(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6756548
(24)【登録日】2020年8月31日
(45)【発行日】2020年9月16日
(54)【発明の名称】車両用バックドア
(51)【国際特許分類】
B60J 5/10 20060101AFI20200907BHJP
【FI】
B60J5/10 Z
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-170267(P2016-170267)
(22)【出願日】2016年8月31日
(65)【公開番号】特開2018-34695(P2018-34695A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2019年6月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】390026538
【氏名又は名称】ダイキョーニシカワ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松岡 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】濱中 信行
(72)【発明者】
【氏名】濱端 智之
(72)【発明者】
【氏名】藤木 昇
【審査官】
上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−159037(JP,A)
【文献】
特開2015−182478(JP,A)
【文献】
特開2013−082235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体後方開口(C)を閉じた状態で前側となる樹脂製インナーパネル(10)と、後側となる樹脂製アウターパネル(6)とを互いに対向させた状態で接合してなり、該樹脂製インナーパネル(10)と該樹脂製アウターパネル(6)との間に内部空間(7)が設けられたドア本体(1a)を備え、
上記ドア本体(1a)は、上側部分を構成し窓部(3)が設けられたアッパー部(1b)と、該アッパー部(1b)よりも下側に位置するロア部(1c)とを有し、
上記樹脂製インナーパネル(10)のうち上記ロア部(1c)の下縁部に沿った部分の内部空間(7)側に、車体本体の後端に設けられた車体後方開口(C)の下縁部と着脱可能に係合する係合装置を取り付けるための金属製の係合装置取付ブラケット(14)が取り付けられ、
上記アッパー部(1b)のうち上記窓部(3)よりも上側に位置する部分に上記車体後方開口(C)の上縁部に固定されるヒンジ部(12)が取り付けられ、該ヒンジ部(12)と連結した金属製の補強サイドブラケット(13)が、上記樹脂製インナーパネル(10)のうちドア本体(1a)の外周に沿ってアッパー部(1b)の内部空間(7)からロア部(1c)の内部空間(7)に到り設けられており、上記ヒンジ部(12)を中心として上下方向に回動することで、上記車体後方開口(C)を開閉可能な車両用バックドア(1)であって、
上記係合装置取付ブラケット(14)と上記補強サイドブラケット(13)とが上記ロア部(1c)側の内部空間(7)において線条体(15)で繋がっており、
上記樹脂製インナーパネル(10)の下部には、上記係合装置取付ブラケット(14)と上記補強サイドブラケット(13)との間に前側をカバーパネル(11)で覆われる後方に凹んだ凹部(20)を有し、
上記凹部(20)にスリット(23)で囲まれた保持片(24)を有し上記線条体(15)を保持する線条体保持部(21)が一体に設けられ、
上記線条体(15)が上記スリット(23)の縁と上記保持片(24)との間に挟まれて上記線条体保持部(21)以外の部分では上記樹脂製インナーパネル(10)及び上記該樹脂製アウターパネル(6)との間にそれぞれ隙間を確保して保持されている
ことを特徴とする車両用バックドア。
【請求項2】
車体後方開口(C)を閉じた状態で前側となる樹脂製インナーパネル(10)と、後側となる樹脂製アウターパネル(6)とを互いに対向させた状態で接合してなり、該樹脂製インナーパネル(10)と該樹脂製アウターパネル(6)との間に内部空間(7)が設けられたドア本体(1a)を備え、
上記ドア本体(1a)は、上側部分を構成し窓部(3)が設けられたアッパー部(1b)と、該アッパー部(1b)よりも下側に位置するロア部(1c)とを有し、
上記樹脂製インナーパネル(10)のうち上記ロア部(1c)の下縁部に沿った部分の内部空間(7)側に、車体本体の後端に設けられた車体後方開口(C)の下縁部と着脱可能に係合する係合装置を取り付けるための金属製の係合装置取付ブラケット(14)が取り付けられ、
上記アッパー部(1b)のうち上記窓部(3)よりも上側に位置する部分に上記車体後方開口(C)の上縁部に固定されるヒンジ部(12)が取り付けられ、該ヒンジ部(12)と連結した金属製の補強サイドブラケット(13)が、上記樹脂製インナーパネル(10)のうちドア本体(1a)の外周に沿ってアッパー部(1b)の内部空間(7)からロア部(1c)の内部空間(7)に到り設けられており、上記ヒンジ部(12)を中心として上下方向に回動することで、上記車体後方開口(C)を開閉可能な車両用バックドア(1)であって、
上記係合装置取付ブラケット(14)と上記補強サイドブラケット(13)とが線条体(15)で繋がっており、
上記樹脂製インナーパネル(10)の下部には、上記係合装置取付ブラケット(14)と上記補強サイドブラケット(13)との間に前側をカバーパネル(11)で覆われる後方に凹んだ凹部(20)を有し、
上記凹部(20)にスリット(23)で囲まれた保持片(24)を有し上記線条体(15)を保持する線条体保持部(21)が一体に設けられ、
上記線条体(15)が上記スリット(23)の縁と上記保持片(24)との間に挟まれて保持され、
上記線条体(15)は、上記係合装置取付ブラケット(14)と上記補強サイドブラケット(13)との間で、上記車体後方開口(C)を閉じた状態で前後方向から見て直線状に配置されており、
上記線条体保持部(21)が上記凹部(20)よりも更に後方に凹んだ座部(22)に設けられており、
上記線条体(15)が上記座部(22)の後面(22a)から外れた位置にあるときに弛みが生じ、
上記線条体(15)が上記座部(22)の後面(22a)に乗った位置にあるときに、該線条体(15)が上記座部(22)によって後方に引っ張られて弛みがなくなるように上記座部(22)の後面(22a)の位置が設定されている
ことを特徴とする車両用バックドア。
【請求項3】
車体後方開口(C)を閉じた状態で前側となる樹脂製インナーパネル(10)と、後側となる樹脂製アウターパネル(6)とを互いに対向させた状態で接合してなり、該樹脂製インナーパネル(10)と該樹脂製アウターパネル(6)との間に内部空間(7)が設けられたドア本体(1a)を備え、
上記ドア本体(1a)は、上側部分を構成し窓部(3)が設けられたアッパー部(1b)と、該アッパー部(1b)よりも下側に位置するロア部(1c)とを有し、
上記樹脂製インナーパネル(10)のうち上記ロア部(1c)の下縁部に沿った部分の内部空間(7)側に、車体本体の後端に設けられた車体後方開口(C)の下縁部と着脱可能に係合する係合装置を取り付けるための金属製の係合装置取付ブラケット(14)が取り付けられ、
上記アッパー部(1b)のうち上記窓部(3)よりも上側に位置する部分に上記車体後方開口(C)の上縁部に固定されるヒンジ部(12)が取り付けられ、該ヒンジ部(12)と連結した金属製の補強サイドブラケット(13)が、上記樹脂製インナーパネル(10)のうちドア本体(1a)の外周に沿ってアッパー部(1b)の内部空間(7)からロア部(1c)の内部空間(7)に到り設けられており、上記ヒンジ部(12)を中心として上下方向に回動することで、上記車体後方開口(C)を開閉可能な車両用バックドア(1)であって、
上記係合装置取付ブラケット(14)と上記補強サイドブラケット(13)とが線条体(15)で繋がっており、
上記樹脂製インナーパネル(10)の下部には、上記係合装置取付ブラケット(14)と上記補強サイドブラケット(13)との間に前側をカバーパネル(11)で覆われる後方に凹んだ凹部(20)を有し、
上記凹部(20)にスリット(23)で囲まれた保持片(24)を有し上記線条体(15)を保持する線条体保持部(21)が一体に設けられ、
上記線条体(15)が上記スリット(23)の縁と上記保持片(24)との間に挟まれて保持され、
上記保持片(24)の開放端が上記線条体(15)の延びる方向と交差する方向でかつ上記アッパー部(1b)側を向いている
ことを特徴とする車両用バックドア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製インナーパネルと樹脂製アウターパネルとを接合した車両用バックドアに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、バックドアを、インナパネルと、このインナパネルの左右側縁部に嵌合して補強するレインフォースと、レインフォースが取り付けられた状態でインナパネルが取り付けられるアウタパネルと、インナパネル及びアウタパネルの外周部に沿って設置された左右一対の飛散防止用ワイヤとで構成することが知られている(例えば、特許文献1参照)。このバックドアでは、バックドアの縁部に沿って設けたアウタパネルとインナパネルとで形成された溝部に飛散防止用ワイヤを這わせ、ネジ状の張力調整部で張力を調整できるようにしている。これにより、後突などによってバックドアが割れたときでも意図せず開かないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−159037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のものでは、飛散防止用ワイヤを張っても振動して溝部に接触して音が生じやすいという問題がある。また、複雑な形状の溝部に飛散防止用ワイヤを嵌め込んでいかなければならず、組付が面倒である。更に、ネジを回転させて張力を調整する必要があり、その操作が面倒である。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、振動を生じにくくしながら、容易に線条体を適切に張れるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、この発明では、樹脂製インナーパネルの凹部の後側に設けた保持片で線条体を適切に保持するようにした。
【0007】
具体的には、第1の発明では、車体後方開口を閉じた状態で前側となる樹脂製インナーパネルと、後側となる樹脂製アウターパネルとを互いに対向させた状態で接合してなり、該樹脂製インナーパネルと該樹脂製アウターパネルとの間に内部空間が設けられたドア本体を備え、
上記ドア本体は、上側部分を構成し窓部が設けられたアッパー部と、該アッパー部よりも下側に位置するロア部とを有し、
上記樹脂製インナーパネルのうち上記ロア部の下縁部に沿った部分の内部空間側に、車体本体の後端に設けられた車体後方開口の下縁部と着脱可能に係合する係合装置を取り付けるための金属製の係合装置取付ブラケットが取り付けられ、
上記アッパー部のうち上記窓部よりも上側に位置する部分に上記車体後方開口の上縁部に固定されるヒンジ部が取り付けられ、該ヒンジ部と連結した金属製の補強サイドブラケットが、上記樹脂製インナーパネルのうちドア本体の外周に沿ってアッパー部の内部空間からロア部の内部空間に到り設けられており、上記ヒンジ部を中心として上下方向に回動することで、上記車体後方開口を開閉可能な車両用バックドアを対象とする。
【0008】
上記車両用バックドアは、
上記係合装置取付ブラケットと上記補強サイドブラケットとが線条体で繋がっており、
上記樹脂製インナーパネルの下部には、上記係合装置取付ブラケットと上記補強サイドブラケットとの間に前側をカバーパネルで覆われる後方に凹んだ凹部を有し、
上記凹部にスリットで囲まれた保持片を有し上記線条体を保持する線条体保持部が一体に設けられ、
上記線条体が上記スリットの縁と上記保持片との間に挟まれて保持されている。
【0009】
上記の構成によると、線条体が内部空間に設けた線条体保持部によって保持されるので、溝部などに這わせる必要がなくて組付が容易である上に、適度に張られて振動しにくくなって音が発生しない。このため、線条体の回りにウレタンなどを巻く必要がない。また、線条体保持部は、カバーパネルで覆われる凹部に形成されて外観に現れないので、見映えがよい。ここで、線条体は、例えば、針金などの単線、金属繊維や樹脂繊維をより合わせた撚り線などで、ワイヤ、ワイヤロープ、ケーブル等を含む。また前側及び後側は、車体本体の後端に設けられた車体後方開口を車両用バックドアで覆った状態での前側及び後側をいう。
【0010】
第2の発明では、第1の発明において、
上記線条体は、上記係合装置取付ブラケットと上記補強サイドブラケットとの間で、上記車体後方開口を閉じた状態で前後方向から見て直線状に配置されており、
上記線条体保持部が上記凹部よりも更に後方に凹んだ座部に設けられており、
上記線条体が上記座部の後面から外れた位置にあるときに弛みが生じ、
上記線条体が上記座部の後面に乗った位置にあるときに、該線条体が上記座部によって後方に引っ張られて弛みがなくなるように上記座部の後面の位置が設定されている。
【0011】
上記の構成によると、直線状に線条体を張ることができるので、溝部などに這わせる必要もなく、容易に弛みを防ぐことができる。また、張力を保持できるので、振動による音が発生しにくい。
【0012】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、
上記保持片の開放端が上記線条体の延びる方向と交差する方向でかつ上記アッパー部側を向いている。
【0013】
上記の構成によると、樹脂製のドア本体を開け閉めするときに線条体がアッパー部と反対側に拡がる方向に移動しようとしても、開放端が反対側を向いているので、保持片から外れない。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、ドア本体の内部空間に設けた係合装置取付ブラケットと補強サイドブラケットとを線条体で繋ぎ、樹脂製インナーパネルの下部に係合装置取付ブラケットと補強サイドブラケットとの間に後方に凹んだ凹部を設け、この凹部にスリットで囲まれた保持片を形成し、線条体をスリットの縁と保持片との間に挟んで保持するようにしたことにより、振動を生じにくくしながら、容易に線条体を適切に張ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】樹脂製アウターパネルと窓部とを取り除いて見た車両用バックドアの背面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る車両用バックドアを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1〜
図4は本発明の実施形態の車両用バックドア1を示し、この車両用バックドア1は、樹脂製のドア本体前側の樹脂製インナーパネル10と後側の樹脂製アウターパネル6とを互いに対向させた状態で接合させたドア本体1aを備えている。なお、前側及び後側は、普通自動車、軽自動車などの車体本体の後端に設けられた車体後方開口C(
図2に符号のみ示す)を車両用バックドア1で覆った状態での前側及び後側をいう。樹脂製インナーパネル10と樹脂製アウターパネル6との接合方法は、接着、嵌合、溶着、ボルト締結など特に限定されない。樹脂製インナーパネル10及び樹脂製アウターパネル6は、強度や剛性に優れた樹脂成形品よりなる。ドア本体1aは、上側部分を構成し窓部3が設けられたアッパー部1bと、このアッパー部1bよりも下側に位置するロア部1cとを有する。例えば、ロア部1cには、ナンバープレート取付部5が設けられている。樹脂製アウターパネル6は、アッパー部1b側の上側アウターパネル6bと、ロア部1c側の下側アウターパネル6aとを備え、両者の間に窓部3が配置されている。また、
図4に示すように、インナーパネル10と下側アウターパネル6aとの間に内部空間7が設けられている。このようにドア本体1aの大部分を比較的高強度で見映えのよい樹脂成形品で形成することで、軽量化を図りながら外観をよくしている。
【0018】
一方、
図1及び
図4に示すように、樹脂製インナーパネル10のうちロア部1cの下縁部に沿った部分の内部空間7側に、車体後方開口Cの下縁部と着脱可能に係合する係合装置(図示せず)を取り付けるための金属製の係合装置取付ブラケット14が取り付けられている。係合装置取付ブラケット14の形状は特に制限されない。
【0019】
アッパー部1bのうち窓部3よりも上側に位置する部分に車体後方開口Cの上縁部に固定される、例えば左右一対のヒンジ部12が取り付けられている。各ヒンジ部12には、金属製の補強サイドブラケット13がボルト等により連結されている。この補強サイドブラケット13は、樹脂製インナーパネル10のうちドア本体1aの外周に沿ってアッパー部1bの内部空間7からロア部1cの内部空間7に到り設けられている。詳しくは図示しないが、補強サイドブラケット13は、樹脂製インナーパネル10に設けたボス部にボルト等により固定される鋼板等よりなる。また、図示しないが、剛性の高い補強サイドブラケット13には、車両用バックドア1の開閉を補助するダンパの取付部が設けられている。補強サイドブラケット13により、主として窓部3のあるアッパー部1bの剛性が向上している。車両用バックドア1は、上記ヒンジ部12を中心として上下方向に回動することで、車体後方開口Cを開閉可能となっている。
【0020】
そして、
図1及び
図4に示すように、係合装置取付ブラケット14と補強サイドブラケット13とが線条体としてのワイヤ15で繋がっている。線条体としては、例えば、針金、金属繊維や樹脂繊維などをより合わせたワイヤロープ、ケーブル等でもよく、単線でも撚り線でもよい。また、材質は金属でもよいし、樹脂繊維等が含まれていてもよい。ワイヤ15の両端に設けた環状部15aに通されたワイヤ取付ビス16が、係合装置取付ブラケット14及び補強サイドブラケット13のネジ孔(図示せず)にそれぞれ締結されている。
【0021】
樹脂製インナーパネル10の下部における、係合装置取付ブラケット14と補強サイドブラケット13との間には、後方に凹んだ凹部20が形成されている。凹部20は、
図3に示すように、後方側から見れば直方体状に膨出した形状となっている。この凹部20は、前側を例えば樹脂成形品よりなるカバーパネル11で覆われるようになっている。メンテナンス作業時等には、このカバーパネル11を開くことができる。
【0022】
凹部20の底面(後面)には、ワイヤ15を保持する、線条体保持部としてのワイヤ保持部21が一体に設けられている。具体的には、ワイヤ保持部21は、凹部20よりも更に後方に凹んだ座部22に設けられている。
図3に示すように、後方から見れば、この座部22は、後方へ膨出する直方体状となっている。
図5に拡大して示すように、ワイヤ保持部21の左右内側かつ上側が面取りされ、ワイヤ15が取り付けられるときに当接するワイヤ当接部22bが設けられている。
図6に示すように、ワイヤ当接部22bは、ほぼ垂直に形成されているがワイヤ15を引き上げやすいようにかつ型抜き時にアンダーとならない程度に傾斜していてもよい。ワイヤ保持部21は、前側からカバーパネル11で覆われる凹部20の底面に形成され、後側は下側アウターパネル6aに覆われて外観に現れないので、見映えがよい。
【0023】
図5に示すように、座部22は、スリット23で囲まれた保持片24を有する。保持片24の形状は、本実施形態のように三方がスリット23で囲まれた略矩形状(舌状)のものでもよく、先端側が丸まっていてもよい。そして、
図5〜
図7に示すように、ワイヤ15がスリット23の縁と保持片24との間に挟まれて保持されている。保持片24の開放端(先端)側は、先端に向かって後方へ傾斜する傾斜面24aが形成されており、ワイヤ15が引き上げられてきたときにワイヤ15を保持しやすくなっている。
【0024】
図1に示すように、ワイヤ15は、係合装置取付ブラケット14と補強サイドブラケット13との間で、車体後方開口Cを閉じた状態で前後方向から見て直線状に配置されており、前方から見て逆「ハ」の字状に配置されている。
【0025】
次に、本実施形態に係る車両用バックドア1に係るワイヤ15の取付手順について説明する。
【0026】
まず、一対のワイヤ15の両端に設けた環状部15aに通されたワイヤ取付ビス16を係合装置取付ブラケット14及び補強サイドブラケット13のネジ孔にそれぞれ締結する。このとき、
図1、
図4〜
図7に想像線で示すように、それぞれのワイヤ15が座部22から外れた位置にあり、ワイヤ15には弛みが生じている。このため、ワイヤ取付ビス16の締結作業は容易となっている。ただし、ワイヤ15が引き上げ前に弛みすぎていると引き上げ後の張力を維持できないので、ワイヤ当接部22bにワイヤ15が当接した状態である程度の張力は必要である。
【0027】
次いで、
図6に示すように、ワイヤ15を矢印の方向に引き上げる。座部後面22aに乗せる。このとき、傾斜面24aが設けられているので、スリット23側へワイヤ15が滑らかに誘導される。この位置にあるときに、ワイヤ15が座部22によって車体後方開口Cを閉じた状態で見たときに後方に引っ張られて弛みがなくなるように座部後面22aの位置が設定されている。すなわち、
図6に示すように、補強サイドブラケット13と係合装置取付ブラケット14とを結ぶ最短距離にある位置をY地点とすると、ワイヤ当接部22bにあるときのワイヤ15の中心からY地点までの距離をXとすれば、ワイヤ15が引っ張られて適度な張力を維持した状態で直線状となるのために高さZが確保されている。なお、高さZは、座部22を前側から見た場合には、深さZとなる。樹脂製インナーパネル10は、樹脂成形品であるので複雑な形状でも成形でき、この高さZは成形時に容易に調整できるが、張力を確保するには、少なくともZ>Xである必要がある。本実施形態では、座部22は、凹部20の奥側に凹ませて形成され、しかも保持片24は、スリット23で囲まれて形成されているので、スライド型を設けることなく射出成形型で成形できる。本実施形態では、直線状にワイヤ15を張ることができるので、容易に弛みを防ぐことができる。
【0028】
ワイヤ15を引き上げると、
図1に示すように、車体後方開口Cを閉じた状態で見て保持片24の開放端がワイヤ15の延びる方向と交差する方向でかつアッパー部1b側を向いている。具体的には
図1において、左右内側かつ上側に開放端が向いている。このため、樹脂製のドア本体1aを開け閉めするときにドア本体1aが撓んでワイヤ15がアッパー部1bと反対側、すなわち、下方かつ左右外側に拡がる方向に移動しようとしても、その移動方向とは保持片24の開放端が反対側を向いているので、ワイヤ15が保持片24から外れない。
【0029】
そして、ワイヤ15がワイヤ保持部21によって確実に保持されるので、振動しにくく音が発生しない。
【0030】
したがって、本実施形態に係る車両用バックドア1によると、係合装置取付ブラケット14と補強サイドブラケット13とをワイヤ15で繋ぎ、樹脂製インナーパネル10のロア部1cに係合装置取付ブラケット14と補強サイドブラケット13との間に後方に凹んだ凹部20を設け、この凹部20にスリット23で囲まれた保持片24を形成し、ワイヤ15をスリット23の縁と保持片24との間に挟んで保持するようにしたことにより、振動を生じにくくしながら、容易にワイヤ15を適切に張ることができる。
【0031】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0032】
1 車両用バックドア
1a ドア本体
1b アッパー部
1c ロア部
3 窓部
6 樹脂製アウターパネル
6a 下側アウターパネル
6b 上側アウターパネル
7 内部空間
10 樹脂製インナーパネル
11 カバーパネル
12 ヒンジ部
13 補強サイドブラケット
14 係合装置取付ブラケット
15 ワイヤ(線条体)
15a 環状部
20 凹部
21 ワイヤ保持部(線条体保持部)
22 座部
23 スリット
24 保持片
24a 傾斜面