特許第6756169号(P6756169)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6756169携帯端末、券売機、券売システム、誘導方法、および誘導プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6756169
(24)【登録日】2020年8月31日
(45)【発行日】2020年9月16日
(54)【発明の名称】携帯端末、券売機、券売システム、誘導方法、および誘導プログラム
(51)【国際特許分類】
   G07B 1/00 20060101AFI20200907BHJP
   H04W 84/10 20090101ALI20200907BHJP
   G06Q 50/30 20120101ALI20200907BHJP
【FI】
   G07B1/00 A
   H04W84/10 110
   G06Q50/30
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-136726(P2016-136726)
(22)【出願日】2016年7月11日
(65)【公開番号】特開2018-10342(P2018-10342A)
(43)【公開日】2018年1月18日
【審査請求日】2019年5月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】特許業務法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】壷内 隆司
(72)【発明者】
【氏名】中村 太
【審査官】 小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−324255(JP,A)
【文献】 特開2002−260018(JP,A)
【文献】 特開2013−152650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07B 1/00
G06Q 50/30
H04W 84/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
券売機が繰り返し送信している予め定めた基準レベルの誘導電波を受信する誘導電波受信部と、
前記券売機に対して乗車券の発券要求を送信する送信部と、
前記誘導電波受信部で受信している前記誘導電波の受信レベルが設定レベルよりも小さければ、前記送信部における前記発券要求の送信を禁止する制御部と、
前記誘導電波受信部で受信している前記誘導電波の受信レベルの大きさに応じて、前記券売機に誘導する案内を行う案内部と、を備えた携帯端末。
【請求項2】
前記制御部は、前記誘導電波受信部で受信している前記誘導電波の受信レベルが設定レベルよりも大きければ、前記送信部における前記発券要求の送信を許可する、請求項1に記載の携帯端末。
【請求項3】
前記送信部は、言語の種類を示す言語情報を含む前記発券要求を送信する、請求項1、または2に記載の携帯端末。
【請求項4】
前記送信部は、降車駅を示す降車駅情報を含む前記発券要求を送信する、請求項1〜のいずれかに記載の携帯端末。
【請求項5】
前記送信部は、乗車券の発券にともなう取引金額の決済方法を示す決済情報を含む前記発券要求を送信する、請求項1〜のいずれかに記載の携帯端末。
【請求項6】
請求項1〜のいずれかに記載の携帯端末から送信されてきた、乗車券の発券要求を受信する無線通信部と、
予め定めた基準レベルの前記誘導電波を繰り返し送信する誘導電波送信部と、
前記無線通信部で受信した乗車券の発券要求に応じた発券処理を制御する制御部と、を備えた券売機。
【請求項7】
請求項1〜のいずれかに記載の携帯端末と、
請求項に記載の券売機と、を備えた券売システム。
【請求項8】
券売機が繰り返し送信している予め定めた基準レベルの誘導電波を誘導電波受信部で受信する誘導電波受信ステップと、
送信部が前記券売機に対して乗車券の発券要求を送信する送信ステップと、
前記誘導電波受信部で受信している前記誘導電波の受信レベルが設定レベルよりも小さければ、前記送信部における前記発券要求の送信を禁止する送信制限ステップと、
前記誘導電波受信部で受信している前記誘導電波の受信レベルの大きさに応じて、前記券売機に誘導する案内を行う案内ステップと、をコンピュータが実行する誘導方法。
【請求項9】
券売機が繰り返し送信している予め定めた基準レベルの誘導電波を誘導電波受信部で受信する誘導電波受信ステップと、
送信部が前記券売機に対して乗車券の発券要求を送信する送信ステップと、
前記誘導電波受信部で受信している前記誘導電波の受信レベルが設定レベルよりも小さければ、前記送信部における前記発券要求の送信を禁止する送信制限ステップと、
前記誘導電波受信部で受信している前記誘導電波の受信レベルの大きさに応じて、前記券売機に誘導する案内を行う案内ステップと、をコンピュータに実行させる誘導プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、駅等においてキップ等の乗車券を発券する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道等の公共交通機関の駅には、利用者に対してキップ等の乗車券を販売する券売機が設置されている。券売機の近くには、鉄道の利用にかかる運賃を表記した運賃表示板が取り付けられている。運賃表示板は、例えば鉄道網の路線図上に示した駅毎に、自駅からの運賃を表記している。利用者は、券売機で乗車券を購入するとき、運賃表示板によって降車駅までの運賃を確認する。
【0003】
路線網が複雑である地域では、利用者が路線図に表記されている降車駅を見つけるのに時間がかかることがある。その結果、利用者が乗車券を購入するのに要する時間が長くなり、券売機の処理効率を低下させる。
【0004】
また、降車駅を含む乗車券の購入情報を携帯端末に事前に登録しておき、この携帯端末から購入情報を券売機に入力することによって、券売機で入力した購入情報に応じた乗車券が購入できるシステムが種々提案されている(特許文献1〜4等参照)。特許文献1は、乗車券の購入情報を示す2次元バーコードを携帯端末の表示部に表示し、この2次元バーコードを券売機に読み取らせる構成である。特許文献2〜4は、乗車券の購入情報を携帯端末から券売機に無線で送信する構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】2013−152650号公報
【特許文献2】2002− 49939号公報
【特許文献3】2007−241387号公報
【特許文献4】2002−288694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1〜4等は、利用者が券売機で行う乗車券の購入にかかる操作を簡単にする構成であって、利用者が乗車券の購入にかかる操作を無駄なく、スムーズに行えるようにすることまで考慮していない。すなわち、特許文献1〜4等は、利用者による携帯端末の無駄な操作を抑制するものではなかった。このため、利用者が乗車券の購入にかかる操作に煩わしさを感じることがあった。
【0007】
この発明の目的は、乗車券を購入する利用者が煩わしさを感じるのを抑制する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上記目的を達するため、以下のように構成している。
【0009】
携帯端末は、誘導電波受信部において、券売機が繰り返し送信している予め定めた基準レベルの誘導電波を受信する。また、送信部が、券売機に対して乗車券の発券要求を送信する。さらに、制御部は、誘導電波受信部で受信している誘導電波の受信レベルが設定レベルよりも小さければ、送信部における発券要求の送信を禁止する。
【0010】
なお、制御部は、誘導電波受信部で受信している誘導電波の受信レベルが設定レベルよりも大きければ、送信部における発券要求の送信を許可する構成にすればよい。
【0011】
この設定レベルは、券売機(誘導電波の送信アンテナ)との相対的な距離が数十cm(例えば、20〜50cm程度)であるときの誘導電波の受信レベルに設定すればよい。このように設定すれば、携帯端末を所持している利用者は、券売機に数十cmまで接近しないと、券売機に対して乗車券の発券要求を送信することができない。したがって、利用者は、券売機に数十cmまで接近していないときに、乗車券の発券要求を送信する無駄な操作を行うのを防止できる。これにより、利用者が煩わしさを感じるのを抑制できる。
【0012】
また、携帯端末は、誘導電波受信部で受信している前記誘導電波の受信レベルの大きさに応じて、前記券売機に誘導する案内を行う案内部を備える。携帯端末は、誘導電波受信部で受信している誘導電波の受信レベルが第1のレベルよりも小さいときには、利用者に券売機に近づくことを促す案内を行う。これにより、利用者を券売機までスムーズに移動させることができる。
【0013】
また、送信部が送信する発券要求に、言語の種類を示す言語情報、降車駅を示す降車駅情報、乗車券の発券にともなう取引金額の決済方法を示す決済情報等を含ませてもよい。
【0014】
また、この発明にかかる券売機は、無線通信部が、携帯端末から送信されてきた、乗車券の発券要求を受信する。誘導電波送信部が、予め定めた基準レベルの誘導電波を繰り返し送信する。そして、制御部が、無線通信部で受信した乗車券の発券要求に応じた発券処理を制御する。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、券売機で乗車券を購入する利用者が煩わしさを感じるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】券売システムを示す概略図である。
図2】券売機の主要部の構成を示すブロック図である。
図3】券売機の外観を示す概略図である。
図4】携帯端末の主要部の構成を示すブロック図である。
図5図5(A)は、携帯端末を所持している利用者が券売機に近づく状態を示した模式図であり、図5(B)は、携帯端末における誘導電波の受信強度を示す図であり、図5(C)は、券売機における誘導電波の送信強度を示す図である。
図6】券売機の動作を示すフローチャートである。
図7】携帯端末の動作を示すフローチャートである。
図8】第1の誘導メッセージを表示している携帯端末の表示画面例を示す図である。
図9】第2の誘導メッセージを表示している携帯端末の表示画面例を示す図である。
図10】第3の誘導メッセージを表示している携帯端末の表示画面例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施形態である券売システムについて説明する。
【0018】
図1は、券売システムを示す概略図である。この券売システムは、券売機1と、携帯端末2とを備えている。券売機1は、駅の改札口近くに設けられた乗車券売り場に設置されている。乗車券売り場に設置されている券売機1の台数は、1台であってもよいし、複数台であってもよい。図1では、複数台の券売機1が並べて設置されている乗車券売り場を例示している。
【0019】
携帯端末2は、利用者が所持する、スマートフォンや携帯電話である。この携帯端末2には、この発明にかかる誘導プログラムがインストールされている。携帯端末2の制御部21が、この発明にかかる誘導プログラムを実行するコンピュータを有する。また、この制御部21が備えるコンピュータが、この発明にかかる誘導方法を実行する。
【0020】
図2は、券売機の主要部の構成を示すブロック図である。図3は、券売機の外観を示す概略図である。券売機1は、制御部11と、表示部12と、操作部13と、発券部14と、貨幣処理部15と、カード処理部16と、誘導電波送信部17と、無線通信部18と、通信部19と、を備えている。この券売機1は、キップ等の乗車券を発券する。券売機1は、乗車券として使用できるICカードに対するチャージ(入金)等の公知の処理も行える。
【0021】
制御部11は、券売機1本体が備える各部を制御する。
【0022】
表示部12は、本体正面に設けた表示器12aを有し、この表示器12aにおける画面表示を制御する。表示部12は、表示器12aにおける画面表示を、日本語、英語、中国語、ドイツ語等の複数の言語の中から、指定された言語で行える。
【0023】
操作部13は、表示器12aの画面上に貼付したタッチパネル13aや、テンキーを有するキー操作部13b等の入力デバイスを有する。操作部13は、入力デバイスにおける利用者の入力操作を検出し、これを制御部11に通知する。
【0024】
発券部14は、乗車券を発券する。券売機1は、発券口14aを本体正面に設けている。発券部14は、利用者に対して発券する乗車券を発券口14aに放出する。
【0025】
貨幣処理部15は、硬貨、および紙幣を処理する。具体的には、貨幣処理部15は、乗車券の発券等にかかる取引金額の精算に用いる硬貨を受け付けるとともに、利用者に対して釣銭硬貨の放出を行う硬貨処理部と、乗車券の発券等にかかる取引金額の精算に用いる紙幣を受け付けるとともに、利用者に対して釣銭紙幣の放出を行う紙幣処理部と、を備える。券売機1は、硬貨投入口15a、釣銭硬貨受皿15b、紙幣投入口15c、および紙幣放出口15dを本体正面に設けている。硬貨投入口15aは、複数枚(2〜3枚程度)の硬貨が重なった状態であっても、券売機1本体に投入できる形状である。貨幣処理部15は、利用者が投入した投入硬貨や、利用者に対して釣銭として放出する釣銭硬貨について、金種や真偽を識別する硬貨識別部を有している。また、貨幣処理部15は、紙幣投入口15cにおいて利用者が投入した投入紙幣や、紙幣放出口15dにおいて利用者に放出する釣銭紙幣について、金種や真偽を識別する紙幣識別部を有している。
【0026】
カード処理部16は、乗車券として利用できる非接触式ICカードや、クレジットカード等の決済カードを処理する。券売機1は、カード挿入/放出口16aを本体正面に設けている。カード処理部16は、カード挿入/放出口16aにおいて挿入された非接触式ICカードのICに対してカードデータの読み取りやカードデータの書き込みを行う機能を有している。また、カード処理部16は、カード挿入/放出口16aにおいて挿入された接触式ICカードのICに対してカードデータの読み取りやカードデータの書き込みを行う機能を有している。さらには、カード処理部16は、カード挿入/放出口16aにおいて挿入された磁気カードの磁気ストライプに対してカードデータの読み取りやカードデータの書き込みを行う機能を有している。これらの機能を実現する構成については、公知であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0027】
誘導電波送信部17は、予め定めた基準レベルの誘導電波を数十msec周期(例えば、10〜30msec周期)で繰り返し送信する。誘導電波送信部17は、アンテナ17aを本体正面に設けている。アンテナ17aを設けている領域(以下、端末接近領域と言う。)は、利用者が簡単に認識できるように、「端末接近領域」と記載してあってもよいし、色等を異ならせることによって周辺の領域と区別してあってもよい。
【0028】
無線通信部18は、携帯端末2との間における無線通信を行う。無線通信部18は、誘導電波送信部17のアンテナ17aを共用する構成であってもよいし、誘導電波送信部17のアンテナ17aとは別に設けてもよい。また、誘導電波送信部17および、無線通信部18は、1つの無線通信部で構成してもよい。誘導電波送信部17および、無線通信部18は、通信エリアが数m(5〜10m程度)確保できればよい。
【0029】
通信部19は、ネットワークを介して接続される、図示していない自動改札機や駅サーバ等の他の種類の駅務機器や、他の券売機1との間における通信を行う。また、通信部19は、乗車券の発券にともなう運賃をクレジットカード等でカード決済するときに、直接、または駅サーバを介してカード会社等との間で取引の認証を行う。
【0030】
図4は、携帯端末の主要部の構成を示すブロック図である。携帯端末2は、制御部21と、表示部22と、操作部23と、通信部24と、誘導電波受信部25と、無線通信部26とを備えている。制御部21は、携帯端末2本体各部の動作を制御する。表示部22は、携帯端末2本体に設けた表示器の画面表示を制御する。表示部22が、この発明で言う案内部に相当する。操作部23は、表示器の画面上に貼り付けたタッチパネルを有し、タッチパネル上におけるユーザの操作を検知する。通信部24は、携帯電話網を介した電話通信や、インタネット上のサーバ等とのデータ通信等を行う。
【0031】
誘導電波受信部25は、券売機1が送信している誘導電波を受信するとともに、誘導電波の受信強度を検出する。無線通信部26は、券売機1の無線通信部18との間で無線通信を行う。誘導電波受信部25および、無線通信部26のアンテナは共通であってもよいし、個別に設けてもよい。また、誘導電波受信部25および、無線通信部26は、1つの無線通信部で構成してもよい。誘導電波受信部25および、無線通信部26は、券売機1の無線通信部18と同様に通信エリアが数m(5〜10m程度)確保できればよい。無線通信部26が、この発明で言う送信部に相当する。
【0032】
ここで、券売機1と、携帯端末2との距離と、携帯端末2における誘導電波の受信強度との関係について説明する。図5(A)は、携帯端末を所持している利用者が券売機に近づく状態を示した模式図であり、図5(B)は、携帯端末における誘導電波の受信強度を示す図であり、図5(C)は、券売機における誘導電波の送信強度を示す図である。
【0033】
図5(C)に示すように、券売機1は、誘導電波送信部17において、基準レベルの誘導電波を一定時間間隔(例えば、10〜30msec周期)で繰り返し送出する。この誘導電波には、券売機1を識別する券売機IDが乗せられている。
【0034】
図5(A)、(B)に示すように、携帯端末2を所持している利用者が券売機1に近づくにつれて(携帯端末2が誘導電波送信部17のアンテナ17aに近づくにつれて、)、この携帯端末2の誘導電波受信部25で受信される誘導電波の受信強度が大きくなる。携帯端末2は、誘導電波受信部25で受信している誘導電波の受信強度が第1の閾値th1を越えると、この携帯端末2を所持している利用者を券売機1に誘導する案内を行う。言い換えれば、携帯端末2は、誘導電波受信部25で受信している誘導電波の受信強度が第1の閾値th1を越えていなければ、この携帯端末2を所持している利用者を券売機1に誘導する案内を行わない。第1の閾値th1は、携帯端末2と誘導電波送信部17のアンテナ17aとの距離が5m程度であるときに、誘導電波受信部25で受信される誘導電波の受信強度である。
【0035】
また、携帯端末2は、誘導電波受信部25で受信している誘導電波の受信強度が第2の閾値th2(第1の閾値th1<第2の閾値th2)を越えると、この携帯端末2を券売機1の端末接近領域に近づけることを案内する。第2の閾値th2は、携帯端末2と誘導電波送信部17のアンテナ17aとの距離が1m程度であるときに、誘導電波受信部25で受信される誘導電波の受信強度である。
【0036】
さらに、携帯端末2は、誘導電波受信部25で受信している誘導電波の受信強度が第3の閾値th3(第2の閾値th2<第3の閾値th3)を越えると、券売機1に対する乗車券購入情報の送信を許可する。言い換えれば、携帯端末2は、誘導電波受信部25で受信している誘導電波の受信強度が第3の閾値th3を越えていなければ、券売機1に対する乗車券購入情報の送信を禁止する。第3の閾値th3は、携帯端末2と誘導電波送信部17のアンテナ17aとの距離が30cm程度であるときに、誘導電波受信部25で受信される誘導電波の受信強度である。この第3の閾値th3が、この発明で言う設定レベルである。
【0037】
また、携帯端末2は、乗車券購入情報を事前に登録し、制御部21のメモリ(不図示)に記憶させておくことができる。この乗車券購入情報には、使用言語(日本語、英語、中国語、ドイツ語等)、降車駅(東京駅、秋葉原駅、有楽町駅、神田駅等)、券種(キップ、往復券等)、発券枚数(大人の枚数、および子供の枚数)、決済方法(現金、SFカード、クレジットカード等)等の項目が含まれている。利用者は、携帯端末2で所定の操作を行うことで、これらの項目の内容を事前に登録することができる。また、携帯端末2は、表示器における表示が指定した言語で行える構成である。
【0038】
以下、この券売システムにおける券売機1、および携帯端末2の動作について説明する。図6は、券売機の動作を示すフローチャートである。図7は、携帯端末の動作を示すフローチャートである。券売機1は、図6に示す処理を稼動時に常時実行する。携帯端末2は、図7に示す処理を常時実行する構成であってもよいし、利用者によって所定の操作が行われたタイミングで実行する構成であってもよい。
【0039】
券売機1は、図5(C)に示したように、誘導電波送信部17において、基準レベルの誘導電波を一定時間間隔で繰り返し送出している。券売機1は、図6に示すように、無線通信部18において携帯端末2から送信されてきた接続要求を受信するか、操作部13において利用者による発券操作が行われるのを待つ(s1、s2)。券売機1は、利用者が操作部13において発券操作を行うと、この発券操作に応じて乗車券を発券する発券処理を行い(s9)、s1に戻る。s9における発券処理は、公知の券売機と同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0040】
携帯端末2は、図7に示すように、誘導電波受信部25で受信した誘導電波の受信強度を計測する(s21)。携帯端末2は、受信した誘導電波の受信強度が第1の閾値th1未満であるかどうか判定する(s22)。携帯端末2は、受信した誘導電波の受信強度が第1の閾値th1未満であれば、s21に戻る。上述したように、第1の閾値th1は、携帯端末2と誘導電波送信部17のアンテナ17aとの距離が5m程度であるときに、誘導電波受信部25で受信される誘導電波の受信強度である。
【0041】
したがって、携帯端末2は、券売機1から比較的離れていると(5mを越えて離れていると、)、s21、s22に処理を繰り返す。また、携帯端末2は、処理負荷を低減するため、この時点では、受信した誘導電波に乗せられている券売機1の識別コードを取得する処理を行わない構成にするのが好ましい。
【0042】
なお、携帯端末2は、この時点では、後述する発券要求の送信を禁止している。
【0043】
携帯端末2は、誘導電波の受信強度が第1の閾値th1未満でなければ、誘導電波の受信強度が第2の閾値th2未満であるかどうかを判定する(s23)。携帯端末2は、第2の閾値th2未満であれば、すなわち誘導電波の受信強度が第1の閾値th1以上であり、且つ第2の閾値th2未満であると、表示部22が第1の誘導メッセージを表示器に表示し(s24)、s21に戻る。上述したように、第2の閾値th2は、携帯端末2と誘導電波送信部17のアンテナ17aとの距離が1m程度であるときに、誘導電波受信部25で受信される誘導電波の受信強度である。すなわち、携帯端末2は、誘導電波送信部17のアンテナ17aとの距離が1m〜5m程度であるとき、表示部22がs24で第1の誘導メッセージを表示器に表示する。
【0044】
携帯端末2は、券売機1にある程度近づいていると(1m〜5mの範囲に位置していると、)、s21〜s24の処理を繰り返し、表示部22が第1の誘導メッセージを表示器に表示しつづける。
【0045】
図8は、第1の誘導メッセージを表示している携帯端末の表示器の画面例を示す図である。図8に示すように、携帯端末2の表示器には、第1の誘導メッセージと、乗車券購入情報とが表示されている。第1の誘導メッセージは、利用者に対して券売機1に近づくことを促すメッセージであるが、特定の券売機1に近づくことを促すものではない。したがって、利用者は、自分自身がスムーズに移動できる券売機1を確認し、その券売機1に近づけばよい。図8に示す例では、第1の誘導メッセージは、「券売機に近づいてください。」である。また、携帯端末2の表示器に表示されている乗車券購入情報は、利用者が事前に登録し、制御部21のメモリに記憶させていた情報(これから購入する乗車券の情報)である。
【0046】
なお、携帯端末2は、設定されている言語で、第1の誘導メッセージ、および乗車券購入情報を表示器に表示する。したがって、利用者は、自分自身が認識できる言語で案内される。また、携帯端末2は、処理負荷を低減するため、この時点では、受信した誘導電波に乗せられている券売機1の識別コードを取得する処理を行わない構成にするのが好ましい。また、携帯端末2は、この時点では、後述する発券要求の送信を禁止している。
【0047】
また、携帯端末2は、誘導電波の受信強度が第2の閾値th2未満でなければ、誘導電波の受信強度が第3の閾値th3未満であるかどうかを判定する(s25)。携帯端末2は、第3の閾値th3未満であれば、すなわち誘導電波の受信強度が第2の閾値th2以上であり、且つ第3の閾値th3未満であると、表示部22が第2の誘導メッセージを表示器に表示し(s26)、s21に戻る。上述したように、第3の閾値th3は、携帯端末2と誘導電波送信部17のアンテナ17aとの距離が30cm程度であるときに、誘導電波受信部25で受信される誘導電波の受信強度である。すなわち、携帯端末2は、誘導電波送信部17のアンテナ17aとの距離が30cm〜1m程度であるとき、表示部22がs26で第2の誘導メッセージを表示器に表示する。
【0048】
携帯端末2は、券売機1にある程度接近すると(30cm〜1mの範囲に位置していると、)、s21〜s26の処理を繰り返し、表示部22が第2の誘導メッセージを表示器に表示しつづける。
【0049】
図9は、第2の誘導メッセージを表示している携帯端末の表示器の画面例を示す図である。図9に示すように、携帯端末2の表示器には、第2の誘導メッセージと、乗車券購入情報とが表示されている。第2の誘導メッセージは、利用者に対して携帯端末2を券売機1の端末接近領域に接近させることを促すメッセージである。図9に示す例では、第2の誘導メッセージは、「携帯端末を端末接近領域に接近させてください。」である。
【0050】
なお、携帯端末2は、設定されている言語で、第2の誘導メッセージ、および乗車券購入情報を表示器に表示する。また、携帯端末2は、処理負荷を低減するため、この時点でも、受信した誘導電波から券売機1の識別コードを取得する処理を行わない構成にするのが好ましい。また、携帯端末2は、この時点においても、後述する発券要求の送信を禁止している。
【0051】
また、携帯端末2は、誘導電波の受信強度が第3の閾値th3未満でなければ(すなわち、第3の閾値th3以上であれば)、発券要求の送信を許可するとともに、第3の誘導メッセージを表示器に表示する(s27、s28)。また、携帯端末2は、s27で受信した誘導電波から券売機1の識別コードを取得する。また、携帯端末2は、s27で発券要求の送信を許可したことにより、表示部22が確定送信ボタン30、およびキャンセルボタン31を表示器に表示する。
【0052】
図10は、第3の誘導メッセージを表示している携帯端末の表示器の画面例を示す図である。図10に示すように、携帯端末2の表示器には、第3の誘導メッセージと、乗車券購入情報と、確定送信ボタン30と、キャンセルボタン31とが表示されている。第3の誘導メッセージは、利用者に対して確定送信ボタン30、またはキャンセルボタン31の操作を促すメッセージである。図10に示す例では、第3の誘導メッセージは、「確定送信ボタン、またはキャンセルボタンを押して下さい。」である。
【0053】
このように、携帯端末2は、誘導電波送信部17のアンテナ17aとの距離が30cm未満になると、確定送信ボタン30を表示器に表示し、発券要求の送信を許可する。すなわち、利用者は、携帯端末2と、誘導電波送信部17のアンテナ17aとの距離が30cm未満であれば発券要求の送信操作が行え、携帯端末2と、誘導電波送信部17のアンテナ17aとの距離が30cm以上であれば発券要求の送信操作が行えない。
【0054】
携帯端末2は、確定送信ボタン30が操作されなければ(s29)、s21に戻る。s29では、確定送信ボタン30、およびキャンセルボタン31がともに操作されなかった場合だけでなく、キャンセルボタン31が操作された場合もs21に戻る。
【0055】
通常、利用者は、キャンセルボタン31を操作すると、券売機1の前から離れる。しかしながら、利用者が、券売機1から離れているときに、上述した第2の誘導メッセージや第1の誘導メッセージが携帯端末2の表示器に表示されてしまうことがある。このため、携帯端末2は、キャンセルボタン31が操作された場合、図7に示す処理を、一時的(例えば、5〜10秒程度)に停止する構成にしてもよい。
【0056】
携帯端末2は、確定送信ボタン30が操作されると、券売機1に対して接続要求を送信する(s30)。この接続要求には、接続を要求する券売機1の識別コードが含まれている。携帯端末2は、誘導電波受信部25で受信した誘導電波であって、受信強度が第3の閾値th3以上であった誘導電波から券売機1の識別コードを取得している。すなわち、利用者が、携帯端末2を端末接近領域に接近させた券売機1に対して、接続要求を送信する。このため、利用者は、この時点で、携帯端末2が接続要求を行う券売機1の正面に位置している。
【0057】
券売機1は、s2で携帯端末2から送信されてきた接続要求を受信すると、接続許可を携帯端末2に送信する(s3)。券売機1は、無線通信部18で受信した接続要求に乗せられている識別コードが、自機の識別コードであれば、s1で携帯端末2から送信されてきた接続要求を受信したと判定する。券売機1は、無線通信部18で受信した接続要求に乗せられている識別コードが、自機の識別コードでなければ、s1で携帯端末2から送信されてきた接続要求を受信していないと判定する。
【0058】
携帯端末2は、券売機1から接続許可を受信すると、券売機1に対して発券要求を送信する(s31、s32)。この例では、携帯端末2は、券売機1から接続許可を受信すると、自動的に券売機1に対して発券要求を送信する構成であるが、この発券要求の送信について、利用者に確認操作を行わせる構成としてもよい。発券要求には、券売機1の識別コード、および乗車券購入情報が含まれている。
【0059】
券売機1は、携帯端末2から発券要求を受け付けると、発券要求の受付を携帯端末2に返信する(s4、s5)。携帯端末2は、券売機1から発券要求の受付を受信すると、券売機1に対して確定を送信し(s33、s34)、s21に戻る。この例では、携帯端末2は、券売機1から発券要求の受付を受信すると、自動的に券売機1に対して確定を送信する構成であるが、この確定の送信についても、利用者に確認操作を行わせる構成としてもよい。s34で券売機1に送信する確定にも、券売機1の識別コードが含まれている。
【0060】
券売機1は、携帯端末2から確定を受信すると、s4で受信した発券要求に基づく乗車券の発券にともなう、決済処理を行う(s6、s7)。s7における決済処理は、現金、SFカード、クレジットカード等による公知の処理である。また、券売機1は、s7で受信した発券要求に含まれている乗車券購入情報の言語情報が示す言語で、決済処理の手順を案内する画面を表示器12aに表示する。したがって、利用者は、自分が認識できる言語で決済処理の手順が案内されるので、決済処理にかかる券売機1の操作がスムーズに行える。また、決済処理は、s7で受信した発券要求に含まれている乗車券購入情報の決済方法により決済する。
【0061】
券売機1は、決済処理が完了すると、s4で受信した発券要求に含まれている乗車券購入情報が示す乗車券を発券部14で発券する発券処理を行い(s8)、s1に戻る。
【0062】
このように、この例にかかる券売システムでは、利用者は、携帯端末2と、誘導電波送信部17のアンテナ17aとの距離が30cm以上であれば発券要求の送信操作が行えない。すなわち、携帯端末2と、誘導電波送信部17のアンテナ17aとの距離が30cm以上であるときに、利用者が、携帯端末2において、発券要求の送信操作を無駄に行うのを防止できる。また、利用者は、券売機1にスムーズに移動することができる。したがって、利用者に煩わしさを感じさせるのを抑制することができる。
【0063】
なお、券売機1における上述のs5、およびs6にかかる処理と、携帯端末2における上述のs33、およびs34にかかる処理については、設けていない構成であってもよい。
【符号の説明】
【0064】
1…券売機
2…携帯端末
11…制御部
12…表示部
12a…表示器
13…操作部
13a…タッチパネル
13b…キー操作部
14…発券部
14a…発券口
15…貨幣処理部
15a…硬貨投入口
15b…釣銭硬貨受皿
15c…紙幣投入口
15d…紙幣放出口
16…カード処理部
16a…放出口
17…誘導電波送信部
17a…アンテナ
18…無線通信部
19…通信部
21…制御部
22…表示部
23…操作部
24…通信部
25…誘導電波受信部
26…無線通信部
30…確定送信ボタン
31…キャンセルボタン
図1
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図10