(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、Aプレートとして機能する位相差層を備える光学フィルムに関して、充分な視野角特性を確保した上で、構成、工程を簡略化し、さらに品質を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ね、NZ係数が、1未満であるように位相差層を作製するようにして、配向層界面近傍における液晶分子の配向方向を斜めに傾けないようにする、との着想に至り、本発明に想到した。
【0010】
(1) 透明基材上に、位相差層を備えた光学フィルムであって、
前記位相差層は、
重合性棒状液晶材料からなる1層の位相差層であり、
正面位相差Reと厚み位相差Rthとを用いてNZ=Rth/Re+0.5で表されるNZ係数が、1未満であり、
透明基材側部材との界面におけるチルト角が0度又は90度である光学フィルム。
但し、正面位相差Re、厚み位相差Rth、NZ係数は、波長550nmによる値である。
【0011】
(1)によれば、1層の位相差層により、所望の面内位相差を付与するAプレートに、対応する正Cプレートを積層したと同様の位相差を透過光に付与することができ、これにより充分な視野角特性を確保することができる。またこの位相差層を1層により作製することにより、構成、工程を簡略化し、さらに欠陥の発生を低減して品質を向上することができる。このとき位相差層の界面におけるチルト角が0度又は90度であることにより、液晶材料のプレチルトによる光学特性の方向依存性を充分に低減して、光学特性の偏りを防止することができる。
【0012】
(2) (1)において、
前記位相差層は、
ホメオトロピック配向層とホモジニアス配向層とを備える光学フィルム。
【0013】
(2)によれば、より具体的構成により、Aプレートとして機能する位相差層を備える光学フィルムに関して、充分な視野角特性を確保した上で、構成、工程を簡略化し、さらに品質を向上することができる。
【0014】
(3) (1)又は(2)において、
前記透明基材が、
延伸フィルムであり、
前記透明基材側部材との界面が、前記透明基材との界面である光学フィルム。
【0015】
(3)によれば、透明基材の配向規制力を利用して重合性棒状液晶材料を配向させて位相差層を作製することにより、具体的に、光学特性の偏りを防止することができる。
【0016】
(4) (1)又は(2)において、
前記透明基材に光配向層が形成され、
前記透明基材側部材との界面が、前記光配向層との界面である光学フィルム。
【0017】
(4)によれば、光配向層により重合性棒状液晶材料を配向させて位相差層を作製することにより、具体的に、光学特性の偏りを防止することができる。
【0018】
(5) (1)又は(2)において、
前記透明基材に垂直配向層が形成され、
前記透明基材側部材との界面が、前記垂直配向層との界面である光学フィルム。
【0019】
(5)によれば、垂直配向層により重合性棒状液晶材料を配向させて位相差層を作製することにより、具体的に、光学特性の偏りを防止することができる。
【0020】
(6) (1)、(2)、(3)、(4)、(5)の何れかにおいて、
前記位相差層の進相軸を基準軸に設定して、前記基準軸回りに前記位相差層への入射角を変化させた位相差値Reの計測結果において、位相差値Reが極値となる入射角が10度以下であり、
前記位相差層の遅相軸を基準軸に設定して、前記基準軸回りに前記位相差層への入射角を変化させた位相差値Reの計測結果において、位相差値Reが極値となる入射角が10度以下である光学フィルム。
【0021】
(6)によれば、位相差値に係る光学特性に関して、より具体的に、光学特性の偏りを有効に回避してなる光学フィルムを提供することができる。
【0022】
(7) (1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)の何れかに記載の光学フィルムを、画像表示パネルのパネル面に備える画像表示装置。
【0023】
(7)によれば、Aプレートとして機能する位相差層を備える光学フィルムを備えた画像表示装置に関して、充分な視野角特性を確保した上で、構成、工程を簡略化し、さらに品質を向上することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、Aプレートとして機能する位相差層を備える光学フィルムに関して、充分な視野角特性を確保した上で、構成、工程を簡略化し、さらに品質を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
〔第1実施形態〕
〔画像表示装置及び光学フィルム〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る画像表示装置を示す断面図である。なお以下において、正面位相差Re、厚み位相差Rth、NZ係数においては、特段の言及がある場合を除いて、波長550nmによる値である。この画像表示装置1は、画像表示パネル2のパネル面(視聴者側面)に、粘着剤層等を使用して、反射防止フィルムによる光学フィルム3を貼り付けて配置する。これにより画像表示装置1は、この光学フィルム3により充分に反射防止を図るように構成される。画像表示パネル2は、例えば有機EL素子等による自発光素子による画像表示パネルであるものの、これに代えて、液晶表示パネル等の画像表示パネルを適用してもよい。
【0027】
光学フィルム3は、直線偏光板4と1/4波長板5との積層により構成され、これにより円偏光板として機能して外来光の反射を防止する。直線偏光板4は、ポリビニルアルコール(PVA)にヨウ素等を含浸させた後、延伸して直線偏光板としての光学的機能を果たす光学機能層が形成され、TAC(トリアセチルセルロース)等の透明フィルム材による基材により光学機能層を挟持して作製される。
【0028】
1/4波長板5は、転写法により後述する転写フィルムから、透過光に1/4波長分の面内位相差を付与する1/4波長位相差層7を配向層6と一体に直線偏光板4に貼り付けて配置される。なお1/4波長位相差層7のみ転写するようにしてもよい。ここで転写法とは、例えば基材の上に所望の層を形成する場合に、この層を直接当該基材上に形成するのでは無く、一旦、離型性の支持体上に剥離可能に該層を積層形成して転写体(転写フィルム)を作製した後、工程、需要等に応じて、該支持体上に形成した層を、最終的に該層を積層すべき基材(被転写基材)上に接着、積層し、その後、該支持体を剥離除去することにより、該基材上に所望の層を形成する方法である。
【0029】
1/4波長位相差層7は、重合性棒状液晶材料による1層の塗工層を硬化して作製された液晶材料による1層の位相差層であり、波長550nmにおける面内位相差Re(550)が50nm以上200nm以下であり、好ましくは110nm以上170nm以下であり、より好ましくは120nm以上150nm以下により作製される。
【0030】
また1/4波長位相差層7は、波長550nmにおける正面位相差Reと波長550nmにおける厚み位相差Rthとを用いてNZ=Rth/Re+0.5で表されるNZ係数が、1未満であり、より好ましくは0.2を超え0.8未満である。
【0031】
これにより実施形態においては、重合性棒状液晶材料による1層の塗工層を硬化して作製された液晶材料による1層の1/4波長位相差層7において、1/4波長分の面内位相差を付与するAプレートに、このAプレートに対応する正Cプレートを積層したと同様の位相差を透過光に付与することができ、これにより充分な視野角特性を確保することができる。またこの1/4波長位相差層7を1層の塗工膜により作製することにより、構成、工程を簡略化し、さらに欠陥の発生を低減して品質を向上することができる。
【0032】
またこのときNZ係数が、0.2を超え0.8未満である場合には、視野角特性を実用上充分に確保することができる。
【0033】
光学フィルム3において、配向層6は、1/4波長位相差層7に係る液晶化合物に対して水平配向の配向規制力を発現する配向層(水平配向層)であり、光配向層により構成される。なお光配向層は、例えば光2量化型の材料を使用して作製することができるものの、光2量化型の材料に限らず、種々の光配向層材料を広く適用することができる。ここで配向層6は、この配向層6との界面における位相差層7の液晶分子を厚み方向に斜めに傾けることが無いように、すなわちこの液晶分子のチルト角を0度又は90度に設定できることが可能な配向層が適用される。この実施形態において、配向層6は、水平配向層であることにより、配向層6には、配向層6との界面における位相差層7の液晶分子のチルト角を0度に設定する構成が適用され、これにより光配向層が適用される。
【0034】
1/4波長位相差層7は、Aプレートとして機能する位相差層の作製に使用する重合性棒状液晶材料と、正Cプレートとして機能する位相差層の作製に使用する重合性棒状液晶材料とを、一定の混合比で混合した混合物により塗工液を作製し、この塗工液を配向層6の上に塗工、乾燥、硬化して作製することにより、NZ係数が、1未満により作製される。
【0035】
ここでこのように単純にAプレートの液晶材料と正Cの液晶材料を混合して塗工、乾燥、硬化して作製される位相差層7において、このようにNZ係数が、1未満により作製される理由は、明確ではないものの、
図2に示すように、配向層6の近傍では配向層6の配向規制力により液晶化合物Aが水平配向してホモジニアス配向層が形成され、その結果、当該近郊の部位ではAプレートとして機能するAプレート層9が作製され、さらに残りの部位である、配向層6より遠ざかった部位では液晶化合物Bが垂直配向してホメオトロピック配向層が形成され、その結果、正Cプレートとして機能する正Cプレート層8が作製されることによるものと考えられる。
【0036】
これらにより光学フィルム3は、1層の塗工膜を硬化してNZ係数が1未満である位相差層7を作製できることにより、充分な視野角特性を確保した上で、構成、工程を簡略化し、さらに欠陥の発生を低減して品質を向上することができる。
【0037】
なおこのようなAプレート層9、正Cプレート層8の積層構造は、この実施形態のように、単純に2種類の液晶材料の混合物を塗工、乾燥、硬化して作製する外に、液晶分子の双極子モーメントを利用して作製することができ、例えば電界、磁界の印加により作製することも可能である。
【0038】
しかしながらAプレート層9に係る液晶分子を厚み方向に斜めに傾けて配向させたのでは、光学特性に偏りが発生する。具体的には、例えば液晶分子の長軸方向(進相軸方向である)を含む面内で入射角を変化させて面内位相差を計測した場合、面内位相差が極値(最小値又は最大値)となる入射角が0度より異なって、入射角の正側又は負側に偏ることになる。これにより反射防止フィルムでは、反射防止機能に異方性が発現することになり光学特性が劣化することになる。
【0039】
種々に検討した結果、このようなAプレート層9に係る液晶分子の斜めの傾きは、配向層との界面において、液晶材料が斜めに傾かないようにすることにより、防止できることが判った。これにより、具体的に、この界面における液晶分子のチルト角を0度又は90度に設定する構成の採用により、光学特性の偏よりを防止することができる。これによりこの実施形態では、配向層6に光配向層を適用して光学特性の偏りを防止する。
【0040】
より具体的に、位相差層7の進相軸を基準軸に設定して、この基準軸回りに位相差層7への入射角を変化させた位相差値Reの計測結果において、位相差値Reが極値となる入射角が10度以下であるように、好ましは5度以下であるようにし、かつ位相差層7の遅相軸を基準軸に設定して、この基準軸回りに位相差層7への入射角を変化させた位相差値Reの計測結果において、位相差値が極値となる入射角が10度以下であるようにして、好ましは5度以下であるのようにして、充分に光学特性の偏りを防止することができる。なお位相差層7の進相軸を基準軸に設定して、この基準軸回りに位相差層7への入射角を変化させた位相差値Reの計測結果は、位相差層7の遅相軸を含む位相差層の垂直面内で入射角を変化させた位相差値Reの計測結果である。また位相差層7の遅相軸を基準軸に設定して、この基準軸回りに位相差層7への入射角を変化させた位相差値Reの計測結果は、位相差層7の進相軸を含む位相差層の垂直面内で入射角を変化された位相差値Reの計測結果である。
【0041】
ここでAプレートに適用可能な重合性棒状液晶材料は、水平方向(配向層の面内方向である)の配向規制力により水平配向する液晶材料であって、分子内に重合性官能基を有する種々の棒状液晶化合物を適用することができる。またこの棒状液晶化合物は、屈折率異方性を有し、配向層6の配向規制力により規則的に配列することにより、所望の位相差性を付与する機能を有する。棒状化合物として、例えば、ネマチック相、スメクチック相等の液晶相を示す材料が挙げられるが、他の液晶相を示す液晶化合物と比較して規則的に配列させることが容易である点で、ネマチック相を示す棒状化合物を用いることがより好ましい。
【0042】
本実施形態において用いられる棒状化合物の具体例としては、例えば、下記式(1)〜(17)で表される化合物を例示でき、これらの化合物を単独で又は複数を混合し、重合させて使用することができる。
【0044】
これに対して正Cプレートに適用可能な重合性棒状液晶材料は、垂直方向の(配向層の厚み方向である)の配向規制力により垂直配向する液晶材料であって、分子内に重合性官能基を有する種々の棒状液晶化合物を適用することができる。
【0045】
具体的には、例えば、特開2015―191143号公報に開示の構成を適用することができる。より具体的には、メルク社製RMM28B、DIC社製UCL−018等を適用することができる。
【0046】
なおハイブリッドの特性を示す液晶材料(ハイブリッド配向液晶材料)による位相差層は、垂直配向膜近傍では、液晶材料が垂直方向に配向しており、垂直配向膜から遠ざかるに従って徐々に液晶材料が揃って水平方向に倒れる(寝る)特性を備える。これによりハイブリッドの特性を示す液晶材料による位相差層では、
図2について上述したと同様に液晶分子が配向しているようにも思われる。しかしながらハイブリッドの液晶材料による位相差層では、水平配向した液晶分子の長軸方向に角度を振って面内位相差を計測した場合に、面内位相差が極値を示す角度が、入射角0度の方向から偏った角度となり、面内位相差の特性が一方向に偏った特性となる。これによりハイブリッドの特性を示す液晶材料による位相差層では、充分な視野角特性を確保することが困難になる。
【0047】
しかしながらこの実施形態の位相差層7では、面内位相差が極値を示す角度を入射角0度の方向に設定して、この0度の方向を中心にして正及び負の入射角方向に角度を振って計測した面内位相差の特性を、対称性の高いものとすることができ、これによっても十分な視野角特性を確保することができる。
【0048】
なおこれらによりハイブリッド配向液晶材料による位相差層では、上述した位相差値が極値を取る入射角が10度より大きな角度となる。
【0049】
〔転写フィルム〕
図3は、光学フィルム3の作製に供する転写フィルムの構成を示す断面図である。転写フィルム10は、透明フィルム材による基材11に配向層6、1/4波長位相差層7を順次積層して構成される。このように転写フィルム10に1/4波長位相差層7を作製して転写法により転写することにより光学フィルム3の厚みを低減することができる。
【0050】
ここで基材11は、転写フィルムの製造に供する種々の透明フィルム材を適用することができ、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等を適用することができる。
【0051】
〔光学フィルムの製造方法〕
図4は、転写フィルム10の製造工程を示すフローチャートである。光学フィルム3は、この製造工程により作製された転写フィルム10の1/4波長位相差層7が紫外線硬化性樹脂等による接着剤により直線偏光板4に貼り合わされた後、基材11が剥離され、これにより転写法により1/4波長位相差層7が直線偏光板4に配置される。その後、粘着剤層、セパレータフィルム等が積層されて所望の大きさに切断されて光学フィルム3が作製される。画像表示装置1では、この光学フィルム3からセパレータフィルムを剥離して粘着剤層を露出させ、この粘着剤層により画像表示パネル2のパネル面に光学フィルム3が配置される。
【0052】
転写フィルム10においては、配向層作製工程SP2において、基材11に配向層6に係る塗工液を塗工した後、乾燥させ、その後、直線偏光の紫外線を照射し、これにより配向層6が作製される。
【0053】
転写フィルム10の製造工程は、続く液晶材料塗工工程SP3において、Aプレートとして機能する位相差層の作製に使用する重合性棒状液晶材料と、正Cプレートとして機能する位相差層の作製に使用する重合製棒状液晶材料とを、一定の混合比により混合した混合物により塗工液を作製し、この塗工液を配向層6の上に塗工して乾燥させる。続いて硬化工程SP4において、無偏光の紫外線の照射により1/4波長位相差層7に係る塗工膜を硬化させ、これにより1/4波長位相差層7を作製する。
【0054】
以上の構成によれば、透明基材上に、NZ係数が、1未満である重合性棒状液晶材料からなる1層の位相差層を設けることにより、1層の位相差層でAプレート及び正Cプレートの積層構造に係る特性を確保することができ、これにより充分な視野角特性を確保した上で、構成、工程を簡略化し、さらに品質を向上することができる。このとき位相差層の界面におけるチルト角が0度又は90度であることにより、液晶材料のプレチルトによる光学特性の方向依存性を充分に低減して、光学特性の偏りを防止することができる。
【0055】
また位相差層が、ホメオトロピック配向層とホモジニアス配向層とを備えることにより、より具体的構成により、Aプレートとして機能する位相差層を備える光学フィルムに関して、充分な視野角特性を確保した上で、構成、工程を簡略化し、さらに品質を向上することができる。
【0056】
また基材上に光配向層を作製し、この光配向層により重合性棒状液晶材料を配向させて位相差層を作製することにより、具体的に、光学特性の偏りを防止することができる。
【0057】
〔第2実施形態〕
図5は、
図1との対比により本発明の第2実施形態に係る画像表示装置を示す図である。この画像表示装置21は、光学フィルム3に代えて光学フィルム13が適用される。またこの光学フィルム13は、1/4波長位相差層7及び配向層6に代えて光学フィルム15が、直線偏光板4に積層される。この画像表示装置21は、これらの構成が異なる点を除いて、第1実施形態の画像表示装置1と同一に構成される。
【0058】
ここで光学フィルム15は、転写フィルム10と同様に、透明フィルム材による基材22に配向層6、1/4波長位相差層7を順次作製して形成され、この基材22に光学異方性の小さな例えばTACフィルム材が適用されて、この基材22が直線偏光板4に貼り合わされて配置される。これによりこの実施形態では、正Cプレート層8が画像表示パネル2側となるように構成される。
【0059】
この実施形態のように、正Cプレート層8が画像表示パネル2側となるように、基材と一体に位相差層を配置しても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0060】
〔第3実施形態〕
図6は、
図1との対比により本発明の第3実施形態に係る画像表示装置を示す図である。この画像表示装置31は、光学フィルム3に代えて光学フィルム33が適用される。またこの光学フィルム33は、1/4波長位相差層7に1/2波長位相差層34が積層されて1/4波長板5が構成され、直線偏光板4に積層される。この画像表示装置31は、これらの構成が異なる点を除いて、第1実施形態の画像表示装置1と同一に構成される。
【0061】
なおこれによりこの実施形態に係る光学フィルム33は、直線偏光板4に、順次1/2波長位相差層34、1/4波長位相差層7が転写法により積層されて作製されるものの、1/2波長位相差層34に1/4波長位相差層7を転写法により積層して1/2波長位相差層34、1/4波長位相差層7の積層体を作製した後、又は透明フィルム材による基材に1/4波長位相差層7、1/2波長位相差層34を順次作製してこれら1/4波長位相差層7、1/2波長位相差層34の積層体を作製した後、この積層体を転写法により直線偏光板に積層するようにしてもよい。また第1実施形態との対比により第2実施形態について上述したように、このような転写法の適用に代えて、1/2波長位相差層34、1/4波長位相差層7の作製に供した基材を一体に積層するようにしてもよい。
【0062】
ここでこの実施形態においては、この1/2波長位相差層34、1/4波長位相差層7の積層体で、直線偏光板4の透過光に1/4波長分の面内位相差を付与し、この透過光を円偏光により画像表示パネル2に向けて出射する。またこのとき1/2波長位相差層34、1/4波長位相差層7の積層体により1/4波長分の面内位相差を付与することにより、広い波長帯域で充分に反射防止を図ることができるように構成される。
【0063】
このためこの実施形態において、直線偏光板4側から光学フィルム33を正面視して、1/2波長位相差層34及び1/4波長位相差層7は、直線偏光板4の吸収軸に対して、1/2波長位相差層34及び1/4波長位相差層7の遅相軸が、それぞれ反時計回りにθ1、θ2の角度を成すように配置される。ここで1/2波長位相差層34及び1/4波長位相差層7の波長分散特性が同じであれば、θ1は、10度以上20度以下であり、より好ましくは13度以上17度以下であり、θ2は、70度以上80度以下であり、より好ましくは72度以上76度以下である。
【0064】
また1/2波長位相差層34は、液晶化合物層による1層の塗工膜を硬化して作製された液晶材料による1層の位相差層であり、波長550nmにおける面内位相差Re(550)が200nm以上350nm以下であり、より好ましくは210nm以上300nm以下であり、この実施形態では面内位相差Re(550)が波長550nmの約1/2である220nm以上280nm以下により作製される。
【0065】
1/2波長位相差層34は、1/4波長位相差層7と同様に作製して、NZ係数が1未満により、より好ましくは0.2を超え0.8未満であるように作製される。なおこれに代えて、1/2波長位相差層34は、従来のAプレート(NZ係数が1)として機能する液晶材料による位相差層と同一に構成してもよい。
【0066】
また1/4波長板5は、1/4波長位相差層7及び1/2波長位相差層34の積層構造で、1/4波長板の面内位相差に対応する厚み方向位相差値Rth(550)を確保するようにしてもよく、この場合、1/4波長位相差層7及び1/2波長位相差層34に正Cプレートとしての機能を分担させるようにしてもよく、例えば
図6の構成とは異なるものの、1/4波長位相差層を従来のAプレートとして機能する液晶材料による位相差層と同一に構成し、1/2波長位相差層34を、NZ係数が1未満により、より好ましくは0.2を超え0.8未満であるように作製してもよい。
【0067】
なおこのように1/4波長位相差層7、1/2波長位相差層34の積層構造により1/4波長板を構成する場合に、Aプレートの作製に使用する重合性棒状液晶材料と、正Cプレートの作製に使用する重合製棒状液晶材料とを混合して1/4波長位相差層7を作製するようにして、混合比の調整により1/4波長位相差層7をNZ係数が値0のネガティブAプレートとして機能するように構成すれば、1/2波長位相差層34を従来構成によるポジティブAプレートにより構成して、従来構成による1/4波長位相差層、1/2波長位相差層、正Cプレートの積層構造による光学フィルムと同程度の光学特性を確保して、充分に視野角特性を向上することができる。
【0068】
以上の構成によれば、1/2波長位相差層、1/4波長位相差層の積層構造により1/4波長板を構成することにより、広い波長帯域で充分な視野角特性を確保した上で、構成、工程を簡略化し、さらに品質を向上することができる。
【0069】
〔第4実施形態〕
図7は、本発明の第4実施形態に係る画像表示パネルを示す図である。この画像表示パネル41は、IPS(インプレーンスイッチング)方式又はFFS(フリンジフィールドスイッチング)方式による液晶表示パネルであり、IPS方式又はFFS方式に係る透明電極、配向層等を作製してなる透明基材により液晶材料を挟持して液晶セル42が作製される。この画像表示パネル41は、この液晶セル42の両面にそれぞれ直線偏光板43、44が配置され、一方の直線偏光板43の側にバックライト46が配置される。
【0070】
またこのバックライト46とは逆側には、直線偏光板44と液晶セル42との間に1/2波長板45が配置され、この1/2波長板による光学補償により、充分に透過光を遮光できるように構成される。この実施形態では、1/2波長板45に、第1実施形態又は第2実施形態について上述した1/4波長板の構成が、位相差層の厚みを1/2波長に対応する厚みに設定して適用される。
【0071】
この実施形態では、IPS方式、FFS方式に係る液晶表示パネルの光学補償に適用する場合であっても、Aプレートとして機能する位相差層を備える光学フィルムに関して、充分な視野角特性を確保した上で、構成、工程を簡略化し、さらに品質を向上することができる。
【0072】
〔第5実施形態〕
この実施形態では、例えば2軸延伸PETフィルム等の、水平配向規制力を備えた透明フィルム材を透明基材に適用し、配向層6を省略して、上述の実施形態に係る転写フィルム、光学フィルムを構成する。この実施形態では、この基材及び配向層に関する構成が異なる点を除いて、上述の実施形態と同一に構成される。
【0073】
これによりこの実施形態では、この透明フィルム材との界面におけるチルト角が0度となるようにして、NZ係数が1未満である位相差層が作製される。
【0074】
この実施形態のように、水平配向規制力を備えた透明フィルム材を基材に適用して配向層を省略するようにしても、第1〜第4実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0075】
〔第6実施形態〕
この実施形態では、水平方向に配向規制力を発現する水平配向層に代えて、垂直方向に配向規制力を発現する垂直配向層を配向層に適用する。この実施形態では、この配向層に関する構成が異なる点を除いて、上述の実施形態と同一に構成される。
【0076】
ここで垂直配向層は、Cプレートの作製に供する配向層を広く適用することができる。このように垂直配向層を適用する場合、この垂直配向層との界面において、位相差層の液晶材料はチルト角90度により配向し、これにより
図2の構成とは逆に、配向層側にホメオトロピック配向層が形成されて正Cプレート層が形成され、配向層より遠ざかった部位にホモジニアス配向層が形成されてAプレート層が形成されるものと考えられる。
【0077】
このように垂直配向層を適用しても、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0078】
〔第7実施形態〕
この実施形態では、例えば2軸延伸PETフィルム等の、垂直配向規制力を備えた透明フィルム材を透明基材に適用し、配向層6を省略して、上述の実施形態に係る転写フィルム、光学フィルムを構成する。この実施形態では、この基材及び配向層に関する構成が異なる点を除いて、上述の実施形態と同一に構成される。
【0079】
これによりこの実施形態では、この透明フィルム材との界面におけるチルト角が90度となるようにして、NZ係数が1未満である位相差層が作製される。
【0080】
この実施形態のように、垂直配向規制力を備えた透明フィルム材を基材に適用して配向層を省略するようにしても、第1〜第6実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0081】
〔他の実施形態〕
以上、本発明の実施に好適な具体的な構成を詳述したが、本発明は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述の実施形態を種々に組み合わせ、さらには上述の実施形態の構成を種々に変更することができる。
【0082】
すなわち上述の実施形態では、反射防止、光学補償に係る光学フィルムに本発明を適用する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、Aプレートとして機能する位相差層を備えた種々の光学フィルムに広く適用することができる。
【実施例】
【0083】
図8は、本発明の実施例の説明に供する図である。実施例1、2は、第1実施形態の転写フィルムに係る実施例であり、それぞれ基材11に2軸延伸PETフィルム及びガラス基板を適用して光配向層を設けたものである。また実施例3は、第2実施形態の光学フィルム15に係る実施例であり、基材22にTACフィルムを適用して光配向層を設けたものである。これら実施例1〜3における光配向層は、直線偏光による紫外線を光量30mJ/cm
2により照射して作製し、配向層との界面におけるチルト角は0度である。
【0084】
実施例4は、第5実施形態に係る実施例であり、基材に2軸延伸PETフィルムを適用して、この基材の配向規制力により液晶材料を水平配向させて位相差層を作製したものである。これによりこの実施例4では、基材との界面におけるチルト角は0度である。
【0085】
実施例5、6は、第6実施形態に係る実施例であり、それぞれ基材に2軸延伸PETフィルム、ガラス基板を適用して、垂直配向層を作製し、この垂直配向層の配向規制力により液晶材料を垂直配向させて位相差層を作製したものである。これによりこの実施例5、6では、垂直配向層との界面におけるチルト角は90度である。
【0086】
実施例7、8は、第7実施形態に係る実施例であり、垂直方向に配向規制力を発現するように延伸された透明フィルム材である延伸PETフィルム材を基材に適用した点を除いて、実施例4と同一に構成した。なおこれによりこの実施例7、8では、基材との界面におけるチルト角は90度である。
【0087】
比較例は、基材に2軸延伸PETフィルムを適用し、基材の上にポリイミド樹脂層を作製した後、ラビング処理し、これによりラビング処理による配向層を作製したものである。これにより比較例では、配向層との界面におけるチルト角は5度であった。なおこれらチルト角の計測は、作製したサンプルの断面を切削して薄膜による検査試料を作製し、この検査試料を偏光顕微鏡に設置し、偏光板クロスニコル下において、基材面を0度として断面の液晶の遅相軸を調べることにより実行した。
【0088】
なおこれら実施例1〜8、比較例においては、Aプレートとして機能する位相差層の作製に使用する重合性棒状液晶材料に上記棒状化合物に記載の(11)を適用し、正Cプレートとして機能する位相差層の作製に使用する重合製棒状液晶材料にRMM28B(メルク社製)を適用し、これらの液晶材料を混合して位相差層に係る塗工液を作製した。
【0089】
これら実施例1〜8、比較例において、位相差層の進相軸、遅相軸をそれぞれ基準軸(回転軸)に設定して、基準軸回りに位相差層への入射角を変化させて位相差値を計測し、それぞれ極値となる入射角を計測した。この計測には例えば王子計測機器社製KOBRA−WRを使用することができる。なおこの計測は、それぞれ3箇所で実行した。
【0090】
実施例1〜8では、実施例8を除いて、極値となる入射角が最大でも5度であり、これにより充分に光学特性の偏りが防止されているものの、比較例では、極値となる入射角が大きく、これにより光学特性に偏りが発生していることが判る。