【実施例】
【0024】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本
発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお,特に断らない限り,以下に記載する「%」は「重量%」を意味する。
【0025】
(実施例1)微粒子酸化亜鉛(堺化学工業(株)製「FINEX−50」、粒子径0.02μm)80gを、酢酸亜鉛二水和物(細井化学工業(株)製 酢酸亜鉛)266.07gを水に溶解して酢酸亜鉛二水和物としての濃度が1mol/Lとなるよう調製した酢酸亜鉛水溶液1200mlにリパルプしスラリーとした。続いて、そのスラリーを攪拌しながら60分間で100℃に昇温し、攪拌しながら100℃で1時間熟成した。熟成後、直ちに急冷した後、ろ過、水洗した。続いて、得られた固形物を水3リットルにリパルプしてスラリーとし、攪拌しながら60分間で100℃に昇温し、攪拌しながら100℃で30分間加熱洗浄した。加熱洗浄後、ろ過、水洗し、110℃で12時間乾燥することにより、一次粒子径が0.30μmの六角板状酸化亜鉛粒子を得た。得られた六角板状酸化亜鉛粒子100gとオレイン酸エステル系界面活性剤(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、花王製「レオドール TW‐O120V」)20gとを1Lの水に添加し、1時間撹拌した後、減圧濾過で固液分離した。得られた固形分を120℃で16時間乾燥することにより、オレイン酸エステル系界面活性剤被覆六角板状酸化亜鉛粒子を得た。
【0026】
(実施例2)微粒子酸化亜鉛(堺化学工業(株)製「FINEX−50」、粒子径0.02μm)80gを、酢酸亜鉛二水和物(細井化学工業(株)製 酢酸亜鉛)133.02gを水に溶解して酢酸亜鉛二水和物としての濃度が0.5mol/Lとなるよう調製した酢酸亜鉛水溶液1200mlにリパルプしスラリーとした。続いて、そのスラリーを攪拌しながら60分間で100℃に昇温し、攪拌しながら100℃で3時間熟成した。熟成後、直ちに急冷した後、ろ過、水洗した。続いて、得られた固形物を水3リットルにリパルプしてスラリーとし、攪拌しながら60分間で100℃に昇温し、攪拌しながら100℃で30分間加熱洗浄した。加熱洗浄後、ろ過、水洗し、110℃で12時間乾燥することにより、一次粒子径が0.11μmの六角板状酸化亜鉛粒子を得た。得られた六角板状酸化亜鉛粒子100gとオレイン酸エステル系界面活性剤(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、花王製「レオドール TW‐O120V」)20gとを1Lの水に添加し、1時間撹拌した後、減圧濾過で固液分離した。得られた固形分を120℃で16時間乾燥することにより、オレイン酸エステル系界面活性剤被覆六角板状酸化亜鉛粒子を得た。
【0027】
(実施例3)微粒子酸化亜鉛(堺化学工業(株)製「FINEX−50」、粒子径0.02μm)80gを、酢酸亜鉛二水和物(細井化学工業(株)製 酢酸亜鉛)266.07gを水に溶解して酢酸亜鉛二水和物としての濃度が1mol/Lとなるよう調製した酢酸亜鉛水溶液1200mlにリパルプしスラリーとした。続いて、そのスラリーを攪拌しながら60分間で100℃に昇温し、攪拌しながら100℃で7時間熟成した。熟成後、直ちにろ過、水洗した。続いて、得られた固形物を水3リットルにリパルプしてスラリーとし、攪拌しながら60分間で100℃に昇温し、攪拌しながら100℃で30分間加熱洗浄した。加熱洗浄後、ろ過、水洗し、110℃で12時間乾燥することにより、一次粒子径が1.12μmの六角板状酸化亜鉛粒子を得た。得られた六角板状酸化亜鉛粒子100gとオレイン酸エステル系界面活性剤(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、花王製「レオドール TW‐O120V」)20gとを1Lの水に添加し、1時間撹拌した後、減圧濾過で固液分離した。得られた固形分を120℃で16時間乾燥することにより、オレイン酸エステル系界面活性剤被覆六角板状酸化亜鉛粒子を得た。
【0028】
(実施例4)微粒子酸化亜鉛(堺化学工業(株)製「FINEX−50」、粒子径0.02μm)40gを430.49mlの水にリパルプして得られたスラリーに、30%水酸化ナトリウム水溶液8mlを添加しpH 13に調整した。上述のスラリーと酢酸亜鉛としての濃度が1.61mol/Lの酢酸亜鉛水溶液563.24mlとを15℃に制御した水200ml中に混合しながら120分で全量添加し、酢酸亜鉛としての濃度が0.75mol/Lの酢酸亜鉛水溶液と原料酸化亜鉛との混合スラリーとした。続いて、その混合スラリーを撹拌子ながら160分間で95℃に昇温し、撹拌しながら95℃で1時間熟成した。熟成後、直ちに急冷した後、ろ過、洗浄し、110℃で12時間乾燥することにより、一次粒子径3.13μmの六角板状酸化亜鉛粒子を得た。得られた六角板状酸化亜鉛粒子100gとオレイン酸エステル系界面活性剤(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、花王製「レオドール TW‐O120V」)20gとを1Lの水に添加し、1時間撹拌した後、減圧濾過で固液分離した。得られた固形分を120℃で16時間乾燥することにより、オレイン酸エステル系界面活性剤被覆六角板状酸化亜鉛粒子を得た。
【0029】
(比較例1)オレイン酸エステル系界面活性剤の処理を行わない以外は、実施例2と同様の方法で、六角板状酸化亜鉛粒子を得た。
【0030】
(比較例2)オレイン酸エステル系界面活性剤の処理を行わない以外は、実施例4と同様の方法で、六角板状酸化亜鉛粒子を得た。
【0031】
(比較例3〜5)実施例1において、オレイン酸エステル系界面活性剤の代わりに、ラウリン酸エステル系界面活性剤(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、花王製「レオドールTW―L120」:比較例3)、パルミチン酸エステル系界面活性剤(ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、花王製「レオドールTW―P120」:比較例4)、ステアリン酸エステル系界面活性剤(ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、花王製「レオドールTW−S120」:比較例5)を用いて表面処理を行った以外は、実施例1と同様の方法で、比較例の六角板状酸化亜鉛粒子を得た。
【0032】
(比較例6)オレイン酸エステル系界面活性剤の代わりに、実施例1において得られた母体となる六角板状酸化亜鉛粒子100gに対して、ハイドロゲンジメチコン(信越化学工業(株)製、「KF−9901」)を3gを加え、ラボ用サンプルミルで使って混合した。続いて、120℃16時間の熱処理を加え、ハイドロゲンジメチコン被覆六角板状酸化亜鉛を得た。
【0033】
(比較例7) 比較例7として、市販の微細酸化亜鉛(堺化学工業(株)製、FINEX−50、平均粒子径:20nm)を用いた。
【0034】
(不飽和脂肪酸吸着能力(オレイン酸固化時間)の測定)実施例および比較例の試料0.1gとオレイン酸5.0gを、室温(25℃)において、マグネチックスターラーを用いて回転速度300rpmにて撹拌し、得られた混合液を静置し、試料の入ったビーカーを傾斜させた際にスラリーが完全に固化し、流動性がなくなるまでの時間を測定した。固化するまでの時間が短いほど(固化速度が速いほど)、オレイン酸の吸着能力が高いことを示す。実施例および比較例のオレイン酸固化時間を表1および2に示した。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
(一次粒子径)本発明における一次粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM、JEM−1200EXII、日本電子社製)または走査型電子顕微鏡(SEM、JSM−6510A、日本電子社製)で観察し、写真の2000〜50000倍の視野での定方向径(粒子を挟む一定方向の二本の平行線の間隔;画像上のどのような形状の粒子についても、一定方向で測定した)で定義される粒子径(μm)であって、写真内の一次粒子250個の定方向径を計測し、その累積分布の平均値を求めたものである。
【0038】
(アスペクト比)本発明におけるアスペクト比は、透過型電子顕微鏡(TEM、JEM−1200EXII、日本電子社製)写真、又は走査型電子顕微鏡(SEM、JSM−6510A、日本電子社製)写真の2000〜50000倍の視野において、六角板状酸化亜鉛粒子の六角形状面が手前を向いている粒子についてはその定方向径(粒子を挟む一定方向の二本の平行線の間隔;画像上の六角形状面が手前を向いている粒子について、一定方向で測定した)で定義される粒子径(μm)を粒子250個分計測した平均値をL、六角板状酸化亜鉛粒子の側面が手前を向いている粒子(長方形に見える粒子)についてはその厚み(μm)(長方形の短い方の辺の長さ)を粒子250個分計測した平均値をTとしたとき、それらの値の比;L/Tとして求めた値である。なお、上記アスペクト比は、一次粒子径が0.01〜1.1μm未満の場合は透過型電子顕微鏡(TEM、JEM−1200EXII、日本電子社製)、一次粒子径が1.1μm以上の場合は、走査型電子顕微鏡(SEM、JSM−6510A、日本電子社製)の写真を用いて測定することが好ましい。
【0039】
(酸化亜鉛100重量部に対する脂肪酸エステル系界面活性剤の被覆量)上記実施例、比較例の粉末をアルミナ製るつぼに2.0g入れ、500℃1時間で加熱した。加熱前後の重量差から、脂肪酸エステルの付着量を算出した。
【0040】
(MIU(平均摩擦係数))表1のMIU(平均摩擦係数)は、上記実施例、比較例の粉末をKES−SE摩擦感テスター(カトーテック社製)で測定した値である。スライドガラスに25mm幅の両面テープを貼り、粉体を載せ、化粧用パフで伸ばし、KES−SE摩擦感テスター(カトーテック社製)によりMIU(平均摩擦係数)を測定した。摩擦測定荷重25gf、表面測定試料移動速度1mm/sec、測定距離範囲20mmの条件で測定を行った。センサーとしては、シリコーン接触子(人間の指を想定した凹凸が施されたシリコーンゴム製の摩擦子)を用いた。MIU(平均摩擦係数)の値が小さい程、滑り性が良く滑り易いことを意味する。
【0041】
(MMD(摩擦係数の平均偏差))表1のMMD(摩擦係数の平均偏差)は、上記実施例、比較例の粉末をKES−SE摩擦感テスター(カトーテック社製)で測定した値である。スライドガラスに25mm幅の両面テープを貼り、粉体を載せ、化粧用パフで伸ばし、KES−SE摩擦感テスター(カトーテック社製)によりMMD(摩擦係数の平均偏差)を測定した。摩擦測定荷重25gf、表面測定試料移動速度1mm/sec、測定距離範囲20mmの条件で測定を行った。センサーとしては、シリコーン接触子(人間の指を想定した凹凸が施されたシリコーンゴム製の摩擦子)を用いた。MMD(摩擦係数の平均偏差)の値が小さい程、ざらつき感が少なく滑らかさが高いことを意味する。
【0042】
(全光線透過率)70mlマヨネーズ瓶に粉体2.0gを入れ、アクリディックA−801P(DIC製)10gと酢酸ブチル5.0gとキシレン5.0gを添加した。これにφ1.5mmガラスビーズ38gを入れ、ペイントコンデョショナーで90分間分散した。この分散塗料をスライドガラスに均一に塗布し、120℃で加熱した後、紫外可視分光光度計(V−960:日本分光製)で全透過光の透過率を測定した。波長350nmの値が小さいほど、紫外線の遮蔽効果が高いことを意味する。
【0043】
表1および2の結果から、以下のことが確認された。本発明のオレイン酸エステル系界面活性剤被覆六角板状酸化亜鉛からなる不飽和脂肪酸吸着剤は、表面処理をしない六角板状酸化亜鉛(比較例1)や、オレイン酸以外の脂肪酸エステル系界面活性剤の表面処理(比較例3〜5)や、ハイドロゲンジメチコン処理の六角板状酸化亜鉛(比較例6)に比べて、きわめて高い不飽和脂肪酸吸着能力を持つことが確認された。また、一般的に皮脂吸着能力が高いとされる微細酸化亜鉛(比較例7)と比較しても、高い吸着能力を持つことが確認された。したがって、本発明のオレイン酸エステル被覆六角板状酸化亜鉛からなる不飽和脂肪酸吸着剤は、高い不飽和脂肪酸吸着能力を持つ材料であることが確認された。すなわち、本発明のオレイン
酸被覆六角板状酸化亜鉛は、優れた不飽和脂肪酸吸着能力とすべり性を持ち合わせた不飽和脂肪酸吸着剤であることが確認された。
【0044】
本発明の不飽和脂肪酸吸着剤は、化粧崩れ抑制に有効で、使用感を損なわず高いすべり性をもつ化粧料用素材として好適に使用できる。