(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第1の実施形態>
以下、第1の実施形態に係る駆動システムについて、
図1〜
図9を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
(駆動システムの全体構成)
図1は、第1の実施形態に係る駆動システムの全体構成を示す図である。
図1に示すように、第1の実施形態に係る駆動システム9は、制御装置1と機械系2とを備えている。
機械系2は、モータ20と、負荷21と、モータ20及び負荷21を機械的に連結する連結部材22と、を有してなる。本実施形態に係る機械系2の具体的な態様については後述する。
【0024】
図1に示すように、制御装置1は、図示しない上位機器から負荷21の目標回転角度を示す負荷角度指令値θrefを受け付ける。そして、制御装置1は、受け付けた負荷角度指令値θrefに応じてモータ20に発生すべきトルクτを演算し、当該トルクτを示すトルク指令値を出力する。モータ20は、受け付けたトルク指令値に示されるトルクτで回転駆動し、トルクτがモータ20側から負荷21側へと連結部材22を通じて伝達する。その結果、伝達されたトルクτ’に応じて負荷21が回転駆動する。このようにして、制御装置1により、負荷21の回転角度(以下、単に「角度」とも記載する。)が所望の目標
回転角度(負荷角度指令値θref)に一致するような制御が実現される。
なお、本実施形態においては、説明の簡略化のため、モータ20は、制御装置1からトルク指令値を受け付けた場合に、当該トルク指令値どおりのトルクτを出力することができるものとして説明する。
【0025】
第1の実施形態に係る制御装置1は、いわゆるクローズドシステムであって、モータ20の角度と、負荷21の角度と、を示す検出値(実測データ)に基づいてフィードバック制御を行う。
ここで、機械系2を構成するモータ20及び負荷21には、それぞれ、図示しない回転検出器(エンコーダ)が設置されている。制御装置1は、当該回転検出器を通じて、モータ20の角度、負荷21の角度を検出する。また、制御装置1は、取得したモータ20の角度の検出値を内部で時間微分することで、モータ20の角速度を検出する。また、制御装置1は、取得した負荷21の角度の検出値を内部で時間微分することで、負荷21の角速度を検出する。
なお、以下の説明において、モータ20の角速度の検出値を「モータ角速度ω
M」とも記載し、モータ20の角度の検出値を「モータ角度θ
M」とも記載する。また、負荷21の角速度の検出値を「負荷角速度ω
L」とも記載し、負荷21の角度の検出値を「負荷角度θ
L」とも記載する。
【0026】
また、制御装置1は、更に、機械系2を2慣性系と見なして模した2慣性系モデル(後述)を予め有しており、当該2慣性系モデルを用いてフィードフォワード制御を行う。
なお、機械系2における負荷21が、回転系ではなく直動系の場合、負荷21に対する制御対象パラメータは、厳密には“角度”、“角速度”ではなく、“位置”、“速度”となる。しかし、この場合、制御装置1は、2慣性系として、モータ20の“角度”、“角速度”と同じ次元で取り扱うために、負荷の“位置”、“速度”を、モータ軸換算値としての“角度”、“角速度”に逐次変換して各種制御を行う。
【0027】
機械系2を2慣性系と見なした場合において、機械系2固有の特性を表すパラメータ群は、モータ20側の特性を示すパラメータ、負荷21側の特性を示すパラメータ、及び、モータ20と負荷21とを機械的に連結して動力を伝達する連結部材22の特性を示すパラメータに大別される。具体的には、モータ20側の特性を示すパラメータとして、モータ側慣性モーメントJ
M、モータ側粘性係数D
M、モータ側摩擦トルクτ
fM(モータの摩擦)がある。また、負荷21側の特性を示すパラメータとして、負荷側慣性モーメントJ
L、負荷側粘性係数D
L、負荷側摩擦トルクτ
fL(負荷の摩擦)がある。更に、連結部材22の特性を示すパラメータとして、ねじれ剛性係数K
R、ねじれ粘性係数D
R、不感帯幅BLがある。
【0028】
(機械系の伝達特性)
図2は、第1の実施形態に係る機械系の伝達特性を示すブロック線図である。
本実施形態に係る機械系2(
図1参照)をモータ20、負荷21及び連結部材22からなる2慣性系の機械と見なすことで、当該機械系2における入力と出力との関係を、
図2に示すような伝達関数を用いたブロック線図で表すことができる。
【0029】
図2に示すように、モータ20は、制御装置1(
図1)から受け付けたトルク指令値に基づいて自身が発生させたトルクτを入力とし、モータ角度θ
Mを出力とする。モータ20が発生させたトルクτは、モータ20に生じる摩擦であるモータ側摩擦トルクτ
fM、及び、連結部材22を通じて負荷21に伝達するトルクτ’が差し引かれた後、伝達要素1/(J
Ms+D
M)を通じてモータ角速度ω
Mに変換され、更に伝達要素1/s(積分要素)を通じてモータ角度θ
Mに変換される。
ここで、モータ側摩擦トルクτ
fMは、モータ20の速度反転時(モータ角速度ω
Mの符号反転時)に符号のみが反転するクーロン摩擦成分だけでなく、モータ20の速度反転後の変位(モータ角速度ω
Mのゼロからの積分値)に依存して非線形に変化する非線形摩擦成分を含んでいる。モータ側摩擦トルクτ
fMは、この非線形摩擦成分をモデル化して規定し、モータ角速度ω
Mを入力変数とするモータ側摩擦関数G
Mを通じて得られる。モータ側摩擦関数G
Mの詳細については後述する。
【0030】
同様に、負荷21は、モータ20から連結部材22を通じて伝達されたトルクτ’(=(K
R+D
Rs)(θ
M−θ
L−BKLS))を入力とし、負荷角度θ
Lを出力とする。負荷21に入力されたトルクτ’は、負荷21に生じる摩擦である負荷側摩擦トルクτ
fLが差し引かれた後、伝達要素1/(J
Ls+D
L)を通じて負荷角速度ω
Lに変換され、更に伝達要素1/sを通じて負荷角度θ
Lに変換される。
ここで、負荷側摩擦トルクτ
fLも同様に、負荷21の速度反転後の変位(負荷角速度ω
Lのゼロからの積分値)に依存して非線形に変化する非線形摩擦成分を含んでいる。負荷側摩擦トルクτ
fLは、この非線形摩擦成分をモデル化して規定し、負荷角速度ω
Lを入力変数とする負荷側摩擦関数G
Lを通じて得られる。負荷側摩擦関数G
Lの詳細については後述する。
【0031】
また、
図2に示すように、連結部材22は、モータ角度θ
Mと負荷角度θ
Lとの偏差(以下、「ねじれ角度(θ
M−θ
L)」とも記載する。)を入力とし、ねじれ角度(θ
M−θ
L)に応じたトルクτ’を出力とする伝達系である。入力されたねじれ角度(θ
M−θ
L)は、不感帯(以下、「ガタ」とも記載する。)における非線形性を表す不感帯特性関数F1と、伝達要素K
R及び伝達要素D
Rsと、を通じて、モータ20及び負荷21に印加されるトルクτ’に変換される。
ここで、不感帯特性関数F1とは、不感帯幅BLで規定される非線形関数である。不感帯特性関数F1は、連結部材22のねじれ角度(θ
M−θ
L)を入力変数とし、当該ねじれ角度(θ
M−θ
L)からガタの変位(ガタ変位)BKLSを差し引いた角度を出力する。不感帯特性関数F1の詳細については後述する。
また、ねじれ剛性係数K
Rとは、連結部材22のねじれ方向についての剛性の度合いを示すパラメータであって、連結部材22のばね定数に相当する。即ち、ねじれ剛性係数K
Rは
、負荷21に印加されるトルクτ’のうち、連結部材22のねじれ角度(θ
M−θ
L)に比例する成分を与える。
また、ねじれ粘性係数D
Rとは、連結部材22のねばりの度合いを示すパラメータであって、負荷21に印加されるトルクτ’のうち、連結部材22におけるモータ角速度ω
Mと負荷角速度ω
Lとの偏差(以下、「ねじれ角速度(ω
M−ω
L)」とも記載する。)に比例する成分を与える。
【0032】
以上の通り、制御装置1が制御対象とする機械系2は、複数のパラメータ群及び非線形関数によって、2慣性系モデルとして特徴づけられる。
ここで、モデルパラメータ群とは、上述したモータ側慣性モーメントJ
M、モータ側粘性係数D
M、負荷側慣性モーメントJ
L、負荷側粘性係数D
L、ねじれ剛性係数K
R、ねじれ粘性係数D
R、及び、不感帯幅BLである。
また、非線形関数とは、モータ角速度ω
Mに応じたモータ側摩擦トルクτ
fMを与えるモータ側摩擦関数G
M、負荷角速度ω
Lに応じた負荷側摩擦トルクτ
fLを与えるモータ側摩擦関数G
L、及び、ねじれ角度(θ
M−θ
L)からガタ変位BKLSを差し引いた角度を出力する不感帯特性関数F1である。
また、機械系2への入力であるトルクτは、トルク指令値から制御装置1自身が観測可能なパラメータである。機械系2からの出力(検出値)であるモータ角度θ
M及び負荷角度θ
Lは、上述の回転検出器を通じて、制御装置1が観測可能なパラメータである。
【0033】
図3は、第1の実施形態に係る機械系のモータ側及び負荷側の摩擦特性を説明する図である。
図3(a)は、モータ側摩擦トルクτ
fM及び負荷側摩擦トルクτ
fLの各々に生じる非線形摩擦特性を示すグラフである。
良く知られているクーロン摩擦は、物体の速度(モータ角速度ω
M、負荷角速度ω
L)の方向(正、負の符号)に依存してその方向(正、負の符号)のみが変化し、その量は、速度(ω)、変位(θ)に対しては変動しないものとして知られている。しかしながら、連結部材22において、例えば、ボールねじ、ボールベアリング等の転がり要素が含まれる場合には、通常のクーロン摩擦とは特性が異なる“転がり摩擦”を考慮する必要がある。
ここで、転がり摩擦は、速度反転直後の転がり要素が転動しない“微動領域”においては、速度反転後の変位(モータ角速度ω
M、負荷角速度ω
Lのゼロからの積分値)によって見かけのばね定数が動的に変化する非線形ばね特性を有しており、
図3(a)に示すようなヒステリシスカーブを描く。これは、転がり要素と軌道面の接触部における弾性変形やすべりによるものと考えられている。
また、転がり要素が有効に転動する“粗動領域”においては、クーロン摩擦により摩擦の速度に対する静的特性を示す。即ち、
図3(a)に示すように、モータ20の摩擦(モータ側摩擦トルクτ
fM)は、速度反転後の変位が所定以上となった時点で、モータ側クーロン摩擦値τ
fMcで飽和する。また、負荷21の摩擦(負荷側摩擦トルクτ
fL)は、速度反転後の変位が所定以上となった時点で、負荷側クーロン摩擦値τ
fLcで飽和する。ここで、モータ側クーロン摩擦値τ
fMc及び負荷側クーロン摩擦値τ
fLcは、モータ側摩擦特性関数G
M及び負荷側摩擦特性関数G
Lを規定するパラメータである。
【0034】
本実施形態においては、モータ側摩擦特性関数G
M及び負荷側摩擦特性関数G
Lは、
図3(a)に示す非線形摩擦特性を折れ線近似してなるGMS(Generalized Maxwell Slip)モデルに基づいて規定される。ここで、GMSモデルとは、N個の特性の異なるブロック(転がり要素)とばねとが並列に接続されている状態を模したものである。
図3(b)に示すグラフ(折れ線)を構成する複数の直線の各々が、N個のブロックのうちのいくつまでが転がりきっている(有効に転動している)状態か、を表現している。
図3(b)に示すように、モータ側摩擦特性関数G
Mは、変位0〜θ
1、θ
1〜θ
2、θ
2〜θ
3、θ
3〜θ
4の各々において採用すべき直線の傾きK
1、K
2、K
3、K
4、及び、オフセット(変位0における切片)τ
fM1(=−τ
fMc)、τ
fM2、τ
fM3、τ
fM4、τ
fM5(=τ
fMc)によって規定される。
なお、横軸の変位θは、モータ角速度ω
Mの速度反転時(ω
M=0)からの積分値で与えられる。
なお、図示を省略するが、負荷側摩擦特性関数G
Lも、
図3(b)に示すモータ側摩擦特性関数G
Mと同様に規定される。
【0035】
図4は、第1の実施形態に係る機械系の連結部材における不感帯の特性を説明する図である。
【0036】
図4(a)に示す不感帯特性関数F1は、モータ20と負荷21との間に設けられた連結部材22のガタ(不感帯)の幅を示す不感帯幅BLに基づく伝達特性を表している。
不感帯特性関数F1は、不感帯幅BLによって規定される非線形特性であって、連結部材22のねじれ角度(θ
M−θ
L)を入力変数とする。
図4(a)に示すように、連結部材22のねじれ角度(θ
M−θ
L)の絶対値が不感帯幅BL以下の場合(−BL≦θ
M−θ
L≦+BL)、ガタ出力はゼロとなる。即ち、この場合、モータ20から負荷21へトルクが伝達されない。他方、連結部材22のねじれ角度(θ
M−θ
L)の絶対値が不感帯幅BLよりも大きい場合(θ
M−θ
L<−BL,θ
M−θ
L>+BL)、ガタ出力は、ねじれ角度(θ
M−θ
L)から不感帯幅BLだけ小さい値(θ
M−θ
L+BL(θ
M−θ
L<−BL)、又は、θ
M−θ
L−BL(θ
M−θ
L>+BL))となる。
【0037】
また、
図4(b)に示すガタ変位関数F1’は、ガタ変位BKLSとねじれ角度(θ
M−θ
L)との関係をしている。
ガタ変位BKLSは、不感帯幅BL(−BL〜+BL)の幅を有する不感帯における変位量を示すパラメータであって、ねじれ角度(θ
M−θ
L)に対し、
図4(b)に示すような特性を有している。即ち、
図4(a)に示すガタ出力は、ガタ変位BKLSを用いて“θ
M−θ
L―BKLS”と表すことができる。
図4(b)に示すように、ガタ変位BKLSは、ねじれ角度(θ
M−θ
L)が不感帯の最小値(−BL)よりも小さい範囲では、ガタ変位BKLSは最小値(−BL)をとり、ねじれ角度(θ
M−θ
L)が不感帯の最大値(+BL)よりも大きい範囲では、ガタ変位BKLSは最大値(+BL)をとる。また、ねじれ角度(θ
M−θ
L)が不感帯の最小値(−BL)以上かつ最大値(+BL)以下の範囲においては、ガタ変位BKLSは、ねじれ角度(θ
M−θ
L)と同一の値を有する特性となる。
【0038】
(駆動システムの機能構成)
図5は、第1の実施形態に係る駆動システムの機能構成を示す図である。
図5に示すように、第1の実施形態に係る制御装置1は、上位装置(図示せず)から負荷角度指令値θ
refの入力を受け付けて、機械系2に対し、負荷角度指令値θ
refに応じたトルクτを示すトルク指令値を出力する。
制御装置1は、フィードバック制御部10と、フィードフォワード制御部11と、を備えている。
【0039】
フィードバック制御部10は、負荷角度指令値θ
refと、回転検出器を通じて検出される現在の負荷角度θ
Lとの偏差(θ
ref−θ
L)に基づいて、当該偏差(θ
ref−θ
L)をゼロに近づけるためのトルクフィードバック値τ
FBを出力する。
本実施形態に係るフィードバック制御部10は、比例制御部10aと、比例積分制御部10bと、を有している。
比例制御部10aは、負荷角度指令値θ
refと負荷角度θ
Lとの偏差(θ
ref−θ
L)に対し、所定の比例定数K
PPで比例して増減するモータ角速度フィードバック値ω
M_FBを出力する。
比例積分制御部10bは、上述のモータ角速度フィードバック値ω
M_FBにモータ角速度フィードフォワード値ω
M_FF(後述)を加算した値(ω
M_FB+ω
M_FF)と、回転検出器を通じて観測されたモータ角度θ
Mを微分して得られる現在のモータ角速度ω
Mとの偏差(ω
M_FB+ω
M_FF−ω
M)を入力する。ここで、加算値(ω
M_FB+ω
M_FF)は、モータ20に対するモータ角速度ω
Mの指令値である。比例積分制御部10bは、モータ角速度の指令値(ω
M_FB+ω
M_FF)と検出値(ω
M)との偏差(ω
M_FB+ω
M_FF−ω
M)に基づき、所定の比例定数K
VP及び積分定数(K
VP/T
VI)に基づくトルクフィードバック値τ
FBを出力する(ここで、T
VIは、積分時間である)。
【0040】
フィードフォワード制御部11は、機械系2を模した2慣性系モデルの逆モデルを内部に有している。この2慣性系モデルの逆モデルは、機械系2の伝達特性を示す複数のモデルパラメータ(J
M、D
M、J
L、D
L、K
R、D
R、BL)、及び、非線形関数(G
M、G
L、F1)によって規定される(
図2〜
図4参照)。
本実施形態においては、フィードフォワード制御部11は、機械系2の逆モデルを規定するパラメータ群(J
M、D
M、J
L、D
L、K
R、BL)、及び、非線形関数(G
M、G
L、F1)を既に同定しているものとする。
フィードフォワード制御部11は、負荷角度指令値θ
refと、モータ角速度ω
Mと、負荷角速度ω
Lとを入力し、トルクフィードフォワード値τ
_FFとモータ角速度フィードフォワード値ω
M_FFを出力する。
モータ角速度フィードフォワード値ω
M_FFは、モータ角速度フィードバック値ω
M_FBに加算され、モータ角速度指令値として比例積分制御部10bに入力される。また、トルクフィードフォワード値τ
_FFは、トルクフィードバック値τ
FBに加算され、トルクτを示すトルク指令値として機械系2に出力される。
【0041】
(フィードフォワード制御部の処理)
図6は、第1の実施形態に係るフィードフォワード制御部のブロック線図である。
また、
図7は、第1の実施形態に係るフィードフォワード制御部の処理フローである。
また、
図8は、第1の実施形態に係るフィードフォワード制御部の機能の詳細を示す図である。
以下、
図6〜
図8を参照しながら、本実施形態に係るフィードフォワード制御部11の機能について詳細に説明する。
【0042】
まず、フィードフォワード制御部11が、機械系2を模した2慣性系モデルの逆モデルを用いて、モータ角速度フィードフォワード値ω
M_FF、及び、トルクフィードフォワード値τ
FFを演算する方法について説明する。
【0043】
ここで、機械系2を模した2慣性系モデルの運動方程式は、
図2に示すブロック線図に基づいて、式(1)及び式(2)のように表すことができる。式(1)は、モータ20についての運動方程式であり、式(2)は、負荷21についての運動方程式である。
【0046】
式(1)、(2)において、“τ
fM[ωM]”は、モータ側摩擦特性関数G
M(
図3(b))に基づいてモータ角速度ω
Mの変数として規定されるモータ側摩擦トルクτ
fMを示している。また、“τ
fL[ωL]”は、負荷側摩擦特性関数G
Lに基づいて負荷角速度ω
Lの変数として規定される負荷側摩擦トルクτ
fLを示している。
また、“BKLS
[θM−θL]”は、ガタ変位関数F1’(
図4(b))に基づいてねじれ角度(θ
M−θ
L)の変数として規定されるガタ変位BKLSを示している。
【0047】
なお、現実の機械系2において、連結部材22のねじれ粘性係数D
Rの影響は小さいものとして、式(1)、式(2)においては、ねじれ粘性係数D
Rを無視している。
【0048】
上位装置から負荷角度指令値θ
refが入力された場合、フィードフォワード制御部11は、式(1)及び式(2)で示される2慣性系モデルについて、負荷角度θ
Lを負荷角度指令値θ
refと一致させ(θ
L=θ
ref)、負荷角速度ω
Lを負荷角度指令値θ
refの時間微分ω
ref(負荷角速度指令値)と一致させる(ω
L=ω
ref)必要がある。
そこで、式(2)の“θ
L”に“θ
ref”を代入し、
“ω
L”に“ω
ref”を代入することで、θ
L=θ
ref、ω
L=ω
refとなるモータ角度θ
Mを、式(3)のように求めることができる。
【0050】
式(3)において、右辺第1項は、負荷角度指令値θ
refそのものである。また、右辺第2項は、負荷慣性トルク、負荷粘性トルク、及び、負荷側摩擦トルク分のねじれ角度(θ
M−θ
L)を補償するために、負荷角度指令値θ
refに加えて必要な成分である。右辺第3項は、ガタ変位BKLSを補償するために、負荷角度指令値θ
refに加えて必要な成分である。
【0051】
式(3)で示されるモータ角度θ
Mを時間微分することで、式(4)のように、モータ速度フィードフォワード値ω
M_FFを得ることができる。
【0053】
式(4)は、モータ速度フィードフォワード値ω
M_FFを得るための2慣性系モデル(機械系2)の逆モデルといえる。
式(4)の右辺第1項は、負荷角速度指令値ω
refそのものである。また、右辺第2項は、負荷慣性トルク、負荷粘性トルク、及び、負荷側摩擦トルク分のねじれ角度の時間微分特性である。右辺第2項には、負荷側摩擦トルクの時間微分特性(s・τ
fL[ωref])が含まれる。また、右辺第3項は、ガタ変位BKLSの時間微分特性((d/dt)・BKLS
[θM−θL])である。
【0054】
また、式(1)、式(2)の“θ
L”に“θ
ref”を代入し、
“ω
L”に“ω
ref”を代入することで、θ
L=θ
ref、ω
L=ω
refとなるトルク(トルクフィードフォワード値τ
FF)を、式(5)のように求めることができる。
【0056】
式(5)は、トルクフィードフォワード値τ
FFを得るための2慣性系モデル(機械系2)の逆モデルといえる。
式(5)の右辺第1項は、全慣性トルクであり、右辺第2項は、全粘性トルクである。また、右辺第3項は、負荷慣性トルク及び負荷粘性トルク分のねじれ角度を生じさせるためのモータ慣性トルク及びモータ粘性トルクである。右辺第4項は、負荷側摩擦トルク分のねじれ角度を生じさせるためのモータ慣性トルク及びモータ粘性トルクである。右辺第4項には、負荷側摩擦トルクの時間微分特性(s・τ
fL[ωref])が含まれる。右辺第5項は、ガタ分のモータ慣性トルク及びモータ粘性トルクである。右辺第5項には、ガタ変位BKLSの時間微分特性((d/dt)・BKLS
[θM−θL])が含まれる。右辺第6項、第7項は、全摩擦トルクである。
フィードフォワード制御部11は、式(4)、式(5)に示される2慣性系モデルの逆モデルを用いて、モータ角速度フィードフォワード値ω
M_FF、及び、トルクフィードフォワード値τ
FFを演算する。
【0057】
次に、
図6、
図7を参照しながら、フィードフォワード制御部11の具体的な処理手順について説明する。
図6に示すように、フィードフォワード制御部11は、負荷側摩擦演算部110と、ガタ微分演算部111と、モータ角速度フィードフォワード値演算部112と、モータ側摩擦演算部113と、トルクフィードフォワード値演算部114とを備えている。
【0058】
まず、フィードフォワード制御部11は、上位装置から負荷角度指令値θ
refの入力を受け付ける(
図7、ステップS01)。
【0059】
負荷側摩擦演算部110は、負荷側摩擦トルクのフィードフォワード値τ
fL_FF、及び、負荷側摩擦トルクの時間微分特性のフィードフォワード値s・τ
fL_FFを演算する(
図7、ステップS02)。
具体的には、負荷側摩擦演算部110は、上位装置から受け付けた負荷角度指令値θ
refを時間微分して得られる負荷角速度指令値ω
refを入力する。そして、負荷側摩擦演算部110は、負荷角速度指令値ω
refの速度反転時(ω
ref=0)からの積分値(変位θ)を負荷側摩擦特性関数G
Lに代入し、変位θに応じた負荷側摩擦トルクのフィードフォワード値τ
fL_FFを出力する。なお、負荷側摩擦特性関数G
Lは、
図3(b)に示すモータ側摩擦特性関数G
Mと同様の非線形関数である。
【0060】
また、負荷側摩擦演算部110は、以下に示す式(6)のように、
負荷側摩擦トルクの時間微分特性s・τfLを演算する。
【0062】
式(6)において、“F
iL[ωL]”は、負荷側摩擦トルクτ
fL[ωL]のGMSモデルを構成する各要素の摩擦トルクである。即ち、GMSモデルの要素i(i=0、1、2・・)ごとに生じる摩擦トルクの時間微分((d/dt)・F
iL[ωL])を合計することで、負荷側摩擦トルクの時間微分特性s・τ
fLを求めることができる。負荷側摩擦トルクの時間微分特性s・τ
fLのフィードフォワード値s・τ
fL_FFは、負荷側摩擦トルクτ
fL[ωL]に負荷角速度指令値ω
refを代入する(τ
fL[ωref])ことで求めることができる。
【0063】
次に、ガタ微分演算部111は、ガタ変位の時間微分特性のフィードフォワード値(d/dt)・BLKSを演算する(
図7、ステップS03)。
具体的には、ガタ微分演算部111は、
図6に示すように、モータ角速度ω
Mと、負荷角速度ω
Lと、負荷側摩擦演算部110が出力する負荷側摩擦トルクのフィードフォワード値τ
fL_FFとを入力する。
【0064】
以下、
図8を参照しながら、ガタ微分演算部111が行う処理について説明する。
ガタ変位BKLSの時間微分特性((d/dt)・BKLS
[θM−θL])は、以下の式(7)のように求めることができる。
【0066】
即ち、ガタ変位BKLSの時間微分特性((d/dt)・BKLS
[θM−θL])は、式(7)のように、ガタ変位BKLS
[θM−θL]をねじれ角度(θ
M−θ
L)で微分した特性((d/d(θM−θL))・BKLS
[θM−θL])と、ねじれ角速度(ω
M−ω
L)との積で求められる。
ガタ変位BKLS
[θM−θL]をねじれ角度(θ
M−θ
L)で微分した特性((d/d(θ
M−θ
L))・BKLS
[θM−θL])とは、
図4(b)に示すガタ変位BKLSのグラフの傾きで表される。したがって、ねじれ角度で微分した特性(d/d(θ
M−θ
L))・BKLS
[θM−θL]は、ねじれ角度(θ
M−θ
L)が−BLより小さい領域、及び、+BLより大きい領域では“0”となり、ねじれ角度(θ
M−θ
L)が−BL以上+BL以下の領域では“1”となる。
【0067】
式(7)によれば、ガタ変位BKLSの時間微分特性((d/dt)・BKLS
[θM−θL])をフィードフォワード値として特定するためには、ねじれ角度(θ
M−θ
L)とねじれ角速度(ω
M−ω
L)とを特定する必要がある。ここで、本実施形態に係るガタ微分演算部111は、ねじれ角速度(ω
M−ω
L)は、ガタ移動中において一定とみなし、所定の比例定数K(K=ω
M−ω
L)とする。
【0068】
また、ねじれ角度(θ
M−θ
L)は、フィードフォワード値の精度を高めるため、機械系2からモータ角速度ω
M及び負荷角速度ω
Lを入力し、速度反転時(ω
M=0)からのねじれ角速度(ω
M−ω
L)の積分値によって特定する。
ただし、この場合、速度反転時からガタの移動を開始するまでに必要な一定のオフセットねじれ角度を考慮する必要がある。このオフセットねじれ角度は、負荷側摩擦トルクτ
fLに抗するために必要なねじれ角度である。そこで、ガタ微分演算部111は、ステップS02で負荷側摩擦演算部110が算出した負荷側摩擦トルクのフィードフォワード値τ
fL_FFを入力し、τ
fL_FF/K
Rをオフセットねじれ角度とする。
【0069】
以上より、ガタ微分演算部111は、反転後ねじれ角度の絶対値|(θ
M−θ
L)|が、速度反転時からオフセットねじれ角度(τ
fL_FF/K
R)だけ進んだ後にガタの移動を開始し、更にガタ補償幅(不感帯幅BL×2)を進んだ後にガタの移動を完了するものと判断する(
図8のブロック111a参照)。ガタ微分演算部111は、反転後ねじれ角度の絶対値|(θ
M−θ
L)|がオフセットねじれ角度τ
fL_FF/K
Rから当該オフセットねじれ角度にガタ補償幅を加算した値(τ
fL_FF/K
R+2BL)の範囲内にある場合、一定の比例定数K(ねじれ角速度)を出力し、それ以外の範囲では“0”を出力する(
図8のブロック111a、111b参照)。
【0070】
次に、モータ角速度フィードフォワード値演算部112は、モータ角速度のフィードフォワード値ω
M_FFを演算する(
図7、ステップS04)。
具体的には、モータ角速度フィードフォワード値演算部112は、
図6に示すように、負荷角速度指令値ω
refと、負荷角速度指令値ω
refの1回微分s・ω
ref(負荷
角加速度指令値)と、負荷角速度指令値ω
refの2回微分s
2・ω
refと、負荷側摩擦トルクの時間微分特性のフィードフォワード値s・τ
fL_FFと、ガタ変位の時間微分特性のフィードフォワード値(d/dt)・BLKSとを入力する。
モータ角速度フィードフォワード値演算部112は、入力した各種値を、式(4)に代入し、モータ角速度フィードフォワード値ω
M_FFを演算する。
【0071】
次に、モータ側摩擦演算部113は、モータ側摩擦トルクのフィードフォワード値τ
fM_FFを演算する(
図7、ステップS05)。
具体的には、モータ側摩擦演算部113は、
図6に示すように、モータ角速度フィードフォワード値演算部112が出力するモータ角速度フィードフォワード値ω
M_FFを入力する。そして、モータ側摩擦演算部113は、モータ角速度フィードフォワード値ω
M_FFの速度反転時(ω
M_FF=0)からの積分値(変位θ)をモータ側摩擦特性関数G
M(
図4(b)参照)に代入し、変位θに応じたモータ側摩擦トルクのフィードフォワード値τ
fM_FFを出力する。
【0072】
次に、トルクフィードフォワード値演算部114は、トルクフィードフォワード値τ
FFを演算する(
図7、ステップS06)。
具体的には、トルクフィードフォワード値演算部114は、
図6に示すように、負荷角速度指令値ω
refと、負荷角速度指令値ω
refの1回微分s・ω
ref(負荷
角加速度指令値)と、負荷角速度指令値ω
refの2回微分s
2・ω
refと、負荷角速度指令値ω
refの3回微分s
3・ω
refと、負荷側摩擦トルクの時間微分特性のフィードフォワード値s・τ
fL_FFと、負荷側摩擦トルクのフィードフォワード値τ
fL_FFと、ガタ変位の時間微分特性のフィードフォワード値(d/dt)・BLKSと、モータ側摩擦トルクのフィードフォワード値τ
fM_FFと、を入力する。そして、トルクフィードフォワード値演算部114は、入力した各種値を、式(5)に代入し、トルクフィードフォワード値τ
FFを演算する。
【0073】
(機械系の構造)
図9は、第1の実施形態に係る機械系の構造を示す図である。
本実施形態に係る機械系2は、
図9に示すような工作機械2Aである。
工作機械2Aは、サーボモータ20Aと、テーブル21Aと、ボールねじ22Aとを備えている。
サーボモータ20Aは、モータ20の一態様であって、内部に回転角度を検出する回転検出器を有し、精密な位置決めが可能なサーボモータである。
テーブル21Aは、負荷21の一態様であって、工作対象物を乗せて動かすための台である。
ボールねじ22Aは、連結部材22の一態様であって、ねじ部220Aと、ナット部221Aとを有している。ボールねじ22Aは、サーボモータ20Aの回動を直動に変換する駆動機構である。
サーボモータ20Aが回転すると、回転力がボールねじ22Aのねじ部220Aに伝わり、ねじ部220Aが回転する。回転支持ブラケット222Aに支持されたねじ部220Aが回転すると、ナット部221Aがねじ部220Aに沿い直線移動し、このナット部221Aの直線移動に応じてテーブル21Aが直線移動する。これにより、サーボモータ20Aの回転運動がボールねじ22Aにより直線運動に変換される。
【0074】
(作用・効果)
以上の通り、第1の実施形態に係る制御装置1は、モータ20と負荷21とを連結部材22で連結してなる機械系2を模した2慣性系モデルに基づいて当該機械系2を制御する制御装置である。
制御装置1は、2慣性系モデルの逆モデル(式(4)、式(5))を用いて、負荷角度の指令値(負荷角度指令値θ
ref)に応じた、モータ20に対するフィードフォワード値(ω
M_FF、τ
FF)を出力するフィードフォワード制御部11を備えている。
そして、フィードフォワード制御部11は、非線形の伝達特性を有するモータ20の摩擦の伝達特性(モータ側摩擦特性関数G
M)、負荷21の摩擦の伝達特性(負荷側摩擦特性関数G
L)、及び、連結部材22のガタの伝達特性(不感帯特性関数F1)を含む2慣性系モデルの逆モデルを有する。
このようにすることで、モータ20の摩擦の伝達特性、負荷21の摩擦の伝達特性、及び、連結部材22のガタの伝達特性をそのまま含む逆モデルに基づいてフィードフォワード制御を行うので、フィードフォワード値の精度を一層高めることができる。したがって、フィードフォワードの制御性能を高めることができる。
【0075】
また、第1の実施形態に係る2慣性系モデルの逆モデルは、ガタ変位BKLSの時間微分特性((d/dt)・BKLS)を含む。そして、フィードフォワード制御部11は、ガタ変位の時間微分特性((d/dt)・BKLS)に基づいてモータ20に対するフィードフォワード値(ω
M_FF、τ
FF)を演算する。
このようにすることで、2慣性系モデルの逆モデルのうち、ガタの非線形特性(不感帯特性関数F1)に由来する成分をガタ変位の時間微分特性((d/dt)・BKLS)で補償することができる。
【0076】
また、第1の実施形態に係る2慣性系モデルの逆モデルは、負荷21の摩擦の時間微分特性(s・τ
fL)を含む。そして、フィードフォワード制御部11は、負荷21の摩擦の時間微分特性(s・τ
fL)に基づいてモータ20に対するフィードフォワード値(ω
M_FF、τ
FF)を演算する。
このようにすることで、2慣性系モデルの逆モデルのうち、負荷21の摩擦の非線形特性(負荷側摩擦特性関数G
L)に由来する成分を負荷21の摩擦の時間微分特性(s・τ
fL)で補償することができる。
【0077】
また、第1の実施形態に係るフィードフォワード制御部は、2慣性系モデルの逆モデルを用いて、負荷角度指令値θ
refに応じたモータ角速度フィードフォワード値ω
M_FF、及び、トルクフィードフォワード値τ
FFを出力する。
このようにすることで、フィードバック制御部10の出力であるモータ角速度フィードバック値ω
M_FBと、トルクフィードバック値τ
FBとのそれぞれに対し、フィードフォワード値を補償することができる。
【0078】
(変形例)
以上、第1の実施形態に係る制御装置1及び駆動システム9について詳細に説明したが、制御装置1及び駆動システム9の具体的な態様は、上述のものに限定されることはなく、要旨を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を加えることは可能である。
【0079】
例えば、第1の実施形態に係るフィードフォワード制御部11は、非線形の伝達特性を有するモータ20の摩擦の伝達特性(モータ側摩擦特性関数G
M)、負荷21の摩擦の伝達特性(負荷側摩擦特性関数G
L)、及び、連結部材22のガタの伝達特性(不感帯特性関数F1)の全てを含む2慣性系モデルの逆モデルを有するものとして説明した。しかし、他の実施形態においてはこの態様に限定されない。
即ち、他の実施形態においては、フィードフォワード制御部11は、非線形の伝達特性を有するモータ20の摩擦の伝達特性、負荷21の摩擦の伝達特性、及び、連結部材22のガタの伝達特性のうち少なくとも何れか一つを含む2慣性系モデルの逆モデルを有するものとしてもよい。
このようにしても、フィードフォワード制御部11は、何れかの非線形の伝達特性が考慮された逆モデルに基づいて、モータ20に対するフィードフォワード値を算出するので、精度の高いフィードフォワード値を算出することができる。
【0080】
また、第1の実施形態に係る連結部材22のガタの伝達特性は、
図4(a)、(b)に示すような、傾きが不連続な折れ線によって規定されているが、他の実施形態においてはこの態様に限定されない。
例えば、他の実施形態に係る連結部材22のガタの伝達特性は、
図4(a)、(b)に示す折れ線に準じるものであって、かつ、傾きが連続的に変化する曲線によって規定されているものであってもよい。
この場合、
図8のブロック111aに示す、ガタ変位のねじれ角度についての微分特性((d/d(θ
M−θ
L))・BKLS)も、傾きが連続的に変化する曲線となる。
【0081】
また、第1の実施形態に係るガタ微分演算部111は、機械系2からモータ角速度ω
M及び負荷角速度ω
Lを入力し、速度反転時(ω
M=0)からのねじれ角速度(ω
M−ω
L)の積分値によって特定するものとして説明したが、他の実施形態においてはこの態様に限定されない。
例えば、他の実施形態に係るガタ微分演算部111は、モータ角度θ
M及び負荷角度θ
Lを入力し、ねじれ角度(θ
M−θ
L)を直接特定してもよい。ただし、この場合は、モータ20側で検出されるモータ角度θ
Mと、負荷21側で検出される負荷角度θ
Lとの間にオフセット誤差が生じないようにするのが好ましい。
【0082】
また、第1の実施形態に係るガタ微分演算部111は、ガタ移動中のねじれ角速度(ω
M−ω
L)を一定(所定の比例定数K)とみなすものとしたが、他の実施形態においてはこの態様に限定されない。
例えば、他の実施形態に係るガタ微分演算部111は、ねじれ角速度(ω
M−ω
L)を機械系2から入力されるモータ角速度ω
M及び負荷角速度ω
Lを用いて算出してもよい。
【0083】
また、第1の実施形態に係るフィードフォワード制御部11は、フィードバック制御部10の比例制御部10aが出力するモータ角度フィードバック値ω
M_FBを補償するためのモータ角度フィードフォワード値ω
M_FFを出力するものとして説明した。また、第1の実施形態に係るフィードフォワード制御部11は、フィードバック制御部10の比例積分制御部10bが出力するトルクフィードバック値τ
FBを補償するためのトルクフィードフォワード値τ
FFを出力するものとして説明した。しかし、他の実施形態においてはこの態様に限定されない。
例えば、他の実施形態に係るフィードフォワード制御部11は、トルクフィードフォワード値τ
FFに相当するPI制御前のモータ角速度成分をモータ角速度フィードフォワード値ω
M_FFに上乗せし、モータ角速度フィードフォワード値ω
M_FFのみを出力してもよい。
【0084】
また、第1の実施形態に係る工作機械2A(
図9)は、連結部材22として、ボールねじ22Aのみを有するものとして説明したが、他の実施形態においてはこの態様に限定されない。
即ち、他の実施形態に係る工作機械2Aは、連結部材22として、ボールねじ22Aに加え歯車を具備する態様であってもよい。この場合、連結部材22に係るパラメータ(ねじれ剛性係数K
R、ねじれ粘性係数D
R、不感帯幅BL等)は、ボールねじ22A及び歯車を一体の連結部材22とみなして各パラメータを同定してもよい。
【0085】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態に係る駆動システムについて、
図10を参照しながら詳細に説明する。
【0086】
図10は、第2の実施形態に係る機械系の構造を示す図である。
第2の実施形態に係る機械系2は、
図10に示すような段ボールカッター2Bである。
段ボールカッター2Bは、サーボモータ20Bと、回転刃21Bと、歯車22Bとを備えている。
サーボモータ20Bは、モータ20の一態様であって、第1の実施形態と同様のサーボモータである。
回転刃21Bは、負荷21の一態様であって、段ボールPの送出に合わせて回転することで段ボールPを送出方向に対し垂直にカットする機構である。
歯車22Bは、連結部材22の一態様であって、サーボモータ20Bの回転動力を回転刃21Bに伝達する。
【0087】
<第3の実施形態>
次に、第3の実施形態に係る駆動システムについて、
図11を参照しながら詳細に説明する。
【0088】
図11は、第3の実施形態に係る機械系の構造を示す図である。
第3の実施形態に係る機械系2は、
図11に示すような射出成型機2Cである。
射出成型機2Cは、サーボモータ20Cと、射出成型機構21Cと、ボールねじ22Cとを備えている。
【0089】
サーボモータ20Cは、モータ20の一態様であって、第1、第2の実施形態と同様のサーボモータである。2つのサーボモータ20Cは、各々に対応する制御装置1からトルク指令値を受け付ける。サーボモータ20Cは、ボールねじ22Cを通じて、樹脂材料212C(成型材料)を圧力的に移送する射出スクリュー210Cを駆動する。
【0090】
射出成型機構21Cは、負荷21の一態様であって、樹脂材料を金型に射出する機構である。射出成型機構21Cは、射出スクリュー210Cを通じて樹脂材料212Cを射出して金型214Cの成型空間215Cに注入する。
具体的には、射出スクリュー210Cは、射出シリンダ211Cに挿入され、射出スクリュー210Cと射出シリンダ211Cとの間には、樹脂材料212Cが充填されている。樹脂材料212Cは、ノズル213Cを介して金型214Cに供給される。金型214Cの内部には成型空間215Cが設けられ、樹脂材料212Cは成型空間215Cに射出されて所望の形状に成型される。
【0091】
ボールねじ22Cは、連結部材22の一態様であって、ねじ部220Cと、ナット部221Cとを有している。
サーボモータ20Cがボールねじ軸を回転すると、ナット部221Cが直線運動をし、サーボモータ20Cが生成する回転駆動力は、ボールねじにより直線運動の駆動力に変換される。その直線運動の駆動力は、射出スクリュー210Cに伝達され、射出スクリュー210Cと射出シリンダ211Cとの間に充填される樹脂材料212Cが金型214Cに射出される。
【0092】
<第4の実施形態>
次に、第4の実施形態に係る駆動システムについて、
図12を参照しながら詳細に説明する。
【0093】
図12は、第4の実施形態に係る機械系の構造を示す図である。
第4の実施形態に係る機械系2は、
図12に示すようなロボットアーム2D(マニピュレータ)である。
ロボットアーム2Dは、サーボモータ20Dと、アーム部21Dと、歯車22Dとを備えている。
サーボモータ20Dは、モータ20の一態様であって、第1〜第3の実施形態と同様のサーボモータである。
アーム部21Dは、負荷21の一態様であって、操作者の操作に応じて所望にグリップ動作等を行う。
歯車22Dは、連結部材22の一態様であって、サーボモータ20Dの回転動力をアーム部21Dに伝達する。
【0094】
上述の各実施形態においては、制御装置1の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各手順を行うものとしている。ここで、上述した制御装置1の各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって上記各種処理が行われる。ここで、コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
また、制御装置1の機能が、ネットワークで接続される複数の装置に渡って具備される態様であってもよい。
【0095】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものとする。