(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記外部筐体内には、前記電子ペン本体部の前記芯体の前記ペン先と前記内部筐体のペン先側部とを、前記外部筐体の前記開口から突出させるための繰り出し機構部を備えることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の筆記具。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明による筆記具及び電子ペン本体部の実施の形態について、図を参照しながら説明する。
【0020】
[ノック式の筆記具の構成例]
まず、この発明を電磁誘導方式の電子ペンに適用してノック式の筆記具を構成した場合の実施の形態について説明する。
図1は、この発明による筆記具及び電子ペン本体部の一実施形態の構成例を示す図である。この実施形態の筆記具1は電子ペン機能を実現するものであり、筒状の筐体(筆記具の外部筐体)2の中空部2a内に、電子ペン本体部3が収納され、ノックカム機構部4により、電子ペン本体部3のペン先側が、外部筐体2の長手方向の一端の開口2b側から出し入れされるノック式の構成を備える。この実施形態では、電子ペン本体部3は、カートリッジ式の構成とされ、筐体2に対して着脱可能とされている。
【0021】
図1(A)は、電子ペン本体部3の全体が外部筐体2の中空部2a内に収容されている状態を示し、
図1(B)は、ノックカム機構部4により電子ペン本体部3のペン先側が、外部筐体2の開口2bから突出した状態を示している。なお、
図1の例では、筆記具1の外部筐体2が透明の合成樹脂で構成されていて、その内部が透けて見える状態として示している。この実施形態の筆記具1は、市販のノック式ボールペンと互換性が取れる構成とされている。
【0022】
外部筐体2及び当該外部筐体2内に設けられるノックカム機構部4は、周知の市販のノック式ボールペンと同一の構成とされると共に、寸法関係も同一に構成される。換言すれば、外部筐体2及びノックカム機構部4は、市販のノック式のボールペンの筐体及びノックカム機構部をそのまま用いることもできる。
【0023】
ノックカム機構部4は、
図1に示すように、カム本体41と、ノック棒42と、回転子43とが組み合わされた周知の構成とされている。カム本体41は、筒状の筐体2の内壁面に形成されている。ノック棒42は、使用者のノック操作を受け付けることができるように、端部42aが、外部筐体2のペン先側とは反対側の開口2cから突出するようにされている。回転子43は、電子ペン本体部3のペン先側とは反対側の端部が嵌合される嵌合部43aを備える。
【0024】
図1(A)の状態において、ノック棒42の端部42aが押下されると、ノックカム機構部4により、電子ペン本体部3は、筐体2内において
図1(B)の状態にロックされ、電子ペン本体部3のペン先側が、筐体2の開口2bから突出する状態になる。そして、この
図1(B)の状態から、ノック棒42の端部42aが再度押下されると、ノックカム機構部4によりロック状態が解除され、復帰用バネ5により、電子ペン本体部3の筐体2内の位置は、
図1(A)の状態に戻る。ノックカム機構部4の詳細な構成及びその動作は、周知であるので、ここでは、その説明を省略する。
【0025】
[電子ペン本体部3の構成例]
図2は、電子ペン本体部3の外観例を、市販のノック式ボールペンの替え芯(カートリッジ)と比較して示す図である。すなわち、
図2(A)は、市販のノック式ボールペンの替え芯6を示し、また、
図2(B)は、この実施形態の電子ペン本体部3の構成例を示している。
【0026】
市販のノック式ボールペンの替え芯6は、
図2(A)に示すように、ボールが先端に配設されているペン先部61と、インク収納部62とが、結合部63で結合されて一体化された周知の構成を備える。結合部63は、インク収納部62と同じ径を有する。
【0027】
一方、この実施形態の電子ペン本体部3においては、
図2(B)に示すように、筒状の筐体(内部筐体)33の内部に、芯体34などの種々の部材が搭載されて電子ペン本体部3が構成される。芯体34は、
図2(B)に示すように、内部筐体33の端部に設けられる開口部からその一方の端部が突出するようにされており、芯体34の内部筐体33から突出した部分がペン先として機能する。
【0028】
そして、
図2(B)に示すように、内部筐体33は、ペン先側から芯体ガイド部33bと、フェライト収納部33cと、本体収納部33dとの3つの部分からなっている。芯体ガイド部33bの外側先端部33bx(
図3)は、先細(テーパー形状)になっている。フェライト収納部33cは、詳しくは後述するが、磁性体コアであるフェライトコアのペン先側の一部が収納される部分である。本体収納部33dは、フェライトコアのペン先側の前記の一部以外の部分、筆圧検出部、プリント基板(回路基板)などが収納される部分である。
【0029】
そして、
図2(A)及び
図2(B)に示すように、電子ペン本体部3のペン先側の寸法は、ボールペンの替え芯6のペン先側の寸法とほぼ等しくなるように構成されている。すなわち、電子ペン本体部3のペン先側に設けられるフェライト収納部33cの径は、ボールペンの替え芯6のペン先部61の径R1とほぼ等しくなるように構成されている。本体収納部33dのペン先側の端部から芯体34のペン先先端までの長さは、ボールペンの替え芯6のペン先部61の長さL1とほぼ等しくなるように構成されている。
【0030】
また、電子ペン本体部3の本体収納部33dの径は、ボールペンの替え芯6のインク収納部62の径R2とほぼ等しく、ペン先部61の径R1よりは大きい(R2>R1)。なお、
図1(A)に示した外部筐体2の開口2bの径は、この径R2よりは小さい。したがって、電子ペン本体部3が、開口2bから外部に突出することはできない。そして、芯体34の先端から本体収納部33dのペン先とは反対側の端部までの長さ、すなわち、電子ペン本体部3の全長は、ボールペンの替え芯6の全長L2と等しく選定されている。
【0031】
次に、電子ペン本体部3の内部の構成例について説明する。
図3は、第1の実施の形態の電子ペン本体部3の内部の構成例と当該電子ペン本体部3を用いて構成される筆記具1のペン先側の構成とについて説明するための図である。
【0032】
図3にも示すように、芯体ガイド部33bと、フェライト収納部33cと、本体収納部33dとの3つの部分からなる内部筐体33内に、電子ペン機能を実現するための種々の部材が搭載される。まず、フェライトコア32は、例えば円柱状のフェライト材料に、例えば樹脂等により形成される棒状の芯体34を挿通するための所定の径(例えば径=1mm)の軸心方向の貫通孔が、軸心方向の中心線を含む位置に形成されたものである。
【0033】
当該フェライトコア32の貫通孔には、芯体34がフェライトコア32を貫通するように挿入される。すなわち、芯体34は、フェライトコア32の軸心方向の長さよりも長いものである。また、フェライトコア32の当該貫通孔に挿入される芯体34の部分は、当該貫通孔の径よりもやや短い径を有するものであり、当該貫通孔内を軸心方向に摺動移動することができるようにされる。なお、芯体34のペン先となる端部部分は、フェライトコア32の貫通孔の径よりも長い径を有すると共に、先端部が半球状に加工され、タッチパネルなどの操作面上において、スムーズに移動させることができるようにしたものである。
【0034】
そして、
図3(A)に示すように、フェライトコア32の軸心方向の所定の長さの部分はコイル31が巻回されたコイル巻回部となり、その両端はコイルが巻回されていないコイル非巻回部となっている。すなわち、フェライトコア32をその軸心方向に見たとき、ペン先側の端部から、コイル巻回部の一方の端までの部分は、コイルが巻回されない第1のコイル非巻回部とされ、また、コイル巻回部の他方の端から、フェライトコア32のペン先側とは反対の端部までの部分は、コイル31が巻回されない第2のコイル非巻回部とされる。
【0035】
フェライトコア32に巻回されたコイル31の端部からの延伸線(導体線)31a,31bは、内部筐体33の内側を、プリント基板36まで延伸されて、プリント基板36に設けられているキャパシタ(コンデンサ)に接続される。これにより、コイル31とプリント基板36上のキャパシタとによって共振回路を構成し、位置検出装置との間において、電磁誘導により結合して、相互に信号を送受することができるようにされる。
【0036】
そして、芯体34のペン先とは反対側には、モールド部35A、筆圧検出部35B、嵌合部35C、接続端子部35Dからなる接続部35が設けられる。この接続部35は、コイル31とフェライトコア32と芯体34とからなる部分と、プリント基板36及び基板保護パイプ37とを一体的に接続する部分である。モールド部35Aのフェライトコア32と対向する端面側にはフェライトコア32の第2のコイル非巻回部が嵌合する凹部が設けられている。
【0037】
更に、モールド部35Aの内部には、
図3(A)に示すように、芯体保持部A1、導電ゴムA2、リングスペーサA3、誘電体A4、端子部材A5が設けられている。これらの各部が、モールド部35Aと、嵌合部35Cとによって挟み込まれ、筆圧を検出する筆圧検出部35Bとなる。
【0038】
具体的に、芯体保持部A1は、例えば硬質ゴム等によりカップ状に形成され、芯体34のペン先側とは反対側の端部部分が差し込まれて、これを保持する。芯体保持部A1の芯体34とは反対側の底面部は球面状に形成されている。そして、芯体保持部A1は、芯体34に加えられる筆圧に応じて導電ゴムA2を押圧する押圧部として機能する。
【0039】
リングスペーサA3は、リング状に形成された部材であり、導電ゴムA2と誘電体A4のペン先側の面との間に、リングスペーサA3の厚み分だけ空隙を設け両者を乖離させる(離れさせる)ものである。誘電体A4の他の面には、所定の面積を有する端子部材A5が貼付するようにして設けられている。このように、導電ゴム(第1の電極)A2と端子部材(第2の電極)A5とが、誘電体A4を挟み込むことにより、可変容量コンデンサ(キャパシタ)を構成している。
【0040】
すなわち、芯体34のペン先に加えられる筆圧に応じて、芯体34は軸心方向に上げ下げするように摺動移動する。これに連動し、芯体保持部A1が導電ゴムA2を押し上げたり、下げたりする。導電ゴムA2と誘電体A4との間にはリングスペーサA3により空隙が設けられているので、導電ゴムA2は、芯体34に加えられる筆圧に応じて、誘電体A4に近づいて接触して、その接触面積を変化させる。これにより、誘電体A4を挟む導電ゴムA2と端子部材A5との間の静電容量が筆圧に応じて変化することになる。なお、筆圧が加えられていない時には、導電ゴムA2は、リングスペーサA3の存在により誘電体A4から離れる。
【0041】
そして、導電ゴムA2に接続された導電線と、端子部材に接続された導電線とが、例えば、モールド部35Aと嵌合部35Cの外側を通り、接続端子部35Dの端子に接続され、接続端子部35Dの端子を通じてプリント基板36の電子回路に接続される。これにより、プリント基板36の電子回路部において、芯体34に加えられる筆圧を、上述したように構成される可変容量コンデンサの静電容量の変化として検出できる。
【0042】
この例において、芯体保持部A1、導電ゴムA2、リングスペーサA3、誘電体A4、端子部材A5により構成される筆圧検出部35Bは、例えば特許文献:特開平5−275283号公報に記載されている周知の構成の筆圧検出手段と同様のものである。また、筆圧検出部35Bは、特開2011−186803号公報に記載されている周知の構成の筆圧検出手段と同様に構成することもできる。また、例えば、特開2013−161307号公報に開示されているような筆圧に応じて静電容量を可変とする半導体素子を用いた構成することもできる。
【0043】
嵌合部35Cは、基板保護パイプ37と嵌合する部分である。嵌合部35Cは、樹脂や硬質ゴムなどにより例えば略円筒状に形成され、モールド部35Aと強固に嵌合して一体的になっている。これにより、上述もしたように、モールド部35Aと嵌合部35Cとによって、芯体保持部A1、導電ゴムA2、リングスペーサA3、誘電体A4、端子部材A5が挟みこまれ、これらの部材から構成される筆圧検出部35Bが、内部筐体33内に安定に保持される。
【0044】
そして、嵌合部35Cの内側には、プリント基板36の先端部が嵌合する凹部が設けられている。接続端子部35Dは、
図3(A)に示すように、嵌合部35Cに連結する上下に2枚の板部からなる部分である。この板部がプリント基板36を挟み込むようになっている。
【0045】
これら2枚の板部の一方、例えば、
図3(A)において上側の板部には、上述した導電ゴムA2と、端子部材A5からの導電線が接続された端子が配置されており、接続端子部35Dにプリント基板36を差し込んだ時に、自動的にプリント基板36に設けられている電子回路の端子部と接続されるようになっている。
【0046】
プリント基板36は、制御回路として機能するIC(Integrated Circuit)や複数のコンデンサなどの種々の回路部品が絶縁基板上に搭載され、それらが接続されて形成されたものである。プリント基板36は、
図3(A)に示すように、基板保護パイプ37の内部に収納されて保護される。
【0047】
基板保護パイプ37は、金属、カーボン素材、合成樹脂などが用いられて形成され、折れたり曲がったりしにくい硬質管状部材である。芯体側開口部から基板保護パイプ37の内側の所定範囲の部分に、接続部35の嵌合部35Cが差し込まれて両者が嵌合する。同様に、後端側開口部から基板保護パイプ37の内側の所定範囲の部分に、パイプ蓋38が差し込まれて両者が嵌合する。
【0048】
これにより、コイル31が巻回されたフェライトコア32に芯体34が挿通されたペン先側の部分と、接続部35と、プリント基板36を収納した基板保護パイプ37と、パイプ蓋38とが一体的に接続され、電子ペン本体部3の機能を実現する主要部分が構成される。この主要部分が、
図2(A)に示すように、内部筐体33に収納され、後端側の開口部に、外部筐体内に電子ペン本体部3を接続するための接続部材39が嵌合するように取りつけられて、電子ペン本体部3が構成される。
【0049】
以上のような構成の電子ペン本体部3の後端に設けられている接続部材39を、ノックカム機構部4の回転子43の嵌合部43aに嵌合させることにより、電子ペン本体部3を外部筐体2内に収納することができる。そして、この実施形態の電子ペン1においては、使用者は、位置検出装置と共に使用するときには、ノック棒42の端部42aを押下する。すると、電子ペン1においては、
図1(B)に示したように、芯体34の端部が構成するペン先と、内部筐体33の先端側の部分とが外部筐体2から突出した状態となる。
【0050】
芯体34のペン先と、内部筐体33の先端側の部分とが外部筐体2から突出した状態のペン先側の部分を拡大して示したのが、
図3(B)である。
図3(B)に示したように、芯体34のペン先以外の部分やフェライトコア32は、内部筐体33内に収納され、ペン先に加わる垂直方向、水平方向の衝撃等の外力から保護される。
【0051】
図3(B)に示したように、開口2bより突出するのは、内部筐体33の芯体ガイド部33b及びフェライト収納部33cからなるペン先側部であり、芯体34及びフェライトコア32などの、細型化により外側から加わる力(外力)に対する強度が低下する部分を強固に保護することができる。また、内部筐体33の芯体ガイド部の外側の先端は、
図3(A),(B)に示したようにテーパー形状になっているので、電子ペン本体部3が外部筐体2から突出さする際に引っかかることなく、スムーズに外部筐体2の開口2bから外部に突出することができる。
【0052】
このように、芯体34やフェライトコア32が外部筐体2と接触することはないので、芯体34やフェライトコア32などが、破損したり、変形したりするなどといった不都合を一切生じさせることがない。また、
図3(B)に示したように、芯体34が、外部筐体2と接触することはないし、芯体34のペン先の周囲は、
図3(A),(B)に示したように、軸心方向に所定の長さを持つ芯体ガイド部33bによって囲まれている。
【0053】
したがって、芯体34の軸心方向への摺動移動の障害となるものは存在せず、芯体ガイド部33bによって、芯体34のペン先が軸心方向に摺動移動する際のガイド部(位置を規制する部分)となって、適切かつスムーズな軸心方向への摺動移動を可能にする。これにより、芯体34は、ペン先にかけられる筆圧に適切に呼応して摺動移動することができ、筆圧の適切かつ正確な検出を可能にしている。
【0054】
また、
図3(A),(B)に示すように、フェライトコア32の第1のコイル非巻回部に応じて細くなったフェライト収納部33cが設けられている。このフェライト収納部33c内に、フェライトコア32の第1のコイル非巻回部が位置することによって、内部筐体33内において、フェライトコア32の位置を適切に規制し、芯体34だけでなく、フェライトコア32も適切に保護できるようにしている。また、フェライトコア32をよりペン先側に位置することができるので、フェライトコア32を細型化しても、センサに近付けることができ、ノイズ耐性の強い信号を送信できる。
【0055】
また、電子ペン1の使用が終了したら、ノック棒42の端部42aを再押下することで、
図1(A)に示したように、電子ペン本体部3の全体は筐体2の中空部2a内に収容させる状態とすることができる。このときには、電子ペン本体部3の全体が筐体2の中空部2a内に収容されて、電子ペン本体部3の全体が、外部筐体2により保護される状態となる。もちろん、電子ペン本体部3が外部筐体2内に収納される時に、芯体34やフェライトコア32が外部筐体2に接触することはないので、収納時においても芯体34やフェライトコア32が損傷したり、変形したりすることもない。
【0056】
[電磁誘導授受方式の座標検出センサの概要]
次に、
図1〜
図3を用いて説明した電磁誘導授受方式の電子ペン1を用いた指示位置の検出および筆圧の検出(検知)を行う電磁誘導授受方式の位置検出装置200の具体的な実施形態の回路構成例について、
図4を参照して説明する。
図4は、電子ペン1及び位置検出装置200の回路構成例を示すブロック図である。電子ペン1と位置検出装置200とにより入力装置が構成される。
【0057】
電子ペン1は、回路構成としては、信号送受要のコイル31と、このコイル31に接続された筆圧検出部35Bと、この筆圧検出部35Bに並列に接続される共振コンデンサCf等からなる共振回路によって現される。
【0058】
一方、位置検出装置200には、X軸方向ループコイル群204aと、Y軸方向ループコイル群204bとを積層させて設けることにより、電磁誘導方式の座標検出センサ201が形成されている。各ループコイル群204a,204bは、例えば、それぞれ40本の矩形のループコイルからなっている。各ループコイル群204a,204bを構成する各ループコイルは、等間隔に並んで順次重なり合うように配置されている。
【0059】
また、位置検出装置200には、X軸方向ループコイル群204a及びY軸方向ループコイル群204bが接続される選択回路206が設けられている。この選択回路206は、2つのループコイル群204a,204bのうちの一のループコイルを順次選択する。
【0060】
さらに、位置検出装置200には、発振器203と、電流ドライバ205と、切り替え接続回路207と、受信アンプ208と、検波器209と、低域フィルタ210と、サンプルホールド回路212と、A/D変換回路213と、同期検波器216と、低域フィルタ217と、サンプルホールド回路218と、A/D変換回路219と、処理部214とが設けられている。
【0061】
発振器203は、周波数f0の交流信号を発生し、電流ドライバ205と同期検波器216に供給する発振器203である。電流ドライバ205は、発振器203から供給された交流信号を電流に変換して切り替え接続回路207へ送出する。切り替え接続回路207は、後述する処理部214からの制御により、選択回路206によって選択されたループコイルが接続される接続先(送信側端子T、受信側端子S)を切り替える。この接続先のうち、送信側端子Tには電流ドライバ205が、受信側端子Rには受信アンプ208が、それぞれ接続されている。
【0062】
選択回路206に選択されたループコイルに発生する誘導電圧は、選択回路206及び切り替え接続回路207を介して受信アンプ208に送られる。受信アンプ208は、ループコイルから供給された誘導電圧を増幅し、検波器209及び同期検波器216へ送出する。
【0063】
検波器209は、ループコイルに発生した誘導電圧、すなわち受信信号を検波し、低域フィルタ210へ送出する。低域フィルタ210は、前述した周波数f0より充分低い遮断周波数を有しており、検波器209の出力信号を直流信号に変換してサンプルホールド回路212へ送出する。サンプルホールド回路212は、低域フィルタ210の出力信号の所定のタイミング、具体的には受信期間中の所定のタイミングにおける電圧値を保持し、A/D(Analog to Digital)変換回路213へ送出する。A/D変換回路213は、サンプルホールド回路212のアナログ出力をデジタル信号に変換し、処理部214に出力する。
【0064】
一方、同期検波器216は、受信アンプ208の出力信号を発振器203からの交流信号で同期検波し、それらの間の位相差に応じたレベルの信号を低域フィルタ217に送出する。この低域フィルタ217は、周波数f0より充分低い遮断周波数を有しており、同期検波器216の出力信号を直流信号に変換してサンプルホールド回路218に送出する。このサンプルホールド回路218は、低域フィルタ217の出力信号の所定のタイミングにおける電圧値を保持し、A/D(Analog to Digital)変換回路219へ送出する。A/D変換回路219は、サンプルホールド回路218のアナログ出力をデジタル信号に変換し、処理部214に出力する。
【0065】
処理部214は、位置検出装置200の各部を制御する。すなわち、処理部214は、選択回路206におけるループコイルの選択、切り替え接続回路207の切り替え、サンプルホールド回路212、218のタイミングを制御する。処理部214は、A/D変換回路213、219からの入力信号に基づき、X軸方向ループコイル群204a及びY軸方向ループコイル群204bから一定の送信継続時間をもって電波を送信させる。
【0066】
X軸方向ループコイル群204a及びY軸方向ループコイル群204bの各ループコイルには、電子ペン1から送信される電波によって誘導電圧が発生する。処理部214は、この各ループコイルに発生した誘導電圧の電圧値のレベルに基づいて電子ペン1のX軸方向及びY軸方向の指示位置の座標値を算出する。また、処理部214は、送信した電波と受信した電波との位相差に基づいて筆圧を検出する。このように、この実施の形態の電磁誘導授受方式の電子ペン1と
図4に示した電磁誘導授受方式の位置検出装置200とにより、入力装置が構成できる。
【0067】
[電子ペン本体部の回転式の多機能ペンへの適用]
図5は、上述した実施の形態のボールペンのカートリッジの構成とされた電子ペン本体部3とほぼ同様に構成される電子ペン本体部3Aと、通常のボールペンのカートリッジ6とを用いて構成する回転式の多色ペンの構成とした多機能ペン1Aの外観及び内部構成を示す図である。すなわち、電子ペン本体部3Aは、上述した電子ペン本体部3の接続部材39に相当する部分の構成が異なるだけで、その他の構成は
図3を用いて説明した電子ペン本体部3と同様に構成されるものである。
【0068】
そして、
図5の例の場合には、外部筐体2A,2B、ジョイントパイプ2C、接続部リング2D、後端蓋部2Eは、2つに切断した場合の断面図として示している。そして、
図5に示す多機能ペン1Aは、市販の回転式の多色ボールペンと同様の構成を備えている。
【0069】
すなわち、多機能ペン1Aは、ペン先側の外部筐体2Aと、後端側の外部筐体2Bの2つに筐体を備える。これら2つの外部筐体2A,2Bは、これらを接続するためのジョイントパイプ2Cによって接続される。そして、外部筐体2Aと外部筐体2Bとが、軸心方向において対向する接続部には、接続部リング2Dが設けられ、使用者が外部筐体2A,2Bのそれぞれの部分を明確に区別できるようにしている。そして、外部筐体2A,2Bは、ジョイントパイプ2Cにより接続された状態で、軸心を中心にして、それぞれ異なる方向に回転させることができるように構成されている。
【0070】
外部筐体2Bの後端側は、後端蓋部2Eにより閉じられ、この後端蓋部2Eには、多機能ペン1Aを使用者の上着のポケットなどに止めるためのクリップ2Fが設けられている。そして、外部筐体2B内の後端側には、外部筐体2Bの内径に一致する外径を有する三角カム2Gが設けられている。この三角カム2Gは、円筒状の部材の上面部から底面部にかけて斜めに切断するようにした形状を有し、その側面を、切断面を横からみるようにすると、
図5に示したように三角形の形状となるものである。この三角カム2Gは、外部筐体2Bを回転させることにより、これに連動して一緒に回転する。
【0071】
また、外部筐体2B内には、ジョイントパイプ2Cにより外部筐体2Bの内部に保持されるように、押し出し棒21、22が設けられる。押し出し棒21、22の後端側(ペン先とは反対の側)の端部には、上述した三角カム2Gの外周部に接触し、当該外周部上をスライド移動する山型に形成されたスライド部21A、22Aが設けられている。また、押し出し棒21、22の周囲には、バネ21B、22Bが設けられる。このバネ21B、22Bのそれぞれは、
図5に示すように、ジョイントパイプ2Cのペン先とは反対側の端部とスライド部21A、22Aとの間に把持され、押し出し棒21,22を外部筐体2B内において、ペン先側から後端側に引き込むように機能する。
【0072】
押し出し棒21のペン先側の端部には、球状凸部21Cが設けられている。この球状凸部21Cは、電子ペン本体部3Aの後端側に設けられた球状凹部3Axに嵌合する。そして、押し出し棒21の球状凸部と電子ペン本体部3Aの球状凹部3Axとによって、いわゆる自在継手(ユニバーサルジョイント)を構成する。また、押し出し棒22のペン先側の端部には、ボールペンのカートリッジ6の後端側の接続部が嵌合する嵌合部22Cが設けられている。
【0073】
そして、
図5に示すように、電子ペン本体部3Aの後端側の球状凹部3Axが、押し出し棒21のペン先側の端部の球状凸部21Cに嵌合するようにして取り付けられる。電子ペン本体部3Aの内部には、上述したように、プリント基板や保護パイプなどが収納され曲がりにくいものである。しかし、電子ペン本体部3Aは、
図5に示すように、押し出し棒21の球状凸部21Cと電子ペン本体部3Aの球状凹部3Axとが嵌合した部分において、全方向に自在に、かつ、容易に折れ曲がることができるようにされる。これにより、外部筐体2A,2B内において、電子ペン本体部3Aの内部筐体33が外部筐体2Aの内壁に当たっても、電子ペン本体部を撓ませるような大きな負荷がかかることなく、出没移動することができるようになっている。すなわち、多機能ペン1Aの開口2Aaに対して、電子ペン本体部3Aが斜めに移動し、突出する。
【0074】
また、
図5に示すように、ボールペンのカートリッジ6の後端側の接続部材が、押し出し棒22のペン先側の嵌合部22Cに嵌合するようにして取り付けられる。ボールペンのカートリッジ6は、周知のようにペン先以外の部分はプラスチックなどにより構成され、柔軟性を有しているので、折れることなく、容易に全方向にある程度曲がることができるものである。したがって、外部筐体2A,2B内において、ボールペンのカートリッジ6が、外部筐体2Aの内壁に当たっても、負荷とはならず、出没移動することができるようにされる。もちろん、金属製のボールペン用カートリッジを用いる場合などにおいては、電子ペン本体部3Aの接続部分と同様に自在継手を用いる構成としてもよい。
【0075】
このようにして、電子ペン本体部3Aとボールペンのカートリッジ6とが取り付けられた外部筐体2Bと、外部筐体2Aとをジョイントパイプ2Cを介して接続することにより、
図5に示すように、外部筐体内に電子ペン本体部3A及びボールペンのカートリッジ6が収納された筆記具としての多機能ペン1Aが構成される。
【0076】
そして、上述したように構成される多機能ペン1Aにおいて、外部筐体2Aに対して、外部筐体2Bを、軸心を中心にして回転させると、外部筐体2Bの内部に設けられた三角カム2Gが回転する。これに応じて、押し出し棒21、22の後端側の端部に設けられているスライド部21A、22Aが、三角カム2Gの外周部上をスライド移動する。
【0077】
このため、三角カム2Gの回転によって、押し出し棒21、22の内の一方は、三角カム2Gの先端側(多機能ペン1Aのペン先側)に移動するようにされ、外部筐体2Aの開口2Aa側に押し出されて外部筐体2Aの先端の開口2Aaから突出する。同時に、押し出し棒21、22の内の他方は、三角カム2Gの底面側(多機能ペン1Aのペン先側と反対の後端側)に移動するようにされ、バネ21Bあるいは22Bにより、多機能ペン1Aの後端側に引き込まれて、外部筐体2A,2B内に収納される。
【0078】
図5に示した例の場合には、押し出し棒21が三角カム2Gのペン先側の先端に位置し、三角カム2Gにより押し出されて外部筐体2Aの先端の開口部から電子ペン本体部3Aのペン先側の部分が突出している場合を示している。したがって、
図5に示した例の場合には、押し出し棒22が三角カム2Gの後端側に位置し、バネ22Bにより引き込まれて、外部筐体2A,2B内にボールペンのカートリッジ6の全体が収納されている場合を示している。
【0079】
そして、
図5に示した例の場合、電子ペン本体部3Aは、後端側に球状凹部3Axが設けられている以外の部分は、
図3に示した実施の形態の電子ペン本体部3と同様の構成を有する。このため、電子ペン本体部3Aのフェライトコア32に巻回されたコイル31及びプリント基板36に設けられたキャパシタからなる共振回路が、位置検出装置のセンサとの間で電磁誘導により結合して、相互に信号を送受することができるようにされる。
【0080】
ここで、電子ペン本体部3A、あるいは、ボールペンのカートリッジ6が、外部筐体2Bの軸心を中心した回転に応じて回転する三角カム2Gの回転に応じて、外部筐体2Aのペン先の開口2Aa側に移動する場合を考える。この場合、電子ペン本体部3Aは、押し出し棒21の球状凸部21Cと、電子ペン本体部3Aの後端に設けられる球状凹部3Axとにより構成される自在継手によって、
図5に示すように、無理なく開口2Aa側に移動することが可能である。もちろん、ボールペンのカートリッジ6もその柔軟性により、無理なく開口2Aa側に移動することが可能である。
【0081】
ところが、電子ペン本体部3A、あるいは、ボールペンのカートリッジ6は、当該開口2Aaの斜めの方向から当該開口2Aaに向かって移動することになり、それぞれのペン先側の部分が外部筐体2Aと接触しやすくなる。しかしながら、
図5に示した多機能ペン1Aの場合にも、上述した実施の形態の筆記具である電子ペン1の場合と同様に、電子ペン本体部3Aの芯体34のペン先となる部分を除いた部分やフェライトコア32は、内部筐体33に保護されて、外部筐体2Aの開口2Aaから押し出される。この場合、芯体34やフェライトコア32が外部筐体2Aの開口2Aaの周囲部分に接触することはない。
【0082】
これにより、上述した実施の形態の電子ペン本体部3と同様に構成される電子ペン本体部3Aを、
図5に示した構成の回転式の多機能ペン1Aに適用した場合であっても、芯体34やフェライトコア32が内部筐体33で保護されるので、損傷したり、変形したりすることがないようにできる。しかも、芯体34が、外部筐体2Aの開口2Aaの周囲部分と接触した状態が生じることがないので、外部筐体2Aの開口2Aaの周囲部分が芯体34の摺動移動の障害になることがなく、適切に筆圧の検出も可能である。なお、ボールペンのカートリッジ6の場合には、そのペン先部61は従来から強固なものであり、外部筐体2Aと接触しても、損傷したり、変形したりする心配はない。
【0083】
[電子ペン本体部のノック式の多機能ペンへの適用]
図6は、上述した実施の形態のボールペンのカートリッジの構成とされた電子ペン本体部3と、通常のボールペンのカートリッジとを用いて構成するノック式の多機能ペン1Bの外観を示す構成図である。この
図6の例では、多機能ペン1Bの筐体2Bが透明の合成樹脂で構成されていて、その内部が透けて見える状態として示している。
【0084】
多機能ペン1Bの筐体2Bは、市販のノック式の多色ボールペンの筐体及びノック機構と同一の構成を備えている。市販のノック式の多色ボールペンの筐体及びノック機構をそのまま用いてもよい。この筐体2B内には、この例では、上述した実施の形態の電子ペン本体部3と、黒色のインクのボールペンカートリッジ3Bkと、赤色のインクのボールペンカートリッジ3Rdとが収納されている。電子ペン本体部3は、
図2(B)及び図(3)に示した形状のものであり、ボールペンカートリッジ3Bk、3Rdは、いずれも
図2(A)に示した形状のものである。
【0085】
多機能ペン1Bのノック機構には、電子ペン本体部3が嵌合されるノック棒42Eと、黒色のインクのボールペンカートリッジ3Bkが嵌合されるノック棒42Bkと、赤色のインクのボールペンカートリッジ3Rdが嵌合されるノック棒42Rdとが備えられている。ノック棒42Eが、ペン先側にスライド移動されることで、
図3(B)に示すように、電子ペン本体部3の芯体34のペン先と、内部筐体33の芯体ガイド部33b及びフェライト収納部33cからなる内部筐体のペン先側部が外部筐体2Bから突出する。これにより、フェライトコア32に巻回されたコイル31及びキャパシタからなる共振回路が、位置検出装置のセンサと電磁誘導により結合して、相互に信号を送受することができるようにされる。
【0086】
また、ノック棒42Bkが、ペン先側にスライド移動されることで、ボールペンカートリッジ3Bkのペン先部61が突出して黒色のインクで筆記が可能にされる。同様に、ノック棒42Rdが、ペン先側にスライド移動されることで、ボールペンカートリッジ3Rdのペン先部61が突出して赤色のインクで筆記が可能にされる。
【0087】
そして、
図6に示す多機能ペン1Bの場合、外部筐体2B内に、電子ペン本体部3とボールペンカートリッジ3Bk、3Rdとが収納される。電子ペン本体部3、ボールペンカートリッジ3Bk、3Rdのそれぞれは、多機能ペン1Bの外部筐体2B内において軸心を囲むように軸心の周囲に位置することになる。
【0088】
このため、電子ペン本体部3、ボールペンカートリッジ3Bk、3Rdのそれぞれは、ノック棒42E,42Bk、42Rdのスライド移動に応じて、外部筐体2Bの内部においては、斜めの方向から外部筐体2Bの開口2Baに向かって移動することになる。このため、電子ペン本体部3、ボールペンカートリッジ3Bk、3Rdのそれぞれは、そのペン先が外部筐体2Bと接触しやすくなる。
【0089】
しかし、
図6に示した多機能ペンの場合にも、上述した実施の形態の筆記具である電子ペン1の場合と同様に、電子ペン本体部3の芯体34やフェライトコア32は、内部筐体33に保護されて、外部筐体2Bの開口2Baの周囲部分に引っかかることなく移動し、突出する。これにより、上述した実施の形態の電子ペン本体部3を、
図6に示した構成のノック式の多機能ペンに適用した場合であっても、芯体34やフェライトコア32が内部筐体33により保護されるので、損傷したり、変形したりすることがないようにできる。しかも、芯体34が、外部筐体2Bの開口2Baの周囲部分と接触した状態が生じることがないので、外部筐体2Bの開口2Baの周囲部分が芯体34の摺動移動の障害になることがなく、適切に筆圧の検出も可能である。
【0090】
このように、上述した実施の形態の電子ペン本体部3は、市販のノック式の多色ボールペンの筐体に、ボールペンカートリッジの1つとして搭載することにより、当該多色のボールペンに電子ペンの機能を追加することができる。
【0091】
なお、
図6に示したノック式の多機能ペンの場合にも、電子ペン本体部3と、これに対応する押し出し棒との接続部分は、自在継手の構成することによって、電子ペン本体部3が開口2Baに向って斜めに移動する場合にも、大きな負荷がかかることなく移動させることができる。
【0092】
[アクティブ静電ペンへの適用]
上述した実施の形態の電子ペン本体部3,3Aは、いずれも電磁誘導方式のものであるものとして説明した。しかし、この発明は電磁誘導方式の電子ペンだけでなく、静電容量結合方式(以下、静電方式と記載する。)の電子ペンにも適用できる。
【0093】
図7は、この発明を適用した静電方式の電子ペン1Cについて説明するための図である。
図8は、この例の電子ペン1Cの回路構成図である。
図7と
図8において、同一構成要素は同一符号で示す。また、
図7、
図8に示すこの例の電子ペン1Cにおいても、
図3を用いて説明した実施の形態の電子ペン1及び電子ペン本体部3と同様に構成される部分には同じ参照符号を付し、その部分の詳細な説明については省略する。
【0094】
図7に示すように、この例の電子ペン1Cにおいても、基本的には上述した実施の形態の電磁誘導方式の電子ペン1の場合と同様の構成を有する。しかし、静電方式の電子ペンの場合には、芯体を通じて信号を位置検出装置に送信するため、芯体34Cは導電性を有するものである。具体的に、芯体34Cは、例えば、金属、カーボン材料を混ぜた合成樹脂などが用いられて構成される。
【0095】
そして、この例の場合には、
図7に示すように、芯体保持部A1の内側に、これに指し込まれる芯体34Cが接触するように電極A7が設けられる。この電極A7から導線A8が延伸され、プリント基板36に搭載されている発振回路に接続される。これにより、プリント基板36に搭載されている発振回路からの信号が、芯体34Cを通じて、位置検出装置へ送信される。なお、芯体保持部A1自体を、例えば、導電ゴムやカーボンを混ぜた樹脂等の導電性を有する材料により形成し、導電性を有するようにされた芯体保持部A1と発振回路とを導電線により接続する構成としてもよい。
【0096】
また、この例の電子ペン1Cの場合、フェライトコア32に巻回されたコイル31は、共振回路を構成するキャパシタではなく、プリント基板36に搭載された電源回路に接続される。これにより、コイル31は、外部からの電源の供給を受け付ける電源の供給端として用いられ、無接点充電機能を実現する。
【0097】
そして、この例の場合にも、コイル31、フェライトコア32、芯体34C、モールド部35A、筆圧検出部35B、嵌合部35C、接続端子部35D、電極A7及び導線A8、プリント基板36、基板保護パイプ37、図示しないパイプ蓋38、接続部材39が、内部筐体33内に収納されて、電子ペン本体部3Cが構成される。
【0098】
このようにして構成される電子ペン本体部3Cが、上述した実施の形態の電子ペン1の場合と同様に構成される外部筐体2内に収納されて電子ペン1Cが構成される。なお、この例の電子ペン1Cに用いる電子ペン本体部3Cの場合には、上述したように、プリント基板36に、発振回路やコイル31を供給端とする電源回路などが搭載されたものとなる。
【0099】
そして、この例の電子ペン1Cの回路構成は、
図8に示すようになる。
図8において、51は電気二重層キャパシタ、52は整流用ダイオード、53は電圧変換回路、54は、この例の信号発信回路を構成する発振回路である。
図8に示すように、この例では、コイル31の一端はダイオード52のアノードに接続され、他端は、接地(GND)されている。また、電気二重層キャパシタ51の一端はダイオード52のカソードに接続され、他端は、接地されている。
【0100】
電極芯を構成する芯体34Cは、発振回路54に対して電気的に接続される。また、
図3を用いて説明した電子ペン本体部3の場合と同様に、電子ペン本体部3Cに設けられる筆圧検出部35Bが発振回路54に対して電気的に接続されている。
【0101】
発振回路54は、筆圧検出部35Bの可変容量キャパシタの容量に応じて周波数が変化する信号を発生し、その発生した信号を芯体34Cに供給する。発振回路54からの信号は、芯体34Cの先端部よりその信号に基づく電界として放射される。発振回路54は、例えばコイルとキャパシタによる共振を利用したLC発振回路により構成される。この実施形態の電子ペン本体部3Cにより指示された座標位置を検出する位置検出装置では、この信号の周波数より芯体34Cに加えられた筆圧を求めることができる。
【0102】
電圧変換回路53は、電気二重層キャパシタ51に蓄えられた電圧を一定の電圧に変換して発振回路54の電源として供給する。この例の静電方式の電子ペン1Cを図示しない充電器に装着したときに、充電器が発生する交番磁界によりコイル31には誘導起電力が発生して、ダイオード52を介して電気二重層キャパシタ51を充電する。
【0103】
このように、この例の静電方式の電子ペン1Cは、発振回路54からの信号を、芯体34Cを通じて送信することにより、位置検出装置に対して位置を指示する。そして、この例の電子ペン本体部3Cの内部筐体33もまた、
図3(A)を用いて説明したように、テーパー状に形成された外側先端部33bxを備える芯体ガイド部33bと、フェライト収納部33cと、本体収納部33dとからなるものである。そして、内部筐体33に収納されて構成された電子ペン本体部3Cが、外部筐体2に収納されて電子ペン1Cが構成されている。
【0104】
そして、このように構成される静電方式の電子ペン1Cの場合にも、
図1を用いて説明したように、外部筐体2内に設けられるプッシュ式の機構により、使用時には電子ペン本体部3Cのペン先側の部分が、外部筐体の先端の開口2bから突出して使用状態となる。そして、この例の電子ペン1Cの場合にも、
図7に示すように、電子ペン本体部3Cの芯体34Cのペン先やフェライトコア32などは、内部筐体33に保護されて外部筐体2の開口2bの周囲部分に接触することはない。このため、電子ペン1Cの場合にも、芯体34Cのペン先やフェライトコア32が、外部筐体2の開口2bの周囲部分と接触することにより、損傷したり、変形したりすることがない。
【0105】
また、
図7に示すように、電子ペン本体部3Cのペン先側の部分が、外部筐体2の開口2bから突出している状態で、芯体34Cが外部筐体に接触することはない。このため、芯体34のペン先に加えられる筆圧に応じて、軸心方向に適切に摺動し、筆圧を適切かつ正確に検出できる。また、上述した実施の形態の電子ペン本体部3、3Aの場合と同様に、内部筐体33の芯体ガイド部33bの存在により、芯体34Cの軸心方向への摺動移動を適切に補助し、適切な筆圧の検出に資することができる。
【0106】
[静電方式の位置検出装置における位置検出および筆圧検出のための回路構成]
図9は、
図7、
図8を用いて説明した静電方式の電子ペン1Cからの信号を受け、センサ上の位置を検出すると共に、筆圧を検出するようにする位置検出装置700を説明するためのブロック図である。
【0107】
この実施形態の位置検出装置700は、
図9に示すように、センサ710と、このセンサ710に接続されるペン検出回路720とからなる。センサ710は、第1の導体群711、第2の導体群712を積層して形成されたものである。第1の導体群711は、例えば、横方向(X軸方向)に延在した複数の第1の導体を互いに所定間隔離して並列に、Y軸方向に配置したものである。
【0108】
また、第2の導体群712は、第1の導体に対して交差する方向、この例では直交する縦方向(Y軸方向)に延在した複数の第2の導体を互いに所定間隔離して並列に、X軸方向に配置したものである。
【0109】
このように、位置検出装置700のセンサ710では、第1の導体群711と第2の導体群712を交差させて形成したセンサパターンを用いて、静電方式の電子ペン本体部3Cが指示する位置を検出する構成を備えている。
【0110】
ペン検出回路720は、センサ710との入出力インターフェースとされる選択回路721と、増幅回路722と、バンドパスフィルタ723と、検波回路724と、サンプルホールド回路725と、AD(Analog to Digital)変換回路726と、制御回路727とからなる。
【0111】
選択回路721は、制御回路727からの制御信号に基づいて、第1の導体群711および第2の導体群712の中から1本の導体711Yまたは712Xを選択する。選択回路721により選択された導体は増幅回路722に接続され、静電方式の電子ペン本体部3Cからの信号が、選択された導体により検出されて増幅回路722により増幅される。この増幅回路722の出力はバンドパスフィルタ723に供給されて、静電方式の電子ペン本体部3Cから送信される信号の周波数の成分のみが抽出される。
【0112】
バンドパスフィルタ723の出力信号は検波回路724によって検波される。この検波回路724の出力信号はサンプルホールド回路725に供給されて、制御回路727からのサンプリング信号により、所定のタイミングでサンプルホールドされた後、AD変換回路726によってデジタル値に変換される。AD変換回路726からのデジタルデータは制御回路727によって読み取られ、処理される。
【0113】
制御回路727は、内部のROMに格納されたプログラムによって、サンプルホールド回路725、AD変換回路726、および選択回路721に、それぞれ制御信号を送出するように動作する。そして、制御回路727は、AD変換回路726からのデジタルデータから、静電方式の電子ペン1Cによって指示されたセンサ710上の位置座標を算出すると共に、筆圧検出部35Bで検出された筆圧を検出するようにする。
【0114】
このように、内部筐体33に収納して、ペン先側の部分の強度を高めると共に、筆圧がかけられる芯体34Cが適切に摺動移動できるようにして、適切に筆圧を検出できる静電方式の電子ペン本体部3Cを構成できる。そして、この電子ペン本体部3Cを外部筐体2に収納して、静電方式の電子ペン1Cを構成できる。
【0115】
なお、
図7、
図8を用いて説明した電子ペン1Cは、
図1を用いて説明した単機能のノック式の電子ペンの場合の例である。しかし、
図7を用いて説明したように構成される静電方式の電子ペン本体部3Cを用いて、
図5を用いて説明した回転式の多機能ペンや
図6を用いて説明したノック式の多機能ペンを実現することももちろんできる。なお、
図5を用いて説明した回転式の多機能ペンを実現する場合の電子ペン本体部3Cの後端側には、球状凸部21Cに嵌合する嵌合部を設けた構成にする必要がある。
【0116】
[電子ペン本体部の変形例]
図10は、この発明による筆記具の変形例について説明するための図であり、電子ペン本体部のペン先側の部分の断面図である。上述した実施の形態で説明した電子ペン本体部3,3A,3Cは、共振回路用として、或いは、電源の給電端としてのコイル31をフェライトコア32に巻回していた。このため、
図10(A)に示すように、フェライトコア32は、コイル31を巻回させることも考慮し、細型化する必要があった。
【0117】
このため、
図10(A)に示すように、コイル31を巻回したフェライトコア32に芯体34を挿通して構成したペン先側の部分を適切に保護するため、内部筐体33は、外部がテーパー形状とされや先端部分3bxを有する芯体ガイド部33bと、フェライト収納部33cと、本体収納部33dを有する構成とした。これにより、芯体34とフェライトコア32のペン先側の部分を適切に保護することができると共に、フェライトコア32を内部筐体33のペン先側に位置させて、センサにより近付けることができ、ノイズ耐性の強いものとすることができた。
【0118】
また、芯体ガイド部33bが存在することにより、芯体34のペン先を保護することができると共に、内部筐体33の先端の開口33a部分を出たり入ったりする芯体のペン先部分の移動を適切かつスムーズに行うようにできる。また、フェライト収納部33cの存在により、フェライトコア32をよりペン先側に位置させることがでる。また、外部筐体2の開口2bから電子ペン本体部のペン先側の部分が突出しても、フェライトコア32が直接に外部筐体2と接触することがないので、細型化されたフェライトコア32を適切に保護できる。
【0119】
また、静電方式の電子ペンを構成する場合、内部から電源の供給が可能であれば、フェライトコアやコイルを設ける必要はない。この場合には、
図10(B)に示すように、芯体ガイド部33xと本体収納部33yから構成される内部筐体33B内に芯体34xを収納した構成とすることができる。なお、内部筐体33B内の芯体34xの周囲に、いわゆるシールドを設け、芯体34xを保護するとともに、外部から芯体34xへのノイズの混入を防止する構成としてもよい。
【0120】
この場合にも、芯体34xのペン先を除いた部分を内部筐体33B内に収納できるので、電子ペン本体部のペン先側の部分が外部筐体2Xの開口2Xbから突出する場合にも、芯体34xを適切に保護できる。また、芯体ガイド部33xにより、内部筐体33Bの開口33Ba部分を出たり入ったりする芯体34xの軸心方向への摺動移動を補助することができ、また、本体収納部33yにより筆圧検出部やプリント基板等の部分も保護できる。
【0121】
また、上述した実施の形態では、内部筐体33は、電子ペン本体部の電子ペン機能を実現する部分の全体を収納するものとして説明したが、これに限るものではない。
図10(C)に示すように、コイル31、フェライトコア32、芯体34からなる電子ペン本体部の芯体側の所定の部分だけが収納される内部筐体33Mを用いるようにしてもよい。この場合、筆圧検出部やプリント基板などからなる部分は、別の内部筐体33Nに収納して保護するようにしてもよいし、また、特に別の内部筐体33Nは設けないようにしてもよい。少なくとも、電子ペン本体部の芯体34のペン先を除いた部分とフェライトコア32の部分とを保護できるように、内部筐体を設けるようにすればよい。
【0122】
[実施の形態の効果]
ボールペンのカートリッジ(替え芯)と同程度に細型化した電子ペン本体部を構成し、これを用いた筆記具を構成する場合にも、電子ペン本体部の芯体やフェライトコアからなるペン先側の強度が弱くなる部分の強度を適切に補強できる。特に、多機能ペンの構成とする場合に、電子ペン本体部が外部筐体内を外部筐体の開口に向って斜めに移動する場合にも、適切に電子ペン本体部のペン先部分を保護できる。
【0123】
また、筆圧に応じて摺動移動する芯体が、外部筐体などの干渉を受け、移動が阻害されてしまうといった不都合を発生させることがない。これにより、故障しにくく、高精度に機能し、使い勝手の良い、電子ペン機能を備えた筆記具を実現できる。
【0124】
[変形例]
なお、芯体、フェライトコアなどの太さや長さは、実現すべき電子ペンの機能に応じて適宜のものとすることができる。また、コイルの巻き数、コイルを巻回させるフェライトコアの部分なども適宜、調整することができる。
【0125】
また、上述した実施の形態では、電子ペン機能とボールペン機能を備ええた多機能ペン(
図5)と、電子ペン機能と2色のボールペン機能を備えた多機能ペン(
図6)について説明したが、これに限るものではない。2つ以上の機能を備えた種々の多機能ペンにこの発明を適用することができる。
【0126】
例えば、電磁誘導方式の電子ペン本体部と静電容量結合方式の電子ペン本体部とを搭載した多機能ペンを構成することができる。もちろん、電磁誘導方式の複数の電子ペン本体部を搭載した多機能ペンを構成したり、静電容量結合方式の複数の電子ペン本体部を搭載した多機能ペンを構成したりすることもできる。したがって、1以上の電子ペン本体部を搭載した筆記具、1以上の電子ペン本体部と、電子ペン本体部以外の1以上の筆記機能とを搭載した多機能ペン(筆記具)を構成することもできる。
【0127】
また、上述した実施の形態で説明した筆記具は、全て電子ペン本体部やボールペンカートリッジを繰り出すための繰り出し機構を備えていたが、これに限るものではない。繰り出し機能を備えないボールペンと同様に、初めから、外部筐体の先端に設けられた開口から、芯体のペン先と内部筐体のペン先側部が突出した状態とされる筆記具を構成することもできる。なお、内部筐体のペン先側部は、少なくとも芯体ガイド部からなる部分であり、フェライト収納部が存在する場合には、内部筐体のペン先側部にフェライ収納部を含めてもよい。
【0128】
また、上述した実施の形態では、芯体ガイド部33bの外側先端部33bxは、テーパー形状とされているものとして説明したが、これに限るものではない。すなわち、芯体ガイド部33bの外側先端部33bxはテーパー形状とされていなくてもよい。
【0129】
また、この発明は、
図10を用いて説明したように、芯体やフェライトコアの形状、フェライトコアへのコイルの巻回の有無などにより、内部筐体の形状等も種々に変更できる。要は、芯体のペン先となる部分以外の部分とフェライトコアからなるペン先側の細型化により強度が弱くなる可能性のある部分を、内部筐体により覆い、ペン先に加わる垂直方向、水平方向の衝撃等の外力から保護できるように構成する点が重要である。