特許第6756553号(P6756553)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6756553-ジェル状歯磨き剤 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6756553
(24)【登録日】2020年8月31日
(45)【発行日】2020年9月16日
(54)【発明の名称】ジェル状歯磨き剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/19 20060101AFI20200907BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20200907BHJP
   A61K 8/9794 20170101ALI20200907BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20200907BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20200907BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20200907BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20200907BHJP
【FI】
   A61K8/19
   A61K8/64
   A61K8/9794
   A61K8/02
   A61K8/60
   A61K8/365
   A61Q11/00
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-176209(P2016-176209)
(22)【出願日】2016年9月9日
(65)【公開番号】特開2018-39765(P2018-39765A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2019年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】501303046
【氏名又は名称】株式会社 アルマード
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(74)【代理人】
【識別番号】100159178
【弁理士】
【氏名又は名称】榛葉 貴宏
(74)【代理人】
【識別番号】100206689
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 恵理子
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 由紀夫
【審査官】 池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−209965(JP,A)
【文献】 特開2015−034134(JP,A)
【文献】 特開2001−191076(JP,A)
【文献】 特開2007−197393(JP,A)
【文献】 特開2001−089383(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/009454(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
A61K 36/00−36/9068
A61K 35/00−35/768
A61K 47/00−47/69
A61K 9/00− 9/72
A61P 1/02
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ性の3室型電解還元水に加水分解卵殻膜およびチシマザサエキスを含有させた水性組成物のジェル化物よりなり、pHが5〜8であることを特徴とするジェル状歯磨き剤。
【請求項2】
ジェル状歯磨き剤の全質量に基づいて、前記3室型電解還元水を20〜90質量%、加水分解卵殻膜を0.0001〜10質量%およびチシマザサエキスを0.0001〜70質量%の割合で含有する請求項1に記載のジェル状歯磨き剤。
【請求項3】
ジェル状歯磨き剤の全質量に基づいて、更に発泡剤を0.3〜7質量%の割合で含有する請求項1または2に記載のジェル状歯磨き剤。
【請求項4】
研磨剤を含有しない請求項1〜のいずれか1項に記載のジェル状歯磨き剤。
【請求項5】
アノード電極を備えるアノード室と、カソード電極を備えるカソード室と、アノード室とカソード室との間に設けられた中間室と、アノード室と中間室との間に配置された隔膜と、カソード室と中間室との間に配置された隔膜を備える3室型電解水生成装置を使用して、そのアノード室およびカソード室のそれぞれに水を供給し、中間室に塩化ナトリウム水溶液を供給して電気分解を行うことによってカソード室に還元水を生成させ、カソード室で生成した当該還元水に、加水分解卵殻膜、チシマザサエキスおよびジェル化剤を含有させ、pH調整剤を添加して水性組成物のpHを5〜8に調整して水性組成物を調製し、当該水性組成物をジェル化することを特徴とするジェル状歯磨き剤の製造方法。
【請求項6】
水性組成物の調製時に更に発泡剤を含有させる請求項に記載のジェル状歯磨き剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はジェル状歯磨き剤に関する。より詳細には、本発明は、歯の清浄効果、歯周病の予防と治癒効果および口臭防止効果に優れる、還元水を基材とし、加水分解卵殻膜およびチシマザサエキスを含有するジェル状歯磨き剤に関する。
【背景技術】
【0002】
歯磨き剤の形態として、練り歯磨き剤、ジェル状歯磨き剤、液状歯磨き剤、粉状歯磨き剤などが知られている。
これらのうち、ジェル状歯磨き剤は、練り歯磨き剤に比べて水分含量が多いため、歯ブラシに付けて口腔内に入れたときに口腔内の隅々まで速やかに分散して歯磨き効果を早期に助長するという長所を有する。
ジェル状歯磨き剤は、一般に、精製水を基材とし、これに研磨剤、湿潤剤、香味剤、保存剤、薬効成分などを配合し、更に粘結剤(増粘剤)を配合してジェル化することによって得られる(例えば特許文献1)。
子供向けのジェル状歯磨き剤には研磨剤無添加のものも知られているが、研磨剤無添加のジェル状歯磨き剤は、歯垢やステイン(着色汚れ)などの歯の表面の汚れを落とす清浄作用が低いため、成人などの一般向けに販売されているジェル状歯磨き剤では、一般に研磨剤が添加されている。
研磨剤が添加されているジェル状歯磨き剤は、研磨剤無添加のジェル状歯磨き剤に比べて歯の表面に付着した歯垢やステインなどを落とす清浄効果に優れているが、その一方で研磨剤により歯の表面のエナメル質に傷がつき易い。
【0003】
また、加水分解卵殻膜を含有する歯磨き剤が知られている(特許文献2および3)。
加水分解卵殻膜を含有する歯磨き剤は、歯周組織や口腔内粘膜の健康状態の維持や健康状態への回復の効果があり、歯周組織自体を丈夫で健康な状態に回復し、それまで歯周病に罹っていて赤紫色をしていた歯茎を健康なピンク色にし、痩せて弾力、張り、つやを失っていた歯茎に弾力、張り、つやを復元し、更には歯茎からの出血などをなくすことができる。また、歯周病に罹っていない場合にも、歯周組織を歯周病に罹りにくくし、歯周組織の健康な状態を維持することができるという優れた効果を有する。
しかし、加水分解卵殻膜を含有する歯磨き剤においても、歯の表面に付着した歯垢やステインなどの汚れを落とすためには、従来のジェル状歯磨き剤と同じように、研磨剤を配合する必要があり、研磨剤の配合によって歯の表面のエナメル質を損傷する恐れがある。
【0004】
さらに、熊笹エキスなどのササエキスを含有する歯磨き剤が知られており(特許文献4および5)、ササエキスを含有する歯磨き剤は、歯周病の予防や治癒、口臭の防止や低減に有効であるとされている。
しかし、ササエキスを含有する歯磨き剤においても、歯の表面に付着した歯垢やステイン(着色汚れ)を落とすためには、上記した従来のジェル状歯磨き剤や加水分解卵殻膜を含有する歯磨き剤と同じように、研磨剤を添加する必要があり、研磨剤の添加によって歯の表面のエナメル質を傷つけやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−183937号公報
【特許文献2】特開2001−89393号公報
【特許文献3】特開2007−197393号公報
【特許文献4】特開2001−151655公報
【特許文献5】国際公開第2000/67707号
【特許文献6】特許第3988827号公報
【特許文献7】特開2001−191076号公報
【特許文献8】特許第5253483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、加水分解卵殻膜を含有させた歯磨き剤が有する歯周組織や口腔内粘膜の健康状態の維持や健康状態への回復という効果、およびササエキスを含有する歯磨き剤が有する歯周病の予防や治癒、口臭の防止や低減という効果を維持しながら、研磨剤を添加しなくても歯の表面に付着した歯垢やステインなどの汚れを良好に落とすことができて研磨剤による歯のエナメル質の損傷を招かない、研磨剤無添加のジェル状歯磨き剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成すべく、本発明者は種々検討を重ねてきた。その結果、ジェル状歯磨き剤に、加水分解卵殻膜およびチシマザサエキスの両方を含有させると共に、ジェル状歯磨き剤の基材をなす水として、ジェル状歯磨き剤で従来広く用いられていた精製水の代わりに、3室型水電解装置のカソード室に生成する還元水を使用すると、研磨剤を添加しなくても、歯の表面に付着した歯垢やステインを極めて簡単に落とすことができて清浄効果に優れるジェル状歯磨き剤が得られること、それと併せて、当該ジェル状歯磨き剤は、加水分解卵殻膜を含有させたことによる歯周組織や口腔内粘膜の健康状態の維持や健康状態への回復の促進効果、およびチシマザサエキスを含有させたことによる歯周病の予防や治癒、口臭の防止や低減効果に優れることを見出した。
【0008】
さらに、本発明者は、その際に、当該ジェル状歯磨き剤の全質量に基づいて、3室型水電解装置のカソード室に生成する還元水の割合を20〜90質量%、加水分解卵殻膜の割合を0.0001〜10質量%およびチシマザサエキスの割合を0.0001〜70質量%とすることが好ましいことを見出した。
本発明者は、さらにジェル状歯磨き剤の全質量に基づいて発泡剤を0.3〜7質量%の割合で含有させると、ジェル状歯磨き剤の口腔内での拡散が良好に行われて前記した効果がより良好に発揮されること、またジェル状歯磨き剤のpHを好ましくは5〜8にすることによって、保存安定性に優れ、口腔への刺激が少なく、歯のエナメル質への影響の小さいジェル状歯磨き剤が得られることを見出し、それらの知見に基づいて本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1) アルカリ性の3室型電解還元水に加水分解卵殻膜およびチシマザサエキスを含有させた水性組成物のジェル化物よりなり、pHが5〜8であることを特徴とするジェル状歯磨き剤である。
そして、本発明は、
(2) ジェル状歯磨き剤の全質量に基づいて、前記3室型電解還元水を20〜90質量%、加水分解卵殻膜を0.0001〜10質量%およびチシマザサエキスを0.0001〜70質量%の割合で含有す前記(1)のジェル状歯磨き剤;
(3) ジェル状歯磨き剤の全質量に基づいて、更に発泡剤を0.3〜7質量%の割合で含有する前記(1)または(2)のジェル状歯磨き剤;および、
(4) 研磨剤を含有しない前記(1)〜(3)のいずれかのジェル状歯磨き剤;
である。
【0010】
さらに、本発明は、
(5) アノード電極を備えるアノード室と、カソード電極を備えるカソード室と、アノード室とカソード室との間に設けられた中間室と、アノード室と中間室との間に配置された隔膜と、カソード室と中間室との間に配置された隔膜を備える3室型電解水生成装置を使用して、そのアノード室およびカソード室のそれぞれに水を供給し、中間室に塩化ナトリウム水溶液を供給して電気分解を行うことによってカソード室に還元水を生成させ、カソード室で生成した当該還元水に、加水分解卵殻膜、チシマザサエキスおよびジェル化剤を含有させ、pH調整剤を添加して水性組成物のpHを5〜8に調整して水性組成物を調製し、当該水性組成物をジェル化することを特徴とするジェル状歯磨き剤の製造方法;および、
(6) 水性組成物の調製時に更に発泡剤を含有させる前記()のジェル状歯磨き剤の製造方法;
である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のジェル状歯磨き剤は、基材として、ジェル状歯磨き剤において従来使用されていた精製水の代わりに、3室型水電解装置のカソード室に生成する還元水を用いているため、研磨剤を含有しなくても、歯の表面に付着した歯垢やステインなどの汚れを良好に落とすことができ、清浄効果に優れており、しかも研磨剤を含まなくてもよいことから研磨剤による歯のエナメル質の損傷を防ぐことができる。
本発明のジェル状歯磨き剤は、加水分解卵殻膜を含有しているために、歯周組織や口腔内粘膜の健康状態の維持や健康状態への回復の促進効果がある。
更に、本発明のジェル状歯磨き剤はチシマザサエキスを含有しているために、歯周病の予防や治癒、口臭の防止や低減効果に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明のジェル状歯磨き剤で基材として用いる還元水を製造するための3室型電解水生成装置の原理(基本構造)を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明では、ジェル状歯磨き剤の基材をなす水として、3室型電解水生成装置のカソード室(負極室)で生成する還元水を用いる。
3室型電解水生成装置は、従来から知られており(例えば特許文献6〜8を参照)、その基本的な構造は、図1の模式図に示すように、アノード電極(正極)(1d)を備えるアノード室(1)と、カソード電極(負極)(2d)を備えるカソード室(2)と、アノード室(1)とカソード室(2)との間に設けられた中間室(3)と、アノード室(1)と中間室(3)との間に配置された隔膜(イオン交換膜など)(4)と、カソード室(2)と中間室(3)との間に配置された隔膜(イオン交換膜など)(5)とからなる。
3室型電解水生成装置において、アノード室(1)は水の流入部(1a)とアノード室(1)で生成した水(酸化水)の流出部(1b)を有し、カソード室(2)は水の流入部(2a)とカソード室(2)で生成した水(還元水)の流出部(2b)を有し、中間室(3)は、塩化ナトリウム水溶液などのようなイオン化合物を含有する水溶液の供給部(3a)と水溶液の流出部(3b)を有する。
本発明のジェル状歯磨き剤に用いる還元水の製造に当たっては、従来から知られている3室型電解水生成装置のいずれもが使用できる。限定されるものではないが、本発明で使用可能な3室型電解水生成装置としては、例えば、株式会社レドックス製の3室型電解水生成システム、株式会社レドックス製の3室型ダブルイン電解システム[「kreski AQUA」(Type−α4000A,C,D)など]、株式会社レドックステクノロジー製「レドックスR25−15型」、株式会社ラシーヌ製の3室型電解水生成システムや3室型ダブルイン電解システム、株式会社東芝製の3室型電解水生成装置などを挙げることができる。
【0014】
本発明では、ジェル状歯磨き剤の基材をなす還元水として、3室型電解水生成装置のアノード室およびカソード室のそれぞれに水(特に純水)を供給し、中間室に塩化ナトリウム水溶液を供給して電気分解することによってカソード室に生成する還元水が、歯に付着した歯垢やステインなどの汚れの洗浄作用に優れ、安全性に優れるなどの点から、好ましく用いられる。
【0015】
中間室に供給する塩化ナトリウム水溶液における塩化ナトリウムの濃度は、3室型電解水生成装置の規模、電解水生成能力、構造、機種の種類などに応じて、それぞれの3室型電解水生成装置において推奨されている濃度を採用することが好ましい。
アノード室とカソード室への水の供給量および中間室への塩化ナトリウム水溶液の供給量も、3室型電解水生成装置の規模、電解水生成能力、構造、機種の種類などに応じて、それぞれの3室型電解水生成装置において推奨されている供給量を採用することが好ましい。
【0016】
それぞれの機種において推奨されている塩化ナトリウム濃度、アノード室とカソード室への水の供給量および中間室への塩化ナトリウム水溶液の供給量を採用して電解を行うことによって、アノード室に酸性の酸化作用を有する水(酸化水)が生成し、カソード室にアルカリ性の還元作用を有する水(還元水)が生成する。
3室型電解水生成装置のアノード室およびカソード室のそれぞれに水(特に純水)を供給し、中間室に塩化ナトリウム水溶液を供給して電気分解することによってカソード室に生成する還元水のpHは10〜12程度、特に11〜12程度である。
本発明では、ジェル化用の水性組成物の調製に当たって、pH調整することなくpH10〜12の還元水をそのまま用いてpHの高いジェル状歯磨き剤を製造してもよいが、保存安定性に優れ、口腔への刺激が少なく、歯のエナメル質への影響の小さいジェル状歯磨き剤が得られるなどの点から、ジェル化用の水性組成物の調製時にpH調整剤を添加してジェル状歯磨き剤のpHを5〜8にすることが好ましく、5〜7にすることがより好ましく、5〜6.5にすることが更に好ましい。
その際のpH調整剤としては、例えば、クエン酸とクエン酸ナトリウムなどの有機酸とその塩、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸一水素ナトリウムなどを挙げることができ、本発明のジェル状歯磨き剤では必要に応じてこられらの1種または2種以上を用いることができる。そのうちでも、クエン酸とクエン酸ナトリウムが好ましく用いられる。
【0017】
また、本発明のジェル状歯磨き剤では、還元水として、3室型電解水生成装置による還元水の生成時の酸化還元電位が−500mV以下、更には−600mV以下、特に−750mV以下の還元水が、還元力が大きくて、清浄効果に優れるジェル状歯磨き剤が得られる点から好ましく用いられる。
限定されるものではないが、3室型電解水生成装置のアノード室およびカソード室に、電気伝導度が0.3μS/cm(20℃)の超純水を供給し、中間質に塩化ナトリウム水溶液を供給して電気分解を行うと、カソード室にpHが11.0以上で、生成時の酸化還元電位が−600mV以下の還元水を生成させることができる。
【0018】
本発明のジェル状歯磨き剤で用いる加水分解卵殻膜は、卵殻膜を、酸、アルカリ、蛋白分解酵素などを用いて部分加水分解したものである。卵殻膜は水に溶けないが、加水分解卵殻膜は加水分解の程度によって、水に溶けるもの、水に溶けないが卵殻膜に比べて親水性の増加したものなどがある。本発明では、加水分解の程度の高い加水分解卵殻膜および加水分解の程度の低い加水分解卵殻膜のいずれもが使用可能であり、そのうちでも水溶性の加水分解卵殻膜が好ましく用いられ、かかる点から、重量平均分子量が1,000〜100,000もの、更には5,000〜50,000のもの、特に10,000〜35,000のものが好ましく用いられる。
ここで、本明細書でいう「加水分解卵殻膜の分子量」とは、高速液体クロマトグラフによるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によって測定した重量平均分子量をいう。
【0019】
ササ(笹)は、単子葉植物イネ科亜科に属する植物であって、メダケ属、アズマザサ属、ササ属、スズタケ属、ヤダケ属、イニョウチク属に分類される。
そのうち、チシマザサ(千島笹)は、クマザサ、ミヤコザサなどと共にササ属に属し、大型の笹の1種であり、ネマガリダケ(根曲竹)、コウライザサ(高麗笹)、アサヒザサなどとも称される。
本発明のジェル状歯磨き剤に用いるチシマザサエキスは、新鮮なチシマザサの葉および茎の高圧圧搾によって生成する樹液を濃縮・精製して得られる液体である。
チシマザサエキスは、市場で販売されており、具体例としては、日本ハルマ株式会社製「チシマザサエキスk3−C」、株式会社サノ企業製のチシマザサ濃縮エキス「セルピュア」(登録商標)などを挙げることができる。
本発明のジェル状歯磨き剤では、チシマザサエキスとして、市販されているチシマザサエキスの1種または2種以上ををそのまま用いることができる。
【0020】
本発明のジェル状歯磨き剤は、歯の表面に付着した歯垢やステインなどの汚れの除去効果、歯周組織や口腔内粘膜などに生じていた創傷などの治癒効果、口腔の洗浄効果、歯周病の予防や治癒効果および口臭の予防や低減効果を、バランス良く、効果的に発揮させ得るようにするために、ジェル状歯磨き剤の全質量(ひいては粘結剤を含むジェル化前の水性組成物の全質量)に基づいて、3室型電解水生成装置のカソード室で生成した還元水(以下単に「還元水」ということがある)を20〜90質量%、加水分解卵殻膜を0.0001〜10質量%およびチシマザサエキスを0.0001〜70質量%の割合で含有することが好ましく、還元水を50〜85質量%、加水分解卵殻膜を0.001〜5質量%およびチシマザサエキスを0.001〜50質量%の割合で含有することがより好ましく、還元水を70〜85質量%、加水分解卵殻膜を0.005〜2質量%およびチシマザサエキスを0.005〜30質量%(特に0.005〜5質量%)の割合で含有することがさらに好ましい。
【0021】
本発明のジェル状歯磨き剤は、発泡剤を含有してもまたは含有しなくてもいずれでもよいが、発泡剤を含有させると、ジェル状歯磨き剤の口腔内での拡散が助長され、汚れの浄化をはじめとして本発明のジェル状歯磨き剤の前記した効果をより良好に発揮させることができる。発泡剤を含有する場合は、発泡剤を、ジェル状歯磨き剤の全質量(ひいては粘結剤を含むジェル化前の水性組成物の全質量)に基づいて、0.3〜7質量%の割合で含有することが好ましく、0.3〜6質量%の割合で含有することがより好ましく、0.3〜5質量%の割合で含有することが更に好ましい。
発泡剤としては、歯磨き剤において従来から用いられている発泡剤のいずれもが使用でき、具体例としては、ラウリルグルコシド、ラウリル硫酸ナトリウム、サピンズストリホリアツス果汁エキス(ソープナッツエキス)、蔗糖脂肪酸エステル、ラウロイルサルコシンナトリウム、N−ラウロイル−L−グルタミン酸などの界面活性剤を挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0022】
本発明のジェル状歯磨き剤は、3室型電解水生成装置のカソード室で生成した還元水中に加水分解卵殻膜およびチシマザサエキスを含有し、場合により発泡剤を含有し、必要に応じ更に他の成分を含有する水性組成物のジェル化物であり、前記水性組成物のジェル化は水性組成物に粘結剤(増粘剤)を含有させることにより達成される。
本発明のジェル状歯磨き剤は、歯磨き剤において従来から用いられている粘結剤のいずれを含有していてもよく、本発明のジェル状歯磨き剤で用い得る粘結剤の具体例としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム(セルロースガム)、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カラギーナンなどのセルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールなどのアルギン酸誘導体、キサンタンガム、ジェランガム、トラガントガム、カラヤガムなどのガム類などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
粘結剤の含有量は、3室型電解水生成装置のカソード室での生成水である還元水、加水分解卵殻膜、チシマザサエキスおよび場合により発泡剤、更に必要に応じて他の成分を含有する水性組成物を構成する成分の種類、成分組成、粘結剤の種類などに応じて、当該水性組成物が歯磨きに適したジェル状になるように、一般に、ジェル状歯磨き剤の全質量(ひいては粘結剤を含むジェル化前の水性組成物の全質量)に基づいて、一般に0.05〜5質量%の範囲内の量とすることが好ましい。
【0023】
本発明のジェル状歯磨き剤は、基材として上記した還元水を用いているため、その優れた清浄作用によって、研磨剤を含有しなくても歯垢やステインなどを良好に落とすことができるので、歯のエナメル質の損傷防止の点から、研磨剤を含有しないことが好ましい。
【0024】
本発明のジェル状歯磨き剤は、上記した成分と共に、ジェル状歯磨き剤において従来から用いられている他の成分を必要に応じて含有することができる。必要に応じて含有し得る他の成分としては、保湿剤、香味剤、清涼剤、甘味剤、矯味剤、着色剤、乳化剤、pH調整剤、ビタミン、防腐剤、保存剤、薬効成分などを挙げることができる。
【0025】
保湿剤としては、例えば、グリセリン、ソルビット液、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、チシマザサ水、イラクサエキス、ウイキョウエキス、カミツレエキス、シラカバエキス、セージエキス、ホップエキス、メリッサエキス、ローズマリーエキスなどの植物エキス類などを挙げることができ、本発明のジェル状歯磨き剤はこれらの1種または2種以上を含有することができる。
【0026】
香味剤および清涼剤としては、例えば、スペアミント油、ペパーミントタイプ香料、ハーブタイプ香料、ハッカ油、ユーカリ油、メントール、ベルガモットタイプ香料、シトラスミントタイプ香料、フルーツタイプ香料などあを挙げることができ、本発明のジェル状歯磨き剤は必要に応じてこれらの1種または2種以上を含有することができる。
【0027】
甘味剤および矯味剤としては、例えば、サッカリンナトリウム、カンゾウエキス、キシリット( キシリトール) 、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸ジカリウム、ステビアエキス、ハマメリス抽出液、塩化ナトリウムなどを挙げることができ、本発明のジェル状歯磨き剤は必要に応じてこれらの1種または2種以上を含有することができる。
【0028】
着色剤としては、例えば、青色1号、黄色4号、赤色3号、赤色102号、赤色106号、緑色3号、緑色201号などを挙げることができ、本発明のジェル状歯磨き剤は必要に応じてこられらの1種または2種以上を含有することができる。
【0029】
乳化剤(溶解剤、可溶化剤)としては、例えば、カプリル酸グリセリル、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ポリリン酸ナトリウム、石ケン素地、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ラウリル硫酸ナトリウム、モノラウリン酸ポリグリセリル、ラウロイルサルコシンナトリウムなどを挙げることができ、本発明のジェル状歯磨き剤は必要に応じてこられらの1種または2種以上を含有することができる。
【0030】
ビタミンとしては、例えば、ビタミンE、ビタミンC、ビタミンB12、ビタミンB2、ビタミンDなどを挙げることができ、本発明のジェル状歯磨き剤は必要に応じてこられらの1種または2種以上を含有することができる。
【0031】
防腐剤および保存剤としては、例えば、p−オキシ安息香酸メチル、p−オキシ安息香酸エチル、p−オキシ安息香酸プロピル、p−オキシ安息香酸エチルブチル、p−オキシ安息香酸エチルエチルなどのp−オキシ安息香酸エステル類、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン液、塩化セチルピリジニウムなどを挙げることができ、本発明のジェル状歯磨き剤は必要に応じてこられらの1種または2種以上を含有することができる。
【0032】
薬効成分としては、例えば、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン液、塩化セチルピリジニウム、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、グルコン酸クロルヘキシジン、クロルヘキシジン、ベンゼトニウムクロライド、ベンザルコニウムクロライド、デカニウムクロライドなどなどの抗炎症剤や殺菌剤、アルカリ金属モノフルオロリン酸塩(モノフルオロリン酸ナトリウム、モノフルオロリン酸カリウムなど)、フッ化ナトリウム、フッ化第1錫などのフッ化物などを挙げることができ、本発明のジェル状歯磨き剤は必要に応じてこられらの1種または2種以上を含有することができる。
【0033】
本発明のジェル状歯磨き剤の製造方法は特に制限されず、加水分解卵殻膜とチシマザサエキスを含有し、好ましくは更に発泡剤を含有し、それらの成分と共に必要に応じて更に配合される上記した成分の1種または2種以上が、3室型電解水生成装置のカソード室で生成した還元水を基材とするジェル化物中に均一に混合されたジェル状歯磨き剤を製造し得る方法であれば、いずれの方法で製造してもよい。一般的には、還元水、加水分解卵殻膜、チシマザサエキス、粘結剤および必要に応じて、発泡剤やその他の成分を同時にまたは任意の順序で配合して水性組成物を調製し、当該水性組成物中の各成分が均一に混合され且つジェル化するまで十分に攪拌混合することによって製造することができる。
【実施例】
【0034】
以下に本発明を実施例などにより具体的に説明するが、本発明は以下の例により何ら限定されない。
《実施例1》
株式会社レドックス製の「3室型電解装置」のカソード室で生成した還元水(温度25℃でのpH11、生成時の酸化還元電位=−800mV)78.38質量部に、加水分解卵殻膜(キューピー社製)0.01質量部、チシマザサエキス(日本ハルマ株式会社製「チシマザサエキスK3−C」)0.03質量部と共に、下記の表1に記載した成分を、表1に記載した量(質量部)で配合し、温度25℃で均一になるまで混合して、還元水を基材とするジェル状歯磨き剤(pH=6)を製造した。
これにより得られたジェル状歯磨き剤をチューブ状容器に充填して(充填量100g/1チューブ)、チューブ入りジェル状歯磨き剤を製造した。
【0035】
【表1】
【0036】
《比較例1》
実施例1において、還元水78.38質量部の代わりに精製水78.4質量部を用い、クエン酸とクエン酸ナトリウムを配合せずに、それ以外は実施例1と同じに行って、加水分解卵殻膜およびチシマザサエキスを含有し、精製水を基材とするジェル状歯磨き剤(pH=約7)を製造した。
これにより得られたジェル状歯磨き剤をチューブ状容器に充填して(充填量100g/1チューブ)、チューブ入りジェル状歯磨き剤を製造した。
【0037】
《試験例1》
(1) 6名のモニターA,B,C,D,E,F[モニターA=25歳(女性),モニターB=27歳(男性),モニターC=36歳(女性),モニターD=40歳(男性),モニターE=60歳(女性),モニターF=58歳(男性)]に、昼食後に、実施例1のジェル状歯磨き剤の約1.5gを使用して、5分間歯磨きをしてもらい、水で口を5回ゆすいだ後、歯垢染色剤(ジーシー社製「プロスペック染色液」)を含浸させた綿棒にて、歯垢染色剤を上下の歯および歯茎と歯の境界の全体に塗布し、水で1回口をゆすいでもらった。
(2) 各モニターの口の中を、同一の観察者が目視にて観察して、歯科染色剤の残存状態を下記の表2に示す評価基準にしたがって評価したところ、下記の表3に示すとおりであった。
【0038】
《比較試験例1》
(1) 上記の試験1を行った日の翌日に、上記した6名のモニターA〜Fに、昼食後に、比較例1のジェル状歯磨き剤を約1.5g使用して、試験例1におけるのと同じように5分間歯磨きをしてもらい、水で口を5回ゆすいだ後、試験1で使用したのと同じ歯垢染色剤を含浸させた綿棒にて、歯垢染色剤を上下の歯および歯茎と歯の境界の全体に塗布し、水で1回口をゆすいでもらった。
(2) 試験例1におけるのと同じ観察者が、各モニターの口の中を目視にて観察して、歯科染色剤の残存状態を下記の表2に示す評価基準にしたがって評価したところ、下記の表3に示すとおりであった。
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
【0041】
上記の試験1および比較試験1の結果から、3室型電解水生成装置のカソード室で生成した還元水を基材とする実施例1のジェル状歯磨き剤は、研磨剤を含有しないにも拘らず、歯垢などの歯の汚れの清掃効果に優れていることがわかる。
それに対して、精製水を基材とする比較例1のジェル状歯磨き剤は、歯垢などの歯の汚れの清掃効果に劣っており、歯の汚れを落とすためには従来のジェル状歯磨き剤と同様に研磨剤などを配合する必要があることが分かる。
【0042】
《試験例2》
歯茎が痩せて弾力および張りがなく、歯茎の色がやや赤紫色で、口臭があると感じている10名のモニター(年齢36〜72歳、男性5名、女性5名)に、上記の実施例1で得られたジェル状歯磨き剤を使用して、1日3回(朝食後、昼食後および就寝前)、1回のジェル状歯磨き剤の使用量約1.5gで14日間(2週間)にわたって歯を磨いてもらい、下記の表4に示す評価内容にて評価してもらったところ、下記の表4に示すとおりであった。
【0043】
【表4】
【0044】
上記の表4の結果から、基材として3室型水電解装置のカソード室に生成する還元水を用い、且つ加水分解卵殻膜とチシマザサエキスを含有する本発明のジェル状歯磨き剤は、研磨剤を含有しなくても、歯の表面に付着した歯垢やステインなどの汚れを良好に落とすことができ清浄効果に優れており、しかも歯周組織や口腔内粘膜の健康状態の維持や健康状態への回復の促進効果があり、歯周病の予防や治癒に有効であり、更に口臭の防止や低減効果に優れていることが分かる。
【符号の説明】
【0045】
1 アノード室
1a 水の流入部
1b 酸化水の流出部
1d アノード電極(正極)
2 カソード室
2a 水の流入部
2b 還元水の流出部
2d カソード電極(負極)
3 中間室
3a イオン化合物(塩化ナトリウムなど)を含有する水溶液の供給部
3b 水溶液の流出部
4 隔膜
5 隔膜
図1