特許第6756552号(P6756552)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6756552
(24)【登録日】2020年8月31日
(45)【発行日】2020年9月16日
(54)【発明の名称】エアタービン駆動スピンドル
(51)【国際特許分類】
   F16C 32/06 20060101AFI20200907BHJP
   F16C 27/06 20060101ALI20200907BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20200907BHJP
【FI】
   F16C32/06 Z
   F16C27/06 Z
   F16F15/08 E
【請求項の数】7
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-175347(P2016-175347)
(22)【出願日】2016年9月8日
(65)【公開番号】特開2018-40435(P2018-40435A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2019年8月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀内 照悦
(72)【発明者】
【氏名】小和田 智之
【審査官】 日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭53−92595(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103244559(CN,A)
【文献】 特開2000−60870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 32/06,27/06
F16F 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
前記回転軸を回転自在に支持しているハウジングアッシと、
前記回転軸および前記ハウジングアッシを収容する筐体部と、
前記ハウジングアッシと前記筐体部との間に配置される複数のOリングとを備え、
前記回転軸は、ラジアル方向に延びるスラスト板部と、前記ラジアル方向に交差するスラスト方向に延びる軸部とを含み、
前記回転軸を駆動するための駆動用給気ノズルと、
前記筐体部に含まれ、前記駆動用給気ノズルの前記スラスト方向の前側の開口部を塞ぐように取り付けられた筐体固定部材とをさらに備え、
前記複数のOリングには、前記ラジアル方向に関して前記ハウジングアッシと前記筐体部との間に配置され前記ハウジングアッシと前記筐体部との双方に接する少なくとも1つ以上の第1のOリングと、前記スラスト方向に関して前記ハウジングアッシと前記筐体固定部材との間に配置され前記ハウジングアッシと前記筐体固定部材との双方に接する少なくとも1つ以上の第2のOリングとが含まれ、
前記軸部と前記ハウジングアッシとの間に配置されたラジアル軸受と、前記スラスト板部と前記ハウジングアッシとの間に配置されたスラスト軸受とをさらに備える、エアタービン駆動スピンドル。
【請求項2】
回転軸と、
前記回転軸を回転自在に支持しているハウジングアッシと、
前記回転軸および前記ハウジングアッシを収容する筐体部と、
前記ハウジングアッシと前記筐体部との間に配置される複数のOリングとを備え、
前記回転軸は、ラジアル方向に延びるスラスト板部と、前記ラジアル方向に交差するスラスト方向に延びる軸部とを含み、
前記複数のOリングには、前記ラジアル方向に関して前記ハウジングアッシと前記筐体部との間に配置され前記ハウジングアッシと前記筐体部との双方に接する少なくとも1つ以上の第1のOリングと、前記スラスト方向に関して前記ハウジングアッシと前記筐体部との間に配置され前記ハウジングアッシと前記筐体部との双方に接する少なくとも1つ以上の第2のOリングとが含まれ、
前記軸部と前記ハウジングアッシとの間に配置されたラジアル軸受と、前記スラスト板部と前記ハウジングアッシとの間に配置されたスラスト軸受とをさらに備え、
前記筐体部は、前記ハウジングアッシの外周面を囲むダンパリングと前記ダンパリングの外周面を囲む筐体とを含み、
前記ダンパリングの前記ハウジングアッシに面する第1の面が配置される側および前記ハウジングアッシに面する側と反対側の前記筐体に面する第2の面が配置される側の双方に前記第1のOリングが配置される、エアタービン駆動スピンドル。
【請求項3】
前記筐体部には筐体固定部材が含まれ、
前記第2のOリングは前記筐体固定部材および前記ハウジングアッシの双方と接する、請求項2に記載のエアタービン駆動スピンドル。
【請求項4】
回転軸と、
前記回転軸を回転自在に支持しているハウジングアッシと、
前記回転軸および前記ハウジングアッシを収容する筐体部と、
前記ハウジングアッシと前記筐体部との間に配置される複数のOリングとを備え、
前記回転軸は、ラジアル方向に延びるスラスト板部と、前記ラジアル方向に交差するスラスト方向に延びる軸部とを含み、
前記複数のOリングのうち少なくとも1つは、前記ラジアル方向に関して前記ハウジングアッシと前記筐体部との間に配置され、前記ハウジングアッシと前記筐体部との双方と、前記ラジアル方向と前記スラスト方向との双方向にて接し、
前記軸部と前記ハウジングアッシとの間に配置されたラジアル軸受と、前記スラスト板部と前記ハウジングアッシとの間に配置されたスラスト軸受とをさらに備え
前記筐体部は、前記ハウジングアッシの外周面を囲むダンパリングと前記ダンパリングの外周面を囲む筐体とを含み、
前記ダンパリングの前記ハウジングアッシに面する第1の面および前記ハウジングアッシに面する側と反対側の前記筐体に面する第2の面には前記ラジアル方向に彫られた凹部が形成されており、
前記ハウジングアッシおよび前記筐体の表面のうち前記凹部と前記ラジアル方向に関して対向する部分には前記ラジアル方向に彫られた位置固定溝が形成されており、
前記第1および第2の面の前記凹部内に、前記位置固定溝と接触するように、前記複数のOリングが配置される、エアタービン駆動スピンドル。
【請求項5】
前記ハウジングアッシと前記筐体部とのいずれか一方の表面には前記ラジアル方向に彫られた凹部が形成されており、
前記ハウジングアッシと前記筐体部とのいずれか他方の表面のうち前記凹部と前記ラジアル方向に関して対向する部分には前記ラジアル方向に彫られた位置固定溝が形成されており、
前記凹部内に、前記位置固定溝と接触するように、前記複数のOリングが配置される、請求項4に記載のエアタービン駆動スピンドル。
【請求項6】
前記複数のOリングは、前記スラスト方向に関して互いに間隔をあけて4つ配置される、請求項4または5に記載のエアタービン駆動スピンドル。
【請求項7】
前記4つのOリングのうち、前記スラスト方向に関して外側に配置される前記Oリングと前記スラスト方向に関して内側に配置される前記Oリングとは異なる材質により形成される、請求項に記載のエアタービン駆動スピンドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電塗装機などに適用されるエアタービン駆動スピンドルに関し、特に回転軸を回転自在に保持しているハウジングアッシがOリングを用いて筐体に支持されているエアタービン駆動スピンドルに関する。
【背景技術】
【0002】
静電塗装機用のエアタービン駆動スピンドルは、回転軸の先端にカップが取り付けられた状態で、当該回転軸が1分間あたり10000回転以上の回転速度で運転する。回転軸の先端に取り付けられたカップにアンバランスがある場合には、そのアンバランスの大きさに応じて、回転軸の1回転あたり1回の振動(1次振動)が発生する。そのような振動は静電塗装機全体に悪影響を及ぼし塗装品質を低下させるばかりか、エアタービン駆動スピンドルに含まれる静圧軸受の性能にも悪影響を及ぼし、エアタービン駆動スピンドルに異常振動を発生させる場合がある。
【0003】
このため静電塗装機用のエアタービン駆動スピンドルは振動を吸収する機構が必要であり、ハウジングアッシ全体をOリングで支持してこれを覆うカバーと接触しないようにすることにより振動を減衰させる構造となっている。
【0004】
ここで、OリングはそのR方向に関して隣接する部材を支持しているが、そのスラスト方向に関しては他の部材を支持していない。これはエアタービン駆動スピンドルは通常の使用状態ではスラスト方向に作用する力は小さいため、Oリングと部品との摩擦で標準的な位置に保持されるため、部品同士が押し付けられて振動が大きくなってしまうような問題はなかったためである。しかし、塗装時の回転速度が高速である場合や、塗料を霧化するためのカップのサイズが大きくなれば、タービン流量が増加して、排気空間の圧力が高まることにより、エアタービン駆動スピンドルに含まれる軸受ユニットにはスラスト方向に当該圧力が加わり、軸受ユニットがスラスト方向前方に押される。これによりエアタービン駆動スピンドルを構成する部品であるたとえばハウジングとカバーとが互いに接触し、ハウジングアッシの振動がカバーにも伝わってしまうという問題が発生することがあった。
【0005】
そこで、スラスト方向についてもラジアル方向と同様に、Oリングが隣接する部材を支持する構成とすることが好ましい。このようにすれば、ハウジングアッシにどのような方向から力が加わっても、部品同士の接触を抑制し、振動の伝播を抑制することができる。このようにスラスト方向とラジアル方向との双方向に関して隣接する部品間を支持するOリングを有する構成は、たとえば特開2008−138850号公報(特許文献1)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−138850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特開2008−138850号公報に開示の静圧気体軸受スピンドルにおいては、ラジアル方向ばかりでなくスラスト方向に関しても、Oリングに隣接するハウジングと軸受スリーブとを支持している。しかし特開2008−138850号公報の静圧気体軸受スピンドルはラジアル軸受のみを有しスラスト軸受を有さないため、ラジアル軸受のみをOリングで支えた場合には、スラスト軸受との同期がとれず、振動の減衰性能が低下してしまう危険がある。
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、振動の減衰性能を向上させ、かつ振動の伝達を抑制することが可能なエアタービン駆動スピンドルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一の実施の形態に係るエアタービン駆動スピンドルは、回転軸と、回転軸を回転自在に支持しているハウジングアッシと、回転軸およびハウジングアッシを収容する筐体部と、ハウジングアッシと筐体部との間に配置される複数のOリングとを備える。回転軸は、ラジアル方向に延びるスラスト板部と、ラジアル方向に交差するスラスト方向に延びる軸部とを含む。回転軸を駆動するための駆動用給気ノズルと、筐体部に含まれ、駆動用給気ノズルのスラスト方向の前側の開口部を塞ぐように取り付けられた筐体固定部材とをさらに備える。複数のOリングには、ラジアル方向に関してハウジングアッシと筐体部との間に配置されハウジングアッシと筐体部との双方に接する少なくとも1つ以上の第1のOリングと、スラスト方向に関してハウジングアッシと筐体固定部材との間に配置されハウジングアッシと筐体固定部材との双方に接する少なくとも1つ以上の第2のOリングとが含まれる。軸部とハウジングアッシとの間に配置されたラジアル軸受と、スラスト板部とハウジングアッシとの間に配置されたスラスト軸受とをさらに備える。
本発明の一の実施の形態に係るエアタービン駆動スピンドルは、回転軸と、回転軸を回転自在に支持しているハウジングアッシと、回転軸およびハウジングアッシを収容する筐体部と、ハウジングアッシと筐体部との間に配置される複数のOリングとを備える。回転軸は、ラジアル方向に延びるスラスト板部と、ラジアル方向に交差するスラスト方向に延びる軸部とを含む。複数のOリングには、ラジアル方向に関してハウジングアッシと筐体部との間に配置されハウジングアッシと筐体部との双方に接する少なくとも1つ以上の第1のOリングと、スラスト方向に関してハウジングアッシと筐体部との間に配置されハウジングアッシと筐体部との双方に接する少なくとも1つ以上の第2のOリングとが含まれる。軸部とハウジングアッシとの間に配置されたラジアル軸受と、スラスト板部とハウジングアッシとの間に配置されたスラスト軸受とをさらに備える。筐体部は、ハウジングアッシの外周面を囲むダンパリングとダンパリングの外周面を囲む筐体とを含む。ダンパリングのハウジングアッシに面する第1の面が配置される側およびハウジングアッシに面する側と反対側の筐体に面する第2の面が配置される側の双方に第1のOリングが配置される。
本発明の一の実施の形態に係るエアタービン駆動スピンドルは、回転軸と、回転軸を回転自在に支持しているハウジングアッシと、回転軸およびハウジングアッシを収容する筐体部と、ハウジングアッシと筐体部との間に配置される複数のOリングとを備える。回転軸は、ラジアル方向に延びるスラスト板部と、ラジアル方向に交差するスラスト方向に延びる軸部とを含む。複数のOリングには、ラジアル方向に関してハウジングアッシと筐体部との間に配置されハウジングアッシと筐体部との双方に接する少なくとも1つ以上の第1のOリングと、スラスト方向に関してハウジングアッシと筐体部との間に配置されハウジングアッシと筐体部との双方に接する少なくとも1つ以上の第2のOリングとが含まれる。軸部とハウジングアッシとの間に配置されたラジアル軸受と、スラスト板部とハウジングアッシとの間に配置されたスラスト軸受とをさらに備える。
【0010】
本発明の他の実施の形態に係るエアタービン駆動スピンドルは、回転軸と、回転軸を回転自在に支持しているハウジングアッシと、回転軸およびハウジングアッシを収容する筐体部と、ハウジングアッシと筐体部との間に配置される複数のOリングとを備える。回転軸は、ラジアル方向に延びるスラスト板部と、ラジアル方向に交差するスラスト方向に延びる軸部とを含む。複数のOリングのうち少なくとも1つは、ラジアル方向に関してハウジングアッシと筐体部との間に配置され、ハウジングアッシと筐体部との双方と、ラジアル方向とスラスト方向との双方向にて接する。軸部とハウジングアッシとの間に配置されたラジアル軸受と、スラスト板部とハウジングアッシとの間に配置されたスラスト軸受とをさらに備える。筐体部は、ハウジングアッシの外周面を囲むダンパリングとダンパリングの外周面を囲む筐体とを含む。ダンパリングのハウジングアッシに面する第1の面およびハウジングアッシに面する側と反対側の筐体に面する第2の面にはラジアル方向に彫られた凹部が形成されている。ハウジングアッシおよび筐体の表面のうち凹部とラジアル方向に関して対向する部分にはラジアル方向に彫られた位置固定溝が形成されている。第1および第2の面の凹部内に、位置固定溝と接触するように、複数のOリングが配置される。
本発明の他の実施の形態に係るエアタービン駆動スピンドルは、回転軸と、回転軸を回転自在に支持しているハウジングアッシと、回転軸およびハウジングアッシを収容する筐体部と、ハウジングアッシと筐体部との間に配置される複数のOリングとを備える。回転軸は、ラジアル方向に延びるスラスト板部と、ラジアル方向に交差するスラスト方向に延びる軸部とを含む。複数のOリングのうち少なくとも1つは、ラジアル方向に関してハウジングアッシと筐体部との間に配置され、ハウジングアッシと筐体部との双方と、ラジアル方向とスラスト方向との双方向にて接する。軸部とハウジングアッシとの間に配置されたラジアル軸受と、スラスト板部とハウジングアッシとの間に配置されたスラスト軸受とをさらに備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一の実施の形態によれば、ラジアル軸受とスラスト軸受とを備え、かつラジアル方向にてハウジングアッシおよび筐体部の双方と接する第1のOリングとスラスト方向にてハウジングアッシおよび筐体部の双方と接する第2のOリングとを有することにより、振動の減衰性能を向上させ、かつ振動の伝達を抑制することができる。
【0012】
本発明の他の実施の形態によれば、ラジアル軸受とスラスト軸受とを備え、かつOリングがラジアル方向とスラスト方向との双方向にてハウジングアッシおよび筐体部の双方と接する構成であることにより、振動の減衰性能を向上させ、かつ振動の伝達を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態1に係るエアタービン駆動スピンドルの断面図である。
図2図1中の点線で囲まれた領域S1の拡大断面図である。
図3図2中の点線で囲まれた領域S2の拡大断面図である。
図4図2中の点線で囲まれた領域S3の変形例を示す拡大断面図である。
図5】比較例に係るエアタービン駆動スピンドルの断面図である。
図6】実施の形態2に係るエアタービン駆動スピンドルの断面図である。
図7】実施の形態3に係るエアタービン駆動スピンドルの断面図である。
図8】実施の形態4に係るエアタービン駆動スピンドルの断面図である。
図9】実施の形態5に係るエアタービン駆動スピンドルの断面図である。
図10】実施の形態6に係るエアタービン駆動スピンドルの断面図である。
図11】実施の形態7に係るエアタービン駆動スピンドルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、説明の便宜のため、各図にR方向すなわちラジアル方向、およびT方向すなわちスラスト方向が導入されている。
【0015】
(実施の形態1)
まず図1図3を用いて、本実施の形態のエアタービン駆動スピンドル100の構成について説明する。図1および図2を参照して、本実施の形態のエアタービン駆動スピンドル100は、回転軸1と、回転軸1を回転自在に支持しているハウジングアッシ2と、回転軸1およびハウジングアッシ2を収容する筐体部と、ハウジングアッシ2と筐体部との間に配置される少なくとも1つ以上(ここでは複数)のOリング21,26とを備える。本実施の形態における筐体部は筐体と称する領域により構成され、当該筐体は、ハウジングアッシ2の外周側に位置するカバー6と、回転軸1、ハウジングアッシ2、およびカバー6とT方向において対向するように設けられているノズル板7とを含む。
【0016】
回転軸1は、R方向(ラジアル方向)に延びるように形成されているスラスト板部1Bと、R方向に交差するT方向(スラスト方向)に延びるように形成されている軸部1Aとを含む。軸部1Aは円筒形状を有している。スラスト板部1Bは、回転軸1のT方向における一方の端部に接続されている。以下、T方向においてスラスト板部1Bが設けられている軸部1Aの上記一方の端部側を後側、T方向においてスラスト板部1Bと反対側に位置する軸部1Aの他方の端部側を前側という。軸部1Aおよびスラスト板部1Bには、T方向に延びる第1貫通孔18が形成されている。
【0017】
図3を参照して、スラスト板部1Bは、R方向において外周側に位置する領域が中央側に位置する領域である厚肉部1Cと、厚肉部1CよりもT方向における厚みが薄い薄肉部1Dとを有している。厚肉部1Cは上記第1貫通孔18を囲うように形成されている。薄肉部1Dは当該厚肉部1Cを囲うように形成されている。当該薄肉部1D上には、回転翼16がT方向に延びるように形成されている。回転軸1は、図1に示すように、回転翼16が駆動用給気ノズル15(詳細は後述する)から噴出された気体を受けることにより、回転中心軸Lを中心として回転可能に設けられている。厚肉部1Cおよび薄肉部1Dの前側に位置する面は同一平面として構成されている。すなわち、スラスト板部1Bは前側に位置する平面を有している。
【0018】
ハウジングアッシ2は、回転軸1の軸部1Aの外周面およびスラスト板部1Bの前側の平面の各一部に面しており軸部1Aの一部を囲むように形成されている軸受スリーブ4を含む。さらに、ハウジングアッシ2は、R方向において軸受スリーブ4よりも外周側に配置され、軸受スリーブ4と固定されているハウジング3を含む。ハウジング3を構成する材料は、たとえばアルミニウムまたはステンレスである。軸受スリーブ4を構成する材料は、たとえば銅合金、カーボン材、または樹脂である。ハウジング3は、T方向に延びるように形成されており円筒形状を有するハウジング軸部3Aと、ハウジング軸部3Aと交差するR方向に延びるように形成されているハウジングスラスト部3Bとを有している。また軸受スリーブ4は、T方向に延びるように形成されており円筒形状を有する軸受スリーブ軸部4Aと、軸受スリーブ軸部4Aと交差しR方向に延びるように形成されている軸受スリーブスラスト部4Bとを有している。ハウジングスラスト部3Bおよび軸受スリーブスラスト部4Bは、それぞれハウジング3、軸受スリーブ4の後側に形成されている。
【0019】
複数のOリング21,26には、R方向に関してハウジングアッシ2のハウジング3と筐体部のカバー6との間に配置された第1のOリング21と、T方向に関してハウジングアッシ2のハウジング3と筐体部のカバー6との間に配置された第2のOリング26とが含まれる。
【0020】
具体的には、カバー6も、概ねハウジング3および軸受スリーブ4の形状に追随するように、T方向に延びる領域と、その後側においてR方向に延びる領域とを有している。言い換えれば、カバー6の内周面には、ハウジング3の上記円周面とR方向において対向するように形成されている円周面と、ハウジング3の上記スラスト板部分の前側に位置する平面とT方向において対向するように形成されている平面とが含まれている。このため図1の断面図においてはカバー6が屈曲するような形状を有している。
【0021】
第1のOリング21、第2のOリング26を構成する材料は、任意の弾性体であればよいが、好ましくは溶剤に対する耐性が高い材料であり、たとえばふっ素ゴムまたはパーフロロエラストマーである。当該材料は、より好ましくは導電性を有する弾性体であり、たとえば導電性シリコンゴムまたは導電性フッ素系ゴムなどである。このようにすれば、ハウジングアッシ2とカバー6との間で電位差が生じることを防止することができる。たとえば塗料に対して高電圧が印加される静電塗装装置に適用されるエアタービン駆動スピンドルにおいては、エアタービン駆動スピンドル内部での放電の発生を抑制することができる。
【0022】
カバー6がT方向に延びる領域の内周側の一部には、回転中心軸Lの周りを周回するように環状溝30が形成されている。環状溝30はカバー6の内周面においてR方向に彫られている。すなわち環状溝30は、R方向に延びる環状溝側壁面30Aと、それに垂直なT方向に延びる環状溝底壁面30Bとを有している。
【0023】
第1のOリング21は、カバー6の内周側に形成された環状溝30の内部に配置されている。具体的には、環状溝30は、T方向に関して互いに間隔をあけて複数、たとえば図1においては2つ、形成されている。2つの環状溝30のそれぞれの内部に第1のOリング21が配置されている。環状溝30の内部の第1のOリング21は、カバー6の内周面に対向するハウジング軸部3Aの外周面の一部に接している。
【0024】
また第1のOリング21は、環状溝30の環状溝底壁面30Bの少なくとも一部にも接している。このように第1のOリング21は、ハウジング軸部3Aの外周面の一部と、カバー6に形成された環状溝底壁面30Bの少なくとも一部との双方に接していることにより、R方向に関して、第1のOリング21を挟むハウジングアッシ2(ハウジング3)と筐体部に含まれるカバー6との双方に接している。これにより第1のOリング21は、ハウジングアッシ2(ハウジング3)と筐体部(カバー6またはこれに含まれるバックアップリング27)との双方を支持している。
【0025】
ハウジングアッシ2とカバー6との間には、両者が互いに接しないような隙間40が形成されている。この隙間40は、比較的前側の領域においてはR方向に関してハウジングアッシ2とカバー6との間隔をあけるように形成されているが、比較的後側の領域においてはT方向に関してハウジングアッシ2とカバー6との間隔をあけるように形成されている。図1および図3を参照して、第2のOリング26はたとえば第2のOリング26Aと第2のOリング26Bとを有し、いずれもT方向に関する隙間40を塞ぐように配置されている。
【0026】
具体的には、エアタービン駆動スピンドル100は2つの第2のOリング26を有している。2つの第2のOリング26のうち前側の第2のOリング26Aは、T方向に関する前側がカバー6の壁面に接しており、T方向に関する後側がハウジングスラスト部3Bの表面に接している。これに対し、2つの第2のOリング26のうち後側の第2のOリング26Bは、T方向に関する前側がハウジング3の表面に接しており、T方向に関する後側がバックアップリング27に接している。バックアップリング27は筐体部であるカバー6に含まれるようにカバー6に取り付けられた筐体固定部材である。バックアップリング27は、アルミニウムまたはステンレスなどの金属材料により形成されていることが好ましいが、金属材料の代わりに樹脂材料により形成されていてもよい。したがって第2のOリング26Bは、バックアップリング27とハウジングアッシ2(軸受スリーブ4)との双方と接している。
【0027】
第2のOリング26A,26Bはいずれも、T方向に関してこれを挟むハウジングアッシ2(ハウジング3)と筐体部(カバー6またはこれに含まれるバックアップリング27)との双方に接している。これにより第2のOリング26A,26Bは、ハウジングアッシ2(ハウジング3)と筐体部(カバー6またはこれに含まれるバックアップリング27)との双方を支持している。
【0028】
本実施の形態においては、エアタービン駆動スピンドル100を構成する構造体同士の接触がないように、R方向およびT方向の双方向ともに第2のOリング26により当該構造体同士が支持されている。このことを可能にするために、第1のOリング21と第2のOリング26との2種類のOリングが配置されており、第1のOリング21はR方向に関して、第2のOリング26はT方向に関して、ハウジングアッシ2(ハウジング3)と接触することによりハウジングアッシ2(ハウジング3)を支持している。また第2のOリング26は第2のOリング26Aと第2のOリング26Bとの2つ配置されており、第2のOリング26AはそのT方向後側において、第2のOリング26BはそのT方向前側において、ハウジングアッシ2(ハウジング3)と接触することによりハウジングアッシ2(ハウジング3)をそのT方向前側および後側の双方向から支持している。
【0029】
なお駆動用給気ノズル15は、T方向に関する前側において開口した形状を有している。このためバックアップリング27が駆動用給気ノズル15のT方向前側の開口部を塞ぐように取り付けられている。言い換えればバックアップリング27は駆動用給気ノズル15のT方向前側に接続されるように取り付けられている。これによりバックアップリング27は、駆動用給気ノズル15に供給された気体が開口部からハウジング3の方へ流れることを抑制し、回転翼16から駆動用気体排気空間41の方へ流れることを促進することができる。
【0030】
再度図1および図2を参照して、本実施の形態のエアタービン駆動スピンドル100は、ハウジングアッシ2に接するように、回転軸1の軸部1Aとハウジングアッシ2との間に配置されたラジアル軸受8と、回転軸1のスラスト板部1Bとハウジングアッシ2との間に配置されたスラスト軸受9とをさらに備えている。
【0031】
具体的には、ハウジングアッシ2およびカバー6は、回転軸1の軸部1Aと軸受スリーブ4との間および回転軸1のスラスト板部1Bと軸受スリーブ4との間にそれぞれ軸受隙間を形成可能に設けられている。また、ハウジングアッシ2およびカバー6は、当該軸受隙間に気体を供給可能に設けられている。具体的には、ハウジングアッシ2およびカバー6は、それぞれ軸受気体供給路11を有しており、それぞれの軸受気体供給路11は互いに接続されている。軸受気体供給路11は、その一方端がカバー6の外周面上の軸受気体供給口10と接続されており、他方端が回転軸1の軸部1Aと軸受スリーブ4との軸受隙間、および回転軸1のスラスト板部1Bと軸受スリーブ4との軸受隙間に接続されている。軸受気体供給路11において軸受隙間と接続されている部分の孔径は軸受気体供給口10の孔径よりも小さく、軸受気体供給路11において軸受隙間と接続されている部分にはいわゆる絞りが形成されている。回転軸1の軸部1Aと軸受スリーブ4との軸受隙間は、軸受気体供給口10から軸受気体供給路11に供給された気体が供給されることにより、ラジアル軸受8を構成する。回転軸1のスラスト板部1Bと軸受スリーブ4との軸受隙間は、軸受気体供給口10から軸受気体供給路11に供給された気体が供給されることにより、後述する磁石17とともに、スラスト軸受9を構成する。スラスト軸受9は、軸受気体供給口10から軸受気体供給路11に供給された気体が回転軸1のスラスト板部1Bと軸受スリーブ4との軸受隙間に供給されることによって生じる押圧力と、磁石17の吸引力とにより構成される。
【0032】
その他、エアタービン駆動スピンドル100は、以下の各部材を備えている。ノズル板7は、ハウジングアッシ2の後側に位置する面およびカバー6の後側に位置する面と接している前側に位置する面を含むように構成されている。
【0033】
ハウジング3には、スラスト板部1BとT方向において対向する領域に磁石17が配置されている。磁石17はスラスト板部1Bに対して磁気力を印加可能に設けられている。磁石17は、たとえば永久磁石である。これにより磁石17はスラスト板部を磁気力により吸引する。磁石17は、たとえば回転翼16が形成されているスラスト板部の薄肉部1D(図3参照)とT方向において対向するように設けられている。磁石17は、T方向から見たときの平面形状がたとえば円環形状である。
【0034】
カバー6とノズル板7とは固定されている。ノズル板7の内部には、回転軸1のスラスト板部上に形成されている回転翼16に駆動用気体が供給・排気される際に、駆動用気体が流通する流通路が形成されている。駆動用気体は、たとえば圧縮空気である。ノズル板7には、回転翼16に駆動用気体を供給するための駆動用給気路14および駆動用給気ノズル15が形成されている。駆動用給気路14は、その一方端がノズル板7の外周面上の駆動用気体給気口13と接続されており、他方端が駆動用給気ノズル15に接続されている。駆動用給気ノズル15は、回転翼16に対し、R方向において回転軸1の外側から内側に向かって駆動用気体を噴出可能に設けられている。駆動用給気路14および駆動用給気ノズル15は、たとえばノズル板7の前側に位置する面に対して後側に向かって凹んでいる凹部が、ハウジングアッシ2およびカバー6の後側に位置する面によって塞がれることにより構成されている。駆動用給気ノズル15は、上述のように、ノズル板7の前側に位置する面上に隣接している。駆動用給気路14および駆動用給気ノズル15は、たとえば回転方向において互いに間隔を隔てて複数形成されている。
【0035】
ノズル板7の内部には、回転軸1のスラスト板部1Bよりも後側に位置し、スラスト板部1BとT方向において対向する図示されない隔壁が設けられている。隔壁は、ノズル板7において、駆動用給気ノズル15よりもR方向の中央側に位置し、排気孔12よりも前側であってスラスト軸受9よりも後側に位置する部分に、回転軸1のスラスト板部1Bの後側の面と対向するように設けられている。ノズル板7および隔壁には、駆動用給気ノズル15から回転翼16に供給された駆動用気体をスピンドルの外部に排気可能に設けられている駆動用気体排気ポート20、駆動用気体排気空間41、および排気孔12が形成されている。駆動用気体排気ポート20は隔壁に形成されており、駆動用気体排気空間41はノズル板7と隔壁との間に形成されている。
【0036】
排気孔12は、ノズル板7において、駆動用給気路14(図1参照)および駆動用給気ノズル15(図1参照)よりもR方向における中央側に形成されている。排気孔12は、駆動用気体排気空間41からノズル板7の外部に連通するように形成されている。ノズル板7において駆動用気体排気ポート20と排気孔12との間には駆動用気体排気空間41が形成されている。駆動用気体排気空間41は、回転軸1のスラスト板部1Bと隔壁との間に形成される空間よりも体積が大きい。
【0037】
ノズル板7には、さらに貫通孔が形成されている。図1に示すように、ノズル板7には、R方向の中央側に位置し第1貫通孔18とT方向に連なるように第2貫通孔42が形成されている。また、ノズル板7には、上記貫通孔よりもR方向の外周側に回転センサ挿入口19が形成されている。上記回転センサ挿入口19は、スラスト板部における被回転検出部とT方向において対向するように形成されている。上記回転センサ挿入口19は、被回転検出部に対してレーザ光などの光を照射し、反射光を得るための回転センサを配置するために形成されている。このような構成を備えることにより、上述したスピンドルでは回転軸1の回転数を光学的に測定することができる。
【0038】
エアタービン駆動スピンドル100が静電塗装装置用に構成されている場合には、図1に示すように、回転軸1の前側の端部に円錐形のカップ50が取り付けられる。また、第1貫通孔18および第2貫通孔42の内部にはカップ50に塗料を供給するための塗料供給管51が配置される。
【0039】
次に、本実施の形態に係るエアタービン駆動スピンドル100の動作について説明する。図示しないエアコンプレッサなどの駆動用気体供給源から供給された駆動用気体は、駆動用気体給気口13から駆動用給気路14を通じて駆動用給気ノズル15に供給される。駆動用給気ノズル15に供給された駆動用気体は、回転軸1のスラスト板部1Bの回転翼16に向けて、スラスト板部1Bの接線方向(回転方向)とほぼ平行な方向に沿って噴出される。回転翼16は噴出された駆動用気体を後方曲面部において受ける。このとき、回転翼16に噴出された駆動用気体は後方曲面部の外周側に到達し、後方曲面部に沿って流れることで向きを変えられ、駆動用気体排気ポート20から駆動用気体排気空間41に達して排気孔12から外部に排気される。回転翼16には駆動用気体に与えた力の反力が作用し、回転軸1のスラスト板部1Bは回転トルクを与えられる。これにより、回転軸1は回転方向に沿って回転する。回転軸1の回転数は、たとえば数万rpm以上とすることができる。つまり、上述したエアタービン駆動スピンドル100は、たとえば静電塗装機用スピンドルに好適である。
【0040】
図4を参照して、本実施の形態のエアタービン駆動スピンドル100の変形例として、図2中に点線で囲まれた領域S3において、隙間40が最も前側の領域においてラジアル軸受8に達するようにR方向に延びる領域に、第2のOリング26がさらに配置される構成であってもよい。この第2のOリング26は、隙間40が最も前側の領域において隙間40を塞ぐように配置されており、T方向に関する前側がカバー6の内側の壁面に接しており、T方向に関する後側はハウジング3の表面に接している。なお図4の変形例のエアタービン駆動スピンドル100は、図1図3のエアタービン駆動スピンドル100に対して上記の第2のOリング26をさらに備える点についてのみ異なっており、他の点においては図1図3のエアタービン駆動スピンドル100と同様である。このため他の点においての説明を省略する。
【0041】
次に、従来のエアタービン駆動スピンドルの課題について説明しながら、本実施の形態の作用効果を説明する。
【0042】
図5を参照して、従来のエアタービン駆動スピンドル999は、本実施の形態のエアタービン駆動スピンドル100と基本的に同様の構成を有するため、同一の構成要素については同様の符号を付しその説明を繰り返さない。ただし従来のエアタービン駆動スピンドル999は、R方向に関してハウジングアッシ2のハウジング3と筐体部のカバー6との間に配置された第1のOリング21のみを備え、T方向に関してハウジングアッシ2のハウジング3と筐体部のカバー6との間に配置された第2のOリング26を備えていない。この点においてエアタービン駆動スピンドル999は、第1のOリング21と第2のOリング26との双方を備える本実施の形態のエアタービン駆動スピンドル100とは異なっている。なおエアタービン駆動スピンドル999においても本願のエアタービン駆動スピンドル100と同様に、ラジアル軸受8とスラスト軸受9との双方を有する構成となっている。このような場合には以下の問題が生じ得る。
【0043】
特に図3を参照して、回転速度がより高速になったり、タービン流量がより増加したりすることにより駆動用気体給気口13から駆動用給気路14、駆動用給気ノズル15、回転翼16を通って駆動用気体排気空間41に流れる駆動用気体の圧力が高まることが想定される。このような場合に、駆動用気体排気空間41からT方向の前側に向けて、回転軸1およびハウジングアッシ2などが押される。このため、図5のように、T方向に関して隣接する1対の部材の双方を支持する第2のOリング26を備えない場合、回転軸1およびハウジングアッシ2などがT方向の前側に向けて移動する可能性が生じる。このようになれば、振動の伝播を防ぐために本来T方向に関して間隔が保たれているべきである図3の点Q1および点Q2の間隔、および図3の点R1および点R2の間隔が小さくなり、両点が接触してしまう可能性がある。また上記のT方向に関する位置ずれにより、R方向に関しても同様の位置ずれが生じ、図3の点P1および点P2の間隔についても本来の間隔より小さくなり、両点が接触してしまう可能性がある。そのようになれば、ハウジングアッシ2の振動がカバー6にも伝わってしまい、静電塗装機などの性能に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0044】
そこで本実施の形態においては、R方向に関してハウジングアッシ2のハウジング3(軸受スリーブ4)とカバー6との間に配置される第1のOリング21と、T方向に関してハウジングアッシ2のハウジング3(軸受スリーブ4)とカバー6との間に配置される第2のOリング26(第2のOリング26A)とを有している。これらのOリング21,26が、ハウジングアッシ2の軸受スリーブ4とカバー6との双方を支持するように両者間に配置されることにより、R方向に関する上記の点P1と点P2との間隔、およびT方向に関する上記の点Q1および点Q2の間隔を確保することができる。このようにR方向に関して2つの部材間を支持する第1のOリング21とT方向に関して2つの部材間を支持する第2のOリング26との双方を有することにより、ハウジングアッシ2にいかなる方向からの力を受けた場合も、意図せず部材同士が接触してしまう可能性を低減することができる。このためカバー6への振動の伝播を抑制することができる。
【0045】
さらに、第2のOリング26Bは、カバー6に取り付けられ実質的にカバー6に含まれるバックアップリング27と、ハウジングアッシ2の軸受スリーブ4との双方に接することによりこれら双方を支持している。このため第2のOリング26Bも第2のOリング26Aと同様に、第1のOリング21と共に用いられることにより、ハウジングアッシ2にいかなる方向からの力を受けた場合も、意図せず部材同士が接触してしまう可能性を低減することができる。このためカバー6への振動の伝播を抑制することができる。
【0046】
しかし上記のようにR方向に関する支持用の第1のOリング21とT方向に関する支持用の第2のOリング26とが共用されても、仮にエアタービン駆動スピンドル100がラジアル軸受8のみを有する構成であれば、スラスト軸受9との同期がとれずに減衰性能が低下する可能性がある。
【0047】
そこで本実施の形態のエアタービン駆動スピンドル100においては、ラジアル軸受8とスラスト軸受9との双方を備える構成とされている。このような構成を有するため、ラジアル軸受8とスラスト軸受9との同期をとることができ、減衰性能の低下を抑制することができる。
【0048】
(実施の形態2)
図6を参照して、本実施の形態のエアタービン駆動スピンドル200は、実施の形態1のエアタービン駆動スピンドル100と基本的に同様の構成を有するため、エアタービン駆動スピンドル100と同一の構成要素については同様の符号を付しその説明を繰り返さない。ただし本実施の形態のエアタービン駆動スピンドル200は、筐体部として、実施の形態1の筐体と呼ばれる構成に加え、ハウジングアッシ2の外周面を囲むダンパリング23をさらに備えている点において、実施の形態1のエアタービン駆動スピンドル100と構成上異なっている。すなわち本実施の形態のエアタービン駆動スピンドル200の筐体部は、R方向に関してハウジングアッシ2の外周面を囲むダンパリング23と、R方向に関してダンパリング23の外周面を囲む筐体とを含んでいる。ここでダンパリング23の外周面を囲む筐体とは、実施の形態1と同様に、カバー6と、ノズル板7と、バックアップリング27とを含んでいる。
【0049】
エアタービン駆動スピンドル200におけるダンパリング23は、ハウジングアッシ2のハウジング3のR方向に関する外周側でありかつ筐体としてのカバー6のR方向に関する内周側に配置されている。ダンパリング23は、ハウジングアッシ2と同様に、T方向に延びるように形成されており、円筒形状を有している。ダンパリング23は、T方向に延びるR方向内周側の表面でありハウジングアッシ2に面する第1の面23Aと、T方向に延びるR方向外周側の表面であり筐体のカバー6に面する第2の面23Bとを有している。すなわち第2の面23Bは第1の面23Aと反対側に配置される面である。第1の面23Aおよび第2の面23BにはR方向に彫られた凹部としての環状溝30が形成されている。そして第1の面23Aおよび第2の面23Bのそれぞれにおける環状溝30の内部に第1のOリング21が配置されている。すなわち第1の面23Aが配置される側と第2の面23Bが配置される側との双方に第1のOリング21が配置されている。
【0050】
具体的には、環状溝30は、第1の面23A上において、T方向に関して互いに間隔をあけて複数、たとえば図6においては2つ、形成されている。2つの環状溝30のそれぞれの内部に第1のOリング21が配置されている。第1の面23A上の環状溝30の内部の第1のOリング21は、R方向に関する外側が環状溝30の底面である環状溝底壁面30Bに接しており、R方向に関する内側がハウジング3の外周面に接している。第2の面23B上においても第1の面23A上と同様に、T方向に関して互いに間隔をあけて複数、たとえば図6においては2つの環状溝30が形成されている。2つの環状溝30のそれぞれの内部に第1のOリング21が配置されている。第2の面23B上の環状溝30の内部の第1のOリング21は、R方向に関する内側が環状溝30の底面である環状溝底壁面30Bに接しており、R方向に関する外側がカバー6の内周面に接している。
【0051】
したがって、第1の面23A側および第2の面23B側の双方に環状溝30およびOリング21が配置されることにより、環状溝30およびOリング21はR方向に関して多段(2段)となるように配置されている。
【0052】
ダンパリング23の後側には2つの第2のOリング26が配置されており、そのうちの一方である第2のOリング26Bは実施の形態1と同様に、T方向に関する前側がハウジング3の表面に接しており、T方向に関する後側はバックアップリング27に接している。これに対して2つの第2のOリング26のうちの他方である第2のOリング26Aは、T方向に関する後側は実施の形態1と同様にハウジングスラスト部3Bの表面に接しているが、T方向に関する前側はダンパリング23の最も後側の端面に接している。
【0053】
またダンパリング23の前側にはさらに第2のOリング26としての第2のOリング26Cが配置されている。この第2のOリング26Cは、そのT方向に関する前側はカバー6の内壁面に接しており、そのT方向に関する後側はダンパリング23の最も前側の端面に接している。
【0054】
なおダンパリング23は筐体部に含まれるため、本実施の形態においても実施の形態1と同様に、第1のOリング21はR方向に関してハウジングアッシ2と筐体部との間に配置されそれら双方に接し、第2のOリング26はT方向に関してハウジングアッシ2と筐体部との間に配置されそれら双方に接している。具体的には、第1の面23A側の第1のOリング21はハウジングアッシ2と筐体部としてのダンパリング23との間に配置されており、第2の面23B側の第1のOリングはハウジングアッシ2と筐体部としてのカバー6との間に配置されている。
【0055】
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。
本実施の形態のようにエアタービン駆動スピンドル200は、ダンパリング23を有する構成であってもよい。この場合、たとえば第1の面23A側の第1のOリング21は、R方向に関してハウジングアッシ2とダンパリング23との双方に接することとなる。またたとえば第2の面23B側の第1のOリング21は、R方向に関してカバー6とダンパリング23との双方に接することとなる。この場合においても、実施の形態1と同様に、第2のOリング26との組み合わせにより、ハウジングアッシ2にいかなる方向からの力を受けた場合も、意図せず部材同士が接触してしまう可能性を低減することができる。このためカバー6への振動の伝播を抑制することができる。
【0056】
またダンパリング23の第1の面23A側および第2の面23B側の双方に、多段となるように環状溝30およびOリング21が配置されている。これにより、Oリング21のダンパストロークが実施の形態1の2倍となる。このためカバー6側に伝わる振動を減衰させる性能をより向上させることができる。
【0057】
なお実施の形態1においてはカバー6のハウジング3と対向する側の表面に環状溝30が形成されているが、逆にハウジング3のカバー6と対向する側の表面に環状溝30が形成される構成であってもよい。
【0058】
(実施の形態3)
図7を参照して、本実施の形態のエアタービン駆動スピンドル300は、実施の形態2のエアタービン駆動スピンドル200と基本的に同様の構成を有するため、エアタービン駆動スピンドル200と同一の構成要素については同様の符号を付しその説明を繰り返さない。ただし本実施の形態のエアタービン駆動スピンドル300は、筐体固定部材として、バックアップリング27の代わりにカバー付属部32を有している点において実施の形態2とは異なっている。具体的には、本実施の形態のカバー付属部32は、カバー6の最も後側の端面よりも後側の領域において、駆動用給気ノズル15と平面的に重なる形状となるように配置されている。そしてこのカバー付属部32は、駆動用給気路14、回転翼16およびカバー6のそれぞれに接続されるように取り付けられている。この点において本実施の形態は、カバー6の最も後側の端面よりも前側の領域において、カバー6の内壁面に接続されるように取り付けられている実施の形態2のバックアップリング27とは構成上異なっている。
【0059】
本実施の形態においては、駆動用給気ノズル15が、カバー6の最も後側の端面とT方向に関して間隔をあけてさらに後側の領域のみに配置されている。これにより、駆動用給気ノズル15は、平面視において中央部に空洞が形成された円環状であり、かつT方向に関して開口していない形状を有している。
【0060】
本実施の形態においても、実施の形態2と同様に、後側の第2のOリング26Bは、T方向に関して前側がハウジング3の表面に、後側がカバー付属部32に接している。本実施の形態の構成であっても第2のOリング26Bは、実施の形態2と同様に、T方向に関してこれを挟むハウジング3およびカバー付属部32の双方に接し、これら双方を支持している。カバー付属部32はカバー6に接続されるように取り付けられているため、これにより第2のOリング26Bはハウジング3およびカバー6の双方に接する構成と実質的に同等である。またカバー付属部32が存在することにより、本実施の形態においては、バックアップリング27は形成不要となる。
【0061】
(実施の形態4)
図8を参照して、本実施の形態のエアタービン駆動スピンドル400は、実施の形態1のエアタービン駆動スピンドル100と基本的に同様の構成を有するため、エアタービン駆動スピンドル100と同一の構成要素については同様の符号を付しその説明を繰り返さない。ただし本実施の形態のエアタービン駆動スピンドル400は複数のOリング21を有しており、それらのOリング21のそれぞれは、R方向に関してハウジングアッシ2のハウジング3と筐体部のカバー6との間に配置されている。これらの複数のOリング21は実施の形態1の第1のOリング21が配置される位置に対応する位置に配置されている。また本実施の形態においては、実施の形態1の第2のOリング26が配置される位置に対応する位置にはOリングが配置されていない。
【0062】
つまり本実施の形態においては、複数のOリング21のそれぞれが、R方向およびT方向の双方に関してハウジングアッシ2と筐体部との間に配置された構成となっている。この点において本実施の形態は、R方向に関してハウジングアッシ2と筐体部との間に配置された第1のOリング21と、T方向に関してハウジングアッシ2と筐体部との間に配置された第2のOリング26とが別個の部材として配置される実施の形態1〜3と構成上異なっている。
【0063】
次に複数のOリング21のそれぞれがR方向およびT方向の双方に関して隣接する1対の部材の間に配置されそれら1対の部材の双方を支持可能とする構成について詳細に説明する。特に図8における点線で囲まれた領域S4の拡大断面図を参照して、本実施の形態においては、ハウジングアッシ2と筐体部とのいずれか一方の表面にはR方向に彫られた凹部が形成されており、具体的には図8においては、ハウジング軸部3Aに対向するカバー6の内周面に、R方向に彫られた凹部としての環状溝30が形成されている。またハウジングアッシ2と筐体部とのいずれか他方の表面のうち上記凹部(環状溝30)とR方向に関して対向する部分にはR方向に彫られた位置固定溝28が形成されており、具体的には図8においてはカバー6に形成された環状溝30とR方向に関して対向する部分には、R方向に彫られた位置固定溝28が形成されている。位置固定溝28は、R方向に延びる位置固定溝側壁面28Aと、それに垂直なT方向に延びる位置固定溝底壁面28Bとを有している。そして環状溝30内に、位置固定溝28と接触するように、複数のOリング21が配置されている。Oリング21および環状溝30は、図8においてはT方向に関して互いに間隔をあけて2つ配置されている。そして図8においては2つの環状溝30の双方のR方向に関して対向するハウジング3の部分に位置固定溝28が形成されている。
【0064】
複数のOリング21のそれぞれは、環状溝30の内部に配置されている。当該Oリング21は、R方向に関する外側が環状溝30の環状溝底壁面30Bに接しており、R方向に関する前側または後側がハウジング3の外周面に形成された位置固定溝28の位置固定溝底壁面28Bの少なくとも一部に接している。また当該Oリング21は、T方向に関する外側が環状溝30の環状溝側壁面30Aの少なくとも一部に接しており、T方向に関する環状溝側壁面30Aと接する側と反対側(後側または前側)が位置固定溝28の位置固定溝側壁面28Aの少なくとも一部に接している。以上のように、複数のOリング21のそれぞれは、ハウジングアッシ2としてのハウジング3と筐体部としてのカバー6との双方と、R方向とT方向との双方向にて接している。
【0065】
すなわち、位置固定溝28は、R方向に延びる第1の壁面としての位置固定溝側壁面28Aと、位置固定溝側壁面28Aに交差しT方向に延びる第2の壁面としての位置固定溝底壁面28Bとを含んでいる。そして複数のOリング21は、位置固定溝側壁面28Aと位置固定溝底壁面28Bとの双方に接触するように、位置固定溝28と接触している。Oリング21は、R方向に関して環状溝底壁面30Bと、これと対向する位置固定溝底壁面28Bとの双方と接触している。またOリング21は、T方向に関して環状溝側壁面30Aと、これと接する側(前側または後側)と反対側(後側または前側)の位置固定溝側壁面28Aとの双方と接触している。
【0066】
なお上記および図8においては、カバー6に環状溝30が、ハウジング3に位置固定溝28が形成されている。しかし逆に、カバー6の内周面に位置固定溝28が、ハウジング3のカバー6と対向する表面に環状溝30が形成される構成であってもよい。
【0067】
次に、本実施の形態の作用効果を説明する。
本実施の形態のように、R方向に関して互いに対向するように隣接するハウジング3およびカバー6のいずれか一方の、いずれか他方とR方向に関して対向する表面に環状溝30が、上記いずれか他方の表面のうち環状溝30とR方向に関して対向する部分にはR方向に彫られた位置固定溝28が形成された構成を有する。位置固定溝28は、R方向に沿って延びる位置固定溝側壁面28Aと、T方向に沿って延びる位置固定溝底壁面28Bとの双方を有する。このため上記のように環状溝30内のOリング21が、環状溝側壁面30Aおよび環状溝底壁面30Bの双方と接触し、かつ位置固定溝28の位置固定溝側壁面28Aおよび位置固定溝底壁面28Bの双方と接触している。このため位置固定溝28が、環状溝30内のOリング21とR方向およびT方向の双方向から接する構成とすることが可能となる。
【0068】
このためOリング21は、R方向に関してはハウジング3の位置固定溝28の底壁面28Bとカバー6の環状溝30の底壁面30Bとに接することにより、位置固定溝28の底壁面28Bと環状溝30の底壁面30Bとの双方に力を及ぼしこれら双方を支持することができる。またOリング21は、T方向に関してはハウジング3の位置固定溝28の側壁面28Aとカバー6の環状溝30の側壁面30Aとに接することにより、位置固定溝28の側壁面28Aと環状溝30の側壁面30Aとに力を及ぼしこれら双方を支持することができる。したがってOリング21は、R方向とT方向との双方向において、ハウジングアッシ2と筐体部との双方と接し、R方向とT方向との双方向においてハウジングアッシ2と筐体部との双方を支持することができる。
【0069】
したがって本実施の形態においては、実施の形態1のようにT方向を支える第2のOリング26を別途設けなくても、R方向を支える第1のOリング21に相当するOリング21だけで、R方向とT方向との双方向について互いに隣接するハウジング3とカバー6との双方を支持することができる。
【0070】
なお位置固定溝28は、図8においては互いに対向する1対のハウジング3およびカバー6のうち1つの環状溝30が形成される側と反対側の部材(図8においてはハウジング3)の表面の環状溝30とR方向で対向する部分に1つずつのみ形成された構成が示されているが、位置固定溝28は当該表面に複数形成されてもよい。このようにすれば、位置固定溝28の側壁面とOリング21との接点の数を増やすことができるため、T方向に関する位置固定溝28のOリング21に対する保持力をいっそう高めることができる。
【0071】
(実施の形態5)
図9を参照して、本実施の形態のエアタービン駆動スピンドル500は、基本的に実施の形態4のエアタービン駆動スピンドル400と同様の構成を有するため、同一の構成要素については同様の符号を付しその説明を繰り返さない。ただし本実施の形態のエアタービン駆動スピンドル500は、複数のOリング21および環状溝30が、T方向に関して互いに間隔をあけて4つ配置されている。この点において本実施の形態は、複数のOリング21が2つ配置されている実施の形態4と異なっている。なお図9中には、点線で囲まれた領域S5の拡大断面図が併せて示されている。
【0072】
本実施の形態において4つ並ぶOリング21には、Oリング21AとOリング21Bとが含まれる。これらのOリング21A,21Bは、T方向に関する外側の2本のOリング21Aを振動減衰用のダンパ用として、T方向に関する内側の2本のOリング21Bを圧縮空気を閉じ込めるためのシール用として用いることができる。
【0073】
また本実施の形態においては少なくともT方向に関する内側の2本のOリング21Bを収納する環状溝30とR方向に関して対向するハウジング3の部分にはR方向に彫られた位置固定溝28が形成されている。T方向に関する外側の2本のOリング21Aを収納する環状溝30とR方向に関して対向するハウジング3の部分には、R方向に彫られた位置固定溝28が形成されてもよいが、形成されなくてもよい。したがって複数(ここでは4つ)のOリング21のうち少なくとも1つ(ここでは2つ)は、位置固定溝28により実施の形態4と同様に、R方向およびT方向の双方向にてハウジングアッシ2と筐体部との双方に接している。
【0074】
Oリング21Aは振動減衰用のダンパ用として用いられるため、シール機能よりも減衰機能を優先させることとなる。この場合、Oリング21Aが環状溝30に収納される際のOリング21Aの形状がつぶれるように変形することが許容される寸法としてのつぶし代を標準よりも小さくすることができる。
【0075】
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。
上記のようにOリング21を4本とし、T方向に関する外側の2本のOリング21とT方向に関する内側の2本のOリング21との間で異なる役割を果たすようにその役割を分担させる。これにより、Oリング21にシール用の機能と振動減衰用の機能との双方を十分に発揮させることができる。
【0076】
なお本実施の形態における上記T方向に関する内側の2本のOリング21は、T方向に関する外側の空間に対して内側に閉じ込められ、外側の空間を流れる駆動用気体などに直接触れる可能性が少ない。このため、T方向に関する内側の2本のOリング21は、T方向に関する外側の2本のOリング21に比べて溶剤に対する耐性が低い材料であってもよく、4つのOリング21のうち、T方向に関して外側に配置されるOリング21とT方向に関して内側に配置されるOリング21とは異なる材質により形成されてもよい。具体的には、たとえばT方向に関する内側の2本のOリング21はニトリルゴムまたはふっ素ゴムで形成されていてもよく、T方向に関する外側の2本のOリング21はふっ素ゴムまたはパーフロロエラストマーにより形成されていてもよい。
【0077】
(実施の形態6)
図10を参照して、本実施の形態のエアタービン駆動スピンドル600は、実施の形態4のエアタービン駆動スピンドル400と基本的に同様の構成を有するため、エアタービン駆動スピンドル400と同一の構成要素については同様の符号を付しその説明を繰り返さない。ただし本実施の形態のエアタービン駆動スピンドル600は、実施の形態4のエアタービン駆動スピンドル400に対して、実施の形態2のエアタービン駆動スピンドル200と同様に、筐体部として、実施の形態1の筐体と呼ばれる構成に加え、ハウジングアッシ2の外周面を囲むダンパリング23をさらに備えている点において、実施の形態4のエアタービン駆動スピンドル400と構成上異なっている。すなわち本実施の形態のエアタービン駆動スピンドル200の筐体部は、R方向に関してハウジングアッシ2の外周面を囲むダンパリング23と、R方向に関してダンパリング23の外周面を囲む筐体(実施の形態1と同様に、カバー6と、ノズル板7と、バックアップリング27)とを含んでいる。なお図10中には、点線で囲まれた領域S6の拡大断面図が併せて示されている。
【0078】
実施の形態2のエアタービン駆動スピンドル200と同様に、本実施の形態のエアタービン駆動スピンドル600におけるダンパリング23は、ハウジングアッシ2のハウジング3のR方向に関する外周側でありかつ筐体としてのカバー6のR方向に関する内周側に配置されている。ダンパリング23は、ハウジングアッシ2と同様に、T方向に延びるように形成されており、円筒形状を有している。ダンパリング23は、T方向に延びる内周側の表面でありハウジングアッシ2に面する第1の面23Aと、T方向に延びる外周側の表面でありカバー6に面する第2の面23Bとを有している。すなわち第2の面23Bは第1の面23Aと反対側に配置される面である。第1の面23Aおよび第2の面23BにはR方向に彫られた凹部としての環状溝30が形成されている。そして第1の面23Aおよび第2の面23Bのそれぞれにおける環状溝30の内部にはOリング21が配置されている。
【0079】
ハウジングアッシ2(ハウジング3)および筐体(カバー6)の表面のうち、環状溝30とR方向に関して対向する部分には、R方向に彫られた位置固定溝28が形成されている。第1の面23Aおよび第2の面23Bの環状溝30内においては、位置固定溝28と接触するように、複数のOリング21のそれぞれが形成されている。
【0080】
環状溝30およびOリング21は、ダンパリング23の延びるT方向に関する一方の端部(たとえば前側)の近傍に、第1の面23A側および第2の面23B側のそれぞれに1つずつ配置されており、これにより1対の環状溝30およびOリング21が配置されている。同様にダンパリング23の延びるT方向に関する他方の端部(たとえば後側)の近傍にも、第1の面23A側および第2の面23B側のそれぞれに1つずつ環状溝30およびOリング21が配置されており、これにより1対の環状溝30およびOリング21が配置されている。したがって本実施の形態において、環状溝30およびOリング21は、2対つまり4つずつ配置されている。第1の面23A側および第2の面23B側の双方に環状溝30およびOリング21が配置されることにより、環状溝30およびOリング21はR方向に関して多段(2段)となるように配置されている。
【0081】
本実施の形態においても実施の形態4と同様に、実施の形態1の第2のOリング26が配置される位置に対応する位置にはOリングが配置されておらず、実施の形態1の第1のOリング21に対応するOリング21のみが配置されている。
【0082】
なおダンパリング23は筐体部に含まれるため、本実施の形態においても実施の形態4と同様に、複数のOリング21のうち少なくとも1つは、R方向に関してハウジングアッシ2と筐体部との間に配置され、Oリング21はハウジングアッシ2と筐体部との双方と、R方向とT方向との双方向にて接している。具体的には、少なくとも第1の面23A側のOリング21はハウジングアッシ2と筐体部としてのダンパリング23との間に配置され、ハウジングアッシ2と筐体部としてのダンパリング23との双方と、R方向とT方向との双方向にて接している。
【0083】
次に、本実施の形態の作用効果を説明する。
本実施の形態においても実施の形態4と同様に、Oリング21が位置固定溝28および環状溝30の底壁面および側壁面に接することにより、Oリング21のみで(第2のOリング26を有さなくても)R方向およびT方向の双方向に関してOリング21に隣接する部材であるハウジングアッシ2と筐体部との双方に接し、これら双方を支持することができる。
【0084】
また本実施の形態においては環状溝30およびOリング21が多段(2段)となるように配置されている。このため実施の形態2と同様に、Oリング21のダンパストロークが実施の形態1の2倍となる。このためカバー6側に伝わる振動を減衰させる性能をより向上させることができる。
【0085】
なお実施の形態4においてはカバー6のハウジング3と対向する側の表面に環状溝30が形成されているが、逆にハウジング3のカバー6と対向する側の表面に環状溝30が形成される構成であってもよい。
【0086】
(実施の形態7)
図11を参照して、本実施の形態のエアタービン駆動スピンドル700は、基本的に実施の形態6のエアタービン駆動スピンドル600と同様の構成を有するため、同一の構成要素については同様の符号を付しその説明を繰り返さない。ただし本実施の形態のエアタービン駆動スピンドル700は、位置固定溝28によりR方向およびT方向の双方向に関して1対の部材を支持可能であり、かつ多段(2段)構成であるOリング21を有する実施の形態6のエアタービン駆動スピンドル600に対し、環状溝30およびOリング21が4対つまり8個配置された構成を有している。すなわち実施の形態6におけるダンパリング23の延びるT方向に関する一方および他方の端部の近傍に加え、これらの間にも互いに間隔をあけて2対(4個)の環状溝30およびOリング21が配置されている。これらの環状溝30およびOリング21のうち4個はダンパリング23の第1の面23A側に、他の4個はダンパリング23の第2の面23B側に、それぞれ配置されている。なお図11中には、点線で囲まれた領域S7の拡大断面図が併せて示されている。
【0087】
すなわち本実施の形態においては、第1の面23A側および第2の面23B側のそれぞれに1つずつ配置された環状溝30およびOリング21の対が、T方向に関して互いに間隔をあけて4対、実施の形態5のエアタービン駆動スピンドル500(図9)における環状溝30およびOリング21の4対のT方向に関する配置位置に対応する位置に配置されている。
【0088】
本実施の形態においても実施の形態5と同様に、T方向に関して互いに間隔をあけて4対の環状溝30およびOリング21のうち、T方向に関する外側の2対のOリング21とT方向に関する内側の2対のOリング21との間で異なる役割を果たすようにその役割を分担させる。具体的には、外側の2対のOリング21をOリング21Aとし振動減衰用のダンパ用として、内側の2対のOリング21をOリング21Bとし圧縮空気を閉じ込めるためのシール用として、用いることができる。
【0089】
また本実施の形態においては少なくともT方向に関する内側の2対のOリング21Bを収納する環状溝30とR方向に関して対向するハウジング3の部分にはR方向に彫られた位置固定溝28が形成されている。T方向に関する外側の2対のOリング21Aを収納する環状溝30とR方向に関して対向するハウジング3の部分には、R方向に彫られた位置固定溝28が形成されてもよいが、形成されなくてもよい。
【0090】
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。
本実施の形態によれば、実施の形態5のような、Oリング21の役割分担によるシール用の機能および振動減衰用の機能との双方を十分に発揮させる作用効果と、実施の形態6のような、Oリング21の多段構成による振動減衰機能をさらに向上させる効果との双方を得ることができる。したがってエアタービン駆動スピンドル700の機能を総合的にいっそう高めることができる。以上のような機能を、R方向およびT方向の双方向にて隣接する1対の部材を支持可能なOリング21を有する構成により実現することができるのが、本実施の形態のエアタービン駆動スピンドル700の特徴である。
【0091】
以上に述べた各実施の形態(に含まれる各例)に記載した特徴を、技術的に矛盾のない範囲で適宜組み合わせるように適用してもよい。
【0092】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0093】
1 回転軸、1A 軸部、1B スラスト板部、1C 厚肉部、1D 薄肉部、2 ハウジングアッシ、3 ハウジング、3A ハウジング軸部、3B ハウジングスラスト部、4 軸受スリーブ、4A 軸受スリーブ軸部、4B 軸受スリーブスラスト部、6 カバー、7 ノズル板、8 ラジアル軸受、9 スラスト軸受、10 軸受気体供給口、11 軸受気体供給路、12 排気孔、13 駆動用気体給気口、14 駆動用給気路、15 駆動用給気ノズル、16 回転翼、17 磁石、18 第1貫通孔、19 回転センサ挿入口、20 駆動用気体排気ポート、21 第1のOリング、21A,21B Oリング、23 ダンパリング、23A 第1の面、23B 第2の面、26,26A,26B 第2のOリング、27 バックアップリング、30 環状溝、32 カバー付属部、40 隙間、41 駆動用気体排気空間、42 第2貫通孔、50 カップ、51 塗料供給管、100,200,300,400,500,600,700,999 エアタービン駆動スピンドル。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11