特許第6756592号(P6756592)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6756592
(24)【登録日】2020年8月31日
(45)【発行日】2020年9月16日
(54)【発明の名称】逆止弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 15/18 20060101AFI20200907BHJP
   F16K 17/14 20060101ALI20200907BHJP
【FI】
   F16K15/18 F
   F16K17/14
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-231817(P2016-231817)
(22)【出願日】2016年11月29日
(65)【公開番号】特開2018-87621(P2018-87621A)
(43)【公開日】2018年6月7日
【審査請求日】2019年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227386
【氏名又は名称】日東工器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083895
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【弁理士】
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 優
【審査官】 冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−298128(JP,A)
【文献】 特開2012−026541(JP,A)
【文献】 実公昭47−025684(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 15/18
F16K 17/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1開口部、第2開口部、第3開口部、該第1開口部から該第2開口部にまで延在する流体通路、及び該第3開口部と該流体通路とを連通させる隙間通路、を有し、該隙間通路が、Oリング設定空間、該Oリング設定空間よりも該流体通路側の隙間通路内側部、及び該Oリング設定空間よりも該第3開口部側の隙間通路外側部を有する本体部と、
該流体通路内に配置され、該隙間通路との連通位置よりも該第1開口部の側において、該第1開口部から該第2開口部に向かう流体を通し、その逆向きの流体は通さないようにされた逆止弁体と、
該Oリング設定空間内に設定されて該隙間通路を閉塞するOリングと、
を備え、
該隙間通路内側部を通じて該Oリングに作用する内部圧力の、該隙間通路外側部を通じてOリングに作用する外部圧力に対する相対内部圧力が、所定の破断圧力以上となったときに、該Oリングが破断して該内部圧力が外部に放出され、
該外部圧力の該内部圧力に対する相対外部圧力が該破断圧力となったときには該Oリングは破断しないようにされた、逆止弁。
【請求項2】
該隙間通路内側部が該Oリング設定空間に隣接する位置に内側隙間部を有し、該隙間通路外側部が該Oリング設定空間に隣接する位置に外側隙間部を有し、該外側隙間部の径方向での隙間が該内側隙間部の径方向での隙間よりも大きくされた、請求項1に記載の逆止弁。
【請求項3】
当該逆止弁は、該第1開口部が流体供給源に連結されるようにされ、該第2開口部が圧力容器に連結されるようにされて、該第2開口部に連結された該圧力容器に該流体供給源から第1圧力で流体を充填して該第1開口部を閉塞した状態で、該第1圧力よりも高い第2圧力の外部環境下に置かれ、その後に該第2圧力よりも低い第3圧力の外部環境下に置かれるようにして使用される逆止弁であり、
該破断圧力が、該第1圧力よりも大きく且つ該第2圧力よりも小さい圧力であり、
該外側隙間部は、該相対内部圧力が該第1圧力以下であるときには該Oリングが当該外側隙間部にはみ出さないが、該相対内部圧力が該破断圧力以上となったときには該Oリングが当該外側隙間部内にはみ出して破断する大きさの隙間を有し、
該内側隙間部は、該相対外部圧力が該第2圧力となっても該Oリングが当該内側隙間部内にはみ出さない大きさの隙間を有するようにされた、請求項2に記載の逆止弁。
【請求項4】
該隙間通路外側部が、該外側隙間部に該第3開口部の側で隣接し、該外側隙間部よりも大きな径方向での隙間を有する拡大隙間部をさらに有する、請求項2又は3に記載の逆止弁。
【請求項5】
該本体部が、該第1乃至第3開口部、該流体通路、及び該第3開口部から該流体通路にまで延在する閉塞通路を有するハウジング部材と、該ハウジング部材の該閉塞通路内に取り付けられた閉塞部材とを備え、該隙間通路が該閉塞通路の内周面と該閉塞部材の外周面との間に形成された環状の通路であるようにされた、請求項2乃至4のいずれか一項に記載の逆止弁。
【請求項6】
該閉塞部材の該外周面に該Oリング設定空間を画定する環状溝が形成されており、
該外側隙間部を構成している該閉塞部材の外側外周面の外径が、該内側隙間部を構成している内側外周面の外径よりも小さくされた、請求項5に記載の逆止弁。
【請求項7】
該環状溝内において該Oリングよりも該流体通路の側に配置されたバックアップリングをさらに備え、該Oリング設定空間が該環状溝と該バックアップリングとにより画定され、該内側隙間部が、該バックアップリングの外周面と該閉塞通路の内周面との間及び該バックアップリングの内周面と該閉塞部材の外周面との間のうちの少なくとも一方に形成されている、請求項6に記載の逆止弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆止弁に関する。より詳細には、内部に過大な圧力が作用したときにその内部圧力を放出して逆止弁に連結された機器の破損を防止するようにされた逆止弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の逆止弁として、例えば特許文献1に示されるように、流体通路内で可動とされた逆止弁体を備えた、いわゆるポペットタイプの逆止弁が知られている。このような逆止弁においては、使用中は基本的に内部圧力が外部圧力よりも高くなる。しかし、使用環境によっては外部圧力の方が高くなることもある。例えば、逆止弁の流体通路の一方の開口部から圧縮空気を供給して他方の開口部に連結されたタンク内に圧縮空気を充填し、該一方の開口部を閉塞した状態で逆止弁ごとタンクを海底に向かって沈めていくような場合には、外部圧力が徐々に上昇して外部圧力が内部圧力よりも高くなることがある。
【0003】
逆止弁と他の配管やタンクなどの機器とは通常Oリングなどのシール部材により密封係合して連結されている。しかし、外部圧力が高くなると連結部分の密封が何らかの理由により維持できなくなってそこから外部流体が内部に浸入することが起こり得る。特に深海のような非常に高い外部圧力が作用する環境においては、シール部材に極僅かな傷があったりシール部材が微小なゴミを挟み込んでいたりするだけでも、密封状態が解除されて海水が浸入することが起こる。タンク内に高圧の流体が浸入すると内部圧力が高くなり、その状態で海上などの低圧環境下に戻されるなどして外部圧力が低くなると、内部圧力が外部圧力に対して相対的に異常に高い状態となる場合がある。このようにして相対的な内部圧力が逆止弁に連結されている配管やタンクなどの耐圧能力を超えてしまうと、その内部圧力によって機器が破損してしまう危険性がある。そのため、内部圧力の異常な上昇を防いで機器の破損を防止するために、従来は特許文献2に示すようなリリーフ弁を別に設けて、内部圧力が一定以上になったときに内部圧力を放出するようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−125643号公報
【特許文献2】特開2014−145478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、逆止弁とリリーフ弁とをそれぞれ設けるようにすると、配管等にそれぞれを取り付ける場所を確保しなければならず、設置空間が大きくなってしまう。また、配管等の流体通路が複雑になったり、リリーフ弁を追加したりすることによりコストが増加する虞もある。
【0006】
そこで本発明は、上記従来技術の問題に鑑みて、過大な内部圧力を放出する機能を備えた逆止弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、
第1開口部、第2開口部、第3開口部、該第1開口部から該第2開口部にまで延在する流体通路、及び該第3開口部と該流体通路とを連通させる隙間通路、を有し、該隙間通路が、Oリング設定空間、該Oリング設定空間よりも該流体通路側の隙間通路内側部、及び該Oリング設定空間よりも該第3開口部側の隙間通路外側部を有する、本体部と、
該流体通路内に配置され、該隙間通路との連通位置よりも該第1開口部の側において、該第1開口部から該第2開口部に向かう流体を通し、その逆向きの流体は通さないようにされた逆止弁体と、
該Oリング設定空間内に設定されて該隙間通路を閉塞するOリングと、
を備え、
該隙間通路内側部を通じて該Oリングに作用する内部圧力の、該隙間通路外側部を通じてOリングに作用する外部圧力に対する相対内部圧力が、所定の破断圧力以上となったときに、該Oリングが破断して該内部圧力が外部に放出され、
該外部圧力の該内部圧力に対する相対外部圧力が該破断圧力となったときには該Oリングは破断しないようにされた、逆止弁を提供する。
【0008】
当該逆止弁においては、Oリングに対して所定の破断圧力以上の相対内部圧力が作用した場合にはOリングが破断するが、同圧の相対外部圧力が作用した場合にはOリングは破断しないようになっている。これにより、外部圧力に対しては高い耐圧性を有しながら、相対内部圧力が一定以上に上昇したときにはOリングが破断して内部圧力を放出し、当該逆止弁に連結されている機器が内部圧力により破損することを防止することが可能となる。当該逆止弁自体が、過大な内部圧力を放出する機能を有しているため、別途リリーフ弁を設ける必要がなくなる。
【0009】
具体的には、該隙間通路内側部が該Oリング設定空間に隣接する位置に内側隙間部を有し、該隙間通路外側部が該Oリング設定空間に隣接する位置に外側隙間部を有し、該外側隙間部の径方向での隙間が該内側隙間部の径方向での隙間よりも大きくされているようにすることができる。
【0010】
Oリングに対して大きな圧力が作用すると、Oリングが破断して密封能力が失われてしまうことがある。このようなOリングの破断は、主としてOリングの一部がOリング設定空間から部材間の隙間内にはみ出すように変形することにより生じる。すなわち、Oリングに大きな圧力が作用すると、Oリングはその圧力によって押し潰されて隙間内に向かってはみ出していき、そのはみ出し量が大きくなると、最終的にはその部分が引きちぎられてOリングが破断する。Oリングのはみ出し現象が生じる圧力は隙間の大きさに大きく依存し、隙間が大きくなるほどより低い圧力ではみ出し現象が生じる。したがって、上述のように外側隙間部の径方向での隙間を内側隙間部の径方向での隙間よりも大きくすることにより、内部圧力に対しては比較的に低い破断圧力でOリングが破断するようにすることが可能となる。
【0011】
さらに具体的には、
当該逆止弁は、該第1開口部が流体供給源に連結されるようにされ、該第2開口部が圧力容器に連結されるようにされて、該第2開口部に連結された該圧力容器に該流体供給源から第1圧力で流体を充填して該第1開口部を閉塞した状態で、該第1圧力よりも高い第2圧力の外部環境下に置かれ、その後に該第2圧力よりも低い第3圧力の外部環境下に置かれるようにして使用される逆止弁であり、
該破断圧力が、該第1圧力よりも大きく且つ該第2圧力よりも小さい圧力であり、
該外側隙間部は、該相対内部圧力が該第1圧力以下であるときには該Oリングが当該外側隙間部にはみ出さないが、該相対内部圧力が該破断圧力以上となったときには該Oリングが当該外側隙間部内にはみ出して破断する大きさの隙間を有し、
該内側隙間部は、該相対外部圧力が該第2圧力となっても該Oリングが当該内側隙間部内にはみ出さない大きさの隙間を有するようにすることができる。
【0012】
好ましくは、該隙間通路外側部が、該外側隙間部に該第3開口部の側で隣接し、該外側隙間部よりも大きな径方向での隙間を有する拡大隙間部をさらに有するようにすることができる。
【0013】
拡大隙間部を有することにより、外側隙間部にはみ出したOリングがより安定して破断するようにすることが可能となる。
【0014】
具体的には、該本体部が、該第1乃至第3開口部、該流体通路、及び該第3開口部から該流体通路にまで延在する閉塞通路を有するハウジング部材と、該ハウジング部材の該閉塞通路内に取り付けられた閉塞部材とを備え、該隙間通路が該閉塞通路の内周面と該閉塞部材の外周面との間に形成された環状の通路であるようにすることができる。
【0015】
また、該閉塞部材の該外周面に該Oリング設定空間を画定する環状溝が形成されており、
該外側隙間部を構成している該閉塞部材の外側外周面の外径が、該内側隙間部を構成している内側外周面の外径よりも小さくされているようにすることができる。
【0016】
閉塞部材にOリングを設定するようにすることにより、閉塞部材を取り出すことでOリングも取り出すことができるようになるため、Oリングが破損した際のOリングの交換作業を容易に行うことが可能となる。
【0017】
該環状溝内において該Oリングよりも該流体通路の側に配置されたバックアップリングをさらに備え、該Oリング設定空間が該環状溝と該バックアップリングとにより画定され、該内側隙間部が、該バックアップリングの外周面と該閉塞通路の内周面との間及び該バックアップリングの内周面と該閉塞部材の外周面との間のうちの少なくとも一方に形成されているようにすることができる。
【0018】
以下、本発明に係る逆止弁の実施形態を添付図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る逆止弁の断面図である。
図2図1の逆止弁の隙間通路におけるOリングの周りの拡大図であり、流体通路内に過大な内部圧力が作用していない状態におけるOリングの状態を示す図である。
図3図1の逆止弁に流体供給用ソケットを取り付けた状態を示す図である。
図4図1の逆止弁に閉塞用ソケットを取り付けた状態を示す図である。
図5図1の逆止弁のOリングの周りの拡大図であり、流体通路内に破断圧力以上の内部圧力が作用している状態におけるOリングの状態を示す図である。
図6】本発明の別の実施形態に係る逆止弁におけるOリングの周りの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態に係る逆止弁10は、図1に示すように、流体通路28を構成する本体部12と、本体部12の流体通路28内に配置された逆止弁体46とを備え、本体部12の第1開口部20から第2開口部22に向かって流体通路28内を流れる流体は通すが、第2開口部22から第1開口部20に向かって流れる流体は通さないようにされた逆止弁10である。
【0021】
本体部12は、ハウジング部材14と閉塞部材16とからなっている。ハウジング部材14には、後述する流体供給用ソケット54(図3)と閉塞用ソケット56(図4)とが連結されるようにされたプラグ部18を有し、第1開口部20はこのプラグ部18に形成されている。第2開口部22が形成されている連結面23には、タンクのような圧力容器(図示しない)がOリング24を介して連結される。ハウジング部材14にはさらに、外部に開口する第3開口部26と、この第3開口部26から流体通路28にまで延びる閉塞通路30が形成されている。閉塞部材16が閉塞通路30内に挿入されて止め輪32により固定されて、閉塞通路30の内周面34と閉塞部材16の外周面36との間に環状の隙間通路38が形成されるようになっている。閉塞部材16にはOリング設定空間を画定する環状溝40が形成されていて、その中にOリング42が設定されている。隙間通路38はこのOリング42によって閉塞されている。流体通路28は、第1開口部20から第2開口部22にまで延在するように形成され、隙間通路38との連通位置よりも第1開口部20の側にテーパ状の弁座部44が形成されている。
【0022】
逆止弁体46は、閉塞部材16に形成されている弁体収容孔48に摺動可能に保持されており、シール部材50が弁座部44に押し付けられるようにスプリング52によって図で見て左方に付勢されている。第1開口部20側から流体圧力が作用して逆止弁体46にスプリング52の付勢力を超える力が作用すると、逆止弁体46はスプリング52を圧縮させながら図で見て右方に変位して流体通路28を開放した状態とする。これにより流体は第1開口部20から第2開口部22に向かって流れるようになる。一方で、第2開口部22の側から流体圧力が作用すると逆止弁体46はより強い力で弁座部44に押し付けられるようになり、流体通路28が閉止された状態が維持されるため、流体は第2開口部22から第1開口部20の側には流れない。
【0023】
図2に示すように、ハウジング部材14の閉塞通路30の内周面34と閉塞部材16の外周面との間に形成される環状の隙間通路38は、Oリング設定空間を画定する環状溝40よりも第3開口部26側の隙間通路外側部38aと、環状溝40よりも流体通路28側の隙間通路内側部38bとを有する。閉塞部材16は、環状溝40よりも第3開口部26側の外側外周面36aと環状溝40よりも流体通路28側の内側外周面36bとを有し、外側外周面36aの外径は内側外周面36bの外径よりも小さくなっている。また、閉塞通路30の内周面34は、環状溝40よりも第3開口部26側の外側内周面34aと、環状溝40に対向する位置から流体通路28にまで至る内側内周面34bとを有し、外側内周面34aの内径は内側内周面34bの内径よりも大きくなっている。隙間通路内側部38bは、環状溝40に隣接する位置において閉塞部材16の内側外周面36bと閉塞通路30の内側内周面34bとの間に形成された内側隙間部38cを有する。隙間通路外側部38aは、環状溝40に隣接する位置において閉塞部材16の外側外周面36aと閉塞通路30の内側内周面34bとの形成された外側隙間部38dと、外側隙間部38dに隣接した位置において閉塞部材16の外側外周面36aと閉塞通路30の外側内周面34aとの間に形成された拡大隙間部38eとを有する。外側隙間部38dは内側隙間部38cよりも径方向での隙間が大きくなっており、拡大隙間部38eは外側隙間部38dよりも径方向での隙間が大きくなっている。
【0024】
図3に示すように、本体部12のプラグ部18に流体供給源に繋がる流体供給用ソケット54を連結して、圧縮流体として例えば5MPa(第1圧力)の圧縮空気を流体供給源から供給すると、逆止弁体46が圧力によって図で見て右方に変位して流体通路28が開放され、圧縮空気が第2開口部22に連結されているタンクに充填される。タンクへの圧縮空気の充填が完了したら、流体供給用ソケット54を外して、図4に示すようにプラグ部18に閉塞用ソケット56を連結する。これによりプラグ部18の第1開口部20に繋がる通路はOリング58により閉塞される。また、隙間通路38に配置されたOリング42には充填した圧縮空気の圧力である5Mpa(第1圧力)の内部圧力が隙間通路内側部38bを通して作用するが、Oリング42は図2に示すように環状溝40内に保持されて隙間通路38を閉塞した状態を維持する。従って、流体通路28は外部に対して密封された状態のままとなる。
【0025】
図4の状態で当該逆止弁10を連結されたタンクとともに、例えば水深1万メートルの深海の高圧環境下に置くと、外部圧力はおよそ100MPa(第2圧力)となる。内部圧力(5MPa)よりも外部圧力(100MPa)の方が高い状態となり、外部圧力の内部圧力に対する相対外部圧力は95MPaとなる。第1開口部20と第2開口部22とはそれぞれ100MPaの外部圧力にも耐えるようにOリング24、58が設定されており、基本的には第1開口部20及び第2開口部22から海水が流体通路28内に浸入することはない。また、隙間通路38おいても、Oリング42の破断の原因となる内側隙間部38cの隙間の大きさは100MPaの相対外部圧力が作用してもOリング42が内側隙間部38cにはみ出さない大きさに設定されている。従って、Oリング42が隙間通路外側部38aを通じて100MPaの外部圧力を受けてもOリング42は内側隙間部38cにははみ出さずに環状溝40内に保持され、隙間通路38を閉塞した状態を維持する。従って、外部圧力(100MPa)の内部圧力(5MPa)に対する相対外部圧力が95MPaとなっている状態において、海水は流体通路28内には基本的には浸入しない。なお、各流体圧力に対してOリングのはみ出し現象が生じないようにするための最大直径隙間は既に試験により求められ、一般に公開されている。したがって、内側隙間部38cの隙間の大きさは100MPaに対する最大直径隙間よりも小さくなるように設定すればよい。
【0026】
しかしながら、95MPaという非常に高い相対外部圧力が加わっている状態においては、各部のOリングに僅かな傷があったり、Oリングが微小なゴミを挟み込んでいたりすることにより、密封状態が解除されて海水が内部に浸入することが起こり得る。例えば、プラグ部18のOリング58の密封が十分でなくそこから高圧の海水が流体通路28内に侵入したとすると、海水は逆止弁体46を開放させてタンクにまで至ることになる。このOリング58が完全に密封能力を失ってしまったとすると内部圧力は外部圧力と同じ100MPa(第2圧力)にまで上昇する。または、このOリング58が完全には密封能力を失っていないとすると内部圧力は外部圧力にまでは上昇しないが、破損状態に応じて元の内部圧力(5MPa)と外部圧力(100MPa)との間の圧力にまで上昇する。このような状態で、逆止弁10をタンクとともに上昇させていくと、タンク内は流体通路28が逆止弁体46により閉止されることにより内部圧力が維持されたままとなる一方で、外部圧力は水深が浅くなるに従って低くなり、内部圧力の外部圧力に対する相対内部圧力は徐々に大きくなっていく。外部圧力が内部圧力よりも小さくなって、相対内部圧力が所定の破断圧力にまで大きくなると、Oリング42は図5に示すように内部圧力によって押圧されてその一部が環状溝40から外側隙間部38d内にはみ出した状態となる。
【0027】
破断圧力は、空気の充填圧力(第1圧力)よりも大きく且つ最大外部圧力(第2圧力)よりも小さい値となるように設定され、外側隙間部38dの径方向での隙間の大きさはOリング42に作用する相対内部圧力が破断圧力となったときにOリング42が外側隙間部38d内にはみ出すような大きさに設計されている。当該実施形態においては、破断圧力は5MPaから95MPaの間の圧力に設定され、具体的には20MPaに設定されている。硬さショアA90のOリングに20MPaの圧力が作用するときの最大直径隙間はおよそ0.25mmであるため、当該実施形態においては、破断圧力が20MPaとなるようにOリング42を硬さショアA90とし外側隙間部38dの径方向での隙間の大きさを0.125mm(直径隙間としては0.25mmとなる)としている。これにより、相対内部圧力としておよそ20MPaの圧力がOリング42に作用したときに、Oリング42が外側隙間部38dにはみ出すようになる。なお、通常ははみ出し現象が生じないように隙間がこの最大直径隙間よりも小さくなるように設計されるが、本発明においては積極的にOリング42を破断させるために、外側隙間部38dの隙間の大きさを最大直径隙間と同等又はそれよりも大きく設定している。Oリング42の外側隙間部38dにはみ出したOリング42は、やがて引きちぎられたり大きなひびが入ったりするなどして破断し、密封能力を失う。そうすると、内部圧力は破断したOリング42を通過して第3開口部26から外部に放出され、内部圧力が低下する。なお、隙間通路外側部38aに拡大隙間部38eが形成されていることにより、外側隙間部38dにはみ出したOリング42は拡大隙間部38eに向かってより大きな変形が生じるようになる。これにより、Oリング42が外側隙間部38dにはみ出してからより早く破断するようになる。
【0028】
Oリング42が破断した場合には、閉塞部材16を破断したOリング42とともに取り出して新しいOリング42と交換する。閉塞部材16にOリング設定空間が形成されていることによりOリング42の交換を容易に行うことが可能となっている。
【0029】
当該逆止弁10においては、上述のように、隙間通路38を閉塞するOリング42の相対内部圧力に対する耐圧性が、相対外部圧力に対する耐圧性よりも低くなるようになっていて、内部圧力の外部圧力に対する相対内部圧力が、所定の破断圧力以上となったときに、Oリング42が破断するようになっている。これにより、該相対内部圧力が破断圧力を超えてさらに高くなることが防止され、タンクなどの当該逆止弁10に連結されている機器が内部圧力により破損することを防止することが可能となる。また、逆止弁10自体が圧力を放出する機能を有しているため、別途リリーフ弁を設ける必要がなくなる。
【0030】
本発明の別の実施形態においては、図6に示すように、閉塞部材116の環状溝140内にバックアップリング160が配置されえており、環状溝140とバックアップリング160とによってOリング設定空間が画定されている。この場合の内側隙間部138cは、バックアップリング160の外周面160aと閉塞通路130の内周面134との間、又はバックアップリング160の内周面160bと閉塞部材116の環状溝140における外周面136との間に形成される。当該実施形態におけるバックアップリング160は、設定された状態において閉塞通路130の内周面134と閉塞部材116の外周面136とに接するような大きさとされているため、内側隙間部138cの径方向での隙間の大きさは実質的にゼロとなっている。したがって、理論上は隙間通路外側部138aから如何なる大きさの圧力が作用してもOリング142は内側隙間部138cにはみ出すことはなく密封状態を維持できることになる。このようなバックアップリング160を用いることにより、内側隙間部138cをより小さくして外部圧力に対する耐圧性能をより大きくすることが可能となる。なお、バックアップリング160を用いる場合には、内側隙間部138cはバックアップリング160により形成されるため、閉塞部材116の内側外周面136bの外径は外側外周面136aの外径と同じにしてもよい。また、外側隙間部138dは、上記実施形態における外側隙間部38dと同様に、破断圧力以上の相対内部圧力がOリング142に作用したときに、Oリング142の一部がはみ出すような大きさの隙間を有するようにしてある。
【0031】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、当該逆止弁10の使用用途は、深海中の使用するものに限られない。また、上記実施形態における各圧力の具体的な数値は単に一例を示すものであり、使用環境や用途に合わせて他の値としてもよい。外側隙間部38d、138dの隙間の大きさは、Oリング42、142の材質や設定する破断圧力の大きさを考慮して適当な値に設定することができる。Oリング42、142は、閉塞通路30、130の内周面34、134に環状溝40、140を設けて、内周面34、134の側に配置するようにしてもよい。また、閉塞部材16に流体通路28の一部を形成し、タンク等に接続される第2開口部22を閉塞部材16の端面に形成して、流体通路28の一部と環状の隙間通路38とが同軸状に構成されるようにしてもよい。
【0032】
上記実施形態においては外側隙間部38d、138dを内側隙間部38c、138cに比べて大きくすることにより、Oリング42、142の相対内部圧力に対する耐圧能力が相対外部圧力に対する耐圧性能よりも低くなるようにしているが、それ以外の方法により相対内部圧力に対する耐圧能力を小さくすることも考えられる。例えば、環状溝40、140の外側隙間部38d、138d側の面に鋭いエッジ部や針状の部材を設けるなどして、Oリング42、142が大きな力で押し付けられたときにOリング42、142に傷が付いてOリング42、142の破断が促されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0033】
逆止弁10;本体部12;ハウジング部材14;閉塞部材16;プラグ部18;第1開口部20;第2開口部22;連結面23;(第2開口部の)Oリング24;第3開口部26;流体通路28;閉塞通路30;止め輪32;(閉塞通路30の)内周面34;外側内周面34a;内側内周面34b;(閉塞部材16の)外周面36;外側外周面36a;内側外周面36b;隙間通路38;隙間通路外側部38a;隙間通路内側部38b;内側隙間部38c;外側隙間部38d;拡大隙間部38e;環状溝40;Oリング42;弁座部44;逆止弁体46;弁体収容孔48;シール部材50;スプリング52;流体供給用ソケット54;閉塞用ソケット56;Oリング58;
閉塞部材116;閉塞通路130;内周面134;外周面136;外側外周面136a;内側外周面136b;隙間通路外側部138a;内側隙間部138c;外側隙間部138d;環状溝140;Oリング142;バックアップリング160;外周面160a;内周面160b;
図1
図2
図3
図4
図5
図6