(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書に開示する音響装置は、片耳ごとに少なくとも合計3つの放射面を有する、音響トランスデューサのアレイを有する。これらの放射面は、通常、快適性を向上させるために耳に近接している(例えば、100〜200mm以内)が、耳から離れており、その結果、装着者は会話及び他の環境音を聞くことができる。コントローラは、トランスデューサに制御信号を提供する。この制御信号は、トランスデューサのそれぞれの相対位相及び相対振幅を独立して制御する。これにより、音響装置の出力が、耳における所望の音圧レベル(SPL)、音響環境、及び放射音響パワーを抑制する必要性に関するユーザーの要求を満たすように調整され得る。
【0005】
以下のすべての例及び特徴は、技術的に可能な任意の方法で組み合わせることができる。
【0006】
一態様では、ユーザーの身体に装着されるように適合されている音響装置は、少なくとも3つの音響放射面を備える音響トランスデューサのアレイを含む。トランスデューサのそれぞれの相対位相及び相対振幅を独立して制御するアレイ制御信号を提供するように適合されているコントローラが存在する。トランスデューサは、「単極子」、「双極子」、又は「四極子」トランスデューサのうちの1つ又は2つ以上を含み得、形容詞は、低周波における放射の多重極展開の優先項を指す。数学上は、音響放射パターンは、当該技術分野において周知である多重極展開に分解され得る。例えば、Pierce,Allan D.,「Acoustics:An introduction to its Physical Principles and Applications」,Acoustical Society of America,1989,equation(4〜4.12),p.170を参照されたい。「単極子トランスデューサ」は、その結果、純体積変位(振動可能な構造体の後側が密封エンクロージャ内にあるときなど)が原因で主として放射するものであり、「双極子トランスデューサ」は、実質的にゼロの純体積変位を有し、その結果、その放射では第2項の多重極展開が優先されるものであり、「四極子トランスデューサ」は、更により高い項が、周波数の下限で、つまり(円形トランスデューサの直径など)トランスデューサの特徴的な寸法よりも波長が著しく長い場合に放射で優先されるものである。
【0007】
実施形態は、下記の特徴のうちの1つ、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。音響トランスデューサのアレイは、第1及び第2双極子トランスデューサを備えてよく、それぞれのかかる双極子トランスデューサは、対向する前側及び後側を有する振動可能な構造体を備える。第1双極子トランスデューサは、第2双極子トランスデューサよりもユーザーの第1耳の予測位置に近接してよい。制御信号は、周波数依存であってよい。制御信号は、少なくとも音響装置の第1周波数範囲にわたって、第1双極子トランスデューサの振幅に対して第2双極子トランスデューサ振幅を変更してよい(例えば、低減する)。第2双極子トランスデューサのサイズは、第1双極子トランスデューサと異なってよい(より小さい、又はより大きい)。制御信号は、互いに対して第1及び第2双極子トランスデューサの位相を変化させてよい。音響トランスデューサのアレイは、対向する前側及び後側を有する振動可能な構造体を備える、第3双極子トランスデューサを更に備えてよい。音響装置は、少なくとも1つの双極子トランスデューサの放射面に音響結合されている管を更に備えて、ユーザーの耳の予測位置により近接した音を伝えてよい。
【0008】
実施形態は、下記の特徴のうちの1つ、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。音響トランスデューサのアレイは、少なくとも3つの単極子トランスデューサを備え、それぞれ単一の音響放射面を備えてよい。音響トランスデューサのアレイは、軸に沿って概ね配置される4つの単極子トランスデューサを備えてよく、第1単極子トランスデューサは、ユーザーの第1耳の予測位置に最も近接し、第2単極子トランスデューサは第1単極子トランスデューサに近接し、第3単極子トランスデューサは第2単極子トランスデューサに近接し、第4単極子トランスデューサは第3単極子トランスデューサに近接する。音響装置の動作周波数範囲の少なくとも大部分にわたって、制御信号は、第1及び第3単極子トランスデューサの位相を、第2及び第4単極子トランスデューサの位相の逆にしてよい。音響装置の動作周波数範囲の少なくとも大部分にわたって、制御信号は、第2及び第3単極子トランスデューサに、第1及び第4単極子トランスデューサの振幅よりも大きい振幅をそれぞれ有させてよい。音響装置の動作周波数範囲の少なくとも大部分にわたって、制御信号は、第2単極子トランスデューサに最も高い振幅を有させ、第3単極子トランスデューサに次に高い振幅を有させ、第1単極子トランスデューサに次に高い振幅を有させ、第4単極子トランスデューサに最も低い振幅を有させてよい。ある特定の非限定的な実施例では、約50Hzの周波数において、制御信号は、第1、第2、及び第3単極子トランスデューサに同一位相を有させ、第4単極子トランスデューサに逆位相を有させ、約120Hzの周波数において、制御信号は、第1及び第2単極子トランスデューサに同位相を有させ、第3及び第4単極子トランスデューサに逆位相を有させてよく、約300Hzの周波数において、制御信号は、第1及び第4単極子トランスデューサに同位相を有させ、第2及び第3単極子トランスデューサに逆位相を有させてよく、約1kHzの周波数において、制御信号は、第1及び第3単極子トランスデューサに同位相を有させ、第2及び第4単極子トランスデューサに逆位相を有させてよい。
【0009】
実施形態は、下記の特徴のうちの1つ、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。第1放射面は、第2放射面よりもユーザーの耳の予測位置に近接してよい。アレイは、対向する前側及び後側を有する振動可能な構造体を備える、少なくとも1つの双極子トランスデューサと、単一の音響放射面を備える、少なくとも1つの単極子トランスデューサと、を備えてよい。アレイは、少なくとも1つの双極子トランスデューサと、単一の音響放射面及びバックキャビティをそれぞれ備える、少なくとも2つの単極子トランスデューサと、を備えてよい。バックキャビティは、互いに音響結合されてよい。音響装置は、少なくとも1つの単極子トランスデューサの放射面に音響結合されている管を更に含んで、放射音を別の位置に伝えてよい。
【0010】
実施形態は、下記の特徴のうちの1つ、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。制御信号は、周波数範囲内でトランスデューサアレイの1つ又は2つ以上のトランスデューサの寄与を減少させてよい、又は排除してよい。例えば、より小型のトランスデューサは、漏れの低減に使用され得るが、より高い周波数においてのみ使用され得る。制御信号は、トランスデューサの振幅及び位相のうちの少なくとも1つを制御してよく、この制御は、周囲雑音レベルに応じてよいが、必ずしも応じるわけではない。アレイは、異なるサイズのトランスデューサを備えてよい。アレイは、少なくとも2つの音響トランスデューサを備えてよく、第1音響トランスデューサのサイズは、第2音響トランスデューサよりも小さい。第1音響トランスデューサは、第2音響トランスデューサよりもユーザーの耳の予測位置から遠くに位置してよい、又は第1音響トランスデューサは、第2音響トランスデューサよりもユーザーの耳の予測位置に近接して位置してよい。放射面によって放射される音を伝えるように、トランスデューサの放射面に音響結合されている管が存在してよい。この管は、放射面自体の位置よりもユーザーの耳の予測位置に近接して位置する開口部を有してよい。
【0011】
実施形態は、下記の特徴のうちの1つ、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。第1周波数範囲において、制御信号は、音響トランスデューサのアレイに単極子とほぼ同様に動作させてよく、第1周波数範囲よりも高い第2周波数範囲において、制御信号は、音響トランスデューサのアレイに双極子とほぼ同様に動作させてよく、第1及び第2周波数範囲よりも高い第3周波数範囲において、制御信号は、音響トランスデューサのアレイに四極子とほぼ同様に動作させてよい。第1、第2、及び第3周波数範囲よりも高い第4周波数範囲において、制御信号は、音響トランスデューサのアレイに四極子よりも高次の多極子とほぼ同様に動作させてよい。
【0012】
別の態様では、ユーザーの身体に装着されるように適合されている音響装置は、少なくとも3つの音響放射面を備える音響トランスデューサのアレイであって、異なるサイズのトランスデューサを備えるアレイと、トランスデューサのそれぞれの相対位相及び相対振幅を独立して制御するアレイ制御信号を提供するように適合されているコントローラと、を含み、制御信号は、周囲雑音レベルに応じてトランスデューサの振幅及び位相のうちの少なくとも1つを制御してよい。
【0013】
別の態様では、ユーザーの身体に装着されるように適合されている音響装置は、耳から異なる距離に概ね配置される、少なくとも3つの単極子トランスデューサを備える音響トランスデューサのアレイであって、第1単極子トランスデューサは、ユーザーの第1耳の予測位置に最も近接し、第2単極子トランスデューサは第1単極子トランスデューサに近接し、第1単極子トランスデューサよりも耳から遠く、第3単極子トランスデューサは第2単極子トランスデューサに近接し、第2単極子トランスデューサよりも耳から遠い、アレイと、トランスデューサのそれぞれの相対位相及び相対振幅を独立して制御するアレイ制御信号を提供するように適合されているコントローラと、を含み、制御信号は、第2単極子トランスデューサに第1及び第3単極子トランスデューサの振幅よりも大きい振幅を有させ、制御信号は更に、第2単極子トランスデューサに第1及び第3単極子トランスデューサの位相と逆である位相を有させる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】音響装置の例示的なトランスデューサアレイを示す。
【
図3A】耳において等しい音響レベルについての、単体の単極子によって放射されるパワーに対するいくつかのトランスデューサアレイの放射パワーのプロットである。
【
図3B】トランスデューサアレイのうちの1つについて、フィルタで達成されるトランスデューサの相対振幅及び相対位相を示す。
【
図3C】トランスデューサアレイのうちの1つについて、フィルタで達成されるトランスデューサの相対振幅及び相対位相を示す。
【
図4A】耳において等しい音響レベルについての、いくつかのトランスデューサアレイの相対放射パワーのプロットである。
【
図4B】トランスデューサアレイのうちの1つについて、フィルタで達成されるトランスデューサの相対振幅及び相対位相を示す。
【
図4C】トランスデューサアレイのうちの1つについて、フィルタで達成されるトランスデューサの相対振幅及び相対位相を示す。
【
図5】音響装置の例示的なトランスデューサアレイを示す。
【
図6A】耳において等しい音響レベルについての、いくつかのトランスデューサアレイの相対放射パワーのプロットである。
【
図6B】トランスデューサアレイのうちの1つについて、フィルタで達成されるトランスデューサの相対振幅及び相対位相を示す。
【
図6C】トランスデューサアレイのうちの1つについて、フィルタで達成されるトランスデューサの相対振幅及び相対位相を示す。
【
図7】音響装置の例示的なトランスデューサアレイを示す。
【
図8A】耳において等しい音響レベルについての、いくつかのトランスデューサアレイの相対放射パワーのプロットである。
【
図8B】トランスデューサアレイのうちの1つについて、フィルタで達成されるトランスデューサの相対振幅及び相対位相を示す。
【
図8C】トランスデューサアレイのうちの1つについて、フィルタで達成されるトランスデューサの相対振幅及び相対位相を示す。
【
図9】音響装置の例示的なトランスデューサアレイを示す。
【
図10A】耳において等しい音響レベルについての、いくつかのトランスデューサアレイの相対放射パワーのプロットである。
【
図10B】トランスデューサアレイのうちの1つについて、フィルタで達成されるトランスデューサの相対振幅及び相対位相を示す。
【
図10C】トランスデューサアレイのうちの1つについて、フィルタで達成されるトランスデューサの相対振幅及び相対位相を示す。
【
図11A】耳において等しい音響レベルについての、いくつかのトランスデューサアレイの相対放射パワーのプロットである。
【
図11B】トランスデューサアレイのうちの1つについて、フィルタで達成されるトランスデューサの相対振幅及び相対位相を示す。
【
図11C】トランスデューサアレイのうちの1つについて、フィルタで達成されるトランスデューサの相対振幅及び相対位相を示す。
【
図12】音響装置の例示的なトランスデューサアレイを示す。
【
図13A】耳において等しい音響レベルについての、いくつかのトランスデューサアレイの相対放射パワーのプロットである。
【
図13B】トランスデューサアレイのうちの1つについて、フィルタで達成されるトランスデューサの相対振幅及び相対位相を示す。
【
図13C】トランスデューサアレイのうちの1つについて、フィルタで達成されるトランスデューサの相対振幅及び相対位相を示す。
【
図14】音響装置の例示的なトランスデューサアレイを示す。
【
図15】音響装置の例示的なトランスデューサアレイを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示は、合わせて少なくとも3つの放射面を有する、音響トランスデューサのアレイを備える、身体装着型音響装置を説明する。両耳に音を提供するために使用されるとき、装置の両側は、かかる音響トランスデューサのアレイを備える。トランスデューサは、耳に相対的に近接するが、接触はしない。非限定的な実施例では、装置は、頭部に装着され得る(例えば、トランスデューサがオフザイヤー型ヘッドホン(off-the-ear headphone)などでのようにヘッドバンドによって支持される)、又は身体、具体的には首/肩領域に装着され得、トランスデューサは上、概ね耳の方向を向く。
【0016】
音響装置によって、トランスデューサのそれぞれの相対位相及び相対振幅を独立して制御できる。この装置は、耳に届けられるSPLを最大化でき、その一方で、耳におけるSPLに対する遠距離場への総放射音響パワー(本明細書では、「漏れ」とも呼ぶ)を最小化する。
【0017】
この装置により、音響装置は、耳から離れて位置しつつも、耳に高品質の音響を提供し得、同時に、音響装置のユーザーの近くに偶然居合わせ得る他人に聞こえ得る遠距離場の高周波音を抑制する。したがって、音響装置は、静かな環境においても、開放型ヘッドホンとして有効に動作し得る。目的は、ユーザーが、耳が覆われない状態を維持しつつ、音楽を聴くなど「個人的な」音響経験を有することを可能にすることである。目標は、耳において所望の音響信号(例えば、音楽)を発生させつつ、環境に放射される音を最小化することである。この「音漏れ」を低減することにより、音響装置は、より幅広い環境で使用され得、隣人の迷惑を低減し、ユーザーのプライバシーを増加させる。
【0018】
本音響装置で使用され得る音響トランスデューサのタイプ又は構成は多数存在し、本開示は、いかなる特定のタイプ又は構成のトランスデューサにも限定されない。非限定的な実施例の2つのタイプのトランスデューサとして、1つのタイプは単一の放射面を有する。これは、振動可能な構造体(例えば、「スピーカーコーン」)の後側を封止された空間部で被覆することにより達成され得る。より低い周波数において、かかるスピーカーは、実質的に単極子として放射する。つまり、音は、全方向にほぼ等しく放射される。本明細書の図面のいくつかでは、単極子は、上部放射面を有する、短い、スクワットシリンダとして概略的に示される。単極子は全方向に放射するため、放射面が向いている方向は概ね問題にならない。重要なことは、空間における放射面の位置である。単極子に関する潜在的な1つの問題は、バックボリュームが小さい場合、システムは硬直的であり、パワーの使用に関して非効率なことである。
【0019】
別のタイプのトランスデューサは、2つの放射面を有する、振動可能な構造体を備える。基本的に、放射構造体(例えば、コーン)の対向する前側及び後側は、どちらも雰囲気に対して開口している。これらは、本明細書の図面において、幅広い、薄型シリンダーとして概略的に示されることもある。より低い周波数において、かかるトランスデューサは、ほぼ双極子として放射する。かかるトランスデューサは本明細書に記載の用途にとって非常に有用であり得る。これは、背圧をほとんど有さず、既に1次に対して「低漏れ」であるためである。
【0020】
単一双極子トランスデューサ、又は共通バックボリュームを共有する2つの放射面を有する(したがって、単一双極子のように効率的に動作する)2つの単極子トランスデューサで達成され得るよりも漏れを低減するために、本明細書に記載の音響装置は、好ましくは四極子音響放射器を含む。かかるアレイは、概ね各耳に近接するが、耳上ではない位置に位置する。ただし、片耳用装置は、片耳の近くに位置する単一アレイを有し得る。アレイ制御信号は、トランスデューサのそれぞれの相対位相及び相対振幅を独立して制御するために使用される。制御信号は、耳において所望の音圧信号を生じさせ、一方では環境に放射される音を低減する(好ましくは最小化する)のに有効である。
【0021】
音響装置10(
図1)は、トランスデューサ12及び14を備える音響トランスデューサアレイ11を含む。トランスデューサ12は、F1側に面する1つの放射面と、R側に面する、第2の対向する放射面と、を有する。同様に、トランスデューサ14は、F2側に面する1つの放射面と、R側に面する、第2の対向する放射面と、を有する。トランスデューサ12及び14は、それぞれ概ね双極子トランスデューサとして機能する。トランスデューサアレイ11は、スタンドオフ24によってユーザーの頭部Hに結合されている、ヘッドバンド22によって支持される。ヘッドバンド22は、トランスデューサ12及び14が耳E1に近接するものの、接触はしないように構成され、配置される。ほとんどのヘッドホンでは、第2トランスデューサアレイ11は第2耳E2に近接するものの、接触はしないであろうことに留意されたい。コントローラ20は、トランスデューサ12及び14のそれぞれの相対位相及び相対振幅を独立して制御するトランスデューサアレイ制御信号を提供するように適合される。
【0022】
例えば、同位相の面が互いに面し、逆位相の面が互いに反対方向に面する、2つの同一の双極子放射器を隣同士に配置することにより、四極子音響放射器をほぼ達成するように2つの双極子を配置することが可能である。
図2は、耳Eに近接して位置するトランスデューサアレイ30の双極子トランスデューサ32及び34を含む簡略化された実施例を示す。この図及びトランスデューサアレイを示す他の図では、トランスデューサの相対位相は、少なくとも1つの非限定的な実施例において、トランスデューサ放射面に直交する方向の矢印で示される。矢印が指す方向は、1つの位相(例えば、+)を示してよく、反対方向は逆位相(例えば、−)を示してよい。この近似した四極子30が空間に位置し、面又は物体(例えば、耳又は頭部)が付近にない場合、双極子よりも著しく少ない音響エネルギーを遠距離場に放射する。
【0023】
しかしながら、頭部の存在が、上記の自由空間シナリオを複雑化する。これは、音がそれから反射し、その周りで回折するためである。より良好に漏れを低減するためには、外側双極子34(耳から遠い方の双極子)の振幅を、耳により近接する内側双極子32の振幅と比較して変更する必要がある。ほとんどの場合、外側双極子34では振幅を低減する必要がある。また、本明細書の別の箇所で詳述するように、より高い周波数において、2つの双極子の相対位相を変更することにより、漏れが更に低減され得る。2つの双極子トランスデューサの振幅及び位相の制御を達成するために、コントローラは、内側双極子に対して外側双極子の振幅及び位相を制御する周波数依存機能(すなわち、フィルタ)を達成し得る。実験又はモデリングを通じて、適切なフィルタが外側双極子トランスデューサ、内側双極子トランスデューサ、又は両トランスデューサに適用され得る。概して、フィルタの目標は、所望の周波数において漏れを最小化することである。
【0024】
図3Aのプロットは、単極子トランスデューサ(曲線A)に対する、単一双極子トランスデューサ(曲線B)、単体の四極子アレイ(すなわち、
図2に示されるように2つの等価の双極子)(曲線C)、及び最適化されたフィルタを有する四極子アレイ(曲線D)の放射されたパワーを示し、いずれの場合でも、アレイは、耳において同じ音を生じさせるように均質化される。単体の四極子(曲線C)は、単一双極子(曲線B)に類似の性能を有する。最適化されたフィルタを有する四極子アレイは、ほとんどの示された周波数においてより少ない漏れを達成する(すなわち、放射パワーを低減する)。例えば、最適化されたフィルタを有する四極子アレイは、100Hzにおいて約10dB、1kHzにおいて約5dB、及び1kHz超の周波数においても数dBの漏れを低減する。
図3B及び
図3Cは、
図3Aの曲線Dの結果をもたらすフィルタを示す。
図3Bは、双極子32及び34の相対振幅を示す。ほとんどの周波数において、外側トランスデューサ34(曲線B)は、内側トランスデューサ32(曲線A)の振幅の約60%に低減された振幅を有することが伺える。
図3Cは双極子32及び34の相対位相を示し、曲線Aは内側トランスデューサ32の位相であり、曲線Bは外側トランスデューサ34の位相である。四極子様アレイの振幅、位相、又はこれら両方は、用途に基づいて所望の量の漏れの低減を達成するように最適化されてよい。加えて、サイズ、トランスデューサ同士の空間、並びにトランスデューサの数を変更して、更に漏れを低減できる。一般に、漏れは、トランスデューサの小型化、トランスデューサ同士の空間の低減、及びトランスデューサの数の増加により低減され得る。
図3B及び
図3Cの曲線Bは漏れを最適に低減したが、一定の位相及び利得を有する、より単純なフィルタは、達成可能な漏れの低減の大部分を低コストで達成するであろう。
【0025】
トランスデューサアレイは、3つ以上の双極子トランスデューサを有し得る。例えば、第3双極子は、トランスデューサ34に隣接するが、耳Eから離れるように加えられる場合に例示のフィルタを使用した結果が
図4A〜
図4Cに示される。
図4Aは、単極子(曲線A)に対する、単一双極子(曲線B)、(
図3Aのように)2つの双極子を備える最適化された四極子様アレイ(曲線C)、及び最適化された3双極子アレイ(曲線D)の放射されたパワーを示す。曲線Dは、1〜2kHz付近の周波数帯において著しい改善を示す。以下に詳述するように、3双極子アレイはまた、トランスデューサに音響的に結合されている管と結合され得る。
図4B及び4Cに示されるフィルタについて、
図4Bはトランスデューサの相対振幅(中間トランスデューサ(曲線A)に対する、内側トランスデューサ(すなわち、耳に最も近いトランスデューサ)(曲線B)、及び外側トランスデューサ(すなわち、耳から最も遠いトランスデューサ)(曲線C)の振幅)を示し、
図4Cはトランスデューサの相対位相(中間トランスデューサ(曲線A)に対する、内側トランスデューサ(曲線B)及び外側トランスデューサ相(曲線C)の位相)を示す。
【0026】
本明細書に記載のアレイ内のトランスデューサは、同一である必要はなく、異なるサイズであってよい。例えば、アレイ内のトランスデューサのうちの1つは、他よりも少ない振幅を必要とし得るため、トランスデューサを小型化して、トランスデューサの中心を互いに近づけ得ることが有利であってよい。例えば、
図2のアレイ30では、外側トランスデューサ34は、内側トランスデューサ32の振幅の約60%の振幅を有し得る。したがって、トランスデューサ34は、トランスデューサ32よりも小型化され得る。また、異なるタイプのトランスデューサがアレイ内で使用される場合、これらは異なるサイズであってよい。これらの態様は、以下で詳述する。
【0027】
また、トランスデューサアレイの多数のトランスデューサは、外耳道と直接揃っている、又は頭部から直接外に出る線上にある必要はない。具体的には、トランスデューサは、例えば
図5の実施例について示されるように、耳の上方、又は別の方法で耳の周囲に位置し得る。また、トランスデューサは、対称軸を共有する必要がなく、これもまた
図5に示すように、これらの軸が両方とも水平方向を向いている場合であっても、一方の対称軸は他方の対称軸の上方にあってよく、トランスデューサアレイ40の双極子トランスデューサ42は耳Eに近接して位置し、頭部Hの方向を概ね向き、一方、アレイ40の双極子トランスデューサ44は頭部のより上部に位置し、トランスデューサ44の軸と概ね平行である軸に沿った方向を向く。
図5の構成の結果及び例示的なフィルタは、
図6A〜6Cに示され、相対放射パワー(
図6A)は、単極子(曲線A)、単一双極子42(曲線B)、及び最適化されたフィルタを有する2つの双極子42及び44(曲線C)について示される。
図6B及び
図6Cのフィルタについて、振幅プロット(
図6B)は、曲線Aとしてプロットされたトランスデューサ42の振幅と、曲線Bとしてプロットされたトランスデューサ44の振幅と、を有する。同様に、位相プロット(
図6C)は、曲線Aとしてプロットされたトランスデューサ42の位相と、曲線Bとしてプロットされたトランスデューサ44の位相と、を有する。最大約2kHzの周波数において、トランスデューサ42の振幅の約80%で動作するトランスデューサ44は、約5dB〜約15dBの範囲の大幅な漏れの低減をもたらす。
【0028】
図5のトランスデューサ装置についての
図6A〜
図6Cの性能プロットでは、単一双極子の放射パワー(
図6Aの曲線B)は、単極子の結果(曲線A)を上回る。これは、この実施例における単極子の位置(図示なし)が外耳道の目先であるためである。双極子42及び44を備えるアレイは、曲線Cにプロットされる。
【0029】
別の代替トランスデューサアレイ装置として、トランスデューサの軸は、耳の上方又は周囲の様々な位置において、垂直方向を向き得る。例えば、
図7は、垂直方向を向き、耳Eの外耳道の上方で上下に位置する双極子トランスデューサ52及び54を有するトランスデューサアレイ50を示す。
図8A〜
図8Cは、アレイ50の相対放射パワー及び例示のフィルタを示す。曲線A(
図8A)は、
図6Aにもプロットされる単極子であり、曲線Bは単一双極子52の曲線、曲線Cはアレイ50の曲線である。
図8Bの曲線A(トランスデューサ52及び54の相対振幅を示す)及び
図8C(トランスデューサ52及び54の相対位相を示す)はトランスデューサ52の曲線であり、曲線Bはトランスデューサ54の曲線である。これは、示されたフィルタを有する垂直双極子が、最大約1kHzの低減された漏れを達成することを示す。
【0030】
上記のことは、対象音響装置のトランスデューサアレイのトランスデューサは、耳に比較的近接した任意の位置に位置付けることができ、これらの音軸は任意の方向を向いていることを示す。上記に示され、説明された非限定的な実施例を超えて、更なる構成が可能である。例えば、2つのトランスデューサを、耳の反対側に(例えば、外耳道の上方に1つ、下方に1つ)、又は耳の上方、耳の下方、耳の隣、耳の背後、若しくは耳の前に並んで有することが可能である。
【0031】
双極子トランスデューサは、対象音響装置の音響アレイで使用され得るトランスデューサの最も一般的な例ではない。音響学的に、両面ソースのそれぞれは、2つの片面ソースで近似され、かかる2つのソースは逆位相であり、双極子ディスクの直径に等しい距離を離されている。したがって、これまで記載した双極子トランスデューサの代替物として、対象音響装置の音響アレイは、1つ又は2つ以上の単極子音響トランスデューサを有し得る。
【0032】
例えば、
図2に示される2つの双極子装置は、音響学的に
図9の4単極子トランスデューサアレイ60と等価である。このアレイでは、4つの単極子トランスデューサ62、64、66、及び68は、すべて耳Eに近接して位置し、この非限定的な実施例では頭部の側面に概ね直交する軸70に概ね沿って存在する。双極子トランスデューサの場合と同様に、単極子トランスデューサは、耳の反対側(例えば、外耳道の上方に2つ、下方に2つ)に、又は耳の上方、耳の下方、耳の隣、耳の背後、若しくは耳の前に並んでなどが挙げられるが、これらに限定されない、耳の周りに様々な構成及び方向で位置付けられ得る。各トランスデューサの振幅及び位相は個別に制御されて、耳においてより調整されたSPL及び漏れの低減結果を達成できるため、多数の単極子トランスデューサを有することは、双極子トランスデューサと比較して更なる構成能をもたらす。
【0033】
単極子トランスデューサのアレイのフィルタは、双極子のフィルタと異なり得る。3kHz付近及びそれ以上のより高い周波数において、単一双極子は、単一の単極子に類似の性能を発揮するが、適切なフィルタを有する2つの単極子(例えば、単極子62及び64)のアレイは、双極子の漏れを上回る漏れを低減できる。したがって、2つの単極子及びフィルタは、単一双極子と比較して漏れを改善し得る。双極子トランスデューサについて本明細書に記載したフィルタと同様に、単極子アレイに適用されるフィルタは、内側単極子62と異なる相対振幅及び/又は位相を外側単極子64に与えることを企てる。
【0034】
3つ又は4つ以上の単極子トランスデューサでは、放射パワーは、耳における一定圧力について更に低減され得る。例えば、3つの単極子(例えば、単極子62、64、及び66)を備えるアレイの放射パワー及びフィルタ(振幅及び相対位相)が、それぞれ
図10A〜
図10Cに示される。
図10Aは、単一の単極子(曲線A)と比較して、単一双極子(例えば、双極子32(
図2))(曲線B)、2つの双極子(例えば、双極子32及び34(
図2))(曲線C)、及び3つの単極子(曲線D)を含む。より低い周波数において、3つの単極子はほぼゼロの体積変位に追加され、したがって、背圧を最小化するために、3つのすべてのバックボリュームが接続され得る。
【0035】
多数の単極子トランスデューサではアレイをより良好に制御するため、放射パワーは、複数の双極子を有するアレイと比較して概ねより良好に制御され得る。3つの単極子トランスデューサの実施例では、3つのトランスデューサのうちの中間トランスデューサ(トランスデューサ64、曲線A(
図10B及び
図10C)でプロットされる)は最大振幅を有し、他の2つのトランスデューサ(内側トランスデューサ62、曲線B及び外側トランスデューサ66、曲線C)はより低い振幅を有することに留意されたい。相対位相は
図10Cに示される。
【0036】
4つの単極子を備えるアレイ60(
図9)についての類似の結果は、
図11A〜
図11Cに示されており、曲線A、B、及びCは、
図10の曲線A、B、及びCと同一であり、曲線D(
図11A)は4つの単極子の曲線である。また、
図11B及び
図11Cの曲線Dは、外側トランスデューサ68の曲線である。
図11Bは、この構成において、2つの外側ソース(曲線B及びD)は、2つの内側ソース(曲線A及びC)よりも低い振幅を有し、トランスデューサ位相は、四極子の位相と異なることを立証し、この例では、位相は低周波数交流におけるものである(例えば、−+−+)。
【0037】
4つ又は5つ以上の単極子を備えるアレイは直線軸又は湾曲軸に沿って垂直、水平、又は他の方向に配置され得、内側トランスデューサは耳に最も近接し、外側トランスデューサは耳から最も遠く、中央トランスデューサは内側トランスデューサと外側トランスデューサとの間に位置する。かかるアレイでは、この同一パターンが生じ(交流位相)、中央トランスデューサは最高振幅を有し、振幅は、内側トランスデューサ及び外側トランスデューサに向かって先細である。
【0038】
本明細書に提示されるデータから明らかなように、対象音響装置では、1つ又は2つ以上のトランスデューサが、他のトランスデューサによって生じたSPLをキャンセルするためにある程度使用されている。キャンセルは、耳においてよりも遠距離場においての方が大きいため、漏れ低減において純利得が存在する。これは、耳が、耳に最も近接するトランスデューサの影響を最も強く受けるためである。ただし、トランスデューサが1つだけ使用された場合、又はすべてのトランスデューサが互いに異なる位相で動作する場合、耳においてより少ない音が存在する。最終結果は、耳において所望の音レベルをもたらすために、トランスデューサからより多くの体積変位を必要とするということである。同様に、所定のSPLには、より低い周波数において、より多くのトランスデューサ変位が必要である。これらの要素が実際のトランスデューサの制約と組み合わされると、全周波数において漏れを最小化するフィルタを用いる4単極子アレイでは、耳において、ある周波数を下回る十分な音を生じさせることが困難になる。
【0039】
しかしながら、放射パワーの上記のプロットはまた、本明細書に記載のアレイのいずれかを用いると、周波数が低下するにつれて、漏れが低減することを立証している。比較的低い周波数では、音響装置に企図される特定の使用例で必要とされるよりも大きい漏れの低減が存在することがある。したがって、場合によっては、漏れの低減に最も効果的なフィルタを使用する必要がないことがある。代わりに、漏れの低減にはそれほど効果的ではないが、耳におけるSPLを改善する、位相及び振幅の異なる装置が使用され得る。
【0040】
いくつかの実施例では、明確な周波数範囲にわたってトランスデューサの相対位相を変化させることが有益であり得る。4単極子トランスデューサアレイ60(
図9)を用いた一実施例(結果は、下記の表1に要約した)では、異なる周波数範囲で相対位相を切り替えることにより、耳に届けられる音響パワーと、環境に放射されるパワーとの間でのトレードオフが可能になり、その結果、異なる周波数において必要とされる漏れの低減に対して、トランスデューサの使用可能な体積変位をより有効に使用できることが判明した。
【0042】
いくつかの実施例では、特定の周波数帯に漏れの低減を集中させ、他の周波数帯には集中させないことも有益であり得る。例えば、低周波数の漏れた音が全くなく、高周波数の音が減衰されない場合、音響装置付近の人々にとって、漏れた音がより苛立たしいことがある。より高いレベルにわたって分光的にアンバランスな音は、分光的にバランスの取れている音よりも苛立たしいことがある。したがって、トランスデューサアレイのフィルタは、全周波数を通じて漏れの低減に一貫性があるように設計され得る。換言すると、トランスデューサの使用可能な体積変位をより効果的に使用する、又は漏れた音によって生じた苛立ちを低減するためには、最低周波数において使用可能な漏れの低減の一部を諦めることが有益であり得る。
【0043】
対象音響装置の音響アレイは、両面トランスデューサ及び片面トランスデューサの任意の組み合わせを使用でき、したがって、放射面の総数は少なくとも3であり、トランスデューサ制御信号の総数は少なくとも2である。例えば、トランスデューサアレイ80(
図12)は、耳Eに近接した単極子84と、耳Eから遠い単極子86と、を有する双極子トランスデューサ82を備える。3つのトランスデューサは、概ね軸90に沿って位置するが、上述したように、必ずしも軸に沿わなくてよい。漏れ性能、並びに例示の相対振幅及び位相フィルタは、それぞれ
図13A〜13Cに示される。
図13Aでは、曲線Aは単一の単極子84の放射パワーであり、曲線Bは単一双極子82の放射パワーであり、曲線Cは、最適化された(すなわち、最適なフィルタを有する)2つの双極子(
図2に示すものなど)の放射パワーであり、曲線Dは、
図13B及び13Cに示されるフィルタを有する、アレイ80(
図12)の放射パワーである。
図13B及び
図13Cでは、曲線Aは単極子84の曲線であり、曲線Bは双極子82の曲線であり、曲線Cは単極子86の曲線である。アレイ80など混合アレイは、ある程度の双極子の簡略性及び効率性を保持しつつ、ある程度の単極子アレイの柔軟性を追加する。
【0044】
2つ又は3つ以上の単極子を有するトランスデューサアレイでは、トランスデューサの位相が不一致の場合に、バックボリュームの圧力を低減して、所望のSPLをもたらすために必要なパワーの量を低減するように、バックボリュームを共有することが、単極子にとって有益であり得る。共有されたバックボリュームは、所望の物理的形態、例えば、管又はキャビティの形態を取り得る。
図14は、
図12の単極子ソース84及び86の背面を接続している管108を示す。3つのトランスデューサの例示的な相対位相は、矢印で示される。
【0045】
対象音響装置の音響アレイは、放射面が互いにより近接して位置する場合、より高い周波数において漏れの低減を達成できる。トランスデューサ自体でこれを達成するために、トランスデューサは、互いにより近接して収まるように、物理的に小型化され得る。しかしながら、より小型のトランスデューサは、耳において所望のラウドネスを達成するために、実際にはより多くの変位を必要とする(トランスデューサの面積がより小さいため)。したがって、同量の空気を移動させるためにより大きな運動が必要とされる。この制約は、トランスデューサのサイズ低減だけでは、より高い周波数における漏れの低減の達成に対する限定的な解決策となる1つの理由である。
【0046】
トランスデューサのサイズの低減を含まずに、互いに比較的より近接して位置する音源を達成する別の手段は、より大型のトランスデューサを使用することである。これらのトランスデューサは、耳からより遠くに位置する必要があり、耳により近接した放射面から音を伝える管又は導波管を通して耳により近接した音を伝える。
図15はこの概念を示し、トランスデューサアレイ110は、それぞれ耳Eから少し離れて位置する単極子トランスデューサ112、114、116、及び118を含む。管121、123、125、及び127のそれぞれは、トランスデューサから管の出口113、115、117、及び119のそれぞれに音を伝え、管の出口は、単極子ソースとして動作する。並んで位置するトランスデューサの物理的配置又は他の配置、及び互いに比較的互いに近接していることもまた、共通バックボリューム120の使用を可能にする。
【0047】
本明細書に記載のトランスデューサアレイのトランスデューサは、互いに異なるサイズであってよい。高周波数での最良の漏れ低減を実現するためには、トランスデューサは小型であり、かつ互いに近接している必要がある。しかしながら、耳における音響振幅を増加させるためには、トランスデューサはより大型である必要があり、互いにより離れる必要がある。音漏れを最小化するフィルタは、異なるトランスデューサからの異なる最大体積変位を概ね必要とする。したがって、トランスデューサの中心ができるだけ互いに近接できるように、より少ない出力を必要とするトランスデューサのサイズを低減することは有利であり得る。
【0048】
トランスデューサアレイのフィルタは、漏れの低減及び耳におけるSPLの両方を考慮して最適化され得、アレイの任意の特定のトランスデューサで使用可能である限定的な出力を考慮する。したがって、フィルタは、絶対的に最小の漏れを常に達成するわけではない。最適化されたフィルタは、周波数によって異なり得る。例えば、第1周波数範囲において、制御信号は、音響トランスデューサのアレイに単極子とほぼ同様に動作させてよく、第2周波数範囲(第1周波数範囲よりも高い)において、制御信号は、音響トランスデューサのアレイに双極子とほぼ同様に動作させてよく、第3周波数範囲(第1及び第2周波数範囲よりも高い)において、制御信号は、音響トランスデューサのアレイに四極子とほぼ同様に動作させてよい。更に、第4周波数範囲(第1、第2、及び第3周波数範囲よりも高い)において、制御信号は、音響トランスデューサのアレイに四極子よりも高次の多極子とほぼ同様に動作させてよい。
【0049】
漏れの低減の1つの目的は、音響装置のユーザーに近接した他人に迷惑をかけないことである。煩わしい音漏れの量自体は、環境内の雑音の量に依存し、非常に静かな場所では、ごく少量の漏れでも過剰であり得る。また、漏れの量は、ユーザーが要求する全体的な音レベルに部分的に依存する。したがって、音響装置は、周囲音のレベルを検出するマイクロホンを使用することができ、トランスデューサ制御信号は、適切に調整され得る。例えば、制御信号は、周囲の雑音レベルの増減に応じて、音量を上下に自動調整できる。また、音響装置は、「過剰な」漏れをもたらし得る点までユーザーが音量を上げた場合に警告(例えば、可聴警告)を出せるようにし得る。かかる警告を生じさせる音レベルは事前設定され得る、又はユーザーの典型的な「隣人」の感度及び耐性に応じて、潜在的にユーザーによって設定され得る。あるいは、音レベルは、周囲環境で検出された雑音の量に応じて自動的に確立され得る。
【0050】
片耳用音響装置150の簡略ブロック図が
図16に示される。各耳にトランスデューサアレイを有する、より典型的な音響装置では、各耳に音響装置150が存在するであろう。音声信号は、全体的な信号等化154を達成する、デジタル信号プロセッサ(DSP)152に対する入力である。トランスデューサ170〜172用であるチャネル1〜3の信号は、次いで個別のフィルタ156〜158(例えば、上記のフィルタ)、次いで任意の更に必要な処理160〜162(例えば、リミッタ、コンプレッサ、動的EQなど当該技術分野において既知のタイプの処理)に提供される。信号は増幅され(164〜166)、次いでトランスデューサ170〜172に提供される。
図16には3つのトランスデューサが示されるが、アレイ内のトランスデューサの数に応じて、更なる、又はより少ないトランスデューサ及び対応する信号経路が使用され得る。
【0051】
図16の素子は、ブロック図内の個別素子として示され、説明される。これらは、1つ又は2つ以上のアナログ回路又はデジタル回路として実現されてよい。あるいは、又は加えて、これらは、ソフトウェア命令を実行する、1つ又は2つ以上のマイクロプロセッサと共に実現されてよい。ソフトウェア命令は、デジタル信号処理命令を含んでよい。動作は、アナログ回路、又はアナログ動作に相当するものを実行するソフトウェアを実行するマイクロプロセッサによって実行されてよい。信号線は、別個のアナログ若しくはデジタル信号線として、別個の信号を処理できる、適切な信号処理を行う別個のデジタル信号線として、及び/又は無線通信システムの素子として実現されてよい。
【0052】
ブロック図においてプロセスが示される、又は暗示される場合、工程は、1つの素子又は複数の素子によって実行されてよい。工程は、同時に、又は異なる時期に実行されてよい。動作を実行する素子は、物理的に同一、若しくは互いに近似してよい、又は物理的に別個であってよい。1つの素子が、複数ブロックの動作を実行してよい。音声信号は、コード化されても、されなくてもよく、デジタル又はアナログのいずれかの形式で伝送されてよい。従来の音声信号処理機器及び動作のすべてが図に示されているわけではない。
【0053】
本開示の音響装置は、多くの異なる形状因子で達成され得る。以下は、いくつかの非限定的な例である。トランスデューサは、頭部の両側のハウジング内にあり、より従来型に近いヘッドホンで使用されるものなどバンドで接続され得、バンドの位置は変更され得る(例えば、頭部の上部、頭部の背後、又はその他)。トランスデューサは、2015年7月14日出願の米国特許出願第14/799,265号(この開示は、参照により本明細書に援用される)に記載されるものなど肩/上部胴体に固定される首装着型装置内に位置し得る。トランスデューサは、可撓性であり、頭部の周囲に巻き付けられるバンド内に位置し得る。トランスデューサは、帽子、ヘルメット、又は他の頭部装着型装置と一体的であり得る、又はこれらと結合され得る。本開示は、これらの、又は任意の他の形状因子に限定されるものではなく、他の形状因子も使用され得る。対象音響装置のトランスデューサの近接性の一般性を頭部に限定することなく、頭部装着型装置では、トランスデューサは、耳のおよそ100mm以内にあってよく、首又は他の身体装着型装置内では、トランスデューサは、耳のおよそ200mm以内にあってよい。正確な距離は、特定の用途に基づいて異なる。
【0054】
同日に出願された(また、参照により本明細書に完全に援用される)名称「Acoustic Device」の特許出願(出願人Nathan Jeffery及びRoman Litovsky、代理人整理番号22706−00126/HP−15−023−US号)は音響装置を開示しており、この装置も漏れを低減するように構成されて、配置される。参照により援用される出願に開示される音響装置は、更なる、場合によってはより広範囲の漏れの低減を達成するために、本明細書に開示される音響装置と任意の論理的な方法又は所望の方法で結合され得る。また、本開示のアレイが約1kHzを超える周波数において良好な漏れの低減を達成するために、トランスデューサは比較的小型である可能性が高い。かかるトランスデューサは、許容可能なSPLで約200Hzを下回る低音を出すために十分な空気を移動できないことがある。したがって、参照により援用される出願に開示される音響装置が使用されて、本開示の音響装置では達成困難であり得る低音を提供してよい。
【0055】
いくつかの実装形態が説明されてきている。それにもかかわらず、本明細書に記載される本発明の概念の範囲から逸脱することなく追加の改変を行うことができ、したがって、他の実施形態も特許請求の範囲内にあることが理解される。