特許第6756516号(P6756516)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6756516
(24)【登録日】2020年8月31日
(45)【発行日】2020年9月16日
(54)【発明の名称】眼科撮影装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20200907BHJP
【FI】
   A61B3/10 300
【請求項の数】5
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-90161(P2016-90161)
(22)【出願日】2016年4月28日
(65)【公開番号】特開2017-196210(P2017-196210A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2019年4月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100124626
【弁理士】
【氏名又は名称】榎並 智和
(72)【発明者】
【氏名】末廣 淳
(72)【発明者】
【氏名】山口 達夫
【審査官】 増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−081763(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/084231(WO,A1)
【文献】 特開2010−259606(JP,A)
【文献】 特開2011−092702(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0049188(US,A1)
【文献】 中国実用新案第204765562(CN,U)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された走査パターンに応じて眼底を光で走査するための走査系と、
前記眼底からの前記光の戻り光を検出する検出系と、
前記検出系により取得されたデータに基づいて前記走査パターンに応じた画像を形成する画像形成部と、
前記走査系による走査範囲のサイズを変更するためのサイズ変更部と、
前記眼底に固視標を投影するための固視光を前記眼底に投射するように前記走査系を制御する制御部と
を備え、
前記サイズ変更部により前記走査範囲のサイズが変更された後、前記制御部は、当該サイズの変更前に前記眼底に投影された第1固視標と同じ位置に前記第1固視標と同じサイズの第2固視標を投影するように前記走査系を制御する
ことを特徴とする眼科撮影装置。
【請求項2】
予め設定された走査パターンに応じて眼底を光で走査するための走査系と、
前記眼底からの前記光の戻り光を検出する検出系と、
前記検出系により取得されたデータに基づいて前記走査パターンに応じた画像を形成する画像形成部と、
前記走査系による走査範囲のサイズを変更するためのサイズ変更部と、
前記眼底に固視標を投影するための固視光を前記眼底に投射するように前記走査系を制御する制御部と
を備え、
前記走査系は可視光源を含み、
前記制御部は、前記可視光源から出力された第1可視光を用いて前記走査パターンに応じた走査を実行しつつ、予め設定された固視位置に対応するタイミングで前記可視光源から出力された第2可視光を投射するように、前記走査系を制御し、
前記サイズ変更部により前記走査範囲のサイズが変更された後、前記制御部は、当該サイズの変更前に前記眼底に投影された第1固視標と同じ位置に第2固視標を投影するように前記走査系を制御する
ことを特徴とする眼科撮影装置。
【請求項3】
予め設定された走査パターンに応じて眼底を光で走査するための走査系と、
前記眼底からの前記光の戻り光を検出する検出系と、
前記検出系により取得されたデータに基づいて前記走査パターンに応じた画像を形成する画像形成部と、
前記走査系による走査範囲のサイズを変更するためのサイズ変更部と、
前記眼底に固視標を投影するための固視光を前記眼底に投射するように前記走査系を制御する制御部と
を備え、
前記走査系は、第1可視光源及び第2可視光源を含み、
前記制御部は、前記第1可視光源から出力された可視光を用いて前記走査パターンに応じた走査を実行しつつ、予め設定された固視位置に対応するタイミングで前記第2可視光源から出力された可視光を投射するように、前記走査系を制御し、
前記サイズ変更部により前記走査範囲のサイズが変更された後、前記制御部は、当該サイズの変更前に前記眼底に投影された第1固視標と同じ位置に第2固視標を投影するように前記走査系を制御する
ことを特徴とする眼科撮影装置。
【請求項4】
予め設定された走査パターンに応じて眼底を光で走査するための走査系と、
前記眼底からの前記光の戻り光を検出する検出系と、
前記検出系により取得されたデータに基づいて前記走査パターンに応じた画像を形成する画像形成部と、
前記走査系による走査範囲のサイズを変更するためのサイズ変更部と、
前記眼底に固視標を投影するための固視光を前記眼底に投射するように前記走査系を制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、前記走査範囲のサイズに応じた光量を前記眼底に投射するように、前記走査系を制御し、
前記サイズ変更部により前記走査範囲のサイズが変更された後、前記制御部は、当該サイズの変更前に前記眼底に投影された第1固視標と同じ位置に第2固視標を投影するように前記走査系を制御する
ことを特徴とする眼科撮影装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1固視標と同じサイズの前記第2固視標を投影するように前記走査系を制御する
ことを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の眼科撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、眼科撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
眼科分野において画像診断は重要な位置を占め、近年では走査型レーザー検眼鏡(SLO)や光干渉断層計の活用が進んでいる。SLOは、共焦点光学系を利用して微弱なレーザー光で眼底を高速でスキャンすることにより画像を形成する装置であり、眼疾患のスクリーニングや診断に利用されている。光干渉断層計は、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)と呼ばれる技術を応用した光計測装置であり、眼底の2次元領域や3次元領域をスキャンすることにより断面像や3次元画像や機能画像を形成する。また、光干渉断層計は前眼部の画像化や眼軸長測定にも用いられる。
【0003】
一般に、眼底撮影は、被検眼に固視標を提示しつつ実行される。また、撮影画角を変更する機能を備える眼科撮影装置が知られている。このような眼科撮影装置では、画角を変更する度に固視位置を調整する必要があり、撮影の長時間化や操作性の低下の原因となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−248260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の目的は、画角の変更に伴う固視位置の調整を自動で行える眼科撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る眼科撮影装置は、走査系と、検出系と、画像形成部と、サイズ変更部と、制御部とを備える。走査系は、予め設定された走査パターンに応じて眼底を光で走査する。検出系は、眼底からの戻り光を検出する。画像形成部は、検出系により取得されたデータに基づいて上記走査パターンに応じた画像を形成する。サイズ変更部は、走査系による走査範囲のサイズを変更する。制御部は、眼底に固視標を投影するための固視光を眼底に投射するように走査系を制御する。サイズ変更部により走査範囲のサイズが変更された後、制御部は、当該サイズの変更前に眼底に投影された第1固視標と同じ位置に前記第1固視標と同じサイズの第2固視標を投影するように走査系を制御する。
【発明の効果】
【0007】
実施形態に係る眼科撮影装置によれば、画角の変更に伴う固視位置の調整を自動で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る眼科撮影装置の構成の一例を示す概略図である。
図2】実施形態に係る眼科撮影装置の構成の一例を示す概略図である。
図3】実施形態に係る眼科撮影装置の構成の一例を示す概略図である。
図4】実施形態に係る眼科撮影装置の構成の一例を示す概略図である。
図5】実施形態に係る眼科撮影装置の動作の一例を説明するための概略図である。
図6A】実施形態に係る眼科撮影装置の動作の一例を説明するための概略図である。
図6B】実施形態に係る眼科撮影装置の動作の一例を説明するための概略図である。
図7】他の実施形態に係る眼科撮影装置の構成の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
眼科撮影装置の例示的な実施形態を以下に説明する。引用文献の内容や公知技術を実施形態に援用することができる。
【0010】
実施形態に係る眼科撮影装置は、後眼部を光ビームでスキャンして所定データの分布(例:画像、層厚分布、病変分布)を取得する。そのような眼科撮影装置の例としてSLOや光干渉断層計がある。以下、SLOと光干渉断層計とを組み合わせた眼科撮影装置を例示として説明する。実施形態に係る眼科撮影装置は、眼底の画像化だけでなく、他の目的に用いられてもよい。例えば、視野検査を行うために、SLOのための光(可視光)を利用して光刺激を印加することができる。
【0011】
以下、特に明記しない限り、被検者から見て左右方向をX方向とし、上下方向をY方向とし、前後方向(奥行き方向)をZ方向とする。X方向、Y方向及びZ方向は、3次元直交座標系を定義する。
【0012】
<光学系100>
眼科撮影装置の光学系の例を図1図3に示す。眼科撮影装置は、複数の撮影モードで動作可能である。例えば、スキャン範囲のサイズ(画角、倍率)に関する動作モードとして、広角撮影モードと高倍撮影モードがある。画角の切り替えは、例えば、屈折力が異なる2以上の対物レンズを選択的に使用することで実現される。或いは、光偏向器(光スキャナ)による光ビームの偏向角度を変化させることで画角を変更するよう構成してもよい。また、1以上のズームレンズの移動又は選択的使用が可能なズーム光学系を用いて画角を変更するよう構成してもよい。画角を変更するための手法や構成はこれらに限定されない。
【0013】
図1は、広角撮影モード時の光学系の例を表す。図2は、画角を切り替えるための対物レンズ系の例を表す。図3は、高倍撮影モード時の眼科撮影装置の光学系の例を表す。図1及び図3における符号Pは、眼底Efと光学的に共役な位置(眼底共役位置)を示し、符号Qは、被検眼Eの瞳と光学的に共役な位置(瞳共役位置)を示す。
【0014】
光学系100は、光ビームを用いて眼底Efをスキャンしてデータを収集する。そのために、光学系100は、対物レンズ系110を介して被検眼Eに投射される光ビームで眼底Efをスキャンする走査系と、投射された光ビームの戻り光を対物レンズ系110を介して検出する検出系とを含む。検出系からの出力(つまり、光学系100により収集されたデータ)に基づいて眼底Efの画像が構築される。光学系100は、SLO光学系130とOCT光学系140とを含む。SLO光学系130は、SLO走査系とSLO検出系とを含む。OCT光学系140は、OCT走査系とOCT検出系とを含む。
【0015】
眼科撮影装置には、前眼部を観察・撮影するための前眼部撮影系120が設けられている。光学系100、対物レンズ系110及び前眼部撮影系120は、X方向、Y方向及びZ方向に移動可能である。前眼部撮影系120により得られる前眼部像は、光学系100のアライメントやトラッキングに用いられる。
【0016】
<対物レンズ系110>
例示的な実施形態では、撮影モード毎に対物レンズ(ユニット)が準備され、選択された撮影モードに応じた対物レンズユニットが選択的に使用される。この実施形態では、図2に示すように、広角撮影モード(例えば画角100度)のための対物レンズユニット110Aと、高倍撮影モード(例えば画角50度)のための対物レンズユニット110Bとが、光学系100の光路に選択的に配置される。
【0017】
対物レンズ系110は、対物レンズユニット110A及び110Bに加えて画角変更機構115を含む。画角変更機構115は、例えば公知の回転機構又はスライド機構を含み、対物レンズユニット110A及び110Bを選択的に(互いに排他的に)光路に配置する。画角変更機構115は、対物レンズユニット110A(110B)の光軸が光学系100の光軸Oに略一致するように対物レンズユニット110A(110B)を光路に配置する。
【0018】
画角変更機構115は、対物レンズユニット110A及び110Bを手動で移動するための構成を備えていてよい。この場合、光路に配置された対物レンズユニットの種別を検出する種別検出部を設け、その検出結果から撮影モードを特定し、この特定結果に応じた制御を実行するよう構成することができる。画角変更機構115は、対物レンズユニット110A及び110Bを電動で(更には自動で)移動するための構成を備えていてよい。この場合、後述の制御部200は、選択された撮影モードに対応する対物レンズユニットを光路に配置するための制御信号を画角変更機構115に送る。
【0019】
広角撮影モード用の対物レンズユニット110Aは、レンズ111A及び112Aと、ダイクロイックミラーDM1Aと、凹レンズ113Aとを含む。ダイクロイックミラーDM1Aは、光学系100の光路と前眼部撮影系120の光路とを結合する。ダイクロイックミラーDM1Aは、光学系100により導かれる光を透過させ、前眼部撮影のための光を反射する。ダイクロイックミラーDM1Aと凹レンズ113Aとの間には眼底共役位置Pが配置されている。
【0020】
高倍撮影モード用の対物レンズユニット110Bは、レンズ111Bと、ダイクロイックミラーDM1Bとを含む。ダイクロイックミラーDM1Bは、ダイクロイックミラーDM1Aと同様の作用を有する。
【0021】
ダイクロイックミラーDM1AとダイクロイックミラーDM1Bとは、光学系100の光路における(ほぼ)同じ位置に配置される。それにより、撮影モードを切り替えたときに、前眼部撮影系120の位置や向きを調整する必要がなくなる。
【0022】
例示的な実施形態において、単一のダイクロイックミラーを複数の対物レンズユニットが共用するように構成することができる。例えば、図2に示す例において、ダイクロイックミラーDM1A及びDM1Bが同じ部材であってよい。つまり、レンズ111A及び112A並びに凹レンズ113Aのみを含む対物レンズユニット110Aと、レンズ111Bのみを含む対物レンズユニット110Bとを選択的に使用する構成を適用できる。
【0023】
対物レンズ系110を光軸Oに沿って移動することができる。つまり、光学系100に対して対物レンズ系110をZ方向に移動することができる。それにより、SLO光学系130の焦点位置及びOCT光学系140の焦点位置が変更される。
【0024】
例示的な実施形態において、3つ以上の対物レンズユニットを選択的に使用することができる。例えば、高倍撮影モード用、中倍撮影モード用、及び低倍撮影モード用の対物レンズユニットと、これらを選択的に光路に配置する画角変更機構とを設けてよい。
【0025】
以下、対物レンズユニット110Aが光路に配置された状態について主に説明する。対物レンズユニット110Bが配置された状態における同様又は類似の事項については、特に明記しない限り、その説明を省略する。
【0026】
<前眼部撮影系120>
前眼部撮影系120は、前眼部照明光源121と、レンズ122と、前眼部撮影カメラ123と、結像レンズ124と、ビームスプリッタBS1とを含む。ビームスプリッタBS1は、前眼部照明光の光路とその戻り光の光路とを結合する。
【0027】
前眼部照明光源121は、赤外LED等の赤外光源を含む。前眼部照明光源121により発せられた前眼部照明光は、レンズ122により屈折し、ビームスプリッタBS1によりダイクロイックミラーDM1Aに向けて反射され、ダイクロイックミラーDM1Aにより被検眼Eに向けて反射される。被検眼Eからの前眼部照明光の戻り光は、ダイクロイックミラーDM1Aにより反射され、ビームスプリッタBS1を透過し、結像レンズ124により前眼部撮影カメラ123(撮像素子の検出面)に集光される。撮像素子の検出面は、瞳共役位置Q(又はその近傍)に配置されている。撮像素子は、例えば、CCDイメージセンサ又はCMOSイメージセンサである。
【0028】
<SLO光学系130及びOCT光学系140>
SLO光学系130の光路とOCT光学系140の光路とはダイクロイックミラーDM2により結合されている。例示的な実施形態において、SLO光学系130の少なくとも一部はテレセントリック光学系であり、OCT光学系140の少なくとも一部はテレセントリック光学系であり、これらテレセントリック光学系の光路がダイクロイックミラーDM2により結合される。本例によれば、対物レンズ系110を移動して光学系100の焦点位置を変更しても、瞳(例えば対物レンズ系110による射出瞳)の収差が大きくならないため、フォーカス調整を容易化することができる。
【0029】
<SLO光学系130>
SLO光学系130は、SLO光源131と、コリメートレンズ132と、ビームスプリッタBS2と、集光レンズ133と、共焦点絞り134と、検出器135と、光スキャナ136と、レンズ137とを含む。ビームスプリッタBS2は、被検眼Eに投射されるSLO光の光路とその戻り光の光路とを結合する。
【0030】
SLO光源131は、SLOに使用可能な波長の光を出力する。SLO光源131は、レーザーダイオード、スーパールミネッセントダイオード、レーザードリブンライトソース等を含む。SLO光源131は、眼底共役位置P(又はその近傍)に配置されている。SLO光源131は、少なくとも可視光源を含む。可視光源から出力される可視光は、眼底Efに固視標を投影するための固視光として用いられる。
【0031】
SLO光源131は、異なる波長帯の光を選択的に出力可能に構成されてもよい。また、波長帯が異なる2以上の光を並行して出力できるように構成されてもよい。SLO撮影には可視光又は赤外光が用いられる。SLO撮影に可視光が用いられる場合、撮影用の可視光源と固視用の可視光源とは共通でも別々でもよい。SLO撮影に赤外光が用いられる場合、撮影用の赤外光源と固視用の可視光源とは共通でも別々でもよい。
【0032】
なお、可視光源には、可視光のみを出力可能な光源だけでなく、可視光及び不可視光(例えば赤外光)を出力可能な光源も含まれる。同様に、赤外光源には、赤外光のみを出力可能な光源だけでなく、赤外光及びそれ以外の光(例えば可視光)を出力可能な光源も含まれる。
【0033】
光スキャナ136は、X方向に光を偏向する光スキャナ136Xと、Y方向に光を偏向する光スキャナ136Yとを含む。光スキャナ136X及び136Yの一方は低速スキャナ(ガルバノミラー等)であり、他方は高速スキャナ(レゾナントミラー、ポリゴンミラー、MEMSミラー等)である。光スキャナ136Yの反射面は、瞳共役位置Q(又はその近傍)に配置されている。
【0034】
共焦点絞り134に形成された開口は、眼底共役位置P(又はその近傍)に配置されている。検出器135は、例えば、アバランシェフォトダイオード又は光電子増倍管を含んでいる。
【0035】
SLO光源131から出力された光ビーム(SLO光)は、コリメートレンズ132により平行光束とされ、ビームスプリッタBS2を透過し、光スキャナ136により偏向され、レンズ137により屈折され、ダイクロイックミラーDM2を透過し、対物レンズ系110を介して眼底Efに投射される。眼底Efに投射されたSLO光の戻り光は、同じ光路を逆向きに進行してビームスプリッタBS2に導かれ、ビームスプリッタBS2により反射され、集光レンズ133により集光され、共焦点絞り134の開口を通過し、検出器135によって検出される。
【0036】
<OCT光学系140>
OCT光学系140は、合焦レンズ141と、光スキャナ142と、コリメートレンズ143と、干渉光学系150とを含む。
【0037】
合焦レンズ141は、OCT光学系140の光軸に沿って移動される。それにより、SLO光学系130とは独立に、OCT光学系140の焦点位置が変更される。対物レンズ系110の移動によりSLO光学系130及びOCT光学系140の合焦状態が調整された後、合焦レンズ141の移動によりOCT光学系140の合焦状態を微調整できる。
【0038】
光スキャナ142は、X方向に光を偏向させる光スキャナ142Xと、Y方向に光を偏向させる光スキャナ142Yとを含む。光スキャナ142X及び142Yのそれぞれは、例えばガルバノミラーである。2つの光スキャナ142X及び142Yの中間位置は瞳共役位置Q(又はその近傍)に相当する。
【0039】
コリメートレンズ143は、光ファイバf4のファイバ端c3から出射したOCT光(測定光)を平行光束として光スキャナ142に導き、且つ、眼底Efからの測定光の戻り光をファイバ端c3に向けて集光する。
【0040】
干渉光学系150は、OCT光源151と、ファイバーカプラ152及び153と、参照プリズム154と、検出器155とを含む。干渉光学系150は、例えば、スウェプトソースOCT又はスペクトラルドメインOCTを実行するための構成を備える。スウェプトソースOCTでは、波長可変光源がOCT光源151として用いられ、バランスドフォトダイオードが検出器155として用いられる。スペクトラルドメインOCTでは、低コヒーレンス光源(広帯域光源)がOCT光源151として用いられ、分光器が検出器155として用いられる。
【0041】
OCT光源151は、例えば、中心波長が1050nmの光を発する光ビームL0を発する。光L0は、光ファイバf1を通じてファイバーカプラ152に導かれて測定光LSと参照光LRとに分割される。
【0042】
参照光LRは、光ファイバf2を通じてファイバ出射端c1から出射し、コリメートレンズ156により平行光束とされ、参照プリズム154により折り返され、コリメートレンズ157により集束光束とされてファイバ入射端c2に入射し、光ファイバf3を通じてファイバーカプラ153に導かれる。参照プリズム154は、従来と同様に、参照光LRの光路長を変更するために移動される。更に、偏波コントローラやアッテネータや光路長補正部材や分散補償部材が、参照光の光路に設けられていてもよい。
【0043】
一方、ファイバーカプラ152により生成された測定光LSは、光ファイバf4を通じてファイバ端c3から出射し、コリメートレンズ143により平行光束とされ、光スキャナ142及び合焦レンズ141を経由し、ダイクロイックミラーDM2により反射され、対物レンズ系110により屈折されて眼底Efに投射される。測定光LSは、眼底Efの様々な深さ位置にて反射・散乱される。後方散乱光を含む測定光LSの戻り光は、同じ経路を逆向きに進行してファイバーカプラ152に導かれ、光ファイバf5を通じてファイバーカプラ153に到達する。
【0044】
ファイバーカプラ153は、光ファイバf5を通じて入射した測定光LSと、光ファイバf3を通じて入射した参照光LRとを重ね合わせて干渉光を生成する。図1等はスウェプトソースOCTの場合を表す。ファイバーカプラ153は、所定の分岐比(例えば1:1)で干渉光を分岐して一対の干渉光LCを生成する。一対の干渉光LCは検出器155(バランスドフォトダイオード)により検出される。なお、スペクトラルドメインOCTの場合、検出器155(分光器)は、ファイバーカプラ153により生成された干渉光を複数の波長成分に分解して検出する。
【0045】
検出器155は、一対の干渉光LCを検出した結果(検出信号)を図示しないDAQ(Data Acquisition System)に送る。DAQには、OCT光源151からクロックが供給される。このクロックは、波長可変光源により所定の波長範囲内にて掃引される各波長の出力タイミングに同期して生成される。DAQは、このクロックに基づいて検出信号をサンプリングする。サンプリング結果は、OCT画像を形成するためのプロセッサに送られる。
【0046】
<処理系>
実施形態に係る眼科撮影装置の処理系の構成例を図4に示す。処理系は、各種のデータ処理(信号処理、画像処理、演算、制御、記憶等)を実行するためのプロセッサを含む。
【0047】
なお、「プロセッサ」は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(例えば、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array))等の回路を意味する。プロセッサは、例えば、記憶回路や記憶装置に格納されているプログラムを読み出し実行することで、実施形態に係る機能を実現する。
【0048】
<制御部200>
制御部200は、眼科撮影装置の各部を制御するための構成を備える。制御部200は、主制御部201と、記憶部202と、固視制御部203とを含む。主制御部201及び固視制御部203の機能はプロセッサ等により実現される。記憶部202には各種データや各種情報や各種コンピュータプログラムが記憶される。記憶部202は、半導体メモリや磁気記憶装置を含む。
【0049】
眼科撮影装置が実行する処理は、ハードウェア資源(プロセッサ等)とソフトウェア(コンピュータプログラム等)との協働によって実現される。また、眼科撮影装置に設けられた各種の機構の少なくとも一部にはアクチュエータがそれぞれ設けられており、主制御部201はアクチュエータに向けて制御信号を送る。
【0050】
<主制御部201>
対物レンズ系110に関する制御の例として、主制御部201は、対物レンズユニット110A及び110Bの一方を光路に配置するための画角変更機構115の制御や、対物レンズ系110を光軸Oに沿って移動させるための図示しない移動機構の制御を実行することができる。
【0051】
SLO光学系130に関する制御の例として、主制御部201は、SLO光源131の制御、光スキャナ136の制御、検出器135の制御を実行することができる。SLO光源131の制御には、点灯、消灯、光量調整、絞り調整などが含まれる。光スキャナ136の制御には、走査位置の制御、走査範囲の制御、走査パターンの制御、走査速度の制御などが含まれる。検出器135の制御には、検出素子の露光調整、ゲイン調整、検出レート調整などが含まれる。
【0052】
OCT光学系140に関する制御の例として、主制御部201は、OCT光源151の制御、光スキャナ142の制御、合焦レンズ141の移動制御、参照プリズム154の移動制御、検出器155の制御を実行することができる。OCT光源151の制御には、点灯、消灯、光量調整、絞り調整などが含まれる。光スキャナ142の制御には、走査位置の制御、走査範囲の制御、走査パターンの制御、走査速度の制御などが含まれる。検出器155の制御には、検出素子の露光調整、ゲイン調整、検出レート調整などが含まれる。
【0053】
前眼部撮影系120に関する制御の例として、主制御部201は、前眼部照明光源121の制御、前眼部撮影カメラ123の制御などを実行することができる。前眼部照明光源121の制御には、点灯、消灯、光量調整、絞り調整などが含まれる。前眼部撮影カメラ123の制御には、撮像素子の露光調整、ゲイン調整、撮影レート調整などが含まれる。
【0054】
光学系100に関する制御の例として、光学系100をX方向、Y方向及びZ方向に移動するための光学系移動機構100Aの制御などがある。
【0055】
SLO撮影を行うとき、主制御部201は、SLO光源131を所定のタイミングで点灯(点滅)させつつ、所定の走査パターン(例えばラスタースキャン)に応じて光スキャナ136を制御する。
【0056】
可視光で撮影を行う場合、主制御部201は、上記のような撮影制御を行いつつ、所定の固視位置に対応するタイミング(固視タイミング)でのみ、撮影用可視光と異なる可視光(固視用可視光)を出力するようにSLO光源131を制御する。固視タイミングにおいて、撮影用可視光の出力を停止するとともに固視用可視光を出力してもよい。或いは、固視タイミングにおいて、撮影用可視光と固視用可視光の双方を出力してもよい。
【0057】
撮影用可視光源と固視用可視光源とが共通の可視光源である場合、主制御部201は、この可視光源から出力された第1可視光を用いて所定の走査パターンに応じた走査をSLO光学系130に実行させつつ、予め設定された固視位置に対応するタイミングでこの可視光源に第2可視光を出力させる。一方、撮影用可視光源と固視用可視光源とが異なる場合、主制御部201は、撮影用可視光源から出力された可視光を用いて所定の走査パターンに応じた走査をSLO光学系130に実行させつつ、予め設定された固視位置に対応するタイミングで固視用可視光源に可視光を出力させる。
【0058】
不可視光(赤外光)で撮影を行う場合、主制御部201は、上記のような撮影制御を行いつつ、所定の固視タイミングでのみ可視光を出力するようにSLO光源131を制御する。固視タイミングにおいて、撮影用赤外光の出力を停止するとともに固視用可視光を出力してもよい。或いは、固視タイミングにおいて、撮影用赤外光と固視用可視光の双方を出力してもよい。主制御部201は、赤外光源から出力された赤外光を用いて所定の走査パターンに応じた走査をSLO光学系130に実行させつつ、予め設定された固視位置に対応するタイミングで可視光源に可視光を出力させる。
【0059】
OCTを行うとき、主制御部201は、OCT光源151を所定のタイミングで点灯(点滅)させつつ、所定の走査パターンに応じて光スキャナ142を制御する。
【0060】
視野検査を行うとき、主制御部201は、所定の走査パターンに応じて光スキャナ136を繰り返し制御しつつ、所定の固視位置に対応するタイミング(固視タイミング)と、所定の刺激位置に対応するタイミング(刺激タイミング)とにおいてSLO光源131(可視光源)を点灯させる。
【0061】
<記憶部202>
記憶部202には、眼科撮影装置により利用される情報、データ、プログラム等が記憶される。また、記憶部202には、眼科撮影装置により取得されたデータ(SLO画像、OCT画像、前眼部像等)が記憶される。
【0062】
<固視制御部203>
固視制御部203は、眼底Efに固視標を投影するための処理を行う。例えば、対物レンズ系110を用いて画角が変更されたとき、固視制御部203は、画角変更前の固視位置と画角変更後の固視位置とを同じにするための処理を実行する。更に、固視制御部203は、画角変更前の固視標の形状と画角変更後のそれとを同じにするための処理を実行してもよい。加えて、固視制御部203は、画角変更前の固視標の条件(形状、色(波長)等)と画角変更後のそれとを同じにするための処理を実行してもよい。
【0063】
この実施形態では、眼底Efを画像化するためのスキャンを行う走査系(SLO光学系130等)を用いて固視標が投影される。画角の変更は、走査範囲のサイズの変更を少なくとも含み、更に、走査範囲の形状(輪郭形状)の変更を含んでもよい。走査範囲のサイズは、例えば、面積、外周長、外周の一部の長さ、径など、任意のパラメータによって定義される。
【0064】
画角の変更に伴う固視標の制御の例を説明する。図5は、広角撮影モードの後に高倍撮影モードを適用する場合のスキャン制御(固視標の制御を含む)の例を表す。また、図6A及び図6Bは、このスキャン制御のためのタイミングチャートの例を表す。ここで、図6Aは固視用光源と撮影用光源とが異なる場合の例を表し、図6Bは固視用光源と撮影用光源とが共通である場合の例を表す。
【0065】
図5において、左側は広角撮影モードでのスキャン制御を表し、右側は高倍撮影モードでのスキャン制御を表す。広角撮影モードでは、平行な複数(M本)のラインスキャンL(m=1,2,・・・,M)からなるラスタースキャンが適用される。各ラインスキャンLは、直線状に配列された複数のスキャン点(光ビームの照射点)を含む。主制御部201は、このラスタースキャンに対応する動作を光スキャナ136に繰り返し実行させる。このラスタースキャンによりスキャンされる範囲を符号Awで示す。なお、符号Anは、高倍撮影モードでのラスタースキャンによりスキャンされる範囲を示す。広角撮影モードから高倍撮影モードへの切り替えは、主制御部201又はユーザが発するトリガに基づき主制御部201により実行される。
【0066】
広角撮影モードにおいて、主制御部201は、予め設定された固視タイミングでSLO光源131(可視光源)を点灯させる。なお、ユーザが固視位置(固視タイミング)を調整することもできる。固視タイミングは、ラスタースキャンに同期されている。本例では、固視タイミングは、少なくとも、第mj番目のラインスキャンLmjにおける第nj番目のスキャン点に対応する位置(向き)に光スキャナ136が配置されるタイミングを含む。固視タイミングがこのタイミングのみを含む場合、輝点としての固視標が眼底Efに投影される。固視タイミングの設定等は固視制御部203により実行される。例えば、固視制御部203は、固視タイミングに対応するスキャン点を特定し、このスキャン点を示す信号を主制御部201に送る。
【0067】
図示は省略するが、このような固視標の投影制御と並行して、主制御部201は、視細胞を刺激するための刺激光を眼底Efに投射するための制御を実行することができる。刺激光の投射制御として、主制御部201は、予め設定された刺激タイミングでSLO光源131(可視光源)を点灯させる。刺激タイミングは、ラスタースキャンに同期されている。主制御部201は、所定の刺激タイミングに応じた1以上のスキャン点に対応する位置(向き)に光スキャナ136が配置されるタイミングで当該可視光源を点灯させる。刺激タイミングについても、同様であってよい。
【0068】
なお、固視タイミング及び刺激タイミングは、単一のスキャン点に対応するタイミングに限定されない。例えば、空間的に隣接する複数のスキャン点のそれぞれに対応するタイミングでSLO光源136(可視光源)を点灯させることができる。その一例として、円盤状領域や十字型領域等の2次元領域に含まれる複数のスキャン点のそれぞれに対応するタイミングでSLO光源136(可視光源)を点灯させることができる。この2次元領域は、典型的には連結領域であり、より典型的には単連結領域である。
【0069】
図5には、十字型の固視標Tを提示するための制御の例が記載されている。より具体的には、図5に示す例では、第mj番目のラインスキャンLmjにおける第nj番目のスキャン点を中心とする十字型の固視標Tが提示される。この固視タイミングに対応するスキャン点の群は、例えば、ラインスキャンLmjにおいて第nj番目のスキャン点を中心とする複数のスキャン点を含む。つまり、ラインスキャンLmjにおける第(nj−v)番目から第(nj+v)番目までの奇数個のスキャン点が含まれる。ここで、vは1以上の整数である。更に、当該スキャン点の群は、例えば、ラインスキャンLmjを中心とする複数のラインスキャン上のスキャン点を含む。つまり、第(mj−w)番目から第(mj+w)番目までの奇数個のラインスキャン上のスキャン点が含まれる。ここで、wは1以上の整数である。また、第mj番目のラインスキャンLmj上の該当スキャン点の個数は、上記のように2v+1個である。一方、ラインスキャンLmj以外の該当ラインスキャン上の該当スキャン点の個数は2v+1未満とされる。ラインスキャンLmj以外の該当ラインスキャンそれぞれにおける該当スキャン点の個数は、等しくてもよいし、異なってもよい。また、十字型固視標の縦方向のサイズは該当ラインスキャンの本数により決定され、横方向のサイズはラインスキャンLmj上の該当スキャン点の個数により決定される。これらは任意に設定される。例えば、十字型固視標の縦方向のサイズと横方向のサイズとが等しくなるように、該当ラインスキャンの本数と、ラインスキャンLmj上の該当スキャン点の個数とを設定することができる(ただし、これには限定されない)。他の2次元形状の固視標が提示される場合においても、固視タイミングに対応するスキャン点の群を同様に設定することが可能である。
【0070】
また、主制御部201(及び固視制御部203)は、同じラスタースキャン及び同じ固視標投影制御を繰り返し実行させつつ、所定数の位置に対して順次に刺激光を投射させることができる。刺激光の投射目標となる複数の位置は、視野検査のプロトコルとして予め設定されている。
【0071】
また、主制御部201は、同じラスタースキャンと第1固視位置に固視標を投影するための制御とを繰り返し実行させつつ所定数の位置に対して順次に刺激光を投射させ、その終了後に固視位置を切り替え、同じラスタースキャンと第2固視位置に固視標を投影するための制御とを繰り返し実行させつつ所定数の位置に対して順次に刺激光を投射させることができる。このような制御を複数の固視位置に対して順次に適用することができる。刺激光の投射目標となる複数の位置や、第1固視位置及び第2固視位置を含む複数の固視位置は、視野検査のプロトコルとして予め設定されている。また、固視位置の設定や変更を手動で行うこともできる。
【0072】
広角撮影モードから高倍撮影モードへ切り替えるためのトリガが発せられたとき、主制御部201は、ラスタースキャンの適用範囲をスキャン範囲Awからスキャン範囲Anに変更する。高倍撮影モードでは、平行な複数(R本)のラインスキャンU(r=1,2,・・・,R)からなるラスタースキャンが適用される。各ラインスキャンUは、直線状に配列された複数のスキャン点(光ビームの照射点)を含む。典型的な例において、高倍撮影モードにおけるラインスキャンの間隔は、広角撮影モードにおけるそれよりも狭い。それにより、高倍撮影モードでは、広角撮影モードよりも高精細の画像が得られる。本例によれば、広角撮影モードで広域を観察しつつ注目領域を特定し、高倍撮影モードで注目領域の詳細な画像を得ることができる。また、広角撮影モードで広域の視野検査を行って注目領域を特定し、高倍撮影モードで注目領域の精密な視野検査を行うことができる。
【0073】
主制御部201は、高倍撮影モードでのラスタースキャンに対応する動作を光スキャナ136に繰り返し実行させる。更に、固視制御部203は、広角撮影モードでの固視位置を高倍撮影モードで再現するための処理を実行する。例えば、固視制御部203は、広角撮影モードでのスキャンパターン及び固視タイミングと、高倍撮影モードでのスキャンパターンとに基づいて、高倍撮影モードでの固視タイミングを求める。撮影モードの切り替えに伴う固視標の制御の例を以下に説明する。
【0074】
広角撮影モードでは、例えば、既定の固視位置又はユーザにより指定された固視位置が適用され、この固視位置に対応する固視タイミングで固視光が出力される。典型的な例において、固視制御部203(又は記憶部202)は、広角撮影用固視位置と高倍撮影用固視位置とが対応付けられた対応情報を予め記憶している。これら固視位置は、例えば、ラスタースキャンにおける座標位置(1以上のスキャン点の位置)である。広角撮影モードにおいて既定の固視位置が適用された場合、固視制御部203は、この広角撮影用固視位置に対応する高倍撮影用固視位置を対応情報から取得する。主制御部201は、取得された高倍撮影用固視位置に対応する固視タイミングを高倍撮影モードのラスタースキャンに適用する。
【0075】
他の典型的な例において、固視制御部203(又は記憶部202)は、広角撮影モードのラスタースキャンの座標系(広角座標系)と高倍撮影モードのラスタースキャンの座標系(高倍座標系)とが対応付けられた対応情報を予め記憶している。固視制御部203は、広角撮影モードで適用された固視位置を表す広角座標系の座標(1以上のスキャン点)に対応する高倍座標系の座標(1以上のスキャン点)を特定する。主制御部201は、特定された座標に対応する固視タイミングを高倍撮影モードのラスタースキャンに適用する。
【0076】
広角撮影モードのスキャンパターンと高倍撮影モードのスキャンパターンとの位置関係は任意であり、また、これらの形態も任意である。例えば、広角撮影モードのラスタースキャンの中心と高倍撮影モードのラスタースキャンの中心とが一致していてもよいし、一致していなくてもよい。双方のスキャン中心が一致する場合、例えば、共通のスキャン中心を上記の双方の座標系の原点として固視位置を求めることができる。他方、双方のスキャン中心が一致しない場合、一方の座標系のスキャン中心と他方の座標系のスキャン中心との間の変位を求め、この変位を考慮した座標変換を行うことにより固視位置を求めることができる。
【0077】
なお、この実施形態では、広角撮影モードの固視位置を含むように高倍撮影モードのスキャン範囲が設定される。つまり、この実施形態では、広角撮影モードのスキャン範囲の少なくとも一部と高倍撮影モードのスキャン範囲の少なくとも一部とが共通であること、更に、この共通領域に固視位置が設定されることを仮定している。この仮定が満足されない場合、例えば、広角撮影モードの固視位置に近い位置(例えば最も近い位置)に高倍撮影モードの固視位置を設定することや、既定の固視位置を高倍撮影モードに適用することができる。
【0078】
広角撮影モードのスキャンパターンと高倍撮影モードのスキャンパターンとが異なってもよい。例えば、広角撮影モードにおいて視神経乳頭及び黄斑を含む範囲のラスタースキャンを実行し、高倍撮影モードにおいて視神経乳頭及びその周囲(又は、黄斑及びその周囲)のラジアルスキャンを実行することができる。このような場合、一方のスキャンパターンのスキャン範囲の外縁(輪郭)により規定される領域に座標系を設定し、且つ、他方のスキャンパターンのスキャン範囲の外縁(輪郭)により規定される領域に座標系を設定する。固視制御部203は、例えば、これら座標系の特徴点(中心位置等の原点位置)の間の変位を(必要に応じて)算出し、双方の座標系の間の座標変換を求めることにより、撮影モードの切り替えに伴う固視位置の特定を行う。
【0079】
上記の例のようにして求められた固視位置(固視タイミング)を用いて高倍撮影モードが実行される。主制御部201は、この固視タイミングでSLO光源131(可視光源)を点灯させる。なお、ユーザが固視位置(固視タイミング)を調整することもできる。固視タイミングは、ラスタースキャンに同期されている。本例では、固視タイミングは、少なくとも、第rj番目のラインスキャンUrjにおける第sj番目のスキャン点に対応する位置(向き)に光スキャナ136が配置されるタイミングを含む。固視タイミングがこのタイミングのみを含む場合、輝点としての固視標が眼底Efに投影される。
【0080】
図示は省略するが、このような固視標の投影制御と並行して、主制御部201は、視細胞を刺激するための刺激光を眼底Efに投射するための制御を実行することができる。
【0081】
図5には、広角撮影モードの固視標Tと同じく十字型の固視標T´を提示するための制御の例が記載されている。より具体的には、図5に示す例では、第rj番目のラインスキャンUrjにおける第sj番目のスキャン点を中心とする十字型の固視標T´が提示される。固視標T´を形成するスキャン点の群に関する事項は、広角撮影モードと同様であってよい。なお、広角撮影モードでの固視標Tのサイズと高倍撮影モードでの固視標T´のサイズとは同じでもよいし、異なってもよい。ただし、撮影モードの切り替えによる固視ズレを回避するためには、固視標Tの中心と固視標T´の中心とが一致することが望ましい。また、広角撮影モードでの固視標の形態と高倍撮影モードでの固視標の形態とが異なってもよい。例えば、広角撮影モードでの固視標の形状と高倍撮影モードでの固視標の形状とが異なってもよい。具体例として、広角撮影モードでは十字型の固視標を使用し、高倍撮影モードでは輝点を使用することができる。また、広角撮影モードでの固視標の色と高倍撮影モードでの固視標の色とが異なってもよい。具体例として、赤外光を用いた広角撮影において白色の固視標を使用し、赤色光を用いた高倍撮影において青色の固視標を使用することができる。
【0082】
図6A及び図6Bに示すタイミングチャートについて説明する。これら図面に示すF(k=1,2,・・・)は、SLO画像の各フレームを示す。各フレームFは、図5に示すラスタースキャンの1回分により収集されたデータから作成されるSLO画像である。なお、2以上のフレームを合成して1つのフレームを作成する場合、合成されたフレームを単一のフレームFとしてもよい。
【0083】
この実施形態では、広角撮影モードのラスタースキャンが繰り返し実行された後、高倍撮影モードのラスタースキャンが繰り返し実行される。より具体的には、広角撮影モードにおいては一連のラインスキャンL〜Lからなるラスタースキャンが繰り返し実行され、高倍撮影モードにおいては一連のラインスキャンU〜Lからなるラスタースキャンが繰り返し実行される。
【0084】
広角撮影モードにおいて、光スキャナ136X(Xスキャナ)の1回の動作は、1本のラインスキャンLに相当する。また、光スキャナ136Y(Yスキャナ)の1回の動作は、ラインスキャンLに直交する方向におけるラインスキャンLからラインスキャンLまでの光ビーム投射位置の移動に相当する。
【0085】
同様に、高倍撮影モードにおいて、光スキャナ136X(Xスキャナ)の1回の動作は、1本のラインスキャンUに相当し、光スキャナ136Y(Yスキャナ)の1回の動作は、ラインスキャンUに直交する方向におけるラインスキャンUからラインスキャンUまでの光ビーム投射位置の移動に相当する。
【0086】
主制御部201は、光スキャナ136Xと光スキャナ136Yとを連係的に制御することで、図5に示すラスタースキャンに対応する光スキャナ136の動作を実現する。また、主制御部201は、光スキャナ136Xと光スキャナ136Yとのこのような連係的制御を繰り返し実行する。それにより、複数のフレームF,F,・・・が順次に取得される。なお、撮影モードの切り替え及び固視標の制御は、例えば前述した要領で実行される。
【0087】
図6Aに示す例において、主制御部201は、上記のような光スキャナ136の制御と同期した固視タイミングで固視用光源を点灯させることにより、フレームFそれぞれに対応する制御期間中に眼底Efに固視標を投影させる。例えば撮影モードが高倍撮影モードに切り替えられた後に主制御部201又はユーザが撮影トリガTrgを発すると、主制御部201は、上記のような光スキャナ136の制御及び固視用光源の制御と並行して、撮影用光源を点灯させる。撮影用光源の点灯は、例えば、光スキャナ136の制御及び固視用光源の制御と同期して実行される。具体例として、1つのフレームに相当する期間中、撮影用光源が点灯される。それにより、撮影用光源を利用したSLO画像(フレームF)が得られる。取得されたSLO画像は記憶部202に格納される。
【0088】
図6Bに示す例において、主制御部201は、上記のような光スキャナ136の制御と同期した固視タイミングで光源を点灯させることにより、フレームFそれぞれに対応する制御期間中に眼底Efに固視標を投影させる。撮影トリガTrgが発せられると、主制御部201は、上記のような光スキャナ136の制御と並行して、例えば1つのフレームに相当する期間に渡って光源を点灯する。それにより、固視用と共通の光源を利用したSLO画像(フレームF)が得られる。取得されたSLO画像は記憶部202に格納される。なお、スキャンの制御や固視標の制御や撮影の制御は、上記の例には限定されない。
【0089】
図6A及び図6Bに例示するように、被検眼Eに投射される光量を撮影モード(画角)に応じて変更することができる。例えば、高倍撮影モードにおいては、広角撮影モードの場合よりも狭い範囲を細かい間隔でスキャンを行うため、眼底Efに適用される光度エネルギーが高くなる。一般に、被検眼に適用可能な光量には制限がある。この制限を満足するために、高倍撮影モードにおいて適用される光量を、広角撮影モードにおけるそれよりも小さくすることができる。なお、図6A及び図6Bに示す例では光源の出力光量を変更しているが、これには限定されない。例えば、減光フィルタ等の光学素子を光路に挿入/退避することで、光源の出力光量を変更することなく被検眼Eに投射される光量を変更することができる。
【0090】
制御部200は、視野検査の結果を記録する機能を備えていてよい。視野検査では、眼底Efに刺激光が投射され、それに対する被検者の反応の内容(その刺激光を認識したか否か)が記録される。このような処理が、眼底Efの複数の位置に対して順次に行われる。制御部200は、刺激光の投射位置と反応の内容との組を蓄積する。それにより、眼底Efの複数の位置における反応内容の分布、つまり、視野範囲の分布や視野感度の分布が得られる。
【0091】
<画像形成部210>
画像形成部210は、光学系100により収集されたデータに基づいて眼底Efの画像を形成する。眼科撮影装置1はSLOとOCTの双方を実行可能であるので、画像形成部210は、SLO画像形成部211とOCT画像形成部212とを含む。
【0092】
SLO画像形成部211は、SLO光学系130により収集されたデータに基づいてSLO画像を形成する。より具体的には、SLO画像形成部211は、従来のSLOと同様に、検出器135から入力される検出信号と、制御部200から入力される画素位置信号とに基づいて、SLO画像を形成する。
【0093】
OCT画像形成部212は、OCT光学系140により収集されたデータに基づいてOCT画像を形成する。より具体的には、OCT画像形成部212は、検出器155から入力される検出信号と、制御部200から入力される画素位置信号とに基づいて、OCT画像を形成する。OCT画像形成部212は、従来と同様に、一連の波長走査毎に(Aライン毎に)、検出器155からの出力からスペクトル分布を生成し、これにフーリエ変換等を施す。それにより、各Aラインにおける反射強度プロファイルが得られる。更に、OCT画像形成部212は、各Aラインの反射強度プロファイルを画像化することにより断面像(Bスキャン像)を形成する。
【0094】
OCT画像形成部212は、複数のBスキャン像に基づいて3次元画像(スタックデータ、ボリュームデータ等の3次元データセット)を形成することができる。更に、OCT画像形成部212は、3次元データセットをレンダリングすることにより表示用画像を形成することができる。
【0095】
画像形成部210は、前眼部撮影カメラ123からの出力に基づいて前眼部像を形成することができる。画像形成部210により形成された各種の画像(画像データ)は、例えば記憶部202に保存される。
【0096】
<データ処理部220>
データ処理部220は、各種のデータ処理を実行する。データ処理の例として、画像形成部210又は他の装置により形成された画像データに対する処理がある。この処理の例として、各種の画像処理や、画像に対する解析処理や、画像データに基づく画像評価などの診断支援処理がある。
【0097】
<ユーザインターフェイス部230>
ユーザインターフェイス(UI)部230は、ユーザと眼科撮影装置との間で情報のやりとりを行うための機能を備える。UI部230は、表示デバイスと操作デバイス(入力デバイス)とを含む。表示デバイスは、例えば液晶ディスプレイ(LCD)を含む。操作デバイスは、各種のハードウェアキー及び/又はソフトウェアキーを含む。制御部200は、操作デバイスに対する操作内容を受け、この操作内容に対応した制御信号を各部に出力する。操作デバイスの少なくとも一部と表示デバイスの少なくとも一部とを一体的に構成することが可能である。タッチパネルディスプレイはその一例である。
【0098】
<他の実施形態>
複数の波長帯の光ビームを出力可能な眼科撮影装置を用いて、上記のような固視標の制御を実行することができる。このような眼科撮影装置の光学系の一部の例を図7に示す。なお、特に断らない限り、上記実施形態の図面や説明を参照する。
【0099】
図7に示す光学系は、図1及び図3のSLO光源131及びコリメートレンズ132の代わりに適用されるSLO光源ユニット131Aを表す。他の部分については上記実施形態と同様であってよい。
【0100】
SLO光源ユニット131Aは、赤外光と可視光の双方を出力可能である。SLO光源ユニット131Aは、赤外光源131aと、赤色光源131rと、緑色光源131gと、青色光源131bとを含む。赤外光源131aは(近)赤外帯域の光ビームを出力する。赤色光源131rは、赤色帯域の光ビームを出力する。緑色光源131gは、緑色帯域の光ビームを出力する。青色光源131bは、青色帯域の光ビームを出力する。これら光源131a、131r、131g及び131bのそれぞれは、例えば、半導体レーザーである。
【0101】
赤外光源131aから出力された赤外光はコリメートレンズ132aにより平行光束に変換される。赤色光源131rから出力された赤色光はコリメートレンズ132rにより平行光束に変換される。緑色光源131gから出力された緑色光はコリメートレンズ132gにより平行光束に変換される。青色光源131bから出力された青色外光はコリメートレンズ132bにより平行光束に変換される。
【0102】
ビームスプリッタBSrは、コリメートレンズ132rにより平行光束とされた赤色光を、コリメートレンズ132aにより平行光束とされた赤外光の光路に合成する。ビームスプリッタBSgは、コリメートレンズ132gにより平行光束とされた緑色光を、コリメートレンズ132aにより平行光束とされた赤外光の光路に合成する。ビームスプリッタBSbは、コリメートレンズ132bにより平行光束とされた青色光を、コリメートレンズ132aにより平行光束とされた赤外光の光路に合成する。3つのビームスプリッタBSr、BSg及びBSbにより、波長帯が異なる4つの光ビームの光路が合成される。この合成光路は、ビームスプリッタBS2に導かれている。
【0103】
主制御部201は、赤外光源131a、赤色光源131r、緑色光源131g及び青色光源131bのそれぞれを制御する。主制御部201は、これら光源131a、131r、131g及び131bの同期制御を行うための同期回路を含んでいてよい。この同期回路は、これら光源131a、131r、131g及び131bの制御と光スキャナ136の制御とを同期させるよう構成されてもよい。
【0104】
このような眼科撮影装置によれば、赤外光源131aと、可視光源(赤色光源131r、緑色光源131g及び青色光源131bの少なくとも1つ)とを並行して制御することにより、赤外動画観察と固視標の投影とを並行して実行できる。また、これらと並行して光刺激を印加することも可能である。
【0105】
赤外動画観察は、例えば次のようにして実行される。主制御部201は、所定のスキャンパターン(ラスタースキャン等)に対応する光スキャナ136の制御を繰り返し行いつつ、所定の時間間隔で赤外光を出力するように赤外光源131aを制御する。SLO画像形成部211は、スキャンパターンの1回分において収集されたデータに基づいて1つのフレームを形成する。SLO画像形成部211は、スキャンの繰り返しレートに同期して順次にフレームを作成する。このような赤外動画観察のための制御と並行して、主制御部201は、赤色光源131r、緑色光源131g及び青色光源131bの少なくとも1つを所定の固視タイミングで点灯させることにより、眼底Efに固視標を投影する。この制御は、例えば上記実施形態の図6Aのタイミングチャートと同じ要領で実行される。
【0106】
可視光源を用いた撮影と固視標の投影とを連係的に実行する場合の例を説明する。主制御部201は、所定のスキャンパターン(ラスタースキャン等)に対応する光スキャナ136の制御を繰り返し行いつつ、所定の時間間隔で可視光を出力するように、赤色光源131r、緑色光源131g及び青色光源131bの少なくとも1つを制御する。SLO画像形成部211は、スキャンパターンの1回分において収集されたデータに基づいて1つのフレームを形成する。SLO画像形成部211は、スキャンの繰り返しレートに同期して順次にフレームを作成する。このような可視撮影(可視動画観察を含む)のための制御と並行して、主制御部201は、赤色光源131r、緑色光源131g及び青色光源131bの少なくとも1つを所定の固視タイミングで点灯させることにより、眼底Efに固視標を投影する。このとき、可視撮影用光源の少なくとも1つと固視用光源の少なくとも1つとが共通でもよいし、可視撮影用光源と固視用光源とが全て異なってもよい。可視光源を用いた撮影と固視標の投影との連係制御は、例えば上記実施形態の図6Bのタイミングチャートと同じ要領で実行される。
【0107】
<作用・効果>
実施形態に係る眼科撮影装置により提供することが可能な作用及び効果の幾つかの例を以下に説明する。
【0108】
実施形態に係る眼科撮影装置は、走査系と、検出系と、画像形成部と、サイズ変更部と、制御部とを備える。走査系は、予め設定された走査パターンに応じて眼底を光で走査する。検出系は、走査系により投射された光の眼底からの戻り光を検出する。上記の例において、SLO光学系130のSLO走査系が走査系に相当し、SLO検出系が検出系に相当する。画像形成部は、検出系により取得されたデータに基づいて上記走査パターンに応じた画像を形成する。上記の例において、SLO画像形成部211が画像形成部に相当する。サイズ変更部は、走査系による走査範囲のサイズ(つまり画角)を変更する。上記の例において、対物レンズ系110(又は図示しないズーム光学系)がサイズ変更部に相当する。制御部は、眼底に固視標を投影するための固視光を眼底に投射するように走査系を制御する。上記の例において、制御部200が制御部に相当する。サイズ変更部により走査範囲のサイズが変更された後、制御部は、当該サイズの変更前に眼底に投影された第1固視標(例えば固視標T)と同じ位置に第2固視標(例えば固視標T´)を投影するように走査系を制御する。
【0109】
このような構成によれば、画角の変更に伴う固視位置の調整を自動で行うことができるので、撮影に掛かる時間の短縮や操作性の向上を図ることが可能である。
【0110】
なお、第1固視標と第2固視標とが「同じ位置」であるとは、例えば、第1固視標の少なくとも一部の位置と第2固視標の少なくとも一部の位置とが一致することを意味する。双方の固視標が輝点である場合、これら輝点が眼底の同じ位置に投影されるように制御が行われる。また、双方の固視標が2次元的な広がりを持つ場合、第1固視標の少なくとも一部と同じ位置に第2固視標の少なくとも一部が投影されるように制御が行われる。また、一方の固視標が輝点であり、他方の固視標が2次元的な広がりを持つ場合、前者の位置に後者の内部又は境界に配置されるように制御が行われる。
【0111】
実施形態において、制御部は、第1固視標と同じサイズの第2固視標を投影するように走査系を制御するよう構成されていてよい。これにより、画角変更の前後において固視標の位置及びサイズの双方を不変にすることができ、固視ズレの発生をより効果的に防止することが可能となる。なお、画角変更の前後において固視標の形態(形状、色等)を不変にすることで、効果の更なる向上を図ってもよい。
【0112】
赤外撮影(赤外観察)と並行して固視標を提示することが可能であってよい。この実施形態において、走査系は、赤外光及び可視光を眼底に投射可能に構成される。制御部は、既定の走査パターンに応じた走査を赤外光を用いて実行しつつ、予め設定された固視位置に対応するタイミングで可視光を投射するように、走査系の制御を実行する。
【0113】
可視撮影と並行して固視標を提示することが可能であってよい。この実施形態の第1の例では、撮影用の光源と固視用の光源とが共通である。その具体例において、走査系は可視光源を含む。制御部は、可視光源から出力された第1可視光を用いて既定の走査パターンに応じた走査を実行しつつ、予め設定された固視位置に対応するタイミングで可視光源から出力された第2可視光を投射するように、走査系の制御を実行する。
【0114】
第2の例では、撮影用の光源と固視用の光源とが別々である。その具体例において、走査系は、第1可視光源及び第2可視光源を含む。制御部は、第1可視光源から出力された可視光を用いて既定の走査パターンに応じた走査を実行しつつ、予め設定された固視位置に対応するタイミングで第2可視光源から出力された可視光を投射するように、走査系の制御を実行する。
【0115】
実施形態において、制御部は、走査範囲のサイズ(画角)に応じた光量を眼底に投射するように、走査系を制御することができる。これにより、画角に応じた光量で撮影及び固視を行うことができる。具体例として、比較的高い光量で広角撮影を実行し、比較的低い光量で高倍撮影を実行することができる。
【0116】
以上に示された実施形態は、この発明を実施するための一例に過ぎない。この発明を実施しようとする者は、この発明の要旨の範囲内において任意の変形、省略、追加等を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0117】
100 光学系
110 対物レンズ系
130 SLO光学系
131 SLO光源
135 検出器
136 光スキャナ
200 制御部
201 主制御部
203 固視制御部
211 SLO画像形成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7