特許第6756687号(P6756687)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6756687
(24)【登録日】2020年8月31日
(45)【発行日】2020年9月16日
(54)【発明の名称】シフトレバー装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 20/02 20060101AFI20200907BHJP
【FI】
   B60K20/02 A
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-180901(P2017-180901)
(22)【出願日】2017年9月21日
(65)【公開番号】特開2019-55672(P2019-55672A)
(43)【公開日】2019年4月11日
【審査請求日】2019年11月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000192914
【氏名又は名称】株式会社神菱
(74)【代理人】
【識別番号】110002295
【氏名又は名称】特許業務法人森脇特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】成元 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】横山 貴久
【審査官】 長清 吉範
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−222234(JP,A)
【文献】 特開平9−188157(JP,A)
【文献】 実開平5−93950(JP,U)
【文献】 特開2008−155908(JP,A)
【文献】 特開2007−283819(JP,A)
【文献】 特開平6−50414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 20/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の縦方向に沿って分割可能な一の側部材及び他の側部材を備える筐体であって、シフトレバーを前記筐体の横方向にのびる軸を中心に揺動可能に軸支して前記一の側部材及び前記他の側部材により挟むように収容する筐体を備えるシフトレバー装置において、
前記一の側部材に設けられた一の嵌合部であって、前記筐体の高さ方向にのびる一の嵌合部と、
前記他の側部材に設けられた他の嵌合部であって、前記一の嵌合部と接離自在に嵌合することができる他の嵌合部とを備え、
前記一の嵌合部の一の当接面と前記他の嵌合部の他の当接面とが互いに当接し、前記一の当接面及び前記他の当接面がそれぞれ縦方向規制面を備えて前記一の側部材と前記他の側部材との前記縦方向の相対移動を規制し、前記一の当接面及び前記他の当接面がそれぞれ横方向規制面を備えて前記一の側部材と前記他の側部材との前記横方向の相対移動を規制する、シフトレバー装置。
【請求項2】
前記他の嵌合部は、前記高さ方向の軸線を有する柱状部を備え、前記一の嵌合部は、前記柱状部を挿通することができる挿通孔を備える、請求項1に記載のシフトレバー装置。
【請求項3】
前記柱状部は、第1の四角柱部及び第2の四角柱部を備え、前記第1の四角柱部の前記軸線に直交する長方形横断面の前記縦方向に沿う辺が前記横方向に沿う辺より長く、前記第2の四角柱部の前記軸線に直交する長方形横断面の前記縦方向に沿う辺が前記横方向に沿う辺より短い、請求項2に記載のシフトレバー装置。
【請求項4】
前記一の側部材は一の係合部を有し、前記他の側部材は他の係合部を有しており、前記一の係合部及び前記他の係合部が係合することにより、前記一の側部材と前記他の側部材とが前記高さ方向に互いに離間するような相対移動を規制する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシフトレバー装置。
【請求項5】
前記一の側部材が高さ方向支持面を備え、前記他の側部材が前記高さ方向支持面により高さ方向に支持されることにより、前記一の側部材と前記他の側部材とが前記高さ方向に互いに近接するような相対移動を規制する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のシフトレバー装置。
【請求項6】
前記一の側部材が前記シフトレバーの両側に設けられた軸部を前記軸支するための軸支孔を備えており、前記軸支のために前記一の側部材とは別体の部材を要しない、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のシフトレバー装置。
【請求項7】
前記一の側部材及び前記他の側部材のそれぞれにシフトパターンを有するディテント窓が設けられ、前記シフトレバーの揺動の際に前記シフトパターンに係合可能なディテントピンが前記シフトレバーの両側に設けられ、前記ディテント窓の縁部と前記ディテントピンとの間に前記シフトレバーの軸部の変形を許容する所定のクリアランスが設けられている、請求項6に記載のシフトレバー装置。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のシフトレバー装置の組立て方法において、
前記シフトレバーの両軸部を前記一の側部材の軸支孔に挿通することにより、前記シフトレバーを前記一の側部材に取り付ける取付け段階と、
前記取付け段階の後で、前記一の嵌合部と前記他の嵌合部とを嵌合して前記一の側部材と前記他の側部材とを組み立てることにより前記筐体を得る段階とを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、シフトレバー装置に関する。より詳細には、本願発明は、分割可能な両部材を備える筐体を備え、両部材間の縦方向及び横方向の相対移動を規制する規制面を備えるシフトレバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等のシフトレバー装置は、レンジの切替えやギアチェンジを行うためにシフトレバーを操作するとき等に外力や荷重が作用する。したがって、シフトレバー装置、特にその筐体は、所定の剛性が要求される。剛性を考慮して一体の筐体を採用した場合、移動操作可能なシフトレバーを挿入取付けするための開口部が大きくなり、完成後のシフトレバー装置の筐体開口部の隙間から筐体内の電装品がむき出しにならざるを得ない。この場合、筐体開口部の隙間から飲料水等の液体が浸入し電装品が短絡して故障するおそれがある。
【0003】
そのため、横方向に分割された2つの側部材からなる筐体を備えるシフトレバー装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、筐体の剛性を確保するために、横方向に分割された2つの側部材をボルトにより固定する必要がある。この場合、筐体を構成する材料は、ボルトの締付け力に耐えるだけの材料強度や剛性が要求されるため、金属(例えば、アルミニウム)である必要がある。したがって、作業効率が悪いという問題、部品点数が多くなるとともに側部材に金属材料を使用するため製造コストが上昇する等の問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−142976号公報
【特許文献2】特開2016−222234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記問題を解決するために、上述した固定ボルトの代わりに、シフトレバー装置の筐体を構成する横方向に分割された2つの側部材のそれぞれに互いに嵌合可能なように設けられた一の嵌合部及び他の嵌合部であって、横方向にのびる筒状体からなる一の嵌合部及び他の嵌合部、並びに、2つの側部材が横方向に分離することによるシフトレバー装置の分解を阻止するために互いに係合可能なように各側部材のそれぞれに設けられた係止爪及び係合孔を備えるシフトレバー装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
しかしながら、一の嵌合部及び他の嵌合部の嵌合方向である横方向と、係止爪及び係合孔が2つの側部材の分離・分解を阻止する方向である横方向とが同一方向であるため、シフトレバー装置の2つの側部材間に揺動可能に挟持されるシフトレバーに横方向の力が作用したとき、係止爪及び係合孔の係合が解除されてシフトレバー装置(2つの側部材)が分解するおそれがある。分解阻止のために係止爪及び係合孔の係合力を上げた場合、2つの側部材の組付け効率が悪化する問題、係止爪が破壊・破損しやすくなる等の問題が生じる。また、分解阻止のために2つの側部材間のクリアランスを大きくすると、シフトレバーの横方向のガタつきが大きくなる等の問題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本願発明の実施形態は、例えば、次の通りである。
[形態1]
筐体の縦方向に沿って分割可能な一の側部材及び他の側部材を備える筐体であって、シフトレバーを前記筐体の横方向にのびる軸を中心に揺動可能に軸支して前記一の側部材及び前記他の側部材により挟むように収容する筐体を備えるシフトレバー装置において、
前記一の側部材に設けられた一の嵌合部であって、前記筐体の高さ方向にのびる一の嵌合部と、
前記他の側部材に設けられた他の嵌合部であって、前記一の嵌合部と接離自在に嵌合することができる他の嵌合部とを備え、
前記一の嵌合部の一の当接面と前記他の嵌合部の他の当接面とが互いに当接し、前記一の当接面及び前記他の当接面がそれぞれ縦方向規制面を備えて前記一の側部材と前記他の側部材との前記縦方向の相対移動を規制し、前記一の当接面及び前記他の当接面がそれぞれ横方向規制面を備えて前記一の側部材と前記他の側部材との前記横方向の相対移動を規制する、シフトレバー装置。
【0008】
[形態2]
前記他の嵌合部は、前記高さ方向の軸線を有する柱状部を備え、前記一の嵌合部は、前記柱状部を挿通することができる挿通孔を備える、形態1に記載のシフトレバー装置。
【0009】
[形態3]
前記柱状部は、第1の四角柱部及び第2の四角柱部を備え、前記第1の四角柱部の前記軸線に直交する長方形横断面の前記縦方向に沿う辺が前記横方向に沿う辺より長く、前記第2の四角柱部の前記軸線に直交する長方形横断面の前記縦方向に沿う辺が前記横方向に沿う辺より短い、形態2に記載のシフトレバー装置。
【0010】
[形態4]
前記一の側部材は一の係合部を有し、前記他の側部材は他の係合部を有しており、前記一の係合部及び前記他の係合部が係合することにより、前記一の側部材と前記他の側部材とが前記高さ方向に互いに離間するような相対移動を規制する、形態1乃至3のいずれか1項に記載のシフトレバー装置。
【0011】
[形態5]
前記一の側部材が高さ方向支持面を備え、前記他の側部材が前記高さ方向支持面により高さ方向に支持されることにより、前記一の側部材と前記他の側部材とが前記高さ方向に互いに近接するような相対移動を規制する、形態1乃至4のいずれか1項に記載のシフトレバー装置。
【0012】
[形態6]
前記一の側部材が前記シフトレバーの両側に設けられた軸部を前記軸支するための軸支孔を備えており、前記軸支のために前記一の側部材とは別体の部材を要しない、形態1乃至5のいずれか1項に記載のシフトレバー装置。
【0013】
[形態7]
前記一の側部材及び前記他の側部材のそれぞれにシフトパターンを有するディテント窓が設けられ、前記シフトレバーの揺動の際に前記シフトパターンに係合可能なディテントピンが前記シフトレバーの両側に設けられ、前記ディテント窓の縁部と前記ディテントピンとの間に前記シフトレバーの軸部の変形を許容する所定のクリアランスが設けられている、形態6に記載のシフトレバー装置。
【0014】
[形態8]
形態6又は7に記載のシフトレバー装置の組立て方法において、
前記シフトレバーの両軸部を前記一の側部材の軸支孔に挿通することにより、前記シフトレバーを前記一の側部材に取り付ける取付け段階と、
前記取付け段階の後で、前記一の嵌合部と前記他の嵌合部とを嵌合して前記一の側部材と前記他の側部材とを組み立てることにより前記筐体を得る段階とを含む、方法。
【発明の効果】
【0015】
本願発明が奏することができる有利な効果は、例えば、次の通りである。すなわち、本願発明に係るシフトレバー装置は、その筐体の2つの側部材の嵌合の際のクリアランスを広げることなく(側部材間の横方向のガタつき増大を抑止しつつ)、同2つの側部材が横方向に分離しないように横方向に十分な強度を有する。上記点を達成しつつ更に、作業者が車両本体の上方から順次、筐体の一の側部材、シフトレバー、筐体の他の側部材を取り付けることによりシフトレバー装置を車両に取り付けることができる点で、組付作業性を改善することができる。また、シフトレバー軸支のための2つの側部材以外の別体部材を不要にし、部品点数/コストの削減、製造工程の簡略化/製造コストの削減等を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本願発明の一の実施例に係るシフトレバー装置の斜視図である。
図2】上記シフトレバー装置の筐体の分解斜視図である。
図3】上記シフトレバー装置の筐体の斜視図である。
図4】上記シフトレバー装置の一の側部材に対するシフトレバーの取付け方法を説明するための分解斜視図である。
図5】上記一の側部材に対するシフトレバーの取付け方法を説明するための斜視図である。
図6】上記シフトレバー装置の組立方法を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0017】
[基本構成]
図1中、車両(図示せず)等のためのシフトレバー装置10は、シフトレバー20及び筐体30を備える。操作者は、シフトレバー20を操作することにより、オートマティックトランスミッション(図示せず)の場合は、同ミッションのレンジ(例えば、P(パーキング)レンジ、R(リバース)レンジ、N(ニュートラル)レンジ、D(ドライブ)レンジ等)を切り替えることができる。なお、車両がマニュアルトランスミッション(図示せず)の場合は、シフトレバー20の操作により、その歯車の組み合わせを切り替えること(以下、適宜「ギアチェンジ」と称する。)ができる。以下、主にオートマティックトランスミッションの場合を例にシフトレバー装置10の基本構成を説明するが、本願発明がマニュアルトランスミッションのシフトレバー装置に適用できることはいうまでもない。
【0018】
2つのディテントピン20a,20aは、シフトレバー20の所定箇所の両側に配された各長溝20bから突出するように設けられている。ディテントピン20aは、長溝20b内を高さ方向の上下に滑動自在である。一の側部材40及び他の側部材50のそれぞれは、ディテントピン20a,20aに対応する位置においてディテント窓40a,50aを有する。ディテント窓40a,50aの上方縁部には、ミッションの各レンジに対応した凹凸形状が設けられている。ディテントピン20a,20aがディテント窓40a,50aの上記凹凸形状に係合することにより、シフトレバー20の揺動が規制されてミッションのレンジが固定される。他方、ディテントピン20a,20aとディテント窓40a,50aの上記凹凸形状との係合が解除されるとシフトレバー20の揺動規制が解除され、操作者はミッションのレンジを切り替えることができる。
【0019】
図1に加えて図2を適宜参照すると、筐体30は、その縦方向(図2中、X軸方向)に沿って分割可能な一の側部材40及び他の側部材50を備え、シフトレバー20を筐体30の横方向(図2中、Y軸方向)にのびる軸を中心に揺動可能に軸支して一の側部材40及び他の側部材50により挟むように収容する。なお、シフトレバーはセレクトレバーと呼称されることもあるが、本願においてはシフトレバーと呼称する。
【0020】
図2中、一の側部材40に設けられた一の嵌合部41は、筐体30の高さ方向(同図中、Z軸方向)の軸線に概ね沿ってのびている第1の挿通孔42及び第2の挿通孔43を備える。第1の挿通孔42は、一の側部材40の縦方向の前端部40bの近傍に配され、第2の挿通孔43は、一の側部材40の縦方向の後端部40cの近傍に配されている。他の側部材50に設けられた他の嵌合部51は、筐体30の高さ方向の軸線に概ね沿ってのびている第1の四角柱部52及び第2の四角柱部53を備える。第1の四角柱部52は、他の側部材50の縦方向の前端部50aの近傍に配され、第2の四角柱部53は、他の側部材50の縦方向の後端部50bの近傍に配されている。第1の四角柱部52及び第2の四角柱部53をそれぞれ第1の挿通孔42及び第2の挿通孔43内に挿通することにより、一の嵌合部41と他の嵌合部51とを接離自在に嵌合することができる。
【0021】
第1の四角柱部52の外面は、縦方向前端側の第1の縦方向規制外面52a、縦方向後端側の第2の縦方向規制外面52b、横方向外方側の第1の横方向規制外面52c、及び、横方向内方側の第2の横方向規制外面52dを備える。第2の四角柱部53の外面は、第1の四角柱部52と同様に、第3の縦方向規制外面53a、第4の縦方向規制外面53b、第3の横方向規制外面53c、及び、第4の横方向規制外面53dを備える。
【0022】
第1の挿通孔42の内面は、第1の縦方向規制内面42a、第2の縦方向規制内面42b、第1の横方向規制内面42c、及び、第2の横方向規制内面42dを備える。第2の挿通孔43の内面は、第3の縦方向規制内面43a、第4の縦方向規制内面43b、第3の横方向規制内面43c、及び、第4の横方向規制内面43dを備える。
【0023】
第1の縦方向規制内面42a、第2の縦方向規制内面42b、第3の縦方向規制内面43a、及び、第4の縦方向規制内面43bがそれぞれ、第1の縦方向規制外面52a、第2の縦方向規制外面52b、第3の縦方向規制外面53a、及び、第4の縦方向規制外面53bと当接することにより、一の側部材40と他の側部材50との縦方向の相対移動を規制する。
【0024】
第1の横方向規制内面42c、第2の横方向規制内面42d、第3の横方向規制内面43c、及び、第4の横方向規制内面43dがそれぞれ、第1の横方向規制外面52c、第2の横方向規制外面52d、第3の横方向規制外面53c、及び、第4の横方向規制外面53dと当接することにより、一の側部材40と他の側部材50との横方向の相対移動を規制する。
【0025】
ここで、第1の四角柱部52は、その軸線に直交する長方形横断面の縦方向に沿う辺52eが横方向に沿う辺52fより長くてもよい。また、第2の四角柱部53は、その軸線に直交する長方形横断面の縦方向に沿う辺52eが横方向に沿う辺52fより短くてもよい。このような形態を採用した場合、第1の四角柱部52は特に横方向の相対移動に対し強い規制力を有し第2の四角柱部53は特に縦方向の相対移動に対し強い規制力を有するため、これら2つの四角柱部が協同して横方向及び縦方向の相対移動に対し強い規制力を発揮することができる。
【0026】
勿論、一の嵌合部41は上記とは異なる形態(例えば、四角柱部以外の多角形柱部、円柱部、楕円形柱部、球体等)であってもよく、その個数が2つに限定されないことはいうまでもない。また、他の嵌合部51は一の嵌合部41と嵌合可能な他の形態であってもよく、その個数が2つに限定されないことはいうまでもない。
【0027】
図3中、一の側部材40の縦方向の前側近傍であって高さ方向の上方縁部近傍に一の係合部としての係止爪44が設けられている。係止爪44は、一の側部材40の側壁の表面45から上方から下方にかけて逆テーパーに突出するように構成された斜面44aと、その下方縁部44bとを有している。他の側部材50の縦方向の前側近傍の係止爪44に対応する位置であって高さ方向の下方縁部近傍に他の係合部としての係止窓54が設けられている。係止窓54は、他の側部材50の側壁の表面55の下方縁部から下方へのびる板状部54aの略中央付近に設けられた貫通孔を備える。係止爪44の下方縁部44bと係止窓54の下方縁部54bとが係合することにより、係止爪44は係止窓54に対して解放自在に係止することができる。
【0028】
一の側部材40の縦方向の後側近傍であって高さ方向の上方縁部近傍に一の係合部としての係止爪46が設けられている。係止爪46は、係止爪44と大略同様の構成を備えるため、係止爪44に関する上記説明を援用してその説明を省略する。他の側部材50の縦方向の後側近傍の係止爪46に対応する位置であって高さ方向の下方縁部近傍に他の係合部としての係止窓56が設けられている。係止窓56は、係止窓54と大略同様の構成を備えるため、係止窓54に関する上記説明を援用してその説明を省略する。係止爪46は、係止爪44及び係止窓54の関係と同様に、係止窓56に対して解放自在に係止することができる。一の係合部44,46及び他の係合部54,56が係合することにより、一の側部材40と他の側部材50とが高さ方向に互いに離間するような相対移動を規制し一の側部材40及び他の側部材50の分解を阻止することができる。
【0029】
一の側部材40の側壁の上面は、一の係合部44,46のそれぞれの近傍に高さ方向支持面47a,47bを備える。高さ方向支持面47a,47bが、それぞれ対応する位置における他の側部材50の側壁の下面57a,57bを高さ方向に支持することにより、一の側部材40と他の側部材50とが高さ方向に互いに近接するような相対移動を規制し一の側部材40及び他の側部材50の分解を阻止することができる。なお、高さ方向支持面47a,47bは、一の係合部44,46のそれぞれの近傍ではなく他の位置に配されてもよい。
【0030】
図4中、シフトレバー20の本体21は、揺動軸が設けられる基端部22及び操作者が把持可能な末端部23を有する。末端部23に設けられたボタン24は連結機構(図示せず)により前述したディテントピン20aと動作可能に連結されている。ディテントピン20aは長手方向上方に付勢されているが、ボタン24を押し操作すると、ディテントピン20aが付勢力に抗して長手方向下方へ移動しディテントピン20aとディテント窓40a,50aとの係合が解除され、操作者は、シフトレバー20を揺動してレンジの切り替え(又は、ギアチェンジ)をすることができる。他方、ボタン24の押し操作を解除すると、付勢力によりディテントピン20aが長手方向上方へ移動してディテントピン20aとディテント窓40a,50aとが係合し、シフトレバー20の揺動が規制される。
【0031】
2つの軸部25,25は、基端部22の横方向両側から横方向にのびる軸線に沿って突出するように設けられている。軸部25は、基本的に円柱状に形成され、その両側を軸線方向の基端から末端に至る平面状の2つの切欠き面25aにより切り欠かれている。2つの切欠き面25aは互いに平行である。
【0032】
シフトレバー20を挟持できるように離間した2つの軸支孔部48,48は、一の側部材40の横方向両側に一の側部材40と一体的に設けられている。各軸支孔部48を構成する2つの対向する板状の孔形成部48a,48aは、それらの間に軸支孔48bを形成する。2つの孔形成部48a,48aのそれぞれの末端部48c,48cは、軸支孔48bの少なくとも上方の内面が軸部25の円柱状部分の曲率に概ね対応するように折曲加工されている。2つの末端部48c,48cは、軸部25の2つの切欠き面25a間の距離と同一或いはある程度大きい距離だけ離隔した空間48dが設けられている。
【0033】
上記構成により、図4に示す如く、シフトレバー20の角度を調整し各軸部25の2つの切欠き面25aを各軸支孔部48の2つの末端部48c,48c間の空間48dを通過させて、各軸部25を各軸支孔部48内に同軸的に挿入配置することができる。その挿入後、図5に示す如く、シフトレバー20を揺動することにより、軸部25の軸支孔部48からの脱落が防止されるとともに、シフトレバー20を一の側部材40に対して揺動可能に取り付けることができる。
【0034】
本構成の利点の一つは、軸支孔部48,48が一の側部材40と一体的に設けられていることにより、シフトレバー20の軸支のための一の側部材40や他の側部材50以外の別体の部材を不要にし、部品点数/コストの削減、製造工程の簡略化/製造コストの削減等できることである。
【0035】
再び図1を参照すれば、ディテント窓50aの下方縁部とディテントピン20aとの間に距離Lを有するクリアランスが設けられていてもよい。このクリアランスは、シフトレバー20の軸部25の変形を許容する。すなわち、シフトレバー20が他の側部材50に対して高さ方向上方に外力を受け軸部25が変形する場合、ディテントピン20aがディテント窓50aの上方縁部を押し上げて、他の嵌合部51の一の嵌合部41に対する嵌合が解除され筐体30が分解するおそれがあり得る。この場合に、上記クリアランスを設けることにより、筐体30の分解を防止することができる。なお、クリアランスの距離Lは、操作者がシフトレバー20のボタン24を押し操作していないにもかかわらず、ディテントピン20aとディテント窓50aとの係合が解除されてレンジが切り替わるという不測の事態が発生しないように設定される。当然に、上記ディテント窓50aに関する説明は、ディテント窓40aにも適用される。
【0036】
[組立方法等]
まず、一の側部材40に設けられた3つのボルト孔40dに挿通されたボルト(図示せず)を使用して、一の側部材40を車両本体(図示せず)に螺着固定する。なお、ボルト孔40dの個数が3つに限られないことはいうまでもない。続いて、図4に示す如く、シフトレバー20の角度を調整し各軸部25の2つの切欠き面25aを各軸支孔部48の空間48dを通過させて、各軸部25を各軸支孔部48内に同軸的に挿入配置する。
【0037】
上記挿入配置後、図5に示す如く、シフトレバー20を揺動することにより、シフトレバー20を一の側部材40に対して揺動可能に取り付ける。続いて、図6に示す如く、他の側部材50を一の側部材40の方へ高さ方向の上方から下方へ動かし、一の嵌合部41と他の嵌合部51とを嵌合して一の側部材40と他の側部材50とを組み立てることにより、筐体30を得る。この場合、上述したように、一の係合部44,46及び他の係合部54,56が係合することにより、一の側部材40と他の側部材50とが高さ方向に互いに離間するような相対移動を規制してもよい。上記方法は、作業者が車両本体の上方から順次、一の側部材40、シフトレバー20、他の側部材50を取り付けることによりシフトレバー装置10を車両に取り付けることができる点で、効率的作業を可能にする利点をもたらす。
【0038】
[その他]
なお、本願発明に係るシフトレバー装置10は、車両のみならず、トランスミッションを有するその他の装置に適用できることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0039】
10 シフトレバー装置
20 シフトレバー
30 筐体
40 一の側部材
41 一の嵌合部
44,46 一の係合部
50 他の側部材
51 他の嵌合部
54,56 他の係合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6