(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリマー膜と、結合剤と、固体無機リチウムイオン伝導体と、液体電解質とを含む複合セパレーターであって、固体無機リチウムイオン伝導体が、複合セパレーターにおいて液体電解質より高い体積分率および重量分率で存在し、
前記ポリマー膜が、相互に結合した細孔を有し、細孔が、結合剤、固体無機リチウムイオン伝導体および液体電解質を内包している、複合セパレーター。
前記結合剤が、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデンおよびヘキサフルオロプロピレンから成るコポリマー、スチレンおよびブタジエンから成るコポリマー、セルロース、セルロース誘導体、ならびにその混合物から成る群から選択される、請求項1〜7のいずれか一つに記載の複合セパレーター。
【背景技術】
【0002】
以下の記載では、概念「リチウムイオン電池」、「再充電可能なリチウムイオン電池」、および「リチウムイオン二次電池」は同義で使用されている。これらの概念は、さらに概念「リチウム電池」、「リチウムイオン蓄電池」、および「リチウムイオンセル」、ならびにすべてのリチウムまたは合金電池、とりわけリチウム・硫黄、リチウム・空気、または合金系も内包している。したがって概念「リチウムイオン電池」を、従来技術で公知の前述の概念のための集合概念として使用する。この集合概念は、再充電可能な電池(二次電池)も充電不可の電池(一次電池)も意味している。とりわけ、本発明の意味における「電池」は、個々のまたは唯一の「電気化学セル」も含んでいる。
【0003】
リチウムイオン電池の作用方式は、一般化した形態では以下のように示すことができる。すなわち電気エネルギーが、物質変化による化学的プロセスにおいて、リチウムイオン(負極で)および(たいていは)遷移金属酸化物(正極で)において貯蔵される。その際、リチウムイオンはイオン化された形態(Li
+)で、両方の電極の間の、リチウム伝導塩としてたいていはヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)を含有する電解質を通って行ったり来たりすることができる。リチウムイオンとは異なり、カソードに存在している遷移金属イオンは移動しない。
【0004】
このリチウムイオンの流れは、充電および放電の際の外部の電流フローを補償するために必要であり、これにより電極自体は電気的に中性であり続ける。放電の際、負極ではいわばリチウム原子(またはリチウム原子を含む負極活性物質)が、それぞれ1つの電子を放出し、この電子が外部の電気回路(消費機器)を経て正極に流れる。同時に同じ数のリチウムイオンが電解質を通って負極から正極へと移動する。しかし正極ではリチウムイオンではなく、そこに存在する遷移金属イオンが再び電子を吸蔵する。電池タイプに応じて、コバルトイオン、ニッケルイオン、マンガンイオン、および鉄イオンなどであることができる。したがってリチウムは、セルの放電状態では正極で引き続きイオン形態(Li
+)で存在する。
【0005】
リチウムイオン電池は気密に密封されており、したがって通常動作では内容物質が流出または流入する可能性はない。ハウジングが機械的に損傷すると(これは例えば電気自動車の事故の場合に起こり得る)、内容物質が蒸気状、気体状、または液状の形態で流出する可能性がある。気体状では、蒸発した電解質(爆発の危険)ならびに電解質の分解生成物、例えばメタン、エタン、水素、プロパン、およびブタンおよびアルデヒドが主に流出する。液体としては、溶媒および伝導塩から成る液体電解質が流出する可能性がある。溶媒は可燃性で有毒である。伝導塩LiPF
6は湿気と化合してフッ化水素(HF)を形成する。フッ化水素は高毒性であり、気道を刺激する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
すべての本発明による態様には、適用可能な範囲内で以下の定義が当てはまる。
【0011】
リチウムイオン電池
本発明によれば、概念「リチウムイオン電池」は、冒頭で定義した意味を有する。本発明によればこの概念は、とりわけ個々のまたは唯一の「電気化学セル」も内包している。好ましいのは、「電池」内で2つ以上のこのような電気化学セルが、直列(つまり相前後して)かまたは並列のいずれかで一緒に接続されていることである。
【0012】
電極
本発明による電気化学セルは、少なくとも2つの電極、つまり正極(カソード)および負極(アノード)を有する。
【0013】
これに関し両方の電極は、それぞれ少なくとも1種の活性材料を含有している。活性材料は、リチウムイオンを吸蔵または放出すること、および同時に電子を吸蔵または放出することができる。
【0014】
概念「正極」は、電池を消費機器に、例えば電気モータに接続した際に、電子を吸蔵することができる電極を意味している。正極は、この命名法ではカソードである。
【0015】
概念「負極」は、動作の際に電子を放出することができる電極を意味している。負極は、この命名法ではアノードである。
【0016】
電極は、電極のためにもしくは電極中でもしくは電極上でまたは電極として使用可能な無機材料または無機の化合物もしくは物質を含有している。この化合物または物質は、その化学的性質に基づき、リチウムイオン電池の作動条件下でリチウムイオンまたは金属リチウムを吸蔵(インターカレート)することができ、かつ再び放出することもできる。本明細書ではこのような材料を「活性カソード材料」もしくは「活性アノード材料」または包括的に「活性材料」もしくは「活性電極材料」と呼ぶ。この活性材料は、電気化学セルまたは電池での適用に関し、好ましくは支持体上に、好ましくは金属の支持体上に、好ましくはカソードに関してはアルミニウム上またはアノードに関しては銅上に施される。この支持体は、「導体」とも、または「コレクター」もしくはコレクターフィルムとも呼ばれる。
【0017】
カソード(正極)
正極のための活性材料または活性カソード材料としては、これに関する従来技術から公知のすべての材料を用いることができる。これには、例えばLiCoO
2、NCM、NCA、高エネルギーNCM(HE−NCM)(英語:「High−Energy NCM」)、リチウムリン酸鉄、またはLiマンガンスピネル(LiMn
2O
4)が属している。つまり正極に関し、本発明の意味において制限はない。
【0018】
好ましい一実施形態では、活性カソード材料として、リチウム遷移金属酸化物(以下に「リチウム金属酸化物」とも言う)、層状酸化物、スピネル、オリビン化合物、シリカート化合物、およびその混合物から成る群から選択される材料を使用することができる。そのような活性カソード材料は、例えばBo Xuら「Recent progress in cathode materials research for advanced lithium ion batteries」、Materials Science and Engineering R 73 (2012) 51
〜65(非特許文献1)に記載されている。さらなる好ましいカソード材料はHE−NCMである。層状酸化物およびHE−NCMは、Argonne National Labaratoryの特許公報US6,677,082B2(特許文献1)、US6,680,143B2(特許文献2)、およびUS7,205,072B2(特許文献3)にも記載されている。
【0019】
オリビン化合物の例は、分子式LiXPO
4(X=Mn、Fe、Co、またはNi)のリン酸リチウムまたはその組合せである。
【0020】
リチウム遷移金属酸化物、スピネル化合物、および層状遷移金属酸化物の例は、マンガン酸リチウム、好ましくはLiMn
2O
4、コバルト酸リチウム、好ましくはLiCoO
2、ニッケル酸リチウム、好ましくはLiNiO
2、またはこれら酸化物の2種以上から成る混合物、またはこれらの混合された酸化物である。
【0021】
活性材料は、挙げた物質の2種以上から成る混合物を含有することもできる。
【0022】
電気伝導性を高めるため、活性材料中にさらなる化合物が、好ましくは炭素含有化合物が、または炭素が好ましくは伝導性カーボンブラックもしくはグラファイトの形態で、存在することができる。炭素はカーボンナノチューブまたはグラフェンの形態で導入されてもよい。このような添加物は、支持体上に施された正極合剤(溶媒を含まない)に対して0.1
〜6重量%、好ましくは1
〜3重量%の量で施されるのが好ましい。
【0023】
アノード(負極)
負極のための活性材料または活性アノード材料としては、これに関する従来技術から公知のすべての材料を用いることができる。つまり負極に関し、本発明の意味において制限はない。
【0024】
活性アノード材料は、リチウム金属酸化物、例えばリチウムチタン酸化物、金属酸化物(例えばFe
2O
3、ZnO、ZnFe
2O
4)、炭素含有材料、例えばグラファイト(合成グラファイト、天然グラファイト)、グラフェン、メソカーボン、ドープされた炭素、ハードカーボン、ソフトカーボン、フラーレン、ケイ素と炭素の混合物、ケイ素、スズ、金属リチウム、およびリチウムと合金化可能な材料、ならびにその混合物から成る群から選択することができる。負極のための電極材料として、五酸化ニオブ、スズ合金、二酸化チタン、二酸化スズ、ケイ素も用いることができる。
【0025】
活性アノード材料のために、リチウムと合金化可能な材料を使用することもできる。この材料は、金属リチウム、リチウム合金、またはこれに加えてリチウム化されていないかもしくは部分的にリチウム化された前駆物質であることができ、これらから、被膜形成の際にリチウム合金が生じる。リチウムと合金化可能な好ましい材料は、ケイ素ベースの、スズベースの、およびアンチモンベースの合金から成る群から選択されるリチウム合金である。そのような合金は、例えば総説論文W.−J. Zhang、Journal of Power Sources 196 (2011) 13
〜24(非特許文献2)に記載されている。
【0026】
電極の結合剤
例えば活性材料のような、正極または負極のために使用される材料は、これらの材料を電極または導体上で保持する1種または複数の結合剤によってまとめられている。
【0027】
1種または複数の結合剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリフッ化ビニリデン・ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVdF−HFP)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリラート、スチレン・ブタジエンゴム、およびカルボキシメチルセルロース(CMC)、ならびにその混合物およびコポリマーから成る群から選択することができる。スチレン・ブタジエンゴムおよび場合によってはカルボキシメチルセルロースおよび/またはさらなる結合剤、例えばPVdFは、正極または負極で使用される活性材料の総量に対して0.5
〜8重量%の量で存在することが好ましい。
【0028】
セパレーター
本発明による電気化学セルは、正極と負極を互いに分離する材料を有する。この材料は、リチウムイオンに対して透過性であり、つまりリチウムイオンを伝導し、しかし電子に対しては不導体である。リチウムイオン電池で使用されるこのような材料は、セパレーターとも呼ばれる。
【0029】
本発明によれば、セパレーターとしてポリマーが用いられる。一実施形態ではこのポリマーは、ポリエステル、好ましくはポリエチレンテレフタラート;ポリオレフィン、好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン;ポリアクリロニトリル;ポリフッ化ビニリデン;ポリビニリデン・ヘキサフルオロプロピレン;ポリエーテルイミド;ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテル;ポリエーテルケトン、またはその混合物から成る群から選択される。セパレーターは多孔性を有し、したがってセパレーターはリチウムイオンに対して透過性である。本発明の意味において好ましい一実施形態では、セパレーターは少なくとも1種のポリマーから成っている。
【0030】
電解質
概念「電解質」は、リチウム伝導塩が溶けた液体を意味することが好ましい。この液体は、伝導塩のための溶媒であることが好ましい。この場合、リチウム伝導塩は解離した形態で存在するのが好ましい。
【0031】
適切な溶媒は、化学的および電気化学的に不活性であることが好ましい。適切な溶媒は、例えば炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、スルホラン、2−メチルテトラヒドロフラン、および1,3−ジオキソランのような有機溶媒であることが好ましい。有機炭酸塩を用いるのが好ましい。
【0032】
一実施形態では、溶媒としてイオン液体も使用することができる。このような「イオン液体」はイオンだけを含有している。とりわけアルキル化されていてよい好ましいカチオンは、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、グアニジニウムカチオン、ウロニウムカチオン、チウロニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、モルホリニウムカチオン、スルホニウムカチオン、アンモニウムカチオン、およびホスホニウムカチオンである。使用可能なアニオンの例は、ハロゲン化物アニオン、テトラフルオロボラートアニオン、トリフルオロアセタートアニオン、トリフラートアニオン、ヘキサフルオロホスファートアニオン、ホスフィナートアニオン、およびトシラートアニオンである。
【0033】
例示的なイオン液体としては、N−メチル−N−プロピルピペリジニウム−ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、N−メチル−N−ブチルピロリジニウム−ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、N−ブチル−N−トリメチルアンモニウム−ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、トリエチルスルホニウム−ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、およびN,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウム−ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドが挙げられる。
【0034】
上に挙げた液体の2種以上を使用するのが好ましい。好ましい伝導塩はリチウム塩であり、このリチウム塩は、不活性アニオンを有し、好ましくは非毒性である。適切なリチウム塩が、リチウムヘキサフルオロホスファート(LiPF
6)またはリチウムテトラフルオロボラート(LiBF
4)およびこれらの塩の1種または複数から成る混合物であることが好ましい。これに関し一実施形態では、セパレーターにリチウム塩と電解質の混合物を浸透または浸潤させている。
【0035】
以下では、本発明の様々な態様をより正確に説明する。
【0036】
第1の本発明による態様では、本発明は複合セパレーターに向けられている。
【0037】
本発明による複合セパレーターは、ポリマー膜と、結合剤と、固体無機リチウムイオン伝導体と、液体電解質とを含んでおり、この固体無機リチウムイオン伝導体は、複合セパレーターにおいて液体電解質より高い体積分率および重量分率で存在している。
【0038】
本発明によれば、固体無機リチウムイオン伝導体には、結晶質リチウムイオン伝導体、複合リチウムイオン伝導体、および非晶質無機固体リチウムイオン伝導体が含まれる。結晶質リチウムイオン伝導体には、とりわけペロブスカイト型チタン酸リチウムランタン、NASICON型、LiSICON型、およびチオ−lisicon型のLiイオン伝導体、ならびにガーネット型Liイオン伝導性酸化物とが含まれる。複合リチウムイオン伝導体には、とりわけ酸化物およびメソ多孔質酸化物を含有する材料が含まれる。このような固体無機リチウムイオン伝導体は、例えば総説論文Philippe Knauth「Inorganic solid Li ion conductors: An overview」、Solid State Ionics、Volume 180、Issues 14
〜16、2009年6月25日、911
〜916頁(非特許文献3)に記載されている。本発明によれば、Cao C、Li Z−B、Wang X−L、Zhao X−B、およびHan W−Q (2014)「Recent advances in inorganic solid electrolytes for lithium batteries」、Front. Energy Res.、2:25(非特許文献4)に記載されているすべての固体リチウムイオン伝導体も含まれる。とりわけEP1723080B1(特許文献4)に記載されたガーネット(英語では「garnet」と言う)も、本発明により含まれる。
【0039】
したがって本発明による複合セパレーターは、固体無機リチウムイオン伝導体を無機固体電解質として主として用いる組成を有する。これに加え、補助電解質として液体電解質がより少ない重量分率および体積分率で存在している。
【0040】
本発明者らは、本発明による複合セパレーターにより、複合セパレーターにおける液体電解質の量を減らせることを認識した。これにより、この複合セパレーターを内包するリチウムイオン電池では、液体電解質の総量を有意に減らすことができる。こうすることで、溶媒の量も、伝導塩、とりわけLiPF
6の量も減らすことができ、したがって流出する液体または気体の発火の危険も、LiPF
6と湿気が反応してフッ化水素(HF)を発生させることによる健康上のリスクも減らすことができる。
【0041】
好ましい本発明による一実施形態では、複合セパレーターは、相互に結合した細孔を有し、これらの細孔は、固体無機リチウムイオン伝導体および液体電解質を内包している。固体無機リチウムイオン伝導体と液体電解質を、相互に結合した細孔内に配置することにより、固体無機リチウムイオン伝導体の粒子間の移動抵抗を減らすことができる。
【0042】
好ましい本発明による一実施形態では、複合セパレーターは、液体電解質を含まない体積に対して10
〜60%の多孔性を有し、この多孔性は90%超で、さらに好ましくは95%超で、とりわけ好ましくは完全に、液体電解質で塞がれる。液体電解質により多孔性をできるだけ完全に塞ぐことにより、固体無機リチウムイオン伝導体の粒子間の移動抵抗を有意に改善することができる。
【0043】
好ましい本発明による一実施形態では、ポリマー膜のポリマーは、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、アラミド、およびその混合物から成る群から選択される。
【0044】
好ましい一実施形態では、固体無機リチウムイオン伝導体は粒子から成っており、この粒子の粒径d50は0.05μm超
〜5μm、好ましくは0.1μm
〜2μmである。これに関し、測定値は走査電子顕微鏡法(英語では「Scanning electron microscopy(SEM)」と言う)によって決定される。このような測定法は、例えばUS5872358A(特許文献5)に記載されている。
【0045】
好ましい一実施形態では、複合セパレーターにおいて、固体無機リチウムイオン伝導体が活性アノード材料に対して10
〜50重量%、好ましくは20
〜40重量%で存在している。
【0046】
好ましい一実施形態では、固体無機リチウムイオン伝導体は、室温(20℃)で少なくとも10
−5S/cmのリチウムイオン伝導性を有する。これに関し測定値は、例えばW. WeppnerおよびR. A. Huggins、J. Electrochem. Soc.、124 1569
〜1578 (1977)(非特許文献5)に記載されているようなGITT(英語:galvanostatic intermittent titration technique)に基づいて決定される。
【0047】
好ましい一実施形態では、固体無機リチウムイオン伝導体は、ペロブスカイト、ガラス形成剤、ガーネット、およびその混合物から成る群から選択される。とりわけ好ましいのは、EP1723080B1(特許文献4)が記載しているガーネット(英語では、「garnet」と言う)であり、なぜならガーネットは、カソード(正極)の3
〜5Vの電位範囲において化学的および電気化学的に特に安定しているからである。
【0048】
好ましい一実施形態では、結合剤は、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデンおよびヘキサフルオロプロピレンから成るコポリマー、スチレンおよびブタジエンから成るコポリマー、セルロース、セルロース誘導体、ならびにその混合物から成る群から選択される。
【0049】
好ましい一実施形態では、液体電解質は、有機炭酸塩および伝導塩、好ましくはLiPF
6またはLiBF
4を含む。
【0050】
複合セパレーターの厚さは、一般的には1μm
〜250μm、好ましくは20μm
〜100μmである。これに関し測定値は、US4008523A(特許文献6)で示されたような光学的方法によって決定される。
【0051】
第2の本発明による態様では、本発明は、電極と、セパレーターと、電解質とを含むリチウムイオン電池であって、セパレーターが第1の本発明による態様に基づく複合セパレーターである、リチウムイオン電池に関する。
【0052】
第3の本発明による態様では、本発明は、本発明による複合セパレーターの製造方法に関する。この方法は、以下のステップを含む。
− 固体無機リチウムイオン伝導体と、溶媒中に溶けた結合剤とから成る懸濁液を製造するステップ
− 多孔質ポリマー膜を準備し、懸濁液でポリマー膜の多孔性を補充するステップ
− 減圧および/または昇温下で溶媒を除去するステップ
− 液体電解質で多孔性を補充するステップ
【0053】
多孔性の補充は、それぞれ浸透により、場合によっては真空および/または熱処理で補助しながら、実施することができる。
【0054】
本発明によるリチウムイオン電池は、固定的な用途にも移動性の用途にも適している。液体電解質の量の減少が、乗っている人のリスク低下に結びつくことにより、本発明によるリチウムイオン電池はとりわけ自動車での適用に適している。
【0055】
以下では、本発明を例に基づいて記載する。
【実施例】
【0056】
例示的実施形態
基準セパレーター
I)25μmで3層のポリオレフィンベースのセパレーター、約40%の多孔性(Celgard社 USA)。
II)25μmで1層のポリイミドベースのセパレーター、約50%の多孔性(DuPont社、USA)。
【0057】
本発明によるセパレーター
コーティング剤(結合剤およびセラミックスのリチウムイオン伝導体)の製造。
【0058】
アセトン(BASF)100ml中に、PVdF−HFPコポリマー(Solef21216、Solvay社)2.0gを室温で溶かす。少し粘性の溶液が生じる。続いてディゾルバー翼を用い、微細なLLZガーネット(d
50 80nm)18.0gを導入する。少し粘性の均質な懸濁液が生じる。
【0059】
本発明によるセパレーターIIIの製造(上記コーティング剤の浸透)。
【0060】
基準セパレーターIに上記の懸濁液を浸透させる。アセトンの除去後、多孔性が(体積に対して)15%の組み合わせられた複合セパレーター(セラミックスのLiイオン伝導体、結合剤、ベースセパレーター)が結果として生じる。
【0061】
本発明によるIV(上記コーティング剤の浸透)。基準セパレーターIIに上記の懸濁液を浸透させる。アセトンの除去後、多孔性が(体積に対して)20%の組み合わせられた複合セパレーター(セラミックスのLiイオン伝導体、結合剤、ベースセパレーター)が結果として生じる。
【0062】
例示的実施形態 セル
さらなるセル組立てには、10μmの銅フィルム(圧延フィルム、Schlenk社、ドイツ)にコーティングした単位面積当りの重量7.5mg/cm
2のアノードを使用する(CMC1%、SBR2%、Super C45 1%、SFGL1%、Hitachi MAG D20 95%)。さらなるセル組立てには、15μmのアルミニウムフィルム(Hydroaluminium社、ドイツ)にコーティングした単位面積当りの重量15.0mg/cm
2のカソードを使用する(PVdF(Solef5130、Solvay社)4.5%、Super C65(Timcal社、ベルギー)4.5%、NMClll(BASF社、ドイツ)91%。セパレーターとしては、形態I、II、III、またはIVを使用する。液体電解質としては、EC:DEC(3:7v/v)中LiPF
6の1.1M溶液を使用し、この溶液が、アノード、カソード、および基準セパレーターまたは本発明によるセパレーターの自由な体積(細孔)に入り込む。
【0063】
それぞれの電極/セパレーターの組合せから、公称容量2.0AhのLiイオンセルを、積み重なった設計で組み立て、125μm厚のアルミニウム複合フィルム(Showa社、日本)内に梱包する。
【0064】
それぞれ基準セパレーターIおよびIIを備えた基準セルを20個ならびに本発明によるセパレーターIIIおよびIVを備えた本発明によるセルを20個組み立てる。
結果 長時間サイクル
室温の長時間サイクル(電圧範囲2.8V
〜4.2V(lC、CCCV充電、lC、CC放電)の場合、5個の基準セル(基準セパレーターIまたはIIを備えた)および本発明によるセル(本発明によるセパレーターIIIおよびIVを備えた)を選び出すと、同一の挙動が観察される。すなわち室温で500サイクル後に、当初容量(2Ah)の80%を達成する。
【0065】
安全性試験
それぞれ10個のセル(セパレーターIまたは2を備えた基準セル)および(本発明によるセパレーターIIまたはIVを備えた)本発明によるセルに、Sandiaに基づくいわゆる釘試験(「penetration test」、SANDIA REPORT, SAND2005−3123, Unlimited Release Printed August 2006、18
〜19頁;http://prod.sandia.gov/techlib/access−control.cgi/2005/053123.pdfを参照(非特許文献6))を、フル充電状態(4.2V)で行う。その際、セルを太さ3mmの釘で突き通す。
【0066】
試験の結果を、Sandia Reportの15
〜16頁の表2での「EUCAR Hazard Levels」(非特許文献7)に基づいて評価した。セーフティレベル3は、発火または爆発なしで、液体電解質の流出が50重量%未満であることを意味する。セーフティレベル4は、その前のセーフティレベルに相当するが、電解質の流出は50重量%超である。セーフティレベル5では、これに加えてセルが発火する。
【0067】
【表1】
【0068】
結果:本発明によるセルは、より良い安全性挙動を示している。