特許第6756341号(P6756341)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オムロン株式会社の特許一覧

特許6756341センサ装置、計測システム、および計測方法
<>
  • 特許6756341-センサ装置、計測システム、および計測方法 図000002
  • 特許6756341-センサ装置、計測システム、および計測方法 図000003
  • 特許6756341-センサ装置、計測システム、および計測方法 図000004
  • 特許6756341-センサ装置、計測システム、および計測方法 図000005
  • 特許6756341-センサ装置、計測システム、および計測方法 図000006
  • 特許6756341-センサ装置、計測システム、および計測方法 図000007
  • 特許6756341-センサ装置、計測システム、および計測方法 図000008
  • 特許6756341-センサ装置、計測システム、および計測方法 図000009
  • 特許6756341-センサ装置、計測システム、および計測方法 図000010
  • 特許6756341-センサ装置、計測システム、および計測方法 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6756341
(24)【登録日】2020年8月31日
(45)【発行日】2020年9月16日
(54)【発明の名称】センサ装置、計測システム、および計測方法
(51)【国際特許分類】
   G08C 15/06 20060101AFI20200907BHJP
   G08C 15/00 20060101ALI20200907BHJP
   H04Q 9/00 20060101ALI20200907BHJP
【FI】
   G08C15/06 H
   G08C15/00 E
   H04Q9/00 311K
【請求項の数】10
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-45568(P2018-45568)
(22)【出願日】2018年3月13日
(65)【公開番号】特開2019-159792(P2019-159792A)
(43)【公開日】2019年9月19日
【審査請求日】2020年3月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(72)【発明者】
【氏名】赤井 亮太
(72)【発明者】
【氏名】西田 秀志
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 智博
(72)【発明者】
【氏名】杉井 祐太
(72)【発明者】
【氏名】幡山 五郎
【審査官】 菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−215632(JP,A)
【文献】 特開2013−9228(JP,A)
【文献】 特開2014−203397(JP,A)
【文献】 特開2017−15603(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08C 15/00−15/12
G08C 17/00−17/06
G01D 21/00−21/02
H04Q 9/00
G01V 1/00− 1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物に関係する計測対象物理量を計測するセンサ装置であって、
前記計測対象物理量を計測する計測部と、
トリガ用物理量を検出するトリガ検出部と、
前記トリガ検出部により検出される前記トリガ用物理量の検出結果に応じて前記計測部の動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記トリガ用物理量の大きさが所定のトリガ閾値を超える場合に、前記計測部を非計測状態から計測状態に切り替えて計測処理を開始させ、
第1所定期間に前記トリガ検出部により検出された複数の前記トリガ用物理量をその大きさの順に登録されたテーブルにおいて、予め設定された少なくとも一つの設定順位のうち第1の設定順位に登録された前記トリガ用物理量を、前記第1所定期間に続く第2所定期間における前記トリガ閾値に設定する、センサ装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第2所定期間に前記トリガ検出部により検出された前記トリガ用物理量の大きさが、前記第1の設定順位に登録された前記トリガ用物理量を超える場合に、前記計測処理を開始させる、
請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項3】
前記テーブルには、前記第1の設定順位と、前記第1の設定順位より上位の第2の設定順位とを含む複数の設定順位が設定されており、
前記第2所定期間に前記トリガ検出部により検出された前記トリガ用物理量の大きさが、前記テーブルにおいて前記第1の設定順位に登録された前記トリガ用物理量の大きさより大きい場合に、前記制御部は、前記トリガ閾値を、前記第1の設定順位に登録された前記トリガ用物理量から、前記テーブルにおいて前記第2の設定順位に登録された前記トリガ用物理量に変更する、
請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第2所定期間が開始されると、前記第1所定期間に前記テーブルに登録された複数の前記トリガ用物理量を削除し、前記第2所定期間に前記トリガ検出部により検出された前記トリガ用物理量を順次、前記テーブルに登録する、
請求項1から請求項3の何れか1項に記載のセンサ装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第2所定期間が開始されると、前記第1所定期間に前記テーブルに登録された複数の前記トリガ用物理量のうち一部の前記トリガ用物理量を削除し、残りの前記トリガ用物理量のうち削除された前記トリガ用物理量の登録順位より下位に登録された前記トリガ用物理量の登録順位を繰り上げて前記テーブルを更新し、更新された前記テーブルに、前記第2所定期間に前記トリガ検出部により検出された前記トリガ用物理量を順次登録する、
請求項1から請求項3の何れか1項に記載のセンサ装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第2所定期間に前記トリガ検出部により検出された前記トリガ用物理量が、前記第2所定期間に前記テーブルに登録された複数の前記トリガ用物理量のうち最小値の前記トリガ用物理量より大きい場合に、前記第2所定期間に前記トリガ検出部により検出された当該トリガ用物理量を、前記テーブルに登録する、
請求項3に記載のセンサ装置。
【請求項7】
前記第1の設定順位および前記第2の設定順位は、所定期間に実行される前記計測部による計測処理の発生頻度に基づいて予め設定される、
請求項3に記載のセンサ装置。
【請求項8】
前記第1所定期間および前記第2所定期間の長さは、前記構造物の平常時における変動状況に基づいて設定される、
請求項1から請求項7の何れか1項に記載のセンサ装置。
【請求項9】
構造物に関係する計測対象物理量を計測する計測システムであって、
請求項1から請求項8の何れか1項に記載のセンサ装置と、
前記センサ装置から前記計測対象物理量の計測結果を示す計測データを受信するサーバ装置と、
を備える計測システム。
【請求項10】
構造物に関係する計測対象物理量を計測する計測方法であって、
トリガ用物理量を検出する工程と、
第1所定期間に検出された複数の前記トリガ用物理量をその大きさの順にテーブルに登録する工程と、
複数の前記トリガ用物理量が登録された前記テーブルにおいて、予め設定された少なくとも一つの設定順位のうち第1の設定順位に登録された前記トリガ用物理量を、前記第1所定期間に続く第2所定期間におけるトリガ閾値に設定する工程と、
前記第2所定期間において、前記第2所定期間に検出された前記トリガ用物理量の大きさが前記トリガ閾値を超える場合に、前記計測対象物理量を計測する計測部を非計測状態から計測状態に切り替えて前記計測対象物理量の計測処理を開始させる工程と、
を含む計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物に関係する物理量を計測するセンサ装置、計測システム、および計測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、橋梁、ビル等の構造物に設置したセンサ装置により当該構造物に関係する物理量を計測し、計測結果に基づいて当該構造物の損傷、劣化などの度合い、発生箇所などを予測する、構造物のヘルスモニタリング技術が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、計測対象の物理量を計測する計測用センサと、計測用センサを起動させる条件である起動条件を検出する起動用センサとを備え、起動用センサによって前記起動条件が検出された場合に計測用センサを非起動状態から起動状態に切り替えるセンサ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−009079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、構造物は、当該構造物が設置される場所、環境などによって前記物理量が異なる。また、一つの構造物においても、部位によって前記物理量が異なる。例えば、橋梁の場合、橋脚付近の部位の振動の大きさと、隣り合う橋脚同士の中央付近の部位の振動の大きさとは異なる。このため、計測用センサの起動条件(トリガ閾値)は、当該計測用センサが設置される場所に応じて個別に設定する必要がある。この点、従来の技術では、管理者が前記トリガ閾値を手動で設定しており、手間がかかるという問題がある。また、前記トリガ閾値の大きさは、前記計測用センサ(計測部)の計測頻度(エネルギー消費量)に影響を与えるため、省エネルギー化の観点からも前記トリガ閾値を適切な値に設定する必要がある。
【0006】
本発明の目的は、構造物に関係する物理量を計測するセンサ装置において、エネルギー消費量を低減するとともに、計測部を非計測状態から計測状態に切り替える条件となるトリガ閾値を、管理者の手間を省きつつ適切な値に設定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の局面にかかるセンサ装置は、構造物に関係する計測対象物理量を計測するセンサ装置であって、前記計測対象物理量を計測する計測部と、トリガ用物理量を検出するトリガ検出部と、前記トリガ検出部により検出される前記トリガ用物理量の検出結果に応じて前記計測部の動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記トリガ用物理量の大きさが所定のトリガ閾値を超える場合に、前記計測部を非計測状態から計測状態に切り替えて計測処理を開始させ、第1所定期間に前記トリガ検出部により検出された複数の前記トリガ用物理量をその大きさの順に登録されたテーブルにおいて、予め設定された少なくとも一つの設定順位のうち第1の設定順位に登録された前記トリガ用物理量を、前記第1所定期間に続く第2所定期間における前記トリガ閾値に設定する。
【0008】
本発明の他の局面にかかる計測システムは、構造物に関係する計測対象物理量を計測する計測システムであって、前記センサ装置と、前記センサ装置から前記計測対象物理量の計測結果を示す計測データを受信するサーバ装置と、を備える。
【0009】
本発明の他の局面にかかる計測方法は、構造物に関係する計測対象物理量を計測する計測方法であって、トリガ用物理量を検出する工程と、第1所定期間に検出された複数の前記トリガ用物理量をその大きさの順にテーブルに登録する工程と、複数の前記トリガ用物理量が登録された前記テーブルにおいて、予め設定された少なくとも一つの設定順位のうち第1の設定順位に登録された前記トリガ用物理量を、前記第1所定期間に続く第2所定期間におけるトリガ閾値に設定する工程と、前記第2所定期間において、前記第2所定期間に検出された前記トリガ用物理量の大きさが前記トリガ閾値を超える場合に、前記計測対象物理量を計測する計測部を非計測状態から計測状態に切り替えて前記計測対象物理量の計測処理を開始させる工程と、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、構造物に関係する物理量を計測するセンサ装置において、エネルギー消費量を低減するとともに、計測部を非計測状態から計測状態に切り替える条件となるトリガ閾値を、管理者の手間を省きつつ適切な値に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の実施形態にかかる計測システムの概略構成を示す説明図である。
図2図2は、本発明の実施形態にかかるセンサ装置の概略構成を示す説明図である。
図3図3は、本発明の実施形態にかかるセンサ装置で実行されるトリガ閾値設定処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図4図4は、本発明の実施形態にかかるセンサ装置で実行されるトリガ閾値設定処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図5図5は、本発明の実施形態にかかるセンサ装置の設定情報記憶部に記憶されるトリガ設定条件の一例を示す説明図である。
図6図6は、本発明の実施形態にかかるセンサ装置における計測対象の構造物の任意の位置における振動の大きさの変化の様子を示す図である。
図7図7は、本発明の実施形態にかかるセンサ装置の閾値順位記憶部に記憶される閾値順位テーブルの一例を示す説明図である。
図8図8は、本発明の実施形態にかかるセンサ装置の閾値順位記憶部に記憶される閾値順位テーブルの登録例を示す説明図である。
図9図9は、本発明の実施形態にかかるセンサ装置の閾値順位記憶部に記憶される閾値順位テーブルの一例を示す説明図である。
図10図10は、本発明の実施形態にかかるセンサ装置で実行される計測処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明を具体化した一例にすぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0013】
[計測システム1]
図1は、本発明の実施形態にかかる計測システム1の概略構成を示す説明図である。計測システム1は、センサ装置(センサノード)10、データ処理装置(シンクノード)20、データサーバ30、および外部サーバ40を備えている。
【0014】
センサ装置10は、計測対象の構造物に関係する所定の計測対象物理量(例えば、加速度、変位量、歪み、振動周波数、温度、湿度、圧力、赤外線量、音量、照度、風速など)を計測するとともに、計測結果を示す計測データをデータ処理装置20に送信する。本実施形態では、計測対象の構造物における互いに異なる複数の場所(箇所)にセンサ装置10をそれぞれ設置し、前記構造物の複数個所に関係する計測対象物理量を計測するようになっている。なお、前記構造物の種類は特に限定されるものではなく、例えば、建物、橋梁、トンネル、住宅、車両、プラント設備、パイプライン、電線、電柱、ガス供給設備、上下水道設備、遺跡など、多様な構造物に適用できる。
【0015】
具体的には、センサ装置10は、図2に示すように、電源部11と負荷部12とを備えている。負荷部12は、制御部101、トリガ検出部102、計測部103、計時部104、通信部105、設定情報記憶部106、計測データ記憶部107、および閾値順位記憶部108を備えている。
【0016】
電源部11は、負荷部12に対して当該負荷部12の各部を駆動するための電力を供給する。本実施形態では、電源部11は電池(図示せず)を備えており、この電池に蓄えられた電力を負荷部12の各部に供給する。ただし、これに限らず、電源部11がセンサ装置10の外部から供給される電力(例えば商用電力、発電設備で発電した電力など)を受電して負荷部12の各部に供給する構成であってもよい。
【0017】
制御部101は、負荷部12の各部の動作を制御する。例えば、制御部101は、前記各部の駆動/停止、前記各部からのデータ取得、取得したデータの格納、データ処理装置20との通信、トリガ閾値(トリガ条件)の設定などを制御する。
【0018】
制御部101は、例えばCPU(Central Processing Unit)等からなり、ROM等の記憶手段(図示せず)に格納されたプログラム、各種データなどに基づいて、負荷部12の各部の動作を制御する。ただし、制御部101の構成はこれに限るものではなく、例えば、ハードウェアロジックによって構成されるものであってもよく、処理の一部を行うハードウェアと当該ハードウェアの制御及び残余の処理を行うソフトウェアを実行する演算手段とを組み合わせたものであってもよい。
【0019】
トリガ検出部102は、計測対象の構造物あるいはその周囲における所定のトリガ用物理量(例えば、加速度、変位量、歪み、振動周波数、温度、湿度、圧力、赤外線量、音量、照度、風速など)を検出するトリガ用センサTS1を備えている。トリガ検出部102は、所定のトリガ条件が満たされた場合(トリガ用物理量の検出値が所定のトリガ条件を満たす場合)に、制御部101にトリガ信号を出力する。具体的には、トリガ検出部102は、トリガ用センサTS1により検出される前記トリガ用物理量が、制御部101により設定されるトリガ閾値(トリガ条件)を超える場合に、制御部101にトリガ信号を出力する。これにより、制御部101は、トリガ検出部102から入力されるトリガ信号に基づいて、計測部103の動作(例えば、非計測状態と計測状態とを切り替える動作など)を制御する。あるいは、トリガ検出部102がトリガ用センサTS1の検出値(トリガ用物理量)を制御部101に出力し、制御部101がトリガ用センサTS1の検出値と、当該検出値に基づいて設定されるトリガ閾値とを比較し、その比較結果に基づいて計測部103の動作を制御するようにしてもよい。
【0020】
トリガ検出部102は、トリガ用センサTS1に、予め設定された周期(サンプリング周期)で計測させるとともに、計測された計測値(振動値)において所定の間隔(トリガ検出間隔)でトリガ用物理量を検出する。具体的には例えば、トリガ検出部102は、トリガ用センサTS1に25Hzのサンプリング周期で計測させるとともに、計測された計測値において95秒間隔(トリガ検出間隔)でトリガ用物理量を検出する。すなわち、トリガ検出部102は、95秒の間で25Hzのサンプリング周期で計測された複数の計測値のうちの最大値を当該95秒のトリガ用物理量として検出する。このようにして、トリガ検出部102は、95秒間隔でトリガ用物理量を検出する。前記サンプリング周期及び前記トリガ検出間隔は、例えば構造物が設置される場所および環境に応じて、センサ装置10毎に管理者が設定してもよいし、データ処理装置20(あるいは制御部101、データサーバ30、または外部サーバ40)が自動的に設定するようにしてもよい。
【0021】
なお、本実施形態では、トリガ用センサTS1として振動に起因する加速度を検出する加速度センサを用いる場合について主に説明するが、トリガ用センサTS1の構成は前記トリガ用物理量を検出可能な構成であれば特に限定されるものではない。ただし、計測部103に備えられる各計測用センサの消費電力(あるいは各計測用センサの消費電力の合計値)よりもトリガ用センサTS1の方が消費電力の少ないセンサであることが好ましい。
【0022】
計測部103は、計測対象の構造物に関係する計測対象物理量(例えば、加速度、変位量、歪み、振動周波数、温度、湿度、圧力、赤外線量、音量、照度、風速など)を計測する計測用センサMS1〜MSi(iは2以上の整数)を備えている。計測部103は、計測用センサMS1〜MSiの計測結果(計測データ)を制御部101に出力する。制御部101は、計測部103から入力された計測データを計測データ記憶部107に順次記憶させるとともに、計測データ記憶部107に記憶させた計測データを所定のタイミングで読み出し、通信部105を介してデータ処理装置20に送信する。
【0023】
なお、本実施形態では、計測部103は、複数の計測用センサMS1〜MSiを備え、これら各計測用センサによって互いに異なる物理量を計測するようになっているが、これに限るものではない。例えば、計測用センサを1個だけ備え、1種類の物理量を計測するようにしてもよい。また、計測部103において計測される計測対象物理量と、トリガ検出部102において検出されるトリガ用物理量とは、同じ物理量であってもよく、異なる物理量であってもよい。
【0024】
また、本実施形態では、所定のトリガ条件が発生していない時には計測部103に計測処理を行わせず(計測部103を非計測状態にし)、所定のトリガ条件が発生した場合に制御部101が計測部103に計測処理を開始させる(計測部103を計測状態にする)。これにより、計測部103の動作時間を短縮して消費電力を低減させ、電源部11に備えられる電池の寿命の長寿命化を図っている。
【0025】
計時部104は、制御部101の指示に応じて所定のタイミングからの経過時間を計測する。例えば、制御部101は、計測部103に計測処理を開始させてからの経過時間を計時部104に計測させ、所定時間が経過したときに計測部103による計測処理を終了させる。なお、計時部104が、日付及び時刻を計時する機能を有していてもよい。
【0026】
通信部105は、他の装置(例えばデータ処理装置20)との間で無線通信による通信を行う。例えば、通信部105は、制御部101の指示に応じて、計測データ記憶部107に記憶されている計測データをデータ処理装置20に送信する。また、通信部105は、データ処理装置20(あるいはデータサーバ30)からトリガ条件等の設定指示を受信し、制御部101に出力する。なお、本実施形態では、通信部105がデータ処理装置20との間で無線通信による通信を行うものとしているが、通信方法は特に限定されるものではなく、例えば有線通信による通信を行う構成としてもよい。
【0027】
設定情報記憶部106は、トリガ検出部102および計測部103の動作パラメータ(計測時間、サンプリング周期、トリガ検出間隔、周波数等の動作条件)およびその補正値、計測部103に計測処理を開始させるトリガ条件(トリガ閾値)に関する情報等の各種設定情報を記憶する。本実施形態では、設定情報記憶部106として不揮発性メモリを用いている。なお、設定情報記憶部106の配置位置は図2に示した例に限るものではなく、例えば、設定情報記憶部106をトリガ検出部102の内部に設けてもよい。
【0028】
計測データ記憶部107は、計測部103によって計測された計測データを記憶する。本実施形態では、計測データ記憶部107として不揮発性メモリを用いており、計測データ記憶部107に一旦記憶された計測データは、制御部101の指示により、通信部105を介してデータ処理装置20に送信される。また、データ処理装置20への送信が完了した計測データは、計測データ記憶部107から適宜削除される。なお、計測データ記憶部107は、揮発性メモリが用いられてもよい。
【0029】
閾値順位記憶部108は、トリガ検出部102によって検出された検出値(トリガ用物理量)を記憶する。例えば、閾値順位記憶部108は、トリガ閾値を設定するための閾値順位テーブル(後述)を備え、前記検出値を前記閾値順位テーブルに記憶する。本実施形態では、閾値順位記憶部108として不揮発性メモリを用いている。なお、閾値順位記憶部108の配置位置は図2に示した例に限るものではなく、例えば、閾値順位記憶部108をトリガ検出部102の内部に設けてもよい。
【0030】
データ処理装置20は、図1に示したように、複数のセンサ装置10との間、およびデータサーバ30との間で通信を行うようになっており、各センサ装置10から受信した計測データに基づいて集計、解析等のデータ処理を行い、データ処理結果をデータサーバ30に送信する。なお、データ処理装置20が各センサ装置10から受信した計測データをそのままデータサーバ30に送信するようにしてもよい。また、データ処理装置20とデータサーバ30との間の通信方法は特に限定されるものではなく、有線通信であってもよく、無線通信であってもよい。なお、データサーバ30は、本発明のサーバ装置の一例である。
【0031】
外部サーバ40は、複数のデータサーバ30と通信可能であり、各データ処理装置20から受信したデータ処理結果を保存する。また、外部サーバ40は、計測システム1の管理者から各種設定情報の指示入力を受け付け、指示入力に応じた設定情報を計測システム1内の各装置に送信する。例えば、外部サーバ40は、各センサ装置10における計測部103の動作パラメータ、その補正値、計測部103に計測処理を開始させるトリガ条件(トリガ閾値)に関する情報等の各種設定情報の指示入力を受け付け、当該指示入力に応じた設定情報をデータサーバ30およびデータ処理装置20を介して各センサ装置10に送信する。
【0032】
なお、本実施形態では、データ処理装置20、データサーバ30、および外部サーバ40を備えている構成について説明するが、これに限るものではなく、これら各装置のうちの一部または全部が共通の装置であってもよい。
【0033】
ところで、計測対象の構造物が橋梁、高架道路等である場合、構造物には、交通荷重(車両等の走行に起因する荷重)、風等により定常的な振動が発生する。また、構造物には、所定震度以上の地震、所定風速以上の台風等により突発的な振動が発生する。このような構造物に生じる振動の大きさは、構造物の部位(橋脚に近い部位、橋脚から離れた部位など)により異なる。このため、構造物は、当該構造物が設置される場所だけでなく、当該構造物における部位によっても、疲労の蓄積、劣化の進行度合いなどが異なる。
【0034】
そこで、構造物の劣化などを正確に把握するためには、前記定常的な振動を適切な頻度で検出するとともに、前記突発的な振動を確実に検出することができるように、トリガ条件(トリガ閾値)を設定することが重要となる。また、構造物の劣化などを正確に把握するためには、構造物を長期間モニタリングすることも重要である。このため、計測部103の消費電力を低減させて長寿命化を図るために、計測部103の計測頻度が必要最小限度となるように、トリガ閾値を設定することが重要となる。
【0035】
本実施形態にかかるセンサ装置10は、エネルギー消費量(消費電力)を低減するとともに、計測部103を非計測状態から計測状態に切り替える条件となるトリガ閾値(トリガ条件)を、管理者の手間を省きつつ適切な値に設定することを可能にする構成を備えている。
【0036】
具体的には、制御部101は、トリガ検出部102によって検出される検出値(トリガ用物理量)が登録される前記閾値順位テーブルを参照して、トリガ閾値を設定する。例えば、トリガ検出部102は、平常時の一定期間、構造物に生じる振動を検出(学習)し、制御部101は、検出された一定期間分の構造物の振動状況(変動状況)を用いて、リアルタイムにトリガ閾値を設定、変更(更新)していく。前記一定期間は、構造物の平常時の変動状況(パターン)(例えば交通量の変化の周期性)を考慮して、7日間(1週間)に設定される。前記振動状況は、前記一定期間毎に更新される。以下、トリガ閾値の設定方法について、具体例を挙げて説明する。
【0037】
[トリガ閾値設定処理]
図3および図4は、センサ装置10で実行されるトリガ閾値設定処理の手順の一例を示すフローチャートである。図3および図4において、「S」は処理手順のステップ(工程)番号を示す。トリガ閾値設定処理は、本発明の計測方法の一例である。
【0038】
なお、本実施形態では、トリガ閾値設定処理の開始に先立って、設定情報記憶部106に、計測部103の動作制御に用いる設定情報を記憶させておく。
【0039】
図5は、設定情報記憶部106に記憶される設定情報に含まれるトリガ設定条件の一例を示す説明図である。図5の例では、トリガ閾値(トリガ条件)を決定するためのトリガ設定条件として、閾値設定順位と、更新期間とが設定されている。更新期間は、前記一定期間に相当する。閾値設定順位は、前記一定期間において、トリガ検出部102がトリガ用センサTS1により検出したトリガ用物理量(検出値)を大きい順に並べた場合のトリガ用物理量の順位である。閾値設定順位に対応するトリガ用物理量が、トリガ閾値として設定される。
【0040】
例えば、トリガ設定条件として、前記一定期間(更新期間)を「7日間」に設定し、閾値設定順位を「第1位」に設定した場合、7日間で検出される複数の検出値のうち、最大値(第1位)の検出値が1回検出されることになるため、7日に1回の割合で、トリガ条件が満たされて計測部103による計測処理が実行されることになる。また例えば、トリガ設定条件として、前記一定期間を「7日間」に設定し、閾値設定順位を「第7位」に設定した場合、7日間で検出される複数の検出値のうち、最大値(第1位)から「第7位」までの7個の検出値が検出されることになるため、平均的に1日に1回の割合で、トリガ条件が満たされて計測部103による計測処理が実行されることになる。
【0041】
このように、トリガ設定条件に設定される閾値設定順位に応じて、計測部103による計測処理の頻度が変更される。閾値設定順位は、例えば計測処理の発生頻度に基づいて予め設定される。具体的には例えば、閾値設定順位は、過去の計測結果と所望する計測処理の発生頻度とに基づいて設定される。一例を挙げると、閾値設定順位として、計測処理の発生頻度が比較的高くなる下位順位(例えば、第7位)と、計測処理の発生頻度が比較的低くなる上位順位(例えば、第1位)とが設定される。なお、「第7位」は、本発明の第1の設定順位の一例であり、「第1位」は、本発明の第2の設定順位の一例である。また、閾値設定順位は、最初の電池容量(または電池残量)と1回当たりの計測による消費電力、計測処理を実行(動作)させたい期間から算出される発生頻度などに基づいて設定されてもよい。
【0042】
また、ここでは、一例として、前記一定期間(更新期間)を「7日間」に設定するとともに、トリガ検出部102が、1日に1回のペース(トリガ検出間隔)でトリガ用センサTS1によりトリガ用物理量を検出するものとする。また、計測対象物理量として、加速度を例に挙げる。すなわち、トリガ検出部102は、前記一定期間(7日間)毎に、7個のトリガ用物理量(加速度)を検出するものとする。なお、ここでは発明の概念の理解を容易にするために、前記トリガ検出間隔を「1日」に設定しているが、実用上は例えば、トリガ検出部102は、所定の周期(例えば25Hz)でトリガ用センサTS1に計測させつつ、1分間隔でトリガ用物理量を検出する。この場合、トリガ検出部102は、前記一定期間(7日間)毎に、10080個のトリガ用物理量を検出する。
【0043】
また、ここでは、任意の7日間(第1更新期間)において、トリガ検出部102が、7個のトリガ用物理量を検出したものとする。図6は、計測対象の構造物の任意の位置(部位)における振動の大きさ(振幅)の変化の様子を示す図である。トリガ検出部102は、例えば、1日に1回のペース(トリガ検出間隔)でトリガ用センサTS1によりトリガ用物理量を検出する。制御部101は、検出された各トリガ用物理量を、閾値順位記憶部108のる閾値順位テーブルに登録する。図6には、第2更新期間において検出される7個のトリガ用物理量を例示している。なお、図6および以降の図に示す各トリガ用物理量の値は、説明の便宜上例示するものである。第1更新期間は、本発明の第1所定期間の一例であり、第2更新期間は、本発明の第2所定期間の一例である。
【0044】
図7の(A)は、第1更新期間における閾値順位テーブルの一例を示す図である。同図に示すように、制御部101は、各トリガ用物理量を、値が大きい順に並べて閾値順位テーブルに登録する。第1更新期間における閾値順位テーブルは、第2更新期間におけるトリガ閾値設定処理に用いられる。
【0045】
以下では、第1更新期間が終了した時点からの処理を説明する。またここでは、トリガ設定条件の閾値設定順位が「第7位」に設定されているものとする。
【0046】
まず、制御部101は、トリガ検出部102のトリガ閾値(トリガ条件)を、図7の(A)の閾値順位テーブルの「第7位」に対応する「30」に設定する(S101)。なお、制御部101は、設定したトリガ閾値を設定情報記憶部106に記憶する。
【0047】
次に、更新期間が経過した場合(S102:YES)、制御部101は、閾値順位記憶部108の閾値順位テーブルを初期化し(S103)、更新期間が経過していない場合(S102:NO)、処理はステップS104に移行する。ここでは、第1更新期間が終了したため、処理はステップS103に移行し、制御部101は、閾値順位テーブルを初期化する。図7の(B)には、初期化された閾値順位テーブルを示している。例えば、制御部101は、第2更新期間が開始されると、第1更新期間に閾値順位テーブルに登録された複数のトリガ用物理量を削除する。
【0048】
第2更新期間が始まると、制御部101は、トリガ検出部102にトリガ用物理量の検出を開始させる(S104)。これにより、トリガ検出部102は、トリガ用センサTS1により、予め設定された間隔(トリガ検出間隔)でトリガ用物理量を検出する。ここでは、第2更新期間(7日間)において7回トリガ用物理量を検出するため、前記トリガ検出間隔は例えば24時間に設定される。図6に示す第2更新期間(7日間)の「a」〜「g」は、24時間毎にトリガ用物理量を検出する検出タイミングを示している。なお、前記トリガ検出間隔は、計時部104により計時される。
【0049】
トリガ検出部102は、図6に示す時間「a」のタイミングで、トリガ用物理量を検出する。具体的には、まず、トリガ検出部102は、1回の検出処理において、所定期間に検出される検出値の最大値を、当該検出処理における検出値として取得する。一般的に1回の振動により複数の検出値が検出されるため、トリガ用物理量の適切な値を検出するために、所定期間において検出される複数の検出値のうち最大値を、当該振動に対する検出値とする。例えば、トリガ検出部102は、時間「a」のタイミングに応じて、所定期間(例えば1分間)に複数の検出値を検出し、その内の最大値を時間「a」における検出値して検出する。なお、前記所定期間および検出タイミングは、計時部104により計時される。
【0050】
次に、トリガ検出部102は、検出した検出値に基づいて、トリガ用物理量を取得(算出)する(S105)。具体的には、トリガ検出部102は、前記検出値から基準値(図6参照)を減算して算出された値をトリガ用物理量とする。前記基準値は、構造物に負荷が生じていない場合のトリガ検出部102の検出値である。前記基準値は、構造物の劣化の進行度合いなどにより変動するため、前記検出値から前記基準値を減算することにより適切な振動変化量(トリガ用物理量)を算出することができる。ここでは、前記基準値は、最適な値に設定されているものとする。トリガ検出部102において算出されたトリガ用物理量は、振動の大きさ(変化量)を表す。ここでは、ステップS105で算出されたトリガ用物理量が、「38」(図6参照)であったとする。
【0051】
次に、制御部101は、閾値順位テーブルに登録されたトリガ用物理量の登録数が、予め設定された設定登録数に達したか否かを判定する(S106a)。閾値順位テーブルには、トリガ用物理量を登録可能な登録数が予め設定されている。ここでは、前記設定登録数は「7個」に設定されている。前記トリガ用物理量の登録数が設定登録数に達した場合(S106a:YES)、処理はS106bに移行し、前記トリガ用物理量の登録数が設定登録数に達していない場合(S106a:NO)、処理はS107に移行する。
【0052】
ステップS107では、制御部101は、トリガ検出部102からトリガ用物理量を取得し、前記トリガ用物理量を、閾値順位テーブルの該当する順位に登録する。ここでは、制御部101は、前記トリガ用物理量「38」を閾値順位テーブルの最上位(登録順位:第1位)に設定する(図8の(a)参照)。その後、処理はステップS108に移行する。
【0053】
ステップS106bでは、制御部101は、前記トリガ用物理量が、閾値順位テーブルの最小値より大きいか否かを判定する(S106b)。前記トリガ用物理量が、閾値順位テーブルの最小値より大きい場合(S106b:YES)、処理はステップS107に移行し、前記トリガ用物理量が、閾値順位テーブルの最小値以下である場合(S106b:NO)、処理はステップS108に移行する。このように、閾値順位テーブルに登録されたトリガ用物理量の登録数が、設定登録数に達するまでは、算出された前記トリガ用物理量が、該当する順位に順次登録されていく。そして前記登録数が前記設定登録数に達すると、前記トリガ用物理量が閾値順位テーブルの最下位に登録されているトリガ用物理量(最小値)より大きい場合に、当該前記トリガ用物理量が、該当する順位に登録され、最下位のトリガ用物理量が閾値順位テーブルから削除される。
【0054】
次に、トリガ検出部102は、前記トリガ用物理量が、現在のトリガ閾値より大きいか否かを判定する(S108)。ここでは、前記トリガ用物理量「38」が、現在のトリガ閾値「30」(図7の(A)参照)より大きいため、処理はステップS109に移行する。この場合、トリガ検出部102は、トリガ用センサTS1の検出結果(トリガ用物理量「38」)が制御部101によって設定されたトリガ条件(トリガ閾値「30」)を満たすため、制御部101に対して、検出されたトリガ条件に対応するトリガ信号を出力する。
【0055】
制御部101は、トリガ検出部102からトリガ信号が入力されると、計測部103に計測用物理量の計測を開始させる(S109)。すなわち、計測部103を非計測状態から計測状態に切り替える。これにより、計測部103は、計測処理(図10参照)を実行する。なお、トリガ閾値設定処理と計測処理とは並行して実行される。
【0056】
次に、制御部101は、トリガ設定条件に、現在の閾値設定順位より上位の閾値設定順位が設定されているか否かを判定する(S110)。ここでは、トリガ設定条件(図5参照)に、現在の閾値設定順位「第7位」より上位の閾値設定順位「第1位」が設定されているため(S110:YES)、処理はステップS111に移行する。
【0057】
S111において、制御部101は、現在の閾値設定順位「第7位」のトリガ閾値「30」を、上位の閾値設定順位「第1位」の設定値「59」(図7の(A)参照)に変更する。その後、処理はステップS102に戻り、上述の処理が繰り返される。なお、センサ装置10で実行される計測処理(図10参照)において、計測データがセンサ装置10からデータ処理装置20に送信されると、閾値設定順位がトリガ設定条件(図5参照)に設定された閾値設定順位のうち最下位に変更(リセット)される(図10のステップS204参照)。例えば、計測データがセンサ装置10からデータ処理装置20に送信されると、閾値設定順位が「1位」から「7位」に変更(リセット)される。閾値設定順位のリセット動作は、所定のタイミングで行われる。
【0058】
ステップS102に戻り、図6に示す時間「b」で検出されたトリガ用物理量が「35」であった場合、制御部101は、当該トリガ用物理量「35」を閾値順位テーブルの「第2位」(登録順位)に登録する(図8の(b)参照)(S107)。
【0059】
次に、S108において、トリガ用物理量「35」が現在の閾値「59」より小さいため(S108:NO)、計測部103による計測処理は行われず、処理はステップS102に戻る。
【0060】
ステップS102に戻り、図6に示す時間「c」で検出されたトリガ用物理量が「43」であった場合、制御部101は、当該トリガ用物理量「43」を閾値順位テーブルの「第1位」(登録順位)に登録する(図8の(c)参照)(S107)。なお、既に登録されているトリガ用物理量「35」、「38」は、登録順位を繰り下げる。
【0061】
次に、ステップS108において、トリガ用物理量「43」が現在の閾値「59」より小さいため(S108:NO)、計測部103による計測処理は行われず、処理はステップS102に戻る。
【0062】
ステップS102に戻り、図6に示す時間「d」で検出されたトリガ用物理量が「62」であった場合、制御部101は、当該トリガ用物理量「62」を閾値順位テーブルの「第1位」(登録順位)に登録する(図8の(d)参照)(S107)。
【0063】
次に、ステップS108において、トリガ用物理量「62」が現在の閾値「59」より大きいため(S108:YES)、処理はステップS109に移行する。これにより、計測部103は、計測処理(図10参照)を実行する。
【0064】
次に、ステップS110において、トリガ設定条件(図5参照)に、現在の閾値設定順位「第1位」より上位の閾値設定順位が設定されていないため(S110:NO)、処理はステップS102に戻る。
【0065】
図6に示す時間「e」、「f」、「g」で検出されたトリガ用物理量「36」、「49」、「29」については、それぞれ、上述の処理により、閾値順位テーブルの「第5位」、「第2位」、「第7位」(登録順位)に登録される(図8の(g)参照)。
【0066】
この時点で、閾値順位テーブルに登録されたトリガ用物理量の登録数が、設定登録数に達する(S106a:YES)。このため、例えば次に検出されたトリガ用物理量が「32」であった場合、当該トリガ用物理量「32」は、閾値順位テーブル(図8の(g)参照)の最小値「29」より大きいため(S106b:YES)、制御部101は、トリガ用物理量「32」を閾値順位テーブルの「第7位」に登録し、トリガ用物理量「29」を削除する。また、例えば検出されたトリガ用物理量が「25」であった場合、当該トリガ用物理量「25」は、前記最小値「29」以下であるため(S106b:NO)、処理はステップS102に戻る。
【0067】
その後ステップS102に戻り、第2更新期間が経過したと判定されると(S102:YES)、処理はステップS103に移行し、制御部101は、閾値順位記憶部108の閾値順位テーブル(図8の(g)参照)を初期化する(図8の(h)参照)。第2更新期間における閾値順位テーブルは、第3更新期間におけるトリガ閾値設定処理に用いられる(図9参照)。
【0068】
ここで、第2更新期間においてトリガ設定条件の閾値設定順位が「第7位」から「第1位」に変更されるため、閾値設定順位のリセット動作(図10のステップS204参照)が行われない場合は、第3更新期間で初めに用いられるトリガ閾値は、第2更新期間における閾値順位テーブルの「第1位」に設定されたトリガ用物理量「62」に設定される(図9参照)。なお、閾値設定順位のリセット動作(図10のステップS204参照)が行われた場合は、閾値設定順位が「1位」から「7位」に変更(リセット)される。以降は、各更新期間において上述の処理が繰り返される。
【0069】
[計測処理]
図10は、センサ装置10で実行される計測処理の手順の一例を示すフローチャートである。計測処理は、本発明の計測方法の一例である。計測処理は、上述のトリガ閾値設定処理と並行して実行される。
【0070】
制御部101は、トリガ検出部102からトリガ信号が入力されると(S201:YES)、計測部103に計測用物理量の計測を開始させる。すなわち、計測部103を非計測状態から計測状態に切り替える。これにより、計測部103は、計測処理を開始する(S202)。
【0071】
計測部103は、計測結果(計測データ)を制御部101に出力する。制御部101は、計測部103から入力された計測データを計測データ記憶部107に順次記憶させるとともに、計測データ記憶部107に記憶させた計測データを所定のタイミングで読み出し、通信部105を介してデータ処理装置20に送信する(S203)。
【0072】
次に、制御部101は、閾値設定順位をトリガ設定条件(図5参照)に設定された閾値設定順位のうち最下位に変更(リセット)する(S204)。例えば、制御部101は、閾値設定順位を「1位」から「7位」に変更する。
【0073】
次に、制御部101は、計測部103の動作制御を終了するか否かを判断し(S205)、終了しない場合にはステップS201の処理に戻る。なお、制御部101は、計測部103に計測処理を開始させた後の経過時間が所定時間に達したときに計測処理を完了させるように制御してもよい。
【0074】
以上のように、本実施形態にかかるセンサ装置10では、所定のトリガ条件が満たされる(トリガ用物理量がトリガ閾値を超える)までは計測部103を非計測状態にしておき、所定のトリガ条件が満たされたときに計測部103を非計測状態から計測状態に切り替えて計測対象物理量の計測処理を開始させる。
【0075】
これにより、計測部103の稼働時間を短縮して省エネルギー化を図ることができる。したがって、センサ装置10の電源として備えられる電池の交換頻度あるいは充電頻度を低減することができる。また、センサ装置10の電源電力を外部から受電する構成の場合には、各センサ装置10の消費電力の低減によりランニングコストの低減を図ることができる。また、計測処理の発生頻度を所望の頻度に調整することができるため、各センサ装置10の消費電力を所望の値に調整することができる。よって、電池の寿命及び交換頻度、充電頻度を予測することができ、センサ装置10を管理し易くなる。
【0076】
また、本実施形態にかかるセンサ装置10では、トリガ閾値を、トリガ検出部102により検出されるトリガ用物理量に基づいて定期的(リアルタイム)に更新していく。例えば、トリガ検出部102により検出されるトリガ用物理量が平均的に大きく、計測部103による計測処理の頻度が高くなる場合は、センサ装置10は、予め設定される閾値設定順位に基づいて、トリガ条件を満たす頻度が低くなるように、トリガ閾値を大きい値に変更する。
【0077】
この構成によれば、構造物に設置されるセンサ装置10毎に、最適なトリガ閾値を設定することができる。また、構造物に対する環境の変化に応じて最適なトリガ閾値を設定することができる。また、予め設定されるトリガ設定条件(図5参照)の閾値設定順位に基づいて、定期的(リアルタイム)にトリガ閾値が自動的に更新される。このため、例えば、管理者が計測部103による計測処理の頻度を確認して、手動によりトリガ閾値を変更するなどの操作が不要となるため、管理者の手間を省くことができる。
【0078】
なお、予め設定されるトリガ設定条件の閾値設定順位は、少なくとも一つ設定されていればよい。例えば、閾値設定順位が一つ設定されている場合は、制御部101は、各更新期間において、当該順位に対応するトリガ用物理量をトリガ閾値に設定する。
【0079】
また、閾値設定順位は、3つ以上設定されてもよい。閾値設定順位の数を多くすることにより、計測部103による計測処理の頻度を細かく調整することができる。
【0080】
[変形例]
制御部101は、上述のトリガ閾値設定処理により設定されるトリガ閾値を補正する補正処理を実行してもよい。
【0081】
例えば、前記トリガ閾値設定処理により設定されたトリガ閾値に基づいて計測部103が計測処理を実行した場合であって、当該計測処理の頻度が高いと判断される場合、または、当該計測処理の頻度を低くしても問題がないと判断される場合、制御部101は、前記トリガ閾値設定処理により設定されたトリガ閾値を補正した値を、補正後のトリガ閾値として設定する。
【0082】
例えば、制御部101は、現在設定されている閾値設定順位(例えば、「第1位」)のトリガ用物理量(例えば、「62」)に、所定値(例えば、「10」)を加算して算出される値(「72」)を、補正後のトリガ閾値として設定する。
【0083】
また、制御部101は、現在設定されている閾値設定順位(「第1位」)のトリガ用物理量(例えば、「62」)に、所定係数(例えば、「1.2」)を乗算して算出される値(「74.4」)を、補正後のトリガ閾値として設定する。
【0084】
これにより、計測部103による計測処理の頻度を適切な頻度に設定することができる。なお、前記所定値または前記所定係数は、更新期間における、突発的な振動の回数と、計測部103による計測処理の頻度とに基づいて、予めトリガ設定条件(図5参照)に設定される。
【0085】
上述のトリガ閾値設定処理(図3参照)では、更新期間が経過した場合に(S102:YES)、制御部101は、閾値順位記憶部108の閾値順位テーブルを初期化している(S103)。他の実施形態として、制御部101は、閾値順位テーブルに登録された複数のトリガ用物理量のうち、更新期間が経過したトリガ用物理量のみを初期化(削除)してもよい。例えば、制御部101は、閾値順位テーブルに登録された複数のトリガ用物理量のうち、更新期間が経過した第3位(登録順位)に登録されたトリガ用物理量を削除し、第4位以降のトリガ用物理量の登録順位を一つずつ繰り上げる処理を行う。制御部101は、閾値順位テーブルに登録された複数のトリガ用物理量のうち更新期間が経過したトリガ用物理量について、前記の処理を行う。
【0086】
本実施形態では、各トリガ条件に対応する計測処理の計測条件を一定に設定しているが、これに限るものではなく、トリガ条件毎に計測条件(例えば、計測時間、計測対象物理量、計測範囲、サンプリング周波数、計測処理の終了条件など)を異ならせてもよい。
【0087】
具体例としては、例えば、閾値設定順位が低いトリガ閾値(例えば「第7位」のトリガ閾値)によりトリガ条件が満たされたときに行う計測時間を1分とし、閾値設定順位が高いトリガ閾値(例えば「第1位」のトリガ閾値)によりトリガ条件が満たされたときに行う計測時間を5分としてもよい。また、閾値設定順位が低いトリガ閾値によりトリガ条件が満たされたときの計測レンジを±3Gとし、閾値設定順位が高いトリガ閾値によりトリガ条件が満たされたときの計測レンジを±1Gとしてもよい。また、閾値設定順位が低いトリガ閾値によりトリガ条件が満たされたときのサンプリング周波数を100Hzとし、閾値設定順位が高いトリガ閾値によりトリガ条件が満たされたときのサンプリング周波数を200Hzとしてもよい。
【0088】
これにより、例えば、高精度な計測が要求されない場合には消費電力が少ない計測条件を採用し、高精度な計測が必要な場合には高精度な計測が可能な計測条件を採用するなど、トリガ条件の程度、種類、優先度等に応じて計測条件を適切に設定することができる。
【0089】
本実施形態では、設定情報記憶部106に予め設定された閾値設定順位により決定されるトリガ閾値を用いて計測部103の計測動作を制御しているが、これに限らず、データ処理装置20(あるいは制御部101、データサーバ30、または外部サーバ40)が所定の条件に基づいて計測動作の制御に用いる閾値設定順位を自動的に決定するようにしてもよい。
【0090】
例えば、データ処理装置20(あるいはセンサ装置10の制御部101、データサーバ30、または外部サーバ40)が、所定期間あたり(例えば1日あたり)の計測処理の発生頻度が所定の条件(例えば、所定値以下あるいは所定の数値範囲内)になるように過去の計測結果(例えば直近の数日間の計測結果)に基づいて閾値設定順位を決定するようにしてもよい。この場合、データ処理装置20は、計測処理の発生頻度が高すぎる場合には計測処理の発生頻度を低下させるために閾値設定順位を変更前よりも高く設定し、計測処理の発生頻度が低すぎる場合には計測処理の発生頻度を増加させるために閾値設定順位を変更前よりも低く設定する。
【0091】
また、制御部101が、日照時間(日出時間、日没時間)、気温、湿度、季節、曜日等の各種条件に基づいて、トリガ設定条件(閾値設定順位、更新期間など)を自動的に設定するようにしてもよい。
【0092】
また、制御部101がトリガ条件の更新(自動設定)を行うタイミングは特に限定されるものではなく、例えば、所定の周期毎(例えば、所定の経過時間毎、所定時刻毎、所定日数毎など)であってもよく、所定のセンサ装置10のトリガ検出部102あるいは計測部103によって所定の事象が検出される毎であってもよく、計測データの集計・解析結果が所定の条件に該当する毎であってもよく、センサ装置10の管理者が設定変更指示を行ったときであってもよい。
【0093】
センサ装置10の制御部101は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0094】
後者の場合、センサ装置10は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するCPU、前記プログラムおよび各種データがコンピュータ(またはCPU)で読み取り可能に記録されたROM(Read Only Memory)または記憶装置(これらを「記録媒体」と称する)、前記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などを備えている。そして、コンピュータ(またはCPU)が前記プログラムを前記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。前記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、前記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワーク、放送波等)を介して前記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明は、前記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0095】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0096】
1 :計測システム
10 :センサ装置
11 :電源部
12 :負荷部
20 :データ処理装置
30 :データサーバ
40 :外部サーバ
101 :制御部
102 :トリガ検出部
103 :計測部
104 :計時部
105 :通信部
106 :設定情報記憶部
107 :計測データ記憶部
108 :閾値順位記憶部
MSi :計測用センサ
TS1 :トリガ用センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10