【実施例】
【0027】
以下には、蓄電デバイスを具体的に実施した例を実験例として説明する。実験例2〜4、8〜10が実施例に相当し、実験例1、5〜7、11、12が比較例に相当する。
【0028】
[実験例1]
(2、6−ナフタレンジカルボン酸ジリチウムの層状構造体の合成)
2、6−ナフタレンジカルボン酸ジリチウム(Naphとも称する)の構造を有する層状構造体(式(5))を合成した。この層状構造体の合成には、出発原料として2、6−ナフタレンジカルボン酸および水酸化リチウム1水和物(LiOH・H
2O)を用いた。まず、水酸化リチウム1水和物(0.556g)にメタノール(100mL)を加え、撹拌した。水酸化リチウム1水和物を溶解したのち、2、6−ナフタレンジカルボン酸(1.0g)を加え1時間撹拌した。撹拌後溶媒を除去し、真空下150℃で16時間乾燥することにより、白色の粉末試料を得た。
【0029】
(負極の作製)
得られた粉末試料を73.9質量%、粒子状炭素導電材としてカーボンブラック(東海カーボン製TB5500)を13.0質量%、水溶性ポリマーであるカルボキシメチルセルロース(CMC、ダイセルファインケム、CMCダイセル1120)を5.2質量%、スチレンブタジエン共重合体(SBR、日本ゼオン製BM−400B)を7.8質量%混合し、分散剤として水を適量添加、分散してスラリー状合材とした。このスラリー状合材を10μm厚の銅箔集電体に単位面積当たりのNaph活物質が2.15mg/cm
2となるように均一に塗布し、加熱乾燥させて塗布シートを作製した。その後、塗布シートを加圧プレス処理し、10cm
2の面積に打ち抜いて円盤状の負極とした。
【0030】
(活性炭正極の作製)
ヤシ殻活性炭(クラレケミカル製YP−50F)を83.0質量%、粒子状炭素導電材としてカーボンブラック(東海カーボン製、TB5500)を10.7質量%、水溶性ポリマーであるカルボキシメチルセルロース(CMC、ダイセルファインケム、CMCダイセル1120)を4.0質量%、スチレンブタジエン共重合体(SBR、日本ゼオン製BM−400B)を2.3質量%混合し、分散剤として水を適量添加、分散してスラリー状合材とした。このスラリー状合材を15μm厚のアルミニウム箔集電体に単位面積当たりの活性炭活物質が4.11mg/cm
2となるように均一に塗布し、加熱乾燥させて塗布シートを作製した。その後、塗布シートを加圧プレス処理し、10cm
2の面積に打ち抜いて円盤状の正極とした。その後、この正極をアルゴン不活性雰囲気下で300℃、12時間焼成を行った。
【0031】
(蓄電デバイスの作製)
エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネートを体積比で30:40:30の割合で混合した非水溶媒にヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)を1.0mol/Lになるように添加して非水電解液を作製した。上記作製したNaph負極と、活性炭正極との間に上記非水電解液を含浸させたセパレータ(東レ東燃製)を挟んで実験例1の蓄電デバイスを作製した。この負極は、事前に、以下の処理を施したものを用いた。この負極は、Naph電極を作用極とし、リチウム金属箔(厚み300μm)を対極として、両電極の間に上記非水電解液を含浸させたセパレータ(東レ東燃製)を挟んで二極式セルを作製し、20℃の温度環境下、0.3mAで0.5Vまで還元したあと、0.075mAで1.5Vまで酸化させ、電極の容量密度を算出し、その容量密度の半分まで還元させた。
【0032】
[実験例2〜6]
正極の活性炭活物質を単位面積あたり3.11mg/cm
2とした以外は実験例1と同様の工程を経て得られたものを実験例2の蓄電デバイスとした。また、正極の活性炭活物質を単位面積あたり2.00mg/cm
2とした以外は実験例1と同様の工程を経て得られたものを実験例3の蓄電デバイスとした。また、負極のNaph活物質を単位面積あたり3.75mg/cm
2とし、正極の活性炭活物質を単位面積あたり3.11mg/cm
2とした以外は実験例1と同様の工程を経て得られたものを実験例4の蓄電デバイスとした。また、負極のNaph活物質を単位面積あたり6.40mg/cm
2とし、正極の活性炭活物質を単位面積あたり3.11mg/cm
2とした以外は実験例1と同様の工程を経て得られたものを実験例5の蓄電デバイスとした。また、負極のNaph活物質を単位面積あたり7.55mg/cm
2とし、正極の活性炭活物質を単位面積あたり3.11mg/cm
2とした以外は実験例1と同様の工程を経て得られたものを実験例6の蓄電デバイスとした。
【0033】
[実験例7]
(4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジリチウムの層状構造体の合成)
4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジリチウム(Bphとも称する)の構造を有する層状構造体(式(6))を合成した。この層状構造体の合成には、出発原料として4,4’−ビフェニルジカルボン酸および水酸化リチウム1水和物(LiOH・H
2O)を用いた。まず、水酸化リチウム1水和物にメタノールを加え、撹拌した。水酸化リチウム1水和物を溶解したのち、4,4’−ビフェニルジカルボン酸を加え1時間撹拌した。撹拌後溶媒を除去し、真空下150℃で16時間乾燥することにより白色の粉末試料を得た。
【0034】
Naph活物質の代わりにBph活物質を用いて負極を作製した。負極のBph活物質を単位面積あたり2.05mg/cm
2とし、正極活性炭の活物質を単位面積あたり4.11mg/cm
2とした以外は実験例1と同様の工程を経て得られたものを実験例7の蓄電デバイスとした。
【0035】
[実験例8〜12]
正極の活性炭活物質を単位面積あたり3.11mg/cm
2とした以外は実験例7と同様の工程を経て得られたものを実験例8の蓄電デバイスとした。また、正極の活性炭活物質を単位面積あたり2.00mg/cm
2とした以外は実験例7と同様の工程を経て得られたものを実験例9の蓄電デバイスとした。また、負極のBph活物質を単位面積あたり3.74mg/cm
2とし、正極の活性炭活物質を単位面積あたり3.11mg/cm
2とした以外は実験例7と同様の工程を経て得られたものを実験例10の蓄電デバイスとした。また、負極のBph活物質を単位面積あたり5.92mg/cm
2とし、正極の活性炭活物質を単位面積あたり3.11mg/cm
2とした以外は実験例7と同様の工程を経て得られたものを実験例11の蓄電デバイスとした。また、負極のBph活物質を単位面積あたり7.69mg/cm
2とし、正極の活性炭活物質を単位面積あたり3.11mg/cm
2とした以外は実験例7と同様の工程を経て得られたものを実験例12の蓄電デバイスとした。
【0036】
[二極式評価セルによる単極の評価]
上述した活性炭正極、Naph負極及びBph負極に対して、リチウム金属箔(厚み300μm)を対極として、両電極の間に上記非水電解液を含浸させたセパレータ(東レ東燃製)を挟んで二極式セルを作製して、20℃の温度環境下で単極の評価を行った。活性炭正極は下限電圧を2.3V及び上限電圧4.6Vとし、Naph負極及びBph負極は下限電圧を0.5V及び上限電圧1.5Vとして10サイクルの充放電試験を行った。10サイクル目の容量密度(mAh/g)を各活物質の容量密度とし、単位面積あたりの活物質量(mg/cm
2)を用い、以下に示すセル設計パラメータαを算出した。
【0037】
【数1】
【0038】
(充放電特性評価)
上記作製した蓄電デバイスを20℃の温度環境下、0.3mAで3.4Vまで充電したあと、0.3mAで1.5Vまで放電させた。この充放電操作を5回行った。この5サイクル目の放電容量から単位質量あたりのエネルギー密度(Wh/kg)を求めた。また、20℃の温度環境下、上記条件で100サイクルの連続充放電試験を行い、容量維持率を検討した。この充放電操作の1回目の充電容量をQ(1st)、100回目の充電容量をQ(100th)とし、Q(100th)/Q(1st)×100を100サイクル後の容量維持率(%)とした。
【0039】
(結果と考察)
上記作製した蓄電デバイスの詳細と、セル設計パラメータα、単位質量あたりのエネルギー密度(Wh/kg)、充放電サイクルでの容量維持率(%)を表1にまとめた。また、
図5は、セル設計パラメータαと容量維持率との関係図である。
図6は、セル設計パラメータαと単位質量あたりのエネルギー密度との関係図である。表1に示すように、正極活物質を炭素質材料とし、負極活物質を芳香族ジカルボン酸塩の層状構造体としたときに、セル設計パラメータαが1.5<α<4.0の範囲を満たす、より好ましくは、1.6≦α≦3.2の範囲を満たすと、70Wh/kg以上という高いエネルギー密度を示すことが明らかとなった(
図6)。また、このセル設計パラメータαの範囲内では、充放電サイクルの容量維持率も、80%以上など高い値を示し、高いサイクル特性を示すことがわかった。また、正極活物質量wpは、2.0〜3.2mg/cm
2の範囲が好ましく、負極活物質量wnは、2.0〜3.8mg/cm
2の範囲が好ましいことがわかった。
【0040】
【表1】