(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記領域検出部は、前記最遠画素の信号レベル値と前記注目画素の信号レベル値との差分が、前記信号レベル値における少なくとも離散化した信号レベルで2以上である閾値1より大きい場合、前記強調処理対象領域の候補として定める、請求項1に記載の電子内視鏡用プロセッサ。
前記領域検出部は、前記注目画素に対して前記最遠画素の信号レベル値同士の差分の絶対値が閾値2より小さい場合、前記注目画素が前記強調処理対象領域の候補か否かを判定するように構成される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子内視鏡用プロセッサ。
前記領域検出部は、前記候補として抽出した画素のうち、前記候補抽出処理において、前記サイズが同じ前記フレーム内の上下方向、左右方向、左上−右下方向、及び右上−左下方向の4つの画素配列方向のうち、閾値3より多い数の画素配列方向で前記強調処理対象領域の候補として抽出された画素を、前記強調処理対象領域とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子内視鏡用プロセッサ。
前記フレームは、(2・i+1)×(2・i+1)画素のフレームであって、iは、1〜6の自然数である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子内視鏡用プロセッサ。
前記信号レベル値は、前記撮影画像の輝度信号の信号レベル値、あるいは、前記撮像画像のRGB成分のうち、R成分の信号レベル値である、請求項8に記載の電子内視鏡用プロセッサ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記電子内視鏡装置は、所定の画素配列方向において特定画素の周囲に近接する全ての近接周囲画素に対応する色画素信号の信号レベル値と前記特定画素の信号レベル値とを比較することで、粘膜のある生体組織の表面凹凸の凹部を抽出し、さらに、この抽出した凹部の画素の特定の色成分の信号レベル値を低減することにより、凹部に相当する部分の色味が変化した画像を表面凹凸が強調された画像として作成する。
【0006】
上記電子内視鏡装置では、凹部の部分を抽出するときに、特定画素の信号レベル値を、特定の画素配列方向において特定画素の周囲に近接する全ての近接周囲画素に対応する色画素信号の信号レベル値と比較するが、凹部に位置する画素すべてが、変更処理の対象の画素にならない場合も多い。具体的には、上記比較手段で用いる近接周囲画素は、特定画素に対して固定された位置にある画素であり、具体的には、特定画素に対して、上下方向、左右方向、右上−左下方向、及び左上−右下方向に隣接した隣接画素であるので、撮像画像が被写体である生体組織に近接して撮像した近接画像である場合、凹部の範囲が1画素に限られず、数画素に及ぶ場合がある。この場合、最も凹んだ部分の画素に隣接する画素は、凹部に位置するにも係わらず、色画素信号の信号レベル値を変更処理する対象の画素とならない場合がある。さらに、凹部が近接周囲画素を含む広い範囲にある場合、最も凹んだ部分の画素が、色画素信号の信号レベル値を変更処理する対象の画素とならない場合もある。撮像画像が近接画像である場合の他に、凹部の大きさが大きく、凹部が撮像画像内で数画素の範囲に及ぶ場合もある。この場合にも、上述の問題が生じ易い。さらに、撮像画像の解像度が異なる電子スコープで同じ生体組織を撮像しても、凹部として抽出して変更処理をする対象の画素は、解像度に応じて異なってくる。
【0007】
そこで、本発明は、生体組織の撮像画像を取得してこの撮像画像の強調処理を施す際、撮像画像内の大小様々な凹部について凹部の抽出精度を向上して、あるいは、撮像画像の解像度が異なっても撮像画像内の凹部を確実に抽出して、従来に比べて多くの凹部の強調処理を行うことができる電子内視鏡用プロセッサ及び電子内視鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、生体組織の撮像画像を取得して強調処理を施す電子内視鏡用プロセッサである。当該プロセッサは、
生体組織の撮像画像の画素の情報から強調処理を行う強調処理対象領域を検出するように構成された領域検出部と、
前記領域検出部で検出された強調処理対象領域に強調処理を行うように構成された強調処理部と、を備える。
前記領域検出部は、注目画素を中心とした領域を囲むフレームによって囲まれた領域のうち、複数の画素配列方向のうちいずれかの方向において、前記注目画素から最も遠い両側の位置にある2つの最遠画素の信号レベル値に比べて、前記注目画素の信号レベル値が小さい場合、前記注目画素を強調処理対象領域の候補として抽出する候補抽出処理を、前記フレームのサイズを変更して繰り返し、前記サイズの変更によって前記候補として抽出した画素に基づいて前記強調処理対象領域を定めるように構成されている。
【0009】
前記領域検出部は、前記最遠画素の信号レベル値と前記注目画素の信号レベル値との差分が、前記信号レベル値における少なくとも離散化した信号レベルで2以上である閾値1より大きい場合、前記強調処理対象領域の候補として定める、ことが好ましい。
【0010】
前記閾値1は、前記フレームのサイズが大きくなるほど大きい、ことが好ましい。
【0011】
前記閾値1は、前記撮像画像の被写体である体腔内の器官の場所に応じて設定される、ことが好ましい。
【0012】
前記領域検出部は、前記注目画素に対して前記最遠画素の信号レベル値同士の差分の絶対値が閾値2より小さい場合、前記注目画素が前記強調処理対象領域の候補か否かを判定するように構成される、ことが好ましい。
【0013】
前記領域検出部は、前記候補として抽出した画素のうち、前記候補抽出処理において、前記サイズが同じ前記フレーム内の上下方向、左右方向、左上−右下方向、及び右上−左下方向の4つの画素配列方向のうち、閾値3より多い数の画素配列方向で前記強調処理対象領域の候補として抽出された画素を、前記強調処理対象領域とする、ことが好ましい。
【0014】
前記フレームは、(2・i+1)×(2・i+1)画素のフレームであって、iは、1〜6の自然数である、ことが好ましい。
【0015】
前記強調処理は、検出された前記強調処理対象領域の前記信号レベル値を低減する処理である、ことが好ましい。
【0016】
前記信号レベル値は、前記撮影画像の輝度信号の信号レベル値、あるいは、前記撮像画像のRGB成分のうち、R成分の信号レベル値である、ことが好ましい。
【0017】
本発明の他の一態様は、前記電子内視鏡用プロセッサと、前記電子内視鏡用プロセッサに接続されて、生体組織の前記撮像画像を出力する電子内視鏡と、を備える電子内視鏡システムである。
【発明の効果】
【0018】
上述の電子内視鏡用プロセッサ及び電子内視鏡システムによれば、撮像画像内の大小様々な凹部について凹部の抽出精度を向上して、あるいは、撮像画像の解像度が異なっても撮像画像内の凹部を確実に抽出して、従来に比べて多くの凹部の強調処理を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本実施形態の電子内視鏡システムのプロセッサは、このシステムで生体組織を撮像して得られる撮像画像の強調処理をすべき領域、例えば生体組織の凹部の領域を抽出し、この領域に強調処理を行う。強調処理すべき領域、例えば凹部の領域は、種々のサイズのものを含む。また、被写体と内視鏡との近接の程度によって撮像画像中の凹部の領域も変化する。このため、本実施形態では、撮像画像の中から凹部の強調処理をすべき領域を抽出する時、撮像画像の注目画素を中心とした領域を囲むフレームによって囲まれた領域のうち、複数の画素配列方向のうちいずれかの方向において、注目画素から最も遠い両側の位置にある2つの最遠画素の信号レベル値に比べて、注目画素の信号レベル値が小さい場合、注目画素を強調処理対象領域の候補として抽出する候補抽出処理を、フレームのサイズを変更して繰り返し、候補として抽出した画素に基づいて強調処理対象領域を定める。このようにフレームのサイズを変更して、候補となる領域を抽出するので、撮像画像内の大小様々な凹部について凹部の抽出精度を向上することができる。また、撮像画像の解像度が異なっても撮像画像内の凹部を確実に抽出することができる。これにより、従来に比べて多くの凹部の強調処理を行うことができる。
【0021】
以下、本実施形態の電子内視鏡システムについて図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態の電子内視鏡システム1の構成の一例を示すブロック図である。
図1に示されるように、電子内視鏡システム1は、医療用に特化されたシステムであり、電子スコープ(内視鏡)100、プロセッサ200及びモニタ300を備えている。
【0022】
プロセッサ200は、システムコントローラ21及びタイミングコントローラ22を備えている。システムコントローラ21は、メモリ23に記憶された各種プログラムを実行し、電子内視鏡システム1全体を統合的に制御する。また、システムコントローラ21は、操作パネル24に接続されている。システムコントローラ21は、操作パネル24に入力される術者からの指示に応じて、電子内視鏡システム1の各動作及び各動作のためのパラメータを変更する。タイミングコントローラ22は、各部の動作のタイミングを調整するクロックパルスを電子内視鏡システム1内の各回路に出力する。
【0023】
プロセッサ200は、光源装置201を備えている。光源装置201は、体腔内の生体組織等の被写体を照明するための照明光Lを出射する。照明光Lは、白色光、擬似白色光、あるいは特殊光を含む。一実施形態によれば、光源装置201は、白色光あるいは擬似白色光を照明光Lとして常時射出するモードと、白色光あるいは擬似白色光と、特殊光が交互に照明光Lとして射出するモードと、の一方を選択し、選択したモードに基づいて、白色光、擬似白色光、あるいは特殊光を射出することが好ましい。白色光は、可視光帯域においてフラットな分光強度分布を有する光であり、擬似白色光は、分光強度分布はフラットではなく、複数の波長帯域の光が混色された光である。特殊光は、可視光帯域の中の青色あるいは緑色等の狭い波長帯域の光である。青色あるいは緑色の波長帯域の光は、生体組織中の特定の部分を強調して観察する時に用いられる。光源装置201から出射した照明光Lは、集光レンズ25により光ファイバの束であるLCB(Light Carrying Bundle)11の入射端面に集光されてLCB11内に入射される。
【0024】
LCB11内に入射された照明光Lは、LCB11内を伝播する。LCB11内を伝播した照明光Lは、電子スコープ100の先端に配置されたLCB11の射出端面から射出され、配光レンズ12を介して被写体に照射される。配光レンズ12からの照明光Lによって照明された被写体からの戻り光は、対物レンズ13を介して固体撮像素子14の受光面上で光学像を結ぶ。
【0025】
固体撮像素子14は、ベイヤ型画素配置を有する単板式カラーCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサである。固体撮像素子14は、受光面上の各画素で結像した光学像を光量に応じた電荷として蓄積して、R(Red)、G(Green)、B(Blue)の画像信号を生成して出力する。なお、固体撮像素子14は、CCDイメージセンサに限らず、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサやその他の種類の撮像装置に置き換えられてもよい。固体撮像素子14はまた、補色系フィルタを搭載したものであってもよい。
【0026】
電子スコープ100がプロセッサ200と接続する接続部内には、ドライバ信号処理回路15が備えられている。ドライバ信号処理回路15には、固体撮像素子14から被写体の画像信号が所定のフレーム周期で入力される。フレーム周期は、例えば、1/30秒である。ドライバ信号処理回路15は、固体撮像素子14から入力される画像信号に対して所定の処理を施してプロセッサ200の前段信号処理回路26に出力する。
【0027】
ドライバ信号処理回路15は、また、メモリ16にアクセスして電子スコープ100の固有情報を読み出す。メモリ16に記録される電子スコープ100の固有情報には、例えば、固体撮像素子14の画素数や感度、動作可能なフレームレート、型番等が含まれる。ドライバ信号処理回路15は、メモリ16から読み出された固有情報をシステムコントローラ21に出力する。この固有情報には、例えば、固体撮像素子14の画素数や解像度等の素子特有の情報、さらには、光学系に関する画角、焦点距離、被写界深度等の情報も含まれてもよい。
【0028】
システムコントローラ21は、電子スコープ100の固有情報に基づいて各種演算を行い、制御信号を生成する。システムコントローラ21は、生成された制御信号を用いて、プロセッサ200に接続されている電子スコープ100に適した処理がなされるようにプロセッサ200内の各種回路の動作やタイミングを制御する。
【0029】
タイミングコントローラ22は、システムコントローラ21によるタイミング制御に従って、ドライバ信号処理回路15にクロックパルスを供給する。ドライバ信号処理回路15は、タイミングコントローラ22から供給されるクロックパルスに従って、固体撮像素子14をプロセッサ200側で処理される映像のフレームレートに同期したタイミングで駆動制御する。
【0030】
前段信号処理回路26は、ドライバ信号処理回路15から1フレーム周期で入力される画像信号に対してデモザイク処理、マトリックス演算、Y/C分離等の所定の信号処理を施して、画像メモリ27に出力する。
【0031】
画像メモリ27は、前段信号処理回路26から入力される画像信号をバッファし、さらに、画像メモリ27から読み出された画像信号を演算部29で強調処理して得られる強調処理画像の画像信号を再度バッファし、タイミングコントローラ22によるタイミング制御に従い、後段信号処理回路28に出力する。
【0032】
後段信号処理回路28は、画像メモリ27から入力される画像信号を処理してモニタ表示用の画面データを生成し、生成されたモニタ表示用の画面データを所定のビデオフォーマット信号に変換する。変換されたビデオフォーマット信号は、モニタ300に出力される。これにより、被写体の画像がモニタ300の表示画面に表示される。
【0033】
システムコントローラ21には、演算部29が接続されている。演算部29は、生体組織を撮像して記憶されている画像メモリ27からシステムコントローラ21を経由して呼び出された撮像画像の強調処理をすべき領域、例えば生体組織の凹部の領域を抽出し、この領域に強調処理を行う部分である。
図2は、演算部29の構成の一例を示すブロック図である。演算部29は、領域検出部30と、強調処理部31とを備える。
【0034】
領域検出部30は、生体組織の撮像画像の画素の情報から強調処理を行う強調処理対象領域を検出するように構成されている。領域検出部30は、領域検出処理として、以下に説明する注目画素を中心とした領域を囲むフレームを用いて強調処理対象領域の候補を抽出する候補抽出処理を、フレームのサイズの変更を繰り返して行い、候補として抽出した画素に基づいて強調処理対象領域を定める。ここで候補抽出処理は、注目画素を中心画素にしたフレームによって囲まれた領域のうち、複数の画素配列方向のうちいずれかの方向において、注目画素から最も遠い両側の位置にある2つの最遠画素の信号レベル値に比べて、注目画素の信号レベル値が小さい場合、注目画素を強調処理対象領域の候補として抽出する処理である。したがって、あるサイズのフレームで候補となる画素が抽出できなくても、別のサイズのフレームで候補となる画素を抽出する場合もある。詳細の説明は後述する。
【0035】
強調処理部31は、領域検出部30で検出された強調処理対象領域に強調処理を行うように構成されている。強調処理は、特に限定されないが、以下説明するように、凹部に対応する領域の信号レベル値を変更することにより凹部を強調する処理を含む。
例えば、強調処理部31は、RGBのカラー撮像画像においてRGBの各色成分の注目画素の画素位置を(i,j)と表したとき、注目画素の画素データの値R
ijをその周囲の周囲画素の画素データの平均値との差データΔR
ijを用いて、強調画素データr
ij=Rij +k・ΔR
ijにしたがって強調画素データr
ijを算出する。ここで、kは予め設定された値あるいは操作パネル24から入力設定された値である。kは、一定の値でもよいし、所定の条件に応じて変化する値であってもよい。また、kは、色成分毎に異なってもよい。ここで、周囲画素は、上述した強調処理対象領域を定めるときに注目画素の信号レベル値と比較した2つの最遠画素、あるいは、注目画素を上下方向、左右方向、右上−左下方向、及び左上−右下方向で囲む8つの隣接画素、あるいは、フレーム内の上下方向、左右方向、右上−左下方向、及び左上−右下方向において注目画素に対して最も遠い8つの最遠画素であってもよい。周囲画素が、強調処理対象領域を定めるときに注目画素の信号レベル値と比較した2つの最遠画素である場合、ΔR
ijは、注目画素の信号レベル値R
ijとフレーム上の2つの最遠画素の信号レベル値の平均値との差を表す。このように、ΔR
ijは、凹部におけるくぼみ深さに対応した情報であるので、くぼみの深い凹部の画素ほど、信号レベル値を大きく変更するので、凹部の領域を強調した画像を得ることができる。
【0036】
図3は、電子スコープ(内視鏡)100による生体組織Aの撮像の例を説明する図である。生体組織Aには電子スコープ100から見て奥行き方向に窪んだ凹部Bが存在する。この凹部Bを含む生体組織Aを電子スコープ100が撮像する。
図4(a),(b)は、電子内視鏡システム1で得られる凹部Bに対応する領域Cを含む撮像画像の例を説明する図である。この場合、電子スコープ100による生体組織Aまでの撮影距離によって得られる撮像画像における領域Cの大きさは変化する。
図4(a),(b)では、領域Cは、一方向に延びた溝状の凹部Bに対応するグレーの領域を示す。
図4(b)に示す撮像画像は、
図4(a)に示す撮像画像に比べて撮影距離(被写体と固体撮像素子14の間の距離)が短い。このため、
図4(a)に示すように、領域Cの幅が1画素のサイズの場合もあれば、
図4(b)に示すように、領域Cの幅が1画素のサイズを超える場合もある。このように撮影距離に応じて大きさが変化する領域Cを考慮して、領域検出部30は、領域検出処理を行う際に用いる注目画素を中心画素として、注目画素の周りの領域を囲むフレームを、複数サイズ備える。
【0037】
なお、演算部29は、システムコントローラ21がメモリ23に記憶されたプログラムを起動してモジュールとして形成するソフトウェアモジュールであってもよく、また、FPGA(Field-Programmable gate Array)で構成されたハードウェアモジュールであってもよい。
【0038】
図5(a)〜(c)は、演算部29の領域検出部30が行う処理の例を説明する図である。
図5(a)〜(c)には、一例として、3×3画素のフレーム、5×5画素のフレーム55、及び7×7画素のフレーム77が示されている。フレーム33,55,77は、フレームの中心の画素が、撮像画像内の注目画素に一致するように配置される。
図5(b),(c)の画素内に示されている数値は、画素の信号レベル値の例である。注目画素における信号レベル値は111である。
【0039】
領域検出部30は、例えば、撮像画像の注目画素Pfを中心とした領域を囲むフレーム33によって囲まれた領域のうち、上下方向、左右方向、右上−左下方向、及び左上−右下方向のうちのいずれかの方向において、注目画素Pfから最も遠い両側の位置にある2つの最遠画素の信号レベル値に比べて、注目画素Pfの信号レベル値が小さい場合、注目画素Pfを強調処理対象領域の候補として抽出する。一般的に、凹部には、撮像時、照明光Lが十分に行き届かず、また、照明光Lの戻り光が固体撮像素子14の受光面に十分に到達しないので、撮像画像では、暗い領域として現れる。このため、注目画素の信号レベル値がいずれの最遠画素の信号レベル値より低いか否かを調べることにより、凹部に対応する領域の候補を抽出ことができる。
【0040】
フレーム33において凹部に対応する領域の候補を抽出できない場合、フレーム33に代えてフレーム55を用いて、上記処理と同様の処理を行う。この場合、
図5(b)に示す例では、注目画素Pfから最も遠い、上下方向の両側の位置にある2つの最遠画素は、画素Pu,Pdである。フレーム55においても凹部に対応する領域の候補を抽出できない場合、さらに、フレーム55に代えてフレーム77を用いて、上記処理と同様の処理を行う。
図5(b)に示す例では、凹部に対応する領域の候補を抽出できない。
図5(c)に示す例では、左右方向、右上−左下方向、及び左上−右下方向において、凹部に対応する領域の候補を抽出することができる。
なお、注目画像が撮像画像の上下左右のいずれかの端に位置する場合やその近傍に位置する場合、フレーム内の最遠画素が存在しない場合もある。この場合、上下方向、左右方向、右上−左下方向、及び左上−右下方向のいずれかの方向における候補の抽出のための処理は行われない。
【0041】
領域検出部30は、フレームのサイズの変更によって候補として抽出した画素に基づいて強調処理対象領域を定める。例えば、同じ画素について、左右方向、右上−左下方向、及び左上−右下方向の画素配列方向において候補として設定される回数が、予め設定された閾値回数より大きい画素を強調処理対象領域として定める。すなわち、領域検出部30は、候補抽出処理において、サイズが同じフレーム内の上下方向、左右方向、左上−右下方向、及び右上−左下方向の4つの画素配列方向のうち、閾値回数(閾値3)より多い数の画素配列方向で強調処理対象領域の候補として抽出された画素を、強調処理対象領域として定める。上記閾値回数が0回の場合、候補として抽出した画素はすべて強調処理対象領域として設定される。上記閾値回数が1回以上の場合、候補として抽出した画素の中から、候補としての抽出回数が閾値回数より大きい画素が強調処理対象領域として設定される。
図5(a)〜(c)に示す,フレーム33,55,77を用いた例では、
図5(c)に示すように、左右方向、右上−左下方向、及び左上−右下方向において、注目画素Pf(信号レベル値111)から最も遠い両側の位置にある2つの最遠画素の信号レベル値(信号レベル値115,125、信号レベル値120,113、及び信号レベル値117、118)に比べて、注目画素Pfの信号レベル値111は小さいので、注目画素Pfは候補として抽出される回数は3回となる。このため、
図5(c)に示す例では、注目画素Pfは、強調処理対象領域として設定される。
【0042】
図6は、領域検出部30が行う、一実施形態の領域検出処理のフローの一例を示す図である。
領域検出部30は、電子スコープ100で撮像されて画像メモリ27に記憶された現フレームの撮像画像を、システムコントローラ21を介して呼び出して、撮像画像を取得する(ステップS100)。
次に、領域検出部30は、注目画素を定め、この画素の信号レベル値を取得する(ステップS102)。注目画素の信号レベル値をI1とする。
次に、領域検出部30は、変数iを1に設定して、(2・i+1)×(2・i+1)画素のフレームを選択する(ステップS104)。
【0043】
領域検出部30は、選択したフレームを、選択したフレームの中心画素が注目画素に一致するように撮像画像上に配置し、注目画素に対する画素配列方向を左上−右下方向に設定する(ステップS106)。領域検出部30は、注目画素から、設定した画素配列方向において、フレーム内の両側に位置する2つの最遠画素の信号レベル値を取得する(ステップS108)。このとき、2つの最遠画素の信号レベル値をI0,I2とする。
領域検出部30は、I1−I0及びI2−I1を計算し、それぞれの差分結果をS0,S2とする(ステップS110)。
【0044】
次に、領域検出部30は、S0+S2の絶対値を計算した結果が、予め定めた閾値TH2未満であるか否かを判定する(ステップS112)。ここで、S0+S2の絶対値は、2つの最遠画素の信号レベル値の差の絶対値であるので、2つの最遠画素の信号レベル値の差の絶対値が閾値TH2未満であるか否かを判定することを意味する。この判定で否定(No)されると、領域検出部30は、注目画素は、設定した画素配列方向において強調処理対象領域の候補ではないと判定して、後述するステップS118に処理を進める。一方、上記判定で肯定(Yes)されると、領域検出部30は、−S0及びS2が閾値TH1より大きいか否かを判定する(ステップS114)。この判定で否定(No)されると、領域検出部30は、注目画素は、定められた画素配列方向において、強調処理対象領域の候補ではないと判定して、後述するステップS118に処理を進める。一方、ステップS114の判定で肯定(Yes)されると、領域検出部30は、設定された画素配列方向において、注目画素は強調処理対象領域の候補(凹部に対応する領域の候補)であるとして、注目画素に対応して画素配列方向毎に設定された画素情報記録領域に凹部フラグを付与する(ステップS116)。
【0045】
次に、領域検出部30は、画素配列方向の全てに対してステップS108〜S118を実行したか否かを判定する(ステップS118)。この判定において否定(No)された場合、領域検出部30は、ステップS108〜S118の処理を行う画素配列方向を、まだ設定されていない画素配列方向の1つに設定する(ステップS120)。こうして、ステップS118の判定において肯定(Yes)になるまで、画素配列方向を変更してステップS108〜120の処理を繰り返す。ステップS118の判定で肯定(Yes)された場合、領域検出部30は、現在の注目画素において凹部フラッグが付与された回数が設定された閾値回数TH3を超えるか否かを判定する(ステップS122)。この判定で肯定された場合、領域検出部30は、注目画素を強調処理対象領域(凹部に対応する領域)として設定する(ステップS124)。この後、注目画素を変更するために、後述するステップS130に処理を進める。閾値回数TH3は、1回であってもよいが、凹部に対応する領域の抽出精度を高めるためには、2回以上であることが好ましい。
【0046】
ステップS122の判定で否定(No)された場合、設定した変数iが7未満であるか、すなわち、15×15画素のフレームより小さい、(2・i+1)×(2・i+1)画素のフレームをすべて選択したか否かを判定する(ステップS126)。この判定で肯定(Yes)された場合、領域検出部30は、変数iを1増やして(ステップS128)、すなわち、フレームサイズを大きくして、ステップS106に処理を戻す。こうして、領域検出部30は、ステップS126の判定において肯定(Yes)されるまで、フレームサイズを徐々に大きくしてステップS106〜S124を繰り返す。
【0047】
領域検出部30は、ステップS126における判定で否定(No)された場合、あるいはステップS124で注目画素を強調処理対象領域(凹部に対応する領域)として設定した場合、撮像画像の全画素を注目画素として上記処理の計算を終了したか否かを判定する(ステップS130)。この判定で否定(No)された場合、領域検出部130は、注目画素を隣の画素に移動して隣の画素を注目画素として設定する(ステップS132)。ステップS130の判定で肯定(Yes)された場合、領域検査部130は、領域検出処理を終了する。このように、撮像画像の全画素について領域検出処理を行うまで、ステップS102〜S132の処理を繰り返す。
【0048】
このように、領域検出部30は、撮像画像の注目画素を中心とした領域を囲むフレームによって囲まれた領域のうち、複数の画素配列方向のうちいずれかの方向の2つの最遠画素の信号レベル値に比べて、注目画素の信号レベル値が小さい場合、注目画素を強調処理対象領域の候補として抽出する候補抽出処理を、フレームのサイズを変更して繰り返し、サイズの変更によって候補として抽出した候補の画素に基づいて強調処理対象領域を定めるように構成されている。ここで、候補抽出処理は、
図6に示すフローの例では、ステップS106〜S120の処理である。このため、撮像画像内の大小様々な凹部について凹部の抽出精度を向上することができる。また、撮像画像の解像度(各画素の一辺の長さが対応する被写体上の距離)が異なっても撮像画像内の凹部を確実に抽出することができる。これにより、従来に比べて多くの凹部の強調処理を行うことができる。
【0049】
一実施形態によれば、最遠画素の信号レベル値と注目画素の信号レベル値との差分と比較する閾値TH2は、少なくとも離散化した信号レベルで2以上であることが好ましい。
例えば、10ビットの離散化した信号レベルでは、閾値TH2は、32〜64であることが好ましい。生体組織の表面には粘膜が存在し、この粘膜により反射率が変動するため、凹部がなくても信号レベル値は凹部に類似した変化を示す。しかし、閾値TH2を上記範囲に設定することにより、生体組織の凹部を、凹部と誤認され易い類似した変化とを区別することができる。
【0050】
一実施形態によれば、閾値TH1は、フレームサイズが大きくなるほど大きくなることが好ましい。フレームサイズが大きくなる程、注目画素と最遠画素との距離が遠くなり、凹部と誤認され易い類似した変化を、領域検出処理では抽出し易くなる。このため、閾値TH1は、フレームサイズが大きくなるほど大きくなることが好ましい。
【0051】
領域検出部30は、最遠画素の信号レベル値同士の差分の絶対値が閾値TH2より小さい場合、注目画素が強調処理対象領域の候補となるか否かを判定するように構成されることが好ましい。
図6に示す例では、ステップS112の判定で肯定された場合、ステップS114により、強調処理対象領域(凹部の領域)の候補の判定を行われる。これにより、撮像画像の信号レベル値の変化が大きいために、凹部に対応する領域の候補の抽出の信頼度が低くなり易い撮像画像であっても、候補の抽出の信頼度の低下を抑制することができる。
閾値TH1,TH2は、予め設定しておくことが好ましい。一実施形態によれば、閾値TH1,TH2は、体腔内の器官の各部分毎に閾値TH1,TH2と関連付けた関連情報を保持しておくことが好ましい。一実施形態によれば、プロセッサ200を、撮像される生体組織がどの器官のどの部分かを操作パネル214から情報として入力指示されるように構成し、閾値TH1,TH2を、入力指示された情報から、上記関連情報を用いて設定することが好ましい。また、一実施形態によれば、電子スコープ100を挿入した距離を計測し、撮像される生体組織がどの器官のどの部分かを計測した距離に基づいて自動的に判定して、判定した結果と上記関連情報を用いて閾値TH1,TH2を設定することも好ましい。すなわち、閾値TH1,TH2は、撮像画像の被写体である体腔内の器官の場所に応じて設定される、ことが好ましい。
【0052】
領域検出部30は、強調処理対象領域(凹部の領域)の候補として抽出した画素のうち、少なくとも2回以上、強調処理対象領域の候補として抽出された画素、
図6に示す例では、凹部フラグの付与された回数が2回以上である画素を、強調処理対象領域とすることが、点状に凹んだ凹部や、一方向に延在した溝状の凹部を確実に抽出するできる点から好ましい。
【0053】
一実施形態によれば、抽出された強調処理対象領域に対して行う強調処理は、抽出された強調処理対象領域の信号レベル値を低減する処理であることが好ましい。強調処理対象領域の抽出では、フレームのサイズが異なる複数のフレームを用いて大きさが異なる複数の凹部に対応する領域を強調処理対象領域として抽出することができるので、抽出された強調処理対象領域の信号レベル値を低減して、凹部を強調した画像を確実に得ることができる。
【0054】
一実施形態によれば、強調処理対象領域の抽出に用いる画素の信号レベル値は、撮影画像の輝度信号の信号レベル値、あるいは、撮像画像がカラー画像の場合、RGB成分のうち、R成分の信号レベル値である、ことが好ましい。凹部は生体組織の反射光が入射し難い部分であり、輝度の低い部分であるので、輝度信号の信号レベル値を用いることが、凹部に対応する領域を強調処理対象領域として抽出する場合に適している。一方、生体組織は、青色成分や緑色成分の波長帯域の光を吸収するので、凹部の領域と光の吸収によって暗くなった領域とが区別され難い。このため、R成分の信号レベル値を利用して、生体組織の凹部に対応する領域を強調処理対象領域として抽出する場合に好ましい。
【0055】
図6に示すフローでは、フレームサイズを、3×3画素の最小のフレームから、13×13画素のフレームサイズまでの計6種類のフレームを用いたが、用いるフレームサイズ及びフレーム数は特に限定されない。一実施形態によれば、フレームのサイズの上限は、凹部の領域を精度よく抽出するために13×13画素以下のサイズであることが好ましい。電子内視鏡システム1では、1つのプロセッサ200に対して、電子スコープ100を取替えて、異なる種類(異なる仕様)の電子スコープ100を使用する場合が多い。電子スコープ100は種類によって固体撮像素子14の画像の分解能が異なる場合が多いので、生体組織の同じ凹部を撮像しても、撮像に用いた電子スコープ100の種類によって、撮像画像における凹部に対応する領域の大きさは、
図4(a),(b)に示すように変化する。このため、同じ凹部を含む生体組織の撮像画像であっても、凹部に対応する領域の抽出が不安定になる(抽出されなかったり、抽出されたりする)。このため、強調処理された画像において、凹部の強調も不安定になり(抽出されなかったり、抽出されたりする)、同じ凹部として視認され難い場合もある。これに対して、上記実施形態では、撮像画像の解像度が異なっても撮像画像内の凹部を確実に抽出することができる。これにより、従来に比べて確実に凹部の強調処理を行うことができる。
【0056】
したがって、一実施形態によれば、領域検出部30は、固体撮像素子14の解像度及び総画素数等の撮像素子の情報、及び光学系に関する画角、焦点距離、及び被写界深度等の光学情報を含む撮像固有情報に基づいて、領域検出部30で用いるフレームの数及びフレームのサイズの少なくとも一方を設定することが好ましい。撮像固有情報から、撮像画像の一画素に占める被写体の長さの範囲がわかるので、この長さの範囲から撮像画像における凹部の領域の大きさもある程度予想することができる。したがって、この予想に基づいてフレームの数及びフレームのサイズの少なくとも一方を設定することができる。この場合、上記撮像固有情報と、フレームサイズ及びフレームの数とを関連付けた関連情報をメモリ23に予め記憶しておくことが好ましい。電子スコープ100がプロセッサ200に接続される時、電子スコープ100は、電子スコープ100に関する固有情報をメモリ16から読み出してシステムコントローラ21に出力する。したがって、一実施形態によれば、領域検出部30は、電子スコープ100から送信される固有情報に含まれる撮像固有情報から、メモリ23に記憶した上記関連情報を用いて、接続した電子スコープ100の種類に対応したフレームサイズ及びフレーム数を自動的に設定することが好ましい。
【0057】
以上、本発明の電子内視鏡用プロセッサ及び電子内視鏡システムについて詳細に説明したが、本発明の電子内視鏡用プロセッサ及び電子内視鏡システムは上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。