫前の生ゴムの状態であるため、その粘着性を利用して貼り付けることができる。あるいは、粘着性が低い場合などにおいては、接着剤等を用いて貼り付けてもよい。
【0061】
なお、ゴムシート37を形成する長尺のゴム部材は、押し出し成形によって形成された直線状のゴム部材であってもよい。この場合、第2ビードフィラー222に貼り付ける際に、直線状のゴム部材が円環状となるように巻回しながら貼り付けていく。
【0062】
ゴムシート37は、長尺のゴム部材の一端側37E1と他端側37E2がジョイント部37Cにおいてジョイントされることにより円環状に形成されている。
図7Bは、ゴムシート37のジョイント部37Cの断面を示す図であり、
図5のe−e断面を示す図である。
ゴムシート37のジョイント部37Cは、ゴムシート37を構成する長尺のゴム部材の一端側37E1と他端側37E2を重ね合わせて接合した、重ね合わせジョイント部J2により構成されている。
【0063】
このような重ね合わせジョイント部J2により、長尺のゴム部材の一端側37E1と他端側37E2がジョイントされることにより、ゴムシート37は円環状に形成される。
【0064】
ここで、厚みの薄いゴムシート37のジョイント部37Cは、一端側37E1と他端側37E2の接触面積を確保してジョイント部37Cの接合強度を得るために、上述の重ね合わせジョイント部J2により形成することが好ましい。しかしながら、ゴムシート37のジョイント部37Cとして、
図7Aに示すような、斜面突き合わせジョイント部J1や、
図7Cに示すような、一端側37E1と他端側37E2の端面(部材の長手方向に対して略直角の端面)を突き合わせて接合する端面突き合わせジョイント部J3を採用することもできる。
【0065】
また、第2ビードフィラー222のジョイント部についても、斜面突き合わせジョイント部J1に換えて、重ね合わせジョイント部J2や、端面突き合わせジョイント部J3を採用することもできる。
なお、インナーライナー29等の他のタイヤ構成部材のジョイント部についても、斜面突き合わせジョイント部J1、重ね合わせジョイント部J2、端面突き合わせジョイント部J3といったジョイント部の中から、適切な構造のジョイント部を選択して採用することができる。
【0066】
なお、斜面突き合わせジョイント部J1は、接合部を斜面とすることにより、接合部の接触面積を増やし、接合強度を高めている。斜面突き合わせジョイント部J1は、厚みが比較的厚いタイヤ構成部材のジョイント部として好適に用いられる。例えば、第2ビードフィラー222や、トレッドゴム28のジョイント部として用いられることが多い。また、斜面突き合わせジョイント部J1は、サイドウォールゴム30や、インナーライナー29のジョイント部としても用いられる。
【0067】
重ね合わせジョイント部J2は、接合部の接触面積を確保してジョイント部の接合強度を高めることができるため、厚みの薄いゴム部材のジョイント部として特に好適に用いられる。例えば、ゴムシート37のジョイント部として用いられることが多い。重ね合わせジョイント部J2は、接合部が他の部分よりも厚くなるため、ユニフォミティへの影響を考慮し、ジョイント部の位置を設定する必要がある。
【0068】
端面突き合わせジョイント部J3は、重ね合わせジョイント部J2よりもジョイント部の接合力は低い。但し、重ね合わせジョイント部J2よりもユニフォミティへの影響は少ない。
【0069】
なお、斜面突き合わせジョイント部J1、端面突き合わせジョイント部J3であっても、部材の寸法公差や製造上の誤差に起因する接合部のずれや、加硫工程等における厚みの変化などにより、ユニフォミティへの影響は生じ得る。特に、厚みが比較的厚いタイヤ構成部材に用いられている斜面突き合わせジョイント部J1の場合、ユニフォミティへの影響を考慮して、ジョイント部の位置を設定する必要がある。
【0070】
上述の各ジョイント部の特性が考慮された上で、ゴム部材からなる各タイヤ構成部材のジョイント部として、それぞれ適切な種類のジョイント部が選択される。
【0071】
ここで、
図5に示すように、本実施形態のRFIDタグ40は、タイヤ1の回転軸Oを回転基準とした場合におけるインナーライナー29のジョイント部の回転位置Aを0°としたとき、時計回りに+30°に回転した位置Bに配置されている。また、第2ビードフィラー222のジョイント部222Cは+180°の位置Gに、ゴムシート37のジョイント部37Cは+240°の位置Iに配置されている。また、サイドウォールゴム30とトレッドゴム28が上述のようなジョイント部を有する場合は、サイドウォールゴム30のジョイント部は+90°の位置Dに、トレッドゴム28のジョイント部は270°(−90°)の位置Jに配置されている。
【0072】
なお、
図6Cに示す第2ビードフィラー222のジョイント部222Cのように、サイドウォール13やビード部12付近に配置されるタイヤ構成部材のタイヤ径方向に延びるジョイント部が、回転軸Oからタイヤ径方向外側に向かう線に対して、タイヤ周方向に傾いていない場合は、ジョイント部の中心位置がジョイント部の基準位置であり、この位置を、ジョイント部の回転位置(ジョイント部の位置)として考える。
一方、
図6Dに示す第2ビードフィラー222のジョイント部222Cのように、サイドウォール13やビード部12付近に配置されるタイヤ構成部材のタイヤ径方向に延びるジョイント部が、回転軸Oからタイヤ径方向外側に向かう線に対して、タイヤ周方向に傾いている場合は、この傾きを加味した上でのジョイント部の中心位置(例えば、ジョイント部のタイヤ周方向の幅の中心)がジョイント部の基準位置であり、この位置を、ジョイント部の回転位置(ジョイント部の位置)として考える。
また、
図8Aに模式的に示すトレッドゴム28のジョイント部28Cのように、トレッド12付近に配置されるタイヤ構成部材のタイヤ幅方向に延びるジョイント部が、回転軸Oと平行な線に対して、タイヤ周方向に傾いていない場合は、ジョイント部の中心がジョイント部の基準位置であり、この位置を、ジョイント部の回転位置(ジョイント部の位置)として考える。
一方、
図8Bに模式的に示すトレッドゴム28のジョイント部28Cのように、トレッド12付近に配置されるタイヤ構成部材のタイヤ幅方向に延びるジョイント部が、回転軸Oと平行な線に対して、タイヤ周方向に傾いている場合は、この傾きを加味した上でのジョイント部の中心位置(例えば、ジョイント部のタイヤ周方向の幅における中心位置)がジョイント部の基準位置であり、この位置を、ジョイント部の回転位置(ジョイント部の位置)として考える。
また、
図9Aに一部を切り取って模式的に示すインナーライナー29のジョイント部29Cのように、トロイダル状のタイヤ構成部材のタイヤ幅方向に延びるジョイント部が、図示しない回転軸Oと平行な線に対して、タイヤ周方向に傾いていない場合は、ジョイント部の中心がジョイント部の基準位置であり、この位置を、ジョイント部の回転位置(ジョイント部の位置)として考える。
一方、
図9Bに一部を切り取って模式的に示すインナーライナー29のジョイント部29Cのように、トロイダル状のタイヤ構成部材のタイヤ幅方向に延びるジョイント部が、図示しない回転軸Oと平行な線に対して、タイヤ周方向に傾いている場合は、この傾きを加味した上でのジョイント部の中心位置(例えば、ジョイント部のタイヤ周方向の幅における中心位置)がジョイント部の基準位置であり、この位置を、ジョイント部の回転位置(ジョイント部の位置)として考える。
このように、タイヤ構成部材のジョイント部の実質的な中心位置を、ジョイント部の回転位置(ジョイント部の位置)として考える。
【0073】
次に、本実施形態において、複数のタイヤ構成部材のジョイント部の位置およびRFIDタグ40の配置位置を、このような配置位置に設定している理由を説明する。
なお、本明細書において、ジョイント部等の配置位置を正負の符号を有する角度で表す場合は、特別な説明がない限り、上述の基準に基づく角度、すなわち、タイヤ1の回転軸Oを回転基準とした場合におけるインナーライナー29のジョイント部の回転位置Aを0°としたときの、時計回りの角度を意味している。
図10Aは、本実施形態の複数のタイヤ構成部材のジョイント部の位置およびRFIDタグ40の配置位置の関係を、簡略化して示した図である。
【0074】
タイヤ1は、インナーライナー29、ビードフィラー22、サイドウォールゴム30、トレッドゴム28、パッド部材34、ショルダーパッド38、リムストリップゴム32、ゴムシート37等、ゴム部材からなる複数の円環状のタイヤ構成部材を備える。そして、これらのタイヤ構成部材は、長尺のゴム部材の一端側と他端側がジョイントされることにより形成されるジョイント部を有することが多い。なお、インナーライナー29はカーカスプライ23のプライ本体24のタイヤ内腔側に配置され、その他のゴム部材については、カーカスプライ23のプライ本体24のタイヤ外表面側に配置されている。
【0075】
タイヤ1のユニフォミティを考慮すると、複数のタイヤ構成部材の各ジョイント部の位置は重ならないことが好ましい。特に、タイヤ1を構成する層の厚み方向において重なりを持つタイヤ構成部材同士のジョイント部の位置は、重ならないようにすることが好ましい。
【0076】
ここで、インナーライナー29は、タイヤ内腔面全体を覆うゴム部材であるため、サイドウォールゴム30、トレッドゴム28、ビードフィラー22といった他のタイヤ構成部材は、インナーライナー29の外表面側に配置されることになる。すなわち、インナーライナー29は、基本的には他の全てのタイヤ構成部材と、タイヤを構成する層の厚み方向において重なりを持つ。
よって、インナーライナー29のジョイント部は、他のタイヤ構成部材のジョイント部からなるべく離れた位置に配置することが好ましい。
【0077】
また、RFIDタグ40は、タイヤ構成部材のジョイント部の位置と重ならないような位置に配置することが好ましい。特に、RFIDタグ40が接触または近接しているタイヤ構成部材のジョイント部の位置からは、なるべく離れた位置にRFIDタグ40を配置することが好ましい。
一方、RFIDタグ40をカーカスプライ23のプライ本体24のタイヤ外表面側に配置する場合などは、インナーライナー29のジョイント部とRFIDタグ40の配置位置が近くても、実質的な問題は生じにくい。
【0078】
そこで、本実施形態においては、RFIDタグ40は、インナーライナー29のジョイント部の位置を基準として所定の範囲内に配置されている。この所定の範囲は、タイヤ1の回転軸Oを回転基準とした場合におけるインナーライナー29のジョイント部の回転位置を0°としたとき、±90°よりも小さい範囲である。すなわち、−90°(+270°)よりも大きく、+90°よりも小さい領域である。本実施形態においては、RFIDタグ40を、+30°の位置Bに配置している。すなわち、
図5に示すように、RFIDタグ40のタイヤ周方向における略中心(基準位置)が、+30°の位置Bとなるように配置されている。これにより、インナーライナー29以外のタイヤ構成部材のジョイント部の配置位置の自由度が高まる。
例えば、RFIDタグ40をこのような位置に配置することにより、インナーライナー29以外のタイヤ構成部材のジョイント部を、+90°〜+270°の範囲等、すなわち、+90°以上、+270°以下の範囲等を有効利用して、適切に配置することができる。なお、RFIDタグ40は、前述の±90°よりも小さい範囲内に全体が入るように配置されることが好ましい。
【0079】
一般に、インナーライナー29のジョイント部と、サイドウォールゴム30のジョイント部と、トレッドゴム28のジョイント部は、タイヤ全体のユニフォミティに与える影響が大きい。また、ビードフィラー22のジョイント部も、ユニフォミティに与える影響が比較的大きい。よって、本実施形態においては、RFIDタグ40を±90°よりも小さい範囲内として、例えば+30°の位置Bに配置する一方、サイドウォールゴム30のジョイント部と、トレッドゴム28のジョイント部と、第2ビードフィラー222(第1ビードフィラー221と第2ビードフィラー222が一体的に形成されている場合は、ビードフィラー22)のジョイント部を、+90°〜+270°の範囲内に、均等に配置している。より具体的には、サイドウォールゴム30のジョイント部を+90°の位置D、トレッドゴム28のジョイント部を+270°(−90°)の位置J、第2ビードフィラー222のジョイント部を+180°の位置Gに配置している。すなわち、インナーライナー29のジョイント部、サイドウォールゴム30のジョイント部、第2ビードフィラー222のジョイント部、トレッドゴム28のジョイント部は、タイヤ1の回転軸Oを回転基準として90°間隔で均等配置されている。
また、RFIDタグ40と接触するタイヤ構成部材としてのゴムシート37のジョイント部37Cについても、+90°〜+270°の範囲内、具体的には、+240°の位置Iに配置されている。
【0080】
このように、RFIDタグ40を、インナーライナー29のジョイント部の位置を基準として前述の±90°よりも小さい範囲内に配置することにより、タイヤ構成部材のジョイント部の配置の自由度を高め、良好なユニフォミティを確保することができる。
【0081】
各タイヤ構成部材のジョイント部の位置が上述のように設定された状態で、各タイヤ構成部材は組み付けられ、生タイヤが形成される。
その後、RFIDタグ40を含む各タイヤ構成部材が組み付けられた生タイヤを、加硫工程において加硫し、タイヤを製造する。
これにより、ユニフォミティが良好なタイヤを製造することができる。
【0082】
なお、ゴムシート37は、生タイヤ組み付け後の状態において、カーカスプライ23の折り返し端25Aを全周に亘って覆う態様となるように円環状に形成されている。よって、全周に亘って応力の集中を抑えることが可能となる。その結果、RFIDタグ40が受ける応力も小さくなる。
【0083】
なお、インナーライナー29以外のタイヤ構成部材のジョイント部については、+90°〜+270°の範囲内に配置されていることが好ましいが、後述の変形例にも示されるように、+90°〜+270°の範囲を有効利用して、少なくとも2つのジョイント部をこの範囲内に配置しつつ、一部のジョイント部については、それ以外の範囲に配置してもよい。この場合においても、RFIDタグ40と、RFIDタグ40に最も近いジョイント部は、タイヤ1の回転軸Oを回転基準として少なくとも15°以上、好ましくは30°以上離れていることが好ましい。
【0084】
なお、本実施形態においては、ジョイント部を有する複数の円環状のタイヤ構成部材が、インナーライナー29と、インナーライナー29とは異なる3つ以上、具体的には4つのタイヤ構成部材を有している。
しかしながら、ジョイント部を有する複数の円環状のタイヤ構成部材が、インナーライナー29と、インナーライナー29とは異なる少なくとも2つ以上のタイヤ構成部材を有していれば、本実施形態の効果を得ることができる。
【0085】
例えば、サイドウォールゴム30およびトレッドゴム28が上述のようなジョイント部を有しない場合、例えば、所謂リボン巻き工法等により構成されている場合においても、タイヤ1は、長尺の部材の一端側と他端側がジョイントされることにより形成されるジョイント部を有する複数の円環状のタイヤ構成部材として、インナーライナー29と、第2ビードフィラー222と、ゴムシート37を有する。
そして、この場合においても、RFIDタグ40を±90°よりも小さい範囲内に配置すれば、RFIDタグ40を挟み込む第1タイヤ構成部材としての第2ビードフィラー222のジョイント部222Cと第2タイヤ構成部材としてのゴムシート37のジョイント部37Cを、例えば+90°〜+270°の範囲等を有効利用して高い自由度で配置することができる。例えば、RFIDタグ40を+30°の位置Bに、第2ビードフィラー222のジョイント部222Cを+180°の位置Gに、ゴムシート37のジョイント部37Cを+240°の位置Iに配置することができる。あるいは、第2ビードフィラー222のジョイント部222Cを+120°の位置Cに配置し、インナーライナー29のジョイント部と、第2ビードフィラー222のジョイント部222Cと、ゴムシート37のジョイント部37Cを、120°間隔で均等配置することもできる。
【0086】
なお、ジョイント部を有する円環状のタイヤ構成部材を、インナーライナー29以外にも4つ以上有する場合であっても、好適に本実施形態の効果を得ることができる。この場合においても、RFIDタグ40と、RFIDタグ40に最も近いジョイント部は、タイヤ1の回転軸Oを回転基準として少なくとも15°以上、好ましくは30°以上離れていることが好ましい。
【0087】
なお、RFIDタグ40は、RFIDタグ40(保護部材43に一体的に被覆されている状態を含む)が接触している第1タイヤ構成部材のジョイント部から、タイヤ1の回転軸Oを回転基準として30°以上、より好ましくは60°以上離れて配置されていることが好ましい。本実施形態においては、RFIDタグ40は、RFIDタグ40が接触している第1タイヤ構成部材としての第2ビードフィラー222のジョイント部222Cから、タイヤ1の回転軸Oを回転基準として150°離れて配置されている。また、RFIDタグ40は、RFIDタグ40が接触している第2タイヤ構成部材としてのゴムシート37のジョイント部37Cから、タイヤ1の回転軸Oを回転基準として150°離れて配置されている。
【0088】
なお、RFIDタグ40は、RFIDタグ40(保護部材43に一体的に被覆されている状態を含む)を挟み込んでいる第1タイヤ構成部材のジョイント部および第2タイヤ構成部材のジョイント部から、タイヤ1の回転軸Oを回転基準として30°以上、より好ましくは60°以上離れて配置されていることが好ましい。本実施形態においては、RFIDタグ40は、RFIDタグ40を挟み込んでいる第1タイヤ構成部材としての第2ビードフィラー222のジョイント部222Cおよび第2タイヤ構成部材としてのゴムシート37のジョイント部37Cから、タイヤ1の回転軸Oを回転基準として150°離れて配置されている。
【0089】
なお、RFIDタグ40を挟み込んでいる第1タイヤ構成部材のジョイント部と第2タイヤ構成部材のジョイント部は、30°以上、より好ましくは60°以上離れて配置されていることが好ましい。本実施形態においては、第1タイヤ構成部材としての第2ビードフィラー222のジョイント部222Cと、第2タイヤ構成部材としてのゴムシート37のジョイント部37Cは、タイヤ1の回転軸Oを回転基準として60°離れて配置されている。
【0090】
なお、RFIDタグを、±90°よりも小さい範囲内における他の位置、例えば−30°の位置に配置した場合であっても、+90°〜+270°の範囲等を有効利用して、インナーライナー29以外のタイヤ構成部材のジョイント部を高い自由度で配置しつつ、良好なユニフォミティを確保することができる。
【0091】
なお、ユニフォミティの確保と、寸法公差や製造誤差を考慮すると、複数のジョイント部の間隔は、タイヤ1の回転軸Oを回転基準として少なくとも15°以上、好ましくは30°以上離すことが好ましい。例えば、複数のジョイント部の間隔を、30°〜90°としてもよい。
【0092】
なお、ジョイント部が特定構造のジョイント部、具体的には重ね合わせジョイント部J2、または斜面突き合わせジョイント部J1である場合は、ユニフォミティへの影響を特に注意する必要がある。
例えば、インナーライナー29のジョイント部と、インナーライナー29とは異なる少なくとも2つのタイヤ構成部材(例えば、サイドウォールゴム30、トレッドゴム28)のジョイント部が、重ね合わせジョイント部J2、または斜面突き合わせジョイント部J1である場合、これらのジョイント部は、30°以上の間隔を空けて配置されていることが好ましい。
【0093】
図10Bに、本実施形態のタイヤ1の第1変形例を示す。
第1変形例においては、RFIDタグ40を、±90°よりも小さい範囲内の位置として、+60°の位置Cに配置している。この場合においても、タイヤ構成部材のジョイント部を高い自由度で配置しつつ、良好なユニフォミティを確保することができる。
【0094】
第1変形例においては、タイヤ全体のユニフォミティに与える影響が大きいインナーライナー29のジョイント部と、サイドウォールゴム30のジョイント部と、トレッドゴム28のジョイント部を、タイヤ1の回転軸Oを回転基準として120°間隔で均等配置している。具体的には、インナーライナー29のジョイント部の位置を0°の位置Aとしたとき、サイドウォールゴム30のジョイント部を+120°の位置Eに、トレッドゴムジョイント部を+240°の位置Iに配置している。よって、全体のユニフォミティが極めて良好となる。
【0095】
また、RFIDタグ40の配置位置と、RFIDタグ40を挟み込む第1タイヤ構成部材としての第2ビードフィラー222のジョイント部と、RFIDタグ40を挟み込む第2タイヤ構成部材としてのゴムシート37のジョイント部を、タイヤ1の回転軸Oを回転基準として120°間隔で均等配置している。具体的には、RFIDタグ40を+60°の位置Cに、第2ビードフィラー222のジョイント部を+180°の位置Gに、ゴムシート37のジョイント部を+300°の位置Kに配置している。そして、RFIDタグ40は、RFIDタグ40に最も近いジョイント部からタイヤ1の回転軸Oを回転基準として30°以上、具体的には60°離れている。これにより、RFIDタグ40の埋設によるユニフォミティの悪化も防ぐことができる。
【0096】
なお、第1変形例においては、全てのジョイント部およびRFIDタグ40配置位置を、タイヤ1の回転軸Oを回転基準として60°間隔で均等配置しているため、全体として、ユニフォミティが良好となる。
このように、RFIDタグ40を±90°よりも小さい範囲内の位置、具体的には+60°の位置Cに配置しても、タイヤ構成部材のジョイント部の配置位置の自由度を高めることができる。
【0097】
なお、RFIDタグ40を±90°よりも小さい範囲内の位置として、−60°(+300°)の位置Kに配置する場合は、ゴムシート37のジョイント部を+60°の位置Cに配置してもよい。
【0098】
なお、RFIDタグ40を±60°
(−60°以上+60°以下)の範囲内の位置に配置すれば、ジョイント部を有するタイヤ構成部材の数が多い場合等においても、+90°〜+270°の範囲等を有効利用して、インナーライナー29以外のタイヤ構成部材のジョイント部を高い自由度で配置しつつ、良好なユニフォミティを確保することができる。
【0099】
なお、タイヤ全体のユニフォミティに与える影響が大きいインナーライナー29のジョイント部と、サイドウォールゴム30のジョイント部と、トレッドゴム28のジョイント部は、本変形例に示すように、120°間隔で均等配置することが好ましいが、少なくとも90°以上離して配置すれば、良好なユニフォミティを確保することができる。
【0100】
図10Cに、本実施形態のタイヤ1の第2変形例を示す。
第2変形例においては、RFIDタグ40を、±90°よりも小さい範囲内の位置として、+30°の位置Bに配置している。この場合においても、タイヤ構成部材のジョイント部を高い自由度で配置しつつ、良好なユニフォミティを確保することができる。
【0101】
第2変形例においては、ゴムシート37のジョイント部を、+210°の位置Hに配置している。なお、他のジョイント部の配置位置は、第1変形例と同じである。この場合、RFIDタグ40と、ゴムシート37のジョイント部とがタイヤ1の回転軸Oを回転基準として180°離れて配置されるため、ユニフォミティが良好となる。
【0102】
図10Dに、本実施形態のタイヤ1の第3変形例を示す。
第3変形例においては、RFIDタグ40を、±90°よりも小さい範囲内の位置として、+45°の位置Mに配置している。この場合においても、タイヤ構成部材のジョイント部を高い自由度で配置しつつ、良好なユニフォミティを確保することができる。
【0103】
第3変形例においては、ゴムシート37のジョイント部を、+225°の位置Pに配置している。なお、他のジョイント部の配置位置は、第1変形例と同じである。この場合においても、RFIDタグ40と、ゴムシート37のジョイント部とがタイヤ1の回転軸Oを回転基準として180°離れて配置されるため、ユニフォミティが良好となる。
【0104】
図10Eに、本実施形態のタイヤ1の第4変形例を示す。
第4変形例においては、RFIDタグ40を、±90°よりも小さい範囲内の位置として、+45°の位置Mに配置している。この場合においても、タイヤ全体のユニフォミティは確保しつつ、タイヤ構成部材のジョイント部の配置位置の自由度を高めることができる。
【0105】
具体的には、第4変形例においては、インナーライナー29のジョイント部を0°の位置Aとしたとき、サイドウォールゴム30のジョイント部を+90°の位置Dに、第2ビードフィラー222のジョイント部を+180°の位置Gに、トレッドゴム28のジョイント部を+270°の位置Jに、ゴムシート37のジョイント部を+225°の位置Pに配置している。そして、RFIDタグ40は、RFIDタグ40に最も近いジョイント部からタイヤ1の回転軸Oを回転基準として30°以上、具体的には45°離れている。
このように、RFIDタグ40を±90°よりも小さい範囲内の位置、具体的には+45°の位置Mに配置しても、タイヤ構成部材のジョイント部の配置位置の自由度を高めることができる。
【0106】
なお、RFIDタグ40を±45°
(−45°以上+45°以下)の範囲内の位置に配置すれば、ジョイント部を有するタイヤ構成部材の数が多い場合等においても、+90°〜+270°の範囲等を有効利用して、インナーライナー29以外のタイヤ構成部材のジョイント部を高い自由度で配置しつつ、良好なユニフォミティを確保することができる。
【0107】
図11〜12に、本実施形態のタイヤ1の第5変形例を示す。
第5変形例においては、カーカスプライ23等の繊維部材のジョイント部も考慮する。
第5変形例のカーカスプライ23は、金属繊維にゴムを被覆した金属繊維部材により構成される円環状のタイヤ構成部材であり、ジョイント部23Cを有している。
図11は、カーカスプライ23のジョイント部23Cの断面を示す図である。
図11に示すように、カーカスプライ23のジョイント部23Cは、ゴムが被覆された金属繊維部材の一端側23E1と他端側23E2を突き合わせて接合した、端面突き合わせジョイント部J3により構成されている。ここで、
図11における23Sは、金属繊維を示している。
【0108】
このような端面突き合わせジョイント部J3により、ゴムが被覆された金属繊維部材の一端側23E1と他端側23E2がジョイントされることにより、カーカスプライ23は円環状に形成される。
また、スチールチェーハー31も同様に、金属繊維にゴムを被覆した金属繊維部材により構成される円環状のタイヤ構成部材であり、端面突き合わせジョイント部J3により、一端側と他端側が接続されている。
【0109】
図12は、本変形例における複数のタイヤ構成部材のジョイント部の位置およびRFIDタグ40の配置位置の関係を、簡略化して示した図である。
本変形例においては、カーカスプライ23のジョイント部23Cが+150°の位置Fに配置され、スチールチェーハー31のジョイント部が+210°の位置Hに配置されている。他のジョイント部の配置位置およびRFIDタグ40の配置位置は、
図10Bに示す第1変形例と同じである。
【0110】
ここで、カーカスプライ23等の金属繊維部材は、内部の金属繊維が切断されているジョイント部J3において電界集中等が起きやすく、この部分は電気的な特異点となりやすい。よって、RFIDタグ40がこのような金属繊維部材のジョイント部J3に近接して配置されていると、RFIDタグ40の通信性能等の電気的特性が低下する可能性がある。
しかしながら、本変形例に示すように、RFIDタグ40を±90°よりも小さい範囲内に配置することにより、カーカスプライ23等の金属繊維部材のジョイント部を、+90°〜+270°の範囲等を有効利用して、高い自由度で配置することができる。
【0111】
このような構成により、タイヤ構成部材のジョイント部の配置位置の自由度を高めることが可能となり、タイヤ全体のユニフォミティと、RFIDタグ40の通信性能等を確保することができる。
【0112】
なお、通信性能等を確保する上で、RFIDタグ40の配置位置と、金属繊維部材のジョイント部の位置は、タイヤ1の回転軸Oを回転基準として30°以上離れるように設定する。好ましくは60°以上、より好ましくは90°以上離れるように設定する。本実施形態においては、RFIDタグ40は、RFIDタグ40に最も近い金属繊維部材のジョイント部から、タイヤ1の回転軸Oを回転基準として90°離れて配置されている。
【0113】
なお、RFIDタグ40が、ビードフィラー22の近傍に配置されている場合は、RFIDタグ40の配置位置と、ビードフィラー22の近傍に配置されている金属繊維部材(例えば、カーカスプライ23、スチールチェーハー31)のジョイント部の位置が、タイヤ1の回転軸Oを回転基準として少なくとも30°以上離れるように設定する。
一方、第2実施形態で後述するように、RFIDタグ40が、トレッドゴム28の近傍に配置されている場合は、RFIDタグ40の配置位置と、トレッドゴム28の近傍に配置されている金属繊維部材(例えば、カーカスプライ23、スチールベルト26)のジョイント部の位置が、タイヤ1の回転軸Oを回転基準として少なくとも30°以上離れるように設定する。
【0114】
ここで、ビードフィラー22の近傍とは、ビードフィラー22の近傍にパッド部材34を有する場合は(
図1参照)、パッド部材34(第2のパッド36)のタイヤ径方向外側端36Aよりも、タイヤ径方向内側の領域を含んで意味し、ビードフィラー22の近傍にパッド部材34を有しない場合は(
図18参照)、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aよりもタイヤ径方向内側の領域を意味する。
また、トレッドゴム28の近傍とは、トレッドゴム28の近傍にショルダーパッド38を有する場合は(
図1参照)、ショルダーパッド38のタイヤ径方向内側端38Bよりも、タイヤ径方向外側の領域を含んで意味し、トレッドゴム28の近傍にショルダーパッド38を有しない場合は(
図18参照)、トレッドゴム28のタイヤ径方向内側端28Bよりもタイヤ径方向外側の領域を意味する。
【0115】
なお、カーカスプライ23は、タイヤ全域に存在するタイヤ構成部材であるため、RFIDタグ40は、少なくともカーカスプライ23のジョイント部から、タイヤ1の回転軸Oを回転基準として30°以上離れるように設定することが好ましい。
【0116】
なお、RFIDタグを、±90°よりも小さい範囲内の、+90°に近い位置、例えば+80°の位置に配置した場合であっても、+90°〜+270°の範囲等を有効利用して、インナーライナー29以外のタイヤ構成部材のジョイント部を高い自由度で配置することができる。同様に、RFIDタグを、例えば−80°の位置に配置した場合であっても、+90°〜+270°の範囲等を有効利用して、インナーライナー29以外のタイヤ構成部材のジョイント部を高い自由度で配置することができる。
すなわち、RFIDタグ40を±80°の範囲内の位置に配置した場合であっても、タイヤ構成部材のジョイント部を高い自由度で配置することができる。
【0117】
なお、インナーライナー29以外のタイヤ構成部材のジョイント部を、+90°〜+270°の範囲等を有効利用して高い自由度で配置する上で、RFIDタグ40は、±90°よりも小さい範囲内(+90°、−90°は含まない)に配置すればよいが、より自由度を高めるために、±60°の範囲内(+60°、−60°を含む)、あるいは±45°の範囲内(+45°、−45°を含む)に配置してもよい。RFIDタグ40をこのような範囲内に配置すれば、ジョイント部を有するタイヤ構成部材の数が多い場合等においても、タイヤ構成部材のジョイント部の配置位置の自由度をさらに高めることができる。
【0118】
なお、インナーライナー29のジョイント部の配置位置とRFIDタグ40の配置位置の重なりも防ぐ場合には、RFIDタグ40を、インナーライナー29のジョイント部から15°以上離れた位置に配置してもよい。あるいは、RFIDタグ40を、インナーライナー29のジョイント部から30°以上離れた位置に配置してもよい。例えば、RFIDタグ40を、−60°〜−15°の範囲内、または+15°〜+60°の範囲内に配置してもよい。この態様は、RFIDタグ40を、カーカスプライ23のプライ本体24の内腔側に配置する場合や、カーカスプライ23のプライ本体24の近傍に配置する場合などにおいて特に有効である。
【0119】
なお、保護部材43を、2枚の被覆ゴムシート431、432によって構成すれば、保護部材43を含むRFIDタグ40を薄く形成できるので、タイヤ1に埋設する上で好適である。また、加硫前のタイヤ1の構成部材にRFIDタグ40を組み付けるときにおいて、被覆ゴムシートによって被覆されたRFIDタグ40は、非常に簡便に装着することができる。
例えば、加硫前の第2ビードフィラー222といった部材の所望の位置に、被覆ゴムシート431、432によって被覆されたRFIDタグ40を、生ゴムの粘着性を利用して適切に貼り付けることができる。また、被覆ゴムシート431、432も加硫前の生ゴムとすることにより、被覆ゴムシート自身の粘着性も用いて、より簡便に貼り付けることができる。
【0120】
ただし、保護部材43は、2枚の被覆ゴムシートによって構成される態様に限らず、種々の態様を採用することができる。例えば、保護部材を構成する被覆ゴムシートは、RFIDタグ40の少なくとも一部を覆っていれば、製造工程における作業性の向上や応力緩和などの効果が得られる。よって、RFIDタグ40の片面のみを、保護部材としての1枚の被覆ゴムシート431により覆う構成を採用してもよい。
また、例えば、RFIDタグ40の全周に亘って1枚のゴムシートを巻き付ける構成や、RFIDタグ40の全周に亘って、粘度の高いポッティング剤の態様の保護部材を付着させた構成であってもよい。このような被覆ゴムを用いる構成であっても、RFIDタグ40を適切に保護することができる。
【0121】
なお、保護部材43に被覆されたRFIDタグ40は、アンテナが伸びる方向と、タイヤ1の周方向とが略一致する方向となるように、タイヤ1に埋設することが好ましい。これにより、円環状のタイヤ構成部材に対して、保護部材43を構成する被覆ゴムにより被覆されたRFIDタグ40を配置するスペースを確保しやすくなる。またアンテナを有する電子部品としてのRFIDタグ40の配置位置および配置方向の品質を確保しやすくなる。また、このような態様とすることで、タイヤ1が変形したときにおいても、RFIDタグ40に応力がかかりにくい。
【0122】
本実施形態においては、
図6Bに示されるように、まだ直線状のゴム部材である第2ビードフィラー222に、RFIDタグ40を被覆している保護部材43が貼り付けられる。このとき、第2ビードフィラー222を構成する直線状の長尺のゴム部材の長手方向と、保護部材43の長手方向が一致するように、保護部材43が貼り付けられる。具体的には、後に第2ビードフィラー222の外周22A(タイヤ径方向外側端22A)を形成する部分と、保護部材43のタイヤ径方向外側43Aを形成する部分が平行となるように、保護部材43が貼り付けられる。
【0123】
第2ビードフィラー222を構成する直線状の長尺のゴム部材は、その後巻回されて、
図6Cに示されるように円環状に形成される。このとき、第2ビードフィラー222に貼り付けられた保護部材43は、
図6Cに示すように、略矩形形状を湾曲させた弓なりの円弧形状となる。
ここで、RFIDタグ40のアンテナとして、柔軟なコイル状のスプリングアンテナなどを用いることで、保護部材43の変形に追従して、アンテナも変形する。
これにより、特別な目印を付与することもなく、保護部材43に被覆されたRFIDタグ40を上述の方向に簡単かつ正確に配置することができる。
【0124】
このように、本実施形態のタイヤ1の製造方法は、直線状の長尺のゴム部材に、電子部品としてのRFIDタグ40を被覆した被覆ゴムを、長尺のゴム部材と被覆ゴムの長手方向が一致するように貼り付ける第1工程と、RFIDタグ40が貼り付けられた直線状の長尺のゴム部材を巻回し、円環状のタイヤ構成部材としてのビードフィラー22(第2ビードフィラー222)を形成するとともに、RFIDタグ40を被覆する被覆ゴムを湾曲させ、被覆ゴムを円弧形状とする第2工程を含んでいる。
これにより、円環状のタイヤ構成部材に対して、被覆ゴムにより被覆されたRFIDタグ40を配置するスペースを確保しやすくなる。また、まだ直線状のゴム部材に被覆ゴムを貼り付けるため、作業性がよく、RFIDタグ40の配置位置および配置方向の品質の確保も容易となる。また、RFIDタグ40の配置位置および配置方向の品質を確保しやすくなる。
なお、円環状に形成された後のタイヤ構成部材に、RFIDタグ40(保護部材43に一体的に被覆されている状態を含む)を貼り付けることも可能である。
【0125】
なお、RFIDタグ40は、上述のようなRFIDタグ40を一体的に形成される保護部材43により被覆された状態で、タイヤ構成部材間に挟み込むことが好ましいが、保護部材43により被覆することなく、直接タイヤ構成部材間に挟み込んでもよい。
無被覆のRFIDタグ40を直接タイヤ構成部材間に挟み込めば、RFIDタグ40が挟み込まれる部分のゴム部材の厚みの変動が低減し、タイヤのユニフォミティが向上する。また、タイヤ構成部材間にRFIDタグ40を挟み込む作業において、挟み込む物体の体積が小さい分、空気の除去も容易となる。また、RFIDタグ40を保護部材で覆う工程が無くなることにより、作業時間が短縮する。
【0126】
なお、本実施形態においては、電子部品として、RFIDタグ40がタイヤに埋設されているが、タイヤに埋設される電子部品は、RFIDタグに限らない。例えば、無線通信を行うセンサ等の各種の電子部品であってもよい。タイヤに電子部品を埋設する場合、ユニフォミティへの影響を考慮する必要がある。また、電子部品は、電気信号の送受信等、電気的な情報を扱うことから、近傍に金属部品が存在することにより性能が低下する可能性がある。また、電子部品は、過度な応力がかかることにより、破損する可能性がある。よって、種々の電子部品をタイヤに埋設する場合においても、本発明の効果を得ることができる。例えば電子部品は、圧電素子や、歪センサであってもよい。
【0127】
本実施形態のタイヤ1によれば、以下の効果を奏する。
【0128】
(1)本実施形態に係るタイヤ1は、部材の一端側と他端側がジョイントされることにより形成されるジョイント部を有する複数の円環状のタイヤ構成部材と、電子部品としてのRFIDタグ40と、を備え、ジョイント部を有する複数の円環状のタイヤ構成部材は、タイヤ内腔面を覆うインナーライナー29と、インナーライナー29とは異なる少なくとも2つ以上のタイヤ構成部材を含み、RFIDタグ40は、インナーライナー29のジョイント部の位置を基準として所定の範囲内に配置されており、所定の範囲は、タイヤ1の回転軸Oを回転基準とした場合におけるインナーライナー29のジョイント部の回転位置を0°としたとき、±90°よりも小さい範囲である。
このように、RFIDタグ40を、上述の±90°の範囲内に配置することにより、インナーライナー29以外の円環状のタイヤ構成部材のジョイント部の配置の自由度が高まる。よって、ジョイント部を分散して配置することが可能となり、タイヤ1の良好なユニフォミティを確保することができる。
【0129】
(2)本実施形態に係るタイヤ1のRFIDタグ40は、インナーライナー29のジョイント部の回転位置を0°としたとき、±60°
(−60°以上+60°以下)の範囲内に配置されている。
これにより複数の円環状のタイヤ構成部材のジョイント部の配置位置の自由度をさらに高めることができる。また、ジョイント部を有する複数の円環状のタイヤ構成部材の数が多い場合であっても、ジョイント部の配置位置の自由度を高めることができる。
【0130】
(3)本実施形態に係るタイヤ1のRFIDタグ40は、インナーライナー29のジョイント部の回転位置を0°としたとき、±45°
(−45°以上+45°以下)の範囲内に配置されている。
これにより複数の円環状のタイヤ構成部材のジョイント部の配置位置の自由度をさらに高めることができる。また、ジョイント部を有する複数の円環状のタイヤ構成部材の数が多い場合であっても、ジョイント部の配置位置の自由度を高めることができる。
【0131】
(4)本実施形態に係るタイヤ1は、ジョイント部を有する複数の円環状のタイヤ構成部材として、ビードフィラー22(第2ビードフィラー222)を含み、RFIDタグ40は、ビードフィラー22の近傍に配置され、RFIDタグ40は、ビードフィラー22のジョイント部の位置から、タイヤ1の回転軸Oを回転基準として30°以上離れた位置に配置されている。
このように、RFIDタグ40をビードフィラー22の近傍に配置する場合において、RFIDタグ40を、ビードフィラー22のジョイント部から離して配置することにより、良好なユニフォミティを確保することができる。
【0132】
(5)本実施形態に係るタイヤ1は、ジョイント部を有する複数の円環状のタイヤ構成部材として、RFIDタグ40が接触している第1タイヤ構成部材を含み、RFIDタグ40は、第1タイヤ構成部材のジョイント部の位置から、タイヤ1の回転軸Oを回転基準として30°以上離れた位置に配置されている。
このように、RFIDタグ40を、RFIDタグ40と接触している第1タイヤ構成部材のジョイント部から離して配置することにより、良好なユニフォミティを確保することができる。
【0133】
(6)本実施形態に係るタイヤ1は、ジョイント部を有する複数の円環状のタイヤ構成部材として、RFIDタグ40を挟み込む第1タイヤ構成部材としてのビードフィラー22(第2ビードフィラー222)および第2タイヤ構成部材としてのゴムシート37を含み、RFIDタグ40は、第1タイヤ構成部材のジョイント部の位置から、タイヤ1の回転軸Oを回転基準として30°以上離れた位置であって、かつ第2タイヤ構成部材のジョイント部の位置から、タイヤ1の回転軸Oを回転基準として30°以上離れた位置に配置されている。
このように、RFIDタグ40を、RFIDタグ40を挟み込んでいる第1タイヤ構成部材および第2タイヤ構成部材のジョイント部の位置から離すことにより、良好なユニフォミティを確保することができる。
【0134】
(7)本実施形態に係るタイヤ1の第1タイヤ構成部材のジョイント部と第2タイヤ構成部材のジョイント部は、タイヤ1の回転軸Oを回転基準として30°以上離れて配置されている。
このように、RFIDタグ40を挟み込んでいる第1タイヤ構成部材と第2タイヤ構成部材のジョイント部の位置も離すことにより、より良好なユニフォミティを確保することができる。
【0135】
(8)本実施形態に係るタイヤ1のインナーライナー29とは異なる少なくとも2つのタイヤ構成部材のジョイント部は、特定構造のジョイント部により構成され、特定構造のジョイント部は、部材の一端側と他端側を重ね合わせて接合した重ね合わせジョイント部、または部材の一端側の斜面と他端側の斜面を突き合わせて接合した斜面突き合わせジョイント部であり、複数の特定構造のジョイント部は、タイヤ1の回転軸Oを回転基準として30°以上の間隔を空けて配置されており、RFIDタグ40は、複数の特定構造のジョイント部のうち、最も近い特定構造のジョイント部から、タイヤ1の回転軸Oを回転基準として30°以上離れて配置されている。
このように、ユニフォミティに影響を及ぼしやすいジョイント部である、重ね合わせジョイント部または斜面突き合わせジョイント部を、間隔を空けて配置し、さらにRFIDタグ40の配置位置を工夫することにより、良好なユニフォミティを確保することができる。
【0136】
(9)本実施形態に係るタイヤ1は、ジョイント部を有する複数の円環状のタイヤ構成部材として、インナーライナー29と、サイドウォールゴム30と、トレッドゴム28を含み、インナーライナー29のジョイント部と、サイドウォールゴム30のジョイント部と、トレッドゴム28のジョイント部は、タイヤ1の回転軸Oを回転基準として90°以上の間隔を空けて配置されており、RFIDタグ40は、サイドウォールゴム30のジョイント部と、トレッドゴム28のジョイント部のうち、最も近いジョイント部から、タイヤ1の回転軸Oを回転基準として30°以上離れて配置されている。
ジョイント部がタイヤ全体のユニフォミティに影響を及ぼしやすいインナーライナー29と、サイドウォールゴム30と、トレッドゴム28のジョイント部の位置を離し、さらにRFIDタグ40の配置位置を工夫することにより、良好なユニフォミティを確保することができる。
【0137】
(10)本実施形態に係るタイヤ1は、ジョイント部を有する複数の円環状のタイヤ構成部材として、金属繊維にゴムを被覆した金属繊維部材を含み、RFIDタグ40は、金属繊維部材のジョイント部の位置から、タイヤ1の回転軸Oを回転基準として30°以上離れた位置に配置されている。
このように、RFIDタグ40と、電界集中等が起こりやすい金属繊維部材のジョイント部の位置とを離すことにより、RFIDタグ40が通信性能異常等の電気的問題を引き起こす可能性を低減することができる。
【0138】
(11)本実施形態に係るタイヤ1は、ジョイント部を有する複数の円環状のタイヤ構成部材として、金属繊維にゴムを被覆した金属繊維部材としてのカーカスプライ23を含み、RFIDタグ40は、カーカスプライ23のジョイント部の位置から、タイヤ1の回転軸Oを回転基準として30°以上離れた位置に配置されている。
このように、RFIDタグ40と、電界集中等が起こりやすい金属繊維部材としてのカーカスプライ23の突き合わせジョイント部の位置とを離すことにより、RFIDタグ40が通信性能異常等の電気的問題を引き起こす可能性を低減することができる。
【0139】
(12)本実施形態に係るタイヤ1のRFIDタグ40は、インナーライナー29のジョイント部の回転位置を0°としたとき、−60°〜−15°の範囲、または+15°〜+60°の範囲内
(−60°以上−15°以下の範囲内、または+15°以上+60°以下の範囲内)に配置されている。
このように、インナーライナー29のジョイント部の配置位置とRFIDタグ40の配置位置の重なりも防ぐことにより、ユニフォミティがさらに良好となる。
【0140】
(13)本実施形態に係るタイヤ1は、部材の一端側と他端側がジョイントされることにより形成されるジョイント部を有する円環状のタイヤ構成部材としてのビードフィラーと、前記ビードフィラーの近傍に配置された電子部品としてのRFIDタグ40と、を備え、前記電子部品は、前記ビードフィラーのジョイント部の位置から、タイヤ1の回転軸Oを回転基準として30°以上離れた位置に配置されている。
このように、RFIDタグ40をビードフィラー22の近傍に配置する場合において、RFIDタグ40を、ビードフィラー22のジョイント部から離して配置することにより、良好なユニフォミティを確保することができる。
【0141】
(14)本実施形態に係るタイヤ1は、電子部品としてのRFIDタグ40と、前記電子部品を挟み込む円環状の第1タイヤ構成部材および円環状の第2タイヤ構成部材と、を備え、前記第1タイヤ構成部材と前記第2タイヤ構成部材は、部材の一端側と他端側がジョイントされることにより形成されるジョイント部を有し、前記電子部品は、前記第1タイヤ構成部材のジョイント部の位置から、タイヤ1の回転軸Oを回転基準として30°以上離れた位置に配置され、かつ前記第2タイヤ構成部材のジョイント部の位置から、タイヤ1の回転軸Oを回転基準として30°以上離れた位置に配置されている。
このように、RFIDタグ40を、RFIDタグ40を挟み込んでいる第1タイヤ構成部材および第2タイヤ構成部材のジョイント部の位置から離すことにより、良好なユニフォミティを確保することができる。
【0142】
(15)本実施形態に係るタイヤ1は、部材の一端側と他端側がジョイントされることにより形成される特定構造のジョイント部を有する複数の円環状のタイヤ構成部材と、電子部品としてのRFIDタグ40と、を備え、前記特定構造のジョイント部は、部材の一端側と他端側を重ね合わせて接合した重ね合わせジョイント部、または部材の一端側の斜面と他端側の斜面を突き合わせて接合した斜面突き合わせジョイント部であり、複数の前記特定構造のジョイント部は、タイヤ1の回転軸Oを回転基準として30°以上の間隔を空けて配置されており、前記電子部品は、複数の前記特定構造のジョイント部のうち、最も近い前記特定構造のジョイント部から、タイヤ1の回転軸Oを回転基準として30°以上離れて配置されている。
このように、ユニフォミティに影響を及ぼしやすいジョイント部である、重ね合わせジョイント部または斜面突き合わせジョイント部を、間隔を空けて配置し、さらにRFIDタグ40の配置位置を工夫することにより、良好なユニフォミティを確保することができる。
【0143】
(16)本実施形態に係るタイヤ1は、部材の一端側と他端側がジョイントされることにより形成されるジョイント部を有する、金属繊維にゴムを被覆した円環状の金属繊維部材と、電子部品としてのRFIDタグ40と、を備え、前記電子部品は、前記金属繊維部材のジョイント部の位置から、タイヤ1の回転軸Oを回転基準として30°以上離れた位置に配置されている。
このように、RFIDタグ40と、電界集中等が起こりやすい金属繊維部材のジョイント部の位置とを離すことにより、RFIDタグ40が通信性能異常等の電気的問題を引き起こす可能性を低減することができる。
なお、上記(13)〜(16)の構成は、それぞれ単独の構成によっても、良好なユニフォミティの確保や、通信性能異常の可能性の低減といった効果を得ることができる。
【0144】
(17)本実施形態のタイヤ1の製造方法は、電子部品としてのRFIDタグ40を、タイヤ構成部材に対して、インナーライナー29のジョイント部の位置を基準として所定の範囲内に位置するように配置する工程を有し、前記所定の範囲は、タイヤ1の回転軸Oを回転基準とした場合における前記インナーライナー29のジョイント部の回転位置を0°としたとき、±90°よりも小さい範囲である。
このように、RFIDタグ40を、上述の±90°の範囲内に配置することにより、インナーライナー29以外の円環状のタイヤ構成部材のジョイント部の配置の自由度が高まる。よって、ジョイント部を分散して配置することが可能となり、タイヤ1の良好なユニフォミティを確保することができる。
【0145】
(18)本実施形態に係るタイヤ1の製造方法は、直線状の長尺のゴム部材に、電子部品としてのRFIDタグ40を被覆した被覆ゴムを、前記長尺のゴム部材と前記被覆ゴムの長手方向が一致するように貼り付ける第1工程と、前記被覆ゴムが貼り付けられた前記直線状の長尺のゴム部材を巻回し、円環状のタイヤ構成部材を形成するとともに、前記電子部品を被覆する前記被覆ゴムを湾曲させ、前記被覆ゴムを円弧形状とする第2工程を含んでいる。
これにより、ビードフィラー22等の円環状のタイヤ構成部材に対して、被覆ゴムにより被覆されたRFIDタグ40を配置するスペースを確保しやすくなる。また、まだ直線状のゴム部材に被覆ゴムを貼り付けるため、作業性がよく、RFIDタグ40の配置位置および配置方向の品質の確保も容易となる。また、RFIDタグ40の配置位置および配置方向の品質を確保しやすくなる。
【0146】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係るタイヤについて、
図13〜15を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態と同じ構成については、同じ符号を付し、また詳細な説明を省略する。
【0147】
本実施形態においては、
図13に示されるように、RFIDタグ40が、トレッドゴム28の近傍に配置されている。より具体的には、RFIDタグ40が、トレッドゴム28とサイドウォールゴム30の間に配置されている。
そして、本実施形態のタイヤ構成部材のうち、少なくともインナーライナー29と、トレッドゴム28と、サイドウォールゴム30は、長尺の部材の一端側と他端側がジョイントされることにより形成されるジョイント部を有する円環状のタイヤ構成部材である。
【0148】
図14は、本実施形態の複数のタイヤ構成部材のジョイント部の位置およびRFIDタグ40の配置位置の関係を、簡略化して示した図である。
本実施形態においては、RFIDタグ40を、±90°よりも小さい範囲内の位置として、+30°の位置Bに配置している。この場合においても、タイヤ構成部材のジョイント部を高い自由度で配置しつつ、良好なユニフォミティを確保することができる。
【0149】
本実施形態においては、タイヤ全体のユニフォミティに与える影響が大きいインナーライナー29のジョイント部と、サイドウォールゴム30のジョイント部と、トレッドゴム28のジョイント部を、120°間隔で均等配置している。具体的には、インナーライナー29のジョイント部の位置を0°の位置Aとしたとき、サイドウォールゴム30のジョイント部を+120°の位置Eに、トレッドゴム28のジョイント部を+240°の位置Iに配置している。よって、全体のユニフォミティが極めて良好となる。
【0150】
以上の構成により、RFIDタグ40は、RFIDタグ40を挟み込む第1タイヤ構成部材としてのトレッドゴム28のジョイント部と、RFIDタグ40を挟み込む第2タイヤ構成部材としてのサイドウォールゴム30のジョイント部から、少なくとも30°以上、本実施形態においては90°以上離れて配置されている。これにより、RFIDタグ40を埋設することによるユニフォミティの悪化を防ぐことができる。
【0151】
以上のように、RFIDタグ40をトレッドゴム28の近傍に配置した場合においても、RFIDタグ40を±90°よりも小さい範囲内の位置、具体的には+30°の位置Bに配置することにより、良好なユニフォミティを確保しつつ、タイヤ構成部材のジョイント部の配置位置の自由度を高めることができる。
【0152】
なお、トレッドゴム28の近傍に配置されているスチールベルト26は、金属繊維にゴムを被覆したタイヤ構成部材であり、長尺の部材の一端側と他端側が突き当たった状態でジョイントしている突き当てジョイント部を有する。よって、RFIDタグ40をトレッドゴム28の近傍に配置する場合、RFIDタグ40は、スチールベルト26のジョイント部の位置から、少なくとも30°以上、好ましくは60°以上離れるように配置されることが好ましい。また、スチールベルト26が4層のスチールベルト26により構成されている場合は、ユニフォミティを考慮すると、各層のスチールベルト26のジョイント部は、それぞれ30°以上、好ましくは60°以上離れるように配置されていることが好ましい。
よって、
図14に示すように、RFIDタグ40が+30°の位置Bに配置されている場合は、4層のスチールベルト26のジョイント部は、例えば位置D(+90°の位置)、位置F(+150°の位置)、位置H(+210°の位置)、位置J(+270°の位置)に配置することができる。
このように、RFIDタグ40がトレッドゴム28の近傍に配置されている場合において、各層のスチールベルト26のジョイント部を、それぞれ30°以上、好ましくは60°以上離れるように配置し、さらにRFIDタグ40を、各層のスチールベルト26のジョイント部から、少なくとも30°以上、好ましくは60°以上離れるように配置することにより、タイヤ1のユニフォミティと、RFIDタグ40の通信性能等を確保することができる。
【0153】
なお、トレッドゴム28は、2つの長尺のゴム部材を一次接続することにより、より長尺化した上で、ジョイント部でジョイントして円環状に形成してもよい。この場合、トレッドゴム28のジョイント部の位置からタイヤ1の回転軸Oを回転基準として180°の位置、本実施形態においては、+60°の位置Cを、一次接続を行う一次ジョイント部の位置とすることが好ましい。なお、一次ジョイント部も、斜面突き合わせジョイント部J1により構成してもよい。
なお、通常、一次ジョイント部よりも、タイヤ構成部材を円環状に形成するための最終的なジョイント部の方が、ユニフォミティへの影響が生じやすい。
【0154】
図15に、本実施形態のタイヤ1の変形例を示す。
本変形例においては、RFIDタグ40を、±90°よりも小さい範囲内の位置として、+60°の位置Cに配置している。この場合においても、インナーライナー29以外のタイヤ構成部材のジョイント部を高い自由度で配置しつつ、良好なユニフォミティを確保することができる。
【0155】
具体的には、本変形例においては、インナーライナー29のジョイント部の位置を0°の位置Aとしたとき、サイドウォールゴム30のジョイント部を+180°の位置Gに、トレッドゴム28のジョイント部を+300°の位置Kに配置している。
このように、RFIDタグ40を±90°よりも小さい範囲内の位置、具体的には+60°の位置Cに配置しても、タイヤ構成部材のジョイント部の配置位置の自由度を高めることができる。
【0156】
本実施形態に係るタイヤによれば、上記(1)〜(18)に加えて以下の効果を奏する。
【0157】
(19)本実施形態のタイヤ1は、ジョイント部を有する複数の円環状のタイヤ構成部材としてトレッドゴム28を含み、RFIDタグ40は、トレッドゴム28の近傍に配置され、RFIDタグ40は、トレッドゴム28のジョイント部の位置から、タイヤ1の回転軸Oを回転基準として30°以上離れた位置に配置されている。
このように、RFIDタグ40をトレッドゴム28の近傍に配置する場合において、RFIDタグ40を、トレッドゴム28のジョイント部から離して配置することにより、良好なユニフォミティを確保することができる。
【0158】
(20)本実施形態に係るタイヤ1は、ジョイント部を有する複数の円環状のタイヤ構成部材として、RFIDタグ40を挟み込む第1タイヤ構成部材としてのトレッドゴム28および第2タイヤ構成部材としてのサイドウォールゴム30を含み、RFIDタグ40は、第1タイヤ構成部材のジョイント部の位置から、タイヤ1の回転軸Oを回転基準として30°以上離れた位置であって、かつ第2タイヤ構成部材のジョイント部の位置から、タイヤ1の回転軸Oを回転基準として30°以上離れた位置に配置されている。
これにより、電子部品を、RFIDタグ40を挟み込んでいる第1タイヤ構成部材および第2タイヤ構成部材のジョイント部から離すことが可能となり、良好なユニフォミティを確保することができる。
【0159】
(21)本実施形態に係るタイヤ1は、部材の一端側と他端側がジョイントされることにより形成されるジョイント部を有するトレッドゴムと、前記トレッドゴムの近傍に配置された電子部品としてのRFIDタグ40と、を備え、前記電子部品は、前記トレッドゴムのジョイント部から、タイヤ1の回転軸Oを回転基準として30°以上離れた位置に配置されている。
このように、電子部品をトレッドゴム28の近傍に配置する場合において、電子部品を、トレッドゴム28のジョイント部から離して配置することにより、良好なユニフォミティを確保することができる。
なお、上記(19)〜(21)構成は、それぞれ単独の構成によっても、良好なユニフォミティの確保という効果を得ることができる。
【0160】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態に係るタイヤについて、
図16〜17を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態と同じ構成については、同じ符号を付し、また詳細な説明を省略する。
【0161】
本実施形態においては、
図16に示されるように、RFIDタグ40が、サイドウォールゴム30と第2のパッド36の間に配置されている。
そして、本実施形態のタイヤ構成部材のうち、少なくともインナーライナー29と、トレッドゴム28と、サイドウォールゴム30と、第2のパッド36は、長尺の部材の一端側と他端側がジョイントされることにより形成されるジョイント部を有する円環状のタイヤ構成部材である。
【0162】
図17は、本実施形態の複数のタイヤ構成部材のジョイント部の位置およびRFIDタグ40の配置位置の関係を、簡略化して示した図である。
本実施形態においては、RFIDタグ40を、±90°よりも小さい範囲内の位置として、+30°の位置Bに配置している。この場合においても、タイヤ構成部材のジョイント部を高い自由度で配置しつつ、良好なユニフォミティを確保することができる。
【0163】
本実施形態においては、タイヤ全体のユニフォミティに与える影響が大きいインナーライナー29のジョイント部と、サイドウォールゴム30のジョイント部と、トレッドゴム28のジョイント部を、120°間隔で均等配置している。具体的には、インナーライナー29のジョイント部の位置を0°の位置Aとしたとき、サイドウォールゴム30のジョイント部を+120°の位置Eに、トレッドゴム28のジョイント部を+240°の位置Iに配置している。よって、全体のユニフォミティが極めて良好となる。そして、第2のパッドのジョイント部を+180°の位置Gに配置している。
【0164】
以上の構成により、RFIDタグ40は、RFIDタグ40を挟み込む第1タイヤ構成部材としてのサイドウォールゴム30のジョイント部と、RFIDタグ40を挟み込む第2タイヤ構成部材としての第2のパッド36のジョイント部から、少なくとも30°以上、本実施形態においては90°以上離れて配置されている。これにより、RFIDタグ40を埋設することによるユニフォミティの悪化を防ぐことができる。
【0165】
以上のように、本実施形態の場合においても、RFIDタグ40を±90°よりも小さい範囲内の位置、具体的には+30°の位置Bに配置することにより、良好なユニフォミティを確保しつつ、タイヤ構成部材のジョイント部の配置位置の自由度を高めることができる。
【0166】
本実施形態に係るタイヤによれば、上記(1)〜(18)に加えて以下の効果を奏する。
【0167】
(22)本実施形態に係るタイヤ1は、ジョイント部を有する複数の円環状のタイヤ構成部材として、RFIDタグ40を挟み込む第1タイヤ構成部材としてのサイドウォールゴム30および第2タイヤ構成部材としての第2のパッド36を含み、RFIDタグ40は、第1タイヤ構成部材のジョイント部の位置から、タイヤ1の回転軸Oを回転基準として30°以上離れた位置であって、かつ第2タイヤ構成部材のジョイント部の位置から、タイヤ1の回転軸Oを回転基準として30°以上離れた位置に配置されている。
これにより、RFIDタグ40を、RFIDタグ40を挟み込んでいる第1タイヤ構成部材および第2タイヤ構成部材のジョイント部から離すことが可能となり、良好なユニフォミティを確保することができる。
【0168】
<第4実施形態>
次に、第4実施形態に係るタイヤ2について、
図18〜19を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態と同じ構成については、同じ符号を付し、また詳細な説明を省略する。
【0169】
本実施形態のタイヤ2は、例えば乗用車などのタイヤとして好適なタイヤであり、
図18に示すように、第1実施形態のタイヤ1とは構成が異なる部分がある。
このような構成が異なるタイヤにおいても、第1実施形態に記載されているような態様、すなわち、RFIDタグ40を±90°よりも小さい範囲内の位置に配置する態様を採用すれば、タイヤ構成部材のジョイント部の配置位置の自由度を高めることができるといった、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0170】
例えば、本実施形態のタイヤ2は、比較的荷重負荷の小さい乗用車での使用を主に想定しているため、パッド部材34(第1のパッド35、第2のパッド36)、ゴムシート37、ショルダーパッド38は備えていない。そして、ビードフィラー22は、第1ビードフィラー221と第2ビードフィラー222に分かれることなく、一体的となっている。カーカスプライ23は、ポリエステルやポリアミド等の絶縁性の有機繊維コード等により構成されており、ゴムにより被覆されている。また、チェーハー31は、繊維を練り込んだゴムや、モジュラスの高いゴムにより構成されている。そして、リムストリップゴム32は、プライ折り返し部25およびチェーハー31のタイヤ幅方向外側に配置されている。トレッド12は、スチールベルト26のタイヤ径方向外側に設けられたベルト補強層としてのキャッププライ27を備える。キャッププライ27は、ポリアミド繊維等の絶縁性の有機繊維層をゴム被覆して構成されている。キャッププライ27を設けることにより、耐久性の向上、走行時のロードノイズの低減を図ることができる。
このように、本実施形態のタイヤ2は、第1実施形態のタイヤ1とは構造が異なる部分を有する。
【0171】
本実施形態においては、
図18に示されるように、RFIDタグ40が、ビードフィラー22の近傍に配置されている。より具体的には、RFIDタグ40が、ビードフィラー22とカーカスプライ23のプライ折り返し部25の間に配置されている。
そして、本実施形態のタイヤ構成部材のうち、少なくともインナーライナー29と、トレッドゴム28と、サイドウォールゴム30と、ビードフィラー22は、長尺の部材の一端側と他端側がジョイントされることにより形成されるジョイント部を有する円環状のタイヤ構成部材である。
【0172】
図19は、本実施形態の複数のタイヤ構成部材のジョイント部の位置およびRFIDタグ40の配置位置の関係を、簡略化して示した図である。
本実施形態においては、RFIDタグ40を、±90°よりも小さい範囲内の位置として、+30°の位置Bに配置している。この場合においても、タイヤ構成部材のジョイント部を高い自由度で配置しつつ、良好なユニフォミティを確保することができる。
【0173】
本実施形態においては、タイヤ全体のユニフォミティに与える影響が大きいインナーライナー29のジョイント部と、サイドウォールゴム30のジョイント部と、トレッドゴム28のジョイント部を、120°間隔で均等配置している。具体的には、インナーライナー29のジョイント部の位置を0°の位置Aとしたとき、サイドウォールゴム30のジョイント部を+120°の位置Eに、トレッドゴム28のジョイント部を+240°の位置Iに配置している。よって、全体のユニフォミティが極めて良好となる。そして、ビードフィラー22のジョイント部を+180°の位置Gに配置している。
【0174】
以上の構成により、RFIDタグ40は、RFIDタグ40と接触している第1タイヤ構成部材としてのビードフィラー22のジョイント部から、少なくとも30°以上、本実施形態においては150°離れて配置されている。これにより、RFIDタグ40を埋設することによるユニフォミティの悪化を防ぐことができる。
【0175】
以上のように、本実施形態のタイヤ2においても、RFIDタグ40を±90°よりも小さい範囲内の位置、具体的には+30°の位置Bに配置することにより、良好なユニフォミティを確保しつつ、タイヤ構成部材のジョイント部の配置位置の自由度を高めることができる。
【0176】
本実施形態に係るタイヤによれば、上記(1)〜(18)に加えて以下の効果を奏する。
【0177】
(23)本実施形態のタイヤ2は、ジョイント部を有する複数の円環状のタイヤ構成部材としてビードフィラー22を含み、RFIDタグ40は、ビードフィラー22の近傍に配置され、RFIDタグ40は、ビードフィラー22のジョイント部の位置から、タイヤ2の回転軸Oを回転基準として30°以上離れた位置に配置されている。
このように、RFIDタグ40をビードフィラー22の近傍に配置する場合において、RFIDタグ40を、ビードフィラー22のジョイント部から離して配置することにより、良好なユニフォミティを確保することができる。
【0178】
(24)本実施形態に係るタイヤ2は、ジョイント部を有する複数の円環状のタイヤ構成部材として、RFIDタグ40を挟み込む第1タイヤ構成部材としてのビードフィラー22および第2タイヤ構成部材としてのカーカスプライ23を含み、RFIDタグ40は、第1タイヤ構成部材のジョイント部の位置から、タイヤ2の回転軸Oを回転基準として30°以上離れた位置であって、かつ第2タイヤ構成部材のジョイント部の位置から、タイヤ2の回転軸Oを回転基準として30°以上離れた位置に配置されている。
このように、RFIDタグ40を、RFIDタグ40を挟み込んでいる第1タイヤ構成部材および第2タイヤ構成部材のジョイント部の位置から離すことにより、良好なユニフォミティを確保することができる。
【0179】
<第5実施形態>
次に、第5実施形態に係るタイヤについて、
図20〜26を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、第1〜第4実施形態と同じ構成については、同じ符号を付し、また詳細な説明を省略する。
本実施形態は、RFIDタグ40のアンテナが、コイル状のスプリングアンテナである場合に特に好適な実施形態である。
【0180】
本実施形態のRFIDタグ40は、アンテナとして、通信性および柔軟性の高いコイル状のスプリングアンテナ421が用いられている。スプリングアンテナ421は、使用する周波数帯域等に応じて、最適化されたアンテナ長さに設定されている。
【0181】
本実施形態においては、保護部材43を構成する2枚の被覆ゴムシート431、432でRFIDタグ40を挟み込む前に、スプリングアンテナ421内にゴムを配置する。より好ましくは、空気がなるべく残らないように、スプリングアンテナ内にゴムを充填する。
図20〜26を用いて、その工程およびその工程を採用する理由を説明する。
【0182】
まず、
図20〜
図22を用いて、参考例として、スプリングアンテナ421内にゴムを充填しない場合における、RFIDタグ40周辺の状態について説明する。
図20は、RFIDタグ40を被覆ゴムシート431、432で挟み込む前の、スプリングアンテナ421、被覆ゴムシート431、432の断面を示す図である。
図21は、RFIDタグ40を被覆ゴムシート431、432で挟み込んだ後の、スプリングアンテナ421、被覆ゴムシート431、432の断面を示す図である。
【0183】
図21に示されるように、この参考例においては、スプリングアンテナ421内に予めゴムが充填されていないため、被覆ゴムシート431、432で挟み込んだ後において、スプリングアンテナ421内に空気45がある程度残ってしまう場合がある。このように空気が残ってしまうと、被覆ゴムシート431、432とスプリングアンテナ421との一体性が不十分となり、タイヤが変形したときに、ゴムの動きにスプリングアンテナ421が追従せず、スプリングアンテナ421を有するRFIDタグ40が破損するおそれがある。
【0184】
なお、ここでは被覆ゴムシート431、432として、加硫前の生ゴムを使用している。よって、被覆ゴムシート431、432を両側から押しつけることにより、
図21に示されるように、スプリングアンテナ内に被覆ゴムシート431、432がある程度はめり込んでいる。しかしながら、スプリングアンテナ内が完全に埋まるまで被覆ゴムシート431、432をめり込ませるためには、非常に多くの時間と手間がかかる。
【0185】
そして、仮に時間をかけてスプリングアンテナ内が埋まるまでゴムシートをめり込ませた場合であっても、
図22に示されるように、スプリングアンテナ421の外周部と、被覆ゴムシート431、432の外表面との距離Lが非常に短くなる。また、その距離Lを安定させることは困難であり、局所的に薄い部分が発生し得る。よって、被覆ゴムシート431、432によるRFIDタグ40の保護が不十分となり、加硫時において、被覆ゴムシート431、432が破損する可能性がある。
【0186】
そこで、本実施形態においては、
図23〜26に示されるように、被覆ゴムシート431、432でRFIDタグ40を挟み込む前に、スプリングアンテナ421内にゴムを配置する。より好ましくは、空気がなるべく残らないように、スプリングアンテナ内にゴムを充填する。なお、
図23〜26の右側に示す図は、スプリングアンテナ421およびその周囲の横断面を示す図である。
【0187】
図23は、スプリングアンテナ421内にゴム46を充填する前の状態を示す図、
図24は、スプリングアンテナ421内にゴム46を充填した後の状態を示す図である。
ゴム46は、スプリングアンテナ421の外周面と略同じ外径となるように埋め込まれる。そして、スプリングアンテナ421の外周面からゴム46がはみ出ている場合には、その部分を拭き取って除去することが好ましい。すなわち、ゴム46の外周面は、スプリングアンテナ421の外周面と略同一面となるように成形されることが好ましい。
なお、スプリングアンテナ421内にゴム46を充填すると共に、スプリングアンテナ421の外周をゴム46で薄く包み込んでもよい。一方、スプリングアンテナ421をゴム46によって厚く包み込んでしまうと、スプリングアンテナ421の柔軟性が損なわれる上に、RFIDタグ40を挟み込んだ後の被覆ゴムシート431、432により形成される幅方向の寸法が大きくなってしまうため、好ましくない。
なお、スプリングアンテナ421の内周面と略同じ外径となるように、ゴム46を埋め込んでもよい。ゴム46の外周部は、スプリングアンテナ421の内周面〜外周面の範囲内に位置していることが望ましい。
以上のように、スプリングアンテナ421内にゴムを配置する工程においては、RFIDチップ41の周辺にゴムを盛ることはせず、スプリングアンテナ421内にのみゴムを充填するため、その後の工程において、RFIDタグ40を被覆ゴムシート431、432で挟み込んでも、被覆ゴムシート431、432で挟み込んだRFIDタグ40をコンパクトに構成することができる。
【0188】
ここで、スプリングアンテナ421の柔軟性を確保するために、ゴム46としては、柔軟性を有するゴムを用いる。但し、作業性等を考慮して、ゴム46として、被覆ゴムシート431、432よりも高いモジュラスのゴムを用いることが好ましい。
なお、スプリングアンテナ421内に配置するゴム46としては、好ましくは未加硫のゴムを用いる。ゴム46、被覆ゴムシート431、432を未加硫のゴムとし、同時に加硫することにより、ゴム46、被覆ゴムシート431、432、スプリングアンテナ421の一体性が高まる。また、ゴム46、被覆ゴムシート431、432は、同種のゴムとすることがより好ましい。
なお、スプリングアンテナ421の柔軟性を重視して、ゴム46として、被覆ゴムシート431、432よりも低いモジュラスのゴムを用いてもよい。また、略同一のモジュラスのゴム、同じ材質のゴムを用いてもよい。
なお、スプリングアンテナ421内に配置するゴム46として、加硫後のゴムを用いてもよい。また、ゴム系接着剤、ゴム系充填剤などを用いることも可能である。柔軟性を確保しつつ、スプリングアンテナ421内に空気をなるべく残らないようにすることを考慮して、各種のゴム系材料を採用することができる。
ゴム46の配置作業としては、各種の方法が採用可能であるが、例えば、注射器を用いてスプリングアンテナ421内にゴムを注入することも可能である。この場合、注射器を用いて、設定された適切な量のゴム46を充填してもよい。また、ゴム46を多めに充填後、スプリングアンテナ421の外周からはみ出た部分を拭き取ってもよい。
【0189】
図25は、スプリングアンテナ421にゴム46が充填されたRFIDタグ40を、被覆ゴムシート431、432で挟み込む前の状態を示す図、
図26は、被覆ゴムシート431、432で挟み込んだ後の状態を示す図である。
【0190】
図26に示されるように、本実施形態によれば、スプリングアンテナ421内に予めゴム46が充填されていたため、被覆ゴムシート431、432の間に空気溜まりが存在していない。よって、空気溜まりを気にしなくてもよいため、被覆ゴムシート431、432でRFIDタグ40を挟み込む工程も簡便となる。
また、スプリングアンテナ421内にゴム46が配置されていることにより、スプリングアンテナ421、ゴム46、被覆ゴムシート431、432の一体性が高まり、タイヤが変形したときに、ゴムの動きにスプリングアンテナ421が追従する。よって、スプリングアンテナ421を有するRFIDタグ40の耐久性も向上する。
【0191】
また、本実施形態によれば、スプリングアンテナ421の外周部と、被覆ゴムシート431、432の外表面との距離Lが安定する。すなわち、この距離Lとして、被覆ゴムシート431、432の肉厚に近い距離が概ね確保される。よって、RFIDタグ40は、被覆ゴムシート431、432によって十分保護される。
本実施形態において被覆ゴムシート431、432で挟み込まれたRFIDタグ40は、タイヤ構成部材間に配設され、その後生タイヤは加硫される。
【0192】
なお、本実施形態においては、スプリングアンテナ421内に予めゴム46が充填されたRFIDタグ40が、被覆ゴムシート431、432に被覆された上で、ビードフィラー22とゴムシート37との間に挟まれるように配置されている。
しかしながら、スプリングアンテナ421内に予めゴム46が充填されたRFIDタグ40を、被覆ゴムシート431、432で被覆することなく、タイヤ構成部材間に配置してもよい。
このように、無被覆のRFIDタグ40を直接タイヤ構成部材間に配置することにより、RFIDタグ40を挟み込まれる部分のゴム部材の厚みの変動が低減し、タイヤのユニフォミティが向上する。また、スプリングアンテナ421内に予めゴム46が充填されているため、周囲のタイヤ構成部材がスプリングアンテナ内に過度にめり込むようなこともない。
【0193】
本実施形態に係るタイヤによれば、上記(1)〜(24)に加えて以下の効果を奏する。
【0194】
(25)本実施形態においては、通信機能を有する電子部品としてのRFIDタグ40がスプリングアンテナ421を有し、ビードフィラー22またはゴムシート37にRFIDタグ40を貼り付ける工程の前に、スプリングアンテナ421内にゴム46を配置する工程を備える。
これにより、RFIDタグ40のスプリングアンテナ421をタイヤ構成部材間に挟み込む工程の際に、空気溜まりを気にしなくてもよくなるため、組み立て性が良好となる。
(26)本実施形態においては、通信機能を有する電子部品としてのRFIDタグ40のスプリングアンテナ421内にゴム46を配置する工程と、ゴム46が配置されたスプリングアンテナ421を有するRFIDタグ40を、被覆ゴムシート431、432で挟み込む工程と、被覆ゴムシート431、432で挟み込まれたRFIDタグ40を、タイヤ構成部材間に配設する配設工程と、を備える。
これにより、スプリングアンテナ421内に空気45が残ってしまうことがない。また、空気溜まりを気にしなくてもよいため、被覆ゴムシート431、432でRFIDタグ40を挟み込む作業も簡便となる。
また、スプリングアンテナ421の外周部と、被覆ゴムシート431、432の外表面との距離Lが安定するため、RFIDタグ40は、被覆ゴムシート431、432によって十分保護される。
【0195】
(27)本実施形態においては、通信機能を有する電子部品としてのRFIDタグ40のスプリングアンテナ421内にゴム46を配置する工程と、タイヤ構成部材間に無被覆のRFIDタグ40を挟み込むように、ビードフィラー22にゴムシート37を貼り付ける工程と、を含む。
このように、無被覆の電子部品を直接タイヤ構成部材間に挟み込むことにより、RFIDタグ40を挟み込まれる部分のゴム部材の厚みの変動が低減し、タイヤのユニフォミティが向上する。また、スプリングアンテナ421内に予めゴム46が充填されているため、周囲のタイヤ構成部材がスプリングアンテナ内に過度にめり込むようなこともない。
【0196】
なお、本発明のタイヤは、乗用車、ライトトラック、トラック、バス等の各種タイヤとして採用することができるが、特にトラック、バス等のタイヤとして好適である。
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲で変形、改良などを行っても、本発明の範囲に含まれる。
【解決手段】タイヤ1であって、部材の一端側と他端側がジョイントされることにより形成されるジョイント部を有する複数の円環状のタイヤ構成部材と、電子部品としてのRFIDタグ40と、を備え、ジョイント部を有する複数の円環状のタイヤ構成部材は、タイヤ内腔面を覆うインナーライナー29と、インナーライナー29とは異なる少なくとも2つ以上のタイヤ構成部材を含み、RFIDタグ40は、インナーライナー29のジョイント部の位置を基準として所定の範囲内に配置されており、所定の範囲は、タイヤの回転軸Oを回転基準とした場合におけるインナーライナー29のジョイント部の回転位置を0°としたとき、±90°よりも小さい範囲である。