(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記補正率演算部において、前記照度補正率が前記上限値に到達する前の前記照度補正率の前記点灯時間に対する上昇率が、前記指令調光率又は前記目標調光率の低下に対して低減されるように構成された、請求項1に記載のLED点灯装置。
前記指令調光率が第1の指令調光率及び該第1の指令調光率よりも低い第2の指令調光率を含み、前記上昇率が前記第1及び第2の指令調光率にそれぞれ対応する第1及び第2の上昇率を含み、
前記補正率演算部が、前記第1又は第2の指令調光率に応じてそれぞれ前記第1及び第2の上昇率を選択し、選択した前記第1又は第2の上昇率に単位点灯時間を乗じて上昇幅を演算し、該上昇幅を現在の前記照度補正率に加算して新たな照度補正率を演算するように構成され、
前記目標値決定部が、前記単位点灯時間ごとに前記指令調光率に前記新たな照度補正率を乗じて前記目標調光率を決定するように構成された、請求項2に記載のLED点灯装置。
過去の所定点灯期間における前記上昇率の平均値である平均上昇率を演算し、現在の前記照度補正率を前記上限値から減算した値を前記平均上昇率で除算した値を予測残り時間として推定する残時間推定部と、
前記予測残り時間に関する残時間情報を表示する表示部と
をさらに備えた請求項2から4のいずれか一項に記載のLED点灯装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような初期照度補正では、全光点灯時の照度補正率が、例えば点灯開始時の80%から開始されて4万時間後に100%となるように点灯時間とともに所定の上昇率で上昇されていく。ところで、全光点灯時に比べて、調光点灯時においてはLED素子のジャンクション温度が低いためにLEDの劣化の進行は遅い。したがって、調光点灯時において全光点灯時と同じ上昇率で照度補正率を上昇させていくと、劣化の進行速度よりも照度補正率の上昇速度が上回り、点灯時間の経過とともに必要以上にLED電流が供給されていくことになる。このように調光点灯時に点灯時間とともに過剰となっていくLED電流に起因して、調光点灯時の照度が規定値よりも高くなる方向にずれていくだけでなく、LEDの寿命も短くなり得る。
【0006】
そこで、本発明は、全光点灯時だけでなく調光点灯時においても適切な初期照度補正を実行してLEDの適正な照度及び寿命を得ることができるLED点灯装置及びそれを用いたLED照明装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示によるLED点灯装置は、入力される調光指令が示す指令調光率を取得する指令値取得部と、指令調光率に照度補正率を乗じて目標調光率を決定する目標値決定部と、目標調光率に従って出力電流をLEDに供給する直流電源回路と、LEDの点灯時間を計時する計時部と、指令調光率が相対的に低い場合には照度補正率が相対的に低くなる設定において照度補正率を初期値から上限値まで点灯時間とともに上昇させる補正率演算部とを備える。
【0008】
上記LED点灯装置によると、指令調光率が相対的に低い場合には照度補正率が相対的に低くなる状態で照度補正率が初期値から上限値(例えば、100%)まで点灯時間とともに上昇する。これにより、調光点灯時における点灯時間に対する照度補正率の上昇が緩やかとなり、LEDの遅い劣化進行に適したものとなる。したがって、全光点灯時だけでなく調光点灯時においても、適切な初期照度補正が実行されてLEDの適正な照度及び寿命が得られる。
【0009】
ここで、補正率演算部において、照度補正率が上限値に到達する前の照度補正率の点灯時間に対する上昇率が、指令調光率又は目標調光率の低下に対して減少するように構成される。このように、指令調光率が相対的に低い場合に照度補正率が相対的に低くなる設定が、上昇率の設定によって簡素な構成で実現される。
【0010】
指令調光率が第1の指令調光率及び第1の指令調光率よりも低い第2の指令調光率を含み、上昇率が第1及び第2の指令調光率にそれぞれ対応する第1及び第2の上昇率を含む場合、補正率演算部が、第1又は第2の指令調光率に応じてそれぞれ第1及び第2の上昇率を選択し、選択した第1又は第2の上昇率に単位点灯時間を乗じて上昇幅を演算し、上昇幅を現在の照度補正率に加算して新たな照度補正率を演算するように構成され、目標値決定部が、単位点灯時間ごとに指令調光率に新たな照度補正率を乗じて目標調光率を決定するように構成される。これにより、簡素な処理構成で段調光用のLED点灯装置が実現される。
【0011】
あるいは、指令調光率が連続値を有し、指令調光率又は目標調光率の減少に対して減少する関数によって上昇率が規定される場合には、補正率演算部が、指令調光率又は現在の目標調光率を関数に適用して上昇率を演算し、演算した上昇率に単位点灯時間を乗じて上昇幅を演算し、上昇幅を現在の照度補正率に加算して新たな照度補正率を演算するように構成され、目標値決定部が、単位点灯時間ごとに指令調光率に新たな照度補正率を乗じて目標調光率を決定するように構成されてもよい。これにより、簡素な処理構成で連続調光用のLED点灯装置が実現される。
【0012】
また、過去の所定点灯期間における上昇率の平均値である平均上昇率を演算し、現在の照度補正率を上限値から減算した値を平均上昇率で除算した値を予測残り時間として推定する残時間推定部と、予測残り時間に関する残時間情報を表示する表示部とがさらに設けられてもよい。このように、ユーザは、LEDの予測残り時間を認識してLEDの交換時期を適切に判断することがでる。したがって、LED点灯装置に接続されるLEDの保守管理性が高まる。
【0013】
例えば、残時間情報は、予測残り時間を所定点灯期間における1日当たりの平均点灯時間で除算して得られる日数であってもよい。これにより、ユーザは、容易にLEDの交換時期を認識することができる。
【0014】
本開示のLED照明装置は、上記いずれかのLED点灯装置及びLEDを備える。これにより、全光点灯時だけでなく調光点灯時においても適正な初期照度補正を実行してLEDの適正な照度及び寿命を達成するLED照明装置が実現される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1の実施形態>
図1に、本発明の第1の実施形態によるLED点灯装置1及びLED照明装置3のブロック図を示す。LED点灯装置1及びLED2によってLED照明装置3が構成される。LED点灯装置1は、商用電源等の交流電源ACから給電され、LED2を点灯する。LED2は、直列接続又は直並列接続された複数のLED素子を備えたLEDモジュールを構成する。
【0017】
LED点灯装置1は、入力回路10、DC/DCコンバータ20、制御回路30及び照度補正回路40を備え、交流電源ACから供給される交流入力を所定の直流出力に変換して直流電流及び直流電圧をLED2に供給する。なお、DC/DCコンバータ20及び制御回路30を併せて直流電源回路ともいう。
【0018】
入力回路10は、ダイオードブリッジ11及び入力コンデンサ12を備える。交流入力電圧がダイオードブリッジ11によって全波整流され、入力コンデンサ12には脈流電圧が現われる。なお、直流電源からの直流電圧がLED点灯装置1に入力される場合には入力回路10はなくてもよい。
【0019】
DC/DCコンバータ20は、スイッチング素子21(MOSFET)、トランス22、ダイオード23、出力コンデンサ24及び電流検出抵抗25を備え、スイッチング素子21のPWM駆動によってLED2に直流電力を供給する。DC/DCコンバータ20は、本実施形態においては絶縁型フライバックコンバータからなり、力率改善機能を持つ、いわゆるワンコンバータ方式のフライバック回路を構成する。なお、DC/DCコンバータ20は、バックコンバータ、バックブーストコンバータ等、他の形式のコンバータであってもよい。
【0020】
スイッチング素子21のオン期間にトランス22の一次巻線によってエネルギーが蓄積され、スイッチング素子21のオフ期間にそのエネルギーがトランス22の二次巻線側からダイオード23を介して出力コンデンサ24に充電される。DC/DCコンバータ20の出力電力は、スイッチング素子21のPWM制御におけるオンデューティ(デューティ比)、一次巻線に対する二次巻線の巻数比等によって決まる。スイッチング素子21は、後述するスイッチング制御用の制御IC35によって駆動される。また、DC/DCコンバータ20の出力電流を単に「出力電流」といい、出力電流はLED電流に等しいものとする。電流検出抵抗25は低抵抗素子からなり、出力電流に比例した電圧が電流検出抵抗25に発生する。
【0021】
制御回路30は、オペアンプ31、定電圧源32(例えば制御電源)、抵抗33、フォトカプラ34及び制御IC35を含み、DC/DCコンバータ20の出力を定電流制御する。フォトカプラ34はフォトダイオード34d及びフォトトランジスタ34tを含み、フォトダイオード34d及びその前段の回路(オペアンプ31、定電圧源32等)が二次側グランドG2を基準電位とし、フォトトランジスタ34t及びその後段の回路(制御IC35)が一次側グランドG1を基準電位として動作する。なお、制御回路30には、制御電源が適宜給電されるものとする。
【0022】
オペアンプ31の反転入力端子(−)には、電流検出抵抗25からの検出電流値が入力され、オペアンプ31の非反転入力端子(+)には、照度補正回路40からの目標電流値が入力される。オペアンプ31の負入力端子と出力端子間には不図示の帰還素子(抵抗、コンデンサ、又はこれらの直列回路若しくは並列回路)が接続され、反転入力端子の電圧と非反転入力端子の電圧の誤差が出力端子において出力される。オペアンプ31の出力はフォトダイオード34dのカソードに接続され、フォトダイオード34dのアノードは抵抗33を介して定電圧源32に接続される。フォトカプラ34では、フォトダイオード34dに流れる電流に応じてフォトトランジスタ34tの出力状態が決定され、フォトトランジスタ34tの出力が入力信号として制御IC35に入力される。これにより、点灯時においては、オペアンプ31は、出力電流(検出電流値)が目標電流値に一致するようにスイッチング素子21のPWM制御におけるオン幅を決定することになる。
【0023】
制御IC35は、一般的なLEDドライバICからなり、制御IC35には不図示の周辺回路素子が適宜接続される。制御IC35は、フォトトランジスタ34tの出力状態に応じたパルス幅のPWM駆動信号を生成し、それをスイッチング素子21のゲート電圧として出力する。例えば、制御IC35は、フォトダイオード34d及びフォトトランジスタ34tの電流の増加/減少に対してPWM制御のオン幅を減少/増加させ、出力電流を低減させる。すなわち、制御回路30は、出力電流が目標電流値に一致するようにDC/DCコンバータ20を定電流制御する。
【0024】
照度補正回路40は、例えばマイコンからなり、点灯時間に応じて所定の態様で照度補正率を上昇させていく(すなわち、減光率を減少させていく)初期照度補正機能を実行する。照度補正回路40は、調光入力部41、指令値取得部42、補正率演算部43、目標値決定部44、計時部45及び記憶部46を備え、これらの各部はバスBによって相互に信号又はデータのやり取りが可能な態様で接続される。少なくとも指令値取得部42、補正率演算部43及び目標値決定部44はCPUの一部を構成し、このCPUは、上記各部に含まれない一般的な処理機能を適宜実行できるものとする。計時部45はタイマ又はカウンタからなり、記憶部46はデータ(計時部45によって計時された累積点灯時間等)及びプログラムを記憶するための不揮発性メモリである。
【0025】
調光入力部41は、LED点灯装置1の外部からの調光指令を受け付ける入力インターフェイスである。調光指令は、例えば、周囲環境の明るさを検知する照度センサの検知結果に基づく調光信号であってもよいし、タイマによって時間制御された調光信号であってもよいし、コントローラ等を介してユーザ入力された調光信号であってもよい。また、調光信号は、調光率の増減に対してオンデューティが変化するPWM信号であってもよいし、他の形式の信号であってもよい。なお、本開示において、「調光」とは、調光率が100%未満の減光点灯だけでなく、調光率が100%の全光点灯も含むものである。
【0026】
指令値取得部42は、調光入力部41に入力される調光指令が示す指令調光率Dxを取得する。以下の説明において、指令調光率Dxは、LED点灯装置1が段調光タイプの場合には全光用の指令調光率Dx1(100%)及び調光用の指令調光率Dx2(例えば、50%)を含み、連続調光タイプの場合には100%から下限調光率(5%等)までの連続値を有するものとする。
【0027】
補正率演算部43は、指令値取得部42によって取得された指令調光率Dx及び計時部45によって計時された点灯時間に基づいて、初期照度補正を実行するための照度補正率Rを決定する。補正率演算部43は、指令調光率Dxが相対的に低い場合には照度補正率Rが相対的に低くなる設定において、照度補正率Rを初期値R0から点灯時間とともに上昇さる。例えば、補正率演算部43は、照度補正率Rの点灯時間に対する上昇率U(照度補正率Rの時間微分値)を指令調光率Dxの低下に対して減少させる。これにより、指令調光率Dxが相対的に低い場合に照度補正率Rが相対的に低くなる設定が、上昇率Uの設定によって簡素な構成で実現される。なお、補正率演算部43によって決定された上昇率U及び照度補正率Rは、記憶部46に逐次記憶される。
【0028】
目標値決定部44は、指令値取得部42によって取得された指令調光率Dxに補正率演算部43によって演算された照度補正率Rを乗算し、その乗算値を目標調光率Dtとして制御回路30のオペアンプ31に出力する。この目標調光率Dtは、上述した目標電流値に対応する。
【0029】
例えば、LED点灯装置1が段調光タイプの場合、指令調光率Dx1及びDx2にそれぞれ対応する上昇率U1及びU2が設定される。補正率演算部43は、指令調光率Dx1及びDx2に応じて上昇率U1又はU2を選択し、選択した上昇率U1又はU2に単位点灯時間Δtを乗じて上昇幅ΔUを演算し、その上昇幅ΔUを現在の照度補正率Rに加算して新たな照度補正率R´を演算する。そして、目標値決定部44は、単位点灯時間Δtごとに指令調光率Dxに新たな照度補正率R´を乗じて目標調光率Dtを決定する。このように、簡素な処理構成で段調光用の照度補正回路40が実現される。
【0030】
また、LED点灯装置1が連続調光タイプの場合、連続値である指令調光率Dxの減少に対して減少する関数Fによって上昇率Uが規定される。具体的には、補正率演算部43は、指令調光率Dxを関数Fに適用して上昇率Uを演算し、演算した上昇率Uに単位点灯時間Δtを乗じて上昇幅ΔUを演算し、その上昇幅ΔUを現在の照度補正率Rに加算して新たな照度補正率R´を演算する。そして、目標値決定部44は、単位点灯時間Δtごとに指令調光率Dxに新たな照度補正率R´を乗じて目標調光率Dtを決定する。これにより、簡素な処理構成で連続調光用の照度補正回路40が実現される。関数Fとしては、指令調光率Dxの低下に対して上昇率Uが減少するものであれば一次関数、指数関数、対数関数等の種々の関数が採用され得る。
【0031】
図2は、LED点灯装置1が段調光タイプの場合の動作を説明するグラフであり、横軸は累積点灯時間であり、縦軸は照度補正率Rである。なお、以降の各図において、説明の明瞭化のために、適宜誇張又は省略がなされるものとする。
【0032】
図2において、線Rv1は、仮にLED2の点灯時間全体にわたって指令調光率Dx1(100%)が適用されたとした場合の仮想の照度補正率Rの設定である。線Rv2は、仮にLED2の点灯時間全体にわたって指令調光率Dx2(50%)が適用されたとした場合の仮想の照度補正率Rの設定である。線Rv1及び線Rv2のいずれにおいても、点灯初期(点灯開始時)での初期値R0は80%である。線Rv1に示す設定では、照度補正率Rは、累積点灯時間が40000時間となる時点で上限値100%となり、その後、上限値100%で一定となるように設定される。一方、線Rv2に示す設定では、照度補正率Rは、累積点灯時間が100000時間となる時点で上限値100%となり、その後、上限値100%で一定となるように設定される。
【0033】
したがって、指令調光率Dx1及びDx2が点灯時間とともに切り換えられると、線Rrに示すように、線Rv1に平行な線分と線Rv2に平行な線分とが繰り返されていく。なお、説明の便宜上、線Rrとして粗い区分の線分の連続が図示されているが、実際には線Rrは、より細かい区分の線分の連続となり得る。また、指令調光率Dx又は目標電流値Dtに対する適切な照度補正率R(すなわち、線Rv1及びRv2の傾斜)は、実験、シミュレーション、計算等によって適宜定められる。したがって、LED2の仕様によっては、50%の目標調光率Dtが上記の累積点灯時間100000時間に対応するとは限らない。
【0034】
照度補正率Rが上限値100%に到達した後は、初期照度補正は行われない。例えば、補正率演算部43は、照度補正率Rの算出値が100%である場合にはそれ以降の照度補正率Rを100%に維持するようにしてもよい。また、目標値決定部44は、入力される照度補正率Rが100%である場合には乗算を行わずに目標調光率Dt=指令調光率Dxとして動作するようにしてもよい。
【0035】
図3は、LED点灯装置1が段調光タイプの場合の動作をさらに詳細に示すグラフである。
図3において、上段から、指令調光率Dx、上昇率U、照度補正率R及び指令調光率Dtを示し、横軸は累積点灯時間である。
【0036】
時刻t0において、指令調光率Dx1(=100%)で点灯が開始される。この時点で、上昇率Uは指令調光率Dx1に対応する上昇率U1であり、照度補正率Rは初期値R0(=80%)であり、目標調光率Dtは80%(=Dx1×U1=100%×80%)である。なお、時刻t0において仮に指令調光率Dx2(=50%)で点灯が開始された場合には、上記と同様の計算により目標調光率Dtは40%(=Dx2×U2=50%×80%)となる。時刻t0〜t1において、照度補正率Rが上昇率U1に従って上昇し、それに伴って目標調光率Dtも上昇していく。
【0037】
時刻t1において、指令調光率DxがDx1からDx2に切り換えられる。この時点で、上昇率Uは指令調光率Dx2に対応する上昇率U2に低減され、その後の照度補正率Rの上昇が緩やかになる。時刻t1〜t2において、照度補正率Rは上昇率U2に従って上昇し、それに伴って目標調光率Dtも上昇していく。時刻t2及び時刻t3においても同様に、切り換えられた指令調光率Dxに応じた上昇率Uが適用され、その上昇率Uに従って照度補正率Rが上昇し、それに伴って目標調光率Dtも上昇していく。
【0038】
なお、本実施形態では、段調光の段数が1であってその指令調光率が2値(すなわち、Dx1及びDx2)の構成を示すが、段調光の段数は2以上であってもよく、その場合には3値以上の指令調光率Dx及び上昇率Uが設けられる。また、LED点灯装置1が連続調光タイプの場合は、指令調光率Dx及びそれに対応する上昇率Uの取り得る値は連続値となる。2段以上の段調光タイプ又は連続調光タイプの場合においても、動作原理は上述したものと同様である。
【0039】
また、上記においては、上昇率Uが指令調光率Dxに基づいて設定される構成を示したが、代替例として、現在の目標調光率Dtに基づいて直後の上昇率Uが決定される構成としてもよい。この場合、LED点灯装置1が段調光タイプの場合であっても連続調光タイプであっても、連続値である目標調光率Dtの減少に対する減少関数である関数Fによって上昇率Uが規定される。具体的には、補正率演算部43が、現在の目標調光率Dtを関数Fに適用して上昇率Uを演算し、演算した上昇率Uに単位点灯時間Δtを乗じて上昇幅ΔUを演算し、その上昇幅ΔUを現在の照度補正率Rに加算して新たな照度補正率R´を演算する。そして、目標値決定部44が、単位点灯時間Δtごとに指令調光率Dxに新たな照度補正率R´を乗じて目標調光率Dtを決定する。
【0040】
また、照度補正回路40は、リセット機能を有していてもよい。リセット機能とは、LED点灯装置1の使用中にLED2が交換される場合に、記憶部46に記憶されている累積点灯時間をゼロにリセットする機能である。さらに、本実施形態では点灯時間とともに逐次的に照度補正率Rが演算されるので、記憶部46に記憶されている照度補正率Rが初期値R0にリセットされる。このリセット動作は、例えば、ユーザがLED点灯装置1に設けられたリセットボタン(照度制御回路40のマイコンの所定端子の電圧を操作するためのボタン、スイッチ等)を操作することによって実行される。これにより、LED2の交換の際に、初期照度補正機能が適切に継続される。
【0041】
また、照度補正回路40は、継続スタート機能を有していてもよい。継続スタート機能とは、LED2の使用中に古いLED点灯装置1−1が新たなLED点灯装置1−2に交換される場合に、LED点灯装置1−1の使用時間又はLED点灯装置1−1の記憶部46に記憶されていた累積点灯時間をLED点灯装置1−2の記憶部46に書き込む機能である。さらに、本実施形態では点灯時間とともに逐次的に照度補正率Rが演算されるので、LED点灯装置1−1の記憶部46に記憶されていた(各指令調光率Dxに対する)照度補正率RがLED点灯装置1−2の記憶部46に書き込まれる。この書込みは、例えば、LED点灯装置1−2の設置前にユーザが照度補正回路40のマイコンに対して所定の操作を行うことによって実行される。これにより、LED点灯装置1の交換の際に、初期照度補正機能が適切に継続される。
【0042】
以上のように、本発明のLED点灯装置1は、入力される調光指令が示す指令調光率Dxを取得する指令値取得部42と、指令調光率Dxに照度補正率Rを乗じて目標調光率Dtを決定する目標値決定部44と、目標調光率Dtに従って出力電流をLED2に供給する直流電源回路(20、30)と、LED2の点灯時間を計時する計時部45と、指令調光率Dxが相対的に低い場合には照度補正率Rが相対的に低くなる設定において照度補正率Rを初期値R0から上限値100%まで点灯時間とともに上昇させる補正率演算部43とを備える。
【0043】
このように、本開示のLED点灯装置1においては、指令調光率Dxが相対的に低い場合には照度補正率Rが相対的に低くなる状態で照度補正率Rが初期値R0から上限値100%まで点灯時間とともに上昇する。これにより、調光点灯時における点灯時間に対する照度補正率Rの上昇が緩やかとなり、LED2の遅い劣化進行に適したものとなる。したがって、本開示のLED点灯装置1及びLED照明装置3によると、全光点灯時だけでなく調光点灯時においても、適切な初期照度補正が実行されてLED2の適正な照度及び寿命が得られる。
【0044】
<第2の実施形態>
上記第1の実施形態では、指令調光率Dxに応じて照度補正率Rの上昇率Uが調整される構成を示した。本実施形態では、過去の上昇率Uの変化からその後の照度補正率Rの変化を予測して、照度補正率Rが上限値100%に到達する時間を推定する構成を示す。
【0045】
図4に、本実施形態によるLED点灯装置1及びLED照明装置3のブロック図を示す。本実施形態は、残時間推定部47及び表示部50を備える点で第1の実施形態とは異なる。本実施形態において、第1の実施形態と同様の構成には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0046】
残時間推定部47は、上述した照度補正回路40に含まれるマイコンのCPUの一部である。また、記憶部46は、過去の点灯時間に対する上昇率Uの推移を記憶しているものとする。残時間推定部47は、まず、過去の所定点灯期間における上昇率Uの平均値である平均上昇率Uavを演算する。所定点灯期間は、点灯開始から現在までの全点灯期間であってもよいし、直近の所定長の点灯期間であってもよい。平均上昇率Uavは、対象となる所定点灯期間における上昇率Uの時間積分値を当該所定点灯期間における累積点灯時間で除算することによって求められる。そして、残時間推定部47は、現在の照度補正率Rを上限値100%から減算した値を平均上昇率Uavで除算した値を予測残り時間として推定する。
【0047】
表示部50は、予測残り時間に関する残時間情報を表示する。表示部50は、例えば、LED点灯装置1に取り付けられた液晶表示部であってもよいし、LED点灯装置1から通信接続される外部装置(調光コントローラ、リモコン、制御端末パソコン等)の表示画面であってもよい。残時間情報は、例えば、予測残り時間そのものであってもよい。例えば、予測残り時間が6000時間である場合には、表示部50は「残り6000時間」等と表示する。照度補正率Rが上限値100%となる時点がLED2の寿命に相当する場合には、予測残り時間はLED2の残りの寿命(余命)を表すことになるので、表示部50は「LED交換まであと6000時間」等と表示してもよい。
【0048】
また、記憶部46に過去の点灯パターンが記憶されている場合には、残時間推定部47が予測残り時間を所定点灯期間における1日当たりの平均点灯時間で除算して得られる日数を残時間情報として演算し、表示部50がこの日数を表示するようにしてもよい。例えば、(全ての調光率における点灯期間を含む)所定点灯期間の時間長が48000時間であり、所定点灯期間における点灯日数又は点灯回数が2400日又は回である場合、所定点灯期間における1日当たりの平均点灯時間は12時間となる。なお、長いスパンで見た場合、点灯日数による計算によっても点灯回数による計算によっても実質的に同じ平均点灯時間が得られる。そして、予測残り時間が6000時間である場合には、残時間情報は500日(=6000時間/12時間)となるから、表示部50は「残り500日」等と表示する。また、上記と同様に、照度補正率Rが上限値100%となる時点がLED2の寿命に相当する場合には、表示部50は「LED交換まであと500日」等と表示してもよい。これにより、ユーザは、容易にLED2の交換時期を認識することができる。
【0049】
本実施形態の構成は、段調光タイプ及び連続調光タイプのいずれにも適用可能である。また、本実施形態の構成は、指令調光率Dxに基づいて上昇率Uが決定される場合、及び現在の目標調光率Dtに基づいて直後の上昇率Uが決定される場合のいずれにも適用可能である。
【0050】
以上のように、本実施形態のLED点灯装置1は、過去の所定点灯期間における上昇率Uの平均値である平均上昇率Uavを演算し、現在の照度補正率Rを上限値100%から減算した値を平均上昇率Uavで除算した値を予測残り時間として推定する残時間推定部47、及び予測残り時間に関する残時間情報を表示する表示部50をさらに備える。このように、ユーザは、LED2の予測残り時間を認識することができるのでLED2の交換時期を適切に判断することができる。したがって、LED2又はLED照明装置3における保守管理性が高まる。
【0051】
<変形例>
以上に本発明の好適な実施形態を示したが、本発明は、例えば以下に示すように種々の態様に変形可能である。
【0052】
(1)上昇率Uの関数の変形
上記第1及び第2の実施形態では、所与の指令調光率Dx及び目標調光率Dtにおいて上昇率Uが点灯時間に対して一定である(したがって、照度補正率Rが点灯時間に対する一次関数となる)構成を示したが、上昇率Uは点灯時間に対して増加又は減少する関数であってもよい。
図5A及び
図5Bに、本変形例の場合の関数の例を示す。
図5A及び
図5Bでは、横軸を点灯時間として、指令調光率Dx1及びDx2に対するそれぞれの上昇率U1及びU2、並びに上昇率Uが上昇率U1及びU2に固定されたとした場合のそれぞれの仮想照度補正率Rv1及びRv2を示す。
【0053】
図5Aの例では、上昇率U1及びU2が点灯時間に対する減少関数であり、仮想照度補正率Rv1及びRv2の傾斜は上限値100%に向かうにつれて緩やかとなる。これは、累積点灯時間に対してLED2の劣化が鈍化する場合に有用である。
図5Bの例では、上昇率U1及びU2が点灯時間に対する増加関数であり、仮想照度補正率Rv1及びRv2の傾斜は上限値100%に向かうにつれて急峻なものとなる。これは、累積点灯時間に対してLED2の劣化が加速する場合に有用である。
また、相対的に高い調光率の場合と相対的に低い調光率の場合とでLEDの劣化進行の態様に相違がある場合には、それに応じて上昇率Uの関数を異ならせてもよい。また、上昇率Uは時間に対する一次関数に限られない。このように、LED2の劣化進行の態様に応じて、上昇率Uとして種々の関数が採用され得る。
【0054】
(2)照度補正率Rの算出方法に関する変形
上記第1及び第2の実施形態では、可変の上昇率Uに固定の単位点灯時間Δtを乗じて得られた上昇幅ΔUが現在の照度補正率Rに加算されて新たな照度補正率R´が演算され、固定の単位点灯時間Δtごとに指令調光率Dxに新たな照度補正率R´が乗算されて目標調光率Dtが決定される構成を示した。一方、固定の上昇幅ΔUが現在の照度補正率Rに加算されて新たな照度補正率R´が演算され、可変の単位点灯時間Δtごとに指令調光率Dxに新たな照度補正率R´が乗算されて目標調光率Dtが決定されるようにしてもよい。この場合、指令調光率Dx又は目標調光率Dtの低下に対して単位点灯時間Δtが増加するように設定される。本変形例によっても、照度補正率Rが上限値100%に到達する前の照度補正率Rの点灯時間に対する上昇率Uは、指令調光率Dx又は目標調光率Dtの低下に対して低減されることになる。
【0055】
(3)上昇率Uの下限に関する変形
上記第1及び第2の実施形態では、上昇率Uが指令調光率Dx又は目標調光率Dtの低下に対して単調的に減少する構成を示したが、上昇率Uに下限値が設けられてもよい。これは、非常に低い調光率においては、初期照度補正による照度及び寿命への影響が小さいことを考慮して、照度補正率Rが上限値100%に到達する時間に上限を設けるものである。
【0056】
図6に、本変形例における指令調光率Dx(横軸)に対する上昇率U(縦軸)の関係を示す。指令調光率Dxが100%以下で閾値Dthより高い範囲では、補正率演算部43は、指令調光率Dxの低下に対して上昇率Uを単調減少させる。一方、指令調光率Dxが閾値Dth以下の範囲では、補正率演算部43は、指令調光率Dxの変化にかかわらず上昇率Uを下限上昇率Uminに維持する。これにより、照度補正率Rが上限値100%に到達するまでの累積点灯時間の最大時間が確定する。
【0057】
上記構成は連続調光タイプを前提としているが、段調光タイプにも適用可能である。例えば、指令調光率Dxとして、Dx1(=100%)、Dx2(≧Dth)及びDx3(<Dth)が設定されている場合、指令調光率Dx1及びDx2に対してはそれぞれの上昇率U1(=最大値)及びU2(≧Umin)が適用され、指令調光率Dx3に対しては上昇率Uminが適用される。
【0058】
また、上記構成は指令調光率Dxに基づいて上昇率Uが決定される構成を示すが、第1の実施形態において述べたように現在の目標調光率Dtに基づいて直後の上昇率Uが決定される構成にも適用可能である。この場合、閾値Dthは、目標調光率Dtに対して設定される。
【0059】
(4)出力電流制御に関する変形
例えば、上記第1及び第2の実施形態では、直流電源回路(DC/DCコンバータ20及び制御回路30)における出力電流制御に電流フィードバックが採用される構成を示したが、より簡素な構成として出力電流制御にフィードフォワードが採用される構成も可能である。この場合、制御回路30において、照度補正回路40からの目標調光率(目標電流値)は、適宜の増幅回路等を介して制御IC35に入力される。本変形例では、制御回路30及び照度補正回路40は、1次側グランドG1を基準電位として動作する。