特許第6756129号(P6756129)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6756129
(24)【登録日】2020年8月31日
(45)【発行日】2020年9月16日
(54)【発明の名称】ダンパ装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/134 20060101AFI20200907BHJP
   F16F 1/12 20060101ALI20200907BHJP
【FI】
   F16F15/134 D
   F16F15/134 A
   F16F1/12 N
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-59230(P2016-59230)
(22)【出願日】2016年3月23日
(65)【公開番号】特開2017-172692(P2017-172692A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2019年2月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100174137
【弁理士】
【氏名又は名称】酒谷 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】大住 智也
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 智洋
(72)【発明者】
【氏名】深谷 伸樹
(72)【発明者】
【氏名】林 大介
【審査官】 竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】 実開平05−045257(JP,U)
【文献】 特開2008−249007(JP,A)
【文献】 米国特許第05307710(US,A)
【文献】 国際公開第2011/070623(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/134
F16F 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押圧プレートと、
前記押圧プレートに対向するように配置された回転プレートと、
前記押圧プレートと前記回転プレートとを周方向において弾性的に連結し、前記押圧プレートと前記回転プレートの相対捩じれが発生した場合に撓みが発生する弾性部材と、
前記弾性部材の周方向の両端面に設けられた一対のシートと、
を備え、
前記シートは、押圧プレート側で周方向に突出する凸面を有し、
前記押圧プレートは、前記凸面に対応する凹面を有し、
前記押圧プレートは、前記シート側で周方向に突出する別なる凸面を有し、
前記シートは、前記別なる凸面に対応する別なる凹面を有し、
前記相対捩じれが発生していない場合には、一対の前記シートのそれぞれの凸面の外径側部分と前記押圧プレートの凹面の外径側部分とが面で接触しており、さらに一対の前記シートのそれぞれの別なる凹面の内径側部分と前記押圧プレートの別なる凸面の内径側部分とが面で接触しており、
前記シートの凸面の外径側部分は、前記シートの別なる凹面の内径側部分であり、
前記押圧プレートの凹面の外径側部分は、前記押圧プレートの別なる凸面の内径側部分である
ことを特徴とするダンパ装置。
【請求項2】
前記押圧プレートの凹面の外径側部分は、周方向において前記シート側に向かうほど径方向外側に位置するような形状を有する
ことを特徴とする請求項1に記載のダンパ装置。
【請求項3】
前記シートの凸面の外径側部分と前記押圧プレートの凹面の外径側部分とは、それぞれ、円弧に沿った曲面として形成され、
前記円弧の中心は、前記押圧プレートの回転中心に対して前記シート側にオフセットされている
ことを特徴とする請求項2に記載のダンパ装置。
【請求項4】
前記シートの凸面の外径側部分と前記押圧プレートの凹面の外径側部分とは、それぞれ、平面として形成され、
前記平面は、前記押圧プレートの回転円の接線方向に対して、前記シート側に向かうほど径方向外側に離れるように傾斜している
ことを特徴とする請求項2に記載のダンパ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラッチディスク等に利用されるダンパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、クラッチディスク等に利用される従来のダンパ装置が開示されている。このダンパ装置は、フランジ付きハブとフランジ付きハブのフランジに対して対向するようにフランジ付きハブのハブ周りに配置されたプレートとをスプリングを介して周方向において弾性的に連結したものであり、プレート側からの入力をスプリングの撓み収縮により緩衝させながらスプリングを介してフランジ付きハブ側に伝達している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3381396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来のダンパ装置では、回転数が高くなるほど、スプリングの撓み始め付近の回転振動吸収において、設計時とは異なる意図しないヒステリシストルクが発生するという問題がある。
【0005】
本件発明者らは、このような問題点に着目して鋭意研究を重ねた結果、スプリングの撓み始め付近の回転振動吸収では、フランジ付きハブのフランジがスプリングの端面のシートに対して押圧と離間を繰り返す際に、フランジとシートとの間で面摺動が発生し、この面摺動が意図しないヒステリシストルクを引き起こしていることを知見した。
【0006】
本発明は、以上のような知見に基づいて創案されたものである。本発明の目的は、意図しないヒステリシストルクの発生を抑制できるダンパ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるダンパ装置は、
押圧プレートと、
前記押圧プレートに対向するように配置された回転プレートと、
前記押圧プレートと前記回転プレートとを周方向において弾性的に連結し、前記押圧プレートと前記回転プレートの相対捩じれが発生した場合に撓みが発生する弾性部材と、
前記弾性部材の周方向の両端面に設けられた一対のシートと、
を備え、
前記シートは、押圧プレート側で周方向に突出する凸面を有し、
前記押圧プレートは、前記凸面に対応する凹面を有し、
前記相対捩じれが発生していない場合には、一対の前記シートのそれぞれの凸面の外径側部分と前記押圧プレートの凹面の外径側部分とが面で接触しており、
前記相対捩じれが発生している場合には、一方の前記シートの凸面の外径側部分と前記押圧プレートの凹面の外径側部分とが面で接触し、他方の前記シートの凸面の外径側部分と前記押圧プレートの凹面の外径側部分との間に隙間が形成されており、
前記相対捩じれの角度が大きくなるにつれて、前記隙間は大きくなる。
【0008】
本発明によれば、押圧プレートと回転プレートの相対捩じれが発生していない場合には、一対のシートのそれぞれの凸面の外径側部分と押圧プレートの凹面の外径側部分とが面で接触しているが、相対捩じれが発生している場合には、一方のシートの凸面の外径側部分と押圧プレートの凹面の外径側部分とが面で接触し、他方のシートの凸面の外径側部分と押圧プレートの凹面の外径側部分との間に隙間が形成されており、相対捩じれの角度が大きくなるにつれて、当該隙間が大きくなるため、押圧プレートがシートに対して押圧と離間を繰り返すような場合においても、シートの凸面の外径側部分と押圧プレートの凹面の外径側部分との間にて面摺動は発生しない。これにより、弾性部材の撓みを開始する時点において、意図しないヒステリシストルクの発生が抑制され得る。
【0009】
本発明によるダンパ装置において、前記押圧プレートの凹面の外径側部分は、周方向において前記シート側に向かうほど径方向外側に位置するような形状を有してもよい。
【0010】
本発明によるダンパ装置において、前記シートの凸面の外径側部分と前記押圧プレートの凹面の外径側部分とは、それぞれ、円弧に沿った曲面として形成され、前記円弧の中心は、前記押圧プレートの回転中心に対して前記シート側にオフセットされていてもよい。
【0011】
本発明によるダンパ装置において、前記シートの凸面の外径側部分と前記押圧プレートの凹面の外径側部分とは、それぞれ、平面として形成され、前記平面は、前記押圧プレートの回転円の接線方向に対して、前記シート側に向かうほど径方向外側に離れるように傾斜していてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ダンパ装置において、意図しないヒステリシストルクの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の一実施の形態によるダンパ装置の概略平面図である。
図2図2は、図1に示すダンパ装置をフランジ付きハブのフランジが位置する平面にて切断した断面の一部を拡大してシートとフランジの位置関係を示す図であって、フランジとディスクプレートの相対捩じれが発生していない場合の両端、および相対捩じれが発生している場合のフランジがシートを押圧している側を説明するための図である。
図3図3は、図1に示すダンパ装置をフランジ付きハブのフランジが位置する平面にて切断した断面の一部を拡大してシートとフランジの位置関係を示す図であって、フランジとディスクプレートの相対捩じれが発生している場合のフランジがシートを押圧していない側を説明するための図である。なお、図にはディスクプレートを示していないが、この場合はディスクプレートがシートと接触している。
図4図4は、図1に示すダンパ装置をディスクプレートが位置する平面にて切断した断面の一部を拡大してシート、フランジ、及びディスクプレートの位置関係を示す図であって、フランジとディスクプレートの相対捩じれが最大角度の場合のフランジがシートを押圧していない側を説明するための図である。
図5図5は、比較例としてのダンパ装置において、シートとフランジの位置関係を示す図であって、フランジとディスクプレートの相対捩じれが発生していない場合の両端、および相対捩じれが発生している場合のフランジがシートを押圧している側を説明するための図である。
図6図6は、比較例としてのダンパ装置において、シートとフランジの位置関係を示す図であって、フランジとディスクプレートの相対捩じれが発生している場合のフランジがシートを押圧していない側を説明するための図である。なお、図にはディスクプレートを示していないが、この場合はディスクプレートがシートと接触している。
図7図7は、ダンパ装置の捩じれ特性を示す図である。
図8図8は、比較例としてのダンパ装置のヒステリシストルクを説明するための図である。
図9図9は、本発明の一実施の形態によるダンパ装置のヒステリシストルクを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、添付の図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する場合の一例を示すものであって、本発明を以下に説明する具体的構成に限定するものではない。本発明の実施にあたっては、実施の形態に応じた具体的構成が適宜採用されてよい。
【0015】
図1は、本発明の一実施の形態によるダンパ装置の概略平面図である図2は、図1に示すダンパ装置をフランジ付きハブのフランジが位置する平面にて切断した断面の一部を拡大してシートとフランジの位置関係を示す図であって、フランジとディスクプレートの相対捩じれが発生していない場合の両端、および相対捩じれが発生している場合のフランジがシートを押圧している側を説明するための図である。図3は、図1に示すダンパ装置をフランジ付きハブのフランジが位置する平面にて切断した断面の一部を拡大してシートとフランジの位置関係を示す図であって、フランジとディスクプレートの相対捩じれが発生している場合のフランジがシートを押圧していない側を説明するための図である。図4は、図1に示すダンパ装置をディスクプレートが位置する平面にて切断した断面の一部を拡大してシート、フランジ、及びディスクプレートの位置関係を示す図であって、フランジとディスクプレートの相対捩じれが最大角度の場合のフランジがシートを押圧していない側を説明するための図である。
【0016】
図1に示すように、本実施の形態によるダンパ装置10は、フランジ付きハブ11と、フランジ付きハブ11のフランジ11Fに対向するように配置されたディスクプレート12と、フランジ付きハブ11とディスクプレート12とをディスク周方向において弾性的に連結し、フランジ11Fとディスクプレート12の相対捩じれが発生した場合に撓みが発生する弾性部材14と、弾性部材14のディスク周方向の両端面に設けられた一対のシート21、22と、を備えている。本実施の形態では、フランジ付きハブ11が特許請求の範囲の「押圧プレート」に対応し、ディスクプレート12が特許請求の範囲の「回転プレート」に対応している。
【0017】
本実施の形態によるダンパ装置10は、例えば自動車のエンジンと変速機との間に配設される摩擦クラッチのクラッチディスクの用途に用いられる。この場合、駆動軸としてのフライホイールとプレッシャープレートとの間に挟着され得るフェーシング51がリベット52により両側に固定された多数の波付板バネが、ディスクプレート12の外周部にリベットにより固定される。また、出力軸としての変速機インプットシャフトが、フランジ付きハブ11のハブにスプライン嵌合される。
【0018】
フランジ付きハブ11は、円筒形状のハブと、ハブの外周からディスク径方向に延在するフランジ11Fと、を有している。ディスクプレート12は、略円板形状を有しており、フランジ付きハブ11のハブ周りにフランジ11Fに対向するように配置されている。
【0019】
弾性部材14は、図示された例ではコイルスプリングであるが、弾性体であればゴム等であってもよい。以下の説明では、弾性部材14をスプリングと呼ぶことがある。
【0020】
図1に示すように、ディスクプレート12には、ディスク周方向に延在する複数の窓12Wが形成されており、フランジ付きハブ11のフランジ11Fには、窓12Wと対向する複数の切欠き11W(図2参照)が形成されている。この対向する窓12W及び切欠き11Wにて一つの組が構成され、この組となる窓12W及び切欠き11W内に組毎に弾性部材14が所定量撓み収縮された状態で配置されている。これにより、弾性部材14は、フランジ付きハブ11及びディスクプレート12に対して組み付けられる。
【0021】
図1及び図2に示すように、シート21、22は、弾性部材14のディスク周方向端面と窓12W及び切欠き11Wのディスク周方向端面との間に、弾性部材14の反力にて挟持された状態で配設されている。したがって、窓12Wのディスク周方向端面及び切欠き11Wのディスク周方向端面は、シート21、22を介して弾性部材14のディスク周方向端面と当接し得る。
【0022】
弾性部材14のディスク周方向両側に配設された一対のシート21、22の構造は互いに同様であり、以下では符号21のシートで代表して説明する。図2に示すように、シート21のうち弾性部材14のディスク周方向端面と当接する一方の側面(図示された例では右側側面)のディスク径方向中央部には、スプリング14のコイル内側に嵌挿されてスプリング14を保持するスプリング保持突起部21bが、当該一方の側面に対してディスク周方向に突出するように設けられている。また、当該一方の側面のディスク径方向外側には、スプリング14の外周を保持するシート外周保持部21cが、当該一方の側面に対してディスク周方向に突出するように設けられている。
【0023】
一方、シート21のうち他方の側面(図示された例では左側側面)のディスク径方向内側には、ディスク軸方向に延在する断面半円形状の凸面21aが、当該他方の側面に対してディスク周方向に突出するように一体に設けられている。
【0024】
本実施の形態では、図2に示すように、シート21の凸面21aのうちディスクプレート12の窓12Wのディスク周方向端面と対向する部分21a1は、フランジ付きハブ11の切欠き11Wのディスク周方向端面と対向する部分21a2に比べて、ディスク周方向に突出するように形成されている。
【0025】
また、図2に示すように、ディスクプレート12の窓12W及びフランジ付きハブ11の切欠き11Wのディスク周方向端面には、それぞれ、シート21の凸面21a1、21a2と対向するように凸面21a1、21a2と対応する断面形状である半円形状の凹面12a、11aが形成されている。シート21の凸面21a1または21a2は、ディスクプレート12の凹面12aまたはフランジ付きハブ11の凹面11a内に嵌挿され、これにより、シート21は、ディスクプレート12またはフランジ付きハブ11にディスク周方向及び径方向において保持され得る。
【0026】
より詳しくは、図示は省略するが、回転がない初期状態においては、一対のシート21のそれぞれの凸面21a1がディスクプレート12の凹面12aに当接されており、窓12Wのディスク周方向端面のうちディスク径方向外側部分は、一対のシート21の対向する側面に対して所定角度だけ傾斜している。そして、回転時に一対のシート21に対してディスク径方向外向きの遠心力が加わると、一対のシート21はそれぞれ、ディスクプレート12との接触部を中心に、ディスクプレート12に対して所定角度だけ回転し、これにより、一対のシート21のそれぞれの凸面21a1がディスクプレート12の凹面12aに嵌合して保持される。
【0027】
さらに、図2に示すように、フランジ付きハブ11のフランジ11Fとディスクプレート12の相対捩じれが発生していない場合には、一対のシート21のそれぞれの凸面21a2の外径側部分(すなわち法線が径方向外向き成分を有する部分)が、フランジ11Fの凹面11aの外径側部分(すなわち法線が径方向内向き成分を有する部分)に面で接触するようになっている。これにより、フランジ11Fによる一対のシート21の確実な押圧及び保持が可能となる。
【0028】
また、本実施の形態では、図2及び図3に示すように、フランジ11Fの凹面11aの外径側部分は、周方向においてシート21側(図示された例では右側)に向かうほど径方向外側に位置するような形状を有している。
【0029】
具体的には、例えば、図2に示すように、シート21の凸面21a2の外径側部分とフランジ11Fの凹面11aの外径側部分とは、それぞれ、円弧に沿った曲面として形成されており、この円弧の中心Bは、フランジ付きハブ11の回転中心Aに対して予め定められた距離Dだけシート21側にオフセットされている。
【0030】
そのため、フランジ付きハブ11のフランジ11Fとディスクプレート12の相対捩じれが発生している場合には、図2に示すように、一方のシート22の凸面21a2の外径側部分とフランジ11Fの凹面11aの外径側部分とが面で接触しており、図3に示すように、他方のシート21の凸面21a2の外径側部分とフランジ11Fの凹面11aの外径側部分との間に隙間31が形成されている。そして、図4に示すように、この隙間31は、相対捩じれの角度が大きくなるにつれて大きくなる。したがって、フランジ付きハブ11のフランジ11Fがシート21に対して押圧と離間を繰り返す際に、シート21の凸面21a2の外径側部分とフランジ11Fの凹面11aの外径側部分との間にて面摺動が発生しない。
【0031】
次に、このような構成からなるダンパ装置10の動作について説明する。
クラッチの接続時、エンジンからのトルクは、フェーシング51及び波付板バネを介してディスクプレート12に入力され、ディスクプレート12から弾性部材14を介してフランジ付きハブ11に伝達され、フランジ付きハブ11から変速機へと出力される。この時、フランジ付きハブ11とディスクプレート12とが入力されたトルク値に応じて弾性部材14を撓み収縮させながら、図7に示される捩じれ特性にて相対捩じれ回転し、これにより、ディスクプレート12からフランジ付きハブ11へのトルク伝達に緩衝作用が働く。
【0032】
なお、図示は省略するが、ダンパ装置10には、それ自体は公知のヒステリシス機構が設けられており、フランジ付きハブ11とディスクプレート12とが相対捩じれ回転する際の捩じれ特性にヒステリシスを持たせ、ディスクプレート12からフランジ付きハブ11へのトルク伝達に減衰作用を働かせている。ヒステリシス機構としては、例えば特許第3381396号公報の段落0013に記載されたような構成を採用することができる。
【0033】
本実施の形態では、図2に示すように、ダンパ装置10に回転が加わると、一対のシート21は、ディスク径方向外向きの遠心力を受けることで、ディスクプレート12との接触部を中心に所定角度だけ回転する。これにより、弾性部材14の撓み収縮による捩じれ特性の前に、一対のシート21の回転により捩じれ特性が得られる。
【0034】
図2に示すように、一対のシート21がディスクプレート12に対して所定角度だけ回転することで、一対のシート21のそれぞれの凸面21a1はディスクプレート12の凹面12aに嵌合する。これにより、一対のシート21の確実な保持が可能となる。
【0035】
次いで、図2に示すように、フランジ付きハブ11のフランジ11Fとディスクプレート12の相対捩じれが発生していない場合には、一対のシート21のそれぞれの凸面21a2の外径側部分は、フランジ11Fの凹面11aの外径側部分に面で接触する。これにより、フランジ11Fによるシート21の確実な押圧及び保持が可能となる。
【0036】
ところで、比較例として、図5及び図6に示すように、シート121の凸面121a2の外径側部分とフランジ111Fの凹面111aの外径側部分とがそれぞれ、フランジ111Fの回転中心Aを中心とする円弧に沿った曲面として形成されているダンパ装置を考える。この比較例のダンパ装置では、フランジ111Fがシート121に対して押圧と離間を繰り返す際に、フランジ111Fの凹面111aの外径側部分とシート121の凸面121aの外径側部分とが接触し続けるため、この接触部分にて面摺動が発生する。ダンパ装置の回転数が高くなるほど、シート121に加わる遠心力が大きくなるため、面摺動も大きくなる。この面摺動の影響により、スプリング14の撓み始め付近の回転振動吸収(図7における符号Eを付した一点鎖線で囲われた領域に対応する)において、図8に示すように、設計時とは異なる意図しないヒステリシストルクが発生することになる。
【0037】
一方、本実施の形態では、フランジ付きハブ11のフランジ11Fとディスクプレート12の相対捩じれが発生する場合には、図2に示すように、一方のシート22の凸面21a2の外径側部分とフランジ11Fの凹面11aの外径側部分とが面で接触するが、図3に示すように、他方のシート21の凸面21a2の外径側部分とフランジ11Fの凹面11aの外径側部分との間に隙間31が形成される。そして、図4に示すように、この隙間31は、相対捩じれの角度が大きくなるにつれて大きくなる。従って、フランジ付きハブ11がシート21に対して押圧と離間を繰り返しても、シート21の凸面21a2の外径側部分とフランジ11Fの凹面11aの外径側部分との間にて面摺動が発生することはなく、図9に示すように、スプリング14の撓み始め付近の回転振動吸収において、設計時と同様のヒステリシストルクが実現され得る。
【0038】
以上のように、本実施の形態によれば、フランジ11Fとディスクプレート12の相対捩じれが発生している場合には、一対のシート21のそれぞれの凸面21a2の外径側部分とフランジ11Fの凹面11aの外径側部分とが面で接触しているが、相対捩じれが発生していない場合には、一方のシート21の凸面21aの外径側部分とフランジ11Fの凹面11aの外径側部分とが面で接触し、他方のシート21の凸面21a2の外径側部分とフランジ11Fの凹面11aの外径側部分との間に隙間31が形成されており、相対捩じれの角度が大きくなるにつれて、隙間31が大きくなるため、フランジ11Fがシート21に対して押圧と離間を繰り返すような場合においても、シート21の凸面21a2の外径側部分とフランジ11Fの凹面11aの外径側部分との間にて面摺動が発生しない。これにより、弾性部材14の撓みを開始する時点において、意図しないヒステリシストルクの発生が抑制され得る。
【0039】
なお、上述した実施の形態では、図2に示すように、シート21の凸面21a2の外径側部分とフランジ11Fの凹面11aの外径側部分とが、それぞれ、円弧に沿った曲面として形成されており、円弧の中心Bが、フランジ付きハブ11の回転中心Aに対してシート21側に所定距離Dだけオフセットされていたが、フランジ11Fの凹面11aの外径側部分が、周方向においてシート21側に向かうほど径方向外側に位置するような形状であれば、このような態様に限定されない。
【0040】
具体的には、例えば、シート21の凸面21a2の外径側部分とフランジ11Fの凹面11aの外径側部分とが、それぞれ、平面として形成されており、この平面が、フランジ11Fの回転円の接線方向に対して、シート21側に向かうほど径方向外側に離れるように傾斜していてもよい。このような態様であっても、フランジ11Fがシート21を押圧して弾性部材14が撓んでいる場合には、シート21の凸面21a2の外径側部分とフランジ11Fの凹面11aの外径側部分とが面で接触しているが、フランジ11Fがシート21から離間して弾性部材14が撓んでいない場合には、シート21の凸面21a2の外径側部分とフランジ11Fの凹面11aの外径側部分との間に隙間31が形成されており、この隙間31は、フランジ11Fとシート21とのなす角度が大きくなるにつれて大きくなる。したがって、上述した実施の形態と同様の作用効果が得られる。
【0041】
また、上述した実施の形態では、フランジ付きハブ11が特許請求の範囲の「押圧プレート」に対応し、ディスクプレート12が特許請求の範囲の「回転プレート」に対応していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、ディスクプレート12が特許請求の範囲の「押圧プレート」に対応し、フランジ付きハブ11が特許請求の範囲の「回転プレート」に対応してもよい。この場合、フランジ付きハブ11に入力されるトルクが、弾性部材14の撓み収縮により緩衝されながら弾性部材14を介してディスクプレート12に伝達されるが、このような態様においても上述した実施の形態と同様の作用効果が得られる。
【符号の説明】
【0042】
10 ダンパ装置
11 フランジ付きハブ(押圧プレート)
11F フランジ
12 ディスクプレート(回転プレート)
14 弾性部材
21、22 シート
21a 凸部
21a1 凸部のうちディスクプレートのディスク周方向端面と対向する部分
22a2 凸部のうちフランジ付きハブのディスク周方向端面と対向する部分
21b スプリング保持突起部
21c シート外周保持部
31 隙間
51 フェーシング
52 リベット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9