(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記イオン化電流の前記測定相の間に、前記二次巻き線を流れる前記イオン化電流(I_ion)の値を測定するよう構成された測定回路(6)を更に備え、前記イオン化電流は、前記エネルギー移動相において前記スパークプラグによって発生したスパークによって空気燃料混合物の燃焼過程の間に発生したイオンによって発生する、請求項1から5のいずれかに記載の電子点火システム。
前記一次巻き線の充電相の開始を示す第一の値と前記一次巻き線から前記二次巻き線への前記エネルギー移動相の開始を示す第二の値とを有する点火信号(Sac)を発生するよう構成された処理ユニット(20)を更に備え、
前記駆動ユニットは更に、前記点火信号を受けて、その値に応じて前記制御信号、前記第一、第二及び第三駆動信号を生成するよう構成され、
前記高圧スイッチ、前記第一スイッチ、前記第二スイッチ、前記第三スイッチ、及び前記駆動ユニットは単一の部品内に含まれている、請求項1から7のいずれかに記載の電子点火システム。
請求項10に記載の方法の前記ステップe)、f)、g)を行うよう構成したソフトウェアコード部を備えるコンピュータプログラムであって、前記プログラムは少なくとも一つのコンピュータ上で実行される、コンピュータプログラム。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の説明において、本発明の異なる実施形態にて例示されている場合であっても、同じ又は類似のブロック、部品又はモジュールについては、図面において同じ参照番号で示す。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る内燃機関用の電子点火システム15を示す図である。
【0020】
電子点火システム15は、自動車、自動二輪車、トラック等の任意の自走車に搭載可能である。
点火システム15は、
− 点火コイル2と、
− スパークプラグ3と、
− 制御装置1と、
− 処理ユニット20と、を備える。
【0021】
処理ユニット20は、内燃機関のヘッド部から十分に離間した位置にあり、点火コイル2の高動作温度による影響を受けない。
【0022】
処理ユニット20は、一般に「電子制御ユニット」として示す単一の部品である。
【0023】
或いは、制御装置1とコイル2とをエンジンのヘッド部の近くに配置して、エンジンヘッド部の高動作温度に耐えられるような設計とする。
【0024】
スパークプラグ3は、点火コイル2の二次巻き線2−2に接続される。特に、スパークプラグ3は、二次巻き線2−2に接続された第一電極と、対地参照電位に接続された第二電極とを備える。
【0025】
スパークプラグ3は、これらの電極の端部間でスパークを発生させる機能を有し、発生したスパークにより、内燃機関のシリンダ内の空気燃料混合物を燃やすことができる。
【0026】
点火システム15は、以下の3つの動作相に応じて動作するものである。
− 充電相では、増加傾向で一次巻き線2−1を流れる一次電流I_prによって一次巻き線2−1にエネルギーを充電する。
− エネルギー移動相は、一次巻き線2−1から二次巻き線2−2へとエネルギーを移動させる段階であって、これによってスパークプラグ3の電極間上でスパークが発生し、内燃機関のシリンダ内部の空気燃料混合物を燃やす。
− イオン化電流測定相では、イオン化電流I_ionを読み取る。
【0027】
イオン化電流測定相は更に、化学相(chemical phase)とこれに続く熱相(thermal phase)とを備える。
【0028】
制御装置1は、
− 駆動ユニット5と、
− 高圧スイッチ4と、
− 第一スイッチ10−1と、
− 第二スイッチ10−2と、
− 第三スイッチ10−3と、
− 電流測定回路6と、を備える。
【0029】
制御装置1が筐体で覆われた単一の部品であることが好ましい。
【0030】
点火コイル2は、一次巻き線2−1と、二次巻き線2−2と、これらの一次巻き線2−1と二次巻き線2−2とを誘導結合する磁気コア2−3とを有する。
【0031】
一次巻き線2−1は、第一スイッチ10−1と第二スイッチ10−2とに接続された第一端子を備える。一次巻き線2−1は更に、第三スイッチ10−3と高圧スイッチ4とに接続され、一次電圧V_prを発生するよう構成された第二端子を備える。
【0032】
更に、以下の説明において、「一次巻き線2−1の両端での電圧降下」とは、一次巻き線2−1の第一端子と第二端子との間の電位差を示す。
【0033】
二次巻き線2−2は、スパークプラグ3に接続される。特に、二次巻き線2−2は、スパークプラグ3の第一電極に接続され、二次電圧V_secを発生するよう構成された第一端子を備える。二次巻き線は、電流測定回路6を介して対地参照電位へと接続される第二端子を備える。
【0034】
以降、一次巻き線2−1から二次巻き線2−2へのエネルギー移動相の間に一次巻き線2−1を流れる電流を示すのに「一次電流」l_prを用い、二次巻き線2−2を流れる電流を示すのに「二次電流」I_secを用いる。
【0035】
高圧スイッチ4は、一次巻き線2.1に直列に接続される。
【0036】
特に、高圧スイッチ4は、一次巻き線2.1の第二端子と第三スイッチ10−3とに接続された第一端子I4iを備え、対地参照電位に接続される第二端子I4oを備え、駆動ユニット5に接続される制御端子I4cを備える。
【0037】
高圧スイッチ4は、制御端子I4cにて受信される制御信号S_ctrlの値に応じて、閉位置と開位置との間で切り替え可能である。
【0038】
高圧スイッチ4は、端子I4iに対応するコレクタ端子と、端子I4oに対応するエミッタ端子と、端子I4cに対応するゲート端子とを有するIGBT型のトランジスタ(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)で実施することが好ましい。この場合には、一次電圧V_prは、IGBTトランジスタ4のコレクタ端子の電圧に等しくなる。
【0039】
特に、IGBTトランジスタ4は、閉状態では飽和領域で動作し、開状態では遮断領域で動作する。
【0040】
IGBTトランジスタ4は、200Vを超える電圧値で動作する。
【0041】
或いは、高圧スイッチ4は、電界効果トランジスタ(MOSFET、JFET)や2つのバイポーラ接合トランジスタ(BJT)で実施可能である。
【0042】
第二スイッチ10−2と第三スイッチ10−3の組み合わせによって、後により詳細に説明するように、エネルギー移動相の最後に参照電圧V_ref(例えば、対地参照電位)へと一次巻き線2−1の端子間を接続する機能を有する。
【0043】
第一スイッチ10−1は、一次巻き線2−1へのバッテリ電圧V_battからの高い電流ピーク値の存在下において、点火システム15を保護する機能を更に有する。この場合、駆動ユニット5は、第一駆動信号S1_drvを生成して第一スイッチ10−1を開く。
【0044】
第一スイッチ10−1、第二スイッチ10−2、第三スイッチ10−3は、一次巻き線2−1の端子に接続される。
【0045】
特に第一スイッチ10−1は、一次巻き線2.1に直列に接続される。
【0046】
第一スイッチ10−1は、バッテリ電圧V_battを受信するよう構成された第一端子I1iを備え、一次巻き線2−1の第一端子に接続された第二端子I1oを備え、第一駆動信号S1_drvを受信するよう構成された駆動端子I1cを備える。
【0047】
第一スイッチ10−1は、第一駆動信号S1_drvの値に応じて、閉位置と開位置との間で切り替え可能である。
【0048】
第一スイッチ10−1は、飽和電圧Vds_sat(例えば0.1V)のpチャネルエンハンスメント型MOSFETトランジスタで実施することが好ましく、端子I1iに対応するソース端子と、端子I1oに対応するドレイン端子と、駆動端子I1cに対応するゲート端子とを有する。
【0049】
特に、MOSFETトランジスタ10−1は、閉状態では飽和領域で動作し、開状態では遮断領域で動作する。MOSFETトランジスタ10−1が遮断領域で動作する場合に、ドレイン端子とソース端子との間の電圧降下Vds1は非常に小さい値(すなわち、ほぼ零)である。
【0050】
MOSFETトランジスタ10−1は、40Vを超える電圧値で動作する。
【0051】
或いは、第一スイッチ10−1は、バイポーラ接合トランジスタ(BJT)や電界効果トランジスタ(JFET)で実施する。
【0052】
第二スイッチ10−2は、第一スイッチ10−1の第二端子と一次巻き線2−1の第一端子とに接続された第一端子I2iを備え、対地参照電位に接続された第二端子I2oを備え、第二駆動信号S2_drvを受信するよう構成された駆動端子I2cを備える。
【0053】
第二スイッチ10−2は、第二駆動信号S2_drvの値に応じて、閉位置と開位置との間で切り替え可能である。
【0054】
第二スイッチ10−2は、飽和電圧Vds_sat(例えば0.1V)のnチャネルエンハンスメント型MOSFETトランジスタで実施することが好ましく、端子I2iに対応するドレイン端子と、端子I2oに対応するソース端子と、駆動端子I2cに対応するゲート端子とを有する。
【0055】
特に、MOSFETトランジスタ10−2は、閉状態では飽和領域で動作し、開状態では遮断領域で動作する。MOSFETトランジスタ10−2が遮断領域で動作する場合に、ドレイン端子とソース端子との間の電圧降下Vds2は非常に小さい値(すなわち、ほぼ零)である。
【0056】
MOSFETトランジスタ10−2は、40Vを超える電圧値で動作する。
【0057】
或いは、第二スイッチ10−2は、電界効果トランジスタ(JFET)で実施する。
【0058】
第三スイッチ10−3は、一次巻き線2−1の第二端子に接続された第一端子I3iを備え、対地参照電位に接続された第二端子I3oを備え、第三駆動信号S3_drvを受信するよう構成された駆動端子I3cを備える。
【0059】
第三スイッチ10−3は、第三駆動信号S3_drvの値に応じて、閉位置と開位置との間で切り替え可能である。
【0060】
第三スイッチ10−3は、飽和電圧Vds_sat(例えば0.1V)のnチャネルエンハンスメント型MOSFETトランジスタで実施することが好ましく、端子I3iに対応するドレイン端子と、端子I3oに対応するソース端子と、駆動端子I3cに対応するゲート端子とを有する。
【0061】
特に、MOSFETトランジスタ10−3は、閉状態では飽和領域で動作し、開状態では遮断領域で動作する。MOSFETトランジスタ10−3が遮断領域で動作する場合に、ドレイン端子とソース端子との間の電圧降下Vds3は非常に小さい値(すなわち、ほぼ零)である。
【0062】
MOSFETトランジスタ10−3は、500Vを超える電圧値で動作する。
【0063】
或いは、第三スイッチ10−3は、電界効果トランジスタ(JFET)で実施する。
【0064】
本発明の説明の目的で、第二スイッチ10−2と第三スイッチ10−3の第二端子は対地参照電位に接続されるものとしたが、より一般的には、第二スイッチ10−2と第三スイッチ10−3の第二端子はバッテリ電圧V_battとは異なる参照電圧V_refに接続することが可能である。
【0065】
例えば、バッテリ電圧V_battの値を12Vとすると、参照電圧V_refの値は供給電圧VCCに等しく、8.2V、5V又は3.3Vであり得る。
【0066】
電流測定回路6は、イオン化電流の測定相の間に流れるイオン化電流I_ionの値を測定する機能を有する。
【0067】
電流測定回路6は、二次巻き線2−2の第二端子と対地参照電位との間に接続される。
【0068】
駆動ユニット5は、高圧スイッチ4、第一スイッチ10−1、第二スイッチ10−2と第三スイッチ10−3の動作を制御する機能を有する。
【0069】
駆動ユニット5は例えば、マイクロコントローラである。
【0070】
駆動ユニット5は、ある値から別の値へと移行(例えば、高論理値から低論理値へと移行、又はその逆)する点火信号S_acを受信するよう構成した入力端子を備え、点火信号S_acの値に応じて、高圧スイッチ4の開閉を駆動するための制御信号S_ctrlを発生するよう構成した第一出力端子を備える。
【0071】
特に、駆動ユニット5は、第一の値(例えば高論理値)を有する点火信号S_acを受けて、高圧スイッチ4を閉鎖するよう駆動するための第一の値(例えば、零より大きい電圧値)を有する制御信号S_ctrlを発生するよう構成される。
【0072】
更に、駆動ユニット5は、第二の値(例えば低論理値)を有する点火信号S_acを受けて、高圧スイッチ4を開放するよう駆動するための第二の値(例えば、電圧値零)を有する制御信号S_ctrlを発生するよう構成され、これによって一次巻き線2−1を流れる一次電流I_prを急峻に遮断する。これによって、一次巻き線2−1の第二端子にて短時間の電圧パルスが起こり、一般的にはピーク値が200〜450Vであって、時間の長さは数マイクロ秒である。
【0073】
この結果、一次巻き線2−1に蓄えていたエネルギーが二次巻き線2−2に移動する。特に、高圧パルスが二次巻き線2−2の第一端子に発生し、その電圧は一般的には15〜50kVであって、スパークプラグ3の電極間にスパークを引き起こすのに十分な電圧である。
【0074】
更に、駆動ユニット5は、第一スイッチ10−1の開閉を駆動するための第一駆動信号S1_drvを発生するよう構成した第二出力端子を備え、第二スイッチ10−2の開閉を駆動するための第二駆動信号S2_drvを発生するよう構成した第三出力端子を備え、第三スイッチ10−3の開閉を駆動するための第三駆動信号S3_drvを発生するよう構成した第四出力端子を備える。
【0075】
特に、駆動ユニット5は、第一スイッチ10−1を開放するための第一駆動信号S1_drvと、第二スイッチ10−2を閉鎖するための第二駆動信号S2_drvと、第三スイッチ10−3を閉鎖するための第三駆動信号S3_drvを発生するよう構成され、後により詳細に説明するように、エネルギー移動相の最後に参照電圧V_ref (特に、対地参照電位)へと一次巻き線2−1の端子を適切に接続する。
【0076】
一次巻き線2−1の端子をこのように適切に接続することによって、二次巻き線2−2から見た等価インピーダンスは、実質的に一次巻き線2−1の参照電位V_refに向かう抵抗経路のみによって決定されることとなるので、イオン化電流I_ionの読み取り相の間、二次巻き線2−2のインダクタンスを効率的かつ確実に減少させることができる。このように、イオン化電流I_ionの読み取りに使用可能な信号の振幅が向上する。
【0077】
更に、一次巻き線2−1の端子をこのように適切に接続することによって、残留エネルギーが一次巻き線2−1において熱へと変換されるので、スパーク発生の後に二次巻き線2−2での残留エネルギーを分散させることが可能となる。
【0078】
更に、一次巻き線2−1の端子をこのように適切に接続することによって、二次巻き線2−2の力学的な周波数の限界を上方に移行させることが可能となる。
【0079】
便宜上、第一駆動信号S1_drv、第二駆動信号S2_drv、第三駆動信号S3_drv、及び制御信号S_ctrlの適切な電圧値を発生させるのに必要な任意の駆動回路については示していないが、これらの駆動回路は例えば、駆動ユニット5内部に備えることができる。
【0080】
特に、第一スイッチ10−1、第二スイッチ10−2及び第三スイッチ10−3をそれぞれMOSFETトランジスタで実施する場合、第一駆動信号S1_drv、第二駆動信号S2_drv及び第三駆動信号S3_drvは、0Vの低論理値とバッテリ電圧V_batt=12Vに等しい高論理値を有する論理信号である。
【0081】
同様に、高圧スイッチ4をIGBTトランジスタで実施する場合、制御信号V_ctrlは、0Vの低論理値と供給電圧VCC(例えば、VCC=5V)に等しい高論理値を有する論理信号である。
【0082】
更に、駆動ユニット5は、イオン化電流I_ionの値を処理する機能を有する。
【0083】
特に、駆動ユニット5は、イオン化電流I_ionの値を受信するよう構成した第二入力端子を備える。
【0084】
有利なことに、駆動ユニット5は、二次電流I_secを受信するよう構成した第三入力端子を備え、エネルギー移動相の間、二次電流の値が電流閾値I_thに達したことを検出するよう構成され、第三スイッチ10−3を閉鎖するよう駆動するための第三駆動信号S3_drvを発生するよう構成される。これによって、二次巻き線2−2の残留エネルギーが一次巻き線2−1上で熱として分散されるので、二次電流I_secの値を即座に零にすることが可能となる。この結果、スパーク発生の後の揺れが減少し、二次電流I_secを零にするのに必要な時間が減少する。
【0085】
更に、電流閾値I_thを使用すると、二次巻き線2−2の残留エネルギーを消滅させる瞬間の時間を正確に制御することができる。
【0086】
電流閾値I_thの値は、二次電流I_secの最大値Isec_maxの一定の割合とすることが好ましく、この割合の値は、0.1%と5%との間である。
【0087】
電流測定回路6は、駆動ユニット5内部に一体化することが可能であり、この場合、二次巻き線2−2の第二端子は駆動ユニット5に接続され、駆動ユニットは、二次電流I_secを受信するよう構成した入力端子を(第二及び第三入力端子の代わりに)備える。
【0088】
処理ユニット20は、点火コイル2の動作を制御する機能を有し、スパークプラグ3の端部で正しい瞬間にスパークを発生させるためのものである。
【0089】
特に、処理ユニット20は、
図1A〜1Bを参照して後により詳細に説明するように、一次巻き線2−1の第一の充電相を終わらせて、一次巻き線2−1から二次巻き線2−2への第二のエネルギー移動相を始動させるために、第一から第二の値へと(例えば、低論理値から高論理値へと)移行する点火信号S_acを発生するよう構成した出力端子を備える。
【0090】
駆動ユニット5、処理ユニット20及び電流測定回路6には、バッテリ電圧V_battより小さい又はこれに等しい供給電圧VCC(例えば、VCCは3.3V、5V、又は8.2Vに等しい)を供給する。
【0091】
図1Aは、一次巻き線2−1へのエネルギー充電相の間の電子点火システム15を示す概略図である。
【0092】
スイッチ4及び10−1を閉じ、スイッチ10−2、10−3を開いた充電相の間、この構成において電流I_chgは、バッテリ電圧V_battからグラウンドへと(
図1A参照)、スイッチ10−1、第一一次巻き線2−1、スイッチ4を横切って流れる。従って、この電流I_chgの値は、一次巻き線2−1を流れる一次電流I_prの値と等しくなる。
【0093】
図1Bは、一次巻き線2−1から二次巻き線2−2へのエネルギー移動の初期相の間の電子点火システム15を示す図である。
【0094】
スイッチ10−1が閉じ、スイッチ10−2、10−3及び4が開いているエネルギー移動の初期相では、この構成において電流I_trは、スパークプラグ3、二次巻き線2−2、及び電流測定回路6を流れることがわかる(
図1B参照)。
【0095】
図1B、2A及び2Bは、一次巻き線2−1から二次巻き線2−2へのエネルギー移動の3つの連続した構成の間の電子点火システム15を示す図である。
【0096】
エネルギー移動相には以下の3つの連続した構成があることがわかる。
− 第一の構成では、スイッチ10−2、10−3、4が開いており(
図1B参照)、スイッチ10−1が閉じており、この構成において電流I_trは、スパークプラグ3、二次巻き線2−2、及び電流測定回路6を流れる(再び
図1B参照)。
− 第二の構成では、スイッチ10−1、10−2、10−3、4が開いており(
図2A参照)、この構成において電流I_trは、スパークプラグ3、二次巻き線2−2、及び電流測定回路6を流れる(再び
図2A参照)。
− 第三の構成では、スイッチ10−1、10−3、4が開いており、スイッチ10−2が閉じており(
図2B参照)、この構成において電流I_trは引き続き、スパークプラグ3、二次巻き線2−2、及び電流測定回路6を流れる(再び
図2B参照)。
【0097】
図3は、イオン化電流I_ionの測定相間の電子点火システム15を示す図である。
【0098】
スイッチ10−1及び4が開き、スイッチ10−2、10−3が閉じており、この構成において、(例えば約250〜500mAの)小さい値の振動傾向を有する分散電流I_ikが、スイッチ10−2、一次巻き線2−1及びスイッチ10−3を流れ(
図3参照)、更に、イオン化電流I_ionが、電流測定回路6、二次巻き線2−2及びスパークプラグ3を流れることがわかる(再び
図3参照)。
【0099】
一次巻き線2−1を分散電流I_ikが流れることによって、二次巻き線2−2の残留エネルギーが一次巻き線2−1に熱として分散される(
図4の電流ピークP1を参照)ので、二次巻き線2−2を流れる二次電流I_secの値を瞬時に零にすることができる。このように、スパーク発生の後での揺れを軽減し、二次電流I_secを零にするためにかかる時間が減る。
【0100】
図4は、本発明の実施形態に係る、点火信号S_ac、制御信号S_ctrl、第一駆動信号S1_drv、第二駆動信号S2_drv、第三駆動信号S3_drv、一次電流I_pr、二次電流I_sec及びイオン化電流I_ionの起こりうる傾向を示す図である。
【0101】
尚、本発明を説明するために、
図4は、イオン化電流I_ionの信号とは別に二次電流I_secの信号を示しているが、実際には、この信号は、それぞれ期間T_trのエネルギー移動相と期間T_ionのイオン化電流の測定相とである電子点火システム15の二つの異なる動作相において二次巻き線2−2を流れる電流である。
【0102】
また、
図4に示した各信号のスケールはなく、各信号から導かれる値より説明の内容を優先するものとする。
【0103】
図4は、t1からt10までの点火サイクルを示す図であって、これらの信号の傾向は、第一のサイクルに続く第二の点火サイクル及び連続する点火サイクルにおいて同様に繰り返される。
【0104】
電子点火システム15の以下の3つの動作相が観測可能である。
− 一次巻き線2−1の充電相の期間はT_chgであって、時間t1とt2との間の期間である。
− 一次巻き線2−1から二次巻き線2−2へのエネルギー移動相の期間はT_trであって、時間t2とt5との間の期間である。この期間において、スパークプラグ3の電極の端部でスパークが発生する。
− イオン化電流測定相の期間はT_ionであって、時間t5とt10との間の期間である。この期間においてイオン化電流I_ionを読み取る。
【0105】
充電相(t1とt2との間の期間)の間、スイッチ4及び10−1が閉じており、スイッチ10−2及び10−3が開いている。一次電流I_prはnull値から最大値Ipr_maxへの増加傾向にあり、二次電流I_secの値は実質的にnullであって、イオン化電流I_ionはnullである。
【0106】
エネルギー移動相(t2とt5との間の期間)の間、一次電流I_prは実質的にnullであって、二次電流I_secは、t2では最大値のパルスIsec_maxであって、その後この最大値Isec_maxから実質的にnull値へと減少傾向を有する。
【0107】
更に、エネルギー移動相の間、スイッチ4は開いており、スイッチ10−1はt3において閉から開へと切り替わる。その後t4においてスイッチ10−2が開から閉へと切り替わり、続いて、t5においてスイッチ10−3が開から閉へと切り替わる。
【0108】
特に、エネルギー移動相は以下のような期間を備えることがわかる。
− t2からt3までの第一の期間。この期間、スイッチ4は開いており、スイッチ10−1は閉じており、スイッチ10−2、10−3は開いており、
図1Bに示したスイッチの構成に対応する。
− t3からt4までの第二の期間。この期間、スイッチ10−1、10−2、10−3及び4は開いており、
図2Aに示したスイッチの第一の構成に対応する。
− t4からt5までの第三の期間。この期間、スイッチ10−1、10−3及び4は開いており、スイッチ10−2は閉じており、
図2Bに示したスイッチの第二の構成に対応する。
【0109】
イオン化電流の測定相(t5からt10の期間)の間、スイッチ10−1及び4が開いており、スイッチ10−2、10−3は閉じている。
【0110】
t5からt6の期間は、一次電流I_prが(例えば約250〜500mAの)非常に小さい値で振動傾向を有し、これについて
図4ではパルスI1で模式的に示している。
【0111】
続くt6では一次電流I_prはnull値を有する。
【0112】
t5からt10の期間では、二次電流I_secはnullである。
【0113】
更に、t5からt10の期間では、イオン化電流I_ionが二次巻き線2−2を流れる。特に、イオン化電流I_ionは、t5からt6の期間は第一電流ピークP1を有し、その後のt6では化学相が始まって、t6からt7の期間では第二電流ピークP2となり、その後t7では熱相が始まって、振動傾向を有しながらnull値に到達する。
【0114】
尚、第一電流ピークP1はt6で終了し、一次電流I_prのパルスI1がnull値に到達する。このように、二次巻き線2−2の残留エネルギーはスパーク発生の最後には分散する。
【0115】
更に、(エネルギー移動相からイオン化電流の測定相への移行が起こる)t5において、二次電流I_secの値は電流閾値I_thに到達し、二次電流I_secは、零より若干大きい値からnull値へと急峻に移行する。これによって、ある期間(典型的には100マイクロ秒から500マイクロ秒)までにイオン化電流I_ionの読み取りを予測することができ、イオン化電流の測定相の化学相で起こるイオン化電流I_ionの第二ピークP2の値を読み取ることができる。このように、エネルギー移動相の間に起こる燃焼状態を表すような更なるデータを検出可能である。
【0116】
更に、電流閾値I_thを使用することによって、二次電流I_secの値を零にして二次巻き線2−2の残留エネルギーを消滅させるt5の時間を正確に制御可能となる。
【0117】
t1からt10までの点火サイクルにおける点火システム15の動作について、
図1A〜1B、2A〜2B、3及び4を更に参照して、以下に説明する。
【0118】
動作の説明のために、以下のように仮定する。
− 参照電圧V_refは対地参照電位に等しい。
− バッテリ電圧V_batt=12Vである。
− 供給電圧VCC=5Vである。
− 第一スイッチ10−1は、pチャネルMOSFETトランジスタで実施し、閉位置にある場合のドレイン端子とソース端子との間の電圧降下Vds1の値は非常に小さく0Vに近似可能である。
− 第二スイッチ10−2、第三スイッチ10−3はそれぞれ、nチャネルMOSFETで実施する。
− 高圧スイッチ4は、IGBTトランジスタで実施する。
− 制御信号S_ctrlは電圧信号である。
− 点火信号S_acと制御信号S_ctrlとは論理値を有し、低論理値は0Vであって、高論理値は供給電圧VCC=5Vに等しい。
− 第一駆動信号S1_drv、第二駆動信号S2_drv及び第三駆動信号S3_drvは論理値を有し、低論理値は0Vであって高論理値はバッテリ電圧V_batt=12Vに等しい。
− コイル2の巻き数比はNに等しい。
【0119】
t0からt1までの間(t1は除く)の瞬時において、処理ユニット20は、スパークプラグ3上でスパークが発生できない低論理値を有する点火信号S_acを発生する。
【0120】
駆動ユニット5は、低論理値を有する点火信号Sacを受けて、IGBTトランジスタ4の開放状態を維持する低論理値を有する制御電圧信号S_ctrlをIGBTトランジスタ4の制御端子で発生する。
【0121】
更に、駆動ユニット5は、第一スイッチ10−1の閉鎖状態を維持する低論理値を有する第一駆動信号S1_drvを発生し、第二スイッチ10−2の開放状態を維持する低論理値を有する第二駆動信号S2_drvを発生し、第三スイッチ10−3の開放状態を維持する低論理値を有する第三駆動信号S3_drvを発生する。
【0122】
IGBTトランジスタ4は開いているので、一次巻き線2−1に電流は流れず、一次電流I_prはnull値である。この結果、一次電圧V_prは、V_batt−Vds1=12V−Vds1に等しい値となり、一次巻き線2−1の両端での電圧降下はnullであって、二次電流I_secはnull値である。
【0123】
t1において、処理ユニット20は、低論理値から(供給電圧VCCに等しい)高論理値へと移行する点火信号S_acを発生し、これによって点火相の開始が示される。
【0124】
駆動ユニット5は、高論理値に等しい点火信号S_acを受け取り、IGBTトランジスタ4を閉じる高論理値に等しい値を有する制御電圧信号S_ctrlをIGBTトランジスタ4の制御端子で発生する(
図1Aの構成を参照)。
【0125】
更に、駆動ユニット5は、第一スイッチ10−1の閉鎖状態を維持する低論理値を有する第一駆動信号S1_drvを発生し、第二スイッチ10−2の開放状態を維持する低論理値を有する第二駆動信号S2_drvを発生し、第三スイッチ10−3の開放状態を維持する低論理値を有する第三駆動信号S3_drvを発生する(再び
図1Aの構成を参照)。
【0126】
第一スイッチ10−1とIGBTトランジスタ4とが閉鎖されているので、一次巻き線2−1におけるエネルギー充電相が開始し、その間に、一次電流I_prがバッテリ電圧V_battから、第一スイッチ10−1、一次巻き線2−1、IGBTトランジスタ4を横切って対地参照電位へと流れ始める。
【0127】
一次電圧V_prは、V_batt−Vds1の値から飽和電圧Vds_satへと移行し、一次巻き線2.1の第一端子の電圧はV_batt−Vds1に等しいままである。従って、一次巻き線2−1の両端の電圧降下はnull値からV_batt−Vds1−Vds_satの値へと移行する。更に、二次電圧V_secはnull値からN*(V_batt−Vds1−Vds_sat)の値へと移行する。
【0128】
t1からt2までの期間(t2は除く)の動作は、記載したt1の動作と同様であるが、以下の違いを有する。
【0129】
特に、
− 制御電圧信号S_ctrlは、(供給電圧VCCに等しい)高論理値に等しい値を維持し、IGBTトランジスタ4の閉鎖状態を維持する。
− 第一駆動信号S1_drvは低論理値を維持し、第一スイッチ10−1の閉鎖状態を維持する。
− 第二駆動信号S2_drv及び第三駆動信号S3_drvは低論理値を維持し、第二スイッチ10−2及び第三スイッチ10−3の開放状態を維持する。
− 一次巻き線2−1を流れる一次電流I_prは上昇傾向を有し、一次巻き線2−1にエネルギーを充電し続ける。
− 一次巻き線2−1の第一端子の電圧はV_batt−Vds1に等しいままである。
− 一次電圧V_prは、一次電流I_prが増加するので増加傾向を有する。
− 一次巻き線2−1の両端での電圧降下は減少傾向を有する。
− 二次電圧V_secは、N*(V_batt−Vds1)の値からN*(V_batt−Vds1−Vds_sat)への値へと減少傾向を有し、巻き数比Nの値より小さい一次電圧V_prの傾向に追随する傾向を有する。
【0130】
t2において、処理ユニット20は、(供給電圧VCCに等しい)高論理値から低論理値へと移行する点火信号S_acを発生し、これによって点火相の終了及び一次巻き線2−1から二次巻き線2−2へのエネルギー移動相の開始が示される。
【0131】
駆動ユニット5は、低論理値に等しい点火信号S_acを受け取り、IGBTトランジスタ4を開放する低論理値を有する制御電圧信号S_ctrlをIGBTトランジスタ4の制御端子で発生する(
図1Bの構成を参照)。
【0132】
更に、駆動ユニット5は、第一スイッチ10−1の閉鎖状態を維持する低論理値を有する第一駆動信号S1_drvを発生し、第二スイッチ10−2の開放状態を維持する低論理値を有する第二駆動信号S2_drvを発生し、第三スイッチ10−3の開放状態を維持する低論理値を有する第三駆動信号S3_drvを発生する(再び
図1Bの構成を参照)。
【0133】
IGBTトランジスタ4が開いているので、一次巻き線2−1を介したバッテリ電圧V_battからグラウンドへの電流I_chgは急峻に遮られるので、そのエネルギー(それまでに一次巻き線2−1に蓄えられていたエネルギー)が二次巻き線2−2に移動を開始する。
【0134】
この結果、一次電圧V_prは大きい値(典型的には200〜450V)で、かつ短い時間(典型的には数マイクロ秒)のパルスを有し、一次電流I_prは最大値Ipr_maxからnull値へと急峻に減少し、二次電流I_secはIsec_maxの値のパルスを有し、二次電圧V_secは非常に大きい値(例えば30KV)のパルスを有し、これによってスパークプラグ3の電極の両端でのスパークが開始される。
【0135】
尚、便宜上、一次電流I_prはt2において最大値Ipr_maxからnull値へと瞬時に移行するものと仮定したが、実際にはこのような移行は例えば2〜15マイクロ秒続く期間において発生する。この場合、二次電圧V_secの絶対値は、最大値に向かって大きな傾斜を有する上昇傾向を有し、二次電圧V_secの絶対値が最大値に到達する(従って一次電流I_prがnull値に到達する)と、スパークが発生する。
【0136】
t2からt3の間(t3は除く)の瞬時において、スパークプラグ3の電極間のスパークが維持され、従って、空気燃料混合物の燃焼が継続する。
【0137】
この動作は、t2において説明したものと同様であり、IGBTトランジスタ4、第一スイッチ10−1、第二スイッチ10−2と第三スイッチ10−3の位置はt2で示した位置と同じである。
【0138】
この結果、一次電流I_prの値は零に等しい値を維持する一方、二次電流は最大値Isec_maxから始まる減少傾向を有する。
【0139】
t3において、スパークプラグ3の電極間のスパークが維持され、従って、空気燃料混合物の燃焼が継続する。
【0140】
処理ユニット20は低論理値を有する点火信号S_acを発生し続け、駆動ユニット5は、IGBTトランジスタ4の開放状態を維持する低論理値を有する制御電圧信号S_ctrlを発生し続ける(
図2Aの構造を参照)。
【0141】
更に、駆動ユニット5は、第一スイッチ10−1を開放する低論理値から高論理値へと移行する第一駆動信号S1_drvを発生し、第二スイッチ10−2の開放状態を維持する低論理値を有する第二駆動信号S2_drvを発生し、第三スイッチ10−3の開放状態を維持する低論理値を有する第三駆動信号S3_drvを発生する(再び
図2Aの構成を参照)。
【0142】
尚、最初に(t2において)IGBTトランジスタ4を開いてその後(t3において)第一スイッチ10−1を開くのであって、即ち、制御信号S_ctrlと第一駆動信号S1_drvとは同時に切り替わるのではない。このように、(開放遅れが異なることによって)最初に第一スイッチ10−1を開いてその後にIGBTトランジスタ4を開いてしまうことのないようにする。
【0143】
IGBTトランジスタ4と第一スイッチ10−1とが開いているので、一次電流I_prはnull値を維持する。
【0144】
更に、二次電流I_secは減少傾向を有し続ける。
【0145】
t3からt4の間(t4は除く)の瞬時において、スパークプラグ3の電極間のスパークが維持され、従って、空気燃料混合物の燃焼が継続する。
【0146】
この動作は、t3において説明したものと同様であり、IGBTトランジスタ4、第一スイッチ10−1、第二スイッチ10−2と第三スイッチ10−3の位置はt3で示した位置と同じである。
【0147】
この結果、一次電流I_prはnull値を維持し、二次電流I_secは減少傾向を有し続ける。
【0148】
t4において、スパークプラグ3の電極間のスパークが維持され、従って、空気燃料混合物の燃焼が継続する。
【0149】
処理ユニット20は低論理値を有する点火信号S_acを発生し続け、駆動ユニット5は、IGBTトランジスタ4の開放状態を維持する低論理値を有する制御電圧信号S_ctrlを発生し続ける(
図2Bの構造を参照)。
【0150】
更に、駆動ユニット5は、第二スイッチ10−2を閉鎖する低論理値から高論理値へと移行する第二駆動信号S2_drvを発生し、第一スイッチ10−1の開放状態を維持する低論理値を有する第一駆動信号S1_drvを発生し続け、第三スイッチ10−3の開放状態を維持する低論理値を有する第三駆動信号S3_drvを発生し続ける(再び
図2Bの構成を参照)。
【0151】
IGBTトランジスタ4、第一スイッチ10−1及び第三スイッチ10−3が開いているので、一次電流I_prはnull値を維持する。
【0152】
更に、二次電流I_secは減少傾向を有し続ける。
【0153】
t4からt5の間(t5は除く)の瞬時において、スパークプラグ3の電極間のスパークが維持され、従って、空気燃料混合物の燃焼が継続する。
【0154】
この動作は、t4において説明したものと同様であり、IGBTトランジスタ4、第一スイッチ10−1、第二スイッチ10−2と第三スイッチ10−3の位置はt4で示した位置と同じである。
【0155】
この結果、一次電流I_prはnull値を維持し、二次電流I_secは減少傾向を有し続ける。
【0156】
t5において、駆動ユニット5は、二次電流I_secが電流閾値I_thの値に到達したことを検出し、第三スイッチ10−3を閉じる高論理値に等しい第三駆動信号S3_drvを発生する(
図3参照)。
【0157】
尚、第二スイッチ10−2と第三スイッチ10−3とは閉鎖遅れが異なっていてもよいので、最初に(t4において)第二スイッチ10−2を閉鎖してその後(t5において)第三スイッチ10−3を閉じ、駆動を最適化する。
【0158】
更に、駆動ユニットは、第一スイッチ10−1の開放状態を維持する高論理値に等しい第一駆動信号S1_drvを発生し続け、第二スイッチ10−2の閉鎖状態を維持する高論理値に等しい第二駆動信号S2_drvを発生し続け、IGBTトランジスタ4の開放状態を維持する低論理値に等しい制御信号S_ctrlを発生し続ける(再び
図3の構成を参照)。
【0159】
第一スイッチ10−1が開いており、第二スイッチ10−2と第三スイッチ10−3とが閉じており、IGBTトランジスタ4が開いているので、小さい値(例えば約250〜500mAの)分散電流I_ikの流れがスイッチ10−2、一次巻き線2−1、及びスイッチ10−3を流れ始める。二次巻き線2−2の残留エネルギー(
図4の第一ピークP1参照)が一次巻き線2−1において熱に変換されるために、一次巻き線2−1を介したこの分散電流I_ikの流れ(
図4のパルスI1を参照)によって、二次巻き線2−2を流れる二次電流I_secが瞬時に零になる。
【0160】
t6において、二次電流I_secの値がnull値であって、空気燃料混合物の燃焼中に発生したイオンに続いてスパークプラグの電極間で発生した電流の寄与を測定することが可能となるので、イオン化電流の測定が開始可能となる。
【0161】
従って、t6において電流測定回路6は、二次巻き線2−2を流れる電流I_ionの強度を測定する。
【0162】
駆動ユニット5は、イオン化電流I_ionの値を受け取って、t2からt5の間の瞬時に発生した空気燃料混合物の燃料過程を表すパラメータを、受け取った値に応じて生成する。
【0163】
特に、t6からt7の間の瞬時において、イオン化電流の測定相の化学相中に生成されたイオンによって発生した電流を表すイオン化電流I_ionの値の第二のピークP2を測定する。
【0164】
その後、t7からt10の間の瞬時において、イオン化電流の測定相の熱相中に生成されたイオンによって発生した電流を表すイオン化電流I_ionの強度を測定する。
【0165】
例えば、熱相間のイオン化電流I_ionの傾向は、空気燃料混合物の燃焼が起こったシリンダ内部の圧力値の傾向を表すものであるため、「ノッキング」振動が起こったかどうかが検出可能となる。
【0166】
t10において、第一点火サイクルは終了し、第二点火サイクルが開始する。
【0167】
第二点火サイクルの開始時(特にt11において)、駆動ユニット5は、第一スイッチ10−1を閉じる高論理値から低論理値へと移行する第一駆動信号S1_drvを発生する。このように、点火システム15は、IGBTトランジスタ4を閉じることによって、一次巻き線2−1でのエネルギー充電相を再始動させる準備ができる。
【0168】
本発明を説明するために、二次巻き線2−2がスパークプラグ3に接続された第一端子と電流測定回路6を介してグラウンドへと接続される第二端子とを有する場合について考えた。これに限らず、二次巻き線2−2がバッテリ電圧V_battに接続される第一端子と電流測定回路6を介してスパークプラグ3に接続される第二端子を有し、更にスパークプラグ3が対地参照電位へと接続される別の電極を有するような場合にも本発明は適用可能である。
【0169】
本発明の変形例によれば、電子点火システム15は、
− 複数のスパークプラグであって、それぞれが内燃機関のシリンダ上に搭載されるスパークプラグと、
− 複数の点火コイルであって、各コイルは複数のスパークプラグのうちの対応するプラグに接続される点火コイルと、
− 複数の高圧スイッチであって、各高圧スイッチは複数のコイルのうちの対応するコイルの一次巻き線に直列に接続される高圧スイッチと、を備える。
【0170】
この場合、点火システム1は、第一スイッチ10−1、第二スイッチ10−2、第三スイッチ10−3を備え、これらのスイッチは複数の点火コイルの複数の一次巻き線に接続される。
【0171】
言い換えると、単一の第一スイッチ10−1と、単一の第二スイッチ10−2と、単一の第三スイッチ10−3とを用いて、複数のコイルの全ての一次巻き線の端子の参照電圧V_refへの接続を行うことが可能となる。
【0172】
本発明の変形例において、
図4に示したイオン化電流I_ionは、内燃機関の複数のシリンダの各シリンダと関連する。
【0173】
本発明の別の目的は、コイル2を制御するための電子装置1である。
【0174】
この電子制御装置1は、
− コイルの一次巻き線2−1に直列に接続された高圧スイッチ4であって、高圧スイッチの開閉を制御するための信号S_ctrlを伝える制御端子I4cを有する高圧スイッチと、
− バッテリ電圧V_battと一次巻き線の第一端子との間に挿入される第一スイッチ10−1であって、第一スイッチの開閉を制御するための第一駆動信号S1_drvを伝える第一駆動端子I1cを有する第一スイッチと、
− 一次巻き線の第一端子と参照電圧との間に挿入される第二スイッチ10−2であって、第二スイッチの開閉を制御するための第二駆動信号S2_drvを伝える第二駆動端子I2cを有する第二スイッチと、
− 一次巻き線の第二端子と参照電圧との間に挿入される第三スイッチ10−3であって、第三スイッチの開閉を制御するための第三駆動信号S3_drvを伝える第三駆動端子I3cを有する第三スイッチと、
− 一次巻き線へのエネルギーの充電相の間に、
・ 高圧スイッチ4を閉じるための値を有する制御信号S_ctrlを発生し、
・ 第一スイッチ10−1を閉じるための値を有する第一駆動信号S1_drvを発生し、
・ 第二スイッチ10−2を開くための値を有する第二駆動信号S2_drvを発生し、
・ 第三スイッチ10−3を開くための値を有する第三駆動信号S3_drvを発生するように構成される駆動ユニット5と、を備え、
駆動ユニットは更に、コイルの一次巻き線から二次巻き線へのエネルギーの移動相の間に、
・ 高圧スイッチ4を開くための値を有する制御信号S_ctrlを発生し、
・ 第一スイッチ10−1を開くための値を有する第一駆動信号S1_drvを発生するように構成され、
駆動ユニット5は更に、エネルギー移動相に続くイオン化電流の測定相の間に、
・ 高圧スイッチ4を開くための値を有する制御信号を発生し、
・ 第一スイッチ10−1を開くための値を有する第一駆動信号を発生し、
・ 第二スイッチ10−2を閉じるための値を有する第二駆動信号を発生し、
・ 第三スイッチ10−3を閉じるための値を有する第三駆動信号を発生する、ように構成される。
【0175】
参照電圧の値は対地参照電位であることが好ましい。
【0176】
電子制御装置1の駆動ユニット5は更に、エネルギー移動相の最後に、二次巻き線2−2を流れる二次電流I_secの値が電流閾値I_thと等しくなったことを検出するよう構成し、そこから、第三スイッチ10−3を閉じるための値を有する第三駆動信号S3_drvを発生するよう構成されることが好ましい。
【0177】
本発明の別の目的は、内燃機関の電子点火を制御するための方法である。
【0178】
この方法は、
a) 一次巻き線2−1とスパークプラグ3に接続された二次巻き線2−2とを有するコイル2を設け、一次巻き線2−1に直列に接続された高圧スイッチ4を設けるステップと、
b) バッテリ電圧V_battと一次巻き線2−1の第一端子との間に第一スイッチ10−1を挿入するステップと、
c) 一次巻き線の第一端子と参照電圧との間に第二スイッチ10−2を挿入するステップと、
d) 一次巻き線の第二端子と参照電圧との間に第三スイッチ10−3を挿入するステップと、
e) 一次巻き線2−1へのエネルギーの充電相の間に、高圧スイッチ4と第一スイッチ10−1とを閉じ、第二スイッチ10−2と第三スイッチ10−3とを開くステップと、
f) 一次巻き線2−1から二次巻き線2−2へのエネルギー移動相の間に、高圧スイッチ4を開き、第一スイッチ10−1を開き、第二スイッチ10−2を閉るステップと、
g) イオン化電流の測定相の間に、第三スイッチ10−3を閉じる、ステップとを備える。