(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6756531
(24)【登録日】2020年8月31日
(45)【発行日】2020年9月16日
(54)【発明の名称】内燃機関の制御方法及び制御装置
(51)【国際特許分類】
F02D 17/02 20060101AFI20200907BHJP
F02D 21/08 20060101ALI20200907BHJP
F02D 13/02 20060101ALI20200907BHJP
F02D 41/02 20060101ALI20200907BHJP
F02D 41/04 20060101ALI20200907BHJP
F02M 26/06 20160101ALI20200907BHJP
F02M 26/17 20160101ALI20200907BHJP
F02B 37/00 20060101ALI20200907BHJP
F02B 37/12 20060101ALI20200907BHJP
F02B 37/18 20060101ALI20200907BHJP
F02M 35/10 20060101ALI20200907BHJP
F02D 9/02 20060101ALI20200907BHJP
【FI】
F02D17/02 U
F02D17/02 H
F02D17/02 M
F02D17/02 Q
F02D21/08 301A
F02D21/08 311A
F02D21/08 311B
F02D13/02 J
F02D41/02
F02D41/04
F02D13/02 B
F02M26/06 321
F02M26/17
F02B37/00 302F
F02B37/12 302B
F02B37/18 A
F02M35/10 311E
F02D9/02 C
F02D9/02 S
F02D9/02 311
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-134680(P2016-134680)
(22)【出願日】2016年7月7日
(65)【公開番号】特開2018-3782(P2018-3782A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年5月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】寺山 和宏
【審査官】
丸山 裕樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭59−192866(JP,A)
【文献】
特開2016−065465(JP,A)
【文献】
特開昭59−108841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 9/00−29/06
F02D 41/00−45/00
F02B 33/00−41/10
F02B 47/08−47/10
F02M 26/00−26/74
F02M 35/00−35/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偶数個の気筒と、
排気通路と吸気通路とを接続し、排気ガスの一部であるEGRガスを吸気通路へ還流するEGR通路と、
このEGR通路を開閉するEGR制御弁と、を備え、
機関運転状態に応じて設定される目標EGR率が低下するEGR低下時には、上記目標EGR率の低下に応じてEGR制御弁を閉じる方向に制御する内燃機関の制御方法であって、
燃焼順序が奇数番目の気筒群又は偶数番目の気筒群の一方の気筒群に、上記EGRガスを含まない新気を供給可能な新気供給装置を備え、
上記新気供給装置は、上記EGR通路が吸気通路へ接続するEGR導入口を経由せずに上記一方の気筒群へ新気を導入する新気供給通路と、この新気供給通路を開閉する新気流量制御弁と、を有し、
上記一方の気筒群に対して上記新気供給装置から新気を供給して燃焼を継続させる一方、他方の気筒群では燃焼を停止させることを特徴とする内燃機関の制御方法。
【請求項2】
上記EGR低下時には、上記新気流量制御弁を開く方向へ制御することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御方法。
【請求項3】
上記EGR導入口よりも下流側の吸気通路に設けられて吸気を過給するコンプレッサーを備えた過給機と、
上記コンプレッサーよりも下流側の吸気通路に設けられ、この吸気通路を開閉するスロットル弁と、を備え、
上記EGR低下時には、上記スロットル弁を開く方向へ制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の制御方法。
【請求項4】
上記EGR低下時に、EGR率が所定値以下に低下すると、上記他方の気筒群の燃焼を再開するとともに、上記スロットル弁を閉じる方向に制御し、かつ、上記新気流量制御弁を閉じる方向へ制御することを特徴とする請求項3に記載の内燃機関の制御方法。
【請求項5】
上記過給機が、排気通路に設けられ、排気エネルギーにより駆動されて上記コンプレッサーを回転駆動するタービンを備え、
上記タービンをバイパスするバイパス通路に、過給圧を調整するウェイストゲートバルブが設けられ、
上記EGR低下時に、加速要求を検知すると、上記他方の気筒群の燃焼を再開するとともに、この加速要求に応じて上記スロットル弁の開度を制御しつつ、上記ウェイストゲートバルブを閉じる方向へ制御し、かつ、上記新気流量制御弁を閉じる方向へ制御することを特徴とする請求項3又は4に記載の内燃機関の制御方法。
【請求項6】
上記新気供給通路を経由して上記一方の気筒群へ新気を導入する新気導入経路と、
上記EGR通路から吸気通路を経て上記他方の気筒群へEGRガスを導入するEGR導入経路と、の連通・遮断を切り換える切換弁を有し、
上記EGR低下時には、上記切換弁により上記新気導入経路と上記EGR導入経路とを遮断することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の内燃機関の制御方法。
【請求項7】
吸気弁もしくは排気弁のバルブタイミングを変更可能なバルブタイミング変更装置を備え、
上記EGR低下時には、上記一方の気筒群に対して上記新気供給装置から新気を供給して燃焼を継続させる一方、他方の気筒群では燃焼を停止させるとともに、バルブオーバーラップが大きくなる方向に上記バルブタイミング変更装置を制御することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の内燃機関の制御方法。
【請求項8】
偶数個の気筒と、
排気通路と吸気通路とを接続し、排気ガスの一部であるEGRガスを吸気通路へ還流するEGR通路と、
このEGR通路を開閉するEGR制御弁と、
燃焼順序が奇数番目の気筒群又は偶数番目の気筒群の一方の気筒群に、上記EGRガスを含まない新気を供給可能な新気供給装置と、
機関運転状態に応じて設定される目標EGR率が低下するEGR低下時には、上記目標EGR率の低下に応じてEGR制御弁を閉じる方向に制御し、かつ、上記一方の気筒群に対して上記新気供給装置から新気を供給して燃焼を継続させる一方、他方の気筒群では燃焼を停止させる制御部と、を備え、
上記新気供給装置は、上記EGR通路が吸気通路へ接続するEGR導入口を経由せずに上記一方の気筒群へ新気を導入する新気供給通路と、この新気供給通路を開閉する新気流量制御弁と、を有することを特徴とする内燃機関の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用の内燃機関、特にガソリン内燃機関では、昨今、過給機により排気量を低減させることにより燃費性能の向上を図り、出力性能を両立させる、いわゆるダウンサイジングターボ内燃機関が主流になりつつある。このような内燃機関において、排気ガスの一部をEGRガスとして吸気通路へ還流するEGR装置を用い、ポンプロスの改善を図ると共に高負荷域でのノッキングを改善することにより燃費を向上させる技術が知られている。特に近年では、燃費向上の観点からEGR率(新気量に対するEGRガス量の割合)の増加の要求はますます高まり、幅広い機関運転領域(機関回転数・負荷領域)で高いEGR率を得るための技術が要求されている。
【0003】
ここで、例えば減速時のようにEGRガスを供給しているEGR領域からEGRガスを供給しない非EGR領域へと移行する際に、目標EGR率の低下に伴いEGR制御弁を閉じる方向に制御すると、既に吸気系に残存するEGRガスが燃焼室へ導入されてしまうことから、燃焼安定性が一時的に悪化するおそれがある。
【0004】
そこで特許文献1には、各気筒の燃焼室へ導入されるEGRガス濃度に高低差が生じるように気流制御弁を設け、減速時には、EGR濃度が濃い#3,#4気筒の燃焼を停止し、EGR濃度が薄い#1,#2気筒の燃焼を継続することで、EGRガスの影響による燃焼安定性の悪化を抑制する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−162172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
直列4気筒の内燃機関における点火順序は、振動抑制を考慮して、一般的には#1,#3,#4,#2の順とされる。ここで、上記特許文献1に記載の技術では、点火順序が連続する2つの#1,#2気筒は燃焼を継続し、同じく点火順序が連続する2つの#3,#4気筒は燃焼を停止しているために、1サイクル中のトルク変動が大きくなり、運転性が悪化する。また、燃焼を継続する#1,#2気筒には、濃度が薄いながらもEGRガスが導入されることから、やはりEGRガスの影響によって燃焼が不安定となる可能性がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、目標EGR率が低下するEGR低下時に、吸気通路に残存するEGRガスの影響により燃焼が不安定となることを確実に抑制しつつ燃焼を継続し、かつ、幾つかの気筒の燃焼を停止せさつつもトルク変動を最小限に抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
燃焼順序が奇数番目の気筒群又は偶数番目の気筒群の一方の気筒群に、上記EGRガスを含まない新気を供給可能な新気供給装置を備える。上記新気供給装置は、EGR通路が吸気通路へ接続するEGR導入口を経由せずに上記一方の気筒群へ新気を導入する新気供給通路
と、この新気供給通路を開閉する新気流量制御弁と、を有している。機関運転状態に応じて設定される目標EGR率が低下するEGR低下時には、上記目標EGR率の低下に応じてEGR制御弁を閉じる方向に制御する。この際、上記一方の気筒群に対して上記新気供給通路から新気を供給して燃焼を継続させる一方、他方の気筒群では燃焼を停止させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、例えば減速時のように目標EGR率が低下するEGR低下時に、吸気通路内に多くのEGRガスが残存していると燃焼が不安定となり易いが、このようなEGR低下時に、燃焼を継続する一方の気筒群に対して新気供給装置によりEGRガスを含まない新気を導入することで、燃焼安定性を確保することができる。
【0010】
その一方で、燃焼を停止する他方の気筒群による掃気によって、吸気通路内に残存するEGRガスを速やかに排出することができるため、その後に燃焼を再開する際に、燃焼安定性を確保することができる。
【0011】
また、燃焼順序が奇数番目もしくは偶数番目の気筒群で燃焼を行なうようにしたので、燃焼間隔が一定となり、燃焼を停止する気筒を設けているにもかかわらず、トルク変動を最小限に抑制することができる。
【0012】
更に、燃焼を継続する一方の気筒群には、EGRガスが含まれない新気を新気供給装置を介して十分に供給することができるために、燃焼を停止する他方の気筒群によるトルク低下分を十分に補うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施例に係る制御方法及び制御装置が適用される内燃機関のシステム構成を簡略的に示し、切換弁を閉じている状態を示す構成図。
【
図2】同じく上記第1実施例の内燃機関のシステム構成を簡略的に示し、切換弁を開いている状態を示す構成図。
【
図3】上記第1実施例の制御の流れを示すフローチャート。
【
図4】上記第1実施例のEGR低下時の態様を示すタイミングチャート。
【
図5】本発明の第2実施例に係る制御方法及び制御装置が適用される内燃機関のシステム構成を簡略的に示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図示実施例により本発明を説明する。
図1は、本発明の第1実施例に係る制御装置及び制御方法が適用された内燃機関のシステム構成を簡略的に示している。
【0015】
この内燃機関10は、直列4気筒型の火花点火式ガソリン内燃機関であり、各気筒の燃焼室11には吸気通路12と排気通路13とが接続している。吸気通路12は、所定容積を有する吸気コレクタ14に接続する4本の吸気ブランチ通路16を経由して各気筒の吸気ポートへ接続し、排気通路13は、排気マニホールド17の4本の排気ブランチ通路18を経由して各気筒の排気ポートへ接続している。
【0016】
この内燃機関10には、ターボ式の過給機20が設けられている。この過給機20は、排気通路13に設けられたタービン21と、吸気通路12に設けられたコンプレッサー22と、が一本のシャフト23上に背中合わせに同軸上に設けられ、排気エネルギーによりタービン21がコンプレッサー22を回転駆動することにより過給が行なわれる。排気通路13にはタービン21をバイパスするバイパス通路24が設けられ、このバイパス通路24に、過給圧を調整するウェイストゲートバルブ25が設けられている。
【0017】
また、この内燃機関10には、排気ガスの一部をEGRガスとして吸気通路12へ還流するEGR装置(外部EGR)が設けられている。このEGR装置は、吸気通路12と排気通路13とを接続するEGR通路27と、このEGR通路27に設けられ、EGR通路27を開閉することによって、新気に対するEGRガスの割合であるEGR率及びEGRガスの流量を制御するEGR制御弁28と、EGR通路27内を流れるEGRガスを冷却するEGRクーラー29と、が設けられている。
【0018】
また、このEGR装置は、EGR通路27が吸気通路12に接続するEGR導入口30がコンプレッサー22よりも上流側に配置された、いわゆるロープレッシャー型のEGR装置である。EGR通路27が排気通路13に接続するEGR取出口31は、タービン21の下流側に設けられた三元触媒等の触媒32よりも更に下流側に配置されている。
【0019】
吸気通路12には、タービン21よりも下流側に、吸入空気量を調整する電制のスロットル弁33と、吸気を冷却するインタークーラー34と、が配設されている。
【0020】
この内燃機関10の点火順序は、#1,#3,#4,#2の順となっている。そして本実施例では、燃焼順序が奇数番目の奇数気筒群#1,#4と偶数番目の偶数気筒群#2,#3のうち、一方の気筒群である奇数気筒群#1,#4に、EGRガスを含まない新気を供給可能な新気供給装置を設けている。
【0021】
具体的には、この新気供給装置は、EGR導入口30を経由することなく、奇数気筒群#1,#4の各気筒へ新気を導入する新気供給通路41と、この新気供給通路41を開閉する新気流量制御弁42と、を備えている。新気供給通路41は、その上流側で、EGR導入口30よりも上流側の吸気通路12に接続するとともに、下流側で、インタークーラー34よりも下流側に位置する吸気コレクタ14に接続している。
【0022】
この吸気コレクタ14には、その一方側14A(
図1の右側)に新気供給通路41と奇数気筒群#1,#4の吸気ブランチ通路16とが接続し、他方側14B(
図1の左側)に吸気通路12と偶数気筒群#2,#3の吸気ブランチ通路16とが接続しており、その中間に、一方側14Aと他方側14Bとの連通・遮断を切換える切換弁43が設けられている。
【0023】
図1に示すように、切換弁43を閉じているとき、吸気コレクタ14の内部空間が一方側14Aと他方側14Bとに仕切られた形となる。従って、新気供給通路41から吸気コレクタ14の一方側14Aへ供給されるEGRガスを含まない新気は、吸気ブランチ通路16を経由して奇数気筒群#1,#4へ直接的に導入され、これら一連の経路が図中の破線で示す新気導入経路44を構成している。また、EGR通路27が接続する吸気通路12から吸気コレクタ14の他方側14Bへ供給されたEGRガスを含む吸気ガスは、吸気ブランチ通路16を経由して偶数気筒群#2,#3へ直接的に導入され、これら一連の経路が図中の破線で示すEGR導入経路45を構成している。つまり、切換弁43が閉じているとき、新気導入経路44とEGR導入経路45とが遮断される。
【0024】
一方、
図2に示すように、切換弁43を閉いているときには、吸気コレクタ14内の一方側14Aと他方側14Bとが連通する形となる。従って、EGR通路27が接続する吸気通路12から吸気コレクタ14の他方側14Bへ供給されたEGRガスを含む吸気ガスは、全ての吸気ブランチ通路16を経由して全ての気筒へほぼ均等に供給される。
【0025】
また、この内燃機関10には、吸気弁(もしくは排気弁)のバルブタイミングを変更可能なバルブタイミング変更装置51を備えている。制御部50は、各種制御を記憶及び実行可能であり、図示していないが、クランク角センサやエアフローメーター等の機関運転状態を検出する各種センサの検出信号に基づいて、上述したスロットル弁33,ウェイストゲートバルブ25,新気流量制御弁42,EGR制御弁28,切換弁43及びバルブタイミング変更装置51のアクチュエータ等へ制御信号を出力し、その動作を制御する。
【0026】
図3は、制御部40により実行される制御の流れを示すフローチャートである。ステップS11では、目標EGR率を読み込む。この目標EGR率は、吸入空気量に対するEGRガス(外部EGR)の目標流量の割合に相当し、機関回転数と機関負荷とに基づいて、予め設定されている目標EGR率設定マップを参照して設定される。
【0027】
ステップS12では、目標EGR率が、所定のしきい値以上低下するEGR低下(過渡)状態であるか否かを判定する。例えば、所定期間前の目標EGR率に対して今回の目標EGR率がしきい値以上低下しているかで判定する。なお、EGR低下状態の判定はこれに限らず、例えば、EGR領域での運転中に減速状態となると、目標EGR率が低下してEGR領域から非EGR領域へ移行する過渡状態であると判断して、EGR低下状態であると判定するようにしても良い。
【0028】
ステップS12において、EGR低下状態であると判定されると、本実施例の要部をなすEGR低下時の制御処理(ステップS13〜ステップS18)が実行される。先ずステップS13では、燃焼順序が偶数の偶数気筒群#2,#3の燃料噴射を停止して、燃焼を停止する。ステップS14では、スロットル弁33を開方向へ制御する。具体的にはスロットル弁33を全開とする。これにより、燃焼を停止する偶数気筒群#2,#3の掃気を促進して、吸気通路12内に残存するEGRガスを速やかに排気通路13へ排出し、燃焼再開時の燃焼安定性を向上させることができる。
【0029】
ステップS15では、切換弁43により新気導入経路44とEGR導入経路45とを遮断する。この結果、燃焼を継続する奇数気筒群#1,#4には、新気導入経路44を経由してEGRガスが含まれない新気のみが導入されることとなり、吸気通路12内に残存するEGRガスは、EGR導入経路45を通して燃焼を停止する偶数気筒群#2,#3へと供給される。
【0030】
ステップS16では、新気流量制御弁42を開方向に制御する。具体的には、燃焼を停止する偶数気筒群のトルク低下を補うように、新気流量制御弁42を開方向に制御して、奇数気筒群#1,#4に導入される新気量を増加させる。
【0031】
ステップS17では、過給状態であるか否かを判定する。過給状態である場合には、バルブタイミング変更装置51によりバルブオーバーラップを増大させる。これによって、燃焼を停止している偶数気筒群#2,#3の掃気を促進し、吸気通路12内に残存するEGRガスを速やかに排出させている。
【0032】
ステップS19及びステップS20は、EGR低下状態における制御処理(ステップS13〜ステップS18)の終了条件である。ステップS19では、実EGR率が所定値未満まで低下したか否かを判定する。実EGR率は、例えば機関回転数や機関負荷等の機関運転状態に基づいて推定される。実EGR率が所定値未満となると、吸気通路12内に残存するEGRガスが十分に少なくなり、安定した燃焼を行なうことができると判断して、ステップS21以降へ進み、EGR低下時の制御の終了処理を実行する。また、ステップS20では、加速要求が有るか否かを判定する。例えば、運転者によりアクセルペダルが踏み込み操作された場合に加速要求有と判定される。ステップS20で加速要求有と判定された場合にも、加速要求に応じたトルクが得られるように、ステップS21以降へ進み、EGR低下時の制御の終了処理を実行する。
【0033】
ステップS21では、燃焼を停止している偶数気筒群#2,#3の燃料噴射を再開して、燃焼を再開する。ステップS22では、掃気のために全開としていたスロットル弁33を閉方向に制御する。つまり、目標吸入空気量が得られるようにスロットル弁33を制御する。ステップS23では、切換弁43を開として、新気導入経路44とEGR導入経路45とを連通させる。これにより、吸気通路12から吸気コレクタ14内に導入された吸気が全ての気筒にほぼ均等に供給される。そしてステップS24では、新気流量制御弁42を閉じて、本ルーチンを終了する。
【0034】
図4は、このような本実施例の制御を適用した場合のEGR低下時におけるタイミングチャートである。部分負荷での、いわゆるR/L走行状態から運転者がアクセルペダルの開度を減少させて(
図4(A)参照)、減速状態へ移行すると(時刻t1)、
図4(G)に示すように目標EGR率が低下してEGR低下状態となり、上述したEGR低下時の制御(ステップS13〜S18)が実行される。すなわち、
図4(B)に示すように切換弁43を閉じて新気導入経路44とEGR導入経路45とを遮断するとともに、
図4(F)に示すように偶数気筒群#2,#3の燃料カットフラグを立てて燃焼を停止する。この際、
図4(E)に示すようにスロットル弁33を全開として、燃焼を停止している偶数気筒群#2,#3に対して掃気を促進することで、EGR導入経路45内に残存するEGRガスを速やかに排出させることができる。
【0035】
また、EGR低下時(t1)に、新気流量制御弁42を開き方向に制御することで、新気導入経路44を通して奇数気筒群#1,#4に導入される新気空気量を増加させており、これによって、燃焼を停止している偶数気筒群#2,#3分のトルク低下を補うことができる。
【0036】
目標EGR率が低下するEGR低下時には、吸気通路12に残存するEGRガスの影響により、吸入空気量の減少に対して実EGR率が一時的に上昇し、
図4(H),(I)の破線の特性で示すように、実EGR率が失火限界を超えてしまい、燃焼安定性が悪化するおそれがある。これに対して本実施例では、上記の制御を実施することで、奇数気筒群#1,#4には新気導入経路44を通してEGRガスが含まれない新気が導入されることから、
図4(H)の実線の特性で示すように、EGR低下時点t1から実EGR率が速やかに低下していき、実EGR率が失火限界を超えて上昇するおそれがないので、安定した燃焼を実現できる。
【0037】
また、
図4(I)に示すように、偶数気筒群#2,#3では、燃焼を停止しているので、内部EGR(排気ポートから燃焼室へ逆流する排気ガス)が増加することがなく、掃気により新気導入経路44内に残存するEGRガスが排出されることで、実EGR率は速やかに低下していく。従って、燃焼を再開する際の燃焼安定性を向上することができる。
【0038】
次に、
図4を参照して本発明の第2実施例について説明する。なお、上記第1実施例と同じ構成要素には同じ参照符号を付して重複する説明を省略し、異なる部分について主に説明する。
【0039】
吸気通路12は、排気通路13と同様、吸気マニホールド15の4本の吸気ブランチ通路16を介して各気筒の燃焼室11に接続している。そして、新気供給通路41は、新気流量制御弁42の下流側で二股状に分岐し、この分岐部41Aで奇数気筒群を構成する#1気筒と#4気筒の吸気ブランチ通路16にそれぞれ接続している。従って、EGR低下時に新気流量制御弁42を開くと、新気供給通路41及びその分岐部41Aから#1気筒と#4気筒の吸気ブランチ通路16を経て、EGRガスを含まない新気が奇数気筒群#1,#4の燃焼室11内へ導入される。
【0040】
なお、この第2実施例では、新気導入経路とEGR導入経路とを遮断する切換弁を設けていないので、EGR低下時に、EGRガスを含む吸気の一部が、燃焼を継続している奇数気筒群#1,#4にも供給される可能性はある。しかしながら、奇数気筒群#1,#4には新気供給通路41を通して多くの新気が導入されるために、吸気通路12から吸気マニホールド15へ供給されるEGRガスを含む吸気は、その大半が燃焼を停止している偶数気筒群#2,#3へと供給されることとなり、奇数気筒群#1,#4に供給されるEGRガスはわずかなものとなる。
【0041】
次に、上述した第1,第2実施例の特徴的な構成及び作用効果について、以下に列記する。
【0042】
[1]偶数個の気筒と、排気通路13と吸気通路12とを接続し、排気ガスの一部であるEGRガスを吸気通路12へ還流するEGR通路27と、このEGR通路27を開閉するEGR制御弁28と、燃焼順序が奇数番目の気筒群又は偶数番目の気筒群の一方の気筒群に、EGRガスを含まない新気を供給可能な新気供給装置と、を備える。機関運転状態に応じて設定される目標EGR率が低下するEGR低下時には、目標EGR率の低下に応じてEGR制御弁28を閉じる方向に制御する。このとき、上記一方の気筒群に対して上記新気供給装置から新気を供給して燃焼を継続させる一方、他方の気筒群では燃焼を停止する。
【0043】
例えば過給状態からの減速時に、目標EGR率が低下してEGR領域から非EGR領域へ移行する過渡期(EGR低下時)には、吸気通路12内に多くのEGRガスが残存しているために、燃焼が不安定となり易いが、このようなEGR低下時に、燃焼を継続する一方の気筒群に対して新気供給装置によりEGRガスを含まない新気を導入することで、燃焼安定性を確保することができる。
【0044】
その一方で、燃焼を停止する他方の気筒群による掃気によって、吸気通路12内に残存するEGRガスを速やかに排出することができる。従って、燃焼再開後の燃焼安定性を確実に確保することができる。
【0045】
また、燃焼順序が奇数番目もしくは偶数番目の気筒群のいずれかで燃焼を行なうようにしているので、燃焼間隔が一定となり、燃焼を停止する気筒を設けているにもかかわらず、トルク変動を最小限に抑制することができる。
【0046】
更に、燃焼を停止する気筒群によるトルク低下分を補うように、燃焼を継続する気筒群には略2倍の空気量が必要となるが、新気供給通路41を経由して新気を導入することができるために、十分な新気空気量を確保することが可能である。しかも、このように新気空気量の増大によって、内部EGRが低減し、その分、外部EGR率を高めに設定することが可能となり、燃費性能の更なる向上を図ることができる。
【0047】
[2]上記の新気供給装置は、例えば上記実施例のように、EGR通路27が吸気通路12へ接続するEGR導入口30を経由せずに一方の気筒群へ新気を導入する新気供給通路41と、この新気供給通路41を開閉する新気流量制御弁42と、を有している。このように、本来の吸気通路12とは別の通路である新気供給通路41を設けることで、EGR低下時に、燃焼を継続する気筒群に対し、新気供給通路41を通してEGRガスを含まない新気を十分に供給することができる。
【0048】
[3]具体的には、EGR低下時には、新気流量制御弁42を開く方向へ制御することで、EGR低下時に限り、燃焼を継続する気筒群に対してEGRガスを含まない新気を十分に供給することが可能となる。
【0049】
[4]EGR導入口30よりも下流側の吸気通路12に設けられて吸気を過給するコンプレッサー22を備えた過給機20と、上記コンプレッサー22よりも下流側の吸気通路12に設けられ、この吸気通路12を開閉する電制のスロットル弁33と、を備える構成の場合、上記EGR低下時には、上記スロットル弁33を開く方向へ制御する。
【0050】
このように、EGR低下時にスロットル弁33を開く方向へ制御することで、燃焼を停止する気筒群での掃気が促進されて、吸気通路12内に残存するEGRガスを速やかに排出し、その後に燃焼を再開するときの燃焼安定性を確保することができる。
【0051】
このような掃気によるEGRガス排出効果を得るために、燃焼を停止する気筒群についても、ピストンストローク運動停止や吸排気弁停止を行なわないようにしている。
【0052】
[5]EGR低下時に、EGR率が所定値以下に低下すると、吸気通路12内に残存するEGRガスが十分に排出されたと判断して、通常制御に切り換える。つまり、燃焼を停止している気筒群の燃焼を再開し、スロットル弁33を閉じる方向に制御するとともに、新気流量制御弁42を閉じる方向へ制御する。
【0053】
[6]あるいは、EGR低下時に、加速要求を検知した場合にも、加速要求に応じたトルクが得られるように、通常運転へ切り換える。つまり、燃焼を停止している気筒群の燃焼を再開し、加速要求に応じてスロットル弁33の開度を制御しつつ、ウェイストゲートバルブ25を閉じる方向へ制御し、かつ、新気流量制御弁42を閉じる方向へ制御する。
【0054】
[7]上記第1実施例においては、新気供給通路41を経由して一方の気筒群へ新気を導入する新気導入経路44と、EGR通路27よりも下流側の吸気通路12を経て他方の気筒群へEGRガスを導入するEGR導入経路45と、の連通・遮断を切り換える切換弁43を有している。そしてEGR低下時には、切換弁43により新気導入経路44とEGR導入経路45とを遮断する。
【0055】
この切換弁43による遮断により、新気導入経路44内にEGRガスが混入することを更に確実に抑制し、燃焼を継続する気筒群の燃焼安定性を更に向上することができる。
【0056】
[8]吸気弁もしくは排気弁のバルブタイミングを変更可能なバルブタイミング変更装置51を備える構成の場合、EGR低下時の、特に過給状態では、バルブオーバーラップが大きくなる方向にバルブタイミング変更装置51を制御する。これによって、燃焼を停止する気筒の掃気を促進し、吸気通路12内に残存するEGRガスをより速やかに排出することができる。
【0057】
以上のように本発明を具体的な実施例に基づいて説明してきたが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、種々の変形・変更を含むものである。例えば、排気弁のバルブタイミングを変更可能なバルブタイミング変更装置を用いる構成としても良い。また、直列4気筒型の内燃機関に限らず、V型6気筒やV型8気筒等の他の気筒数や形式の内燃機関にも本発明を同様に適用することができる。
【0058】
更に、新気供給通路41に逆止弁を設けて、燃焼室11側から吸気通路12へ向かう方向の逆流を確実に防止するようにしても良い。
【0059】
また、上記実施例とは逆に、燃焼順序が偶数番目の偶数気筒群では燃焼を停止し、燃焼順序が奇数番目の奇数気筒群では燃焼を継続する構成としても良い。
【符号の説明】
【0060】
10…内燃機関
11…燃焼室
12…吸気通路
13…排気通路
14…吸気コレクタ
20…過給機
22…コンプレッサー
25…ウェイストゲートバルブ
27…EGR通路(EGR装置)
28…EGR制御弁(EGR装置)
30…EGR
導入口
33…スロットル弁
41…新気供給通路(新気供給装置)
42…新気流量制御弁(新気供給装置)
43…切換弁
50…制御部
51…バルブタイミング変更装置