(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したオフガスがそのまま大気中に排出されると、オフガスに含まれる水蒸気が冷却されることで車両の後方周辺に白霧が形成される。そのため、燃料電池自動車には、オフガスから水蒸気を分離させたうえで排出することが求められている。
【0005】
本発明は、燃料電池のオフガスから水蒸気を分離させることのできる燃料電池自動車用排出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する燃料電池自動車用排出装置は、燃料電池からのオフガスが吐出される上段室を有する上段ハウジングと、前記上段ハウジングの下に位置し、前記オフガスを大気中に排出する下段室を有する下段ハウジングと、前記上段室と前記下段室とを連通する第1連通口と、前記上段室と前記下段室とを連通する第2連通口とを備え、前記上段ハウジングは、前記上段室の下面寄りの空間を前記第1連通口に連通する第1空間と前記第2連通口に連通する第2空間とに仕切る上段仕切部と、前記上段室に吐出口を有して斜め下方に向けて前記第1空間に前記オフガスを吐出する吐出部と、前記第1空間の下面および前記上段仕切部から離れた位置に位置する案内部であって、前記吐出口に対して前記オフガスの吐出方向で対向する部位を有し、前記吐出口から吐出されたオフガスを上方へ案内したのちに前記第2空間へ案内する前記案内部とを有する。
【0007】
上記構成によれば、吐出口から第1空間に吐出されたオフガスは、第1連通口に流入することなく案内部によって上方に案内されたのちに第2空間へと案内される。オフガスに含まれる水蒸気は、案内部によって案内される過程において該案内部との接触によって冷却されることで液化することにより液状の生成水へと変化する。液状の生成水は、案内部と上段仕切部との間の空間を通じて第1空間の下面へと到達し、やがて第1連通口を通じて下段室に流入する。また、案内部によって案内されたオフガスは、第2空間に流入したのちに第2連通口を通じて下段室に流入する。すなわち、上記構成によれば、上段ハウジングにおいて、オフガスに含まれる水蒸気を液化させることでオフガスから水蒸気を分離させることができる。
【0008】
上記燃料電池自動車用排出装置において、前記案内部は、車両の上下方向において前記吐出口に重なる部位を有することが好ましい。
上記構成によれば、吐出口から吐出されたオフガスが案内部と上段仕切部との間の空間に流入しにくくなることから、第1連通口に対してオフガスが流入しにくくなる。
【0009】
上記燃料電池自動車用排出装置において、前記吐出部は、前記第1連通口に向かって延びたのち、前記第1連通口の上方に向かって曲がっている形状を有することが好ましい。
上記構成によれば、第1連通口へと向かって延びる吐出部において吐出口付近が第1連通口よりも上方に向かって曲がっている。そのため、吐出口から吐出されたオフガスの流れを案内部によって案内される流れへと円滑に移行させることができる。これにより、上段ハウジングにおけるオフガスの圧力損失を低減することができる。
【0010】
上記燃料電池自動車用排出装置において、前記第1空間の下面は、前記第1連通口寄りの部位ほど下方に位置するように傾斜していることが好ましい。
上記構成によれば、第1空間の下面に到達した液水が上段ハウジングから排出されやすくなる。これにより、例えば運転停止後に第1空間に残存する液水を低減できる。
【0011】
上記燃料電池自動車用排出装置において、前記上段ハウジングは、前壁、上壁、後壁、および、一対の側壁を有しており、前記下段ハウジングは、前記上段ハウジングが取り付けられて車両の前方寄りの部位ほど下方に位置するように傾斜する上壁を有しており、前記下段ハウジングの上壁の一部は、前記上段ハウジングの下壁として機能するとともに、前記第1連通口を前端部に有し、前記第1連通口に対する車両の後方に前記第2連通口を有しており、前記上段仕切部は、前記上段室の下面寄りの空間を車両の前後方向で並ぶ前記第1空間と前記第2空間とに仕切っており、前記吐出部は、前記後壁および前記上段仕切部を貫通しているとともに前記後壁および前記上段仕切部に支持された状態で前記第1空間まで延びており、前記案内部は、前記吐出口よりも車両の下方に位置する後端部から前記前壁まで延びる第1案内板であって前記後端部よりも前端部が車両の上方に位置する前記第1案内板と、前記上段ハウジングの上壁と前記第1案内板との間に位置して前記上段仕切部よりも上方の空間を前記前壁から前記後壁に向かって延びている第2案内板とを有していることが好ましい。
【0012】
上記構成のように、上段ハウジングを構成することができる。これにより、上段ハウジングにおける前方に位置する第1連通口を通じて液状の生成水が下段室に流入し、上段ハウジングにおける後方に位置する第2連通口を通じてオフガスが下段室に流入する。そのため、例えば、下段ハウジングの前端部に液状の生成水を排出する排水口を形成し、かつ、下段ハウジングの後端部にオフガスを排出する排気口を形成する際に下段ハウジングの構造を簡易なものとすることができる。また、第1案内板によって案内されるオフガスによって第1案内板に沿って上方に移動した液状の生成水を第2案内板で受け止めることができる。これにより、上段室における液状の生成水の飛散を抑えることができる。また、吐出部が後壁と上段仕切部とによって支持されていることで、車両の振動時にオフガスの吐出方向がばらつくことを抑えることができる。
【0013】
上記燃料電池自動車用排出装置において、前記上段ハウジングがアルミニウムで構成されていることが好ましい。
上記構成によれば、金属のなかでも熱伝導率の高い部類に属するアルミニウムによって上段ハウジングが構成されている。これにより、例えば走行風などによる上段ハウジングの冷却が効果的に行われることから、オフガスに含まれている水蒸気の液化量を増やすことができる。その結果、オフガスとともに排出される水蒸気を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1〜
図10を参照して、燃料電池自動車用排出装置の一実施形態について説明する。
図1に示すように、燃料電池自動車(FCV:Fuel Cell Vehicle)の一例である乗合自動車の車両10は、水素タンクに貯留された水素と空気中の酸素とを化学反応させることによって発電する燃料電池11を車両の後方上部に搭載している。燃料電池11においては、水素と酸素との化学反応によって生成された生成水を水蒸気の状態で含むオフガスが排出される。オフガスは、車両10の後輪13よりも後方に位置する左右一対の燃料電池自動車用排出装置20(以下、単に排出装置20という。)を通じて大気中へと排出される。
【0016】
以下、排出装置20について説明するが、各排出装置20は、車両に対する取付け位置が異なるだけで基本的な構造は同じである。そのため、右側に位置する排出装置20について詳細に説明し、左側に位置する排出装置20についての詳細な説明は省略する。また、車両10の幅方向における車両10の外側方向を外方、内側方向を内方という。
【0017】
(排出装置20の概要)
排出装置20は、ダクト21、気液分離ユニット22、アンダーカバー23、および、ガード部材24を備えている。ダクト21は、金属製のパイプや可撓性を有する樹脂製のホース等によって構成されている。ダクト21は、燃料電池11から下方へ延びており、燃料電池11と気液分離ユニット22とを接続している。気液分離ユニット22は、オフガスに含まれる水蒸気を液化することによりオフガスから水蒸気を分離させ、その液化した液状の生成水(以下、液水という。)とオフガスとを大気中に排出する。気液分離ユニット22は、バッテリーやモーター等を有するパワーユニット14を収容する空間であって車両10の最後方下部に位置する収容室15に配設されている。
【0018】
アンダーカバー23は、気液分離ユニット22を車両10に取り付ける取付具としての機能を有している。アンダーカバー23は、車両10の前方寄りの部位ほど下方に位置するように傾斜しており、気液分離ユニット22の周辺における収容室15の開口部分を覆っている。アンダーカバー23の傾斜角度は、車両10のデパーチャアングルの角度と略等しい角度に設定される。
【0019】
ガード部材24は、可撓性を有する弾性材で構成されている。ガード部材24は、アンダーカバー23から垂れ下がっており、気液分離ユニット22から排出される液水が車両10の後方へ飛散することを抑える。
【0020】
(気液分離ユニットの概要)
図2〜
図4を参照して気液分離ユニット22の概要について説明する。
図2〜
図4に示すように、気液分離ユニット22は、水蒸気の液化が効率的に行われるように金属のなかでも熱伝導率の高く、また、耐水性に優れているアルミニウムによって構成されている。気液分離ユニット22は、上段ハウジング30と下段ハウジング50とを有している。上段ハウジング30は、前壁31、上壁32、後壁33、ならびに、一対の側壁を構成する内側壁34および外側壁35を有しており、車両10の前後方向および上下方向に拡がる偏平の箱体形状に形成されている。上段ハウジング30の後壁33には、ダクト21が接続されるとともに上段ハウジング30内にオフガスを吐出する吐出部37が取り付けられている。下段ハウジング50は、前壁51、上壁52、後壁53、一対の側壁を構成する内側壁54および外側壁55、ならびに、下壁56を有しており、車両10の前後方向および幅方向に拡がる偏平の箱体形状に形成されている。
【0021】
上段ハウジング30は、前壁31、後壁33、内側壁34、および、外側壁35の各々の下端部が下段ハウジング50の上壁52に取り付けられている。上段ハウジング30は、前壁31、上壁32、後壁33、内側壁34、外側壁35、および、下段ハウジング50の上壁52の一部によって囲まれた空間である上段室38を有する。この下段ハウジング50の上壁52の一部は、上段ハウジング30の下壁として機能するとともに上段室38の下面36sを構成する。下面36sは、車両10の前方寄りの部位ほど車両10の下方に位置するように傾斜している。吐出部37は、筒状の形状を有しており、後壁33に形成された支持孔39を貫通する状態で該後壁33に支持されている。吐出部37は、後壁33の法線方向に沿うように後述する第1連通口60に向かって斜め下方に延びており、上段室38の外部に導入口40を有し、上段室38の内部に吐出口41を有している。吐出部37は、吐出口41の形成部分における軸線方向が吐出方向に設定される。
【0022】
下段ハウジング50は、前壁51、上壁52、後壁53、内側壁54、外側壁55、および、下壁56の一部によって囲まれた空間である下段室58を有する。下段室58の下面56sは、車両10の前方寄りの部位ほど車両10の下方に位置するように傾斜している。下段ハウジング50の上壁52には、上段室38と下段室58とを連通する連通口として、前端部に第1連通口60が形成され、後壁53寄りの位置であって吐出部37の下方に第2連通口61が形成されている。下段ハウジング50の前壁51には、外側壁55側の端部に排水管63が取り付けられている。排水管63は、下段室58と気液分離ユニット22の外部空間とを連通する排水口64を有しており、排水口64から排出された液水が走行風の影響を受けにくくなるように後輪13の後方に位置している。下段ハウジング50の下壁56には、後端部に下段室58と気液分離ユニット22の外部空間とを連通する排気口65が形成されている。排気口65は、第2連通口61よりも車両10の後方に位置している。また、下壁56は、内側壁54から車両の内方に向かって突き出た内側鍔部56aと外側壁55から車両の外方に向かって突き出た外側鍔部56bを有している。内側鍔部56aおよび外側鍔部56bの各々には、気液分離ユニット22をアンダーカバー23に取り付けるための取付部66が形成されている。気液分離ユニット22は、アンダーカバー23を介して車両10に支持されることにより、下段ハウジング50の上壁52および下壁56が車両10の前方寄りの部位ほど下方に位置するように傾斜する状態で車両に搭載される。なお、下段ハウジング50の下壁56は、アンダーカバー23の一部であってもよい。この場合、内側鍔部56aは内側壁54、外側鍔部56bは外側壁55に形成される。
【0023】
気液分離ユニット22が車両10に搭載されると、吐出部37にダクト21が接続される。吐出部37とダクト21とは、吐出部37がダクト21の内側に位置する状態で吐出部37とダクト21との重畳部分が締結具によって締結されることにより接続される。気液分離ユニット22には、水蒸気を含むオフガスのほか、例えばダクト21を通過している際に液化した生成水が液水として流入する。気液分離ユニット22は、主に上段室38で水蒸気の液化を行い、下段室58で液水およびオフガスの各々を排水口64および排気口65へと各別に案内する。そして気液分離ユニット22は、排水口64から車両10の下方に向かって液水を排出し、排気口65から車両10の後方に向けて斜め下方にオフガスを排出する。
【0024】
(上段ハウジング30)
図2〜
図5を参照して上段ハウジング30の詳細について説明する。
図2〜
図4に示すように、上段ハウジング30において、前壁31および上壁32は、一定の幅を有する湾曲板で構成されており、湾曲部42を介して一体的に連結されている。前壁31は、下段ハウジング50の上壁52の前端部から該上壁52の法線方向に沿って延びている。前壁31と上壁32とのなす角度θaは、下段ハウジング50の上壁52の傾斜角θb(水平方向に対して上壁52がなす角度)に対する余角(=90°−θb)よりも大きい鋭角に設定される。これにより、上壁32は、車両10の後方寄りの部位ほど車両10の下方に位置するように傾斜する。
【0025】
後壁33は、第1後壁33aと第2後壁33bとで構成されており、車両10の下方寄りの部位ほど車両10の後方に位置するように傾斜している。第1後壁33aは、前壁31および上壁32と略等しい幅を有しており、上段ハウジング30の上壁32寄りの位置に、内側壁34とは反対側が開放された凹部であって吐出部37の断面形状に倣う半円形状の部分を有する内側凹部39aを有している。また、第1後壁33aの下端部には、上段ハウジング30を下段ハウジング50に取り付ける際に下段ハウジング50の上壁52に接合される後側接合片43が一体的に連結されている。
【0026】
第2後壁33bは、前壁31および上壁32よりも小さい幅を有しており、上段ハウジング30の上壁32寄りの位置に、外側壁35とは反対側が開放された凹部であって吐出部37の断面形状に倣う半円形状の部分を有する外側凹部39bを有している。第2後壁33bは、第1後壁33aの内側凹部39aに配設された吐出部37と外側壁35との間の隙間を上段室38側から閉塞している。吐出部37は、内側凹部39aと外側凹部39bとに挟まれる状態で第1後壁33aおよび第2後壁33bに対して接合されることにより後壁33に支持されている。
【0027】
内側壁34は、前壁31、湾曲部42、上壁32、および、後壁33によって囲まれる空間を車両10の内方から覆う形状を有している。また、内側壁34は、上段ハウジング30を下段ハウジング50に取り付ける際に下段ハウジング50の上壁52に接合される内側接合片44を下端部に有している。
【0028】
外側壁35は、前壁31、湾曲部42、上壁32、後壁33によって囲まれる空間を車両10の外方から覆う形状を有している。外側壁35は、上段ハウジング30を下段ハウジング50に取り付ける際に下段ハウジング50の上壁52に接合される外側接合片45を下端部に有している。
【0029】
上段ハウジング30は、上段室38内に、第1案内板71、第2案内板72、水切り板73、および、上段仕切板74を有している。第1案内板71および第2案内板72は、案内部を構成している。
【0030】
第1案内板71は、前壁31と略等しい幅を有しており、前壁31、内側壁34、および、外側壁35に接合されている。第1案内板71は、平板部75と湾曲板部76とを有しており、下段ハウジング50の上壁52および上段仕切板74から離れた位置に位置している。平板部75は、吐出部37の吐出口41と下段ハウジング50の上壁52との間の空間を上壁52の面方向に沿って延びており、吐出口41よりも車両10の後方に後端部75aを有している。すなわち、第1案内板71は、車両10の上下方向において吐出口41に重なる部位を有している。湾曲板部76は、平板部75の前端部に一体的に連結されており、車両10の前後方向において吐出口41に対向するように前壁31に近い部位ほど上壁32に近づくように上方へ湾曲している。第1案内板71は、湾曲板部76の前端部76aにおいて前壁31に接合されている。
【0031】
第2案内板72は、前壁31と略等しい幅に形成されており、第1案内板71よりも上壁32寄りの位置で前壁31に接合されている。第2案内板72は、吐出部37の吐出口41よりも上壁32側の空間を前壁31から車両10の後方へ下段ハウジング50の上壁52の面方向に沿うように延びている。第2案内板72の後端部72aは、吐出部37の吐出口41よりも車両の前方に位置している。
【0032】
水切り板73は、上壁32と略等しい幅を有しており、上壁32に接合されている。水切り板73は、第2案内板72よりも上壁32側の空間であって、かつ、車両10の前後方向における第2案内板72の後端部72aと吐出部37の吐出口41との間の空間を上壁32の法線方向に沿って延びている。水切り板73の下端部73aは、車両10の上下方向で第1案内板71の平板部75と対向する位置に位置している。
【0033】
上段仕切部である上段仕切板74は、前壁31と略等しい幅を有しており、内側壁34および外側壁35に接合されている。上段仕切板74は、下段ハウジング50の上壁32に形成された第1連通口60と第2連通口61との間であって吐出部37の吐出口41よりも車両10の後方に位置している。上段仕切板74は、上段室38の下面36s寄りの空間を車両10の前後方向に並ぶ第1空間38Aと第2空間38Bとに仕切っている。
【0034】
上段仕切板74は、下側仕切部78と上側仕切部79とを有している。下側仕切部78は、内側壁34および外側壁35の下端部を繋ぐように配設される下端部78aから下段ハウジング50の上壁52の法線方向に沿って延びている。上側仕切部79は、下側仕切部78の上端部に一体的に連結されており、後壁33に略平行となるように下側仕切部78の上端部から前壁31側へ屈曲している。上側仕切部79は、吐出部37が貫通する支持孔80を有している。上側仕切部79は、支持孔80の周縁部が該支持孔80を貫通する吐出部37に接合されることにより吐出部37を支持している。上側仕切部79の上端部79aは、前壁31に接合された第2案内板72よりも車両10の下方に位置し、また、吐出部37の吐出口41よりも車両10の後方に位置している。
【0035】
吐出部37は、第1空間38Aに対して斜め下方にオフガスを吐出する。吐出部37は、第1連通口60に向かって斜め下方に延びる本体部37Aと、上段仕切板74の上側仕切部79から突出する部分に第1連通口60の上方へ向かって屈曲する屈曲部37Bとを有している。屈曲部37Bは、上段室38に吐出されるオフガスの流れ方向を第1案内板71に沿う方向とすることにより、オフガスの流れを第1案内板71に案内される流れへと円滑に移行させる。
【0036】
なお、上段ハウジング30の内側壁34は、内側壁34に対する第1案内板71の位置を指示する指示孔85b,86bと、内側壁34に対する上段仕切板74の位置を指示する指示孔88b,89bとを有している。指示孔85bは、平板部75の後端部75aの位置を指示し、指示孔86bは、湾曲板部76の前端部76aの位置を指示している。指示孔88bは、下側仕切部78の下端部78aの位置を指示し、指示孔89bは、上側仕切部79の上端部79aの位置を指示している。各端部75a,76a,78a,79aには、指示孔85b,86b,88b,89bに嵌め込み可能な突片が形成されている。
【0037】
また、上段ハウジング30の外側壁35は、外側壁35に対する第1案内板71の位置を指示する指示孔85c,86cと、外側壁35に対する上段仕切板74の位置を指示する指示孔88c,89cとを有している。指示孔85cは、平板部75の後端部75aの位置を指示し、指示孔86cは、湾曲板部76の前端部76aの位置を指示している。指示孔88cは、下側仕切部78の下端部78aの位置を指示し、指示孔89cは、上側仕切部79の上端部79aの位置を指示している。各端部75a,76a,78a,79aには、指示孔85c,86c,88c,89cに嵌め込み可能な突片が形成されている。
【0038】
図5に示すように、上段ハウジング30は、第1上段部材301、第2上段部材302、第3上段部材303、および、第4上段部材304を互いに接合することにより組み立てられる。第1上段部材301は、前壁31および上壁32を構成する湾曲板に対して、第1案内板71、第2案内板72、および、水切り板73が接合された部材である。第2上段部材302は、上段仕切板74に吐出部37が接合された部材である。第3上段部材303は、内側壁34、内側接合片44、第1後壁33a、および、後側接合片43が一体的に連結された部材である。第4上段部材304は、外側壁35、外側接合片45、および、第2後壁33bが一体的に連結された部材である。
【0039】
上段ハウジング30の組み立て工程の一例では、まず、第3上段部材303に対して第1上段部材301と第2上段部材302とが接合される。第3上段部材303に対する第1上段部材301の接合に際しては、内側壁34に形成された指示孔85b,86bを基準として内側壁34と第1案内板71との位置合わせが行われたのち、内側壁34に対して前壁31、上壁32、および、第1案内板71が接合される。また、第3上段部材303に対する第2上段部材302の接合に際しては、第1後壁33aの内側凹部39aに吐出部37が配設された状態で指示孔88b,89bを基準として内側壁34と上段仕切板74との位置合わせが行われたのち、内側壁34に対して上段仕切板74が接合される。内側壁34に各種の指示孔85b〜89bが形成されていることにより、内側壁34に対する第1案内板71および上段仕切板74の位置合わせを容易に行うことができる。
【0040】
次に、第1〜第3上段部材301〜303からなる構造体に対して第4上段部材304が接合される。この際、第2後壁33bの外側凹部39bに吐出部37が配設された状態で指示孔85c,86cを基準とした外側壁35と第1案内板71との位置合わせ、および、指示孔88c,89cを基準とした外側壁35と上段仕切板74との位置合わせが行われる。その後、外側壁35に対して前壁31、湾曲部42,上壁32、第1案内板71、および、上段仕切板74が接合される。外側壁35に各種の指示孔85c〜89cが形成されていることにより、外側壁35に対する第1案内板71および上段仕切板74の位置合わせを容易に行うことができる。そして、上壁32、外側壁35、および、第2後壁33bに対して第1後壁33aが接合されるとともに、第1後壁33aおよび第2後壁33bに対して吐出部37が接合されることで上段ハウジング30が組み立てられる。
【0041】
(下段ハウジング50)
図4、および、
図6〜
図9を参照して下段ハウジング50の詳細について説明する。
図4、および、
図6〜
図8に示すように、下段ハウジング50は、上段ハウジング30よりも車両10の後方まで延びている。下段ハウジング50は、下壁56の傾斜角θc(車両10の前後方向に対して下壁56がなす角度)よりも上壁52の傾斜角θbが大きくなるように、下壁56と上壁52との間の距離が車両10の後方ほど大きい形状を有している。また、下段ハウジング50は、車両10の後方において幅広となるように、内側壁54と外側壁55との間の距離が車両10の後方ほど大きくなる形状を有している。なお、下壁56の傾斜角θcは、車両10のデパーチャアングルの角度と略等しい角度に設定される。
【0042】
下段ハウジング50において、前壁51は、矩形状の形状を有しており、外側壁55側の端部に、車両10の前方へ延びたのちに車両10の下方へ屈曲するエルボー管である排水管63が取り付けられている。
【0043】
上壁52は、車両10の後方寄りの部位ほど幅広となる形状を有している。また、上壁52の後端部は、内側壁54寄りの部位ほど車両10の後方に位置する形状を有している。上壁52には、前端部に第1連通口60が形成され、車両10の後方寄りの位置に第2連通口61が形成されている。第1連通口60は、車両10の幅方向に長い矩形状の形状を有している。第2連通口61は、車両10の幅方向に長い矩形状の形状を有しており、吐出部37の吐出口41および第1連通口60よりも大きな開口面積を有している。
【0044】
後壁53は、上壁52、内側壁54、および、外側壁55によって囲まれる空間を車両の後方から覆う形状を有している。後壁53は、車両10の下方寄りの部位ほど車両10の後方に位置するように傾斜しているとともに、内側壁54寄りの部位ほど車両10の後方に位置している。
【0045】
内側壁54は、前壁51、上壁52、および、後壁53で囲まれる空間を車両10の内方から覆う形状を有しており、車両10の前後方向に沿って配設されている。外側壁55は、前壁51、上壁52、および、後壁53で囲まれる空間を車両10の外方から覆う形状を有しており、車両10の後方寄りの部位ほど車両10の外方に位置するように配設されている。
【0046】
下壁56は、前壁51、上壁52、後壁53、内側壁54、および、外側壁55で囲まれる空間を車両10の下方から覆う形状を有しており、下段室58の下面56sを構成する。下壁56は、内側壁54から車両の内方に向かって突き出た内側鍔部56aと外側壁55から車両の外方に向かって突き出た外側鍔部56bとを有している。下壁56には、下段室58と気液分離ユニット22の外部空間とを連通する排気口65が形成されている。排気口65は、第2連通口61よりも車両10の後方に位置している。排気口65は、内側壁54寄りの部位ほど車両10の前後方向における長さが長くなる形状を有している。排気口65の開口面積は、第2連通口61よりも大きく、気液分離ユニット22においてオフガスが通過する経路のうちで最も大きな面積に設定される。
【0047】
下段ハウジング50は、下段室58内に、下段仕切板91を有している。下段仕切部である下段仕切板91は、下壁56に接合されており、第1連通口60を通じて上段室38に連通する第1下段室58Aと第2連通口61を通じて上段室38に連通する第2下段室58Bとに下段室58を仕切っている。下段仕切板91は、外側壁55側の端部91aが外側壁55に接する位置に配設され、内側壁54側の端部91bが内側壁54との間の隙間であって第1下段室58Aと第2下段室58Bとを連通する連通路92(
図8を参照。)が形成される位置に配設される。下段仕切板91は、外側壁55側の端部91bよりも車両10の前方に内側壁54側の端部91bが位置するように車両10の幅方向に交差する方向に延びている。この連通路92は、第2下段室58Bで液化した液水が第1下段室58Aに流入する際の通路となる。
【0048】
図9に示すように、下段ハウジング50は、第1下段部材501、第2下段部材502、第3下段部材503、および、第4下段部材504を互いに接合することにより組み立てられる。第1下段部材501は、上壁52に対して内側壁54と外側壁55とが一体的に連結された部材である。第3下段部材503は、後壁53である。第3下段部材503は、前壁51に対して排水管63が接合された部材である。第4下段部材504は、下壁56に対して下段仕切板91が接合された部材である。
【0049】
下段ハウジング50の組み立て工程の一例では、第1下段部材501の前端に対して第2下段部材502が接合され、第1下段部材501の後端に対して第3下段部材503が接合される。そして、第4上段部材304と第1〜第3下段部材501〜503からなる構造体との位置合わせが行われたのち、後壁53、内側壁54、および、外側壁55の各々の下端部が下壁56に対して接合されることで下段ハウジング50が組み立てられる。
【0050】
(気液分離ユニット22の作用)
図10を参照して気液分離ユニット22におけるオフガスおよび液水の主な流れについて説明する。
【0051】
図10に示すように、燃料電池11からのオフガスは、ダクト21を通じて気液分離ユニット22に到達したのち、吐出部37を通じて上段室38の第1空間38Aに対して斜め下方に向かうように吐出される。第1空間38Aに流入したオフガスは、第1案内板71によって車両10の上方へ案内されたのち、続いて第2案内板72によって車両10の後方へと案内される。第2案内板72に案内されたオフガスは、第2案内板72における後端部72aと上段仕切板74における上端部79aとの間の空間を通じて、上段仕切板74に対する車両10の後方に位置する第2空間38Bに流入する。そして、オフガスは、第2連通口61を通じて下段室58の第2下段室58Bに流入する。第2下段室58Bに流入したオフガスは、車両10の後方に向かって流れたのち、排気口65を通じて車両10の後下方へ排出される。
【0052】
一方、オフガスに含まれる水蒸気は、ダクト21を通過する際に冷却されることでその一部が液水の状態で上段室38の第1空間38Aに流入し、第1案内板71に向かって吐出される。また、第1空間38Aに流入したオフガスに含まれる水蒸気は、第1案内板71や第2案内板72によって案内される過程において冷却されて液化する。
【0053】
そして、第1案内板71上の液水は、例えば加速時などのオフガスが多い場合は、第1案内板71に沿うように流れるオフガスによって第1案内板71を伝って車両10の上方に流れる。第1案内板71に案内された液水は、第2案内板72によって塞き止められたのち、自重によって第1案内板71に落下して再び第1案内板71を伝って車両10の上方に流れる。また、第1案内板71上の液水は、例えばアイドリング時などのオフガスが少ない場合は、第1案内板71の後端部75aに向かって第1案内板71を伝って流れたのち、第1案内板71の後端部75aと上段仕切板74との間の空間へと流入する。そして、液水は、下段ハウジング50の上壁52を伝って車両10の前方へ流れたのち、第1連通口60を通じて下段室58の第1下段室58Aに流入する。第1下段室58Aに流入した液水は、排水管63の排水口64を通じて車両10の下方へ排出される。
【0054】
上記実施形態の燃料電池自動車用排出装置20によれば、以下の効果が得られる。
(1)上段ハウジング30において、オフガスに含まれる水蒸気が液化することによりオフガスから水蒸気を分離させることができる。また、その液化した液水とオフガスとを互いに異なる経路で下段ハウジングに流入させることができる。
【0055】
(2)上段仕切板74が上段室38の下面36s寄りの空間を第1空間38Aと第2空間38Bとに仕切っていることにより、例えば車両10の加速にともなう慣性によって第2連通口61に向かって液水が移動したとしても、その液水を塞き止めることができる。これにより、第1空間38A内の液水が第2連通口61に流入することが抑えられる。
【0056】
(3)第1案内板71は、吐出口41よりも下方の空間であって、かつ、車両10の後方に後端部75aを有している。すなわち、第1案内板71は、車両10の上下方向において吐出口41と重なる部位を有している。そのため、吐出口41から吐出されたオフガスが第1案内板71と上段仕切板74との間の空間に入り込むことが抑えられる。これにより、オフガスが第1連通口60に流入することを抑えることができる。
【0057】
(4)吐出部37は、第1連通口60に向かって延びる本体部37Aと、吐出口41を有して第1連通口60の上方に向かって屈曲する屈曲部37Bを有している。そのため、吐出口41から吐出されたオフガスの流れを第1案内板71によって案内される流れへと円滑に移行させることができる。これにより、上段ハウジングにおけるオフガスの圧力損失を低減することができる。
【0058】
(5)上段室38の下面36sを構成する下段ハウジング50の上壁52は、傾斜角θbで車両10の前方に向けて傾斜しているとともに前端部に第1連通口60を有している。そのため、液水は、下面36sを第1連通口60に向かって流れる。これにより、運転停止後に上段室38に残存する液水を低減することができる。
【0059】
(6)吐出部37が後壁33および上段仕切板74によって支持されていることから、車両10の振動時におけるオフガスの吐出方向のばらつきを抑えることができる。
(7)上段ハウジング30がアルミニウムで構成されているため、例えば走行風などによる上段ハウジング30の冷却を効果的に行うことができる。これにより、オフガスに含まれている水蒸気の液化量を増やすことができる。その結果、オフガスとともに排出される水蒸気を低減することができる。しかも、外気温が低いときほど、すなわち水蒸気によって白霧が形成されやすいときほど、水蒸気の液化を効果的に行うことができる。
【0060】
(8)
図10に示すように、上段ハウジング30は、上壁32が車両10の後方寄りの部位ほど車両10の下方に位置するように傾斜しているとともに、その上壁52に車両10の上下方向において第1案内板71の平板部75と対向する水切り板73を有している。そのため、水切り板73よりも上方において上壁32に付着している液水は、上壁32を伝って水切り板73に向かって流れたのち、水切り板73の下端部73aから落下して第1案内板71の平板部75に到達することとなる。これにより、第2空間38Bへと流入する液水を低減することができる。
【0061】
(9)第2案内板72は、内側壁34および外側壁35に対して接合されておらず、前壁31に支持された片持ち梁状に形成されている。そのため、第2案内板72と内側壁34との間の隙間、および、第2案内板72と外側壁35との間の隙間を通じて、第2案内板72上に付着している液水を第1案内板71へと導くことができる。
【0062】
なお、上記実施形態は、以下のように適宜変更して実施することもできる。
・上段ハウジング30は、アルミニウムではなく、例えば鉄やステンレスといった他の金属で構成されてもよい。
【0063】
・上段ハウジング30は、上段室38を有する形状に構成されていればよく、上述した前壁31、上壁32、後壁33、内側壁34、および、外側壁35で構成された箱体状の形状のものに限られない。例えば、前壁31は車両10の上下方向に沿って配設されていてもよいし、上壁32は車両10の前方へ傾斜していてもよい。例えば、後壁33は、車両10の上方寄りの部位ほど車両10の後方に位置する形状を有していてもよい。また例えば、上段ハウジング30は、車両10の後方に向かって幅広となる形状に構成されていてもよい。
【0064】
・上段室38の下面36sは、例えば車両10の後方寄りの部位ほど車両10の下方に位置するように傾斜していてもよい。この場合、上段仕切板74の下端部78a付近に第1連通口60形成されていることが好ましい。
【0065】
・上段仕切板74は、吐出部37を支持していなくともよく、上端部79aが吐出部37の下方に位置する構成であってもよい。
・吐出部37は、第1空間38Aに吐出口41を有して第1空間38Aに対して斜め下方に向けてオフガスを吐出する構成であればよい。そのため、吐出部37は、屈曲部37Bが割愛されて本体部37Aのみで構成されていてもよい。
【0066】
・第1案内板71は、吐出口41からのオフガスの吐出方向において吐出口41と対向する部位を有していればよい。そのため、第1案内板71は、吐出口41よりも車両10の前方に後端部75aを有していてもよい。
【0067】
・第2案内板72は、上段仕切板74の上端部79aよりも車両10の後方に後端部72aを有していてもよい。
・案内部は、吐出口41から第1空間38Aに吐出されたオフガスを上方へと案内したのち、上段仕切板74の上方の空間を通じて第2空間38Bへ案内する構成であればよい。そのため、例えば、上述した上段ハウジング30において、第2案内板72が割愛された構成であってもよい。この場合、オフガスは、第1案内板71、前壁31、上壁32によって第2空間38Bへと案内される。
・上段ハウジング30は、水切り板73が割愛された構成であってもよい。