特許第6756761号(P6756761)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6756761ロボットを用いた生産方法および生産システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6756761
(24)【登録日】2020年8月31日
(45)【発行日】2020年9月16日
(54)【発明の名称】ロボットを用いた生産方法および生産システム
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/08 20060101AFI20200907BHJP
【FI】
   B25J13/08 Z
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-60339(P2018-60339)
(22)【出願日】2018年3月27日
(65)【公開番号】特開2019-171502(P2019-171502A)
(43)【公開日】2019年10月10日
【審査請求日】2019年8月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】酒井 保
【審査官】 田村 耕作
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−009690(JP,A)
【文献】 特開平09−225871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
力覚センサを備えるロボットの先端に装着されたハンドによりワークを把持し、把持した前記ワークの対象平面を均等な圧力分布で目標平面に押し当てる作業を行う生産方法であって、
前記ハンドが、前記対象平面に直交する2つの面において、前記ワークを幅方向に挟んで把持する一対の把持片と、前記対象平面とは前記ワークの反対側に位置する被押圧面に突き当たる押圧面とを備え、
前記ハンドにより前記ワークを把持する際に、把持位置近傍において前記押圧面を前記被押圧面に突き当て、
前記力覚センサにより検出された力に基づいて、前記押圧面内に配置される軸線回りのモーメントが平衡する姿勢まで前記ロボットを動作させ、
前記モーメントが平衡した位置で、前記ハンドの2つの前記把持片により前記ワークを把持し、
前記対象平面を前記目標平面に一致させる姿勢に前記ロボットを動作させる生産方法。
【請求項2】
前記対象平面を前記目標平面に一致させる姿勢に前記ロボットを動作させる前に、
前記目標平面に平行な位置決め平面に前記対象平面を一致させる姿勢の前記ロボットを動作させ、
その後、前記位置決め平面から前記目標平面に前記ワークの姿勢を維持しながら前記ロボットを動作させる請求項1に記載の生産方法。
【請求項3】
前記目標平面が、研磨加工を行う研磨装置の研磨面であり、
前記対象平面が、被研磨面である請求項1または請求項2に記載の生産方法。
【請求項4】
前記目標平面が、前記ワークが接着される被接着面であり、
前記対象平面が、接着面である請求項1または請求項2に記載の生産方法。
【請求項5】
力覚センサを備えるロボットと、
該ロボットの先端に装着され、ワークを把持するハンドと、
前記ロボットを制御する制御装置とを備え、
前記ハンドが、前記ワークの対象平面に直交する2つの面において、前記ワークを幅方向に挟んで把持する一対の把持片と、前記対象平面とは前記ワークの反対側に位置する被押圧面に突き当たる押圧面とを備え、
前記制御装置が、前記ハンドにより前記ワークを把持する際に、把持位置近傍において前記押圧面を前記被押圧面に突き当て、前記力覚センサにより検出された力に基づいて、前記押圧面内に配置される軸線回りのモーメントが平衡する姿勢まで前記ロボットを動作させ、前記モーメントが平衡した位置で、前記ハンドの2つの前記把持片により前記ワークを把持した後、前記対象平面を目標平面に一致させる姿勢に前記ロボットを動作させる生産システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットを用いた生産方法および生産システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、表面形状が変化するワークに対し、手先に工具を取り付けたロボットを、手先に取り付けた力覚センサにより検出された力信号に基づいて制御することにより、表面形状に倣って工具を移動させる加工システムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−41992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ロボットの先端に装着したハンドによりワークを把持し、把持したワークを工具に押し付けて表面の加工等を行う場合には、ハンドの把持力が低いため、加工時に力覚センサにより検出された力信号に基づいてロボットを制御しても精度よく加工等することができない場合がある。
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、把持力の低いハンドにより把持した場合であってもワークを精度よく加工等することができるロボットを用いた生産方法および生産システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、力覚センサを備えるロボットの先端に装着されたハンドによりワークを把持し、把持した前記ワークの対象平面を均等な圧力分布で目標平面に押し当てる作業を行う生産方法であって、前記ハンドが、前記対象平面に直交する2つの面において、前記ワークを幅方向に挟んで把持する一対の把持片と、前記対象平面とは前記ワークの反対側に位置する被押圧面に突き当たる押圧面とを備え、前記ハンドにより前記ワークを把持する際に、把持位置近傍において前記押圧面を前記被押圧面に突き当て、前記力覚センサにより検出された力に基づいて、前記押圧面内に配置される軸線回りのモーメントが平衡する姿勢まで前記ロボットを動作させ、前記モーメントが平衡した位置で、前記ハンドの2つの前記把持片により前記ワークを把持し、前記対象平面を前記目標平面に一致させる姿勢に前記ロボットを動作させる生産方法である。
【0006】
本態様によれば、ロボットの先端に装着されたハンドによってワークを把持する際に、ハンドの押圧面をワークの被押圧面に突き当てるこれにより、ワークからハンドに力が作用するので、その力がロボットに備えられた力覚センサにより検出される。そして、検出された力に基づいて、押圧面内に配置される軸線回りのモーメントが算出され、モーメントが平衡する姿勢までロボットが動作させられる。この状態で2つの把持片によってワークを幅方向に把持し、対象平面を目標平面に一致する姿勢までロボットを動作させることにより、ワークの対象平面を目標平面に均等な圧力分布で押し付ける作業を行うことができる。
【0007】
すなわち、ハンドによってワークを把持する際に、ハンドの姿勢をワークの形状に合わせて調整するので、形状精度の低いワークを把持力の低いハンドによって把持する場合であっても、ワークの対象平面を目標平面に均等な圧力分布で押し付ける作業を行うことができる。
【0008】
上記態様においては、前記対象平面を前記目標平面に一致させる姿勢に前記ロボットを動作させる前に、前記目標平面に平行な位置決め平面に前記対象平面を一致させる姿勢の前記ロボットを動作させ、その後、前記位置決め平面から前記目標平面に前記ワークの姿勢を維持しながら前記ロボットを動作させてもよい。
この構成により、ワークを把持する際に、ワークが載置されている平面と目標平面とが平行ではない場合に、目標平面に平行な位置決め平面においてハンドの姿勢を決定し、位置決め平面から目標平面にワークの姿勢を維持しながらロボットを動作させるだけで、簡易にワークの対象平面を目標平面に均等な圧力分布で押し付ける作業を行うことができる。
【0009】
また、上記態様においては、前記目標平面が、研磨加工を行う研磨装置の研磨面であり、前記対象平面が、被研磨面であってもよい。
この構成により、形状精度の低いワークであり、かつ、把持力の低いハンドであっても、ワークの被研磨面を均等な圧力分布で研磨装置の研磨面に押し当てて、精度よく研磨加工を行うことができる。
【0010】
また、上記態様においては、前記目標平面が、前記ワークが接着される被接着面であり、前記対象平面が、接着面であってもよい。
この構成により、形状精度の低いワークであり、かつ、把持力の低いハンドであっても、ワークの接着面を均等な圧力分布で被接着面に押し当てて、精度よく接着作業を行うことができる。
【0011】
また、本発明の他の態様は、力覚センサを備えるロボットと、該ロボットの先端に装着され、ワークを把持するハンドと、前記ロボットを制御する制御装置とを備え、前記ハンドが、前記ワークの対象平面に直交する2つの面において、前記ワークを幅方向に挟んで把持する一対の把持片と、前記対象平面とは前記ワークの反対側に位置する被押圧面に突き当たる押圧面とを備え、前記制御装置が、前記ハンドにより前記ワークを把持する際に、把持位置近傍において前記押圧面を前記被押圧面に突き当て、前記力覚センサにより検出された力に基づいて、前記押圧面内に配置される軸線回りのモーメントが平衡する姿勢まで前記ロボットを動作させ、前記モーメントが平衡した位置で、前記ハンドの2つの前記把持片により前記ワークを把持した後、前記対象平面を前記目標平面に一致させる姿勢に前記ロボットを動作させる生産システムである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る生産システムを示す全体構成図である。
図2図1の生産システムのロボットに取り付けられたハンドおよび力覚センサを示す部分的な斜視図である。
図3図1の生産システムにより加工される標準的なワークを示す斜視図である。
図4図3のワークに対して上面が傾斜しているワークを示す斜視図である。
図5図4のワークの把持位置近傍にハンドを配置した状態を示す部分的な斜視図である。
図6図3のワークを把持した場合の被研磨面に発生する圧力分布を示す模式図である。
図7】本発明の一実施形態に係るロボットを用いた生産方法の一例を示すフローチャートである。
図8図4のワークを把持する際にワークの上面に押圧面を押し当てたときの被研磨面に発生する圧力分布を示す模式図である。
図9図8の状態からモーメントが平衡するようにロボットの姿勢を変化させた状態を示す部分的な斜視図である。
図10図9の状態において被研磨面に発生する圧力分布を示す模式図である。
図11図9のハンドの姿勢を維持しつつベルトサンダーまでワークを移動させた研磨加工を説明する部分的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態に係るロボット2を用いた生産方法および生産システム1について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る生産方法は、ハンド4によって把持したワークWの被研磨面(対象平面)W1を研磨装置6の研磨面(目標平面)6aに押し付けて、ワークWの被研磨面W1の研磨加工を行う方法である。
【0014】
本実施形態に係る生産システム1は、図1に示されるように、ロボット2と、ロボット2を制御する図示しない制御装置と、ロボット2の先端に取り付けられた力覚センサ3と、該力覚センサ3を介在させてロボット2の先端に取り付けられたハンド4と、ワークWを載置する載置台5と、ワークWの被研磨面W1を研磨するベルトサンダー(研磨装置)6とを備えている。ロボット2は、図1に示す例では、垂直多関節型のロボットであり、アーム21の先端に配置された手首22の先端には、力覚センサ3およびハンド4が取り付けられている。
【0015】
力覚センサ3は、ロボット2の手首22の前方に、図2および図6に示されるように、ハンド4に固定されたツール先端点(TCP)に設定されたxyz座標の各軸方向の力および各軸回りのモーメントを検出する。
ハンド4は、力覚センサ3に固定されるブラケット7に、シリンダ8によって開閉可能に支持された2つの把持片9を備えている。把持片9には、各把持片9の先端から基端側に所定の間隔をあけた位置に、2つの把持片9の対向面から、xy平面に平行に、片持ち梁状に延びる押圧面部材10が設けられている。
【0016】
ハンド4によって把持するワークWとしては、図3に示されるように、直方体からなるワークWを想定している。このようなワークWを把持する際には、図5に示されるように、載置台5の載置面5aに被研磨面W1を下向きにして置かれたワークWの上方からハンド4を近接させ、シリンダ8によって間隔を広げられた2つの把持片9を、ワークWをx軸方向(幅方向)に挟む位置に配置する。
【0017】
そして、図6に示されるように、各把持片9に設けられた押圧面部材10の先端側の面(押圧面)10aをワークWの上面(被押圧面)W2に押し当てる。この状態で、把持片9を閉じることにより、2つの把持片9によってワークWをx軸方向に挟み、摩擦によって把持することができる。TCPは、押圧面10aを含む平面内の2枚の把持片9の間の中央位置に配置されることが好ましい。
【0018】
このようにして、ハンド4により把持されたワークWは、被研磨面W1をベルトサンダー6の研磨面6aに密着させることにより、被研磨面W1に均等な圧力分布を与えて、均一に研磨加工を行うことができる。
【0019】
制御装置は、予め教示された動作プログラムに従ってロボット2を動作させるとともに、載置台5に載置されているワークWを把持する際には、ロボット2に以下の動作を行わせる。
本実施形態に係るロボット2を用いた生産方法は、図7に示されるように、まず、ロボット2を動作させてワークWを把持する位置にハンド4を配置する(ステップS1)。具体的には、ハンド4をワークWの鉛直上方から近接させ、シリンダ8によって把持片9を開いた状態で2つの把持片9を、x軸方向にワークWを挟む位置に配置する。
【0020】
次いで、ハンド4を鉛直下方に移動させて、把持片9に設けられた押圧面部材10の押圧面10aをワークWの上面W2に押し当てる(ステップS2)。この状態で、力覚センサ3により検出されたxyz各軸回りのモーメントが平衡する姿勢にロボット2を動作させる(ステップS3)。図3に示されるように、ワークWが正確な直方体形状を有している場合、各軸回りのモーメントは発生せず平衡している。
【0021】
しかしながら、ワークWの形状精度が低い場合、例えば、図4に示されるように、ワークWの上面W2がy軸方向に傾斜している場合には、押圧面10aがワークWの上面W2に突き当たる初期状態では、図8に示されるように、片当たり状態となってx軸回りにモーメントが発生する。このような場合、制御装置はロボット2を制御してモーメントが小さくなる方向にロボット2の姿勢を変化させる。
すなわち、制御装置は、図9および図10に示されるように、押圧面10a全体がワークWの上面W2に接触して、ワークWからの反力を受けることにより、x軸回りのモーメントが平衡する姿勢までロボット2を動作させる。
【0022】
この状態から制御装置は、ハンド4を作動させて把持片9の間にワークWを挟んだ状態に把持する(ステップS4)。そして、制御装置は、図11に示されるように、ワークWの被研磨面W1を、ベルトサンダー6の研磨面6aに一致する位置までロボット2を動作させる(ステップS5)。この場合の移動経路および移動経路におけるロボット2の姿勢は任意でよいが、載置台5の載置面5aとベルトサンダー6の研磨面6aとが平行である場合には、ハンド4の姿勢を維持したまま並進移動させることが好ましい。
そして、この状態から研磨面6aに直交する方向にワークWを下降させることにより、ワークWの被研磨面W1をベルトサンダー6の研磨面6aに均等な圧力分布で押し付けることができ、均一な研磨加工を行うことができるという利点がある。
【0023】
上記構成を有する本実施形態に係るロボット2を用いた生産方法および生産システム1によれば、ベルトサンダー6による研磨加工中に検出するモーメントによってロボット2の姿勢を調節するのではなく、ハンド4によってワークWを把持する際にモーメントが平衡する姿勢にロボット2を動作させるので、研磨加工の開始時から、被研磨面W1を研磨面6aに片当たりさせることなく、均一に研磨することができる。
【0024】
すなわち、形状精度の低いワークWであり、かつ、把持力の低いハンド4であっても、ワークWの被研磨面W1を均等な圧力分布で研磨装置6の研磨面6aに押し当てて、精度よく研磨加工を行うことができるという利点がある。
【0025】
なお、本実施形態においては、載置台5の載置面5aとベルトサンダー6の研磨面6aとが平行である場合を例示したが、平行ではない場合には、ベルトサンダー6の近傍に、研磨面6aと平行な上面(位置決め平面)を有する仮置き台を用意し、該仮置き台に押し付けて被研磨面W1を研磨面6aと平行に調整してからワークWを並進移動させてベルトサンダー6まで移動させることにしてもよい。
【0026】
また、本実施形態においては、ワークWの対象平面を被研磨面W1として、ベルトサンダー6によって研磨する場合を例示したが、これに代えて、ワークWの対象平面(接着面)を他の部材の表面(被接着面)に接着する場合のように、均一な圧力分布で押圧して接着させる生産方法および生産システム1に適用してもよい。また、ワークWの対象平面を目標平面に、均一な圧力分布で押し付ける他の任意の生産方法および生産システム1に適用してもよい。
また、ロボット2としては、垂直多関節型以外の任意の形式のロボットを採用してもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 生産システム
2 ロボット
3 力覚センサ
4 ハンド
6 ベルトサンダー(研磨装置)
6a 研磨面(目標平面)
9 把持片
10a 面(押圧面)
W ワーク
W1 被研磨面(対象平面)
W2 上面(被押圧面)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11