(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6756504
(24)【登録日】2020年8月31日
(45)【発行日】2020年9月16日
(54)【発明の名称】手摺用ブラケット及び手摺装置
(51)【国際特許分類】
E04F 11/18 20060101AFI20200907BHJP
【FI】
E04F11/18
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-70481(P2016-70481)
(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-179953(P2017-179953A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110479
【氏名又は名称】ナカ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 誠司
【審査官】
兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−057105(JP,A)
【文献】
特開2004−124525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被設置部に固定される基盤部と、前記基盤部から張り出した突出部とを有する、ブラケットベースと、
前記突出部の外周に装着され、前記突出部の外側面に沿って延設された連結部を有する、ブラケット本体と、
前記ブラケット本体の前記連結部を前記ブラケットベースの前記突出部に締め付ける、緊締部材と、
を備えた、手摺用ブラケットにおいて、
前記突出部の外側面における前記連結部に対向する位置に、前記突出部の内方へ向かって前記基盤部側に傾斜した傾斜面が形成され、
前記連結部の内側面における前記傾斜面に対応する位置に摺動面が形成され、
前記緊締部材の締め付け力によって、前記連結部が前記突出部に向けて押圧されて、前記摺動面が前記傾斜面上を前記基盤部側に向けて摺動することにより、前記ブラケット本体が前記ブラケットベースに対して前記基盤部に向けて相対移動し、
前記ブラケットベースは、前記突出部における前記傾斜面の周辺の位置に内側貫通孔を有し、
前記ブラケット本体は、前記連結部における前記内側貫通孔に整合する位置に外側貫通孔を有し、
前記緊締部材は、前記内側貫通孔及び前記外側貫通孔に挿通される
ことを特徴とする、手摺用ブラケット。
【請求項2】
請求項1に記載した手摺用ブラケットにおいて、
前記摺動面は、前記傾斜面に対応して傾斜するように形成された
ことを特徴とする、前記手摺用ブラケット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載した手摺用ブラケットにおいて、
前記傾斜面は、前記突出部の外側面に設けられた溝又は段差により形成され、
前記摺動面は、前記連結部の内側面に設けられた突条又は段差により形成された
ことを特徴とする、前記手摺用ブラケット。
【請求項4】
請求項1又は2に記載した手摺用ブラケットにおいて、
前記傾斜面は、前記突出部の外側面に設けられた突条により形成され、
前記摺動面は、前記連結部の内側面に設けられた溝又は段差により形成された
ことを特徴とする、前記手摺用ブラケット。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちのいずれか一項に記載した手摺用ブラケットにおいて、
前記緊締部材は、前記内側貫通孔及び前記外側貫通孔に挿通されるボルトと、前記ボルトに螺合されるナットと、を備えた
ことを特徴とする、前記手摺用ブラケット。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちのいずれか一項に記載した手摺用ブラケットにおいて、
前記基盤部は、前記突出部よりも外方に張り出しており、
前記ブラケット本体には、前記緊締部材の締め付け力によって前記基盤部に押し付けられる後端側圧着部が設けられた
ことを特徴とする、前記手摺用ブラケット。
【請求項7】
請求項1乃至6のうちのいずれか一項に記載した手摺用ブラケットにおいて、
前記ブラケット本体には、前記緊締部材の締め付け力によって前記突出部の突出端面に押し付けられる前端側圧着部が設けられた
ことを特徴とする、前記手摺用ブラケット。
【請求項8】
請求項1乃至7のうちのいずれか一項に記載した手摺用ブラケットと、
前記手摺用ブラケットに取り付けられる手摺棒と、を備えた
ことを特徴とする、手摺装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面に固定されるブラケットベースと手摺棒を支持するためのブラケット本体との固定構造を有する手摺用ブラケット、及び該手摺用ブラケットを備えた手摺装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物や構築物の壁面に手摺を取付けるための手摺用ブラケットは、壁面に固定されるブラケットベースと、壁面から所定の距離だけ離隔した位置に手摺棒を支持するためのブラケット本体とを有する。ブラケットベースは壁面にねじ止めされ、ブラケット本体はブラケットベースにねじ止めされる。手摺棒はブラケット本体に取り付けられ、ブラケットベースを介して、壁面に固定される。
【0003】
手摺棒を壁面に堅固に固定するには、ブラケットベースとブラケット本体との間にがたつきを生じることがないように、ブラケットベースにブラケット本体を連結する必要がある。そこで、ブラケットベースとブラケット本体にそれぞれ嵌合部を形成し、ブラケットベースの嵌合部とブラケット本体の嵌合部を嵌め合せることによって、ブラケットベースとブラケット本体の一体化を図っている。
【0004】
例えば、特開2003−314020号公報の手摺ブラケットによれば、ブラケットベースには、ブラケット本体に向かって突出した先細り形状のベース側嵌合部と、固定ねじを螺合させる固定ねじ孔とが形成されている。また、ブラケット本体には、ベース側嵌合部の嵌入するブラケット側嵌合部と、固定ねじを挿通する固定ねじ受け座とが形成されている。そして、このベース側嵌合部とブラケット側嵌合部とを嵌め合わせた状態にして、複数の固定ねじをブラケット本体の固定ねじ受け座に挿通してブラケットベースの固定ねじ孔に螺合させることにより、ブラケットベースとブラケット本体とを固定している。
【0005】
また、特開2008−57105号公報の手摺用ブラケットにおいて、ベース部材にはブラケット本体に向かって突出する略十字状の嵌合突部が形成され、この嵌合突部にはその厚さ方向に貫通するねじ孔が形成されている。また、この手摺用ブラケットのブラケット本体には、ベース部材の嵌合突部が嵌入する略十字状の嵌合穴部が形成され、この嵌合穴部には直交状に貫通するねじ挿通孔が形成されている。そして、ベース部材の嵌合突部をブラケット本体の嵌合穴部に嵌入した状態にし、複数の固定ねじを嵌合穴部のねじ挿通孔に挿通して嵌合突部のねじ孔に螺合させることにより、ブラケットベースとブラケット本体とを固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−314020号公報
【特許文献2】特開2008−57105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した従来の手摺ブラケットでは、ブラケットベースとブラケット本体との固定に複数の固定ねじを必要とし、また、固定ねじの螺合作業に手間がかかる、とういう問題があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、部品点数が少なく、固定作業も簡単でありながら、ブラケットベースとブラケット本体とをガタつきなく強固に固定することができる手摺用ブラケットを提供することにある。さらに、本発明の目的は、該手摺用ブラケットに手摺棒を取り付けた手摺装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る手摺用ブラケットは、
被設置部に固定される基盤部と、前記基盤部から張り出した突出部とを有する、ブラケットベースと、
前記突出部の外周に装着され、前記突出部の外側面に沿って延設された連結部を有する、ブラケット本体と、
前記ブラケット本体の前記連結部を前記ブラケットベースの前記突出部に締め付ける、緊締部材と、
を備えた、手摺用ブラケットにおいて、
前記突出部の外側面における前記連結部に対向する位置に、前記突出部の内方へ向かって前記基盤部側に傾斜した傾斜面が形成され、
前記連結部の内側面における前記傾斜面に対応する位置に摺動面が形成され、
前記緊締部材の締め付け力によって、前記連結部が前記突出部に向けて押圧されて、前記摺動面が前記傾斜面上を前記基盤部側に向けて摺動することにより、前記ブラケット本体が前記ブラケットベースに対して前記基盤部に向けて相対移動
し、
前記ブラケットベースは、前記突出部における前記傾斜面の周辺の位置に内側貫通孔を有し、
前記ブラケット本体は、前記連結部における前記内側貫通孔に整合する位置に外側貫通孔を有し、
前記緊締部材は、前記内側貫通孔及び前記外側貫通孔に挿通される
ことを特徴とする。
前記摺動面は、前記傾斜面に対応して傾斜するように形成することができる。
また、前記傾斜面を、前記突出部の外側面に設けられた溝又は段差により形成し、前記摺動面を、前記連結部の内側面に設けられた突条又は段差により形成することができる。
また、前記傾斜面を、前記突出部の外側面に設けられた突条により形成し、前記摺動面を、前記連結部の内側面に設けられた溝又は段差により形成することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、緊締部材の締め付け力によって、ブラケット本体の連結部がブラケットベースの突出部に向けて押圧されて、連結部の摺動面が突出部の傾斜面をブラケットベースの基盤部側に向けて摺動して、ブラケット本体が基盤部に向けて相対移動する。これにより、ブラケット本体がブラケットベースに押し付けられて、ブラケット本体がブラケットベースに強固に固定される。また、本発明によれば、緊締部材によりブラケット本体の連結部をブラケットベースの突出部に締め付けることによって、ブラケットベースとブラケット本体とが固定されるため、手摺用ブラケットの部品点数を少なくすることができ、固定作業も簡単に行うことができる。
【0010】
本発明の手摺用ブラケットにおいて、前記ブラケットベースには、前記突出部における前記傾斜面の周辺の位置に内側貫通孔を形成し、前記ブラケット本体には、前記連結部における前記内側貫通孔に整合する位置に外側貫通孔を形成し、前記緊締部材を、前記内側貫通孔及び前記外側貫通孔に挿通されるボルトと、前記ボルトに螺合されるナットとによって構成することができる。このような構成の手摺用ブラケットによれば、ボルトとナットの緊締力がブラケット本体の連結部や摺動面に効果的に伝達されることから、緊締部材の部品点数を少なくすることができ、また、ボルトを締め込むことによりブラケットベースとブラケット本体とが固定されるため、固定作業も簡単に行うことができる。
【0011】
本発明の手摺用ブラケットにおいて、前記基盤部を、前記突出部よりも外方に張り出させ、前記ブラケット本体には、前記緊締部材の締め付け力によって前記基盤部に押し付けられる後端側圧着部を形成することができる。これにより、ブラケット本体の連結部をブラケットベースの突出部に緊締すると、ブラケット本体の後端側圧着部がブラケットベースの基盤部に押し付けられるから、ブラケット本体とブラケットベースとの間の相対的な姿勢変化をより確実に防止することができる。
【0012】
本発明の手摺用ブラケットにおいて、前記ブラケット本体には、前記緊締部材の締め付け力によって前記突出部の突出端面に押し付けられる前端側圧着部を形成することができる。これにより、ブラケット本体の連結部をブラケットベースの突出部に緊締すると、ブラケット本体の前端側圧着部がブラケットベースの突出部の突出端面に押し付けられるから、ブラケット本体とブラケットベースとの間の相対的な姿勢変化をより確実に防止することができる。
【0013】
本発明の手摺用ブラケットと、該手摺用ブラケットに取り付けられる手摺棒と、を備えた手摺装置とすることができる。これにより、本発明の手摺用ブラケットと同様の作用効果を奏する手摺装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1(a)は、本発明の実施形態に係る手摺装置を壁に取付けた状態を示す正面図であり、
図1(b)は、
図1(a)の手摺装置の右側面図である。
【
図2】
図2(a)は、
図1(a)の手摺装置の断面図であり、
図2(b)は、突出部に対する緊締部材の未緊締状態における突条及び溝を示す説明図である。
【
図3】
図3(a)は、本発明の実施形態に係る手摺装置のブラケットベースを示す正面図であり、
図3(b)は、
図3(a)のA−A線に沿う断面図である。
【
図4】
図4(a)は、同じくブラケットベースを示す右側面図であり、
図4(b)は、
図4(a)のB−B線に沿う断面図である。
【
図5】
図5(a)は、本発明の実施形態に係る手摺装置のブラケット本体を示す上面図であり、
図5(b)は、同じくブラケット本体を示す平面図である。
【
図6】
図6(a)は、同じくブラケット本体を示す右側面図であり、
図6(b)は、同じくブラケット本体を示す左側面図である。
【
図7】
図7(a)は、
図5(b)のC−C線に沿う断面図であり、
図7(b)は、
図6(a)のD−D線に沿う断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態に係る手摺装置のブラケットベースを示す平面図である。
【
図9】本発明の実施形態の変形例であって、
図9(a)は、突出部に対する緊締部材の未緊締状態における突条及び段差を示す説明図であり、
図9(b)は、突出部に対する緊締部材の未緊締状態における段差を示す説明図である。
【
図10】本発明の実施形態の変形例であって、
図10(a)は、突出部に対する緊締部材の未緊締状態における突条及び段差を示す説明図であり、
図10(b)は、突出部に対する緊締部材の未緊締状態における段差を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施形態について説明する。
図1に示すように、手摺装置Tは、壁4等の被設置部に取り付けられる複数の手摺用ブラケット1と、手摺用ブラケット1に支持される手摺棒13とを備えている。
図2(a)に示すように、手摺用ブラケット1は、壁4等の被設置部に固定されるブラケットベース2と、このブラケットベースに固定されるブラケット本体3とを備える。この手摺用ブラケット1は、取付け作業性に優れた強固な固定構造を有している。
【0016】
ブラケットベース2は壁4の表側壁面4aに配置され、固定ネジ5、6によって表側壁面4aに固定される。壁4の裏側壁面4bには固定ネジ7、8によって保持部材9が固定され、ブラケットベース2は壁4を貫通する締結ボルト10によって保持部材9に締結される。ブラケットベース2にはブラケット本体3が緊締ボルト11と緊締ナット12とによって連結され、手摺棒13は固定ネジ14によってブラケット本体3の凹状湾曲部15に固定される。なお、参照番号16はブラケットカバーを示す。ブラケットカバー16は上部カバー16aと下部カバー16bによって構成されている。上部カバー16aと下部カバー16bは、手摺用ブラケット1によって手摺棒13を壁4に取り付けた後、手摺用ブラケット1の上下から取り付けられ、手摺用ブラケット1の外周を覆う。
【0017】
図3、4、8はブラケットベース2を示す。ブラケットベース2は、被設置部に固定される基盤部20と、基盤部20から張り出した突出部21から成り、基盤部20と突出部21は合成樹脂材料により一体成形される。基盤部20の中央部には締結ボルト10を挿通するためのボルト挿通孔20aが形成され、ボルト挿通孔20aの両側に固定ネジ5、6を挿通するためのネジ孔20b、20cが形成されている。基盤部20の底面20dは壁4の表側壁面4aに密着するように平坦面を成している。突出部21は基盤部20の上面20eからブラケット本体3の張り出し方向に突出している。基盤部20の上面20eは突出部21の底面20dと平行に延在し、突出部21の基端部21aよりも外方に張り出している。突出部21は、基端部21aと先端部21bの間に四角柱状の空洞部21cが形成されており、空洞部21cは突出部21の先端部21bに開口する。突出部21は全体として方形の断面形状を有する。突出部21の互いに対向する一対の側壁21d、21eの外側面は、基端部21aから先端部21bに向かって空洞部21cの方向(突出部21の内方)に傾斜したテーパ面が形成されており、これらの側壁21d、21eの外側面の中央部には窪み部21f、21gが形成されている。窪み部21f、21gは、突出部21の先端部21bから基端部21aに向かって次第に深さが増加し、その周縁がU字形に形成されており、窪み部21f、21gの底面21h、21iは、基盤部20の上面20eに対して垂直方向に延在する。窪み部21f、21gの中央部には、底面21h、21iに対して垂直方向に側壁21d、21eを貫通した内側貫通孔22が形成されている。内側貫通孔22は、窪み部21f、21gの底面21h、21iにそれぞれ開口部22a、22bを有する。窪み部21f、21gの底面21h、21iには、開口部22a、22bの両側に断面V字状の溝23、24が基盤部20の上面20eと平行に形成されている。溝23、24の先端部21b側の傾斜面23a、24aは、それぞれ、先端部21b側から基端部21a側に向かって突出部21の内方へ傾斜し、すなわち空洞部21cの方向に傾斜する。なお、突出部21の他方の一対の側壁21j、21kの外側面は、基盤部20の上面20eに対して垂直を成している。
【0018】
図5乃至7は、ブラケット本体3を示す。ブラケット本体3は、手摺棒12が固定される頭部30と、ブラケットベース2の突出部21の外側面を覆う周壁部31とを有する。周壁部31の内側面に画成された中空部32は、ブラケット本体3の頭部30の反対側に開口端部32aを有する。頭部30には、手摺棒13を取り付けるための凹状湾曲部15と、手摺棒30を凹状湾曲部15に固定するためのネジ孔30a、30bが形成されている。周壁部31は一対の側壁31a、31bを有し、これらの側壁31a、31bの内側面は、ブラケットベース2の一対の側壁21d、21eの外側面に適合するように、中空部32の開口端部32aから頭部30に向かって中空部32の方向(周壁部31の内方)に傾斜したテーパ面が形成されている。これに対し、周壁部31の他方の一対の側壁31c、31dは、ブラケットベース2の他方の一対の側壁21j、21kの外側面に適合するように、側壁21j、21kの外側面と略平行に延びている。さて、周壁部31の側壁31a、31bには、内側面が中空部32内に張り出すと共に外側面が中空部32aの方向に陥没した連結部31e、31fが形成され、連結部31e、31fの対向する内側面は、ブラケットベース2の窪み部21f、21gの底面21h、21iと略平行に延在し、連結部31e、31fの外側面も窪み部21f、21gの底面21h、21iと略平行に延在する。連結部31e、31fには、垂直方向に貫通した外側貫通孔33が形成されている。ブラケットベース2の突出部21をブラケット本体3の中空部32に収容したとき、内側貫通孔22と外側貫通孔33とが整合するように形成される。また、外側貫通孔33の孔径及び形状は、後述の緊締部材の締め付けによってブラケット本体3がブラケットベース2の基盤部20側に相対移動できるように形成される。外側貫通孔33は、連結部31e、31fの内側面に、それぞれ、開口部33a、33bを有する。連結部31e、31fの内側面には、開口部33a、33bの両側に、三角柱状(断面三角形状)の突条34、35がブラケットベース2の溝23、24と平行に形成されている。突条34、35の頭部30側に形成された摺動面34a、35aは、それぞれ、頭部30側から開口端部32a側に向かって周壁部31の内方へ傾斜し、すなわち中空部32の方向に傾斜する。ブラケットベース2の突出部21をブラケット本体3の中空部32に収容したとき、摺動面34a、35aがブラケットベース2の傾斜面23a、24aに当接するように形成される。なお、側壁31a、31bの外側面には、
図5(a)及び
図6(a)、(b)に示すように、連結部31e、31fの外側面を底面とした凹部31g、31hが形成される。
図6(a)に示すように、側壁31aの凹部31gの下縁部が円弧状に湾曲しており、緊締ボルト11のボルト頭部11aを回転可能に収容することができる。これに対し、
図6(b)に示すように、側壁31bの凹部31hの下縁部が楔状に屈曲しており、緊締ボルト11に螺合する緊締ナット12を回転不能に収容することができる。これにより、緊締ボルト11を内側貫通孔22及び外側貫通孔33に挿通して、凹部31g内でボルト頭部11aを回転させても、緊締ボルト11に螺合する緊締ナット12が凹部31hにより回転を阻止されるため、緊締ボルト11の締め付け作業と緩め作業が容易になる。
【0019】
ここで、壁4への手摺装置Tの設置方法について説明する。先ず、上述のように、手摺棒13を予めブラケット本体3の凹状湾曲部15に固定する一方、ブラケットベース2を壁4の所定箇所に固定する。次に、壁4に固定されたブラケットベース2の突出部21に対してブラケット本体3の周壁部31を被せ、ブラケット本体3の側壁31a、31bの端面31i、31jをブラケットベース2の基盤部20の上面20eに隣接させる。このとき、ブラケットベース2の内側貫通孔22とブラケット本体3の外側貫通孔33とが整合すると共に、
図2(b)に示すように、ブラケット本体3の連結部31e、31fの摺動面34a、35aがブラケットベース2の突出部21の傾斜面23a、24aに当接するものの、連結部31e、31fの内側面と突出部21の外側面との間には間隙が形成されている。そして、
図2(a)に示すように、ブラケット本体3の凹部31g内にボルト頭部11aが位置するように、緊締ボルト11を内側貫通孔22及び外側貫通孔33に挿通し、ブラケット本体3の凹部31hに配置された緊締ナット12と螺合させる。
【0020】
さらに緊締ボルト11と緊締ナット12から成る緊締部材を締め付けると、この緊締部材の締め付け力によってブラケット本体3の連結部31e、31fがブラケットベース2の窪み部21f、21gの底面21h、21iに向けて押圧され、摺動面34a、35aが傾斜面23a、24a上を基盤部20側へ摺動する。この結果、ブラケット本体3がブラケットベース2に対し基盤部20に向けて相対移動し、ブラケット本体3の側壁31a、31bの端面31i、31jがブラケットベース2の基盤部20の上面20eに押し付けられ、ブラケット本体3はブラケットベース2に強固に固定される。つまり、本実施形態では、ブラケット本体3の側壁31a、31bの端面31i、31jは、緊締部材の締め付け力によってブラケットベース2の基盤部20に押し付けられる後端側圧着部として機能する。そして、緊締部材の締め付け力が緩まない限り、摺動面34a、35aが傾斜面23a、24aにおいて基盤部20側へ摺動した位置に留まるため、側壁31a、31bの端面31i、31jが基盤部20の上面20eに押し付けられた状態が維持される。なお、ブラケット本体3がブラケットベース2に強固に固定されるのであれば、緊締部材の締め付けによって連結部31e、31fの内側面が突出部21の外側面に接触してもよい。
【0021】
なお、ブラケット本体3には、緊締部材の締め付け力によって突出部21の突出端面に押し付けられる前端側圧着部が設けてられていてもよい。例えば、ブラケット本体3の頭部30の内側端面31kが、緊締部材の締め付け力によってブラケットベース2の突出部21の先端部21bに押し付けられるように形成してもよい。また、これらの後端側圧着部と前端側圧着部は選択的にブラケット本体3に形成することができる。すなわち、後端側圧着部と前端側圧着部のいずれか一方をブラケット本体3に形成してもよいし、双方をブラケット本体3に形成してもよい。
【0022】
<変形例>
上述の実施形態では、傾斜面23a、24aは、ブラケットベース2の突出部21の外側面に設けられた溝23、24により形成され、摺動面34a、35aは、ブラケット本体3の連結部31e、31fの内側面に設けられた突条34、35により形成されているが、傾斜面は、突出部の外側面に設けられた段差により形成されてもよい。例えば、突出部21の窪み部21f、21gの底面21h、21iには、溝23、24に替えて段差40を設け、先端部21b側から基端部21a側に向かって突出部21の内方へ傾斜した傾斜面40aを形成してもよい(
図9(a)参照)。さらに、摺動面は、ブラケット本体の連結部の内側面に設けられた段差により形成されてもよい。例えば、連結部31e、31fの内側面には、突条34、35に替えて段差50を設け、頭部30側から開口端部32a側に向かって周壁部31の内方へ傾斜した摺動面50aを形成してもよい(
図9(b)参照)。なお、
図9において、上述の実施形態と共通する部分には同一符号を付して、重複説明を省略する。
【0023】
また、傾斜面は、突出部の外側面に設けられた突条により形成され、摺動面は、連結部の内側面に設けられた溝又は段差により形成されてもよい。例えば、突出部21の窪み部21f、21gの底面21h、21iには、溝23、24に替えて突条41を設け、先端部21b側から基端部21a側に向かって突出部21の内方へ傾斜した傾斜面41aを形成する(
図10(a)(b)参照)。そして、連結部31e、31fの内側面には、突条34、35に替えて溝51を設けて、頭部30側から開口端部32a側に向かって周壁部31の内方へ傾斜した摺動面51aを設ける(
図10(a)参照)、あるいは、突条34、35に替えて段差52を設けて、頭部30側から開口端部32a側に向かって周壁部31の内方へ傾斜した摺動面52aを形成してもよい(
図10(b)参照)。なお、
図10において、上述の実施形態と共通する部分には同一符号を付して、重複説明を省略する。
【0024】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内において適宜の変更が可能である。
上記実施形態では、断面V字状の溝により傾斜面や摺動面を形成したが、本発明はこの形状に限られず、例えば、断面コ字状の溝により傾斜面や摺動面を形成してもよい。また、上記実施形態では、断面三角形状(三角柱状)の突条により傾斜面や摺動面を形成したが、本発明はこの形状に限られず、例えば、断面台形状(四角柱状)の突条により傾斜面や摺動面を形成してもよい。また、上記実施形態では、突出部21の外側面における内側貫通孔22の開口部22a、22bの両側(
図4(a)中、左右両側)に傾斜面23a、24aを形成し、連結部31e、31fの内側面における外側貫通孔33の開口部33a、33bの両側(
図7(a)中、左右両側)に摺動面34a、35aを形成したが、本発明はこれに限られず、緊締部材の締め付け力によって連結部の摺動面が突出部の傾斜面をブラケットベースの基盤部側に向けて摺動するように形成されていればよく、例えば、
図4(a)中、突出部21の外側面における内側貫通孔22の開口部22a、22bの下側近傍にそれぞれ一連の傾斜面を形成し、
図7(a)中、連結部31e、31fの内側面における外側貫通孔33の開口部33a、33bの下側近傍にそれぞれ一連の摺動面を形成する等、突出部の外側面における内側貫通孔の周辺に傾斜面を形成し、連結部の内側面における外側貫通孔の周辺に摺動面を形成することができる。また、上記実施形態では、ブラケットベース2の突出部21にブラケット本体3の周壁部31を被せた場合、緊締部材による連結部31e、31fの締め付けがなされていないとき、突出部21の外側面と連結部31e、31fの内側面との間に間隙が生じているが、本発明はこれに限られず、突出部の外側面における少なくとも傾斜面の周囲と、連結部の内側面における少なくとも摺動面の周囲との間に間隙が生じるように形成されていればよく、緊締部材の締め付け力によって連結部の摺動面が突出部の傾斜面をブラケットベースの基盤部側に向けて摺動可能であれば、突出部の外側面の一部と連結部の内側面の一部とが接触していてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、浴室、トイレ、玄関、洗面所、階段等の壁面や、各種設置物の表面等に取り付けられる手摺装置に利用できる。
【符号の説明】
【0026】
1 手摺用ブラケット
2 ブラケットベース
3 ブラケット本体
4 壁
11 緊締ボルト(緊締部材)
12 緊締ナット(緊締部材)
13 手摺棒
20 基盤部
20e 基盤部20の上面(後端側圧着部)
21 突出部
21d、21e 突出部の一対の側壁
22 内側貫通孔
22a、22b 内側貫通孔の開口部
23、24 溝
23a、24a 傾斜面
30 ブラケット本体の頭部
31 ブラケット本体の周壁部
31a、31b 周壁部の一対の側壁
31e、31f 連結部
31i、31j 側壁31a、31bの端面
32 ブラケット本体の中空部
33 外側貫通孔
33a、33b 外側貫通孔の開口部
34、35 突条
34a、35a 摺動面