(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように同一内容の放送を行っているDABのサービスとFM放送のステーションとの間で受信対象を切り替える際に、切替前後で出力する音声の音量レベルに差が発生しないように、DABのサービスとFM放送のステーションの受信音声の音量レベルに応じて、切替時に出力音声の音量レベルを調整するラジオ受信装置において、FM放送について上述したハイカットやソフトミュートを実行している場合、切替前後において出力する音量レベルに比較的大きな差が発生してしまい、ユーザに不快感を与えてしまうことがある。
【0007】
すなわち、この場合、DABからFM放送への切替前にFM放送の受信音声の音量レベルを検出し、検出した音量レベルに応じてFM放送の受信音声の音量レベルを調整し、出力音声のDABからFM放送への切替を行うという手順を経ることとなる。また、FM放送の受信音声の音量レベルの検出は、DABの受信品質が劣化したときに直ちにFM放送に切り替えられるように、DABの受信品質が劣化する以前の時点において事前に行っておくこととなる。そして、このために、FM放送の受信音声の音量レベルを検出した後、出力音声のDABからFM放送への切替を行うまでの間に、FM放送の受信電界強度が変化し、ハイカットやソフトミュートによってFM放送の受信音声の音量レベルが大きく変化することがある。そして、このようにFM放送の受信音声の音量レベルが大きく変化した場合には、検出したFM放送の受信音声の音量レベルに応じて調整した音量レベルは、切り替え時のDABの受信音声の音量レベルと一致しなくなり、切替前後において出力する音量レベルに比較的大きな差が発生することとなる。
【0008】
そこで、本発明は、ハイカットやソフトミュート等の受信電界強度に応じた音声処理を行う放送受信装置において、受信中の放送サービスから、当該放送サービスと同内容の放送を行っている放送サービスに、出力音声の音量レベルが変化しないように受信対象を切り替えることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題達成のために、本発明は、デジタル放送とアナログ放送とを受信するラジオ受信装置に、前記デジタル放送を受信し当該デジタル放送で受信した音声であるデジタル放送音声を出力するデジタル放送受信部と、前記アナログ放送を受信し当該アナログ放送で受信した音声であるアナログ放送音声を出力する、当該アナログ放送の受信状態に応じて出力するアナログ放送音声を調整する音声調整機能を備えたアナログ放送受信部と、前記アナログ放送音声の音量レベルを、設定されたゲインで調整する音量レベル調整手段と、前記デジタル放送音声と前記音量レベル調整手段が音量レベルを調整したアナログ放送音声とのうちの一方を選択的にユーザに対して出力する出力手段と、制御手段とを備えたものである。ここで、前記制御手段は、前記出力手段が前記デジタル放送音声を出力している期間中、前記音声調整機能を無効化した状態で前記アナログ放送受信部に、前記デジタル放送受信部が受信しているデジタル放送と同じ内容の放送を行っているアナログ放送を受信させると共に、前記デジタル放送音声の音量レベルと前記アナログ放送音声の音量レベルとに基づいて、前記出力手段で出力する音声を前記デジタル放送音声から前記音量レベル調整手段が音量レベルを調整したアナログ放送音声に切り替えても音量レベルが変化しなくなるゲインを前記音量レベル調整手段に設定する切替準備手段と、前記出力手段が前記デジタル放送音声を出力しているときに、前記デジタル放送受信部の前記デジタル放送の受信品質が劣化したときに、前記出力手段で出力する音声を前記デジタル放送音声から前記音量レベル調整手段が音量レベルを調整したアナログ放送音声に切り替えると共に、前記アナログ放送受信装置の前記音声調整機能を有効化する出力切替手段とを備えている。
【0010】
このような放送受信装置によれば、前記デジタル放送音声を出力している期間、アナログ放送の受信状態に応じて出力するアナログ放送音声を調整する音声調整機能を無効化するので、当該期間中に、デジタル放送音声の音量レベルとアナログ放送音声の音量レベルとに基づいて、出力手段で出力する音声を前記デジタル放送音声から前記音量レベル調整手段が音量レベルを調整したアナログ放送音声に切り替えても音量レベルが変化しなくなるゲインを前記音量レベル調整手段に設定した後に、デジタル放送の受信品質が劣化し、出力手段で出力する音声を前記デジタル放送音声から前記音量レベル調整手段が音量レベルを調整したアナログ放送音声に切り替えるまでの間に、アナログ放送受信部から出力されるアナログ放送音声の音量レベルは大きく変化しないことが蓋然性が高い。
【0011】
よって、出力手段で出力する音声を前記デジタル放送音声から前記音量レベル調整手段が音量レベルを調整したアナログ放送音声に切り替えたときに、切替前後で出力される音量レベルが変化しないことが期待できる。
【0012】
ここで、このような放送受信装置は、前記アナログ放送受信部の音声調整機能を、設定された応答時間特性で前記アナログ放送の受信状態の変化に応答して前記アナログ放送音声を調整するものとし、前記制御手段において、前記出力手段が前記デジタル放送音声を出力している期間中に、第1の応答時間特性を前記アナログ放送受信部の音声調整機能に設定すると共に、前記出力手段で出力する音声を前記デジタル放送音声から前記音量レベル調整手段が音量レベルを調整したアナログ放送音声に切り替えてから所定時間が経過したときに、前記アナログ放送受信部の音声調整機能の応答時間が前記第1の応答時間特性よりも短くなる第2の応答時間特性を前記アナログ放送受信部の音声調整機能に設定するようにしてもよい。
【0013】
このようにすることにより、前記出力手段で出力する音声を前記デジタル放送音声から前記音量レベル調整手段が音量レベルを調整したアナログ放送音声に切り替える際に、前記アナログ放送受信装置の前記音声調整機能を有効化したときに、当該音声調整機能の無効/有効の切替によって出力手段から出力される音声の音量レベルが急峻に変化してしまうことを抑止することができる。
【0014】
ここで、以上の放送受信装置において、前記アナログ放送受信部の音声調整機能は、アナログ放送の受信電界強度が低下したときに、前記アナログ放送音声の高域成分を減衰させるハイカット機能を含むものとしてもよい。
【0015】
また、以上の放送受信装置において、前記アナログ放送受信部の音声調整機能は、アナログ放送の受信電界強度が低下したときに、前記アナログ放送音声の音量レベルを低下させるソフトミュート機能を含むものとしてもよい。
【0016】
また、以上の放送受信装置において、前記アナログ放送は、たとえば、FM放送とすることができる。
また、以上の放送受信装置において、前記デジタル放送は、たとえば、DAB(Digital Audio Broadcasting)としてもよい。
また、以上の放送受信装置は移動体に搭載されるものであってもよい。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、ハイカットやソフトミュート等の受信電界強度に応じた音声処理を行う放送受信装置において、受信中の放送サービスから、当該放送サービスと同内容の放送を行っている放送サービスに、出力音声の音量レベルが変化しないように受信対象を切り替えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1に、本実施形態に係るラジオ受信装置の構成を示す。
図示するように、ラジオ放送受信機は、自動車に搭載されるラジオ受信機やポータブルラジオ受信機などの位置が変動するラジオ放送受信機である。
そして、図示するように、ラジオ放送受信機は、DAB受信部1、FM受信部2、切替処理部3、アンプ4、スピーカ5、制御部6、表示部7、操作部8を備えている。
ここで、DAB受信部1は、DAB(DAB+を含む)の放送規格によるラジオ放送を受信する受信部であり、DABフロントエンド11(DAB F/E11)、DABデコーダ12、オーディオデコーダ13を備えている。
【0020】
また、FM受信部2は、FM放送の放送規格によるラジオ放送を受信する受信部であり、FMフロントエンド21(FM F/E21)、FM復調部22、RDSデコーダ23、ADコンバータ24(A/D24)、音声調整部25を備えている。
【0021】
さて、ここで、DABでは、一つの周波数チャネルで、各々が一つの音声放送に相当するサービスを複数放送することができ、各サービスは、当該サービスによって放送されるサービス識別子SIDによって識別される。また、同じ周波数チャネルで放送されるサービスの集まりをアンサンブルと呼ぶ。
【0022】
このような構成において、DAB受信部1は、以下のようなサービスの受信動作を行う。
すなわち、サービスの受信動作において、DAB受信部1のDABフロントエンド11は、DAB受信チャネルとして設定された周波数チャネルのDABを受信し、受信データをDABデコーダ12に送る。DABデコーダ12は、DABフロントエンド11から送られた受信データのうちから、DAB受信サービスとして設定されたサービスで受信したオーディオデータをオーディオデコーダ13に送ると共に、オーディオデータと共に受信したサービス識別子SIDやサービスリンキング情報を制御部6に送る。そして、オーディオデコーダ13は、DABデコーダ12から送られたオーディオデータをデコードして切替処理部3に出力する。また、DABフロントエンド11やDABデコーダ12は、DAB受信チャネルの受信電界強度やSN比や受信データの誤り率などの、DABのサービスの受信品質に係る情報を検出して制御部6に通知する。
【0023】
以上のサービスの受信動作において、DAB受信チャネルで放送を行っているサービスのうちの、DAB受信サービスとして設定されたサービスが、当該受信動作の対象のサービスに該当する。
【0024】
また、FM受信部2は、以下のようなステーションの受信動作を行う。
すなわち、ステーションの受信動作において、FM受信部2のFMフロントエンド21は、FM受信チャネルとして設定された周波数チャネルを受信し、受信信号をFM復調部22に送る、FM復調部22は受信信号から音声信号を復調してADコンバータ24に送る。ADコンバータ24は送られた音声信号をオーディオデータに変換し音声調整部25に送る。音声調整部25は、FM復調部22から送られたオーディオデータに所定の音声調整処理を施し切替処理部3に送る。また、FM復調部22は、RDS(Radio Data System)によって音声信号に多重化されて送信されたデータ信号をRDSデコーダ23に送り、RDSデコーダ23はデータ信号からデータをデコードし制御部6に送る。ここで、RDSデコーダ23が制御部6に送るデータには、FM受信チャネルとして設定された周波数チャネルのステーションからFM放送されるプログラム(番組)の識別子となるプログラム識別子PIや、AFリストなどが含まれる。また、FMフロントエンド21は、FM受信チャネルの受信電界強度やSN比などの、FM受信チャネルのFM放送の受信品質に係る情報を検出して制御部6に通知する。
【0025】
ここで、上述した音声調整部25が行う音声調整処理とは、FMフロントエンド21が検出しているFM受信チャネルの受信電界強度が所定のしきい値以下であるときに、受信電界強度が小さくなるほどオーディオデータの高域成分を大きく減衰させるハイカット処理と、FMフロントエンド21が検出しているFM受信チャネルの受信電界強度が所定のしきい値以下であるときに、受信電界強度が小さくなるほどオーディオデータの音量レベルを小さくするソフトミュート処理である。
【0026】
なお、以上のステーションの受信動作において、FM受信チャネルで放送を行っているステーションが受信動作の対象のステーションに該当する。
ここで、制御部6は、DAB受信部1から、通知されたサービスの受信品質に係る情報から、そのデジタル放送受信部が受信動作を行っているDABのサービスの受信品質を算定し、FM受信部2のFMフロントエンド21から通知されたFM放送の受信品質に係る情報から、そのFM受信部2が受信動作を行っているFM放送のステーションの受信品質を算定する。
【0027】
さて、DABのサービスで放送される内容と、当該サービスのSIDと一致するPIのプログラムを放送しているFM放送のステーションは、同内容のプログラム(番組)を放送している。また、FM放送で受信するAFリストは、同じPIのプログラムを放送している他のFM放送の周波数である代替周波数を示す。また、DABのサービスで受信するサービスリンキング情報は、プログラム(番組)毎に、そのプログラムを放送しているDABのサービス、FM放送のステーションの識別を示す。
【0028】
したがって、制御部6は、DABのサービスのSID、FM放送のPI、FM放送で受信するAFリスト、DABで受信するサービスリンキング情報に基づいて、プログラム毎に、同内容のプログラムを放送している、すなわち、サイマル放送の関係にあるDABのサービス、FM放送のステーションを知ることができる。
【0029】
次に、
図2に、切替処理部3の構成を示す。
図示するように、切替処理部3は、DAB受信部1から送られたオーディオデータを格納する第1バッファ31、FM受信部2から送られたオーディオデータを格納する第2バッファ32、同期処理部33、第1音量レベル検出部34、第2音量レベル検出部35、第1デジタルアンプ36、第2デジタルアンプ37、セレクタ38、DAコンバータ39(D/A39)を備えている。
【0030】
このような構成において同期処理部33は、第1バッファ31と第2バッファ32に格納されたオーディオデータを比較し、相互にサイマル放送の関係にあるDABのオーディオデータとFM放送のオーディオデータの同じ音声に対応する部分が第1バッファ31と第2バッファ32から同時に出力されるように、第1バッファ31と第2バッファ32による各オーディオデータの遅延時間をそれぞれ設定する同期処理と、第1バッファ31と第2バッファ32に、それぞれ、当該バッファに設定した遅延時間オーディオデータを遅延させて出力させる処理を行う。
【0031】
また、第1音量レベル検出部34は、第1バッファ31から出力されるDABのオーディオデータの音量レベルを検出して制御部6に通知し、第2音量レベル検出部35は、第2バッファ32から出力されるFM放送のオーディオデータの音量レベルを検出て制御部6に通知する。
【0032】
また、第1デジタルアンプ36は制御部6から設定されたゲインで第1バッファ31から出力されるDABのオーディオデータを増幅してセレクタ38に送り、第2デジタルアンプ37は制御部6から設定されたゲインで第2バッファ32から出力されるFM放送のオーディオデータを増幅してセレクタ38に送る。
【0033】
そして、セレクタ38は、制御部6の制御に従って、第1デジタルアンプ36から出力されるDABのオーディオデータと第2デジタルアンプ37から出力されるFM放送のオーディオデータの二つのオーディオデータのうちの一方をDAコンバータ39に送り、DAコンバータ39はセレクタ38から送られたオーディオデータをアナログの音声信号に変換してアンプ4に出力する。
【0034】
さて、このようなラジオ受信機の構成において、制御部6は、表示部7を用いた適当なユーザインタフェースで、ユーザから操作部8を介した特定のDABのサービスの受信の要求が発生したならば、受信対象放送を受信を要求されたサービスに切り替える。
【0035】
そして、制御部6は、ユーザの要求に応じて受信対象放送がDABのサービスに切り替ったならば、当該サービスが含まれるアンサンブルの周波数チャネルをDAB受信チャネルとして、DABフロントエンド11に設定し、当該サービスをDAB受信サービスとして、DABデコーダ12に設定することにより当該サービスの受信動作をDAB受信部1に行わせる。
【0036】
また、制御部6は、切替処理部3のセレクタ38に、第1バッファ31から出力されるDABのオーディオデータをDAコンバータ39に出力させる。
ここで、この結果、受信対象放送であるユーザが受信を要求したDABのサービスで放送されている音声がスピーカ5からユーザに出力されることとなる。
なお、初期状態において、第1バッファ31と第2バッファ32の遅延時間や、第1デジタルアンプ36と第2デジタルアンプ37のゲインは所定の初期値に設定されている。
さて、制御部6は、受信対象放送がDABのサービスに、FM放送のステーションや他のDABのサービスから切り替わると、
図3に示すFM放送切替準備処理を開始し、そのDABのサービスが受信対象放送であることを継続している期間中、当該FM放送切替準備処理の実行を継続する。
【0037】
図示するように、このFM放送切替準備処理では、制御部6は、まず、FM受信部2の音声調整部25の音声調整機能をオフに設定し、FM受信部2の音声調整部25において上述したハイカット処理やソフトミュート処理などの音声調整処理が行われないようにする(ステップ302)。なお、FM受信部2の音声調整部25は音声調整機能がオフに設定されている期間中は、FM復調部22から送られたオーディオデータをそのまま切替処理部3に送る。
【0038】
そして、制御部6は、次に、FM受信部2の音声調整部25の応答時間特性を長時間設定に設定する(ステップ304)。ここで、ハイカット処理では、受信電界強度が変化したときに、オーディオデータの高域成分の減衰率を漸次的に変化させて、オーディオデータの高域成分の減衰率を受信電界強度に応じた減衰率まで変化させる処理を行う。また、ソフトミュート処理では、受信電界強度が変化したときに、オーディオデータの音量レベルを漸次的に変化させて、オーディオデータの音量レベルを受信電界強度に応じた音量レベルまで変化させる処理を行う。また、音声調整部25の応答時間特性とは、ハイカット処理であれば、受信電界強度が変化してから、オーディオデータの高域成分の減衰率が受信電界強度に応じた減衰率に変化するまでの時間である応答時間を示し、ソフトミュート処理であれば、受信電界強度が変化してから、オーディオデータの音量レベルが受信電界強度に応じた音量レベルに変化するまでの時間である応答時間を規定するものである。
【0039】
ここで、FM受信部2の音声調整部25の応答時間特性としては、上述した長時間設定と通常時間設定とを選択的に設定可能であり、FM受信部2の音声調整部25の応答時間特性が長時間設定に設定されているときには、通常時間設定が設定されているときよりもハイカット処理やソフトミュート処理の応答時間は比較的長い時間となる。換言すれば、FM受信部2の音声調整部25の応答時間特性が長時間設定に設定されているときには、ハイカット処理におけるオーディオデータの高域成分の減衰率の変化は、通常時間設定が設定されているときよりもゆるやかとなり、ソフトミュート処理におけるオーディオデータの音量レベルの変化は、通常時間設定が設定されているときよりもゆるやかとなる。
【0040】
さて、次に制御部6は、DAB受信部1で受信中のDABとサイマル放送の関係にある受信可能なFM放送のステーションが存在するかどうかを、DAB受信部1で受信中のDABとサイマル放送の関係にあるFM放送の各ステーションの受信を、順次、FM受信部2に行わせながら、各ステーションの受信品質を算定することにより調査する(ステップ306)。そして、存在しない場合には、受信中のDABとサイマル放送の関係にある受信可能なFM放送のステーションが発生するまでステップ306の処理を繰り返す。
【0041】
一方、受信中のDABとサイマル放送の関係にある受信可能なFM放送のステーションが存在する場合には、存在したFM放送のステーションのうちの受信状態が最良のFM放送のステーションの受信をFM受信部2に開始させる(ステップ308)。
【0042】
また、切替処理部3の同期処理部33に上述した同期処理を開始させる(ステップ310)。
次に、同期処理部33の同期処理が完了し、DAB受信部1で受信したDABのオーディオデータとFM受信部2で受信したFM放送のオーディオデータの同じ音声に対応する部分が第1バッファ31と第2バッファ32から同時に出力されるようになったならば(ステップ312)、切替処理部3の第1音量レベル検出部34と第2音量レベル検出部35から、DABのオーディオデータの音量レベルとFM放送のオーディオデータの音量レベルを取得する(ステップ314)。
【0043】
そして、取得したFM放送のオーディオデータと音量レベルと、取得したDABのオーディオデータの音量レベルと、第1デジタルアンプ36に設定しているゲインとに基づいて、セレクタ38に入力するFM放送のオーディオデータの音量レベルをセレクタ38に入力しているDABのオーディオデータの音量レベルに一致させる第2デジタルアンプ37のゲインを算定し、第2デジタルアンプ37に設定する(ステップ316)。
【0044】
そして、所定のタイムアウト時間(たとえば、数分)を持つタイマをスタートし(ステップ318)、タイマがタイムアウトしたならば(ステップ320)、ステップ306からの処理に戻る。
【0045】
以上、制御部6が、受信対象放送がDABのサービスである期間中行うFM放送切替準備処理について説明した。
以上のようなFM放送切替準備処理によれば、受信対象放送がDABのサービスである期間中、すなわち、DAB受信部1で受信したDABの音声をスピーカ5から出力している期間中、当該DABとサイマル放送の関係にある受信可能なFM放送のステーションのFM受信部2における受信と、切替処理部3におけるDAB受信部1で受信したDABのオーディオデータとFM受信部2で受信したFM放送のオーディオデータとの同期がバックグランドで行われると共に、FM受信部2で受信したFM放送のオーディオデータの音量レベルの検出と第2デジタルアンプ37のゲインの調整が定期的に行われる。
【0046】
次に、制御部6は、受信対象放送がDABのサービスである期間中に、DAB受信部1のDABの受信品質が劣化すると、FM受信部2でDABのサービスとサイマル放送の関係にあるFM放送のステーションを受信しているかどうかを調べ、受信している場合には、受信対称放送を、FM受信部2で受信しているFM放送のステーションに切り替えるFM放送切替処理を行う。
【0047】
図4に、このFM放送切替処理の手順を示す。
図示するように、制御部6はFM放送切替処理において、まず、FM受信部2の音声調整部25の音声調整機能をオンに切り替える(ステップ402)。
そして、受信対象放送をFM受信部2で受信しているFM放送のステーションに切り替え、セレクタ38がDAコンバータ39に出力するオーディオデータを、第2デジタルアンプ37から出力されるFM放送のオーディオデータに切り替える(ステップ404)。
【0048】
ここで、これにより、スピーカ5から出力される音声が、FM放送の音声に切り替わる。
また、この時点までに、上述したFM放送切替準備処理により、切替前のDABのオーディオデータと切替後のFM放送のオーディオデータは同期化、同音量レベル化されているので、スピーカ5から出力される音声はDABのサービスの音声からFM放送のステーションの音声にシームレスに切り替わることとなる。また、換言すれば、FM放送切替準備処理により、事前に、切替前のDABのオーディオデータと切替後のFM放送のオーディオデータを同期化、同音量レベル化しているので、受信対象放送であるDABのサービスの受信品質が劣化したならば、即座に、受信対象放送をFM放送に切り替えることができる。
【0049】
次に、タイマをスタートし(ステップ406)、タイマのタイムアウトを待つ。ここで、タイマのタイムアウト時間は、応答時間特性を長時間設定にしたときの、FM受信部2の音声調整部25のハイカット処理やソフトミュート処理の最大応答時間相当の時間とする。
【0050】
そして、タイマがタイムアウトしたならば(ステップ408)、FM受信部2の音声調整部25の応答時間特性を、上述した通常時間設定に設定し(ステップ410)、FM放送切替処理を終了する。
【0051】
以上、制御部6が行うFM放送切替処理について説明した。
図5aに、このようなFM放送切替準備処理とFM放送切替処理の動作例を示す。
図示した例では、受信対象放送がDABのサービスでありスピーカ5からDABの音声が出力されているときに、時刻t0でFM放送切替準備処理によって、その時点のDABのオーディオデータの音量レベルとFM放送のオーディオデータの音量レベルの差に応じて、FM放送のオーディオデータのゲインGが、スピーカ5から出力する音声をFM放送の音声に切り替えたときに、当該FM放送の音声が現在スピーカから出力されているDABの音声と同じ音量レベルで出力されるように調整される。
【0052】
そして、その後、時刻t1で、受信対象放送であるDABのサービスの受信品質が劣化すると、FM放送切替処理によって、スピーカ5から出力する音声が、FM放送の音声に切り替えられる。ここで、受信対象放送がDABのサービスである期間中、FM受信部2の音声調整部25の音声調整機能はオフに設定されているので、時刻t0から時刻t1までの間に、FM受信部2から出力されるFM放送の音声の音量レベルは大きく変化していないことが期待できる。
【0053】
よって、時刻t1でスピーカ5から出力する音声をDABの音声からFM放送の音声に切り替えたときに、切替前後でスピーカ5から出力される音量レベルに大きな差は生じず、シームレスに出力音声がDABの音声からFM放送の音声に切り替わることが期待できる。
【0054】
また、時刻t1でFM受信部2の音声調整部25の音声調整機能はオフからオンに切り替えられるが、この時点では、FM受信部2の音声調整部25の音声調整機能の応答時間特性はFM放送切替準備処理によって長時間設定に設定されたままであるので、音声調整機能のオフからオンへの切替による出力音量レベルの急激な変化も抑制される。
【0055】
そして、その後、所定の期間が経過した時刻t2において、FM受信部2の音声調整部25の音声調整機能の応答時間特性は通常時間特性に設定され、以降、音声調整部25の音声調整機能によって、FM放送の受信電界強度の低下時のノイズの出力による不快感が効果的に抑制されることとなる。
【0056】
次に、
図5bに、本実施形態に対する比較例として、応答時間特性を通常時間特性としたFM受信部2の音声調整部25の音声調整機能を常時オンとした場合の出力音量レベルの変化を示す。
【0057】
この例では、受信対象放送がDABのサービスでありスピーカ5からDABの音声が出力されているときに、時刻t0で、その時点のDABのオーディオデータの音量レベルとFM放送のオーディオデータの音量レベルの差に応じて、FM放送のオーディオデータのゲインGが、スピーカ5から出力する音声をFM放送の音声に切り替えたときに、当該FM放送の音声が現在スピーカから出力されているDABの音声と同じ音量レベルで出力されるように調整される。
【0058】
そして、その後、時刻t1で、受信対象放送であるDABのサービスの受信品質が劣化すると、スピーカ5から出力する音声が、FM放送の音声に切り替えられる。
ここで、受信対象放送がDABのサービスである期間中も、FM受信部2の音声調整部25の音声調整機能はオンに設定されているので、図示するように、FM放送の受信電界強度の変化によって、時刻t0から時刻t1までの間に、FM受信部2から出力されるFM放送の音声の音量レベルが大きく変化することがある。すなわち、時刻t0ではFM放送の受信電界強度が良好であって音声調整部25の音声調整機能によってハイカットやソフトミュートが行われていない一方で、時刻t1までにFM放送の受信電界強度が劣化し、時刻t1で音声調整部25の音声調整機能によってハイカットやソフトミュートが行われている場合には、
図5bに示すように時刻t1ではFM放送の音声の音量レベルが時刻t0より低下する。また、逆に、時刻t0ではFM放送の受信電界強度が劣化しており音声調整部25の音声調整機能によってハイカットやソフトミュートが行われている一方で、時刻t1までにFM放送の受信電界強度が良好となり、時刻t1で音声調整部25の音声調整機能によってハイカットやソフトミュートが行われていない場合には、時刻t1ではFM放送の音声の音量レベルが時刻t0より大きくなる。
【0059】
そして、音量レベルが大きく変化した場合、時刻t1におけるFM受信部2が出力するFM放送の音声とDAB受信部1が出力するDABの音声の音量レベルの差は、時刻t0における差とは大きく異なったものとなるので、時刻t0における差に応じてゲインGを調整した時刻t1におけるFM放送の音声の音量レベルは、時刻t1におけるDABの音声の音量レベルと大きく異なったものとなり、時刻t1でスピーカ5から出力する音声をDABの音声からFM放送の音声に切り替えたときに切替前後でスピーカ5から出力される音量レベルに大きな差は生じてしまうこととなる。
【0060】
さて、次に、制御部6は、受信対象放送がFM放送のステーションである期間中、当該サイマル放送の関係にあるDABのステーションの周波数チャネルの受信を、順次、DAB受信部1に行わせながら、各周波数チャネルの受信品質を算定することにより、受信対象放送であるFM放送のステーションとサイマル放送の関係にあるDABのサービスが受信可能であるかどうかを探索する処理を繰り返す。
【0061】
そして、受信対象放送であるFM放送のステーションとサイマル放送の関係にあるDABのサービスが受信可能となったならば、DAB受信部1に当該DABのサービスの受信を開始させると共に、受信対象放送を、FM放送のステーションから、探索したDABのサービスに切り替えるDAB切替処理を行う。
【0062】
図6に、このDAB切替処理の手順を示す。
図示するように制御部6は、このDAB切替処理において、まず、切替処理部3の同期処理部33に上述した同期処理を開始させる(ステップ602)。そして、同期処理部33の同期処理が完了し、DAB受信部1で受信したDABのオーディオデータとFM受信部2で受信したFM放送のオーディオデータの同じ音声に対応する部分が第1バッファ31と第2バッファ32から同時に出力されるようになったならば(ステップ604)、切替処理部3の第1音量レベル検出部34と第2音量レベル検出部35から、DABのオーディオデータの音量レベルとFM放送のオーディオデータの音量レベルを取得する(ステップ606)。
【0063】
そして、取得したFM放送のオーディオデータと音量レベルと、取得したDABのオーディオデータの音量レベルと、第2デジタルアンプ37に設定しているゲインとに基づいて、セレクタ38に入力するDABのオーディオデータの音量レベルを、セレクタ38に入力しているFM放送のオーディオデータの音量レベルに一致させる第1デジタルアンプ36のゲインを算定し、第1デジタルアンプ36に設定する(ステップ608)。
【0064】
そして、受信対象放送をDAB受信部1で受信しているDABのサービスに切り替え、セレクタ38がDAコンバータ39に出力するオーディオデータを、第1デジタルアンプ36から出力されるDABのオーディオデータに切り替える(ステップ610)。ここで、これにより、スピーカ5から出力される音声が、DABの音声に切り替わる。
【0065】
また、受信対象放送がDABのサービスに切り替わったことにより、上述のようにFM放送切替準備処理が開始され、FM放送切替準備処理の実行が、そのDABのサービスが受信対象放送である期間中継続される。
【0066】
以上、制御部6が行うDAB切替処理について説明した。
ここで、このように受信対象放送をFM放送のステーションからDABのステーションに切り替える際には、DABのオーディオデータの音量レベルとFM放送のオーディオデータの音量レベルを取得して第1デジタルアンプ36のゲインを調整した後、直ちに、スピーカ5から出力する音声がFM放送のステーションの音声からDABのサービスの音声に切り替わるので、FM受信部2の音声調整部25の音声調整機能がオンであっても、切替前後でスピーカ5から出力する音量レベルの差が大きくなることはない。
【0067】
以上、本発明の実施形態について説明した。
なお、以上の実施形態では、FM放送とDABを受信するラジオ受信装置について示したが、本実施形態は、サイマル放送の関係にある任意のアナログ放送と任意のデジタル放送間で、音声を出力する放送の切替を行う放送受信装置ついて同様に適用することができる。