特許第6756645号(P6756645)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6756645
(24)【登録日】2020年8月31日
(45)【発行日】2020年9月16日
(54)【発明の名称】ダンパディスク組立体
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/137 20060101AFI20200907BHJP
【FI】
   F16F15/137 D
   F16F15/137 A
【請求項の数】2
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2017-45802(P2017-45802)
(22)【出願日】2017年3月10日
(65)【公開番号】特開2018-150957(P2018-150957A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2019年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】萩原 祥行
(72)【発明者】
【氏名】吉川 直孝
(72)【発明者】
【氏名】上原 宏
【審査官】 熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−068443(JP,A)
【文献】 特開平05−296290(JP,A)
【文献】 特開2008−089089(JP,A)
【文献】 特開昭61−165025(JP,A)
【文献】 特開2011−220409(JP,A)
【文献】 特開2009−133378(JP,A)
【文献】 特開2004−197781(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/00−15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に互いに間隔を隔てて配置される第1及び第2回転部材と、
前記第1及び第2回転部材を一体回転可能に連結し、周方向の長さが径方向の長さより長い断面を有する連結部材と、
前記第1及び第2回転部材の軸方向間に配置され、前記第1及び第2回転部材に対して回転可能な第3回転部材と、
前記第1及び第2回転部材と前記第3回転部材とを弾性的に連結する弾性部と、
を備え、
前記弾性部は、前記連結部材より径方向内側に配置される第1弾性部材と、前記第1弾性部材と並列に作動する第2弾性部材とを、有し、
回転軸心から前記第2弾性部材の周方向中央部に向けて径方向に延びる直線が前記第2弾性部材の最も外側の部分を通過する最外点及び前記回転軸心を結ぶ第1線分に対する、前記回転軸心から前記第1弾性部材の周方向中央部に向けて前記径方向に延びる直線が前記第1弾性部材の最も外側の部分を通過する最外点及び前記回転軸心を結ぶ第2線分の比は、0.85以上且つ1.0未満であり、
前記第2弾性部材の外径に対する前記第1弾性部材の外径の比は、0.75以上且つ1.0未満である、
ダンパディスク組立体。
【請求項2】
前記第3回転部材は、前記第1弾性部材を収納するための第1収納窓と、前記第2弾性部材を収納するための第2収納窓を、有し、
前記回転軸心と前記第2収納窓の最外周部とを結ぶ第3線分に対する、前記回転軸心と前記第1収納窓の最外周部とを結ぶ第4線分の比は、0.85以上且つ1.0未満である、
請求項1に記載のダンパディスク組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンパディスク組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のダンパディスク組立体、例えば特許文献1に開示されたダンパディスク組立体では、クラッチプレート及びリティーニングプレート(第1及び第2回転部材)が、円形断面を有するストップピン(連結部材)によって、一体回転可能に連結されている。また、クラッチプレート及びリティーニングプレートは、コイルスプリングセット(8)によって、ハブフランジ(第3回転部材)に弾性的に連結されている。ここでは、コイルスプリングセット(8)は、ストップピンの径方向内側に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−19746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のダンパディスク組立体では、ストップピンが円形断面を有している。また、コイルスプリングセット(8)は、円形断面のストップピンの径方向内側に配置されている。このため、第2弾性部材を径方向外側に配置しづらい。これにより、第2弾性部材が負担するトルクを、向上することが難しかった。すなわち、第2弾性部材の許容トルクを向上することが難しかった。
【0005】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、許容トルクを向上可能なダンパディスク組立体を、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一側面に係るダンパディスク組立体は、第1及び第2回転部材と、連結部材と、第3回転部材と、弾性部とを、備える。
【0007】
第1及び第2回転部材は、軸方向に互いに間隔を隔てて配置される。連結部材は、第1及び第2回転部材を一体回転可能に連結する。連結部材は、周方向の長さが径方向の長さより長い断面を、有する。第3回転部材は、第1及び第2回転部材の軸方向間に配置され、第1及び第2回転部材に対して回転可能である。弾性部は、第1及び第2回転部材と第3回転部材とを、弾性的に連結する。
【0008】
弾性部は、連結部材より径方向内側に配置される第1弾性部材と、第1弾性部材と並列に作動する第2弾性部材とを、有する。ここで、径方向における第2弾性部材の最外点及び回転軸心を結ぶ第1線分に対する、径方向における第1弾性部材の最外点及び回転軸心を結ぶ第2線分の比は、0.85以上且つ1.0以下である。
【0009】
本ダンパディスク組立体では、連結部材が、周方向の長さが径方向の長さより長い断面を、有している。この断面を有する連結部材の径方向内側には、第1弾性部材が配置されている。この構成では、上記の第1線分に対する第2線分の比が、0.85以上且つ1.0以下に設定されている。これに対して、従来技術では、第2弾性部材の最外径に対する第1弾性部材の最外径の比は、例えば0.80未満である。
【0010】
このように、ダンパディスク組立体を構成することによって、従来技術と比較して、第1弾性部材を径方向外側に配置することができる。これにより、第1弾性部材が負担するトルク(第1弾性部材の許容トルク)を、向上することができる。すなわち、ダンパディスク組立体の許容トルクを向上することができる。
【0011】
(2)本発明の他の側面に係るダンパディスク組立体では、第2弾性部材の周方向中央部における第1線分に対する、第1弾性部材の周方向中央部における第2線分の比は、0.85以上且つ1.0以下であることが好ましい。
【0012】
このように構成することによって、第1弾性部材の許容トルクを、好適に向上することができる。すなわち、ダンパディスク組立体の許容トルクを好適に向上することができる。
【0013】
(3)本発明の他の側面に係るダンパディスク組立体では、第3回転部材が、第1弾性部材を収納するための第1収納窓と、第2弾性部材を収納するための第2収納窓を、有することが好ましい。この場合、回転軸心と第2収納窓の最外周部とを結ぶ第3線分に対する、回転軸心と第1収納窓の最外周部とを結ぶ第4線分の比は、0.85以上且つ1.0以下である。
【0014】
この構成では、第1収納窓に配置された第1弾性部材を、従来技術と比較して、径方向外側で作動させることができる。これにより、第1弾性部材の許容トルクを、向上することができる。すなわち、ダンパディスク組立体の許容トルクを向上することができる。
【0015】
(4)本発明の他の側面に係るダンパディスク組立体では、第2弾性部材の外径に対する第1弾性部材の外径が、0.75以上且つ1.0以下であることが好ましい。
【0016】
この構成では、従来技術と比較して、第1弾性部材の外径を大きく設定することができる。これにより、第1弾性部材の許容トルクを、向上することができる。すなわち、ダンパディスク組立体の許容トルクを向上することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、ダンパディスク組立体の許容トルクを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態によるクラッチディスク組立体の断面図。
図2A図1の正面図。
図2B】高剛性ダンパユニットの配置を説明するための図1の正面図。
図3】低剛性ダンパユニットの正面図。
図4A】第1から第3ヒステリシストルク発生機構の部分拡大断面図。
図4B】第1から第3ヒステリシストルク発生機構の部分拡大断面図。
図5A】付勢部材の正面図。
図5B】付勢部材の形成形態を説明するための模式図(径方向外側から見た図)。
図5C】付勢部材の形成形態を説明するための模式図(径方向外側から見た図)。
図6A】第2及び第3ヒステリシストルク発生機構の動作を説明するための低剛性ダンパユニットの正面図。
図6B】第2及び第3ヒステリシストルク発生機構の動作を説明するための低剛性ダンパユニットの正面図。
図6C】第2及び第3ヒステリシストルク発生機構の動作を説明するための低剛性ダンパユニットの正面図。
図6D】第2及び第3ヒステリシストルク発生機構の動作を説明するための低剛性ダンパユニットの正面図。
図7】低剛性ダンパユニット及びヒステリシストルク発生機構の捩り特性図。
図8A】変形例1における第2及び第3ヒステリシストルク発生機構の動作を説明するための低剛性ダンパユニットの正面図。
図8B】変形例1における第2及び第3ヒステリシストルク発生機構の動作を説明するための低剛性ダンパユニットの正面図。
図9】変形例1による低剛性ダンパユニット及びヒステリシストルク発生機構の捩り特性図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[全体構成]
図1には、本発明の一実施形態によるダンパディスク組立体を有するクラッチディスク組立体1が、示されている。
【0020】
図1は、クラッチディスク組立体1の断面図であり、図2はその正面図である。クラッチディスク組立体1は、車輌のクラッチ装置に用いられる。クラッチディスク組立体1は、クラッチ機構と、ダンパ機構とを、有している。
【0021】
図1においてO−Oがクラッチディスク組立体1の回転軸すなわち回転中心線である。また、以下では、回転軸Oから離れる方向を径方向と記し、回転軸に沿う方向を軸方向と記す。さらに、以下では、回転軸Oをまわりの方向を周方向又は回転方向と記す。
【0022】
図1の左側にエンジン及びフライホイール(図示せず)が配置され、図1の右側にトランスミッション(図示せず)が配置されている。図2のR1がクラッチディスク組立体1の回転駆動方向(第1回転方向)であり、R2がその反対方向(第2回転方向)である。
【0023】
クラッチディスク組立体1は、エンジンから入力されるトルクをトランスミッション側に伝達する。クラッチディスク組立体1は、主に、高剛性ダンパユニット2と、低剛性ダンパユニット3と、スプラインハブ4と、ヒステリシストルク発生機構5とを、備えている。
【0024】
<高剛性ダンパユニット>
高剛性ダンパユニット2には、エンジンからのトルクが入力される。高剛性ダンパユニット2は、例えば、走行時に作動するダンパユニットである。高剛性ダンパユニット2は、低剛性ダンパユニット3より高剛性に構成されている。
【0025】
図1に示すように、高剛性ダンパユニット2は、入力側部材10(第1及び第2回転部材の一例)と、ピン部材16(連結部材の一例)と、フランジ部11(第3回転部材の一例)と、高剛性スプリングユニット12(弾性部の一例)とを、有する。
【0026】
−入力側部材−
入力側部材10には、エンジンからトルクが入力される。詳細には、入力側部材10は、フライホイール(図示せず)からのトルクが入力される部分である。図1及び図2に示すように、入力側部材10は、例えば、クラッチプレート13(第1回転部材の一例)と、リティーニングプレート14(第2回転部材の一例)と、クラッチディスク15とを、有している。
【0027】
クラッチプレート13及びリティーニングプレート14は、実質的に環状の円板部材である。クラッチプレート13及びリティーニングプレート14は、軸方向に所定の間隔を隔てて配置されている。クラッチプレート13はエンジン側に配置され、リティーニングプレート14はトランスミッション側に配置されている。クラッチプレート13及びリティーニングプレート14は、固定部材例えばピン部材16によって、互いに一体回転可能に連結される。
【0028】
クラッチプレート13及びリティーニングプレート14の外周部には、それぞれ回転方向に等間隔で4つの窓孔13a,14aが形成されている。各窓孔13a,14aには、高剛性スプリングユニット12が配置される。各窓孔13a,14aにおいて周方向に対向する壁部には、高剛性スプリングユニット12の両端部が当接している。各窓孔13a,14aには、内周側と外周側にそれぞれ切り起こし部が形成されている。
【0029】
リティーニングプレート14は、複数(例えば4個)の支持孔14bを、有している。複数の支持孔14bは、ヒステリシストルク発生機構5を支持するためのものである。各支持孔14bには、後述するヒステリシストルク発生機構5における第1ブッシュ40の第1突出部45が、挿通される。
【0030】
クラッチディスク15は、図示しないフライホイールに押し付けられる部分である。クラッチディスク15は、クッショニングプレート15aと、クッショニングプレート15aの両面に固定された摩擦フェーシング15bとから、構成されている。クラッチディスク15は、従来の構成と同様であるので、クラッチディスク15についての詳細な説明は省略する。
【0031】
−ピン部材−
ピン部材16は、クラッチプレート13及びリティーニングプレート14を一体回転可能に連結する。例えば、図1及び図2Aに示すように、複数のピン部材16は、クラッチプレート13及びリティーニングプレート14それぞれに形成された複数(例えば4個)の長孔13b,14cに、各別に挿通される。そして、各ピン部材16の両端部をカシメることによって、クラッチプレート13及びリティーニングプレート14に固定される。
【0032】
各ピン部材16は、周方向に隣接するスプリング収容部20の間に、配置される。各ピン部材16は、クラッチプレート13及びリティーニングプレート14とともに回転方向に移動可能であり、且つフランジ部11の各ストッパ部22に当接可能である。
【0033】
各ピン部材16は、以下の断面を有し、軸方向に長い部材である。図2Aに示すように、各ピン部材16は、周方向の長さが径方向の長さより長い断面を、有する。例えば、各ピン部材16の断面は、実質的に矩形状に形成されている。詳細には、各ピン部材16の断面は、周方向に長くなるように、矩形状に形成されている。より詳細には、各ピン部材16の断面は、径方向と直交する方向に長くなるように、矩形状に形成されている。
【0034】
ピン部材16の径方向長さに対する、ピン部材16の直交方向長さの比は、例えば、0.13以上且つ0.2以下である。本実施形態では、上記の比は、0.17に設定されている。
【0035】
−フランジ部−
フランジ部11は、入力側部材10と相対回転可能に構成される。図1から図3に示すように、フランジ部11は、スプラインハブ4の径方向外側に配置される。フランジ部11は、実質的に円環状に形成される。フランジ部11は、スプラインハブ4とは別体で形成されている。
【0036】
具体的には、図1に示すように、フランジ部11は、クラッチプレート13及びリティーニングプレート14の軸方向間に配置される。フランジ部11は、クラッチプレート13及びリティーニングプレート14に対して回転可能である。
【0037】
図3に示すように、フランジ部11は、第1孔部17と、内歯部18と、第1被接触部19と、複数(例えば4個)のスプリング収容部20と、複数(例えば4個)の凹部21と、複数のストッパ部22とを、有する。
【0038】
第1孔部17は、フランジ部11の中心部に形成されている。第1孔部17には、スプラインハブ4を挿入可能である。第1孔部17には、内歯部18が設けられている
内歯部18は複数の内歯から構成されており、各内歯は第1孔部17から径方向内側に突出している。内歯部18は、複数対(例えば2対)の第1内歯18aと、複数対(例えば2対)の第2内歯18bと、複数(例えば2個)の第3内歯18cとを、有している。内歯部18は、第2回転方向R2において、一対の第1内歯18a、一対の第2内歯18b、第3内歯18cの順に、間隔を隔てて配置されている。
【0039】
各対の第1内歯18aそれぞれは、第1孔部17から径方向内側に突出している。各対の第1内歯18aそれぞれは、周方向に間隔を隔てて設けられる。各対の第1内歯18aは、スプラインハブ4の第1外歯27a及び第2外歯27bの周方向間に配置される。各対の第1内歯18aの一方は、第1回転方向R1において、第1外歯27aに対向して配置される。各対の第1内歯18aの他方は、第2回転方向R2において、第2外歯27bに対向して配置される。各対の第1内歯18aの周方向間には、低剛性スプリングユニット25の第3スプリング25aが配置される。
【0040】
各対の第2内歯18bそれぞれは、第1孔部17から径方向内側に突出している。各対の第2内歯18bそれぞれは、周方向に間隔を隔てて設けられる。各対の第2内歯18bは、スプラインハブ4の第2外歯27b及び第3外歯27cの周方向間に配置される。各対の第2内歯18bの一方は、第1回転方向R1において、第2外歯27bに対向して配置される。各対の第2内歯18bの他方は、第2回転方向R2において、第3外歯27cに対向して配置される。各対の第2内歯18bの周方向間には、低剛性スプリングユニット25の第4スプリング25bが配置される。
【0041】
各第3内歯18cは、第1孔部17から径方向内側に突出している。各第3内歯18cは、周方向において、周方向に隣接する第1内歯18a及び第2内歯18bの間に設けられる。各第3内歯18cは、スプラインハブ4の第3外歯27c及び第1外歯27aの周方向間に配置される。すなわち、各第3内歯18cは、第1回転方向R1において第3外歯27cに対向して配置され、第2回転方向R2において第1外歯27aに対向して配置される。
【0042】
第1被接触部19は、第3ヒステリシストルク発生機構63に接触される部分である。図4A及び図4Bに示すように、第1被接触部19は、第1孔部17の径方向外側に設けられている。詳細には、被接触部は、第1孔部17及びスプリング収容部20の径方向間において、第2ブッシュ43(後述する)側の側面に、設けられている。
【0043】
第1被接触部19には、第3ヒステリシストルク発生機構63の第4摩擦部材53(後述する)が接触する。第1被接触部19及び第4摩擦部材53(後述する)の関係については、第3ヒステリシストルク発生機構63において説明する。
【0044】
図3に示すように、複数のスプリング収容部20は、フランジ部11の外周部に形成されている。詳細には、複数のスプリング収容部20は、周方向に等間隔で形成されている。
【0045】
ここで、フランジ部11は、複数(例えば4個)の開口20aを、さらに有している。
【0046】
複数の開口20aそれぞれは、各スプリング収容部20に形成されている。図1に示すように、各開口20aは、クラッチプレート13及びリティーニングプレート14の各窓孔13a,14aに対して、軸方向に対向して配置されている。各開口20aには、高剛性スプリングユニット12が配置される。各開口20aにおいて周方向に対向する壁部には、高剛性スプリングユニット12の両端部が、各別に当接している。
【0047】
詳細には、複数の開口20aは、複数(例えば2個)の第1開口20a1(第2収納窓の一例)と、(例えば2個)の第2開口20a2(第1収納窓の一例)とを、有している。
【0048】
第1開口20a1は、高剛性スプリングユニット12の第1スプリングユニット23を収納するためのものである。各第1開口20a1は、第1スプリングユニット23が配置されるクラッチプレート13の各窓孔13aと、第1スプリングユニット23が配置されるリティーニングプレート14の各窓孔14aとに対して、軸方向に対向して配置される。
【0049】
各第1開口20a1は、周方向において、各第2開口20a2に隣接して配置されている。各第1開口20a1は、周方向に隣接する第2開口20a2の間に、配置されている。
【0050】
第2開口20a2は、高剛性スプリングユニット12の第2スプリングユニット24を収納するためのものである。各第2開口20a2は、第2スプリングユニット24が配置されるクラッチプレート13の各窓孔13aと、第2スプリングユニット24が配置されるリティーニングプレート14の各窓孔14aとに対して、軸方向に対向して配置される。
【0051】
各第2開口20a2は、周方向において、各第1開口20a1に隣接して配置されている。各第2開口20a2は、周方向に隣接する第1開口20a1の間に、配置されている。すなわち、第1開口20a1及び第2開口20a2は、周方向に交互に配置されている。
【0052】
図4A及び図4Bに示すように、複数の凹部21それぞれには、第2ブッシュ43の第2突出部43c(後述する)が係合する。各凹部21は、径方向に互いに対向する2つの開口20aそれぞれの内周縁に、形成されている。各凹部21は、開口20aの内周縁における周方向中央部において、回転軸Oに向けて凹状に形成されている。
【0053】
図1及び図3に示すように、複数のストッパ部22それぞれは、スプリング収容部20の外周部に設けられている。各ストッパ部22には、クラッチプレート13及びリティーニングプレート14を固定するピン部材16が、当接可能である。例えば、ストッパ部22及びピン部材16の当接によって、フランジ部11に対するクラッチプレート13及びリティーニングプレート14の回転が、規制される。すなわち、ストッパ部22及びピン部材16は、ストッパ機構として機能する。
【0054】
−高剛性スプリングユニット−
高剛性スプリングユニット12は、入力側部材10及びフランジ部11を回転方向に弾性的に連結する。詳細には、複数の高剛性スプリングユニット12は、クラッチプレート13及びリティーニングプレート14と、フランジ部11とを、回転方向に弾性的に連結する。
【0055】
図1及び図2に示すように、具体的には、高剛性スプリングユニット12は、複数(例えば2個)の第1スプリングユニット23(第2弾性部材の一例)と、複数(例えば2個)の第2スプリングユニット24(第1弾性部材の一例)とを、有している。
【0056】
図2に示すように、第1スプリングユニット23及び第2スプリングユニット24それぞれは、周方向に間隔を隔てて交互に配置されている。図1に示すように、第1スプリングユニット23及び第2スプリングユニット24それぞれは、フランジ部11の各開口20aに収容されている。また、クラッチプレート13及びリティーニングプレート14の各窓孔13a,14aによって、径方向及び軸方向の移動が規制されている。
【0057】
第1スプリングユニット23は、第2スプリングユニット24と並列に作動する。第1スプリングユニット23は、第1大スプリング23aと、第1小スプリング23bとを、有している。第1大スプリング23aは、第1小スプリング23bより大径に形成されている。第1小スプリング23bは、第1大スプリング23aの内周側に配置されている。ここでは、第1小スプリング23bは、第1大スプリング23aと実質的に同じ長さである。
【0058】
第1大スプリング23aの両端部及び第1小スプリング23bの両端部は、フランジ部11の各開口20aにおいて周方向に対向する壁部に、各別に当接している。第1大スプリング23aの両端部及び第1小スプリング23bの両端部は、クラッチプレート13及びリティーニングプレート14の各窓孔13a,14aにおいて周方向に対向する壁部に、各別に当接している。
【0059】
第2スプリングユニット24は、第2大スプリング24aと、第2小スプリング24bとを、有している。第2大スプリング24aは、第2小スプリング24bより大径に形成されている。第2小スプリング24bは、第2大スプリング24aの内周側に配置されている。ここでは、第2小スプリング24bは、第2大スプリング24aと実質的に同じ長さである。
【0060】
第2大スプリング24aの両端部及び第2小スプリング24bの両端部は、フランジ部11の各開口20aにおいて周方向に対向する壁部に、各別に当接している。第2大スプリング24aの両端部及び第2小スプリング24bの両端部は、クラッチプレート13及びリティーニングプレート14の各窓孔13a,14aにおいて周方向に対向する壁部に、各別に当接している。
【0061】
図2Aに示すように、第2スプリングユニット24は、ピン部材16より径方向内側に配置される。ここでは、第1スプリングユニット23の外径に対する第2スプリングユニット24の外径の比は、0.75以上且つ1.0以下に設定されている。より具体的には、第1大スプリング23aの外径に対する第2大スプリング24aの外径の比は、0.75以上且つ1.0以下に設定されている。本実施形態では、上記の比は、0.78に設定されている。
【0062】
この構成によって、第1スプリングユニット23及び第2スプリングユニット24は、クラッチプレート13及びリティーニングプレート14と、フランジ部11とを、回転方向に弾性的に連結する。
【0063】
上記の構成を有する高剛性ダンパユニット2では、図2Bに示すように、高剛性ダンパユニット2(クラッチディスク組立体1)を軸方向外側から軸方向に見た場合に、各構成が次のように配置される。
【0064】
径方向における第1スプリングユニット23の第1最外点E1及び回転軸心Oを結ぶ第1線分L1に対する、径方向における第2スプリングユニット24の第2最外点E2及び回転軸心Oを結ぶ第2線分L2の比は、0.85以上且つ1.0以下である。
【0065】
詳細には、第1スプリングユニット23(第1大スプリング23a)の周方向中央部における第1線分L1に対する、第2スプリングユニット24(第2大スプリング24a)の周方向中央部における第2線分L2の比が、0.85以上且つ1.0以下である。本実施形態では、上記の比は、0.9に設定されている。
【0066】
ここで、第1線分L1は、回転軸心Oに垂直であり第1最外点E1を通過する面上に定義される。第2線分L2は、回転軸心Oに垂直であり第2最外点E2を通過する面上に定義される。
【0067】
第1スプリングユニット23(第1大スプリング23a)の周方向中央部とは、回転軸心Oまわりの周方向における第1スプリングユニット23(第1大スプリング23a)の中央部である。詳細には、第1スプリングユニット23(第1大スプリング23a)の周方向中央部とは、第1スプリングユニット23の作動軸J1上における第1スプリングユニット23の中点C1によって定義される。
【0068】
第2スプリングユニット24(第2大スプリング24a)の周方向中央部とは、回転軸心Oまわりの周方向における第2スプリングユニット24(第2大スプリング24a)の中央部である。詳細には、第2スプリングユニット24(第2大スプリング24a)の周方向中央部とは、第2スプリングユニット24の作動軸J2上における第2スプリングユニット24の中点C2によって定義される。
【0069】
第1最外点E1は、回転軸心Oから第1スプリングユニット23の作動軸上の中点C1に向かう径方向において、第1スプリングユニット23の最も外側の点に対応している。第2最外点E2は、回転軸心Oから第2スプリングユニット24の作動軸上の中点C2に向かう径方向において、第2スプリングユニット24の最も外側の点に対応している。
【0070】
回転軸心Oと第1開口20a1の最外周部P1とを結ぶ第3線分L3に対する、回転軸心Oと第2開口20a2の最外周部P2とを結ぶ第4線分L4の比は、0.85以上且つ1.0以下である。本実施形態では、上記の比は、0.88に設定されている。
【0071】
ここで、第3及び第4線分L3,L4は、回転軸心Oに垂直であり最外周部P1,P2を通過する面上に、定義される。第1開口20a1の最外周部P1は、径方向において第1開口20a1の最も外側の部分である。例えば、第1開口20a1の最外周部P1は、第1開口20a1の外周側の壁部における周方向の中央点である。第2開口20a2の最外周部P2は、径方向において第2開口20a2の最も外側の部分である。例えば、第2開口20a2の最外周部P2は、第2開口20a2の外周側の壁部における周方向の中央点である。
【0072】
このように、高剛性ダンパユニット2を構成することによって、従来技術と比較して、第2スプリングユニット24を径方向外側に配置することができる。これにより、第2スプリングユニット24が負担するトルク(第2スプリングユニット24の許容トルク)を、向上することができる。すなわち、高剛性ダンパユニット2の許容トルク、すなわちクラッチディスク組立体1の許容トルクを、向上することができる。
【0073】
<低剛性ダンパユニット>
低剛性ダンパユニット3は、例えば、アイドリング時に作動するダンパユニットである。低剛性ダンパユニット3は、高剛性ダンパユニット2より低剛性に構成されている。
【0074】
図1に示すように、低剛性ダンパユニット3は、径方向において、フランジ部11及びスプラインハブ4の間に配置される。詳細には、低剛性ダンパユニット3は、高剛性スプリングユニット12の内周側において、フランジ部11及びスプラインハブ4の径方向間に配置される。
【0075】
低剛性ダンパユニット3は、フランジ部11と、低剛性スプリングユニット25と、スプラインハブ4とを、有する。フランジ部11の構成は、上述した高剛性ダンパユニット2において説明したので、ここでは説明を省略する。
【0076】
−低剛性スプリングユニット−
低剛性スプリングユニット25は、フランジ部11及びスプラインハブ4を回転方向に弾性的に連結する。低剛性スプリングユニット25は、高剛性スプリングユニット12より剛性が低い。図1に示すように、低剛性スプリングユニット25は、フランジ部11及びスプラインハブ4の径方向間に形成される空間に、配置される。
【0077】
図3に示すように、低剛性スプリングユニット25は、複数(例えば2個)の第3スプリング25aと、複数(例えば2個)の第4スプリング25bとを、有している。第3スプリング25a及び第4スプリング25bは、周方向に間隔を隔てて交互に配置されている。
【0078】
第3スプリング25aは、各対の第1内歯18aの周方向間に配置され、且つ周方向に隣接する第1外歯27a及び第2外歯27bの間に、配置されている。詳細には、第3スプリング25aの両端部は、各対の第1内歯18aに各別に係合する。ここでは、第3スプリング25aの両端部それぞれにはスプリングシートが配置されており、第3スプリング25aの両端部は、スプリングシートを介して、各対の第1内歯18aに各別に係合する。
【0079】
なお、以下では、第3スプリング25aの両端部及び第3スプリング25aの端部という文言は、スプリングシートを含む文言として、用いられることがある。
【0080】
また、第3スプリング25aの両端部は、第1外歯27aの第1係合部28a(後述する)と、第2外歯27bの第2係合部28b(後述する)とに、各別に係合する。ここでは、第3スプリング25aの両端部は、スプリングシートを介して、第1外歯27aの第1係合部28aと、第2外歯27bの第2係合部28b(後述する)とに、各別に係合する。
【0081】
図3に示すように、フランジ部11及びスプラインハブ4が初期状態である場合、第3スプリング25aの両端部、例えば第3スプリング25aの両端部のスプリングシートは、第1係合部28aと、第2係合部28bと、一対の第1内歯18aとに、各別に当接している。
【0082】
なお、初期状態とは、フランジ部11及びスプラインハブ4の相対回転がゼロ(図7の原点を参照)である状態である。また、初期状態は、図6Aの状態である。
【0083】
第4スプリング25bは、各対の第2内歯18bの周方向間に配置され、且つ周方向に隣接する第2外歯27b及び第3外歯27cの間に、配置されている。詳細には、第4スプリング25bの両端部は、各対の第2内歯18bに各別に係合する。ここでは、第4スプリング25bの両端部それぞれにはスプリングシートが配置されており、第4スプリング25bの両端部は、スプリングシートを介して、各対の第2内歯18bに各別に係合する。
【0084】
なお、以下では、第4スプリング25bの両端部及び第4スプリング25bの端部という文言は、スプリングシートを含む文言として、用いられることがある。
【0085】
また、第4スプリング25bの両端部は、第2外歯27bの第3係合部28c(後述する)と、第3外歯27cの第4係合部28d(後述する)とに、各別に係合する。ここでは、第4スプリング25bの両端部は、スプリングシートを介して、第2外歯27bの第3係合部28cと、第3外歯27cの第4係合部28dとに、各別に係合する。
【0086】
さらに、第4スプリング25bの両端部は、周方向に隣接する一対の爪部51(後述する)に、各別に係合する。ここでは、第4スプリング25bの両端部は、スプリングシートを介して、周方向に隣接する一対の爪部51に、各別に係合する。爪部51については、第3ヒステリシストルク発生機構63において説明する。
【0087】
図3に示すように、フランジ部11及びスプラインハブ4が初期状態である場合、第4スプリング25bの両端部は、スプリングシートを介して、一対の第2内歯18b及び一対の爪部51に、各別に当接している。
【0088】
また、この場合、図6Aに示すように、第4スプリング25bの一端部(スプリングシート)及び第3係合部28cの周方向間には、第1隙間S1が設けられている。さらに、この場合、第4スプリング25bの他端部(スプリングシート)及び第4係合部28dの周方向間には、第2隙間S2が設けられている。
【0089】
−スプラインハブ−
スプラインハブ4は、トランスミッション側の部材に連結可能に構成される。図3に示すように、スプラインハブ4は、円筒部26と、外歯部27とを、有する。円筒部26は、実質的に円筒状に形成されている。円筒部26は、トランスミッション側の部材と一体回転可能なように、スプライン係合によってトランスミッション側の部材に連結される。
【0090】
外歯部27は、円筒部26の外周部に設けられている。外歯部27は複数の外歯から構成されており、各外歯は円筒部26から径方向外側に突出している。外歯部27は、複数(例えば2個)の第1外歯27aと、複数(例えば2個)の第2外歯27bと、複数(例えば2個)の第3外歯27cとを、有している。外歯部27は、第2回転方向R2において、第1外歯27aと、第2外歯27b、第3外歯27cの順に、間隔を隔てて配置されている。
【0091】
第1外歯27a及び第2外歯27bの周方向間には、各対の第1内歯18aが配置される。第1外歯27a及び第2外歯27bの周方向間には、低剛性スプリングユニット25の第3スプリング25aが配置される。
【0092】
第2外歯27b及び第3外歯27cの周方向間には、各対の第2内歯18bが配置される。第2外歯27b及び第3外歯27cの周方向間には、低剛性スプリングユニット25の第4スプリング25bが配置される。第3外歯27c及び第1外歯27aの周方向間には、第3内歯18cが配置される。
【0093】
上述した初期状態では、図6Aに示すように、第1内歯18a及び第2外歯27bの周方向間には、第3隙間S3が設けられている。また、第2内歯18b及び第2外歯27bの周方向間には、第4隙間S4が設けられている。
【0094】
また、上述した初期状態では、第2内歯18b及び第3外歯27cの周方向間には、第5隙間S5が設けられている。また、第3内歯18c及び第3外歯27cの周方向間には、第6隙間S6が設けられている。
【0095】
また、上述した初期状態では、第3内歯18c及び第1外歯27aの周方向間とには、第7隙間S7が設けられている。また、第1外歯27a及び第1内歯18aの周方向間には、第8隙間S8が設けられている。
【0096】
図6Aに示すように、第1外歯27aは、円筒部26から径方向外側に突出している。第1外歯27aは、第3外歯27c及び第2外歯27bの周方向間に設けられる。第1外歯27aには、第1係合部28aが設けられる。例えば、第1係合部28aは、第1外歯27aにおける第2回転方向R2側の端部に、設けられる。第1係合部28aは、第3スプリング25aの端部に係合する。
【0097】
第2外歯27bは、円筒部26から径方向外側に突出している。第2外歯27bは、第1外歯27a及び第3外歯27cの周方向間に設けられる。第2外歯27bには、第2係合部28b及び第3係合部28cが、設けられる。
【0098】
例えば、第2係合部28bは、第2外歯27bにおける第1回転方向R1側の端部に、設けられる。第2係合部28bは、第3スプリング25aの端部に係合する。第3係合部28cは、第2外歯27bにおける第2回転方向R2側の端部に、設けられる。第3係合部28cは、第4スプリング25bの端部に係合する。
【0099】
第3外歯27cは、円筒部26から径方向外側に突出している。第3外歯27cは、第2外歯27b及び第1外歯27aの周方向間に設けられる。第3外歯27cには、第4係合部28dが設けられる。例えば、第4係合部28dは、第3外歯27cにおける第1回転方向R1側の端部に、設けられる。
【0100】
<ヒステリシストルク発生機構>
図4A及び図4Bに示すように、ヒステリシストルク発生機構5は、第1ヒステリシストルク発生機構61と、第2ヒステリシストルク発生機構62と、第3ヒステリシストルク発生機構63とを、有する。
【0101】
−第1ヒステリシストルク発生機構−
第1ヒステリシストルク発生機構61は、例えば、走行時に作動するヒステリシストルク発生機構である。
【0102】
第1ヒステリシストルク発生機構61は、高剛性スプリングユニット12及びスプラインハブ4の径方向間に配置されている。第1ヒステリシストルク発生機構61は、高剛性スプリングユニット12の内周側において、入力側部材10(リティーニングプレート14及びクラッチプレート13)及びフランジ部11の軸方向間に、配置される。
【0103】
第1ヒステリシストルク発生機構61は、第1ブッシュ40と、第1摩擦部材41と、第1付勢部材42と、第2ブッシュ43と、第2摩擦部材44とを、有している。
【0104】
第1ブッシュ40は、リティーニングプレート14及びフランジ部11の軸方向間に配置されている。第1ブッシュ40は、第1付勢部材42によってリティーニングプレート14からフランジ部11に向けて付勢されている。
【0105】
第1ブッシュ40は、実質的に円環状に形成される。図1及び図2に示すように、第1ブッシュ40には、複数(例えば4個)の第1突出部45が設けられている。各第1突出部45は、周方向に間隔を隔てて、第1ブッシュ40の外周部に設けられている。各第1突出部45は、リティーニングプレート14の各支持孔14bに挿通されている。これにより、第1ブッシュ40は、リティーニングプレート14に対して軸方向に移動可能、且つリティーニングプレート14と一体回転可能に構成される。
【0106】
第1摩擦部材41は、実質的に環状に形成されている。第1摩擦部材41は、第1ブッシュ40及びフランジ部11の軸方向間に配置される。第1摩擦部材41は、第1ブッシュ40と一体回転可能に第1ブッシュ40に装着されている。ここでは、第1摩擦部材41は、第1ブッシュ40に固定されている。例えば、第1摩擦部材41は、射出成形によって、樹脂製の第1ブッシュ40と一体成形されている。
【0107】
第1摩擦部材41は、フランジ部11に接触する。第1ブッシュ40がフランジ部11に対して回転すると、第1摩擦部材41は、フランジ部11に接触した状態でフランジ部11に対して摺動する。これにより、第1ヒステリシストルクが発生する。
【0108】
第1付勢部材42は、第1ブッシュ40及びリティーニングプレート14の軸方向間に配置される。第1付勢部材42は、第1ブッシュ40をフランジ部11に向けて付勢する。第1付勢部材42は、例えば、コーンスプリングである。
【0109】
第2ブッシュ43は、クラッチプレート13及びフランジ部11の軸方向間に配置される。第2ブッシュ43は、フランジ部11、第1摩擦部材41、及び第1ブッシュ40を介して、第1付勢部材42によって、クラッチプレート13に向けて付勢されている。
【0110】
第2ブッシュ43は、実質的に円環状に形成される。図4A及び図4Bに示すように、第2ブッシュ43には、複数(例えば2個)の第2突出部43cが設けられている。各第2突出部43cは、周方向に間隔を隔てて、第2ブッシュ43の外周部に設けられている。各第2突出部43cは、フランジ部11の各凹部21(図3を参照)に配置される。これにより、第2ブッシュ43は、フランジ部11に対して一体回転可能に構成される。なお、第2ブッシュ43は、後述する第2ヒステリシストルク発生機構62を構成する部材でもある。
【0111】
第2摩擦部材44は、実質的に環状に形成されている。第2摩擦部材44は、第2ブッシュ43及びクラッチプレート13の軸方向間に配置される。第2摩擦部材44は、第2ブッシュ43と一体回転可能に第2ブッシュ43に装着されている。ここでは、第2摩擦部材44は、第2ブッシュ43に固定されている。例えば、第2摩擦部材44は、射出成形によって、樹脂製の第1ブッシュ40と一体成形されている。
【0112】
第2摩擦部材44は、クラッチプレート13に接触する。第2ブッシュ43がクラッチプレート13に対して回転すると、第2摩擦部材44は、クラッチプレート13に接触した状態でクラッチプレート13に対して摺動する。これにより、第1ヒステリシストルクが発生する。
【0113】
−第2ヒステリシストルク発生機構−
第2ヒステリシストルク発生機構62は、例えば、アイドリング時に作動するヒステリシストルク発生機構である。
【0114】
図4A及び図4Bに示すように、第2ヒステリシストルク発生機構62は、高剛性スプリングユニット12及びスプラインハブ4の径方向間に配置されている。第2ヒステリシストルク発生機構62は、高剛性スプリングユニット12の内周側において、入力側部材10(リティーニングプレート14及びクラッチプレート13)及びフランジ部11の軸方向間に、配置される。
【0115】
第2ヒステリシストルク発生機構62は、上述した第2ブッシュ43と、第3ブッシュ46と、第2付勢部材47とを、有している。
【0116】
第2ブッシュ43は、高剛性スプリングユニット12及びスプラインハブ4の径方向間に配置される。第2ブッシュ43は、クラッチプレート13及びフランジ部11の軸方向間に配置される。
【0117】
第2ブッシュ43は、本体部43aと、外筒部43bと、複数(例えば4個)の第2突出部43cと、環状溝部43dと、第1接触部43eと、第2被接触部43fとを、有している。
【0118】
本体部43aは、実質的に環状に形成されている。本体部43aは、クラッチプレート13及びフランジ部11の軸方向間に配置される。詳細には、本体部43aは、クラッチプレート13及び第3ヒステリシストルク発生機構63の軸方向間に配置される。
【0119】
外筒部43bは、本体部43aの外周部に設けられている。例えば、外筒部43bは、第3ヒステリシストルク発生機構63の外周側において、本体部43aの外周部に設けられている。外筒部43bは、実質的に円筒状に形成されている。
【0120】
複数の第2突出部43cそれぞれは、外筒部43bから軸方向に突出している。各第2突出部43cは、上述したように、各第2突出部43cは、フランジ部11の各凹部21に配置される。これにより、第2ブッシュ43は、フランジ部11に対して一体回転可能に構成される。
【0121】
環状溝部43dは、軸方向においてクラッチプレート13に対向するように、本体部43aに設けられる。環状溝部43dは、環状に凹んで本体部43aに形成されている。環状凹部には、第2摩擦部材44が配置されている。例えば、上述したように、第2摩擦部材44は、第2ブッシュ43とともに一体成形され、第2ブッシュ43に対して一体回転可能である。
【0122】
第1接触部43eは、スプラインハブ4に接触する部分である。第1接触部43eは、本体部43aの内周部に設けられている。詳細には、第1接触部43eは、本体部43aの内周部におけるフランジ部11側の側面に、設けられている。
【0123】
第1接触部43eは、スプラインハブ4の外歯部27に接触する。詳細には、第1接触部43eは、スプラインハブ4の外歯部27の基端部に接触する。第2ブッシュ43がスプラインハブ4に対して回転した場合に、第1接触部43eは、外歯部27の基端部に接触した状態で外歯部27の基端部に対して摺動する。これにより、第2ヒステリシストルクが発生する。
【0124】
第2被接触部43fは、第3ヒステリシストルク発生機構63に接触される部分である。第2被接触部43fは、第1接触部43eの径方向外側に設けられている。詳細には、第2被接触部43fは、本体部43aの外周部におけるフランジ部11側の側面に、設けられている。より詳細には、第2被接触部43fは、第1接触部43e及び外筒部43bの径方向間において、本体部43aのフランジ部11側の側面に、設けられている。
【0125】
第2被接触部43fには、第3ヒステリシストルク発生機構63の第4摩擦部材53(後述する)が接触する。第2被接触部43f及び第4摩擦部材53の関係については、第3ヒステリシストルク発生機構63において説明する。
【0126】
第3ブッシュ46は、実質的に円環状に形成される。第3ブッシュ46は、リティーニングプレート14及びフランジ部11の軸方向間に配置されている。第3ブッシュ46は、第2付勢部材47によってリティーニングプレート14からフランジ部11に向けて付勢されている。
【0127】
第3ブッシュ46は、第2接触部46aを有している。第2接触部46aは、スプラインハブ4の外歯部27に接触する。詳細には、第2接触部46aは、スプラインハブ4の外歯部27の基端部に接触する。第3ブッシュ46がスプラインハブ4に対して回転した場合に、第2接触部46aは、外歯部27の基端部に接触した状態で外歯部27の基端部に対して摺動する。これにより、第2ヒステリシストルクが発生する。
【0128】
第2付勢部材47は、第3ブッシュ46及びリティーニングプレート14の軸方向間に配置される。第2付勢部材47は、第3ブッシュ46をスプラインハブ4の外歯部27に向けて付勢する。第2付勢部材47は、例えば、コーンスプリングである。
【0129】
−第3ヒステリシストルク発生機構−
第3ヒステリシストルク発生機構63は、例えば、アイドリング時に作動するヒステリシストルク発生機構である。
【0130】
図4A及び図4Bに示すように、第3ヒステリシストルク発生機構63は、高剛性スプリングユニット12及びスプラインハブ4の径方向間に配置されている。第3ヒステリシストルク発生機構63は、高剛性スプリングユニット12の内周側において、入力側部材10(クラッチプレート13)及びフランジ部11の軸方向間に、配置される。
【0131】
第3ヒステリシストルク発生機構63は、低剛性スプリングユニット25の第4スプリング25bによって周方向に保持される。
【0132】
第3ヒステリシストルク発生機構63は、フランジ部11に対して回転可能に構成されている。また、第3ヒステリシストルク発生機構63は、フランジ部11に対して摺動可能に構成されている。さらに、第3ヒステリシストルク発生機構63は、第2ブッシュ43に対して摺動可能に構成されている。
【0133】
図4A及び図4Bに示すように、第3ヒステリシストルク発生機構63は、ウェーブスプリング50と、複数(例えば4個)の爪部51と、第3摩擦部材52と、第4摩擦部材53とを、有している。
【0134】
ウェーブスプリング50は、実質的に円環状に形成されている。ウェーブスプリング50は、周方向に凸部及び凹部が交互に連続的に形成されたスプリングである。ウェーブスプリング50は、フランジ部11及び第2ブッシュ43の軸方向間に配置される。ウェーブスプリング50は、軸方向においてフランジ部11と間隔を隔てて配置される。ウェーブスプリング50は、軸方向において第2ブッシュ43と間隔を隔てて配置される。
【0135】
ウェーブスプリング50は、第3摩擦部材52及び第4摩擦部材53の軸方向間に配置される。ウェーブスプリング50は、第2ブッシュ43の外筒部43bによって、径方向に位置決めされる。詳細には、図5に示すように、ウェーブスプリング50は、第3摩擦部材52及び第4摩擦部材53によって軸方向に圧縮されることによって、形成される。これにより、第3摩擦部材52はウェーブスプリング50によってフランジ部11に向けて付勢され、第4摩擦部材53はウェーブスプリング50によって第2ブッシュ43に向けて付勢される。
【0136】
図4A及び図4Bと、図6A図6Dとに、示すように、複数の爪部51それぞれは、低剛性スプリングユニット25の第4スプリング25bによって周方向に保持される。詳細には、各爪部51は、第4スプリング25bの端部に当接することによって、第4スプリング25bによって周方向に保持される。
【0137】
各爪部51は、ウェーブスプリング50の内周側に設けられている。詳細には、複数の爪部51それぞれは、周方向に間隔を隔ててウェーブスプリング50の内周部に一体に形成されている。
【0138】
各爪部51は、ウェーブスプリング50の内周部から径方向内側に延びる第1部分51aと、第1部分51aから軸方向に延びる第2部分51bとを、有している。第1部分51aは、第2ブッシュ43及びフランジ部11の軸方向間に配置される。
【0139】
第2部分51bは、第1部分51aの先端部からリティーニングプレート14に向けて延びている。第2部分51bは、フランジ部11の内周側に配置される。詳細には、第2部分51bは、フランジ部11の第2内歯18bの内周側に配置される。また、第2部分51bは、第4スプリング25bの端部に当接可能である。第2部分51bが第4スプリング25bの端部に当接することによって、各爪部51が第4スプリング25bによって周方向に保持される。
【0140】
第3摩擦部材52は、実質的に環状に形成されている。第3摩擦部材52は、フランジ部11及びウェーブスプリング50の軸方向間に、配置される。第3摩擦部材52は、ウェーブスプリング50によって、フランジ部11に向けて付勢されている。
【0141】
第3摩擦部材52は、第3接触部52aと、第1被押圧部52bとを、有している。第3接触部52aは、フランジ部11に接触する部分である。第3接触部52aは、第3摩擦部材52におけるフランジ部11側の側面に、設けられている。第1被押圧部52bは、ウェーブスプリング50によって押圧される面である。第1被押圧部52bは、第3摩擦部材52におけるウェーブスプリング50側の側面に、設けられている。
【0142】
第4摩擦部材53は、実質的に環状に形成されている。第4摩擦部材53は、第2ブッシュ43及びウェーブスプリング50の軸方向間に、配置される。第4摩擦部材53は、ウェーブスプリング50によって、第2ブッシュ43に向けて付勢されている。
【0143】
第4摩擦部材53は、第4接触部53aと、第2被押圧部53bとを、有している。第4接触部53aは、第2ブッシュ43に接触する部分である。第4接触部53aは、第4摩擦部材53における第2ブッシュ43側の側面に、設けられている。第2被押圧部53bは、ウェーブスプリング50によって押圧される面である。第2被押圧部53bは、第4摩擦部材53におけるウェーブスプリング50側の側面に、設けられている。
【0144】
上記の構成を有する第3ヒステリシストルク発生機構63では、第3摩擦部材52の第3接触部52aがフランジ部11(第1被接触部19)に接触し、第4摩擦部材53の第4接触部53aが第2ブッシュ43(第2被接触部43f)に接触する。この状態において、フランジ部11及び第2ブッシュ43が第3ヒステリシストルク発生機構63に対して回転すると、第3摩擦部材52及び第4摩擦部材53は、フランジ部11及び第2ブッシュ43に対して各別に摺動する。これにより、第3ヒステリシストルクが発生する。
【0145】
[クラッチディスク組立体の動作]
ここでは、クラッチディスク組立体1の動作を説明する。クラッチディスク組立体1では、トルクが入力側部材10(クラッチプレート13及びリティーニングプレート14)に入力されると、入力側部材10がスプラインハブ4に対して回転を開始する。
【0146】
すると、トルクは、高剛性スプリングユニット12介して、入力側部材10からフランジ部11へと伝達される。入力側部材10が回転を開始した状態では、高剛性スプリングユニット12は実質的に未作動であるので、フランジ部11は、入力側部材10と一体的に回転する。このため、第1ヒステリシストルク発生機構61は、実質的には未作動である。
【0147】
この状態では、フランジ部11が、低剛性ダンパユニット3の第3スプリング25aを介して、スプラインハブ4に対して相対的に回転する。すると、第2ヒステリシストルク発生機構62が作動する。これにより、第2ヒステリシストルクが発生する。
【0148】
そして、フランジ部11及びスプラインハブ4の相対回転がさらに大きくなると、フランジ部11が、低剛性ダンパユニット3の第3スプリング25a及び第4スプリング25bを介して、スプラインハブ4に対して相対的に回転する。すると、第3ヒステリシストルク発生機構63がさらに作動する。これにより、第3ヒステリシストルクが発生する。この状態では、第2ヒステリシストルク及び第3ヒステリシストルクの両方が発生している。
【0149】
続いて、フランジ部11及びスプラインハブ4の相対回転がさらに大きくなると、フランジ部11の内歯部18、及びスプラインハブ4の外歯部27の当接によって、フランジ部11及びスプラインハブ4は、相対回転不能になる。これにより、フランジ部11及びスプラインハブ4は、一体的に回転する。すると、第2ヒステリシストルク発生機構62及び第3ヒステリシストルク発生機構63は、作動を停止する。
【0150】
上記のように、フランジ部11及びスプラインハブ4が一体的に回転している状態において、高剛性スプリングユニット12が作動を開始すると、入力側部材10が、フランジ部11(スプラインハブ4)に対して相対的に回転する。すると、第1ヒステリシストルク発生機構61が作動する。これにより、第1ヒステリシストルクが発生する。
【0151】
[第2及び第3ヒステリシストルク発生機構の動作]
ここでは、図6A図6Dを参照して、第2ヒステリシストルク発生機構62及び第3ヒステリシストルク発生機構63の動作を説明する。
【0152】
第2ヒステリシストルク発生機構62及び第3ヒステリシストルク発生機構63は、上述したように、第1ヒステリシストルク発生機構61が未作動である状態において、フランジ部11及びスプラインハブ4の相対回転時に作動する。
【0153】
第2ヒステリシストルク発生機構62は、低剛性ダンパユニット3の第3スプリング25aの作動中に、第2ヒステリシストルクを発生する。また、第3ヒステリシストルク発生機構63は、低剛性ダンパユニット3の第3スプリング25a及び第4スプリング25bの作動中に、第3ヒステリシストルクを発生する。
【0154】
例えば、まず、フランジ部11が、スプラインハブ4に対して、図6Aの初期状態から第1回転方向R1に回転すると、第3スプリング25aが、第1内歯18a及び第1外歯27aの第1係合部28aによって圧縮される。この状態では、第3スプリング25aは作動し、第4スプリング25bは未作動である。これにより、図7の「0〜a1」の捩り角度で、第1剛性K1が形成される。
【0155】
ここでは、第4スプリング25bは、未作動の状態で、フランジ部11及び第3ヒステリシストルク発生機構63とともに、スプラインハブ4に対して回転している。詳細には、第4スプリング25bは、各対の爪部51と各対の第2内歯18bとの間に配置された状態で、スプラインハブ4に対して回転している。
【0156】
この状態では、第2ブッシュ43の第1接触部43e、及び第3ブッシュ46の第2接触部46aが、スプラインハブ4の外歯部27の基端部に対して摺動する(図4A及び図4Bを参照)。これにより、図7の「0〜a1」の捩り角度で、第2ヒステリシストルクH2が発生する。
【0157】
次に、図6Bに示すように、フランジ部11がスプラインハブ4に対して第1回転方向R1にさらに回転すると、第3スプリング25aが作動した状態で、第4スプリング25bが同時に作動する。
【0158】
この場合、一対の爪部51の一方が、第2外歯27b及び第4スプリング25bの端部によって保持(挟持)された状態で、第4スプリング25bが、一対の第2内歯18bの一方(第4スプリング25bの端部及び第3外歯27cの間の第2内歯18b)と、第2外歯27bの第3係合部28cとによって、圧縮される。これにより、図7の「a1〜a2」の捩り角度で、第2剛性K2が形成される。
【0159】
この状態では、上述したように爪部51は第2外歯27b及び第4スプリング25bの端部によって保持(挟持)されているので、ウェーブスプリング50は、スプラインハブ4と一体回転する。これにより、フランジ部11、及びフランジ部11と一体回転する第2ブッシュ43は、スプラインハブ4及びウェーブスプリング50に対して、相対回転する。
【0160】
すると、フランジ部11(第1被接触部19)が第3摩擦部材52の第3接触部52aに対して摺動し、第2ブッシュ43(第2被接触部43f)が第4摩擦部材53の第4接触部53aに対して摺動する(図4A及び図4Bを参照)。これにより、第3ヒステリシストルクH3が発生する。この状態(図7の「a1〜a2」の捩り角度)では、第2ヒステリシストルクH2及び第3ヒステリシストルクH3の両方が発生している。
【0161】
そして、図6Cに示すように、一対の第2内歯18bの他方(第4スプリング25bの端部及び第2外歯27bの間の第2内歯18b)が、第2外歯27bに当接すると、スプラインハブ4に対するフランジ部11の回転が停止する。これにより、スプラインハブ4に対するフランジ部11の第1回転方向R1への回転が、停止する。
【0162】
この状態において、フランジ部11がスプラインハブ4に対して第2回転方向R2に回転すると、図6C図6B図6Aの順に、上述した動作とは反対の動作が行われ、初期状態に復帰する。
【0163】
一方で、フランジ部11が、スプラインハブ4に対して、図6Aの初期状態から第2回転方向R2に回転すると、第3スプリング25aが、第1内歯18a及び第2外歯27bの第2係合部28bによって圧縮される。この状態では、第3スプリング25aは作動し、第4スプリング25bは未作動である。これにより、図7の「0〜b1」の捩り角度で、第1剛性K1が形成される。
【0164】
ここでは、第4スプリング25bは、未作動の状態で、フランジ部11及び第3ヒステリシストルク発生機構63とともに、スプラインハブ4に対して回転している。詳細には、第4スプリング25bは、各対の爪部51と各対の第2内歯18bとの間に配置された状態で、スプラインハブ4に対して回転している。
【0165】
この状態では、第2ブッシュ43の第1接触部43e、及び第3ブッシュ46の第2接触部46aが、スプラインハブ4の外歯部27の基端部に対して摺動する(図4A及び図4Bを参照)。これにより、図7の「0〜b1」の捩り角度で、第2ヒステリシストルクH2が発生する。
【0166】
次に、フランジ部11がスプラインハブ4に対して第2回転方向R2にさらに回転すると、図6Dに示すように、第3スプリング25aが作動した状態で、第4スプリング25bが作動する。
【0167】
この場合、一対の爪部51の他方が、第3外歯27c及び第4スプリング25bの端部によって保持(挟持)された状態で、第4スプリング25bが、一対の第2内歯18bの他方と、第3外歯27cの第4係合部28dとによって、圧縮される。これにより、図7の「b1〜b2」の捩り角度で、第2剛性K2が形成される。
【0168】
この状態では、爪部51は、第3外歯27c及び第4スプリング25bの端部によって保持(挟持)されているので、ウェーブスプリング50は、スプラインハブ4と一体回転する。これにより、フランジ部11、及びフランジ部11と一体回転する第2ブッシュは、スプラインハブ4及びウェーブスプリング50に対して、相対回転する。
【0169】
すると、フランジ部11(第1被接触部19)が第3摩擦部材52の第3接触部52aに対して摺動し、第2ブッシュ43(第2被接触部43f)が第4摩擦部材53の第4接触部53aに対して摺動する(図4A及び図4Bを参照)。これにより、第3ヒステリシストルクH3が発生する。この状態(図7の「b1〜b2」の捩り角度)では、第2ヒステリシストルクH2及び第3ヒステリシストルクH3の両方が発生している。
【0170】
そして、一対の第2内歯18bの一方(第4スプリング25bの端部及び第3外歯27cの間の第2内歯18b)が、第3外歯27cに当接すると、スプラインハブ4に対するフランジ部11の回転が停止する。これにより、スプラインハブ4に対するフランジ部11の第2回転方向R2への回転が、停止する。
【0171】
この状態において、フランジ部11がスプラインハブ4に対して第1回転方向R1に回転すると、図6D図6Aの順に、上述した動作とは反対の動作が行われ、初期状態に復帰する。
【0172】
上記のように、クラッチディスク組立体1を構成することによって、ダンパディスク組立体を軸方向に小型化でき、且つヒステリシストルクを多段階で発生させることができる。
【0173】
[変形例]
変形例では、図6Cの状態から、フランジ部11がスプラインハブ4に対して第2回転方向R2に回転する場合の動作が、前記実施形態とは異なる。
【0174】
フランジ部11がスプラインハブ4に対して第1回転方向R1に回転する場合の動作(図6A図6C)は、前記実施形態の動作と同じであるので、この説明は省略する。
【0175】
変形例1では、図6Cの状態において、フランジ部11がスプラインハブ4に対して第2回転方向R2に回転する場合、図9において捩り角度が「a2→a1'」へと変化する。
【0176】
この場合、図8Aに示すように、一対の第2内歯18bの一方が、第4スプリング25bの端部に当接する前に、フランジ部11が、第3ヒステリシストルク発生機構63とともに、スプラインハブ4に対して第2回転方向R2に回転し始める。
【0177】
図9において、フランジ部11及び第3ヒステリシストルク発生機構63の両方が、スプラインハブ4に対して第2回転方向R2に回転し始める捩り角度は、「a1'」である。捩り角度が「a2→a1」の間では、前記実施形態と同様に、第2ヒステリシストルクH2及び第3ヒステリシストルクH3が発生している。
【0178】
ここで、"一対の第2内歯18bの一方"は、第4スプリング25bの端部と第2外歯27bとの周方向間の第2内歯18bである。"一対の第2内歯18bの一方が、第4スプリング25bの端部に当接する前"とは、"一対の第2内歯18bの一方が、第4スプリング25bの端部に当接していない状態"である。
【0179】
上記の動作は、一対の第2内歯18bの一方が第4スプリング25bの端部に当接する前に、第4スプリング25bの伸張力と、第3ヒステリシストルク発生機構63による摺動抵抗とが、釣り合うことによって、発生する。ここで、第4スプリング25bの伸張力は、第4スプリング25bが、ウェーブスプリング50に設けられた爪部51を、押圧する押圧力に、対応している。
【0180】
続いて、図8Aから図8Bへと、フランジ部11及び第3ヒステリシストルク発生機構63が、スプラインハブ4に対して第2回転方向R2にさらに回転する場合、図9では捩り角度が「a2→b0」へと変化する。
【0181】
この場合、一対の爪部51の他方が、第3外歯27c及び第4スプリング25bの端部によって保持(挟持)される。この状態で、フランジ部11がスプラインハブ4に対して第2回転方向R2にさらに回転すると、一対の第2内歯18bの一方と第4スプリング25bの端部との隙間Kの範囲内(図9の「b0〜b1」の捩り角度)で、第2ヒステリシストルクH2及び第3ヒステリシストルクH3が発生する。
【0182】
この状態(図9の「b0〜b1」の捩り角度)では、第3スプリング25aは作動し、第4スプリング25bは未作動であるので、第1剛性K1が形成されている。そして、図9の捩り角度が「b1」に到達すると、一対の第2内歯18bの一方が、第4スプリング25bの端部に当接する。すると、第4スプリング25bが、一対の第2内歯18bの一方と第3外歯27cの第4係合部28dとの間で圧縮される。これにより、図9の「b1〜b2」の捩り角度で、第2剛性K2が形成される。
【0183】
この状態では、爪部51すなわちウェーブスプリング50は、スプラインハブ4と一体回転する。これにより、フランジ部11、及びフランジ部11と一体回転する第2ブッシュは、スプラインハブ4及びウェーブスプリング50に対して、相対回転する。
【0184】
すると、フランジ部11(第1被接触部19)が第3摩擦部材52の第3接触部52aに対して摺動し、第2ブッシュ43(第2被接触部43f)が第4摩擦部材53の第4接触部53aに対して摺動する(図4A及び図4Bを参照)。これにより、第3ヒステリシストルクH3が発生する。この状態(図9の「b1〜b2」の捩り角度)では、第2ヒステリシストルクH2及び第3ヒステリシストルクH3の両方が発生している。
【0185】
そして、一対の第2内歯18bの他方が、第3外歯27cに当接すると、スプラインハブ4に対するフランジ部11の回転が停止する。これにより、スプラインハブ4に対するフランジ部11の第2回転方向R2への回転が、停止する。
【0186】
この状態(図9の「b2→b1」の捩り角度)において、フランジ部11がスプラインハブ4に対して第1回転方向R1に回転すると、一対の第2内歯18bの他方が、第3外歯27cから離反して、第4スプリング25bの端部に当接する。このときには、第2ヒステリシストルクH2及び第3ヒステリシストルクH3の両方が発生している。
【0187】
そして、フランジ部11がスプラインハブ4に対して第1回転方向R1にさらに回転すると、第4スプリング25bが一対の第2内歯18b及び一対の爪部51に保持された状態(未作動の状態)で、フランジ部11及び第3ヒステリシストルク発生機構63とともに、スプラインハブ4に対して第1回転方向R1に回転する。これにより、図6Aの初期状態に復帰する。この状態(図9の「b1→0」の捩り角度)では、第2ヒステリシストルクH2だけが発生している。
【0188】
<他の実施形態>
本発明の具体的な構成は、前述の実施形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更および修正が可能である。
【0189】
(a)前記実施形態では、高剛性スプリングユニット12が、第1スプリングユニット23及び第2スプリングユニット24の2種類のスプリングユニットを有する場合の例を示したが、高剛性スプリングユニット12は、第1スプリングユニット23及び第2スプリングユニット24のいずれか一方のスプリングユニットだけから、構成されていてもよい。
【0190】
(b)前記実施形態では、第1スプリングユニット23及び第2スプリングユニット24それぞれが、大小のスプリング23a,23b,24a,24bから構成される場合の例を示した。これに代えて、第1スプリングユニット23及び第2スプリングユニット24それぞれを、1つのスプリング例えば大スプリング23a,24aだけから構成してもよい。
【0191】
(c)前記実施形態では、スプリングシートが、第3スプリング25a及び第4スプリング25bの両端部に配置される場合の例を示したが、スプリングシートを用いなくてもよい。
【0192】
(d)前記実施形態では、高剛性ダンパユニット2(クラッチディスク組立体1)が未作動である場合の図2Bを用いて、各構成の配置関係を説明したが、高剛性ダンパユニット2(クラッチディスク組立体1)の作動時においても、各構成の配置関係は成立する。
【符号の説明】
【0193】
1 クラッチディスク組立体
10 入力側部材
11 フランジ部
12 高剛性スプリングユニット
16 ピン部材
23 第1スプリングユニット
23a 第1大スプリング
24 第2スプリングユニット
24a 第2大スプリン
L1〜L4 線分
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8A
図8B
図9