【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されない。
【0040】
(試験例1)
シラミの卵として、コロモジラミ(Pediculus humanus corporis)の卵を使用した。具体的には、実験の前日に毛髪束(長さ10cm、毛髪550〜600本程度)に対し、吸血直後のコロモジラミ成虫100頭前後を放ち、30℃、相対湿度(RH)50%の条件下、1日間産卵させた。その後、毛髪束から成虫のみを回収し、実験に供試するシラミ卵付きの毛髪を得た。なお、毛髪束にはシラミ卵が約10個付着していた。
下記表1に示す各種検体2.5mLをシャーレ(φ90mm)にとり、上記毛髪束を浸漬し、5分間放置した。続いて、毛髪束をメッシュ(目開き177μm)に移し、流水で洗い流し、水分を取り除いた後、清潔なろ紙を敷いたシャーレ(φ90mm)に移した。室温(30℃)で10日間放置し、10日後に目視観察を行い、孵化阻害率を調べた。
下記の計算式より求めた。コントロールは各検体の実施に応じて試験を行った。
孵化率(%)=試験検体の孵化数/コントロールの孵化率
孵化阻害率(%)=(1−試験検体の孵化率/コントロールの孵化率)×100
試験は各組成物に対して複数回(3〜7回)行い、孵化阻害率はその平均とする。
その結果を表1に併せて示す。
なお、以下の各検体において、前記各種化合物は医薬部外品規格または医薬品添加物規格に相当するものであり、市販品を用いた。
【0041】
【表1】
【0042】
表1の結果から、本発明の特定脂肪酸エステルであるイソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシルおよび2−エチルヘキサン酸2−へキシルデシル(検体1〜3)は孵化阻害率が50%以上であり、シラミ卵に対して強い孵化阻害効果を確認できた。
【0043】
(試験例2)
試験例1で用いた検体1〜18について、表2に示すジメチルポリシロキサン(ジメチコン)との相溶性について調べた。
ジメチコン:各種検体=4:50(重量比)とする混合物を調製し、室温(約25℃)〜60℃に加温し、スターラーで撹拌後、15分間静置した後の混合物の状態を目視にて観察し、相溶性を評価した。
外観上、混合物が溶解しているものを「均一:〇」、沈殿や不純物が確認されたものを「不均一:×」と評価した。結果を表2に示す。
【0044】
【表2】
【0045】
表2の結果から、本発明の特定脂肪酸エステルであるイソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシルおよび2−エチルヘキサン酸2−へキシルデシル(検体1〜3)は、ジメチコンと優れた相溶性を有することが確認された。さらに、イソノナン酸イソトリデシルはジメチコンと任意の割合で相溶性があり、いずれの粘度のジメチコンを使用した場合にも15分以上均一な状態を保つことを確認した。
【0046】
(試験例3)
試験例2においてジメチコンとの相溶性が確認された検体1〜3、5、9を用い、下記表3に示す処方に従い、各組成物(実施例1〜9、比較例1〜3)を調製した。
シラミの卵として、コロモジラミの卵を使用した。具体的には、実験の前日に毛髪束に対し、吸血直後のコロモジラミ成虫100頭前後を放ち、30℃、RH50%の条件下、1日間産卵させた。その後、毛髪束から成虫のみを回収し、実験に供試するシラミ卵付きの毛髪を得た。なお、毛髪束にはシラミ卵が約10個付着していた。
各組成物2.5mLをシャーレ(φ90mm)にとり、上記毛髪束を浸漬し、5分間放置した。続いて、毛髪束をメッシュ(目開き177μm)に移し、流水(50mL/秒で1分)で洗い流し、水分を取り除いた後、清潔なろ紙を敷いたシャーレ(φ90mm)に移した。シャーレをインキュベーター内(30℃)で10日間放置し、10日後に目視観察を行い、孵化阻害率を調べた。孵化阻害率は、
下記の計算式より求めた。コントロールは各検体の実施に応じて試験を行った。
孵化率(%)=試験検体の孵化数/コントロールの孵化率
孵化阻害率(%)=(1−試験検体の孵化率/コントロールの孵化率)×100
試験は各組成物に対して複数回(3〜12回)行い、孵化阻害率はその平均値とする。
結果を表4に示す。
【0047】
【表3】
【0048】
【表4】
【0049】
表4の結果から、本発明の特定脂肪酸エステルであるイソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシルおよび2−エチルヘキサン酸2−へキシルデシル(実施例1〜3)は、ジメチコンと併用した場合、強いシラミ卵の孵化阻害効果を有することがわかった。
【0050】
(試験例4)
試験例1でシラミ卵に対して強い孵化阻害効果が確認された検体1〜3を用いてシラミ成虫に対する殺虫効力を評価した。
下記表5に示す処方に従い、各組成物(実施例10〜16、比較例4〜7)を調製した。
【0051】
<24時間後致死率の測定>
各組成物2.5mLをシャーレ(φ90mm)に取り、そこにコロモジラミの雌成虫10頭を供し、5分間接触させた。続いて、供試虫をメッシュ(目開き177μm)に移し、流水(50mL/秒、1分間)で検体を洗い流した。供試虫を清潔なろ紙に移し、水気を取ってから清潔なろ紙を敷いたシャーレ(φ90mm)に移した。シャーレをインキュベーター内(30℃)に静置し、24時間後の致死数を観測した。致死率は下記の計算式より求めた。なお、比較例4は、シャーレにコロモジラミを供したもののみで同様に試験したものである。
致死率(%)=試験検体による致死数/供試虫数×100
試験は各検体に対して2反復実施し、致死率はその平均値とする。結果を表5に示す。
【0052】
<皮膚刺激性試験>
白色モルモット(Hartley系(日本エスエルシー株式会社より購入)、雄28〜30週齢)の左右背部を電気バリカンで除毛し、皮膚を露出させた。各組成物を1.2×1.2cmのリント布(ピップトウキョウ株式会社製)に一定量(50μL/cm
2)を含浸させ、5×6cmの大きさの密封性サージカルテープBlenderm(住友スリーエム社)で裏打ちし、パッチを作製し、皮膚表面(約150cm
2)に貼付し、さらに、伸縮性粘着テープ(エラテックス3号 2.5cm×5m、アルケア社)を白色モルモットの胴体に巻いてパッチを覆い、24時間閉塞貼付した。24時間後、パッチを除去し、その24時間後の皮膚反応を観察し、皮膚刺激性を評価した。
皮膚反応の評価は、大水疱を有する皮膚反応や強度紅斑の出た場合を「強い刺激性がある:××」、明らかな紅斑とともに水疱を有する皮膚反応が出た場合を「刺激性がある:×」、軽度の紅斑が見られたが実使用上の問題はないものを「弱い刺激性があり:△」、かすかな紅斑が出た(かすかな赤みが見られた)が実使用上は全く問題のないものを「ほとんど刺激性がない:〇」、外見上の変化がないものを「刺激性がない:◎」として評価した。結果を表5に示す。なお、表5中の「N.D.」は皮膚刺激性試験を未実施であることを示す。
【0053】
【表5】
【0054】
表5の結果から、本発明の特定脂肪酸エステルであるイソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシルおよび2−エチルヘキサン酸2−へキシルデシル(実施例10〜12)は、シラミ成虫に対する24時間後の致死率が80%以上であり、シラミ成虫に対しても強い防除効果を持つことを確認した。イソノナン酸イソトリデシルを有効成分として含有する実施例13〜17についても24時間後の致死率は100%であり、全てのコロモジラミを致死させることができた。
また、本発明の特定脂肪酸エステルは、流動イソパラフィンのような溶剤やデカメチルシクロペンタシロキサン等のシリコーン油と併用することにより、24時間後の致死率を確保しつつ、皮膚に対する刺激性を抑制できることがわかった。
【0055】
(試験例5)
ノミの卵として、ネコノミ(Ctenocephalides felis BOUCHE)の卵(産卵後24時間以内のもの)を使用した。
ガラスシャーレ(φ90mm)にネコノミ卵を20〜35個取り、イソノナン酸イソトリデシル500μLを滴下し、シャーレを傾けながらネコノミ卵を浸漬させた後、10分間静置した。その後、ろ紙を敷いたブフナー漏斗にネコノミ卵のみを移し、市販のシャンプー剤250μLを滴下し、馴染ませた。続いて、水1mLを滴下しながら吸引濾過を行い、シャンプー剤を洗い落とした。
洗浄したネコノミ卵を25℃、75%RHの条件下、3日間保管し、その後の孵化数を計数した。試験は5回行った。結果を表6に示す。
また、コントロールとして、イソノナン酸イソトリデシルを滴下せずに、シャンプー剤での洗浄処理のみを行った。具体的に、ろ紙を敷いたブフナー漏斗にネコノミ卵を20〜35個取り、市販のシャンプー剤250μLを滴下し、馴染ませた後、水1mLを滴下しながら吸引濾過を行い、シャンプー剤を洗い落とした。その後、洗浄したネコノミ卵を25℃、75%RHの条件下、3日間保管し、その後の孵化数を計数した。試験は5回行った。結果を表6に示す。
【0056】
得られた孵化数から、下記の計算式(1)、(2)により、孵化率及び孵化阻害率を算出した。結果をあわせて表6に示す。
孵化率(%)=(孵化数の合計数)/(供試したネコノミ卵の合計数)×100・・・(1)
孵化阻害率(%)=(1−試験検体の孵化率/コントロールの孵化率)×100・・・(2)
【0057】
【表6】
【0058】
表6の結果から、本発明の特定脂肪酸エステルであるイソノナン酸イソトリデシルは孵化阻害率が70.7%であり、ネコノミ卵に対して強い孵化阻害効果を確認できた。
【0059】
続いて、本発明に係るシラミ卵の孵化阻害剤を配合した毛髪剤の処方例(製剤例1〜22)を示す。
【0060】
【表7】
【0061】
【表8】
【0062】
【表9】
【0063】
【表10】
【0064】
【表11】
【0065】
【表12】
【0066】
【表13】
【0067】
【表14】
【0068】
【表15】
【0069】
【表16】
【0070】
【表17】
【0071】
【表18】
【0072】
【表19】
【0073】
【表20】
【0074】
【表21】
【0075】
【表22】
【0076】
【表23】
【0077】
【表24】
【0078】
【表25】
【0079】
【表26】
【0080】
【表27】
【0081】
【表28】
【0082】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は、2014年10月22日出願の日本特許出願(特願2014−215298)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。