特許第6756500号(P6756500)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ HOYA株式会社の特許一覧

特許6756500インプリントモールド用基板、マスクブランク、インプリントモールド用基板の製造方法、マスクブランクの製造方法、及びインプリントモールドの製造方法
<>
  • 特許6756500-インプリントモールド用基板、マスクブランク、インプリントモールド用基板の製造方法、マスクブランクの製造方法、及びインプリントモールドの製造方法 図000002
  • 特許6756500-インプリントモールド用基板、マスクブランク、インプリントモールド用基板の製造方法、マスクブランクの製造方法、及びインプリントモールドの製造方法 図000003
  • 特許6756500-インプリントモールド用基板、マスクブランク、インプリントモールド用基板の製造方法、マスクブランクの製造方法、及びインプリントモールドの製造方法 図000004
  • 特許6756500-インプリントモールド用基板、マスクブランク、インプリントモールド用基板の製造方法、マスクブランクの製造方法、及びインプリントモールドの製造方法 図000005
  • 特許6756500-インプリントモールド用基板、マスクブランク、インプリントモールド用基板の製造方法、マスクブランクの製造方法、及びインプリントモールドの製造方法 図000006
  • 特許6756500-インプリントモールド用基板、マスクブランク、インプリントモールド用基板の製造方法、マスクブランクの製造方法、及びインプリントモールドの製造方法 図000007
  • 特許6756500-インプリントモールド用基板、マスクブランク、インプリントモールド用基板の製造方法、マスクブランクの製造方法、及びインプリントモールドの製造方法 図000008
  • 特許6756500-インプリントモールド用基板、マスクブランク、インプリントモールド用基板の製造方法、マスクブランクの製造方法、及びインプリントモールドの製造方法 図000009
  • 特許6756500-インプリントモールド用基板、マスクブランク、インプリントモールド用基板の製造方法、マスクブランクの製造方法、及びインプリントモールドの製造方法 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6756500
(24)【登録日】2020年8月31日
(45)【発行日】2020年9月16日
(54)【発明の名称】インプリントモールド用基板、マスクブランク、インプリントモールド用基板の製造方法、マスクブランクの製造方法、及びインプリントモールドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20200907BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20200907BHJP
   B29C 33/38 20060101ALI20200907BHJP
   G11B 5/84 20060101ALI20200907BHJP
【FI】
   H01L21/30 502D
   B29C59/02 B
   B29C33/38
   G11B5/84 Z
【請求項の数】19
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-61843(P2016-61843)
(22)【出願日】2016年3月25日
(65)【公開番号】特開2017-175056(P2017-175056A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2019年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113343
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 武史
(72)【発明者】
【氏名】谷口 和丈
(72)【発明者】
【氏名】打田 崇
【審査官】 冨士 健太
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/136898(WO,A1)
【文献】 特開2010−251601(JP,A)
【文献】 特開2015−026712(JP,A)
【文献】 特開2014−082511(JP,A)
【文献】 特開2013−211450(JP,A)
【文献】 特開2001−039737(JP,A)
【文献】 特開2010−113772(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0318995(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027、21/30
G03F 1/00− 1/86
B29C 33/00−33/76
41/38−41/44
59/00−59/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する2つの主表面を備え、一方の前記主表面に台座構造を有するインプリントモールド用基板であって、
前記台座構造は、転写面と側壁面とを備え、
前記側壁面は、一辺が5μmの四角形の内側領域で測定したときの表面粗さRqが0.3nm以上1.0nm以下であり、
前記転写面は、一辺が5μmの四角形の内側領域で測定したときの表面粗さRqが0.25nm以下である
ことを特徴とするインプリントモールド用基板。
【請求項2】
前記台座構造を除いた部分の前記一方の主表面は、一辺が5μmの四角形の内側領域で測定したときの表面粗さRqが0.3nm以上であることを特徴とする請求項1に記載のインプリントモールド用基板。
【請求項3】
前記台座構造を除いた部分の前記一方の主表面は、一辺が5μmの四角形の内側領域で測定したときの表面粗さRqが1.0nm以下であることを特徴とする請求項に記載のインプリントモールド用基板。
【請求項4】
他方の前記主表面に凹部を備えることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載のインプリントモールド用基板。
【請求項5】
前記凹部を有する前記他方の主表面の領域は、前記台座構造を有する前記一方の主表面の領域を少なくとも含む大きさであることを特徴とする請求項に記載のインプリントモールド用基板。
【請求項6】
前記基板はガラスからなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のインプリントモールド用基板。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載のインプリントモールド用基板の前記台座構造を有する前記一方の主表面に、パターン形成用薄膜を備えることを特徴とするマスクブランク。
【請求項8】
前記パターン形成用薄膜は、クロムを含有する材料からなることを特徴とする請求項7に記載のマスクブランク。
【請求項9】
対向する2つの主表面を備え、一方の前記主表面における一辺が5μmの四角形の内側領域で測定したときの表面粗さRqが0.25nm以下である基板を準備する工程と、
前記基板の前記一方の主表面における台座構造形成領域上に、エッチング液に対して前記基板との間でエッチング選択性を有するエッチングマスク膜を形成する工程と、
前記エッチングマスク膜が形成された基板に対して前記エッチング液によるウェットエッチングを行い、前記一方の主表面に転写面と側壁面とを備える台座構造を形成する工程と、
前記台座構造上に残存するエッチングマスク膜を除去する工程と
を有するインプリントモールド用基板の製造方法であって、
前記台座構造を形成する工程は、前記側壁面における一辺が5μmの四角形の内側領域で測定したときの表面粗さRqが0.3nm以上1.0nm以下となるように、前記ウェットエッチングを行うことを特徴とするインプリントモールド用基板の製造方法。
【請求項10】
前記台座構造を形成する工程は、前記台座構造を除いた部分の前記一方の主表面における一辺が5μmの四角形の内側領域で測定したときの表面粗さRqが0.3nm以上となるように、前記ウェットエッチングを行うことを特徴とする請求項9に記載のインプリントモールド用基板の製造方法。
【請求項11】
前記台座構造を形成する工程は、前記台座構造を除いた部分の前記一方の主表面における一辺が5μmの四角形の内側領域で測定したときの表面粗さRqが1.0nm以下となるように、前記ウェットエッチングを行うことを特徴とする請求項10に記載のインプリントモールド用基板の製造方法。
【請求項12】
他方の前記主表面に凹部を形成する工程をさらに有することを特徴とする請求項9乃至11のいずれかに記載のインプリントモールド用基板の製造方法。
【請求項13】
前記凹部を有する前記他方の主表面の領域は、前記台座構造を有する前記一方の主表面の領域を少なくとも含む大きさであることを特徴とする請求項12に記載のインプリントモールド用基板の製造方法。
【請求項14】
前記基板はガラスからなり、前記エッチング液はフッ酸を含有することを特徴とする請求項9乃至13のいずれかに記載のインプリントモールド用基板の製造方法。
【請求項15】
前記エッチングマスク膜は、クロムを含有する材料で形成されることを特徴とする請求項9乃至14のいずれかに記載のインプリントモールド用基板の製造方法。
【請求項16】
請求項9乃至15のいずれかに記載のインプリントモールド用基板の製造方法によって製造されたインプリントモールド用基板の前記台座構造を有する前記一方の主表面に、パターン形成用薄膜を形成する工程を備えることを特徴とするマスクブランクの製造方法。
【請求項17】
前記パターン形成用薄膜は、クロムを含有する材料で形成されることを特徴とする請求項16に記載のマスクブランクの製造方法。
【請求項18】
請求項7又は8に記載のマスクブランクを用いるインプリントモールドの製造方法であって、
前記パターン形成用薄膜上に形成されたモールドパターンを有するレジスト膜をマスクとし、ドライエッチングによって前記パターン形成用薄膜にモールドパターンを形成する工程と、
前記モールドパターンが形成されたパターン形成用薄膜をマスクとし、ドライエッチングによって前記台座構造の転写面にモールドパターンを形成する工程と
を有することを特徴とするインプリントモールドの製造方法。
【請求項19】
請求項16又は17に記載のマスクブランクの製造方法によって製造されたマスクブランクを用いるインプリントモールドの製造方法であって、
前記パターン形成用薄膜上に形成されたモールドパターンを有するレジスト膜をマスクとし、ドライエッチングによって前記パターン形成用薄膜にモールドパターンを形成する工程と、
前記モールドパターンが形成されたパターン形成用薄膜をマスクとし、ドライエッチングによって前記台座構造の転写面にモールドパターンを形成する工程と
を有することを特徴とするインプリントモールドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスの微細回路パターン作製、微細パターンにより光学的機能を付加した光学部品作製、ハードディスクドライブ等に搭載される磁気記録媒体(磁気ディスク)における磁気記録層の微細パターン形成に適用するインプリントモールドの製造方法、およびこの製造に好適に用いられる基板とその製造方法、マスクブランクとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細回路パターン作製、微細パターンにより光学的機能を付加した光学部品作製、ハードディスクドライブ等に搭載される磁気記録媒体における磁気記録層の微細パターン形成において、同じ微細パターンを大量に転写するためのインプリント法が用いられるようになってきている。
【0003】
インプリント法は、微細なモールドパターンが形成されたインプリントモールド(スタンパ)を原版として用い、転写対象物上に塗布された光硬化性樹脂等の液体樹脂に対してインプリントモールドを直接押し付けて紫外線等によって硬化させることにより、硬化した液体樹脂にモールドパターンを転写する方法である。このため、インプリント法によれば、同じ微細パターンを大量に転写することが可能である。
【0004】
このようにインプリントモールドは同じ微細パターンを大量に転写するための原版となるため、モールド上に形成されたモールドパターンの寸法精度は、作製される微細パターンの寸法精度に直接影響する。また、インプリントモールドは転写対象物上に塗布された液体樹脂に直接押し付けてパターンを転写するため、モールドパターンの断面形状も作製される微細パターンの形状に大きく影響する。半導体デバイス等の集積度が向上するにつれ、要求されるパターンの寸法は小さくなり、また、等倍でのパターン転写となるため、インプリントモールドの精度もより高いものが要求されるようになってきている。
【0005】
インプリントモールドは、特許文献1に開示されているように、基板の主表面の中央部に設けられた台座構造(メサ構造とも呼ぶ。)に転写パターンが形成された構成を備えたものが用いられる場合が多い。この台座構造は、主表面におけるモールドパターンが設けられている転写領域以外の領域が転写対象物の基板(半導体基板等)や液体樹脂に接触しないようにするために設けられているものである。
【0006】
インプリントモールドの一態様として、たとえば特許文献2に開示されているものが知られている。このインプリントモールドは、モールドパターンが形成されている表側の主表面とは反対側にある裏側の主表面に凹部が設けられた構成となっている。さらに、凹部が設けられていることにより、主表面におけるモールドパターンが形成されている台座構造を含む領域の基板の厚さが、その周囲の領域よりも薄くなっている。転写対象物に塗布された光硬化性樹脂等の液体樹脂にこのインプリントモールドのモールドパターンを押し付ける際、凹部内の空気圧を高くした状態にすることで、周囲よりも基板の厚さが薄くなっている領域のモールドパターンが広がる方向に湾曲する。この状態で液体樹脂に対してモールドパターンを押し付けていくと、最初にモールドパターンの中央側が液体樹脂に接触し、そこを起点にモールドパターンと液体樹脂とが接触する領域が外周側に向かって同心円状に広がっていくため、モールドパターンと液体樹脂との間に空気が封入されることを抑制することができる。
【0007】
また、液体樹脂を硬化させた後、モールドを剥離する際においても、凹部内の空気圧を高くした状態にすることで、周囲よりも基板の厚さが薄くなっている領域のモールドパターンが広がる方向に湾曲させる。これにより、硬化した液体樹脂からモールドパターン(インプリントモールド)を剥離(離型)しやすくなる。
【0008】
このような裏側の主表面に凹部が設けられたインプリントモールドを製造する場合、特許文献3の図6等に開示されているように、先に、基板表側の主表面に微細なパターンであるモールドパターンを形成してから、台座構造を形成し、さらに裏面の凹部を形成する製法を用いることが従来一般的である。これに対し、特許文献3では、基板の両主表面に台座構造と凹部を予め形成したものを製造し、これを用いてインプリントモールドを製造する方法が開示されている。また、特許文献4では、基板の裏面に先に凹部を形成してから、基板の表側の主表面に台座構造を形成するモールド製造用構造体の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−98689号公報
【特許文献2】特表2009−536591号公報
【特許文献3】特開2014−56893号公報
【特許文献4】特開2015−223787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記従来技術(特許文献3、特許文献4など)のような先に基板表側の主表面に台座構造を形成してから、その台座構造の転写面にモールドパターンを形成する場合、例えば、以下の工程で行われる。
【0011】
最初に、台座構造を形成した基板表側の主表面に、例えばスパッタリング法によってパターン形成用薄膜を形成してマスクブランクを製造する。次に、このマスクブランクの上記パターン形成用薄膜上に、モールドパターンを有するレジスト膜を形成する。そして、このレジスト膜をマスクとし、ドライエッチングによって上記パターン形成用薄膜にモールドパターンを形成する。そして、このモールドパターンが形成されたパターン形成用薄膜をマスクとし、ドライエッチングによって上記台座構造の転写面にモールドパターンを形成する。
【0012】
ところで、上記のように、台座構造を形成した基板表側の主表面に、例えばスパッタリング法でパターン形成用薄膜を形成してマスクブランクを製造する際、基板主表面の台座構造の側壁面にも上記パターン形成用薄膜は形成されるが、この台座構造の側壁面に形成されるパターン形成用薄膜は、基板の他の領域、たとえば台座構造の転写面に形成されるパターン形成用薄膜よりも厚さは薄く、基板に対する付着力も弱いと推測される。そのため、このマスクブランクを用いて上記のようにモールドパターンを形成するプロセスにおいて、台座構造の側壁面のパターン形成用薄膜が剥離して、形成されるモールドパターンに欠陥を発生させることが懸念される。上述したように、半導体デバイス等の集積度が向上するにつれ、要求されるパターンの寸法は小さくなり、インプリントモールドの精度もより高いものが要求されるようになってきており、モールドパターンの欠陥を発生させるおそれのある台座構造側壁面のパターン形成用薄膜の剥離は出来るだけ抑制する必要がある。
【0013】
そこで、本発明の目的とするところは、第1に、基板の一主表面に台座構造を有し、その台座構造の側壁面に形成されるパターン形成用薄膜の剥離を抑制できるインプリントモールド用基板及びその製造方法を提供することであり、第2に、このインプリントモールド用基板を用い、台座構造の側壁面に形成されるパターン形成用薄膜の剥離を抑制できるマスクブランク及びその製造方法を提供することであり、第3に、このマスクブランクの製造方法により得られるマスクブランクを用いて製造され、モールドパターンの欠陥の発生を低減できるインプリントモールドの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記課題を解決するため、基板の一方の主表面に有する台座構造の側壁面の表面粗さ、特に二乗平均平方根粗さRqに着目し、鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
【0015】
(構成1)
対向する2つの主表面を備え、一方の前記主表面に台座構造を有するインプリントモールド用基板であって、前記台座構造は、転写面と側壁面とを備え、前記側壁面は、一辺が5μmの四角形の内側領域で測定したときの表面粗さRqが0.3nm以上であり、前記転写面は、一辺が5μmの四角形の内側領域で測定したときの表面粗さRqが0.25nm以下であることを特徴とするインプリントモールド用基板である。
【0016】
(構成2)
前記側壁面は、一辺が5μmの四角形の内側領域で測定したときの表面粗さRqが1.0nm以下であることを特徴とする構成1に記載のインプリントモールド用基板である。
(構成3)
前記台座構造を除いた部分の前記一方の主表面は、一辺が5μmの四角形の内側領域で測定したときの表面粗さRqが0.3nm以上であることを特徴とする構成1又は2に記載のインプリントモールド用基板である。
【0017】
(構成4)
前記台座構造を除いた部分の前記一方の主表面は、一辺が5μmの四角形の内側領域で測定したときの表面粗さRqが1.0nm以下であることを特徴とする構成3に記載のインプリントモールド用基板である。
(構成5)
他方の前記主表面に凹部を備えることを特徴とする構成1乃至4のいずれかに記載のインプリントモールド用基板である。
【0018】
(構成6)
前記凹部を有する前記他方の主表面の領域は、前記台座構造を有する前記一方の主表面の領域を少なくとも含む大きさであることを特徴とする構成5に記載のインプリントモールド用基板である。
【0019】
(構成7)
構成1乃至6のいずれかに記載のインプリントモールド用基板の前記台座構造を有する前記一方の主表面に、パターン形成用薄膜を備えることを特徴とするマスクブランクである。
(構成8)
前記パターン形成用薄膜は、クロムを含有する材料からなることを特徴とする構成7に記載のマスクブランクである。
【0020】
(構成9)
対向する2つの主表面を備え、一方の前記主表面における一辺が5μmの四角形の内側領域で測定したときの表面粗さRqが0.25nm以下である基板を準備する工程と、前記基板の前記一方の主表面における台座構造形成領域上に、エッチング液に対して前記基板との間でエッチング選択性を有するエッチングマスク膜を形成する工程と、前記エッチングマスク膜が形成された基板に対して前記エッチング液によるウェットエッチングを行い、前記一方の主表面に転写面と側壁面とを備える台座構造を形成する工程と、前記台座構造上に残存するエッチングマスク膜を除去する工程とを有するインプリントモールド用基板の製造方法であって、前記台座構造を形成する工程は、前記側壁面における一辺が5μmの四角形の内側領域で測定したときの表面粗さRqが0.3nm以上となるように、前記ウェットエッチングを行うことを特徴とするインプリントモールド用基板の製造方法である。
【0021】
(構成10)
前記台座構造を形成する工程は、前記側壁面における一辺が5μmの四角形の内側領域で測定したときの表面粗さRqが1.0nm以下となるように、前記ウェットエッチングを行うことを特徴とする構成9に記載のインプリントモールド用基板の製造方法である。
(構成11)
前記台座構造を形成する工程は、前記台座構造を除いた部分の前記一方の主表面における一辺が5μmの四角形の内側領域で測定したときの表面粗さRqが0.3nm以上となるように、前記ウェットエッチングを行うことを特徴とする構成9又は10に記載のインプリントモールド用基板の製造方法である。
【0022】
(構成12)
前記台座構造を形成する工程は、前記台座構造を除いた部分の前記一方の主表面における一辺が5μmの四角形の内側領域で測定したときの表面粗さRqが1.0nm以下となるように、前記ウェットエッチングを行うことを特徴とする構成11に記載のインプリントモールド用基板の製造方法である。
(構成13)
他方の前記主表面に凹部を形成する工程をさらに有することを特徴とする構成9乃至12のいずれかに記載のインプリントモールド用基板の製造方法である。
【0023】
(構成14)
前記凹部を有する前記他方の主表面の領域は、前記台座構造を有する前記一方の主表面の領域を少なくとも含む大きさであることを特徴とする構成13に記載のインプリントモールド用基板の製造方法である。
(構成15)
前記基板はガラスからなり、前記エッチング液はフッ酸を含有することを特徴とする構成9乃至14のいずれかに記載のインプリントモールド用基板の製造方法である。
【0024】
(構成16)
前記エッチングマスク膜は、クロムを含有する材料で形成されることを特徴とする構成9乃至15のいずれかに記載のインプリントモールド用基板の製造方法である。
【0025】
(構成17)
構成9乃至16のいずれかに記載のインプリントモールド用基板の製造方法によって製造されたインプリントモールド用基板の前記台座構造を有する前記一方の主表面に、パターン形成用薄膜を形成する工程を備えることを特徴とするマスクブランクの製造方法である。
(構成18)
前記パターン形成用薄膜は、クロムを含有する材料で形成されることを特徴とする構成17に記載のマスクブランクの製造方法である。
【0026】
(構成19)
構成7又は8に記載のマスクブランクを用いるインプリントモールドの製造方法であって、前記パターン形成用薄膜上に形成されたモールドパターンを有するレジスト膜をマスクとし、ドライエッチングによって前記パターン形成用薄膜にモールドパターンを形成する工程と、前記モールドパターンが形成されたパターン形成用薄膜をマスクとし、ドライエッチングによって前記台座構造の転写面にモールドパターンを形成する工程とを有することを特徴とするインプリントモールドの製造方法である。
【0027】
(構成20)
構成17又は18に記載のマスクブランクの製造方法によって製造されたマスクブランクを用いるインプリントモールドの製造方法であって、前記パターン形成用薄膜上に形成されたモールドパターンを有するレジスト膜をマスクとし、ドライエッチングによって前記パターン形成用薄膜にモールドパターンを形成する工程と、前記モールドパターンが形成されたパターン形成用薄膜をマスクとし、ドライエッチングによって前記台座構造の転写面にモールドパターンを形成する工程とを有することを特徴とするインプリントモールドの製造方法である。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、基板の一主表面に台座構造を有し、その台座構造の側壁面に形成されるパターン形成用薄膜の剥離を抑制できるインプリントモールド用基板及びその製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、上記インプリントモールド用基板を用い、台座構造の側壁面に形成されるパターン形成用薄膜の剥離を抑制できるマスクブランク及びその製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、このマスクブランクの製造方法により得られるマスクブランクを用いて製造され、モールドパターンの欠陥の発生を低減できるインプリントモールドの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明に係るインプリントモールド用基板の断面概略図である。
図2】本発明に係るインプリントモールド用基板の製造工程の一実施形態を説明するための断面概略図である。
図3】本発明に係るインプリントモールド用基板の製造工程の他の実施形態を説明するための断面概略図である。
図4】本発明に係るインプリントモールド用基板の平面図である。
図5】基板の他の主表面に凹部を形成する方法を説明するための断面概略図である。
図6】本発明に係るマスクブランクの断面概略図である。
図7】本発明に係るインプリントモールドの製造工程を説明するための断面概略図である。
図8】インプリントモールドの使用状態を説明するための断面概略図である。
図9】二乗平均平方根粗さRqの定義を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための形態について適宜図面を参照しながら詳述する。
(インプリントモールド用基板)
まず、本発明に係るインプリントモールド用基板(インプリントモールドの製造に好適な基板)について説明する。
【0031】
本発明に係るインプリントモールド用基板は、上記構成1にあるように、対向する2つの主表面を備え、一方の前記主表面に台座構造を有するインプリントモールド用基板であって、前記台座構造は、転写面と側壁面とを備え、前記側壁面は、一辺が5μmの四角形の内側領域で測定したときの表面粗さRqが0.3nm以上であり、前記転写面は、一辺が5μmの四角形の内側領域で測定したときの表面粗さRqが0.25nm以下であることを特徴とするものである。
【0032】
図1は、本発明に係るインプリントモールド用基板の断面概略図であり、図4は、本発明に係るインプリントモールド用基板の平面図である。
図1のインプリントモールド用基板10は、図示されるように2つの主表面を備え、その一方(上方)の主表面に台座構造5を有する。
【0033】
上記インプリントモールド用基板10は、その台座構造5の転写面5aにモールドパターン(転写パターン)である凹凸パターンが形成されることにより、インプリントモールドとして使用される。上記インプリントモールド用基板10の材料としては、インプリントモールドとして使用するのに要求される適度な強度や剛性を有する材料であれば特に制約はなく任意に用いることができる。例えば、石英ガラスやSiO−TiO系低膨張ガラス、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス、CaFガラス等のガラス素材、シリコンなどが挙げられる。これらのうちガラス素材は特に好適である。ガラス素材は、非常に精度の高い加工が可能で、しかも平坦度及び平滑度に優れるため、本発明により得られるインプリントモールドを使用してパターン転写を行う場合、転写パターンの歪み等が生じないで高精度のパターン転写を行える。上記インプリントモールド用基板10から製造されるインプリントモールドが紫外線硬化樹脂等の光硬化性樹脂に対して使用される場合においては、高い光透過性を有するガラス素材で上記インプリントモールド用基板10を形成することが好ましい。
【0034】
また、図1に示される本実施の形態においては、上記インプリントモールド用基板10は、平面視で全体が矩形状を成している。もちろん、上記インプリントモールド用基板10の外形はこのような矩形状に限定される必要はなく、インプリントモールドの用途、大きさなどに応じて適宜決定される。
また、上記インプリントモールド用基板10の大きさ(サイズ)や板厚についても特に制約される必要は無く、インプリントモールドの用途、大きさなどに応じて適宜決定される。
【0035】
なお、上記のとおり、この台座構造5を有する領域は、上記インプリントモールド用基板10を用いたインプリントモールドの製造時にモールドパターンが形成される領域である。この台座構造5を有する領域の形状(つまり形成されている台座構造5の平面視形状)は、例えば全体が矩形状である(図4参照)。もちろん、台座構造5を有する領域の形状は、このような矩形状に限定される必要はなく、インプリントモールドの用途、大きさなどに応じて適宜決定される。
【0036】
上記インプリントモールド用基板10の一方(上方)の主表面に設けられた台座構造5は、転写面5aと側壁面5bとを備える。そして、本発明では、上記台座構造5の側壁面5bは、一辺が5μmの四角形の内側領域で測定したときの表面粗さRqが0.3nm以上であることを特徴としている。
【0037】
後述のとおり、インプリントモールド用基板10の一方の主表面上にはパターン形成用薄膜が設けられるが、そのパターン形成用薄膜をスパッタリング成膜法で成膜するのが一般的である。また、基板10を回転ステージで回転させながら、その一方の主表面から見て斜め上方にターゲットを配置した状態でターゲット粒子をスパッタリングさせ、基板10の一方の主表面上にパターン形成用薄膜を形成する場合が多い。この成膜方法を用いることで、パターン形成用薄膜の膜厚及び組成の面内での均一性を高めることができるためである。
【0038】
ターゲットから飛び出すスパッタ粒子は、インプリントモールド用基板10の一方の主表面の全面に堆積する。側壁面5bにもスパッタ粒子は堆積するが、転写面5aに比べてスパッタ粒子が堆積するときの進入角度が大幅に小さいため、スパッタ粒子が基板10の主表面に衝突して堆積するときの打ち込み効果が得られにくい。このため、側壁面5bに堆積するパターン形成用薄膜は剥離しやすくなってしまう。
【0039】
本発明者らは、その側壁面5bの表面の凹凸を大きくする(表面粗さを大きくする)ことで、その側壁面5bの表面に形成されるパターン形成用薄膜の付着力を高めることができるのではないかと考えた。表面粗さが大きい側壁面5bは、表面の凹凸が大きくなっている。しかし、スパッタ粒子の粒子径はその凹凸よりも大幅に小さいため、凹凸の凹部内にも侵入して堆積する。さらにスパッタ粒子が堆積し続けて側壁面5bの表面の全体にパターン形成用薄膜が堆積する。このパターン形成用薄膜は、側壁面5bの凹部に堆積した部分と一体になることで楔効果が得られ、その薄膜の側壁面5bへの付着力を高めることができるではないかと本発明者らは考えた。
【0040】
本発明者らは、以上の仮説を基に、特に上記側壁面5bの表面粗さに着目して鋭意検証した結果、上記側壁面5bは、表面粗さRqが0.3nm以上であることにより、マスクブランク製造時に当該側壁面5bに形成されるパターン形成用薄膜の付着力を向上でき、側壁面5bでのパターン形成用薄膜の剥離を効果的に抑制できることを見出した。なお、上記側壁面5bの表面粗さRqが0.3nm未満であると、当該側壁面5bに形成されるパターン形成用薄膜の付着力が弱く、側壁面5bでのパターン形成用薄膜の剥離を抑制することが困難である。
また、本発明者が、数ある表面粗さのパラメータのうち、特に二乗平均平方根粗さRqに着目した理由は、算術平均粗さRaなどに比べて、表面の凹凸の頂点および底部がより強調される指標であることにある。
【0041】
なお、ここでいう表面粗さRqとは、JIS B 0601:2001に規定されている二乗平均平方根粗さRqのことである。この二乗平均平方根粗さRqは、表面粗さの標準偏差を意味するもので、具体的には、図9に示すように、基準長さLにおける粗さ曲線f(x)の数値を用いて、図9の定義式で表される。粗さ曲線は、表面粗さ計等を用いて測定された断面曲線(輪郭曲線とも呼ぶ。)から所定の長波長(低周波数)成分(うねり成分)を除去(カットオフ)することにより得られる。
以下、本明細書等において、「表面粗さRq」と記載した場合、上記のとおり「二乗平均平方根粗さRq」を意味するものとする。
【0042】
また、本発明に係るインプリントモールド用基板10は、上記台座構造5の転写面5aに関しては、一辺が5μmの四角形の内側領域で測定したときの表面粗さRqが0.25nm以下であることが求められる。上記台座構造5の転写面5aには、モールドパターンである凹凸パターンが形成されることによりインプリントモールドとして使用されるため、上記転写面5aは平滑性に優れることが要求される。なお、上記転写面5aの表面粗さRqは0.2nm以下であると好ましい。
【0043】
本発明において、表面粗さRqは、たとえば原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、被測定面の5μm×5μmの範囲を所定の解像度で測定したときに得られる断面曲線に基づき算出される。なお、上記側壁面5bの粗さ測定に際しては、側壁面5bが水平となるように基板サンプルを測定装置に固定して測定することが可能である。
また、本発明において、表面粗さRqの測定領域を一辺が5μmの四角形の内側領域としたのは、測定領域が狭すぎるとその測定領域内に1箇所だけ深い凹部が存在するだけでも表面粗さRqの測定値に大きな影響を与えるためである。その場合、表面粗さRqの測定値が本発明で規定する範囲を満たしていても、本発明の効果が得られにくい。
【0044】
また、本発明に係るインプリントモールド用基板10においては、上記側壁面5bは、一辺が5μmの四角形の内側領域で測定したときの表面粗さRqが1.0nm以下であることが望ましい。上記側壁面5bの表面粗さRqが1.0nmよりも大きくなると、当該側壁面5bに形成されるパターン形成用薄膜の付着力がかえって低下し、膜剥れが起こりやすくなる虞がある。また、パターン形成用薄膜の表面粗さも悪化するため、その薄膜の表面に異物(レジスト残渣等)が付着しやすくなる虞もある。
【0045】
また、本発明では、上記台座構造5を有する主表面の上記台座構造5を除いた部分の領域(すなわち、図1中の符号4で示す領域)は、一辺が5μmの四角形の内側領域で測定したときの表面粗さRqが0.3nm以上であることが好適である。後でも詳しく説明するように、基板の一方の主表面における台座構造形成領域上にエッチングマスク膜を形成し、該エッチングマスク膜が形成された基板に対してウェットエッチングを行うことで、上記一方の主表面に転写面5aと側壁面5bとを備える上記台座構造5を形成するため、上記台座構造5の側壁面5bと上記台座構造5を除いた部分の領域4は同等の表面粗さに仕上がるので、上記台座構造5を除いた部分の領域4についても、上記台座構造5の側壁面5bと同等の表面粗さであることが製法上の観点からも有利である。主表面の上記台座構造5を除いた部分の領域は、このインプリントモールド用基板10からインプリントモールドが製造され、転写対象物に対する転写が行われるときに、その転写対象物に接触しない面であるため、表面粗さRqが大きくても転写に悪影響を与えない。
【0046】
また、上記台座構造5を有する主表面の上記台座構造5を除いた部分の領域4については、一辺が5μmの四角形の内側領域で測定したときの表面粗さRqが1.0nm以下であることが好適である。上述したように、上記台座構造5を除いた部分の領域4は、上記台座構造5の側壁面5bと同等の表面粗さであることが製法上の観点からも有利であるため、上記台座構造5を除いた部分の領域4においても、表面粗さRqが1.0nm以下とすることにより、パターン形成用薄膜の膜剥れや異物の付着を抑制する必要がある。
【0047】
また、本発明に係るインプリントモールド用基板においては、図1に示すように、上記台座構造5を有する主表面(表側主表面)とは反対側の主表面(裏側主表面)に凹部7を備えることが望ましい。この凹部7を備える基板10の裏側主表面は、モールドパターンの転写を行う転写装置のモールド保持部にチャックされる面であり、また、この凹部7を備えることで、転写対象物の硬化した樹脂からモールドを剥離する際においても、剥離(離型)しやすくなる。
【0048】
本実施形態では、上記凹部7を有する領域は例えば平面視で円形状を成している(図4参照)。もちろん、凹部7を有する領域の形状はこのような円形状に限定される必要はなく、矩形状や多角形状であってもよく、インプリントモールドの用途、大きさなどに応じて適宜決定される。
【0049】
なお、凹部7を有する領域の平面視形状が円形状の場合は、真円形状であることが望ましい。転写装置にインプリントモールドを固定して転写するときの凹部7と転写装置の固定装置とで形成される空間内の内圧が表側主表面の変形に与える影響が同心円状の分布となり調整しやすいためである。
【0050】
また、上記凹部7を有する裏側主表面の領域(凹部7が形成されている領域)は、上記台座構造5を有する表側主表面の領域(台座構造5が形成されている領域)を少なくとも含む大きさであることが好ましい(図4参照)。台座構造5を有する領域よりも凹部7を有する領域が小さいと、インプリントモールドにおいて外側のモールドパターンにほとんど変形しない部分が発生し、外側に変形するモールドパターンと挟まれる硬化した樹脂が潰されてしまう恐れがあるからである。特に、光硬化性樹脂等の液体樹脂に対してパターン転写を行うインプリントモールドを作製するための基板の場合においては、凹部7と裏側主表面との境界部分が、表側主表面のモールドパターンが形成された台座構造領域に掛かってしまうと、光硬化性樹脂を硬化させるための光の入射が正常に行うことができず、樹脂の硬化不良が起こる可能性がある。
【0051】
また、上述のように、凹部7を有する領域は、台座構造5を有する領域を含む大きさの領域であることが好ましいが、凹部7が形成された基板10の剛性確保を考慮すると、基板10の大きさが約152mm角である場合においては、凹部7の直径(円形状の場合)または短辺方向の長さ(矩形状の場合)は、100mm以下であることが望ましく、90mm以下であると好適である。
【0052】
なお、上記凹部7は、その中心が上記インプリントモールド用基板10の中心と一致していることが最も望ましく、少なくともそのずれが100μm以下、より好ましくは50μm以下であることが好ましい。基板10の表側主表面の台座構造領域に形成されるモールドパターン(凹凸パターン)の中心を基板10の中心に一致させるようにすることが一般的であり、転写対象物のレジスト膜へのインプリントモールドの押し付け時や剥離時の変形がモールドパターンの中心から順次広がっていくようにするためである。
【0053】
また、上記インプリントモールド用基板10の上記台座構造5の中心が上記基板10の中心と一致していることが最も望ましく、少なくともそのずれが100μm以下、より好ましくは50μm以下であることが好ましい。上記のとおり、表側主表面の台座構造形成領域に形成されるモールドパターン(凹凸パターン)の中心を基板10の中心に一致させるようにするためである。
【0054】
また、本発明によって得られる上記インプリントモールド用基板10から作製されるインプリントモールドを使用して転写対象物にパターン転写するときの転写装置(スタンパ装置)が、インプリントモールドを対向する端面を挟持して固定する方式の場合には、インプリントモールド用基板10の端面の平坦度が20μm以下、より好ましくは10μm以下であることが望ましい。ここで、平坦度は、TIR(Total Indicated Reading)で示される表面の反り(変形量)を表す値で、例えば基板端面の148mm×5.0mm領域において、基板端面を基準として最小自乗法で定められる平面を焦平面とし、この焦平面より上にある基板端面の最も高い位置と、焦平面より下にある基板端面の最も低い位置との高低差の絶対値とする。このように、インプリントモールド用基板の端面は高い平坦度が求められる。
【0055】
以上説明したように、本発明に係るインプリントモールド用基板によれば、基板の一主表面に台座構造を有し、その台座構造の側壁面は、一辺が5μmの四角形の内側領域で測定したときの表面粗さRqが0.3nm以上であることにより、その台座構造の側壁面に形成されるパターン形成用薄膜の付着力を向上でき、膜剥れを抑制することができる。
【0056】
(インプリントモールド用基板の製造方法)
次に、上述の本発明に係るインプリントモールド用基板の製造方法について説明する。
本発明に係るインプリントモールド用基板の製造方法は、上記構成9にあるように、対向する2つの主表面を備え、一方の前記主表面における一辺が5μmの四角形の内側領域で測定したときの表面粗さRqが0.25nm以下である基板を準備する工程と、前記基板の前記一方の主表面における台座構造形成領域上に、エッチング液に対して前記基板との間でエッチング選択性を有するエッチングマスク膜を形成する工程と、前記エッチングマスク膜が形成された基板に対して前記エッチング液によるウェットエッチングを行い、前記一方の主表面に転写面と側壁面とを備える台座構造を形成する工程と、前記台座構造上に残存するエッチングマスク膜を除去する工程とを有するインプリントモールド用基板の製造方法であって、前記台座構造を形成する工程は、前記側壁面における一辺が5μmの四角形の内側領域で測定したときの表面粗さRqが0.3nm以上となるように、前記ウェットエッチングを行うことを特徴とするものである。
【0057】
図2は、本発明に係るインプリントモールド用基板の製造工程の一実施形態を説明するための断面概略図である。
なお、図2の実施形態では、上述の図1の実施形態のインプリントモールド用基板10、つまり基板10の一方の主表面に台座構造5を有し、他方の主表面に凹部7を備える構造のインプリントモールド用基板の製造工程を示している。
以下、各工程について詳しく説明する。
【0058】
まず、図2(a)に示されるような2つの主表面1A,1Bを備え、一方の主表面1Aにおける一辺が5μmの四角形の内側領域で測定したときの表面粗さRqが0.25nm以下である基板1を準備する。
上記基板1の材質等については、図1の基板10の材質等と同じであるため、ここでは重複説明は省略する。
【0059】
上記基板1の材質は、前述したようにガラス素材であることが好ましく、一方の主表面1Aにおける一辺が5μmの四角形の内側領域で測定したときの表面粗さRqが0.25nm以下となるようにガラス研磨を行う。ガラス研磨の方法は特に制約はない。通常、研磨砥粒を含有する研磨液を加工面に供給しながら、基板の表面に発泡ポリウレタン等の材質の研磨パッドを押し当て、基板と研磨パッドを相対的に移動させながら研磨を行う。研磨は、たとえば粗研磨、精密研磨、超精密研磨というように複数段階で行ってもよい。また、表面粗さRqの測定方法については前述したとおりである。
【0060】
次に、上記基板1の一方の主表面1Aにおける台座構造形成領域上に、エッチング液に対して上記基板1との間でエッチング選択性を有するエッチングマスク膜を形成する。
この基板1の台座構造形成領域上にエッチングマスク膜を形成する工程は、具体的には、基板1の前記一方の主表面1A上にエッチングマスク膜2を形成する工程(図2(b)参照)と、当該エッチングマスク膜2上の台座構造形成領域にレジストパターン3を形成する工程(図2(c)参照)と、当該レジストパターン3をマスクとするエッチングをエッチングマスク膜2に対して行い、台座構造形成領域以外のエッチングマスク膜2を除去する工程(図2(d)参照)とを有する。これらの工程を行うことによって、図2(d)に示されるように、基板1の一方の主表面1Aにおける所定の台座構造形成領域上にエッチングマスク膜パターン2aが形成される。なお、この台座構造形成領域(台座構造5を有する領域)の形状、位置等については前述したとおりである。
【0061】
上記エッチングマスク膜2は、基板1の主表面1Aに台座構造を形成するためのウェットエッチング加工する際のハードマスク膜(エッチングマスク)としての機能を有する。したがって、上記エッチングマスク膜2としては、後の工程の台座構造を形成するためのウェットエッチングで用いるエッチング液に対して上記基板1との間でエッチング選択性を有する材質が選択される。本発明においては、上記エッチングマスク膜2は、例えばクロムを含有する材料で形成されることが好適である。上記基板1は好ましくはガラスからなり、この場合の基板1のウェットエッチングにはフッ酸を含有するエッチング液が好ましく用いられる。
【0062】
上記クロムを含有する材料は、フッ酸を含有するエッチング液に対して上記ガラスからなる基板1との間で良好なエッチング選択性を有するため、上記エッチングマスク膜2の材質として好適である。また、クロムを含有する材料でエッチングマスク膜2を形成すると、ガラスからなる基板1に台座構造を形成後にエッチングマスク膜2を除去するときにウェットエッチング、ドライエッチングのどちらを適用しても、ガラスからなる基板1との間で良好なエッチング選択性が得られるため、好ましい。
【0063】
上記クロム(Cr)を含有する材料としては、例えばCr単体、またはCrの窒化物、炭化物、炭化窒化物などのCr化合物があり、エッチングマスク膜2を単層構造とする場合はCrNが特に好ましい。また、エッチングマスク膜2を多層構造とする場合においては、基板1に接する側の層は窒化クロムで形成することが好ましい。CrNからなる膜は、基板1との密着性が高い傾向があるためである。このエッチングマスク膜2に適用するCrNからなる材料は、クロム含有量が50原子%以上であることが好ましい。
なお、エッチングマスク膜2の材質は、選択される基板1の材質、台座構造を形成するためのウェットエッチングで用いるエッチング液の組成によっても異なるので、上記クロムを含有する材料に限定されるわけではない。
【0064】
上記基板1の一方の主表面1A上にエッチングマスク膜2を形成する方法は特に制約される必要はないが、たとえばスパッタリング成膜法が好ましく挙げられる。
上記エッチングマスク膜2の膜厚は、後の台座構造を形成するためのウェットエッチング条件(エッチング深さ乃至はエッチング時間等)にもよるが、通常50nm以上200nm以下の範囲であることが好適である。かかるエッチングマスク膜2の膜厚が50nm未満であると、上記エッチングマスク膜パターン2aをマスクとして基板1をウェットエッチング加工するときに、加工が終わる前にエッチングマスク膜パターン2aがエッチングされて消失してしまう恐れがある。一方、エッチングマスク膜2の膜厚が200nmよりも厚くなると、エッチングマスク膜2をエッチングしてエッチングマスク膜パターン2aを形成するときにエッチングマスクとして用いられるレジストパターン3の膜厚を大幅に厚くする必要があるため、好ましくない。
【0065】
また、上記エッチングマスク膜2上の台座構造形成領域にレジストパターン3を形成する方法としては、フォトリソグラフィ法が好適である。そして、当該レジストパターン3をマスクとして、台座構造形成領域以外のエッチングマスク膜2を除去しエッチングマスク膜パターン2aを形成するためのエッチングは、エッチングマスク膜2の材質や、エッチングマスク膜2を除去する領域の大きさによっても異なるが、基本的にはドライエッチング、ウェットエッチングのいずれを適用しても構わない。
【0066】
なお、上記エッチング後に残存する上記レジストパターン3は、そのまま残しておいてもよいし、あるいはこの段階で除去してもよい。レジストパターン3を残しておいた方が、エッチングマスク膜2にピンホールや局所的に低密度の領域が存在していた場合でも、基板1をウェットエッチングするときに使用するエッチング液がそのピンホールを通過して基板1に接触し、基板1の表面をエッチングしてしまうことを抑制できるため、好ましい。
【0067】
上記レジストパターン3は、ポジ型およびネガ型のいずれのレジスト材料で形成してもよい。また、上記レジストパターン3は、電子線描画露光用およびレーザー描画露光用のいずれのレジスト材料で形成してもよい。上記レジストパターン3は、インプリントモールドに形成されるモールドパターンに比べて疎なパターンであるため、電子線描画露光用レジストに比べて解像性は劣るが描画速度に優れるレーザー描画露光用レジストでレジストパターン3を形成する方が好ましい。また、上記レジストパターン3は、光硬化型樹脂や熱硬化型樹脂で形成してもよい。
【0068】
そして、次に、上記基板1の主表面1Aの台座構造形成領域上にエッチングマスク膜パターン2aが形成された基板1に対してエッチング液によるウェットエッチングを行い、上記基板1の主表面1Aに転写面5aと側壁面5bとを備える台座構造5を形成する(図2(e)参照)。
【0069】
具体的には、たとえば、上記エッチングマスク膜パターン2aが形成された基板1を適当な支持具で支持した状態で、上記エッチング液中に基板1を浸漬させて基板1のウェットエッチングを行うことができる。この場合のエッチング液としては、上記基板1がガラスからなる場合、フッ酸(HF)を含有するエッチング液が好ましい。エッチング液の液温は適宜設定される。また、エッチング処理中は、必要に応じて適宜エッチング液を攪拌するようにしてもよい。また、エッチング時間は、形成しようとする台座構造の段差などの条件を考慮して適宜決定される。
【0070】
このように、上記基板1の台座構造形成領域に形成されているエッチングマスク膜パターン2aをマスクとして、基板1のウェットエッチングを行うことにより、台座構造形成領域以外の領域では上記基板1の主表面1Aが所定深さまでエッチングされて、図2(e)、(f)に示されるように、基板1の主表面1Aには台座構造5が形成される。
【0071】
本発明においては、上述の台座構造5を形成する工程では、形成される台座構造5の側壁面5bにおける一辺が5μmの四角形の内側領域で測定したときの表面粗さRqが0.3nm以上となるようにウェットエッチングを行う必要がある。このためには、具体的には、エッチング液のフッ酸濃度やエッチング時間などの条件を調整することが挙げられる。
【0072】
ただし、前述したように、上記側壁面5bにおける一辺が5μmの四角形の内側領域で測定したときの表面粗さRqが1.0nm以下であることが好ましく、そのためには、エッチング液のフッ酸濃度やエッチング時間などの条件を調整してウェットエッチングを行うことが好適である。
【0073】
また、本発明においては、台座構造5を除いた部分の主表面1Aにおける一辺が5μmの四角形の内側領域で測定したときの表面粗さRqが0.3nm以上であることが好ましい。また、この台座構造5を除いた部分の主表面1Aにおける一辺が5μmの四角形の内側領域で測定したときの表面粗さRqが1.0nm以下であることが好ましい。この場合にも、エッチング液のフッ酸濃度やエッチング時間などの条件を調整してウェットエッチングを行うことが好適である。上述の台座構造5を形成するウェットエッチングによって、通常、上記台座構造5の側壁面5bと上記台座構造5を除いた部分の領域は同等の表面粗さに仕上げることが可能である。
【0074】
なお、上記台座構造5の転写面5aは、上記のウェットエッチング時には、エッチングマスク膜パターン2aでマスクされており、エッチング液には晒されないため、転写面5aの表面粗さは、基板研磨仕上がり後と同等レベル、すなわち、一辺が5μmの四角形の内側領域で測定したときの表面粗さRqが0.25nm以下を維持している。
【0075】
以上説明した台座構造5を形成する工程の後、残存するレジストパターン3とエッチングマスク膜パターン2aを除去する(図2(f)参照)。レジストパターン3およびエッチングマスク膜パターン2aを除去する方法は、特に制約されないが、基板1の材質にダメージを与えない方法が望ましい。例えば、基板1がガラスで、エッチングマスク膜パターン2aが上記のクロム系材料である場合は、硝酸第2セリウムアンモニウム水溶液と過塩素酸の混合液をエッチング液に用いるウェットエッチング、あるいは塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスをエッチングガスに用いるドライエッチングが好適である。
【0076】
次に、この台座構造5が形成された基板1の他方の主表面(裏側主表面)1Bに凹部7を形成する(図2(g)参照)。
この凹部7を形成する方法としては、機械加工などが挙げられるが、形成する凹部のサイズ、形状、深さや、基板1の材質などに応じて適宜選択すればよい。
この凹部7の好ましい形状等については前述したとおりである。また、上記凹部7を有する裏側主表面1Bの領域(凹部7が形成されている領域)は、上記台座構造5を有する表側主表面1Aの領域(台座構造5が形成されている領域)を少なくとも含む大きさであることが好ましいことも前述したとおりである。
【0077】
以上のようにして、基板1の表側主表面1Aには所定の段差構造5が形成され、裏側主表面1Bには凹部7が形成されたインプリントモールド用基板10が出来上がる(図2(g)参照)。
以上説明した本発明によれば、基板の一主表面に台座構造を有し、その台座構造の側壁面は、一辺が5μmの四角形の内側領域で測定したときの表面粗さRqが0.3nm以上に仕上がったインプリントモールド用基板が得られるため、このインプリントモールド用基板を用いてマスクブランクを製造することにより、その台座構造の側壁面に形成されるパターン形成用薄膜の付着力を向上でき、膜剥れを抑制することができる。
【0078】
また、図3は、本発明に係るインプリントモールド用基板の製造工程の他の実施形態を説明するための断面概略図である。
図3の実施形態においても、上述の図1の実施形態のインプリントモールド用基板10、つまり基板10の一方の主表面に台座構造5を有し、他方の主表面に凹部7を備える構造のインプリントモールド用基板の製造工程を示している。なお、図3の実施形態は、台座構造と凹部を形成する順序が図2の実施形態とは異なる点で相違する。つまり、図3の実施形態では、凹部を先に形成してから、台座構造を形成する。
【0079】
まず、図3(a)に示されるような2つの主表面1A(表側主表面)、1B(裏側主表面)を備え、一方の主表面1Aにおける一辺が5μmの四角形の内側領域で測定したときの表面粗さRqが0.25nm以下である基板1を準備する。この点は、図2の実施形態と同様である。
【0080】
次に、この基板1の裏側主表面1Bに凹部7を形成する(図3(b)参照)。凹部7の形成方法等は前述の図2の実施形態と同様である。
【0081】
次に、上記基板1の表側主表面1Aにおける台座構造形成領域上に、エッチング液に対して上記基板1との間でエッチング選択性を有するエッチングマスク膜を形成する。具体的には、基板1の主表面1A上にエッチングマスク膜2を形成する工程(図3(c)参照)と、当該エッチングマスク膜2上の台座構造形成領域にレジストパターン3を形成する工程(図3(d)参照)と、当該レジストパターン3をマスクとするエッチングをエッチングマスク膜2に対して行い、台座構造形成領域以外のエッチングマスク膜2を除去する工程(図3(e)参照)とを行うことによって、図3(e)に示されるように、基板1の主表面1Aにおける所定の台座構造形成領域上にエッチングマスク膜パターン2aが形成される。上記エッチングマスク膜2の材質等は前述の図2の実施形態と同様である。
【0082】
そして、次に、上記基板1の主表面1Aの台座構造形成領域上にエッチングマスク膜パターン2aが形成された基板1に対してエッチング液によるウェットエッチングを行い、上記基板1の主表面1Aに転写面5aと側壁面5bとを備える台座構造5を形成する(図3(f)参照)。
【0083】
本実施形態においても、上述の台座構造5を形成する工程では、形成される台座構造5の側壁面5bにおける一辺が5μmの四角形の内側領域で測定したときの表面粗さRqが0.3nm以上となるようにウェットエッチングを行う必要がある。
ただし、前述したように、上記側壁面5bにおける一辺が5μmの四角形の内側領域で測定したときの表面粗さRqが1.0nm以下であることが好ましい。
【0084】
また、本実施形態においても、台座構造5を除いた部分の主表面1A領域における一辺が5μmの四角形の内側領域で測定したときの表面粗さRqが0.3nm以上であることが好ましい。また、この台座構造5を除いた部分の主表面1A領域における一辺が5μmの四角形の内側領域で測定したときの表面粗さRqが1.0nm以下であることが好ましい。
よって、本実施形態においても、エッチング液のフッ酸濃度やエッチング時間などの条件を調整して上記の台座構造5を形成するためのウェットエッチングを行うことが好適である。
【0085】
最後に、残存するレジストパターン3とエッチングマスク膜パターン2aを除去する(図3(g)参照)。
以上のようにして、基板1の表側主表面1Aには所定の段差構造5が形成され、裏側主表面1Bには凹部7が形成されたインプリントモールド用基板10が出来上がる(図3(g)参照)。
【0086】
以上説明したとおり、本実施形態によっても、基板の一主表面に台座構造を有し、その台座構造の側壁面は、一辺が5μmの四角形の内側領域で測定したときの表面粗さRqが0.3nm以上に仕上がったインプリントモールド用基板が得られる。このインプリントモールド用基板を用いてマスクブランクを製造することにより、その台座構造の側壁面に形成されるパターン形成用薄膜の付着力を向上でき、膜剥れを抑制することができる。
【0087】
なお、上述の図2および図3の各実施形態では、単一(1枚)の基板1の裏側主表面1Bに、機械加工等で凹部7を形成する場合を説明したが、本発明ではこれに限定されない。
図5は、基板の裏側主表面に凹部を形成する方法の他の実施形態を説明するための断面概略図である。
すなわち、前述の単一(1枚)の基板1の裏側主表面1Bに凹部7を形成する工程(図3(b))は、図5に示すように、少なくとも1枚の所定の形状の孔(貫通孔)6を穿設してなる平板状の第1の基材1aと、少なくとも1枚の平板状の第2の基材1bとを接合することにより、接合後の基板1の裏側主表面1Bに、上記第2の基材1bの孔6と第1の基材1aの接合側の主表面とからなる凹部7を形成することによって行うことができる。
【0088】
基板1を構成する上記第1の基材1aおよび第2の基材1bの材質としては、前述の石英ガラスやSiO−TiO系低膨張ガラス、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス、CaFガラス等のガラス素材、シリコンなどが挙げられる。これらのうちガラス素材は特に好適である。従って、上記基板1を構成する第1の基材1aと第2の基材1bは、ガラスからなる基材を少なくとも含むことが好ましい。
【0089】
また、上記第1の基材1aと第2の基材1bは、同じ材質であってもよいし、あるいは異なる材質であってもよい。異なる材質を用いる場合は、熱膨張係数の異なる材料を組み合わせることが特に好適である。第1の基材1aと第2の基材1bとが熱膨張係数の異なる材料であることにより、基板1に凹部7を形成したことに加えて、インプリントモールドの離型時に加熱又は冷却することで第1の基材1aと第2の基材1bの間で相対的な引っ張り応力あるいは圧縮応力が作用してモールドの離型がよりいっそうしやすくなる。
【0090】
なお、図5に示される構成では、上記第1の基材1aと第2の基材1bはともに1枚の基材を用いているが、第1の基材と第2の基材の一方を、あるいは両方をそれぞれ2枚以上の基材を接合させた構成としてもよい。
【0091】
上記第1の基材1aに所定の形状の孔6を穿設するための加工手段としては、特に制約される必要はなく、公知の機械加工法、エッチング法などの微細加工方法を任意に用いることができる。具体的には、例えば、レーザー加工、切削加工、ウォータージェット加工等の微細加工方法の中から、基材の材質、加工する孔の形状や大きさ等を考慮して適宜選択して用いればよい。
【0092】
次に、上記所定の形状の孔6を穿設した第1の基材1aと平板状の第2の基材1bとを接合する手段としては、第1の基材と第2の基材との十分な接着力が得られる方法であれば、特に制約される必要はない。ここで十分な接着力とは、インプリントモールドの使用時に第1の基材と第2の基材との剥離等が起こらないような接着力のことである。
本発明においては、具体的には、例えば、溶接(溶着)法、接着法、陽極接合法、フッ酸接合法、光学溶着法(オプティカルコンタクト)などの方法を好ましく用いることができる。第1の基材1aと第2の基材1bのそれぞれの材質に応じて好適な接合方法を適宜選択して用いればよい。
【0093】
なお、上記第1の基材1aと第2の基材1bを接合する際、上述したようないずれの接合方法を用いるにしても、強い接合力を得るためには両者の接合面それぞれの平坦度が高いことが要求され、とりわけ上記光学溶着法では接合面の高平坦度且つ高平滑性が要求される。したがって、上記第1の基材1aと第2の基材1bを接合する工程に先立ち、上記第1の基材1aと第2の基材1bの両者の接合面をそれぞれ所定の平坦度(平坦度の定義は前述と同じ)、例えば5μm以下程度の平坦度となるように仕上げる工程を含むことが好ましい。上記第1の基材1aと第2の基材1bの両者の接合面をそれぞれ所定の平坦度となるように仕上げるための加工手段としては、特に制約される必要はなく、公知の機械加工法、エッチング法などの表面加工方法を任意に用いることができる。
【0094】
以上のような方法によれば、所定の形状の孔を穿設してなる基材を含む少なくとも2枚の基材を接合することにより、接合後の基板1の裏側主表面1Bに前記孔6からなる凹部7を形成することができる。凹部7は、基板1を構成する少なくとも1枚の基材1aに予め所定の形状の孔6を穿設しておくことで形成できるので、そのような加工の工程負荷も小さくて済む。
以上のようにして得られた接合後の基板1に対して、上述した実施形態の方法と同様にして、表側主表面1Aに台座構造5を形成することによって、本発明のインプリントモールド用基板10を得ることができる。
【0095】
(マスクブランクとその製造方法)
次に、本発明に係るマスクブランクとその製造方法について説明する。
本発明は、上述の本発明に係るインプリントモールド用基板を用いたマスクブランクとその製造方法についても提供するものである。
図6は、本発明に係るマスクブランクの断面概略図である。
すなわち、図6に示すマスクブランク20は、上述した本発明のインプリントモールド用基板10の前記台座構造5を有する表側主表面、すなわちインプリントモールドのモールドパターンを形成する側の面(パターン形成面)に、パターン形成用薄膜11を備えたものである。
【0096】
上記パターン形成用薄膜11は、インプリントモールド用基板10における台座構造5を有する領域にモールドパターンを形成するための基板エッチング(掘り込み)加工する際のハードマスク膜としての機能を有する。したがって、上記パターン形成用薄膜11としては、後の工程のモールドパターンを形成するためのエッチング環境に対して上記基板10との間でエッチング選択性を有する材質が選択される。本発明においては、上記パターン形成用薄膜11は、例えばクロムを含有する材料で形成されることが好適である。上記基板10は好ましくはガラスからなり、この場合の基板10のドライエッチングには例えばフッ素系ガスが用いられる。上記クロムを含有する材料は、フッ素系ガスに対して上記ガラスからなる基板10との間でエッチング選択性を有する。
【0097】
上記クロム(Cr)を含有する材料としては、例えばクロム金属、クロム窒化物、クロム炭化物、クロム炭化窒化物およびクロム酸化炭化窒化物などが挙げられる。このパターン形成用薄膜11の場合においては、クロム酸化炭化窒化物が特に好ましい。
【0098】
このようなマスクブランク20におけるパターン形成用薄膜11としては、単層でも複数層でもよい。例えば、上記薄膜11が上記クロム系材料の単層膜よりなるマスクブランクが挙げられる。また、例えば上記薄膜11が少なくとも上層と下層の積層膜よりなり、上層は上記クロム系材料で形成され、下層がタンタル(Ta)を主成分とする材料で形成されたマスクブランクなども挙げられる。この場合のタンタルを主成分とする材料としては、例えばTaHf、TaZr、TaHfZrなどのTa化合物、あるいはこれらのTa化合物をベース材料として、例えばB、Ge、Nb、Si、C、N等の副材料を加えた材料などがある。また、タンタルを主成分とする材料は、レジストパターン形成の際の電子線描画時のチャージアップ防止や、走査型電子顕微鏡(SEM)による基板パターン(モールドパターン)検査が可能となるように、必要な導電性を確保する機能を持たせることができるので好適である。
勿論、このようなパターン形成用薄膜11の構成および材料の例示はあくまでも一例であり、本発明はこれらに制約される必要はない。
【0099】
上記パターン形成用薄膜11の膜厚は特に制約されないが、例えば2nm以上10nm以下の範囲であることが好適である。かかる薄膜11の膜厚が2nm未満であると、モールドパターン作製時に薄膜11のパターンをマスクとして基板10をエッチング加工するときに、加工が終わる前に薄膜11のパターンがエッチングされて消失してしまう恐れがある。一方、上記薄膜11の膜厚が10nmよりも厚くなると、微細パターン形成の観点から好ましくない。また、基板10の材質にダメージを与えずに薄膜11を最後に除去することが困難になる場合がある。
【0100】
インプリントモールド用基板10上に上記パターン形成用薄膜11を形成する方法は特に制約される必要はないが、なかでもスパッタリング成膜法が好ましく挙げられる。スパッタリング成膜法によると、均一で膜厚の一定な膜を形成することが出来るので好適である。
また、本発明のマスクブランク20は、上記パターン形成用薄膜11の上に、レジスト膜を形成した形態であっても構わない。
【0101】
以上説明したように、上述の本発明に係るインプリントモールド用基板を用いてマスクブランクを製造することにより、基板の台座構造の側壁面に形成されるパターン形成用薄膜の付着力を向上させ、該薄膜の剥離を抑制できるマスクブランクが得られる。
【0102】
(インプリントモールドの製造方法)
次に、本発明に係るインプリントモールドの製造方法について説明する。
本発明は、上述のマスクブランク20を用いたインプリントモールドの製造方法についても提供するものである。
すなわち、本発明は、上述のマスクブランクを用いるインプリントモールドの製造方法であって、前記パターン形成用薄膜上に形成されたモールドパターンを有するレジスト膜をマスクとし、ドライエッチングによって前記パターン形成用薄膜にモールドパターンを形成する工程と、前記モールドパターンが形成されたパターン形成用薄膜をマスクとし、ドライエッチングによって前記台座構造の転写面にモールドパターンを形成する工程とを有することを特徴としている。
【0103】
図7は、本発明に係るインプリントモールドの製造工程を説明するための断面概略図である。
以下、図7を参照してインプリントモールドの製造工程を説明する。
本発明のマスクブランク20の上面に、レジスト膜(例えば液体状の光硬化型樹脂(または熱硬化型樹脂))21を塗布する(図7(a)参照)。次に、上記の液体状のレジスト膜21に対し、微細パターンを備えるマスターモールドを直接押し付けた状態で光照射処理(または加熱処理)を行って樹脂を硬化させてからマスターモールドを剥離する。さらに、酸素プラズマ等を用いるアッシングによって樹脂の残膜部分を除去するデスカム処理を行うことで、マスクブランク20のパターン形成用薄膜11上にモールドパターンを有するレジストパターン21aが形成される(図7(b)参照)。
【0104】
次に、上記レジストパターン21aを形成したマスクブランク20を、ドライエッチング装置に導入し、エッチングガス(例えば塩素系ガス)を用いたドライエッチングを行うことにより、上記レジストパターン21aをマスクとしてパターン形成用薄膜11をエッチング加工して、図7(c)、(d)に示すように薄膜パターン11aを形成する。
ここで、ドライエッチング装置からマスクブランク20を一旦取り出して、残存する上記レジストパターン21aを除去してもよい(図7(d)参照)。
なお、上記パターン形成用薄膜11の膜構成、材質によっては、上記エッチング加工を1段階ではなく、2段階以上で行うこともある。
【0105】
次いで、同じドライエッチング装置内で、基板10が例えばガラスの場合、フッ素系ガス(CHF、CF等)を用いたドライエッチングを行うことにより、上記薄膜パターン11aをマスクとして基板10をエッチング加工して、図7(e)に示すように、基板10の台座構造5の転写面5aにモールドパターン(凹凸パターン)31を形成する。
【0106】
さらに残存する上記薄膜パターン11aを除去することにより、図7(f)に示すような構造のモールドパターン31が形成されたインプリントモールド30が得られる。インプリントモールド30は、その表側主表面に有する台座構造5の転写面5aにモールドパターン31が形成され、その裏側主表面には凹部7が形成された構造を有している。
【0107】
図8は、本発明により得られるインプリントモールドの使用状態を説明するための概略断面図である。
本発明により得られるインプリントモールド30は、被転写体(転写対象物)40における被転写体構成層(例えばシリコンウェハ)41上に塗布されたレジスト膜(例えば光硬化型樹脂や熱硬化型樹脂)42に直接押し付けてモールドパターン31を転写する。本発明により得られるインプリントモールドを用いることにより、転写対象物にモールドパターンを精度良く転写することができる。
【0108】
以上詳細に説明したように、本発明に係るインプリントモールド用基板は、一方の主表面に台座構造を有し、その台座構造の側壁面は、一辺が5μmの四角形の内側領域で測定したときの表面粗さRqが0.3nm以上であることによって、その台座構造の側壁面に形成されるパターン形成用薄膜の剥離を抑制できる。
また、本発明によれば、上記の台座構造を有するインプリントモールド用基板を用いて、台座構造の側壁面に形成されるパターン形成用薄膜の剥離を抑制でき、インプリントモールドの製造に好適なマスクブランクを得ることができる。
さらに、本発明によれば、上記により得られるマスクブランクを用いて製造され、モールドパターンの欠陥の発生を低減でき、転写対象物にモールドパターンを精度良く転写することができるインプリントモールドを得ることができる。
【実施例】
【0109】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
(実施例1)
本実施例に使用するインプリントモールド用基板を以下のようにして作製した。
ガラス基板として合成石英基板(大きさ約152mm×152mm、厚み6.35mm)を準備した。このガラス基板の一方の主表面(後の工程で台座構造を形成する面)は、予め研磨によって、一辺が5μmの四角形の内側領域で測定したときの表面粗さRqが0.16nm以下となるように仕上げておいた。
なお、本実施例においては、表面粗さRqは、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、被測定面の5μm×5μmの範囲を所定の解像度で測定したときに得られる断面曲線に基づき算出した。
【0110】
上記ガラス基板をクロム(Cr)ターゲットを備えるDCスパッタリング装置に導入し、基板の上記主表面側からCrN層、CrC層、CrON層が積層する構造を有するエッチングマスク膜を105nmの厚みで成膜した。
【0111】
次に、上記エッチングマスク膜の上面にフォトレジスト(東京応化社製 THMR−iP3500)を460nmの厚さに塗布し、大きさが28mm×36mmの矩形(台座構造の形成領域)の外側エリアに対して紫外光による露光と現像を行い、台座構造用のレジストパターンを形成した。
次に、上記台座構造用のレジストパターンを形成したガラス基板について、塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスをエッチングガスに用いたドライエッチングにより、台座構造用のレジストパターンで保護されている部分以外のエッチングマスク膜を除去して、台座構造用のエッチングマスク膜パターンを形成した。
【0112】
次に、上記エッチングマスク膜パターンを形成したガラス基板を樹脂(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE))製の支持具で支持した状態で、所定のエッチング液中に浸漬させた。エッチング液としては、フッ化水素酸とフッ化アンモニウムの混合液(HF濃度6wt%、NHF濃度20wt%)を用い、ガラス基板にウェットエッチングを行った。さらに、残存する上記レジストパターンを硫酸過水により除去し、残存する上記エッチングマスク膜パターンを硝酸第2セリウムアンモニウム水溶液と過塩素酸の混合液により除去することで、深さが30μm程度の台座構造を作製した。
【0113】
上記のようにして作製した台座構造の転写面は、一辺が5μmの四角形の内側領域で測定したときの表面粗さRqは0.17nmであり、上記の研磨工程後の表面粗さと同等レベルを維持していた。
また、上記台座構造を有する主表面の上記台座構造を除いた部分の領域(前述の図1中の符号4で示す領域)は、一辺が5μmの四角形の内側領域で測定したときの表面粗さRqは0.34nmであった。
【0114】
なお、台座構造の側壁面については、そのままではAFMによる測定が困難であるため、予め上記と同様にして台座構造を作製した別のガラス基板について、まず上記台座構造を除いた部分の領域の表面粗さを測定するとともに、このガラス基板を部分的に破断したサンプルを、台座構造の側壁面が水平になるような状態でAFMに設置して、台座構造の側壁面の表面粗さの測定を行った。その結果、台座構造の側壁面の表面粗さRqは0.35nmであり、台座構造を除いた部分の主表面の領域の表面粗さRq(0.34nmであった。)とほぼ一致することを確認した。したがって、本実施例で上記のように作製した台座構造の側壁面についても、一辺が5μmの四角形の内側領域で測定したときの表面粗さRqは0.35nmである。
【0115】
次に、ガラス基板の上記台座構造を作製した主表面とは反対側の主表面に、機械加工で所定の大きさの凹部を作製した。凹部の大きさは上記台座構造領域を含む大きさとなるように、直径が64mmの真円形状で、深さは5.2mmとした。
なお、上記台座構造の中心の位置と上記凹部の中心の位置は、いずれもガラス基板の中心の位置とのずれがいずれも100μm以下であった。
以上のようにして、本実施例のインプリントモールド用基板を作製した。
【0116】
次に、上記のインプリントモールド用基板を用いてマスクブランクを作製した。
上記インプリントモールド用基板をDCスパッタリング装置に導入し、クロム(Cr)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)、二酸化炭素(CO)および窒素(N)の混合ガスをスパッタリングガスとする反応性スパッタリングにより、上記インプリントモールド用基板の台座構造を形成した主表面上の全面にCrOCN膜からなるパターン形成用薄膜を5nmの厚みで成膜し、マスクブランクを作製した。
【0117】
次に、このマスクブランクを用いてインプリントモールドを作製した。
まず、こうしてCrOCN膜からなるパターン形成用薄膜を成膜したマスクブランクの上面に、液体状の光硬化型樹脂を塗布した。次に、上記の液体状の光硬化性樹脂に対し、微細パターンを備えるマスターモールドを直接押し付けた状態で光照射処理を行って樹脂を硬化させてからマスターモールドを剥離した。さらに、酸素プラズマ等を用いるアッシングによって樹脂の残膜部分を除去するデスカム処理を行うことにより、パターン形成用薄膜上にモールドパターンを有するレジストパターンを形成した。
【0118】
次に、上記レジストパターンを形成したマスクブランクを、ドライエッチング装置に導入し、塩素ガスと酸素ガスの混合ガスを用いたドライエッチングを行うことにより、上記レジストパターンをマスクとして上記パターン形成用薄膜をエッチング加工して、モールドパターンを有する薄膜パターンを形成した。この時のエッチング終点は、プラズマ発光検出方式の終点検出器を用いることで判別した。
ここで、上記マスクブランクを一旦ドライエッチング装置から取り出して、残存するレジストパターンを酸素プラズマアッシングによって除去した。
【0119】
続いて、同じドライエッチング装置内で、フッ素系(CHF)ガスを用いたドライエッチングを行うことにより、上記モールドパターンを有する薄膜パターンをマスクとしてガラス基板をエッチング加工することにより、所定のモールドパターン(凹凸パターン)を形成した。この時、モールドパターンの深さが100nmになるようエッチング時間を調整した。
ここで、走査型電子顕微鏡(SEM)によるパターン検査を行ったところ、モールドパターンの幅、深さの寸法、精度において良好なパターンが形成されていることを確認した。なお、モールドパターンの欠陥は認められなかった。
【0120】
さらに、残存する上記薄膜パターンを硝酸第2セリウムアンモニウム水溶液と過塩素酸の混合液によって除去することで、前述の図7(f)に示すような構造のインプリントモールドを得た。
【0121】
次に、得られたインプリントモールドを転写装置に固定し、前述の図8に示すように、被転写体(転写対象物)における例えばシリコンウェハ上に塗布されたレジスト膜(例えば光硬化型樹脂)に直接押し付けてパターンを転写する工程を実施したところ、転写対象物にモールドパターンを精度良く転写することができた。
【0122】
(比較例1)
比較例1では、ガラス基板に台座構造を形成するエッチング工程において、ドライエッチングを適用したこと以外は、実施例1と同様の手順で行い、インプリントモールド用基板を作製した。なお、そのエッチング工程におけるガラス基板に対するドライエッチングは、フッ素系(CHF)ガスを用いて行った。
【0123】
上記のようにドライエッチングを適用して作製した台座構造の転写面は、一辺が5μmの四角形の内側領域で測定したときの表面粗さRqは0.17nmであり、上記の研磨工程後の表面粗さと同等レベルを維持していた。
また、上記台座構造を有する主表面の上記台座構造を除いた部分の領域(前述の図1中の符号4で示す領域)は、一辺が5μmの四角形の内側領域で測定したときの表面粗さRqは0.22nmであった。また、台座構造の側壁面についても、一辺が5μmの四角形の内側領域で測定したときの表面粗さRqは0.23nmである。なお、台座構造の側壁面の表面粗さRqについては、上述の実施例1と同様の方法で測定を行った。
【0124】
また、比較例1のマスクブランクの製造方法およびインプリントモールドの製造方法においても、上記のように作製した比較例1のインプリントモールド用基板を用いたこと以外は、実施例1のマスクブランクの製造方法およびインプリントモールドの製造方法と同様の手順で行った。
【0125】
その結果、出来上がったインプリントモールドについて、走査型電子顕微鏡(SEM)によるパターン検査を行ったところ、モールドパターンの欠陥が多数確認された。これらの欠陥は、いずれもブリッジ欠陥、パターン側壁の凸状欠陥、ピンドット欠陥などであり、いわゆる黒欠陥であった。これらの黒欠陥は、基板にモールドパターンを形成するドライエッチングのときにマスクとなるモールドパターンを有する薄膜パターンに黒欠陥が存在していたことに起因するものと推察される。そして、その薄膜パターンに黒欠陥が発生したのは、台座構造の転写面上のパターン形成用薄膜の表面に、台座構造の側壁面に形成されていたパターン形成用薄膜の一部が剥離したものがパーティクルとして付着していたことに起因するものと推察される。
【0126】
また、比較例1のインプリントモールドを転写装置に固定し、実施例1と同様に、被転写体(転写対象物)における例えばシリコンウェハ上に塗布されたレジスト膜(例えば光硬化型樹脂)に直接押し付けてパターンを転写する工程を実施したが、転写対象物にモールドパターン欠陥に起因するパターン欠陥が発生した。
【符号の説明】
【0127】
1 基板
2 エッチングマスク膜
3 レジストパターン
5 台座構造
6 孔
7 凹部
10 インプリントモールド用基板
11 パターン形成用薄膜
20 マスクブランク
21 レジスト膜
30 インプリントモールド
31 モールドパターン
40 被転写体
41 被転写体構成層
42 レジスト膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9